幼児教育の実践の質向上に関する検討会(第4回) 議事録

1.日時

平成30年8月10日(金曜日) 10時00分~11時40分

2.場所

中央合同庁舎第4号館 全省庁共用1214特別会議室

3.議題

  1. 委員からの発表(新山委員、佐々木委員)
  2. 意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

無藤座長、東委員、新山委員、遠藤委員、古賀委員、佐々木委員、中山委員

文部科学省

白間審議官(初等中等教育局担当)、先﨑幼児教育課長、西平企画官、湯川視学官、本田子育て支援指導官、山川専門官

オブザーバー

里見内閣府子ども・子育て本部参事官付(認定こども園担当)参事官補佐、高辻厚生労働省子ども家庭局保育課保育指導専門官

5.議事録

【無藤座長】  それでは、議事に入りたいと思います。本日、お二方の委員に御発表いただきます。まず1番目が新山委員でございますけれども、全国の国公立幼稚園・こども園が加盟し、『幼児教育じほう』の発刊や研修等を担っている全国国公立幼稚園・こども園長会の会長もされてございます。これまでの議論を踏まえまして、本日は、「幼児教育の質の向上に向けて」として、国公立幼稚園・こども園の現状と課題、そして団体として今後取り組む方策についての御発表を頂きます。続きまして佐々木委員から御発表いただきます。佐々木委員は、徳島県保育・幼児教育スーパーバイザーもなさっております。本日は、「園内の人材育成」として、アドバイザーが対処している現場での課題や支援方法についての御発表を頂きます。それぞれの委員に20分から30分程度で御発表いただきまして、まとめて意見交換に移りたいと思います。それでは、まず、新山委員にお願いいたします。

【新山委員】  では、皆さん、おはようございます。このような機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。全国の国公立幼稚園・こども園の会長をしております新山と申します。所属は東京都の港区立青南幼稚園でございます。
 今、とても幼児教育の世界、激動の時代に入っておりますけれども、私は、この6月に総会がありまして、6月から会長職を務めております。6月には総会がありました。そして先月末に新潟の方で教育研究協議会というのがありまして、全国から800人ほどの先生方が集まって研修をしました。それからつい先週は、全幼PというPTAの研修会ですけど、そちらにも参加させていただいて、そちらでも勉強させていただいてきました。
 今回は、国公幼としての現状の課題と、それから今後の方策ということで、お手元の資料のスライドの2枚目になりますけれども、特に幼児教育の質の向上に向けてということで、国公幼として担うべき役割として大きく4つのことに関してお話をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 おめくりいただいて、スライド3ページ目です。まず、質の向上、専門性の向上ということですけれども、研修の充実についてお話をさせていただきます。国公幼では、全国、それから各ブロック――ブロックというのは7ブロックですけれども、それから各都道府県の組織、それから各市区町村、そして各園という形で、真ん中のところにありますけれども、そういう縦の組織があります。それを、左側は行政機関、各区市ですとか県の行政機関による研修、そして大学などの研修と相まって、それぞれの先生方は研修をしているという形になると思います。今、実は国公立幼稚園の数は4,000を切ってしまっております。組織としては少しずつ少なくなってはきていますが、国公幼は、ずっと幼児教育の本質を守りつつ、幼児期にふさわしい教育を続けているものとして、質の向上をずっとリードしてきているつもりでおります。
 その下です。4ページ目になりますけれども、国公幼が行っている研修の具体的な内容をまとめてあります。先ほどちょっと申し上げましたけれども、左の一番上が全国の研究大会、これは総会の中であったものです。研究協議会は、今回、新潟でありましたけれども、6つの分科会に分かれて、その中には園長等の管理職に向けての経営に関するものもありましたし、各課題に対応したものもありました。それから、理事会とか都道府県のものもあります。それから、一番上の真ん中に7ブロックごとの研修もあります。きょうも朝電話で話をしてきたのですが、東海・北陸のブロックの研修会が石川でありました。その様子を聞いてきましたけれども、幼小の接続に関してとてもすばらしい研修をしていただいたと。特に小学校の先生で幼児期に育てておきたい「10の姿」をとても上手に生かした実践をされている方がいらして、その話を聞くことができたということで、是非それを全国に広めていきたいという話をしたところです。それから次に、東京都の例があります。これはまた後ほどお伝えしますので、省きます。それから、各市区町村の中でもいろいろな研究会があります。東京ですと、23区、それから日野などに公立幼稚園がありますけれども、区幼教とか区教研という名称で区の先生方が全員参加する研修会があります。その中で若手は実践事例を持ち寄ったりとか、中堅は、協議会をリードしたり、話をまとめていったりとか、この会ではどんな話合いをしようかというような形の研修をしたりしています。
 おめくりください。5ページ目は、それぞれの園で一般的に行われている研修の内容例を挙げました。ここはもう、どこの園でも当たり前に行われている、公立、私立問わずと思います。日々の研修は実践をして、すぐそれがPDCAサイクルで日々回っていきますので、幼児理解を深め、環境構成はどうだったか、教材はふさわしかったかということを日々精査しながら、次の日の保育に生かしているという形です。それから、これも後ほど出しますけれども、保護者対応が結構今、難しい課題になっております。それも実践しながら話を深めていったり、理解を深めていったりとかいうことをしています。それから、園内研究、これは公立幼稚園では各地でいろいろな形でそれぞれの課題に対応した、それから将来的なことも考えながら対応して研究を進めて、実践の質を高めているところです。
 下に行きます。国公幼の教員は、これ、とても大事なことだと思っていますけれども、教育公務員特例法というのがありまして、それによって研究と修養に努めることが義務付けられています。教育公務員となるに当たって誓約をしておりますし、研修への意識がとても高いです。当たり前のこととして研修を行っています。それから、任命権者、行政側も、各都道府県の委員会等に、公立の幼稚園等の新規採用教員研修ですとか、今回名前が変わりましたけれども、中堅教諭等の資質向上研修などの実施が義務付けられております。キャリアに応じた多様な研修の機会が保障されているというところが、我々国公幼の強みであると思っておりますし、ここが本当に全ての教職員の方々、公私立幼保含めてできていかないといけないんじゃないかなと思っております。ただし、一番下のところですが、各地のいろいろな研修がそれぞれどういうキャリアに対応したものになっているかですとか、具体的にどんなものがあるかというのがきちんと一覧で見渡せるような体系化がされているとは言い難いところがあります。ですので、ほかのところに、あれをまねしてやってみるといいなというような情報交流がちゃんとできているとは言えないところがあります。
 そこで、次のページに行きます。国公幼は全国組織ですので、先ほど冒頭で私が東海・北陸のお話をしましたけれども、全国でいろいろな研修がされています。研究大会もあります。そういうものに関していろいろな情報を集めることができます。ですので、次に、その下に出ておりますけれども、育成指標というのを各地で作らなくてはいけないということになっておりますが、そういうものを踏まえながら、研修に関してどんな研修が各地で行われているかというのを集約して、それを各地区にまたフィードバックするというようなことを来年度から実施できるように今から準備をしているところです。それを基に各地区での園長会が望ましい研修の体制とか内容を明らかにして、国公幼主催の研修を改善していったり充実を図っていったりしたいと思っています。それから、国公幼だけではやはり十分ではありませんので、それを行政の方にも「こんなふうにしたらどうですか」というような形で提案していったり、協力を依頼していったりということで、各地の研修体制の整備や研修内容の充実を図っていきたいと思っています。
 下の例ですけれども、これは東京都の文京区の例です。各地で、都道府県で作ったものがおりてきて、各区市でこういうものを今作っていると思います。1年から3年目の人たちが基礎形成期、それから4年目からが伸長期、10年からが充実期、それから経営参画期、そしてマネジメントに関わる副園長、園長のところとなります。
 1枚めくっていただくと、お手元の別の資料の方をご覧ください。パワーポイントの資料ではなくて大きい方をご覧ください。それのめくっていただいたところに、ちょっと手描き風の切り貼りした感じのものがありますけれども、これは文京区の園長先生、都の園長会の会長の先生が個人的に現状を見渡せるようにということで作ってくださったものを資料として頂きました。区のもの、それから都のもの、それから東京都は特別区人事・厚生事務組合という研修を取りまとめてくださっていたり、採用をつかさどっていただいている組織がありますけれども、そこの研修などがたくさんあるんですが、その研修会が現状の先生や管理職に対してどういうふうに割り振られているかということを分かりやすくまとめてくださったものです。個人的な見解なんですけれども、伸長期、1年目から3年目の基礎形成期というところはかなりしっかりとあるんですが、この4年目から10年目のところが実はちょっと薄いんじゃないかなと個人的には思っています。プラス、若い先生たちは、女性が多いので、この時期が実は結婚・妊娠・出産というライフステージに関わる、とても女性にとっては厳しい時期と重なってしまう、この時期のフォローが実は抜けてしまうようなところがあります。そこがやはり女性が多いこの職場のとても難しいところかなと実は思っています。
 次に行きます。パワーポイントの資料の方にお戻りください。5枚目、10ページのところをお願いします。研修の充実についての今後の方策です。これは今のものとはまた別の話ですけれども、キャリアに合わせた研修の充実を実現していきたいと思っていますので、ここにいらっしゃいます無藤先生や神長先生も関わられている保養研というのがあります。キャリアに応じた新採とかミドルリーダー、それから管理職のいろいろ調査をしてくださって、研修ガイドなどもこのようなものを作っていただいておりますけれども、その保養研の基礎研究の資料の収集に協力をさせていただいています。今後もさせていただきたいと思っております。今年も都の園長会のときに、そのアンケート調査を配っております。それから、何年か前に新採教員の指導資料が出たときにも、その当時の保養研の鈴木みゆき先生に来ていただいて、我々は新採をどういうふうに育てていったらいいかというようなことを園長会としてお話を聞いて、「ちょっと長い目で見てください。3年目ぐらいから何とかなっていきますので、そこまで辛抱強く育ててください」というようなお話を聞くことができて、園長としてもとても目からうろこだった覚えがあります。研修の充実についてはこのようなことを考えていきたいと思っております。
 それから、次のページに行きます。6ページ目、11ですけれども、幼稚園教諭等の専門性の向上の中で、免許の上進ということを一つ現状と課題として捉えております。今の若い先生方は、幼稚園一種を持っている方がほとんどですし、小学校の免許を持っていたりとか、司書の免許を持っていたりとか、特別支援の免許を持っていたりする先生も時々いらっしゃいますけれども、今の40代中盤から上でしょうか、管理職を目指すぐらいの中堅以上の方々の中には二種の方たちがかなりたくさんいらっしゃいます。ここにありますけれども、68%となっております。
 その下です。現状の幼稚園・こども園の課題が実に多様化していますし、複雑化しています。特別に配慮が必要なお子さんが増加しています。、ここで改めてこの資料のために書き出してみて愕然としたぐらいの数字なんですけれども、全国の国公幼の在園児数がこの3年間で1万人、2万人という形で減っているんですが、特別支援の子供の数がむしろ増えていると。27年から28年に関しては1万2,000人減り、その次の年は1万5,000人減っているのに、特別支援の子供の数は増え続けています。ということで割合も増え続けております。中には、在園児のうちの10%を超えているというような都道府県もあります。園によっては4割ぐらいそのような配慮が必要なお子さんという園もあり、普通に今までの発想でやっていたような運動会ができないかもしれないというような話を園長から聞くことすらあります。その他にも、外国籍のお子さんが増えてきていますし、アレルギーへの対応が必要なお子さんもすごく増えています。それから虐待、それから保護者の方たちを支えなくてはいけない、コミュニケーションが難しい保護者の方もいらっしゃいます。このような課題がとても多くなってきていますので、もっと勉強しないと、今の幼稚園・こども園で実際に運営や経営に携わっていくのは難しいと感じている先生方がたくさんいらっしゃいます。
 次のページに移ります。その方たちが今の課題にしっかりと取り組みたいという意欲が出てきています。更にその機運を高めていきたいですし、その方たちが、全ての先生方がそういう勉強がしっかりできるような体制を作っていくように、行政ですとか養成校などにも、お願いしていきたいと思います。夏休みなどに講座とか開かれてはいますけれども、「予約をとるのはとっても大変なんです」「この時間に申し込まないと、すぐ一杯になっちゃうんです」という話をよく聞きますので、そういうところの便宜が図れるように働き掛けていきたいなと思っております。
 次、学校評価の普及推進です。これも質向上に関してはとても大事なことです。カリキュラム・マネジメントのベースになるところですけれども、関係者評価のところは、国公幼では、7割以上となっております。第三者評価はまだまだ努力義務ということで少ないですけれども、国公幼でも自己評価はもちろんほぼ100%ですが、実際これ、やったから、それが次年度の保育にしっかり生かされているかというところがちょっと疑問だなと思っています。行政にも報告書としてあげますけれども、行政に上げたときに、それが行政とのコミュニケーションツールとしてきちんと機能しているかというところを仲間と話をしますけれども、何かちょっと音沙汰ないねというようなことが実はあります。よりよい保育・連携を目指し、それから行政とも力を合わせていくために、うまくこれが使えるような、使われるような方向に持っていきたいと思っております。
 そこで次のページに行きます。カリキュラム・マネジメントが機能して教育内容の改善が実現できるように、この自己評価とか関係者評価を活用して保育の質を上げることを推進し、評価の成果が実感できるようにするということで、先ほど無藤先生のお話にもありましたけれども、『幼児教育じほう』、こういう冊子です。きのうも来年度の企画会議がありましたけれども、来年度の企画としてもこの学校評価のことを取り上げようという話になっております。それから、第三者評価に関しては、予算も伴いますので簡単ではありませんが、その点に関しては各自治体に働き掛けていきたいと思っております。
 それからもう一つ、これも大きな課題とやっていきたいことがあります。保護者等への幼児教育理解の普及ということです。現状においては、各園において日々、保護者の方たちと、担任や私たち園長が保護者の話を聞いたりとか相談に乗ったりということがたくさんあります。保護者の方たちは、皆さんが思っている以上に子育てに悩んでいらっしゃいます。本当に、「えっ、何で、そんなこと、子供にできるわけがないじゃない」というようなことで、「だって、うちの子、ほか子と違うんです」と悩んでおられます。「当たり前でしょう、ほかの子と違うに決まっていますよ」と思いますけれども、ちょっとほかの子と違うだけでも、「うちの子だけできてないように思えて、ちっともかわいく思えません」というようなことをおっしゃる方が、たくさんいらっしゃいます。でも、そういうことを言えるようになればまだいい方で、そういうことが口に出せないで、内にためたままという方がたくさんいらっしゃいます。そういう方たちもいらっしゃいますので、子育てって実は楽しいことなんだよ、親子で一緒に関わるとこんな楽しい世界があるよということを伝えていきたいと思って、国公幼としてもたくさんの事業をやっております。
 お手元にリーフレットを、ブルーと緑色のものをお渡ししましたけれども、これも10年以上やっている事業です。全国調査を行って、この緑のものは、このときは手先・指先のことを調査しました。なかなか手先・指先を器用に使えない子が増えているということで、それに関しての実態調査を行いました。その資料と調査結果と、それから、中を開いていただくと、各ブロックでそれに関わるキャンペーン研修会というのを行っています。その研修会で、これは本当に各ブロックですので、それぞれの会場では参加できる方は少ないんですけれども、これをこういう形で資料にすることで、各園で参考にしてやっていただける形になっております。
 さらに、その資料として小さいものがありますけれども、これは手先・指先を使ってこんなことができるよという、親子で遊べる遊びの教材として、資料として作っているものです。これもたくさん印刷をして各園に配っているものです。昨年度は運動遊び、これは、10年前に同じような調査をしましたので、その10年後どうなっているかということを調べ、そして昨年度、各ブロックで研修会を行いました。今年度ももう九州ブロックでは7月の末にブロックのキャンペーン・研修会を行ったところです。そして今年度中に、もう9月初めには資料ができ上がるんですけれども、今度は親子で楽しく活動ができるようにということで、親子活動を支援する教材を作成中です。今、僕が持っているこの、1日の生活をデザインしようというものです。どこかの体操教室に行かなくても、日々の生活の中で体を動かす時間って実はとれるんですよというようなことを、カレンダーのそばにでも置いてもらってチェックしてもらえるようなものを作って、これを全国に配ろうと思っております。
 保護者の方たちの幼児教育への理解は高まってはいるんですけれども、なかなか正しい理解は十分できているとは言えません。先の見えない世の中で大人も不安ですけれども、保護者の方たちも、我が子が大きくなって大丈夫かなという不安をとても抱えています。実際に子供と関わる機会が少ない方が多いので、子供のちょっとしたあやし方すら知らないという方がたくさんいらっしゃいます。頭では分かっているけれども、できないということで、次のページに行きます。
 保護者や地域と密着している国公幼の特性を生かして、保護者の方たち、それから地域や小学校の先生たちも含めてですけれども、幼児教育の意義や重要性を周知する中心的役割を担っていきたいと思っております。各園で保護者会などで伝えていくということが方策の1。方策2は、今お話ししたようなキャンペーン・研修会です。それから、その次も今お話ししたものです。それから3つ目ですけれども、そのキャンペーン・研修会の中で、例えば今年度は運動に関する体力向上のことですが、その中で、各地で体を動かす遊びを親子で一緒に体験するということをやっていただくんですけれども、来年度からは、できればその中に幼児教育というのはこういうことを大事にするんですよ、子供ってこう育つんですよ、というようなことを講演会のような形で取り入れることで幼児教育理解を深めていきたい、深める手助けをしていきたいと思っております。
 最後になります。ここは幼小接続のことです。国公幼は公立が多いので、地域の公立の小学校との連携がとても強い歴史があります。それから、幼小の兼務園長先生、それから、小学校の校長先生を退職されて、今、園長先生をされているという方もたくさんいらっしゃいます。約3割いらっしゃいます。私は専任の園長ですけれども、地域の校長先生との交流の機会もとても多いので、幼小の連携がとても進めやすくなっております。それから、幼稚園と小学校との人事交流も、国立や山口とか前橋とか幾つかの県でやっていて、とてもいい成果を上げていると聞いております。それから、幼小の合同研修会、保幼小というのもありますけれども、そういうところで公立の幼稚園・こども園が研修会の実践発表ですとか、それから話合いの進行に関するリーダーシップとっていくというようなこともやっています。
 次のページに行きます。これは都の園長会の方で28、29年度で研究をしたもののまとめですけれども、幼小の連携・接続に関して、やはり公立ですので小学校への働き掛けがしっかりできるし、その成果が上がっているということが結果として出ています。小学校の校長先生と幼稚園の園長先生との温度差は少しあるんですけれども、ここを更に埋めていくことが課題かなというふうにも思っております。
 今後の方策としては、地域に密着していますし、小学校との連携が強くできるということを生かして、幼小連携とか接続のコーディネーター役として、10年目ぐらいまでの中堅になりますけれども、その先生方がしっかりとそういうことも意識しながら、実践力を高めていけるような研修も作っていけるようなことをやっていきたいなと思っております。それから、専任園長と兼任園長それぞれの力量を、力を合わせてということもやっていきたいと思っております。全国大会などに行きますと、行政で幼児教育に関わった先生もいらっしゃいますし、その方たちの「小学校教育の前の幼児教育がこんな大事だったって、すごくよく分かりました」という声を今回もたくさん聞きました。「今から小学校の校長をやり直せたら、もっといい校長ができるのに」とおっしゃる園長先生もいらして、「惜しかったな」とおっしゃっていました。そんな声があちこちで聞かれるので、それも国公幼の強みだなと思っております。専任の園長は専任の園長としてしっかりと力を発揮しながら、そういう方たちとの連携を深めてやっていきたいなと思っております。
 最後です。国公幼が全国組織ということを生かしながら、関係の皆さんとの連携を強化して地域の子供たちを育てているという特性を生かした取組をしていきたいなと思っております。保護者の方たちを支えながら地域の子供たちを育てていくような、幼児教育の質の向上を実現していきたいと思っております。
 早口になりました。どうもありがとうございました。よろしくお願いします。【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、佐々木委員にお願いいたします。

【佐々木委員】  失礼します。私どもの徳島県のアドバイザー事業というのは、国立大学の鳴門教育大学とその附属幼稚園が三位一体となって進めているという特徴があります。先にその仕組みについて御説明して、そして具体的な研修の内容ということについてお話を進めたいと思います。
 まず、29年度の様子なんですが、これを見ていただいたら分かるように、私立幼稚園が9園、そして公立が100園以上ということで、公立の幼稚園の大変多いのが本県の特徴であります。
 ここにあるのですが、就学前、幼稚園で過ごす子供たちの数が55.5%と。以前は70%近かったのですが、減ってはいますが、それでもまだ多いということが言えます。市町村によれば、3歳まで保育所、そして4歳、5歳が幼稚園という、もう既に一元化がなされているようなところもたくさんあります。認定こども園はこのように増加傾向にあります。
 保育所が172園、そして幼稚園は公立が、平成30年度、今年度は99園ということであります。一番下の赤で書いてございますが、専任園長というのが少ないです。つまり、小学校の校長先生が兼任でやっておられるというのが70%近くあります。そのようなことで、学級数が減ると自動的に専任制がなくなるというようなことで、増えている傾向にあります。
 これが徳島県の幼児教育の推進体制であります。ここにありますように、徳島県のこの事業について大学と附属幼稚園が全面的にバックアップをしています。全国に49の附属幼稚園があります。神奈川県等ない県もあるのですが、どこの県にも配置されているのは強みだということで、私たち附属幼稚園も役に立って、汎用できる研究・研修ということで進めております。本園もここ3年はキャリアステージごとの育ち合いをいかに進めていくのかという県の課題である内容を研究手段に取り上げて進めているような次第であります。
 ちなみに、本園では、新採研から園長研までの全ての研修を行っておりますので、徳島県の幼児教育のプランニングから研修の中身まで一緒に進めていっておるようなところであります。本県は縦割りの古い行政の業務分掌形式の県です。隣の高知県なんかは一元化されておるのですが、徳島県は公立幼稚園が教育委員会、そして保育所を管轄するが次世代育成・青少年課、あと経営戦略部総務課が私立幼稚園を統括しているのですが、このように3つがそれぞれやっておったのを、今回のアドバイザー事業では教育委員会が中心となって、幼稚園だけじゃなくてこども園や保育所もということで進めていっておるのですが、なかなか縦割りの問題というものが解消できません。だから、今、教育委員会が文科省の指定を受けてやっておるのですが、次は次世代育成・青少年課が中心にやって進めていったら・・・というようなことで、それぞれ駆け引きがあるようなところも実態にあります。
 本県の保育・幼児教育アドバイザーというのは、ここに書いてありますように、県内に30人の元所長さん、元園長さん、あるいは特別支援の経験先生方ということで配置しております。ここの私たちの強みというのは、経験者なので具体的なアドバイスができるというところが利点でありますが、逆に、自分の経験論に偏ってしまうというような弱みもあります。それとか、「私の若いときはもっと大変だった」という根性論になってしまうようなこともありますので、我が国の乳幼児教育施策の方向性や今回の3法令の改訂趣旨・内容ということをしっかりと理解するために、積極的にアドバイザーの先生方も学会や全国大会に参加していただいたり、本園の研究会にも参加していただくというようなことでやっております。それと、徳島県が目指す人材育成の指標について理解していただくということで、スーパーバイザーが企画した研修にもたくさん参加をしていただくということで、アドバイザーの養成ということについても心掛けているところです。
 本県の課題はここに書いてあるとおりなんですが、10年くらい前からかなり園長先生方が大量に退職されていて、若い先生方を、計画的ではあるのですが、たくさん採っています。その人たちがちょうど中堅くらいになるのですが、割と若い層が多いということが課題です。従って、いろいろな保育の専門性が伝達しにくいということが課題です。それと、教科書のような主たる教材を持たない環境を通して行う教育というのはすごく難しいです。そのことをどうやって研修の中で力を付けていくのかも課題です。それと、今年は3法令の実践の初年でありますので、そのようなことについても周知していく必要があります。この写真はスーパーバイザー会議での内容なのですが、こういう戦略を練って進めていくというようなことで、今、昨日も御指導いただいたんですが、「訪問指導の手引き」とか「Q&A」ということで、アドバイザーの方がそれを指標にしながら育成が進んでいくような、そういう「手引き書」を、今、作成しているようなところであります。
 その次ですが、これが育成指標のモデルです。字が小さいので、皆さんの机上に置いてございます。こういう指標については、実際、研修の後の先生方へのアンケート調査とかいうことで、徳島県の実態に基づいています。
 例えば経験年数が1~5年の人たちの悩みというか、課題というのは、何をどうするのかという具体的な遊びや、活動や、学級経営や、声掛けなどが大変多い傾向にあるのが特徴です。
 その次、6~10年の先生方は、そういうことに加えて、連携・接続のことや保護者との対応等も増えてくる傾向にあります。「10の姿」の具体的な捉え方について勉強したいとかいうようなこともあります。これは後でその研修内容としてお話をさせていただきます。
 ちょうど中堅の11~19年のこのような内容にあるように、かなり研修の内容、連携・接続とか保護者との対応というようなマネジメント関係のことについての関心も増えてきて、そしてこのような20年のキャリアがかなり積み重なっている、現場で言うと主任レベルの人たちのようなこんな問題意識に発展していきます。
 私たちの徳島県の保育・幼児教育アドバイザーによる現場の支援の方略ということでは、地域の差がありますので、各園の個性と、それと職員の違いということを考慮しながら、園長や所長のリーダーシップが発揮できるということをまず1番の課題にしています。自園の人は、園長、所長が責任を持って育てられる。そのために、園長、所長にどのような研修をしたらよいのかということです。それと、若手を大切に育てるということを狙いにしながら、実はその上のミドルの方やミドルリーダーの人たちが相互作用の中で育ち合いができていくというような、そんなことも考えています。
 冒頭に申しましたが、ここまで育ってこいという上から目線ではなかなか若い先生方は育たないし、いろんなことを言うと、自分の課題が露呈されて、指摘されているというような、そんな意識もあります。特に今年度は保育所からのアドバイザー要請の要望が大変増えて、もう30件も今の時点でできているということですが、当初は、指導という言葉に大変に大変嫌悪感があって、「指導は結構です」と、指導されることについて大変な身構えがあったというようなこともあるんですが、それは保育所の先生方だけじゃなくて幼稚園にも言えることです。幼稚園は、学校訪問があって、何年かに一度はそのようなことについてならされてはいるのですが、でも、現場では相変わらずそういうことがあります。だから、現場支援の方略はこんなふうなことがいいのですよというような、そんな提示の仕方ではなくて、附属幼稚園ではこんな研修をやっていますというようなやり方を提示することで、アドバイザーの先生方も、現場の先生方や園長先生方も参考にできるような、ちょっぴり緩い、優しいやり方をとっておるというのが特徴であります。
 そういうことで、本園の研修のやり方ということで、県の課題1と2を伝えて、このような研修をしていますということで、本園の人材育成の戦略についてお話をしております。先ほど30人のアドバイザーの先生方のキャリアを見ていただいたとおり、かなりベテランの先生方で、私の姉よりも年上というようなことなので、私たち自身も上から目線ではなくてというようなことをやっています。でも、保育の専門性について大切なことは欠かせないので明確に示します。例えば子供が縄跳びをします、縄跳びをして1、2、3、4、5なんて数えます。きのうまで3回しか跳べなかった子供さんには、「5回も跳べたじゃん」なんて言うと、やる気満々になってもっと頑張ります。きのう7回も8回も跳べていたのに気が焦って5回で詰まった子には、「5回も」とか言いません。「5回、残念」の顔をすると、「先生、もう一回見ていて」なんて言って、11回も跳べます。そうすると「11回も跳べたじゃん」なんて言います。「も」たった一言の言葉かけですが、そうやって私たちは子供の様子を見て直感的・身体的に応答していきます。が、果たしてその直感的・身体的な技を磨くことだけで保育をやっていていいのかというようなことです。
 うちのかわいい杉山君は私の教育実習生で愛弟子なのですが、「杉山君、幼稚園の先生も、身体的な直感的な、そんな反射神経だけで保育やっていたらあかんよ。概念的なことと嫌うかもしれないけど、もっとお勉強もやっておかないかん。新教育要領とか変わったし」とかいうようなことを言うと、「じゃ、偏差値が高かったら保育はできるんですか」とかって言うんです。彼はかわいいんです。「でも、杉山君、偏差値が低かったらいい先生ってわけでもないんぞ」って、僕、教えてやるんです。そうすると、「何でお茶大の附属の先生方、3文字なんですか?」とか食って掛かるんです。「伊集院とか上坂元とかいって、坂元ではいかんのですか。何で上が付くんですか」。自分が杉とか山とか田舎くさい名前なので。「杉山君、落ちついてくれ。わしも佐々木って3文字やぞ」って。「園長先生は真ん中ちいちゃいじゃないですか」とかってキレんです。かわいい子なんです。そういう保育の専門性ということでは直感的な応答性も概念的な知性も、その両方を磨いて進めていくことが大切というようなことをいかに現場の先生方あるいはアドバイザーの先生方に共感してもらって進めるかということが課題になります。
 実際、幼稚園の生活では、このような指導計画あるいは環境計画等、様々な計画があります。そういうものを実際、保育では生身の保育者の先生が実践するのです、それがあることと保育がよいこととは違うので、それをどうやって身体的なレベルに落とし込んで具体化できるかということが課題になってきます。
 動画、お願いします。
(映像上映)

【佐々木委員】  で、若い先生方の発達の過程というのをビデオ等で撮って、これがさっきの正に杉山君の1年目の5月、先生になって1か月の頃なんですが、見せながら、何が課題で、どういうふうに育てていくのか、あるいはそのことについてどうやって私たち園長、所長がサポートしていくのか、そんなことについてお話をします。
 5歳の子供たちなので、すごく自分たちでいろいろと遊びを展開していくのですが、先生は、その中で子供たちが獲得している学びとか試行錯誤の内容とかは、もう一つおぼろげながらの様子です。彼はくしくも就職して1か月ぐらいたって言っていました。「遊ぶことについては自分は得意だと思っていたけれども、お金をもらって遊ぶということについては何て難しいことだろう」ということで、1年目の壁ということを経験しています。で、子供たちがやっていることを記録して、そこから考えてみようというのですが、何を記録していいのかが分からないということで、園長がビデオを持って映して、「こういうことって子供って試行錯誤しながら学んでいるよね」とか、「このときの杉山君ってちょっとおずおずとしながらも、実は子供にとってはいい存在で、先生に見せながら説明しようと思っていろんな試行錯誤してよかったんじゃないの」なんていうようなコメントを付け加えながら、いいこと探しのような形で若い先生を育てていきます。
 彼の様子を今回例にするんですけれども、だんだんいろんなことが分かり始め、2年、3年たつと、自分が分からないことが分からないというようなことが分かってきて、環境を通して行うとか、援助をするとか、言葉掛けとは、あるいは環境を構成するとはというような、そんなことが分からないポイントが分かってきた。
 で、ミドルリーダーのちょっと先輩たちが、子供や保育を見たり、語ったり、記録したり、振り返ったりするというようなことを援助していきます。園内研修をやって、そのことについて決してけなすような形ではなくて、一緒にカンファレンスをしたり、あるいは公開保育で他園と交流して学んだりとか、あるいはアドバイザーの外部の人材に来てもらって、いろんな頑張っているところとか課題になるところを提案してもらったりなんていうようなことをやります。
 特に彼は部屋が汚い子だったので、先輩に「それ、何とかならんの」とかって言いわれながらも、彼はまず掃除をしようということから具体的な手掛かりをつかんでいきました。で、先輩保育者が、彼ができる「きれいにする」という抽象的なものから、具体的に何がどうだったら彼の周りの子供たちが清潔な保育室で遊びが楽しめるのかなんていうことで、彼はごみ箱を増やすなんていうことをやりました。大変たわいもないことなんですが、ごみ箱が2つあるんですが、自分のお金で買ってきて、そして置きます。そうすると、子供たちの様子が変わってきたということと、それと、ちょうどいい場所ってとか、あるいはちょうどいい量ってなんて考えて、いろいろ環境に心を込めて保育を進めていく。そうすると、「子供の手頃感とか子供の実際ということについて何か分かり始めてくると、保育を考えるのが面白くなってくる」ということを言っていました。そうすると、子供たちに、「先生はこんな気持ちでごみ箱買ってきたんだ」とか言って向き合うんです。実は、購入先は100円ショップなんですが、そうすることで子供たちと共感して、そして気持ちのいい生活が展開されるなんていうようなことで、だんだんごみ箱以外にもいろいろな保育が広がってきました。
 例えば、花壇の環境を考えるときにも、子供たちがやってきて最初に目に付くところに花を植えて、花束ができたりとか、あるいは色水遊びで使うような姿を予想します。、そんなビオラとかはみんな花がなくなってしまったらすぐどけられるようにプランターで植えたりとか、あるいはキャベツを身近に置いて、アオムシが生まれたらそれで観察できたりなんていうように考えて、こういう環境計画を自分で考えて、次、夏野菜を植えられるようにちょっと間をあけておくとか、放っていたらミミズなんかも出てくるだろうとか、そういう様々なイメージ、保育のイメージや予想ができるようになりました。
 そうすると、子供と実感のこもった事例が生まれて、事例が書けるようになりました。これは、そのアオムシがキャベツのところでふんをしているのを見て、子供と一緒に「卵かな、うんちかな」なんていうふうにやっているんです。僕が見ると、どう考えたって幼虫は子供ですから、子供が子供を産めるはずないのでおかしいなと思うんですが、ずっと子供と観察しています。子供が「うん、お尻から出てきた。これはうんちだったんだ。私は卵だと思っていたけど、違っていた。うんちだ」と、ハナが興奮ぎみに話すと、とてもうれしそうで、その後も登園するとすぐアオムシの様子を見に行くといって、かえって私らのように薄々知っていながら子供たちの様子を見るのと、子供と同レベルで本当に知らない杉山君がアオムシを見るのとでは、全然子供の感激ようが違うから、むしろそっちの方が教育的によかったんじゃないのかなんていうことをちょっぴり皮肉も込めながらやっていきます。
 そうすると、環境と関わる中で子供たちと心が触れ合って、いろいろなことを学んでいきます。先生が環境に心を開くと子供たちも環境に開くという、そういう相乗効果が生まれてくることで、子供とか環境に関わる保育の生活というのがすごく充実感を持って展開されるようになりました。
(映像上映)

【佐々木委員】  これがその杉山君の5年目の様子です。わざわざお尻を打ちそうなの手洗いの角っこのところに位置します。縄跳びの先は何とホースリールに巻いてあります。この日、初めて長縄跳びを跳びます。で、回すときに、子供たちの様子を見ながら、どれぐらい跳べるかななんていうことを考えながら跳んでいます。馴れない子供は縄だけではタイミングが分からないので、先生も続いてジャンプして跳んだりとかして、子供が何かを手掛かりにできるように考えています。子供たちがちょうど跳んだらいいところをマーキングしています。2年保育の4歳児で、入園してしばらくたったときの様子です。
 で、子供たちが跳んでいる友達の様子が分かるように、あそこで待つ椅子を置いたりとか、部屋の様子とか外の様子が見えるように、わざわざお尻を打ちそうなあんなところに先生が位置取りしたりとか、保育ということを考えて自分がどこの場にいてどんなふうにするといいのかとか、あるいは子供を見て、この子なんかは全然跳べない子なんですけれども、その子たちがどうやって縄を跳ぶ楽しみ、喜びというものが体感できるのか。縄に合わせるというよりも、完全に子供に合わせて、もう無理やり跳べるように跳ばすんですが。
 こんなふうに子供たちの様子を先生が一生懸命心砕いて、跳んでいるのをビデオで撮って、「何か君ってすごく保育のことについて上達したよな」とか、「子供のことをすごく見えるようになったよな」なんていうことを伝えて評価していきます。
(映像上映)

【佐々木委員】  このように個々が見えるようになると、全体でやる学級活動とか一斉保育の技術も上がっていきます。これは、何とこの日初めてタタロチカというフォークダンスを子供たちに指導している様子です。指導の方法はめちゃくちゃなんですが、先生のことを信頼して一生懸命分かって、フォークダンスができるようになりたいというけなげな子供との関係がすばらしいと思います。
 映像は2年保育4歳児の子供たちです。発達でいうと、スライドステップができたり、ギャロップができたりとかいうようなところです。子供たちがスキップができるようになる前のプロセスとしてしっかりと捉えています。だんだんミドル保育者として学んでいって、子供と自分との関係だけじゃなくて、子供の発達とか、あるいはスキップに至るまでの子供たちへの指導のプロセスとか、そういうようなことも知るようになってきています。
このように、それぞれの先生方のキャリアステージに合わせた指導ということをアドバイザーの先生方にもしていただくようにお願いしています。特に今回の教育要領等の改訂のことについては、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿ということをしっかりとベースに置きながら教育課程を見直す。あるいは、5歳はそういうことをしっかりと捉えながら指導の方略を考える。3歳、4歳の人は、そういうふうなことが育っていくプロセスをしっかり捉えながら日々の保育を進めていくなんていうような、そんなことをやっていっています。
 これは資料にないのですが、そのための本園の方略ということで、こんなことをやっていますなんていうようなことをお話ししています。教育課程を見直して、幼小の接続期の教育課程についてもう一回見直すというようなことと、それと、うちは小学校も入学当初、幼児の姿を児童の姿に置き換えて、児童の姿、狙い、内容というような幼稚園的な指導の方略ということを参考にしながら、1年生のそんな指導計画を書いてもらっています。あと、5歳の1月の例えば指導計画でありますと、このように「10の姿」というのが具体的にその月のどんなところに反映できているのか、あるいは、ないということについてはどういうふうに考えるのか、あるいは、そのことについてできるような環境についてあるのかなんていうことも考えながらやっていきます。
 今回、「10の姿」というのが個別に取り出されて、「今から言葉による伝え合いの保育をするから、みんな手をお膝ね」みたいなへんてこなことにならないように、総合的な遊びは活動の中でどうするのかというのが難しいところです。だから、こんなふうに事例でそのことについて深く掘り下げるようなことをやります。これは、ミドルの中堅の先生方の研修です。1月のお正月遊びの環境ということで、すごろくとかカルタとか数えたり文字に親しんだりするような環境があります。そうすると、子供たちが活動で展開します。子供たち、この事例では、ルートが2つに分かれていて、8、9、10って順番にすごろくをつなげていっているのに、別の子は、二道に分かれたら「8や9や10が2つもあるのはおかしい」とかいうようなことのトラブルがある、そんな事例です。そこで子供たちは抽象的な数というようなものについて知っていくようなことということが経験されているような様子です。
 時間があれなので飛ばしちゃうのですが、あと、数量図形についてですが、保育の中で数や量は分かりやすいです。例えば縄跳びでも、全部で10回跳べたとかいうのは集合数ですし、「3番目だから待っててね」なんていうのは順序数です。でも、図形というのは一体何ですかということで、すごく難しいです。丸、三角、四角とかになる前に、こんなハート形とか卵形とかチョウチョウの美しい羽の様子とかを見たり、あるいはケーキやプリンを作って形づくったり、物をぐるぐる回して形を変貌させるような、そんな経験をしたり、あるいは縦とか横とかいう空間意識を持ってお友達とぶつからないようにしたりとか、色紙のような真四角を2つに折って二等辺三角形を作って遊んだり、またそれを小さくすると相似形のちいちゃな三角形ができたりとか、そういういわゆる算数・数学につながるような経験というのは一杯あるんですが、日常の中で見落としているようなことがあります。
 だから、ミドルの人たちにはそういうこと、例えば三次元の世界のことしか子供たちは見ないんですけれども、影とか、あるいはスタンプとかいうと二次元の世界に目が移るようなことを経験したり、あるいは段ボールの中に入ったら必ず壊してばらばらにして展開図を作ってくれたり、あるいは豆まきのときには「升を作ったら豆をあげる」と言うと、子供は命懸けで升を作ったりとか、それは平面を立体にする経験なんですが、そういうことって一杯あるよねというようなことで、指導計画の中にそれが位置付くように、あるいは夏野菜なんかもそうです。同じようなものを集める、同じような形のものを集めるという、そんな仲間分けは集合概念の始まりにつながります。だから、先生方も、製作用具ワゴンも考えて行います。書けるものという仲間の中で油性マジック、水性ペン、色鉛筆。切れるもの、はさみとか、ギザギザばさみとか、段ボールカッターとかいうようなこと。あるいは、みんなが一斉に一杯使わない共用のもの、例えばセロテープカッターとかだったら、5個ぐらいが適当です。5だったら指の数ですから、ぱっと見てぱっと数が把握できます。何個足りないかぱっと分かるので、そうやって数量とか図形に関係するようなことを子供たちが自然に経験できる。積み木なんかもそうです。積み木が一杯集まると家やお城になりますけれども、それは全体と部分の単位、ミリが10個集まってセンチになる、センチが10個集まってメートルになるような、そういうような感覚なんていうのも遊びの中で体感できます。そういうことを子供たちが経験していますというようなことを捉えながら、自分の幼稚園ではどうなのかなんていうようなことを経験します。
 本園は幼小の連携の活動をたくさんやっています。形を見付けようなんて単元の学習で小学生が遊びに来ると、必ず幼稚園児と小学校の子供で論争が置きます。この形、つまり台形は何の仲間か。幼稚園児の80%は「そりゃ三角の仲間やろ。三角おにぎりバクッと食べた形や」と言いますが、小学生は概念的に、「これは1、2、3って3つ角があるやろ。だから三角。これは1、2、3、4って4つあるから四角や」なんて言うと、目からうろこで「へえ」って言います。で、四角とか三角とかいう言葉を覚えて、経験の上に乗っかって言葉を覚えると、あっという間に子供たちは、「これ、三角の仲間」、「四角の仲間」なんて言って広がって、知識が増えていきます。そういうような保育の中での子供の発達の順序性とかいうようなことも、しっかりと知りながら、ミドルの先生方には自園の教育計画を見直したり、実践を見直してもらうなんていうようなことを進めています。
 徳島県は、このような具体的な現場支援と、それと先生方のキャリアステージに合った指導方略というのをアドバイザーの先生方と勉強会をとって進めているというようなところです。 ご清聴いただきましてありがとうございました。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 お二人の委員に御発表いただきました。お二人どちらについて、あるいは共通でもよろしいですが、御質問、また御意見をこれからお願いしたいと思います。きょうは11時40分までを予定していますので、35分ぐらい討議の時間がございます。どなたからでも、どうぞお願いします。いかがでしょう。
 じゃ、ちょっと新山先生に。文京区の指標がありますよね。

【新山委員】  はい。

【無藤座長】  これは一応、公立幼稚園と公立認定こども園があれば市区町村で作ることになっているんですよね。一応ルールとしてはね。

【新山委員】  そうですね、はい。

【無藤座長】  23区の状況としては、もう大体どこもできているみたいなことですか。

【新山委員】  今ちょうどそれを都の園長会の方で取りまとめをして、調べているところです。9月の頭ぐらいにまとめて、ちょっとそれもできている区とそうでない区があるようだったので、園長会の方で調べてくれているところです。

【無藤座長】  なるほど。全国的には何か余り進んでない。

【新山委員】  そうですね。

【無藤座長】  ちょっと懸念をしております。

【新山委員】  はい、そんな気がしています。この話をしたときにも、いろんな園長と話をしたときに、文京とか私のいる港区はできていますけど、中央とか幾つかの区はできていましたけれども、「何かまだその話出てないね」という区もありましたので、比較的早く動いた方だと思います、この文京とか港区は。

【無藤座長】  そうですよね。

【新山委員】  はい。

【無藤座長】  教育委員会にむしろ国公立幼稚園から言わないと、忘れられているんじゃないかと心配をしているんですけど。

【新山委員】  そうですね、はい。東京は大田区以外は公立の幼稚園がありますけれども、地方に行くと市区町村によっては公立の幼稚園とかこども園がないところも半分以上ありますので、それこそ都道府県単位でしっかりと各区市町村にお話をおろしてもらって、ただ、やっぱり区市に幼稚園の専門の指導主事の方とか専門の方がまだまだ少ないというところが一つ大きな原因かもしれないなと思っています。

【無藤座長】  なるほど。

【新山委員】  はい。

【無藤座長】  はい、ありがとうございます。
 他にどうでしょうか、何でも。どうぞ。

【中山委員】  佐々木委員に質問で、徳島県さんは、アドバイザーをたくさん委嘱されていますが、この30人余りの先生方はどのように探され、選出されたのかということと、アドバイザーの「手引き」を作られるということで、2種類御紹介があったかと思いますが、どのような内容が入る予定なのかを教えてください。

【佐々木委員】  まず1点目のアドバイザーの選出方法なのですが、大体、退職した園長先生、所長さんをターゲットにしていて、そして、「やってくれませんか」というようなお願いをします。それと、辞めるときに、「どなたか推薦してください」ということで、後任者を推薦してもらうようなことにしています。あと、今年度は特に特別支援に関係する専門家の人の要請が多くなったので、その人を増やしたりするんですが、その辺は大学等から紹介をしていただくというような形であります。
 2つ目の現場支援に使ってもらうアドバイザーさんの「手引き」とか「Q&A」というようなことは、アドバイザーさんにお願いすると、「私なんかはもうそんな無理」とおっしゃる方が割とおいでで、ある程度品質保証するために、例えば環境だったら、こういうことを見ましょうねという、植物は生き生きしているとか、お花の水が換えられているかとか、あるいは先生がハキハキと受け答えをしているかとか、そういうような先生方が着眼してもらって、園経営について、環境の構成について、子供とのやりとりについてとか、そういう項目を今、立てておるところなんですが、そういうところでの勘どころというか、目の付けどころを項目にしています。それと、さっき見ていただいた徳島県の育成指標で、それぞれのステージに合わせての課題があるので、その辺についても押さえて指導してくださいというような内容を書いているようなところです。

【無藤座長】  ついでに、そのアドバイザーのことですけれども、徳島県としては、アドバイザーを例えば全市町に複数名置くとか、何かそういうめどみたいなのがあるんですか。

【佐々木委員】  はい。今おっしゃったように、本当は地元のアドバイザーが一番交通費も要らないのでふさわしいのです。この国の事業とかがなくなっても、ずっと永久的にそういうものが稼働できるようにということで、今、それを目指して、各市町に1人か2人は置けるようにということで進んでいます。実際はまだかなっていないのですが、目標としてはそのように考えています。

【無藤座長】  なるほど。最後に、すみません、たくさんあるんですけど、その場合のアドバイザーのお仕事というのが、各園から呼ばれたら行くとおっしゃっていたと思うんですけれど、そこに限定されるのか。あるいは、それとともに、例えば各市や町の研修のオーガナイザーをするとか何とかいろいろあり得ると思うんです。その辺の仕事の範囲というのはどうですか。

【佐々木委員】  今お話しいただいたように、現場から要請があって、その現場に行ってアドバイスをするというのが1つと、それと、幼教研とその地区の研修会の中の講師とか、あるいはさっきお話しくださったファシリテーターとオーガナイザーのような役割というのが2つ目です。あと、保護者のPTA活動のようなところでの保護者支援というか、講話をしたり、子育て教室をしたりというようなPTA活動の方にも参加していただいているような仕事の内容です。

【無藤座長】  なるほど。ありがとうございます。
 ほかの方、いかがですか。どうぞ。

【古賀委員】  すみません、京都教育大学の古賀です。新山委員にお願いしたいんですけれども、資料の12ページのところで、特別支援児の割合が増加しているというようなことがあったかと思いますが、まだ国公立幼稚園は2年保育の実施園もかなりあるかと思うんですが、その2年保育の園に他園から障害のある子供さんが転園してくるというようなケース等の把握というのはありますか。

【新山委員】  はい、そういう話もよく聞きます。3歳で私立に入ったけれども、「ちょっとうちの園ではもう面倒見切れません」みたいな話で、4歳から公立園に入ってくるというのはよく耳にしますね。ただ、その数がどのぐらいかというのはちょっと把握できていませんけれども。ただ、3歳児から入っている3年保育のところも増えてきていますので、3年保育のところでも割合としては、今回出した数字は3、4、5歳全部まとめた数ですけれども、3歳が少なくてということではなくて、3歳も4歳も5歳も結構多いというのが現実ですね。

【古賀委員】  すみません、というのは、3年保育で受けられたらいいのにと思うケースが多いといいますか、2年保育の役割はもう終えたのではないか、社会的役割は終えたのではないかという感じがしているというのが正直なところで、京都のいろいろな事例も見ていますと、2年間の保育で入ってくるお子さんたちのいろいろな言葉の面での発達であるとか、社会性の発達であるとか、その辺りでかなりゆっくりとした状態で入ってきて、最後の4歳児、5歳児の2年間で何とかみんなの5歳児のレベルに引き上げるというような保育の状況を見ていると、2年保育というのをどう考えていくのかというのはこれから大きな課題なのではないかなと思っています。3年保育化というのができたらいいのにというふうに思っているんですけれども、その辺りで何かあれば。

【新山委員】  それは特別に配慮が必要なお子さんに限らずということですね。

【古賀委員】  です、はい。

【新山委員】  国公幼としても、3年保育を拡充したいというのはずっと言っていることですけれども、大体どの市区町村でも、私立さんもありますし、保育園もありますし、そういうところとの兼ね合いというのがあってなかなか難しいというところがあります。「公立も3歳からあれば入れるのに」というようなことはよく聞かれました。私のいる港区も本当に2年保育がずっとだったんですけれども、子供の数がとても増えてきたことで私立との調整もうまくいって、公立も3年保育をしっかりとやれるようになったし、預かり保育も含めてですけれども、そういうところで保護者のニーズにもある程度応えられるようになってきたということですね。

【無藤座長】  その辺のデータというのはないものなんですかね。2年保育の場合と3年保育とか、あるいは2年保育も、よその園にいて転園している場合と、本当に家庭から入ってくる場合とか、いろいろあるでしょうけど。

【新山委員】  子供の育ちがどう違うかみたいなところですか。

【無藤座長】  そうです、そうです。

【新山委員】  なかなかそこ、そういうふうにはね。

【東委員】  研究者はどうなんですかね。現場イリョウ研究者はいますよね。

【無藤座長】  正に国公立幼稚園。私立幼稚園はほぼもう3年なので、国公立幼稚園でどなたか研究者とも連携して調べていただけると。直感的には、小学校に入るぐらいまでに追い付くだろうとは思いますけれど、でも、最初の1年の違いも意味があるんですよね。

【東委員】  よろしいですか。

【無藤座長】  はい。

【東委員】  ちょっと今の御質問とか議論の趣旨からずれるかもしれないんですけれど、日本の学校教育制度で就学猶予って基本的にできない現実がありますよね。で、我々の園でもそうなんですけれども、例えば合理的配慮や教育的支援が必要なお子さんの場合は、逆に、少しでも治療や療育を経て集団に移行、少しずつ入っていくというようなお子さんも、今、非常に多いんですよね。そうすると、3年保育から集団に入るというのは、逆に今バイアスが掛かってしまっているので、保護者も非常に焦りますし、その子の発達にとって適切な環境だとか就学・就園状況じゃない場合もあり得るんですよね。そういう面も含めてきちんと研究する必要があって、ただ、6歳就学に合わせて乳幼児期をどう過ごすかということよりも、多様な発達の中にある中で、逆にどのような就学時期が適切なのかというようなことも研究することが今の子供たちと家庭環境においては重要じゃないのかというのは、現場にいて非常に感じることではあります。

【無藤座長】  そうですね。ちょっとまた脱線になっていくんですけど、当然、生まれ月、早生まれ、遅生まれなども、2年保育、3年保育で多分関係しますから、いろんな要因を多分見なきゃいけないんですけれど、ちょっとこれはこの会の趣旨から外れるかもしれませんが、いずれ保育料の無償化が3歳以上というのが出そうですが、そう考えると余計に、多分、3年保育化というのが促される状況はありますので、なおかつ2年保育ということがプラスの積極的意味があるのか、あるいはそうではないのかは、今、検証しないと、ちょっと数年先だと間に合わなくなってくる感じがありますね。すみません、これはちょっと趣旨がずれてきましたけれど。
 ほかに、どういうことでもよろしいですけれど、お願いします。どうぞ、何回でも。

【中山委員】  若い新採の先生方を育てていくお話が新山委員と佐々木委員からあったと思いますが、その中で特に大事にしたいと思ったのが、いいとこ探しをしていく、急ぎ過ぎない、少しゆっくり待ちながら育てていくというところです。そもそも幼児教育で大事にしているのは、子供を肯定的に見ていくということがあります。様々な現場を見ていくと、人材育成の視点で否定的に、ここができてないというように若い人を見てしまうと、その目線は子供を見る目とリンクするように思います。温かい保育をしていく、子供に寄り添いながら保育をしていくためには、職員を育てていく目線もやはり温かい目線がとても大事ではないかと思います。国公立幼稚園・こども園会の中で確認されていることや、徳島県さんで、特にアドバイザーの先生方に見付けた事柄をどう伝えていくかということがあれば教えてください。

【新山委員】  では、先に。本当におっしゃるとおりだと思います。僕自身は、自分が若い先生たちをこれまで園長になってからたくさん自分の園で見てきましたので、「とにかく失敗を恐れないでやってごらんよ」ということをずっと言い続けています。「失敗して何ぼだから」って。「よっぽどのことがない限り、何とでもフォローができるから、前の人がやったようにやればいいやというような守りの姿勢ではなくて、でも、自分としてはこんなふうにやってみたいと思ったら、まずはやってみなさい」ということをずっと言ってきています。若い先生たちから見ると、園長とか先輩の先生たちは何でもできるというふうに見えちゃうんですね。でも、「そんなことないよ。僕たちだってすごく一杯失敗をしてきたんだよ」ということをいろんな場面で伝えています。
 『幼児教育じほう』という機関誌に僕は書かせていただく機会がこれから増えるので、つい8月号にも最初の会長としての立場で書かせてもらったんですけれども、冒頭に、自分自身が若い頃にいろいろ失敗しましたということを自己紹介も兼ねて載せました。そうしましたら、東京都の特別区の人事・厚生事務組合の方で2年目フォロー研というのをこの間、2年目の先生たちを集めての研修会があったんですけど、担当の先生が、「きょうの2年目の先生たちにこの巻頭言を読ませてもらっていいですか」というふうに連絡を頂いて、「是非どうぞ」と。「僕も一杯失敗して、ほかのどの先生たちも失敗しないでいい保育者になった人はいないんだから、みんな子供たちに教わっているんだ、先生たちに教わりながらいろんなことを身に付けていく。で、やっぱり子供に寄り添わなきゃいけないとか、いろんな勉強をしないと子供の前に立てないということを、そういうことから体で学んでいくんだから」ということをお話しして、読んでくださいました。
 そんな形でいろいろな場面でお伝えしているつもりですし、今のお話を聞いて更にそこをしっかり伝えなくちゃなと思いました。ありがとうございました。

【佐々木委員】  徳島県のアドバイザーの「手引き」の中に、例えば表示のところの目の付けどころで、否定形で書いていないかとかいうのがあるんです。「廊下を走らない」とかいうように。そういうのをお伝えするときに、やっぱりポジティブルールで若い先生方を育てましょうとかいうのを、そういう研修の中でアドバイザーさんにも言います。だから、「何とかしちゃ駄目」とか、そういうのは資質が劣るとかいうんじゃなくて、「何々しては駄目じゃ」なくて、「何々よりこっちの方がいいわよ」という代替案というのを提案しながら、具体的にポジティブにやっていけるようなことというのをしましょうというのも研修の内容です。私らはずっと昭和の、「何とかしてはいけない」とか「ねばならない」でずっと育ってきて、やりにくいのですが、やっぱりそういうスキルをお伝えするような内容で研修をするようなことも必要かなと思って取り入れているようなところです。

【中山委員】  ありがとうございました。

【無藤座長】  ありがとうございます。
 他にいかがでしょう。どうぞ。

【古賀委員】  すみません、先ほども御質問したんですが、新山委員の件で、幼小接続の中心的役割の推進という点についてですけれども、園が減少しているということが京都でもありまして、要は、公立園がないところの幼小接続をどういうふうに進めていくかという、公立園があるところとないところの格差がかなり出てきているということとか、研究がなかなか進まないというところをどうしたらいいかというところで、公立園があるところのモデル化であるとか、ない地域との交流研修みたいなこととか、何かそういった新たな取組があれば教えていただきたいんですけれども。

【新山委員】  ありがとうございます。子ども・子育て会議の方でも、我々が幼児教育の質に関するセーフティーネットだということを言わせていただいています。それと絡んでくると思いますけれども、公立の園がなくなってきているところが本当におっしゃるとおり多いので、とても危惧しているところです。都道府県によって本当に差が大きいので、徳島のように公立がとても多いところと、石川とか栃木ですとか、県によっては逆に私立がとても多くて公立がほとんどないというところもありますので、あるところはいろいろできますけれども、ないところに関して今おっしゃってくださったようないい姿をモデル事業として進めていくとかということは、会報ですとか、それから『幼児教育じほう』とか、そういうところでこんな例がありますよという好事例をお伝えしていくというようなことは今までもやってきていますし、これからもやっていこうと思っています。しかし、本当に何とかなくならないようにしていきたいなと思うばかりですけど。ありがとうございます。

【無藤座長】  他にはいかがですか。

【東委員】  意見でもいいですか。

【無藤座長】  もちろん、もちろん。

【東委員】  よろしいでしょうか。両御発表を伺って、前回までもそうなんですけれども、国の会議なので言いづらいんですが、幼稚園も保育所も認定こども園も、キャリアアップの研修に収れんしていくような雰囲気があって、そもそも養成課程から1年目、きょう映像を、杉山先生ですか、見せていただいたように、毎年毎年、毎日毎日、現場でいろんな経験を重ね、外部研修、園外研修や園内研修、先輩から、あるいは上司からの指導や支えがあって正にキャリアアップというか、一保育者として力を付けていくわけですよね。そうすると、8領域、9領域のキャリアアップ研修をやれば何か全てが担保されているというようなことから、やはりもう少し見方を変える必要があるんじゃないのかなと。既に教特法の下にある教育、幼稚園を中心としてになるかもしれないんですけれども、養成のシステムがきちんとあって、それをもうちょっと再評価、再構築することの方が実は長い目で見ると現場の保育者、幼稚園教員の力量を高めていくという原点に一つ立ち返った上で、再度、処遇改善等に資する研修の構造化というものは考えないと、8領域、9領域、60時間、60こまやればいいというような風潮というのは、一つ立ち止まって考えるべきではないのかなと。今までの豊かな実践と、先行的な取組なのかもしれませんが、都道府県単位での取組をお聞きしていると強く感じるところではあります。
 以上です。

【無藤座長】  はい、大事なポイントで、そこ、今後も考える必要があると思うんですが。
 関連してでも。どうぞ、遠藤さん。

【遠藤委員】  私ももうほとんど感想のようなことなんですが、今、先生が御指摘くださったことは、私自身も非常に感じているところでございまして、恐らく今まで、それこそ国公立の幼稚園などを中心に、いろんな研究というのがやっぱり蓄積されてきたところがあると思います。私も今まで、国立の幼稚園を中心なんですが、研究を御一緒させていただいたり、お手伝いをさせていただいたりする中で、非常に時間を掛けてきっちりとその研究成果をまとめて、発表もされてはいるんですけれども、しかも立派な冊子も作られるということがあるんですが、じゃ、その後、それがどういうふうに生かされるかということを考えたときに、それがなかなか生かされないまま埋もれてしまっているということが実は非常に多いんじゃないかというようなことを少し思ったことがございまして、これだけの研究をされているのであれば、それこそアーカイブ化がされて、要するに、全国のいろんな園がそれを共有して活用できるという機会、ネットワークというのがあって、今、体系化に向けていろんな試みをされているということでしたので、今後、そういうことも進んでいくのかなという気はするんですが、そういう要するに資産というのがある状況ですので、それをむしろ積極的にこれからの質の向上というところにつなげていくような試みというのを、ただキャリアアップというような研修を受けるということだけではなくて、そういうふうな試みの中で園全体のポテンシャルというようなことを引き出していくというような、そういう活動というのがやっぱり一方では積極的になされていいのではないかなというようなことを、直感的ではあるんですが、少し思っているところがございます。
 あと、1つは、やはり評価というのは非常に重要なところではあると思うんですが、これも私どものセンターが、質の向上ということに関して言うと、評価をして、さらには、その評価結果に基づいて基本的にはどこをどういう形で向上させていくべきかというところのプランニングを行っていく、これは当然必要なことなんですけれども、ただ、実際に、私ども特定の、東京であれば特定の区に入らせていただいて、その質評価というようなことの試みというのをかなり濃密にさせていただいていたりしますが、そこで少し分かってきたことが、基本的に自己評価と第三者評価あるいは関係者評価、これらを一体化していくというところにもしかしたら意味があるのではないか。更に言うと、要するに、評価をして、それをただフィードバックするんじゃなくて、評価と研修を一体化させていくというふうな中で、実はそれが非常に保育者の先生方あるいは幼稚園教諭の先生方の実質的な専門性の向上につながるというような――これ、ちょっとまだ数的な根拠というのを十分に得ているわけではないんですけれども、そういうことを実感しているところがあって、それってどういうことかというと、例えば、質の評価のスケールというようなことに従って、こういう保育実践のこういう次元に関してはこれだけのレベルだということが明らかになる。でも、そのレベルが明らかになるだけでは多分意味がなくて、要するに、例えばレベル2からレベル3に上がるということに関して言うと、じゃあ、どういうふうな具体的な実践の中で、どういう活動であればレベル2から3になるかというところが一緒に話し合われる中で実感されると、実は先生方がただ単純に評価されているということではなくて、積極的に自分のこういうところを工夫しながらいいものにしていこうというモチベーションにつながっていくという感じがしておりまして、そうすると、評価ということと園内研修ということをどれぐらいうまく組み合わせて一体化して、実質的にあしたから何をどういう形で変えていけばいいかということのプランニングというようなものが割合すぐイメージできるような形にしていくということが非常に重要なんじゃないかというようなことを、今ちょっと実際にそういう試みをする中で感じているところがございまして、そういったことを今後、私どもも進めていければと思っておりますし、あるいは先生方と一緒にそういうことをまた研究させていただければと考えているところでございます。
 と同時に、あともう一つは、評価というところで、ややもすると特定のディメンジョンというか、次元から幼児教育や保育を見るということになってくると、ある意味、画一化というところの危険性というのがやはり危惧されるところがあるかと思います。そういう中で、私どもなんかが割合その取組の中で今実際に実践していることは、その園が大切にしていることであったり、あるいは、その園がある地域性であったり、あるいは保護者の性質であったりとか、あるいは、それこそ園の先生方の年齢構成であったりとか、それぞれの事情というようなことを考慮した上で、それぞれの園の評価次元というようなことを独自に設定していくということ、これがやはり非常に重要なんじゃないかということですね。要するに、全て同一の標準的な評価次元からの評価ということに終始するのではなくて、それぞれの園の独自性、地域の特性、そういったことを考慮した上での独自の評価次元ということを設定していくというような形で、この質の評価というようなことを実質的に生きるもの、先ほど形骸化というお話があったんですけれども、やっぱりそこが一番怖いところでございまして、形骸化しないために何が必要かというようなところの検討というのが多分非常に重要になってくるのかななんていうことを、少しお話を聞かせていただきながら考えた次第でございます。

【無藤座長】  ありがとうございます。
 他にはいかがですか。

【東委員】  よろしいですか。

【無藤座長】  はい。

【東委員】  今の話、非常に共感というか、何度も繰り返しお話しさせていただくんですけれども、地域の事情とその園の職員構成のリソースと条件が本当に違うのが、乳幼児教育施設、保育施設の特徴であると思うんですね。それをどういうふうに支えていくかというシステムも、県単位で賄える面と、やはり地方自治体で賄わなければならないもの、我々のような民間私立団体で賄わなければならないものというのが構造的にあるので、それと今お話にあった評価システムとうまく――評価というのは評価のための評価ではなくて、保育の改善や保育そのものにつながるような一つの循環モデルを構築、実現していくために必要ではないのかなというのは強く感じるところなので、非常に難しいんですけれども、そこを外してしまうと、結局、上手の手から漏れる施設や現場、職員、子供、家族が生まれてしまうので、そこは必ず意識をしなければならない重要なポイントだと考えています。
 以上です。

【無藤座長】  ありがとうございます。
 じゃ、私もちょっと今の、関連して意見になるかもしれませんけど、研修とか進めるとか、今、最後に出た評価とかというときに、自己評価もそうだし、あるいは保育所などでやっている第三者評価もそうなんですけど、基本的に最低基準を守っていることと現状の確認という範囲が多くて、その上でどう改善するかとか変革するかについては余り踏み込まないのがこれまでのやり方だったと思うんですけれど、やっぱりそちらに向けていくと。そうすると、その中に様々な研修、その他を位置付け直すということが大事な気がしているんですね。そういう意味でいうと、変革主体というのが保育者個人もあるし、園というある意味で主体があり、自治体もあるという様々な変革主体が、いろいろな研修、その他を機会を利用したり作り出したりということで考え直す。また、それの間のネットワークどう作るかということですね。ですから、当然、園としての理念の中でそれを作っていかなきゃいけないし、同時に、国が提供するような、自治体が提供するような資料をそこで園として活用するということなのではないかという気がします。
 そうすると、例えば、鳴門の附属の方で杉山先生の話が非常に面白かったんですけど、特に5年目の縄跳びなんてすごい感動的だと思うんですけど、こういうことがどういう意味で現場側に伝えられ、共有され、あるいは生かしてもらえるのかという仕組みですよね、それが必要な気がします。そういう意味で、こういうものを使ったワークショップや研修もあると思いますし、それから、常々、前から思っているのは、国公立幼稚園で紀要とか資料を出したら必ずネット公開してほしいというのをずっと思っていて、数年前に国立の附属幼稚園の研究を総ざらいしようと仕掛けて挫折しましたけど、どうしてかというと、全部印刷媒体しかなくて、一々電話して取り寄せてもらうんだけど、5年もさかのぼると、もうそれが「いや、うちには1冊しかない」とかという話になって、分からない。まして公立幼稚園だと、園長が代わった瞬間にもう分からないみたいになっているので、ネットに出しておけば大体何とかなると思うんですよね。別にネットに出せばいいという話をしているわけではなくて、要するに、各園、各個人が使える様々なリソースというものを豊かにしていって、その人たちが自分たちの考えるところを実現するためにいろんな情報を組み合わせていくとか、そこにアドバイザーが入って、ただ講義を聞くだけじゃなくて一緒に何か考えた方がいいんじゃないかという形で場を作るとか、何かそういう形ですよね。ですから、幼児教育センターなども文科省の事業といえば事業なので、上意下達的流れの中にある面はあります、もちろん。ちょうど幼稚園教育要領の改訂時でもあるからですけれども。でも、もう少し長い目で見れば、そういう現場の主体をどう作り出すかだと思うんですけどね。
 もう最後なので、お二人の委員から何か付け加えることで。どうぞ。

【新山委員】  ありがとうございます。今のインターネットを活用するという意見も、とても有り難いなと思っています。会員数が減ってきているので、予算的なこともあって、こういうリーフレットも各家庭に配りたいようなものもあるんですけど、実際にはそこまで印刷できないようなこともあります。で、ホームページ上に公開するので、御自由にお使いくださいみたいなことをやっていく必要もあるなという話も出ていますし、国公幼のホームページの中には今年度の研究発表園、全都道府県のデータは出しているんですけれども、今おっしゃったような過去のものに関してまとめているということはやってないんですね。それから、各ブロックとか都道府県の研究のものを東京の事務局に集めるということも、そんなことをすると事務局がパンクしてしまうので、そんな広い事務局じゃないので、そういうこともできていないんですけれども、今おっしゃってくださったこと、それから、鳴門教育大も我々の仲間でもありますけれども、あんなにたくさんのいろんなことをやってくださっているということも今初めて知った部分も幾つかありましたので、そういう情報をみんなが共有できるような方向を考えていかなくちゃいけないなという示唆を頂きました。ありがとうございました。

【無藤座長】  佐々木さん、どうぞ。

【佐々木委員】  御指摘のとおり、特に国立大学附属幼稚園なんかは、もっと情報を公開しながら活用していただけるようなことと、それと汎用化できるような研究を進めていくということについて、その2点は本当に早急に進めていく必要があると思います。国研の幼児教育センターの方に研究紀要とかを張ってもらっているようなところも、国立大学数件ありますが、まだ少ないので、そういう基本的なネットワークができるような母体があるので、そういうことも活用しながら進めていくべきだと思います。特に国立大学はお役に立てますということをもっと発信しながら頑張っていきたいと思っておるので、何かのときには是非御活用いただきたいなと思っております。
 以上です。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 では、時間になりましたので、ここまでにさせていただきますが、今回で各委員からの御発表、基本的にはそれぞれ発表していただきました。一通り済みましたので、それを概括いたしますと、幼児教育の実践の質向上に関する取組、方向性といたしまして幾つか出てきたと思います。
 1つは、保育者の専門性の向上に関しまして、特にキャリアステージに応じた研修の体系化、園内研修の重要性、免許の上進、研修履歴の記録などが指摘されたと思います。
 また、2番目には、園の運営改善に関することとして、公開保育の手法、学校評価、園全体の力を向上させるリーダーシップの在り方などが指摘されました。
 3番目が、自治体の支援体制に関してでありますけれども、担当部局の一元化、幼児教育アドバイザーの配置・育成・活用方法、保育者の育成指標や接続カリキュラムなどの都道府県レベルなどでの作成等々でございます。
 それ以外に、先端技術の活用とか、家庭・地域への幼児教育理解の啓発方法などの御提案も頂いてございます。
 それを受けまして次回でありますけれども、これまでに出た意見を踏まえて論点を整理し、明確化するという作業を行いたいと思います。
 そこで、事務局から今後のスケジュールについての御連絡をお願いいたします。

【山川専門官】  次回の会議ですけれども、8月30日(木曜日)の16時から17時半まで自由討議ということで予定をしております。
 以上でございます。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 以上をもちまして幼児教育の実践の質向上に関する検討会(第4回)を終了いたします。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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