いじめ防止対策協議会(平成30年度)(第1回) 議事要旨

1.日時

平成30年6月29日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 最近のいじめ事案等について
  2. いじめ防止対策に係る事例集(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

栗原委員,佐藤委員,新海委員,水地委員,高田委員,宮路様(廣田委員代理),笛木委員,松谷委員,道永委員,森田委員,八並委員,横山委員

文部科学省

小松文部科学審議官,髙橋初等中等教育局長,下間初等中等教育局審議官,坪田児童生徒課長,松林生徒指導室長,粟野課長補佐,北﨑調査官,星専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち,座長及び座長代理の選出が行われた。その後,髙橋初等中等教育局長・座長より挨拶があった。
※事務局より資料についての説明,最近のいじめの事案などについて説明があった。

≪議題(1)最近のいじめ事案等について≫
【座長】  ただいま事務局から説明があったように,神戸市の事案,葛飾区の事案,それからいじめ防止対策推進法に関わる勉強会もある。またPDCAサイクルのチェックシートと言われるものも検討が進められている。今日は,こういう内容も含めて,単に事案だけではなくて,いじめ防止対策推進法の枠組み,今後のこの協議会の進め方に関する事務局への要望等,忌たんのない意見を頂きながら,この協議会の在り方,あるいは今後のいじめ対策の在り方を検討していきたい。
 私自身は現場やいろいろなところへ行き,このいじめの対策の在り方もちょうど第2フェーズへ入ってきたかなという気はしている。第1フェーズは,いじめ対策の入り口である認知率を上げ,対策の一番の取っ掛かりを法の定義に照らして進めていき,定義に則ったいじめ認知の浸透をいかに図っていくか。文科省でも,各都道府県,政令市へ出掛けて説明,法の周知徹底を図り,昨年度は20万件が30万件まで認知件数が増加した。今年度はさらにそれがどうなっていくのか。本来は,発生件数が減少すればいいのだが,いじめがあるにもかかわらず減少ということがあってはいけないが,この第一フェーズでは,認知の考え方と定義の周知徹底に関しては徐々に進められ,その成果も上げつつある。
 となると,第2フェーズは,各学校の実効性のある基本方針の中で対策組織をいかに有効に機能させていくかというところになってくると思う。
【委員】  私からは2点,今後の協議会で取り上げてもらいたいことがある。
 弁護士の視点からだが,いじめの問題を考えるときには,入口と出口をしっかりと把握していく必要がある。まず出口のところで今一番問題となっているのは,第三者調査委員会の在り方になるかと思う。先ほどの報告の神戸市の関係も葛飾区の関係も,やはり起きた後の対応の問題というところがすごく大きなポイントではないか。私もこの法律の施行前の大津市で関与したが,第三者調査委員会の在り方というのはすごく難しいところだと思う。何のために委員会を行っているのかというのが,周知徹底できていないのではないかと思う。 例えば,いじめの定義の問題でも,今回法律ができているわけだから,その法律に当てはめて,その当てはめをしていかなければいけないのだが,そこをいじってしまったケースがあった。大津市の場合も実は文科省の定義をいじっていたのだが,まだ法律施行前のものだったので,いろいろ試み,取組の中でやったことだった。今の第三者調査委員会は法律の枠内でやっていることからすると,いじめの定義というのは,法の定義を前提に考えていくべきだということを周知徹底させる。それから,重大事態との関連性についても,いろいろな報告書を見ていくと,背景調査に終始してしまっているようなところもある。いじめとの関係がどうだったのか,つまり,重大事態にいじめ事実が関連していたのかいなかったのかをしっかりと調査していくことがいじめ防止対策推進法の調査のあるべき姿だと思う。家庭がどうだったとか,その子の特性がどうだったとかといったところを議論していくのは,方向性が違うのではないか。例えば重大事態にいじめ事実がどの程度寄与しているのか,何%関わっているのというようなことを言うこと自体もどうかなと思う。1%でもいじめ事実と重大事態との間に関連があるならば,そこはしっかりと問題点として提起し,再発防止のための対策を講じることが求められているのではないかと思う。だから,いじめ事実と重大事態との関連性についてどのように考えるべきかといったところについても,しっかりと指針を出していくことも必要だと思う。
 その意味で,文科省に報告書が全国から上がってきていると思うので,それを分析するようなプロジェクトチームを作って,どのように第三者調査委員会を持っていくべきかといったことを検討しておく必要があるのではないか。例えば,その検討を示しながら,国会議員の方が今,勉強会をしているということであれば,そことすり合わせという言い方はおかしいが,方向性がどうかといったところを議論していくことは重要だと思う。第三者調査委員会の在り方が十分ではないので,御遺族や保護者の方が,調査委員会の報告書によって傷付くというようなケースも多いと思う。だから,そこの取組というのは非常に重要だと思う。 それに引き続いての再調査についても,再調査をどういう場合にすべきなのかといったところがいま一つよく分かっていない。今の段階だと,首長の裁量に基づいてということだが,果たしてそれでいいのかといったところももう一度,しっかりと方向性を議論しておくべきところではないかと思う。
 あと,入口論だが,いじめの問題をなくしていく,少なくしていくためには,予防にしっかりと重点を置くべきだろう。起きた後どのようにチェックしていくか,初動をどのように見ていくかということはあるが,いじめの何が問題なのかということを,先生や子供たちに意識させるといった入口論のところ,人権教育といったところをしっかりとやっていくべきではないかと思う。いじめの出張授業については,今回の事例の中でも取り上げているが,弁護士会がいろいろな取組をしていて,かなり効果が上がっているのではないか。去年の箕面市の取組も文科省の事業としてさせていただいたが,大阪弁護士会では一定の評価を得られたと考えている。入口論の,いじめというのは人権侵害に該当するということを子供たちに徹底するような取組を今後しっかりとしていければ。
国の事業としてやっていく分では予算付けというのも非常に大事だ思う。出口論の第三者調査委員会の報酬の問題とか,入口論のいじめ授業についてもしっかりと予算付けをしていくことも検討いただければと思う。
【委員】  先ほどの神戸市の事案も,10月11日に教員やスクールカウンセラーが聞き取りをしたと。この聞き取りは,心を落ち着かせるために実施したということだ。実際にスクールカウンセラーは,自殺などがあったときには,緊急事態として,また緊急支援として,お子さん,保護者,学校の先生方に関わる。このことと第三者調査委員会としての情報に混乱がある。自殺者が出た学校の子供たちの心のケアとして,PTSDにしないためにどう関わるかをスクールカウンセラーとしては考える。神戸市の事案で言われた,心を落ち着かせるための実施という,それとは別に考えなければいけないのではないかと思う。
 スクールカウンセラー,臨床心理士会も,弁護士を講師に招いて,法律的なことやいろいろなことを勉強していかなければいけない。今までの心の支援という視点だけではなくて,第三者委員会で我々が関わるときにどういうことが必要なのかということで。第三者委員会の委員の推薦依頼がたくさん来るが,これが大変難航する。その県の中では難しいから交通費を払ってでもいいから来てくれなどと言われて,また,行く人が限られていて,これを何とかしなければいけないというので,我々も勉強会をやろうと計画している。心の支援をする人間として,調査の方法であるとか背景であるとかいろいろ考えるときに,第三者委員会に我々が入らないということは考えられないが,人材不足ということもあり,第三者委員会の委員を選ぶときに苦労がある。 苦労もあるが,第三者委員会の本来の目的というのはそういう正しい背景なりいきさつなりを理解して予防に役立てるということだと思うので,そのあたりのところをきっちりと我々も勉強していかなければいけない。今後はそういう事態が起こった後の心のケアと第三者委員会ははっきり区別して,対応していく必要があるのではないかと思うし,その辺を整理していく必要を感じている。
【委員】  平成25年の法施行以降,現場の教員の研修に携わっていて,同法に関連する話をするが,この法律が教員にどのくらい理解されているかということだ。80人程度の生徒指導担当主事の研修でも,この法律を十分に知っている人はほとんどいない。例えば,『35条のうち「いじめの禁止」は何条ですか』という重要かつ簡単な質問に答えられない。要は基本中の基本であるこの法律を,現場の教員,保護者,あるいは子供たちに周知する。つまり,法律を理解し,周知させることが,いじめ防止につながると思う。現状では,そこの部分がほとんどできていない。法律としてはとても珍しいと思う。
 この法律の理解を,年度初めの校内研修で徹底しているか。あるいは,自校の「学校いじめ防止基本方針」に関して,教職員全員が読み込んでいるか。平成29年最終改定の「いじめの防止等のための基本的な方針」では,「必ず入学時や各年度開始時に児童生徒,保護者,関係機関等に説明する。」としている。どのくらいの学校が本当にその説明を行っているかというと,ほとんどなされていないのが現状だろうと思う。そうなると,やはり子供たちも保護者もいじめが起きて,はじめてこういう法律があることを知る。いじめ防止の観点からすれば,この法律自体をまず教員がきちんと理解することが先決だと思う。この法律や国の基本的方針などの基本的理解という基礎・基本部分を,どう徹底するかを考えた方がいいと思う。
 先ほど第三者調査委員会のことが話題になったが,職能団体推薦の場合,依頼が来てから人材を選定するまでかなり時間がかかる。また必ずしも年度初めに依頼が来るわけではないので,当事者や関係者が卒業するまでの数か月から半年間で調査して欲しい。場合によっては,年度がまたがってしまい,中学校の場合であれば関係者が高校に進学してしまっている。その状況下で,調査を実施しなければならない場合がある。第三者委員会自体が一体何を調査するか,学校・保護者・第三者委員間で,コンセンサスがとれていないことがある。そういう点では,何をどの程度明らかにするかというガイドラインを作らないと,混乱や誤解が生じるのではないかと思う。
【委員】  去年,事務局から各地の報告書が集まってきていると説明があった。ガイドラインというのがいいかどうかはともかくとして,第三者委員会を設置するときに,実は具体的な進め方等が何も決まっていないままに第三者委員会でやるとなっていて,いろいろな人たちが各団体から推薦され,推薦する方も苦労しつつやっている。選任された方々もやり方が決まっているわけではない中で,膨大な作業量で,どうやったら資料が集められるのだろうというところを皆さん苦労してやっている。でも,かなりの集積ができてきていると思うので,どのようにやっていくかという形を示していくのが,今年度なり,早急にすべきことではないかと思う。 それと,皆さん手探りで,御遺族からの要望もある中で,第三者委員会は,いじめという認定が難しかったりする。いじめと言った場合に,加害者に責任がある,責任追及と同じように受け止められてしまう。再発防止ということよりも,誰に何の責任があるというように。刑事事件や少年事件として取り上げるべき側面,それから民事事件として損害賠償の責任があるのかというようなことが,警察のような捜査権限がない調査委員会がやることに,どこまでどう付いてくるのか。そのあたりが皆さん苦労されていると思う。第三者委員会は何をするのだという目的のところからきちんと理解を深めていかないと,その辺が混乱したままやって,だからここはこう言えないということになる。今後できるだけ役立つものにするためにも分析を早急にやって,どうしていくべきかというのを早く,文科省でもやっていただきたい。
【事務局】  書類については,先ほどの神戸市や葛飾区のような事案についてはすぐ取り寄せて,しっかり個別に読み込んで分析して,きょうのような資料も作り,必要に応じて活用し,教育委員会にフィードバックしたりしている。年間400件ぐらいある全部について,今のところ,重大事態の報告書ができたら文科省に送付するよう依頼しているわけではない。どうしたら効率的に分析していけるかというのをこれから検討していきたいと思う。特に重要なものについては取り寄せて,ポイントをしっかり把握しているわけだが,全体的な分析はまだできていないのが現状だ
【事務局】  報告書については個別によってかなり事情が違うので,統一的な全体のフォーマットというか,分量とか,余り一律に示すべきでもないのかなと思いつつ,肝心の,では学校はどういう対応をしたらこれを防げたのだ,教育委員会はどういう支援を学校にしたら防げたのだという部分を,書いていないものが多いなということは感じている。そういうことも含めて,もう少し内容を分析してと思うが,国が報告を受けて,これは足りないからやり直せとか追加的にやれというようなことまでできるのかという話にもなってくる。そこについては,第三者委員会の役割の位置付け,調査の一つの限界とかいろいろなものを考えて,今後提案的にいろいろと考えなくてはいけない。是非今年度,その部分について検討していただきたい。重大事態の調査についてはガイドラインで少しかみ砕いて書いているが,それ以上の責任との関係とか裁判との関係とか,それについては行政として定義しづらい部分もあるので,是非先生方の提案をいろいろと頂ければと思う。
 あと,残念な話だが,本当にまだ法律が読まれていないという事案が昨年度は感じられたが,この春の段階になって,研修に来る人は当然読んできているということが確認されている。ただ,研修に来ていない人が全て読み込んでいるかというのはあるので,そこは持ち帰って必ず伝えてくれと言っている。  参考資料にあるが,総務省の勧告とそれを受けた通知をこの3月に出した。定義を限定的に解釈している例や,重大事態の発生報告を法律に基づいてやっていない,要はちゃんと法律を読んでいない,法律をしっかり守るという意識が薄いというようなことを勧告され,それを踏まえた対応ということで参考資料1-2を出している。要するに,勧告を踏まえたしっかりとした正確な認知等をやってほしいと。その中で,「教職員,児童生徒及び保護者に対するいじめ防止対策の周知の徹底」ということで,実は初めて期限も切り 5月末時点までに全ての学校で以下の取組を確実にやって設置者は確認してくださいという重い通知です。一つが全教職員に非常に分かりやすい説明をした資料,一方で児童生徒,保護者といういじめを訴えたりする立場の方々に対しても,入学式等において法の趣旨・内容やいじめの定義,さらには子供のいじめのチェックシートなども全ての御家庭で,というようなつもりでお願いをした。そして,この確認結果については,必要に応じて今後フォローアップすることも予定している。一つの関心事は,先ほどの葛飾区の第三者委員会で限定的な解釈をして調査をされたという事案だ。現場では限定的なというのは,コンプライアンスの意識が薄いと思うが,第三者委員会のところでどうして限定をしてしまうのかというところについては,いまだに腑(ふ)に落ちない部分がある。結局区長がちゃんとやりますということになったのだが,なぜ長い経過の中で第三者委員会が限定してしまったのかについては,その雰囲気みたいなものが分かれば補足を願いたい。
【委員】  400事例の中で,集めているのが,我々が見るのと同じような重大なマスコミに取り上げられているものだとすれば,取り上げられていない400件のうちの100とか200は,それぞれの第三者委員会がそれほど膨大な調査をしなくても何らかの結論を出せているようなケースもあるのではないか。むしろそういうものにも目を配ってもらいたい。
【座長】  いじめの認知に関わる定義を非常に限定的に行っているというのがかなりの数字で出ている。そういう事態が各職能団体からの推薦委員も入っている委員会の中で出てきているというのは,私も非常に不思議な気がする。先般,第三者調査委員会の方々に,いじめの法律や解釈や定義の仕方,調査の進め方,あるいは重大事案に関わる留意点等,こういうことについて勉強会をしてくれないかという依頼を頂いた。そういうニーズが調査委員会を抱えている教育委員会の中にあるということも知っておくべきだろう。それがないために,かえって事案がこじれて様々な問題が出てきたり,場合によっては教育不信と言われるようなことも起こりかねないという事態もあるので,そこのところをうまく処理していける仕組みを考えておく必要があると思う。第三者調査委員会の方々には,重大事態の調査のガイドラインだけではなくて,基本的な法律の解釈等も含めて,しっかりと身に付けて議論いただくことが,必要だと思う。
【委員】  今,第三者調査委員会でどのように運用していくかについて,有識者から講義をしてもらうという委員会が多くなりつつある。それも一つの形ということを示すことも大事ではないか。第三者調査委員会は,各団体からの推薦でしっかりとした方が来られていると思うが,果たして何をやるのか分からないで始めているケースが多いと思う。弁護士も全ての弁護士がどこまで分かった上で調査委員になっているか,まだ抜けているところがあると思うので,それは弁護士会で一生懸命勉強会をしていかなければいけない。第1回の委員会のときに,第三者調査委員会というのはこういうことで,こういうことをしていただきたいのだ,それぞれの専門性をこういうところで生かしてほしいというような,レクチャーも大事だと思う。
 ガイドラインというと大げさになるかもしれないが,何か道筋みたいなものを付けていただきたい。例えば委員を選任するのが難しいようなところも,そのような羅針盤みたいなものがあれば,方向性が違わないような報告書が出来上がってくるのではないか。別に縛りを付けるということではないが,今はいろいろな方向に行ってしまって収拾が付かない状態になっていると思う。先ほどの報告書については,できれば全部を文科省に集めるべきだ。それを全部分析するのは難しいかもしれないが,やはり読み込んで,これはワーキングチームとかいろいろなやり方があると思う。分析して何らかの形を作るということをしていかないと,せっかくこの協議会もいろいろしているが,なかなかいい方向に行かなくなっているのではないかと,今,危機感を持っている。なので,今日は,できればそういうワーキングチームやプロジェクトチームを作り,報告書を分析して一定の方向性を出すというぐらいまで皆の意識が固まっていけばいいと思うので,検討していただきたい。弁護士会でも,できる限り若手も参加してもらいながら,いろいろ協力していきたいなと思っている。
【委員】  日本PTAにおいても,鳴門教育大学はじめ,BPプロジェクトということで,一緒にいじめ対策の活動をしている。先ほど,法律を先生や保護者,子供たちが知らないのではないかという指摘があった。私もこういう立場になる前は知らなかったが,この2年ぐらいで大分勉強した。中学校でも今年のPTA総会では先生方がこの説明をプロジェクターを使ってしていた。全国でしているかどうか調査はしていないが,確実に今,これが広がりつつある。あと,保護者に関しても,こういった取組をしていこうと動いているところだ。あわせて,全国でこれを展開していこうということで,会長経験者が回って,膝詰めで話をしていくというところをまず基本に持っていこうかなと思っている。通知を出してもなかなか読んでもらえないとか,こうして欲しいと言ってもなかなか動かないというのが現状なので,現役の役員が行って一軒一軒説明して回るという大変手間のかかる作業ではあるが,それによって子供たちの命が救われるのであれば,これはどんどんやっていくべきだろうという考えでいる。
 また,保護者は,家庭教育の部分,まず入口の部分で食い止めることはできないかということでやっている。ただ,PTAに参加している方は意識の高い方が多いので,そういった家庭は大体大丈夫なのだが,やはり参加してもらえない家庭にどのようにアプローチをしていくかというところも発信をしていかなければいけないということで,悩ましい問題ではある。私たちも現場で820万人以上の会員があるので,一人一人に伝わればいじめ撲滅も夢ではないと思うので,是非協力を頂きながら子供たちの命を守っていきたいと考えている。
【事務局】  補足するが,400件の重大事態があるが, 28年度でいうと,大体六,七割が不登校だ。400件の正式な第三者調査委員会が開かれているかというと必ずしもそうではなくて,不登校については,例えば学校のいじめ対策の組織に臨床心理士や弁護士が二,三人入った上で小さな調査チームを作り,数枚とか短い報告をまとめているというケースも多くあるのだろうと思う。そういうものを含めて400件程度ということなので,補足させていただく。そういうものも含めてどうするか,検討させていただきたい。
【委員】  何年か前に,いじめ防止等のための基本的な方針を作らなければならないということで,一つのものを作ったと思うが,一つのものが出来上がってしまうと,具体的な事件・事故等々が起こらない限り,なかなかその先に行かないというのが実情ではないかと思う。今,この場で第三者委員会の話も出ている。やはり新しい組織が動き出すためには,どなたかからの大きな指導があって初めて新しい動きが生まれるのかなと思う。
 神戸市,あるいは葛飾区,これも新聞報道等で読み,勉強し,大変な事例だなと思うが,文部科学省で細かく聞き取り調査をして,さあ,その上でどんな指導をするのか,当該教育委員会はものすごく考えて指導したと思う。400事例の話もあったが,極力,都道府県教育委員会レベルまでは,こういう事例があって,こういう指導をして,こういう結果になりそうだぐらいの内容については知らせることができると,それぞれの教育委員会も勉強し,力を付けていけるのではないか。
【委員】 今,400件のうちの6割が不登校事案で数枚程度ということだったが,私はやはり1号事案と2号事案はしっかりと分けるべきだと思うし,そうすることで対応が大分違ってくると思う。そういう意味では最近,2号事案,不登校事案は逆に難しくなっていると思う。自死事案と違う運用の仕方になっていると思うから,そういう意味では不登校事案の調査報告書は報告書でしっかりと分析していく必要性があると思う。そこは,2本立てで分けてやっていくということも大事だと思うので,その観点から検討いただきたい。
【座長】  それでは,次の議題に移らせていただきます。

≪議題(2)いじめ防止対策に係る事例集(案)について≫
※事務局より資料2-1から資料2-3を説明。
【委員】 内容的なものではないが,製本をして,教育委員会・学校現場に配付されるということだが,どの程度の部数が行くのか。
【事務局】  部数については検討中で,なるべく多くの教育委員会や学校関係者の方々に届くようにしたいと思う。
【座長】  あわせて,いつ頃学校に届くか。というのは,夏休みは教員研修が非常にたくさんあり,そこでこういう事例集を有効に活用してもらえるのではと思う。なるべく速やかに届けるように尽力いただきたい。
【委員】  私は前年度からこの資料,改定されてくる間を見たし,意見を言わせていただいたが,新しい委員の先生方はどうか。事実上は本日確定しないと進まないと思うし,まだこれを読み込む時間のない先生の意見をどこまで反映できるか分からないが,聞く機会を少しでも作った方がいいと思う。
【座長】  今後の進め方だが,本日,いろいろな意見が出たら,修正を含めて若干の時間的なゆとりを取りながら,なおかつ印刷して,教育委員会の方々が活用できるように休み前にお手元へ。あるいは,ホームページに上げれば,あとは活用が可能になるので,そういう作業を行っていただくようお願いしたい。
【委員】  今,気になったのが,113ページの表題に,「(6)発達上の課題を抱える」と書いてある。特別支援教育の世界で,障害を持っているという言い方はできるだけ避けて,障害があるという表現をすると思うのだが,持っているというのと,抱えているというのは,イメージ的に同じかなと。発達上の課題があると思われる児童生徒が関わるいじめへの対処とか,発達上の課題がある児童生徒が関わるいじめへの対処とかという書きぶりにした方が良いのではないか。次の114ページのコメントにも「課題を抱えている」というのが2か所あり,115ページの一番上も「抱える」があり,その次の117ページも「抱える」がある。ここら辺は変えた方がいいような気がする。
【委員】 今やはり,スマートフォン,SNSによる書き込み等のいじめが本当に難しい。事例1の(2)であれば,裏アカウントで仲間外しをするという行為が書かれている。6の(7)は,画像を無理やり撮って載せる。事例からすると,コメント等もこれでいいと思うが,アカウントやなりすましでは,中傷や傷付けるような書き込みが起こる。そのときに対応の悪い例として,削除要請が遅れたり,また何回か繰り返されて子供がかなり傷を負ってから削除に動くとか,そういう事例もある。 事例のコメントとしては書きにくいというのは承知しているが,法務局の削除要請とかそういうことも示すとか,そういう書き込みがあった場合に削除要請をまずしなければならないとかそういうコメントを入れた方が,学校にとってはさらに認知が進むのかなと。子供を守る視点からそこのところが大事かと思い,どこかに書いてもらいたい。
【事務局】  国の基本方針でも参考になる記載があるかと思うので,そちらをできるだけ引用し言及していきたいと思う。
【委員】  119ページに「無料通話アプリ(LINE)」と書いてあるが,LINEという固有名詞を出していいのか。
【事務局】  確かに固有名詞,一会社のアプリ名になる。あった方が分かりやすいという考え方もできるが,固有名詞でもあるので,検討する。
【座長】  事例集及び今後の協議会の進め方等について,事務局から説明いただきたい。
【事務局】  事例集については,本日の議論を踏まえて事務局で修正をさせていただく。意見の照会もやり方を検討する。また,修正した内容については座長に確認いただいて,なるべく早い時期に冊子にまとめたい。その後,各教育委員会等への配付や文科省ホームページへの掲載を行い,今後,様々な機会を捉えて活用を促していきたい。
【事務局】  多少時間があるので,事務局としては,先ほどの第三者調査委員会とか,報告書をどう分析するのか,そういう議論の続きを若干していただければ,今後の第2回の協議会をどのように進めていくかということにも参考になるので,意見を賜れば有り難い。
【座長】  私も,その議論はこの協議会にとって大事な点だろうと思う。いろいろな角度から新たな視点を提供していただければと思う。
 第三者調査委員会の委員の方々への講義についても出たし,また,それに関わる人材の確保の面でも大変困難を来している状況もある。
【事務局】  国の基本方針においても,第三者委員会による調査は民事・刑事上の責任追及やその他の争訟等への対応を直接目的とするものでないことは言うまでもなく,学校と設置者が事実と向き合うことで当該事態への対処や同種の事態の発生防止を図るものであるとしっかり書いている。要は責任追及,刑事・民事とかにつなげるものではなくて,あくまでも基本的には再発防止の観点だと。加えて,御遺族とか保護者の本当のことを知りたいという気持ちに応えるという意味もあると思うが,そのように整理されている。
 具体的なガイドラインやいろいろな手引を作るべきだという意見もあるが,重大事態の調査の進め方について,かなり詳細なガイドライン,こういうことを調べてくださいということも規定している。確かに葛飾区の事例というのはちょっと特殊で,学校とか,場合によっては教育委員会の方々でいじめ防止対策推進法を理解していないという残念な例も見られるわけだが,第三者調査委員会の委員の方々はやはり弁護士の方々等で,かなり法律を読み込んでいるので,いじめ防止対策推進法の考え方というのは基本的には理解していると思う。葛飾区の事例についても,いじめ防止対策推進法で用いられているいじめの定義は理解しているが,その定義を使うとちょっと差し障りがあるので,あえて社会通念上という概念を持ち出したというような書き方にしている。法律の立て付けを知らないということではないのかなと承知している。 かなり今まで整備してきたわけだが,さらにこれでも足りないとか,こういう観点でもっと文科省の方で検討すべきだ,本協議会で検討すべきだということがあれば,意見を賜りたい。
【座長】  今,事務局から大変難しい問題が出された。今の第三者調査委員会,とりわけ弁護士の方々の解釈と言われるものがあるが,これはあくまでも法律の解釈だ。法律をどう解釈しながら教育の現場へ下ろしていくかということも,考えるべきところがある。それは既に法律の中に書き込まれている。1つの例を挙げると,いじめ防止対策推進法の目的と言われる第1条のところが, 3段の論理構成になっている。まず第1段目は,これは大津市の事件をきっかけにできたものだから,いろいろな子供たちに対する被害がありますと。第2段はこの法律の目的で,児童等の尊厳を保持するためにこの法律はあるのだと。そして第3段目は,よって,いじめの観点から捉えて,どういう施策,対応が必要なのかという,この3つの構成になっている。  教育として一番大きな目標は,児童等の尊厳を保持するというところだ。それに照らして,いじめを切り口としながらどうやって子供たちに人間の尊厳の保持の大切さを伝えていくかが最も大事な指導のポイントとなる。ところが,現場では,まず被害があって,その対策というところへ飛躍してしまい,真ん中の尊厳の保持というところが教育指導として脱落しがちとなる。実際には,被害があるから,どう対応していくのか,対策はどうなのかという,この真ん中を抜いたままの2段構成で現場は進んでいるという状況がある。 そこは定義の広狭にも関わる。定義を広く捉えるのは,児童等の尊厳の保持についての指導というところへ近付けていく一つの手段であると私は押さえている。それを限定的に解釈していくと,児童等の尊厳をむしろ損なっていく状況も生まれかねない。例えば,人格を否定された,尊厳が損なわれたと判断する主体を被害者当人とするか周りとするかでは定義の広狭そのものも非常に幅が出てしまう。いずれにしても,教育的にやっていくならば,やはり大きな教育目標としての児童等の尊厳というのを重視していかなければいけない,こういうところが法律の中にしっかりと書き込まれているが, 見落としが現場にはまだまだある。だから,いろいろな点で法律を解釈し説明しながら啓発していかなければいけない。
【委員】  報告書を見ていると,その子が受けたいじめ,その子の視点からその事案をどのように見ていけるのかといった視点が落ちてしまって,事実認定やいじめの評価がされているところが多い。なので問題点や提言になったときに,その事案を通しての問題点の指摘,提言ではなく,文献から引っ張って提言しているような報告書も時々出てきている。それを見た御遺族や保護者,生徒は,それでまた2度目の被害を受けているというようなところを何度か経験している。だから,どういう視点でこれから調査をしていくのか,亡くなっているケースだったら亡くなった子供の視点,不登校になっているのだったら不登校になった子の視点から,この事実をどういうふうに評価すべきなのかといったところをまず押さえてくださいと,そういうところが抜けているようなことはないか検討していく必要がある。民事・刑事とは関係ないということはみんな分かっていると思うが,そこが,頭では分かっているが,では実際書いたときにこの影響はどうかなみたいなところで,逃げてしまっているケースが多いのではないのかと思う。例えば,亡くなった原因について,複合論が出てくる。もしかしたら複合的な要素があるのかもしれないが,その中にいじめの要素があるわけだから,そうしたら重大事案との関係でいじめはやはり関連性がある。その中で,学校の見落としがあったらその問題点,それから提言では,それを防ぐためにはどうしたらいいのかというところにちゃんと踏み込んでいかなければいけないと思う。因果関係についても,因果関係というとすぐ責任論と結び付けてしまう感じだが,そこは全然違うものだということを最初の段階でしっかりと説明する,あるいはガイドラインの中で踏み込んだものをしっかりと形作っていくことも大事だと思う。そのようなことを今まで議論したことがないので,議論する場をまず作っていただければと思う。  あともう1点,第三者調査委員会で弁護士は一生懸命考えたりしているのだが,ほかの分野で,自分らは第三者調査委員会で何をどのようにすべきなのか,こんなところは疑問で分からないとか,もしそのようなところがあれば是非出していただき,みんなで議論していくことが重要だと思う。  人選に関してだが,最近,精神科医に委員になってもらうのが難しくなっている。そこら辺の状況とか,医師が入っていく意味,入ってみて,こういうところが問題点として感じているとか,もし集約されていることがあれば教えていただければ議論も進むと思う。
【委員】  日本医師会に山口県の方から問合せがあった。第三者調査委員会を作るが精神科の先生がいない,誰か紹介してくれないかということを聞いた。日本医師会に学校保健委員会というのがあり,その中に児童精神科の専門の先生がいるので,その先生に問合せしたのだが,やはり人材が非常に少なく,いろいろなところから声をかけられているので,なかなか推薦を受けられていないというのが現実だそうだ。ただ,今後少しずつ進んでいくだろうということになっている。
【委員】  報告書と離れるが,第三者委員会の委員になるときに雇用契約を交わす。もし,収集可能であるなら,それも集めてはどうか。多くの場合,雇用契約に関しては,書面上曖昧な形でスタートしてしまうのではないか。会議,ヒアリング,調査報告書作成などの1日の時間や具体的な業務内容を十分に,学校や教育委員会と共通理解をせずに,大ざっぱに物事を決めて進むというケースが多いと思う。実務的には,たとえばヒアリングも1日に,数時間と膨大な時間がかかる。その後,ヒアリング結果の整理や文章化にも膨大な時間がかかる。一般的な雇用契約とは,かなり異なる。その意味では,雇用契約書を収集して,第三者委員会の業務実態を分析する意味はあると思う。
 重大事態では自死事案が話題になっているが,自死事案ではない重大事態もたくさんある。その中で,いじめ被害児童生徒本人に聞き取りができないケースが結構ある。また,いじめが起きた時点が,最終年度であれば,期末試験や入試などの配慮で,関係者へのヒアリングが延期され,調査日程がずれこみ年度をまたがってしまう。場合によっては,卒業してしまう。その状況下で,調査を実施するのは,ひじょうに難しい。こうした調査の難しさに関しても,職能団体を通じて収集するのもよいと思う。  これ以外に,日本生徒指導学会にも依頼が来るが,最近は委員の職歴に対して限定条件がつけられることがある。例えば,国立大学法人の教育学部系の教員や教職大学院の教員の場合,現場の教員を経験して大学教員になっているというケースが多い。そうすると,過去に現場の教員になった方は避けてほしいという要求があった場合,人選に苦慮する。
【委員】 推薦団体になっているところに,どういうところで困っているかを次回までに聞いていただく。そうすると,問題点が洗い出せるかと思う。日弁連でもいろいろ議論して検討しているが,ほかの組織もそういうことをしていると思うので,それを調べてもらえれば大分論点が出てくると思う。
【座長】  先ほど第2フェーズに入ってきたと申し上げた。つまり,各学校の基本方針,各組織の機能の仕方。このチェックシートもそうだが,それをどれだけ実効性のあるものにしていくかというところもこれからの大きな課題になる。29年3月に文科省の基本方針が改定されたので,昨年度は少しずつ地方いじめ基本方針の改定が進んでいるが,見ていると,各学校では,まだまだ具体性・実効性のある基本方針になっていないところもある。しかも,組織に関する問題点もいろいろと出てきている。そういうものをいかにしてうまく処理しながら,どれだけ機能する学校の組織にしていくかということも大事な論点なので,何かお気付きのことがあれば事務局へ意見を賜りたい。
【事務局】  今後の協議会の進め方については,本日第2フェーズをどういうふうにやっていくか,重大事態の調査委員会の在り方等々貴重な意見を頂いたので,議論の内容を整理して示し,今後の協議会の進め方について示したい。
【座長】  それでは,今年度第1回の会議を閉会する。御協力ありがとうございました。


お問合せ先

初頭中等教育局児童生徒課