幼児教育の実践の質向上に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成30年7月10日(火曜日) 10時00分~11時30分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館13F1~3会議室

3.議題

  1. 委員からの発表(東委員、遠藤委員)
  2. 意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

無藤座長、神長副座長、東委員、新山委員、遠藤委員、古賀委員、佐々木委員、中山委員

文部科学省

先﨑幼児教育課長、日野企画官、小倉課長補佐、湯川視学官、河合幼児教育調査官、本田子育て支援指導官、山川専門官

オブザーバー

八田内閣府子ども・子育て本部参事官付(認定こども園担当)参事官、唐沢厚生労働省子ども家庭局保育課企画官

5.議事録

【無藤座長】  それでは議事に入ります。本日は東委員、遠藤委員より御発表いただきまして、その後にそれらを踏まえて意見交換を行いたいと思います。
 東委員でございますけれども、私立幼稚園教諭の質の向上や研修を担っている公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構の理事長もなされております。これまでの議論を踏まえながら、本日は私立幼稚園団体として行う幼児教育の実践の質向上における私立幼稚園等の現状と課題について、御発表いただきたいと思います。
 続きまして、遠藤委員の御発表でございますけれども、遠藤委員は東京大学教育学研究科附属発達保育実践政策学センターの副センター長もなされております。このセンターでは、大規模な園調査や幼児教育現場における先端技術の活用に関する研究などに取り組まれているということでございますので、本日はこのセンター、略してCedepですけれども、このCedepにおける調査研究が含意するものにつきまして、御発表いただきたいと思います。
 各委員ともそれぞれに20分ずつ御発表いただき、2つの発表の後、まとめて意見交換に移りたいというふうに思います。
 それでは、まず、東委員よりお願いいたします。

【東委員】  おはようございます。失礼いたします。今、御紹介を頂きました札幌美晴幼稚園の東と申します。
 まずは、西日本を中心としまして、大雨による大変な被害の中、関係する皆さんにも、失われた方、今なお行方不明や大変な状況にある方いらっしゃると思うので、心からお見舞い申し上げまして、報告を始めさせていただきます。
 先ほど、御案内ありましたように4点机上の方に参考資料を置かせていただいています。一つ一つ御説明する時間はありませんけれども、お持ち帰りいただきまして、また御意見等を頂ければというふうに思います。
 それから、委員の皆様には、期間内の調整が時間を要しまして、事前資料の配付が昨日というふうになりましたことをおわび申し上げます。
 資料を御覧いただきまして、下の段。私どもの私立幼稚園団体は1団体1組織というようなことになっています。中核をなしますのは、全日本私立幼稚園連合会という各都道府県を傘下に置いている団体なのですけれども、その連携・連動する機関として、文科省の公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構という研究組織団体を持ちながら、相互に連携して、保育の充実・発展のために同じ力を尽くしているところであります。
 黄色の背景にある「子どもたちの今と未来の幸せをねがって~一人一人の豊かな育ちを支える質の高い幼児教育を~」といいますのは、30年、31年度の我々の教育研究課題として掲げている大きなテーマでございまして、これから御説明します研修俯瞰図に基づいた研究項目の内容を整理した我々の研究研修の大きな指針になるものであります。
 周辺に各関係法令。とりわけ新制度が始まり、幼保連携型認定こども園に移行されている幼稚園施設や、来年からは幼児教育の無償化が始まり、今以上に幼児教育の公教育性が、私たち私立幼稚園にも問われてくるという環境をイメージとして、示したものです。
 ページをおめくりください。まず初めに、我々の取組の実態。これまでの経緯も含めて御説明をしながら、最後にはチャレンジプランという、まだ機関決定を見てはおりませんけれども、質向上のための具体的な取組について、このような方向性で推進してまいりたいというものを説明したいというふうに考えています。
 まず1、研修体制の構築・整備でありますけれども、平成18年3月に初めて保育者としての資質向上研修俯瞰図というものを発行しました。それにあわせて、平成20年に、前回幼稚園教育改訂の実施年でありますけれども、研修ハンドブックという形で各研修の履歴を、一人一人の教育職員がライフステージにわたって、例えば退職ですとか、様々な理由によって異動されることも想定して、研修履歴は園や団体ばかりではなく個人がしっかりと持っておくものだということ。それを検証するためにもハンドブックというような形で発行したものが机上にあるもの。これは改訂版でありますけれども、このような形でスタンプやシールを貼る。研修を受講した証明として、シールやスタンプを貼るということで、保管・管理するものになっております。
 研修俯瞰図を、我々の保育実践における研修課題を網羅的に、あるいは構図的に示しまして、進度におきましても、3つの段階。初期、中期、それからリーダー、園長というものへ当初構成したのですが、平成27年の10月にその改訂版を。1つは、愛に守られたというようなことを大きなコンセプトに掲げながら、今の状況、認定こども園の状況も勘案し、未満児。0、1、2歳児の育ちにも配慮した形で、再構成をしたものを研修俯瞰図として再編成し、研修ハンドブックもそれに併せて改訂版を発行したということであります。
 2番目の教員免許状更新講習の実施でありますが、これは予備講習の段階から我々実施団体として、文科省から認定を受けるために実施してまいりました。下の表、グラフは当初少しずつ受講者数、講習数が増加していたのですが、新制度に移行した平成27年度以降、特に28年、29年と講習数も急増しておりますし、当初3,000名規模で、延べ受講者数であったものが、昨年度は15,000名を超える受講者数というふうに変化してきております。これも各都道府県、各地区拠点単位のレベルで開催しているところであります。
 次のページを御覧ください。我々の私立幼稚園を中心とした保育施設の研修体制のイメージ図を、私立幼稚園団体、我々ばかりではなくて、法定研修や関係団体、業者研修等も含めて、イメージ図化したものであります。
 私立幼稚園団体は、我々財団や連合会の中央研修。我々が示すモデル的な研修会を中央で行い、これは各都道府県から参集していただいて行うものなのですけれども、それをモデル事業として、各地区ブロックや各都道府県で実施に移してもらうというような形で行ってるものです。
 次に地区ブロック。例えば東北でありましたら、東北ブロック圏が1つの地区を形成して、その数県の中で行う教育研究大会。あるいは、施設者、園長、リーダー研修等を各地区教研単位のレベルで行っているというものであります。
 さらに、下位の組織として、各都道府県。あるいは政令市や中核市の私立幼稚園団体が研修俯瞰図に基づいた研修を、実践者のニーズを反映した研修企画を実施しているという構造になっています。その中に我々財団が実施団体として開催します免許状更新講習も位置付いているということになります。
 左側の法定研修につきましては、教特法に定められた初任者研。今はほとんどの都道府県、地区で私立幼稚園の新任の職員として開催されているのが実態であろうかというふうに思います。中堅研修は、免許状更新講習ともあわせて、それぞれのニーズの実態に応じて各都道府県、教育委員会等で継続して行われているものであります。そのほかに、当然教育委員会や各市町村単位と主催される研修会が行われて、我々参画をしているわけです。
 右の関係団体や業者主催の研修と申しましたのは、例えば設置者の背景に基づく研修団体等がございます。あるいは、関連業者が企画する研修会等に対しまして、これは教育委員会の研修もそうなのですが、御依頼があったものについて、我々研究機構の中で、一定の質といいましょうか。講師の人選でありますとか、研修の時間等チェックをさせていただいて、研修俯瞰図に基づく押印やシールの発行をお認めさせていただいているような形でこの研修を行っています。これらの外部研修、園外研修の派遣によりまして、様々な知見や園内の保育に生かせるエッセンスを、まずは園内に持ち帰って、園内研修を通じて、各保育所での教育を図り、実線の中に反映していくという構図になっています。
 私立幼稚園等の研修における課題と対応について、3点ほど整理させていただきました。まず研修の体系化や構造化を担保する相当数の内容の園外研修の機会を保障ということで、これはこれからキャリアアップですとか、処遇改善Ⅱの法定研修が具体的に進められていくときに、実は我々の組織でこの春に各都道府県の研修内容を、数量ともに調査をしまして、文部科学省より速報値でありますけれども、数量のチェックをしていただきました。
 全都道府県のうち、東北3県、関東3県ほか2県ほど、現状では数量的に不足している実態があるというふうに認められているところもあるのですが、多くの都道府県では、現段階でも俯瞰図に基づく研修で、8つ、9つのカテゴリーに示されているキャリアアップや処遇改善Ⅱの研修については、数量ともに何とかクリアできているのではないかという実態があります。
 ただ、各都道府県の基礎体力だとか、職員数の多い少ないという実態に応じて、これまでも継続して機会保障ができるということは、担保されたことではありませんので、構造的に、あるいは地区であれば輪番等で、2年3年のうちには必ず各項目の研修を受けられる機会を、機会保証するような体系化の整理と実施の形態の再整備が必要かというふうに考えています。
 研修体系の大綱化、シンプル化というのは、現任の保育者がどのような課題を持ちながら研修に当たっているのかということを、もう少し大きなくくりの中で整理することで、我々自身もそうですが、保護者や関係者、あるいは、行政の方にも研修の内容、構図を理解していただけるようなシンプル化というものが必要ではないかというふうに考えているところです。
 3点目のキャリア、ライフステージに応える研修の構造化というのは、これまでも何回かこの委員会でも議論になっていますけれども、やはりどうしても保育職の場合は女性が多い職場でありますので、女性のライフステージに合わせた復職であったり、異動であったりということも想定しながら、それぞれの保育者、幼稚園教諭のニーズに合わせて、あるいはそのニーズを自覚化するような、抽出化するような手続も経て、研修計画を立て、それに応えるような研修を保障していくというような体制整備も必要かというふうに考えているところです。
 次をおめくりください。少し本筋から外れますけれども、教育保育施設の議論ですので、幼稚園教諭の資格、免許ならではの可能性と質保障と少し考えてみました。教員免許というのは、御案内のとおり、2種免許、1種免許、それから専修免許というふうに階層化されているわけですけれども、現状申し上げますと、とりわけ私立幼稚園におきましては、あるいは認定こども園におきましては、現職の在職職員の過半数。もう少し正確に申し上げると72%ほどが2種免許であるという実態があります。
 経年的にはと申し上げますのは、若い職員というか今の養成校が4大化をしているということもありまして、新たに免許を取得して、現場で就業している職員は1種免許を取得している者が多くなっていますから、年数がたてば、割合としては当然1種免許を取得している者の割合が増えていくわけですけれども、とりわけ、後ほど具体的にお示しをしますけれども、30代以上、15年から20年ほど経験した30代、40代の層は、まだまだ2種免許の取得者が多いですので、教頭職だとか、特別支援コーディネーターを担う職員には、やはり免許の上進を図ってもらい、知識、スキルともに兼ね備えた中で、現場に当たっていただきたい。
 ただ、これには教員免許は学位、単位を根拠にしているということがありまして、我々の手では負えないといいましょうか。ものであります。あくまでも養成校。大学、短大の講義を受講して、現在では科目履修で積み上げていくと。必要要件を積み上げていくということが必要になっています。
 たまたま私が兼任しています札幌にあります札幌国際大学では、2002年から科目履修等をパッケージ化して、毎週土曜日の1日開講で、保育職の夏休み、冬休みの長期休業中に集中講義を行うということで、12年以上勤務経験のある者の場合は、11単位で免許の上進が可能ですので、そのようなパッケージ化された講座というものがございます。既に150名ほど上進を果たしておりまして、北海道ですと、公私立合わせてなのですが、4,000名ほどの幼稚園教育職員がありますので、3.8%ほどになります。このような学校が域内に3校、4校あれば、10%程度の上進という可能性を広げていきますし、もう少しインセンティブを働ければ、後ほど示すような数値的な目標も実現可能ではないかというふうに考えているところです。
 次3番目の保育の実践知を可視化、共有化する手法。これを園内研修や教育実践に生かすということですけれども、我々幼児教育実践学会という、学会というふうになっていますが、実践者の研究会。あるいは、研究者との共同での研究会というものを、毎年夏休みに開いております。プレを含めまして今年が9回目になりますので、10回を重ねてきているのですが、今年は東京家政大学の狭山キャンパスで開催をするのですけれども、700名の定員を超える参加希望がありまして、残念ながら全ての希望に応えられないという形で開催するわけでありますけれども、口頭発表は先ほどお話ししました組織の地区教研、地区ブロック単位での口頭発表18本と、それからポスター発表が各教諭がエントリーできるものでありますので、44件ということで発表しながら相互に交流的に研究会を行います。
 正に3つの柱が、保育実践の実践例を、あくまでも研究対象をフィールドにして、研究を深めるということと、園内研修の仕方を学ぶということを柱にしていること。それから、研究者との共同の中で、保育実践の研究を深めていきたいと。この3つの柱でこの研究会を継続的に行ってきておりまして、年々充実して発展しているところでございます。
 ページを進めまして、もう一つ、これも細々ではありますけれども、平成25年から継続して、砂場をフィールド対象として研修をしています。これは、平成24年度に各幼稚園の実態調査を行いまして、未満児保育ですとか、保育形態、保育環境の実態調査を行いました。その中で保育内容については、余りにも各園の保育の進め方が多様だということがありまして、なかなかそこには着手できないということがありました。ただ、砂場という遊びの場はどの園にも必置。現在の幼稚園設置基準で必置要件ではないのですけれども、今なお必ず砂場が。ただ、それは生きたものになっているかどうかというのは疑問を。必ず調査のときに写真、環境の図面と写真を収集しましたので、その中で遊びを豊かにする1つの窓口、指標として、砂場というものを取り上げて、継続的に研究をしてきています。
 28年度、全国展開をして、毎月10分程度のビデオクリップと保育者による保育記録を収集しまして、現在は映像記録176件、紙による記録が171件。それぞれ大阪教育大学の中橋研究室と武蔵野大学の箕輪研究室で、学生を中心として分析を進めていただいているところではあります。その中間報告を当年度内に出しまして、将来的にはこれだけの映像記録が収集できていますので、個人情報等に配慮し、アクセス管理等もした上で、ウエブ上で全ての幼稚園の保育者が砂場遊びの具体的な映像や実践知に触れられる。教育ができるような構想を持っているところであります。
 大きな2番目の保育実践の質向上に資するECEQ及び関係者評価の実施であります。これはお手元の2つの資料を取り出していただければと思いますが、ECEQ。Early Childhood Education Quality System。このうちのECEQを、頭文字を取りまして、ECEQというふうに我々、保育実践の質向上に資するシステムを構築しているところではあります。
 これは、学校評価に関する文科省委託研究調査を、平成21年度から毎年重ねておりまして、当初は自己点検、自己評価のチェックシートに始まり、関係者評価のガイドラインとの兼ね合いの中で、私立幼稚園における関係者評価の指標を示した研究を行っていたのですが、途中からより保育内容に貢献できる。あるいは、保育の質改善に貢献できるような関係者評価のシステムが構築できないかということで、舵を切り直して、現在に至っているということであります。
 具体的には、ECEQのシステムを構築しながら、平成25年度から実際のコーディネーターを養成する講座を開催して、現在223名が認定されています。パンフレットの裏面、オレンジの面を御覧いただきたいのですけれども、この公開保育を利用したECEQのシステムというのは、5つのステップを経ることになっていまして、まず園長や主任などのヒアリングによって、その園の理念や大切にしているものをあらかじめコーディネーターが複数名、必ずペア以上、複数名で訪問して、ヒアリングを行い、次には実践者を交えた園内研修によって、各園の課題でありますとか、共通認識しているよさを確認し、さらに公開保育に向けた準備として、問いの作成を行うというステップを進めていきます。その上で公開保育を開き、ほかの幼稚園や教育機関の実践者が集い、保育実践を見ながら、その問いに対する答えを交換していくというような公開保育を重ねていきます。
 最終的には、自己研修ということで、再度コーディネーターが園を訪問し、自己課題の抽出や実践におけるその園の保育改善の内容を具体的に整理をしていくというようなステップを踏んでいくのがECEQという保育改善システムになります。
 そのために、どうしてもシステムはできましたけれども、それをコーディネートする要員がいないと実践ができないというものになっていますので、コーディネーターを養成しているということであります。
 今年、来年と約90名の新たな認定を受けるコーディネーターが2年にわたる養成講座を受講しておりますので、31年度には約300名を超えるコーディネーターが配置されるということを予想しています。
 このECEQの実施した効果と申し上げて、今整理できていますのは、園風土が変わってくるということ。後ほど、多分遠藤先生のお話にもあるかもしれませんけれども、どうしても上意下達型のマネジメントであったものが、課題抽出からワークショップを通して、ビルドアップすることによって、園風土と職員の関係性が変わってくる。それによりまして、同僚性が汎用されて、その教職員の関係性においても変化が見られるというものが、保育実践にも大きな影響を与えているということが認められているところであります。
 ECEQを用いた関係者評価の進展とあわせて、それにつながるものとして、平成27年から、第三者評価の実施加算が認められている自治体がございます。これは、ECEQとともに第三者評価をパッケージ化したもので、認定こども園の第三者評価を行い、地元の自治体から第三者評価として認められている実績が、年々重ねられているということであります。
 ページをおめくりください。3つ目の幼児教育の理解普及です。これもちょうど10年目になるんですが、我々関係団体で、PTAも含めて「こどもがまんなかプロジェクト」という運動を10年間展開してまいりました。これは、子供の権利が十分保障されていないという日本の実態を、何とか改善できないかという幼児教育に携わる者の共通する思いで行っているものですけれども、既に毎月発行されている「PTA新聞」ですとか、「こどもがまんなかマガジン」。そしてきょうは、上から5つ目になりますけれども、「22世紀の日本が輝き続けるために~幼児教育をもっと豊かに~」という小冊子をお配りしました。このようなものを、保護者関係者に配付しながら、幼児教育理解の促進や啓発活動に取り組んできたところであります。
 現在、これまでの取組を行っていく中で、より公教育の一翼としての責任を担うためには、よりこれらの取組を一旦整理をして、再構成して、より力強く推進していく必要があるということで、この後若干御説明させていただきますメルクマール達成へのチャレンジプランというものを、この秋口9月を目途に我々関係団体の機関決定をもって、推し進めていきたいというふうに考えているところです。
 その項目については、4点ほど御説明をさせていただきたいと思います。
 まず幼稚園教諭等の保育の専門性向上のための取組ということで、先ほど御説明した研修体制の再構築を図っていこうというふうに考えています。1つは、研修内容のアンバランスを解消するための具体的な構造化と支援体制のネットワークを構築するということと、あわせて我々文部科学省の委託事業として、就職活動を支援する保育ナビという全国規模のシステムを構築しているのですが、その中に研修機能も併せ持たせまして、研修の申し込み、エントリーから認証。それから保管まで一括して、関係団体、各園、それから在職期間中はひも付いていますけれども、退職後もその個人のIDを発行することによりまして、職場を異動しても、あるいは再就職を、復職をした場合についても研修履歴が維持できるような体制整備を図っています。
 来年度、10都道府県、政令指定都市も含めまして、10か所ほどパイロット事業で展開をしまして、32年度からは全面展開を図っていきたいというふうに考えているところです。これによりまして、地域格差への対応と各関係機関への連携を図りながら、研修の申し込み、あるいは履歴についても、一元化の管理を実現していくというふうに考えています。
 2番目ですけれども、幼稚園教育等の保育の専門性向上のための取組ということで、免許上進のためのプログラム開発。先ほど申し上げましたとおり、我々だけの力ではかなわないことでありますので、養成校の先生方。あるいは大学機関と連携しながら行わなければならないことでありますけれども、ターゲットを絞り込んで、経験年数15年程度。教頭職や特別支援教育コーディネーター等専門性の高い職務を担う保育者のための免許上進のプログラムが開発できないかというふうに考えているところです。
 そのためには、科目履修のパッケージ化ですとか、場合によっては遠隔地で科目履修を大学等で受講できない環境の職員もおりますので、eラーニング等の活用を図って、受講者と講師双方に有益な手法を検討する必要があるのではないかというふうに考えています。
 目標としては、現在は25%程度の1種免許不足率を、5年後には幼稚園教諭の50%まで押し上げるような努力を図っていきたいというふうに考えているところです。
 次にICTの活用ですけれども、基本的には先ほど御説明した研修履歴等に反映することと、保育実践におけるICTの活用法の共同開発におきましては、これも後の御発表にお譲りしたいのですが、会話や行動分析をするために、リモートセンシングによる調査研究というのは進んできております。それに対するフィールドの提供とあわせて、専門家の研究知を我々実践者の経験値とすり合わせるようなインターフェースをしなければ実際の保育には生きてこないということは予想されますので、そのような場に貢献していきたいというふうに考えているところです。
 もう1点は、タブレット端末等を利用して、合理的配慮に必要な子供たちのプログラム開発。これは既に小学校段階では、視覚障害や聴覚障害児のためのプログラム開発が進んで、実際に行われているわけですけれども、幼児教育、保育段階での特別な合理的配慮や教育的支援を必要とする子供の受入れが進んでいない。ケア保障が進んでいないという実態がありますので、そのことにも資するようなものにしていければなと考えているところであります。
 最後のページに行ってください。ECEQの関係評価につきましては、先ほど御説明させていただきました。コーディネーターの配置を、32年度を目途に300名の配置をして、5年後の37年には、加盟園約8,000か園あるんですけれども、その50%4,000か園のECEQの実施を図っていきたいというふうに考えているところであります。
 このためには、コーディネーターの旅費等の標準化ですとか、実現可能な計画策定。それから、先ほど御紹介しました第三者評価加算の申請の詳細を整理して、これを広げていくことも必要というふうに考えています。ただ、これとあわせて、学校関係者評価の実施率を上げることと、その全ての根拠となります自己点検、自己評価。実はこの実施率は私立幼稚園に関しては、漸減しているような実態も見受けられていますし、評価の結果、公表の仕方、手続についても、より広く自己点検、自己評価の結果が、未就園児ですとか、その園の幼児教育を深く理解したいという方たちにも理解できるような手続を取っていく必要があるというふうに考えているところです。
 最後、幼児教育の理解普及であります。これまでも様々なコンテンツを用意してきたわけですけれども、具体的にもう一段推し進める中で、毎月発行しております「PTA新聞」。これは、会員園の、会員園というのは「PTA新聞」の購入を希望している園・家庭だけにとどまっていますので、現在も4月号は全園・全家庭配布を行っているのですが、来年度は9月号に全園・全家庭配布の時期をずらしまして、「PTA新聞」という媒体を少し様変わりをさせて、冊子化をし、コンセプトブックという形で、幼児教育はどういうものであるのかということを、コンパクトにまとめた冊子を発刊したいというふうに考えています。
 これを全家庭、全園に配布することによりまして、地域や家庭に対して、その園のよさや幼稚園教育要領に基づく豊かな保育実践というものについて、参観日、入園説明会。毎回毎回何度もブラッシュアップしていくような、経験を重ねるような研修会のためのテキストとして、活用をするようなものを具体的に発行していく予定になっております。
 時間、長時間になりました。失礼しました。以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 では、遠藤さん、お願いします。

【遠藤委員】  それでは、私の方からお話をさせていただきます。Cedepにおける調査研究が含意するものということで、幼児教育の実践の質向上に参考になるような、私どもの取組について、少し御説明申し上げたいというふうに思います。
 発達保育実践政策学センターというのは、今から3年前なのですが、2015年の7月に東大の教育学研究科の中に附属施設として開設されたものでございます。4つの部門からなっておりまして、子育て保育の研究であったり、あるいは脳研究。赤ちゃんの脳を含めた発達の基礎研究であったり、あるいは保育・幼児教育に絡む政策の研究であったり、あるいは保育・幼児教育に関わる人材の育成というようなことについて、研究ということを進めていくということを目的にしております。
 そして、昨年度ぐらいから、更にスマート保育というのをもう一つの柱にして、最先端の技術というのを、保育・幼児教育の中にいかに役立てていけるかというようなことについて、いろいろなことを今進めさせていただいております。
 それで、これは一昨年に既に発表させていただいているんですが、私ども全国のいろいろな形態の園にアンケート調査を送らせていただきまして、それで9万人ぐらいの先生方に送付させていただき、結果、その3分の1ぐらいの30,700人の保育・幼児教育に携わる先生方から御回答を頂きました。幼稚園、認定こども園、保育所、それから小規模保育所であったり、認可外保育施設です。そういったいろいろな形態の園にアンケート調査を送付させていただいて、結果3万人を超える先生方に御協力を頂いたということでございます。
 もちろんそれぞれの形態別の結果も持っておりますが、きょうは全部含めた結果ということです。それをお話しさせていただきたいと思います。あるいは、地域ごとの結果も持っておりますが、きょうは全体の結果というところでお話をさせていただきたいと思います。
 それで、全部お話しさせていただくことはできませんので、まず、幼児教育・保育に携わる先生方がどういったことに負担を感じていらっしゃるかということについて、これはある意味直感的に今までも理解されてきたことだと思うのですが、ワースト3です。どういうことに対して、負担を感じているかというと、やはり事務作業の多さであったりとか、あるいは仕事の責任の重さであったり、そして、保育者の不足ということ。結局不足していると、自分自身の負担というのが当然増えていくというふうなところで、この辺が非常に負担感が高くなっている。
 この辺は園長先生とか、主任の先生とか、あるいは1歳、3歳、5歳児クラスごとの負担感ということでありますが、特に3歳、5歳の先生方というのは、事務作業の多さ。それから仕事の責任の重さです。これが非常に多く、そして、3歳から5歳にかけて、事務作業の多さに関して負担感が増大しているというようなこと。あるいは、責任の重さということに関しても、3歳児クラスから5歳児クラスということにかけて、責任の重さというのが増大しているというようなこと。そういうふうな傾向が見て取れるかと思います。
 さらに、私どもはこういう負担感というのが職務満足感であったりとか、あるいは保育者、幼稚園教諭の先生方の体調不良というようなところに、どんなふうに関連しているかというような統計的な解析も行っております。そういうふうな中で見えてきたのは、労働環境待遇にまつわる負担感が非常に大きい場合に、職務満足感が低下する傾向があるということ。そして、体調不良というものが生じる確率が非常に高まるというようなこと。そういうことが見えてまいりました。
 さらには、園内の人間関係にまつわる負担ということを、特に保育者の先生方にとっては、管理職の先生方との関係性というようなところ。これが、どれぐらい良好であるか。そこに負担感¥を感じているかということが、職務満足感というところにかなり強い影響力を持っていそうだということです。当然人間関係に関しての負担を強く感じている場合に、職務満足感が低くなってしまうというような傾向が見て取れたということでございます。
 意外に子供とか保護者対応にまつわる負担以上に園内における人間関係にまつわる負担という方が職務満足感などに負の影響を及ぼすというようなこと。それが確認されたということでございます。
 それで、更にこの調査では、保育・幼児教育の質ということで、構造の質とプロセスの質。両面に関して、調査を行っておりますが、これは時間の関係もありまして、いわゆるプロセスの質。子供に対する関わりの質に関する結果だけを提示させていただきたいと思います。1歳児クラスはここでは割愛させていただきまして、3歳児クラスと5歳児クラスに関しては、これは要するに因子分析という統計の手法を使いまして、どういうふうな側面からその関わりの質ということを考えたらいいかということ。
 結果として、5つの観点から3歳児クラス、5歳児クラスの子供に対する関わりの質ということを考えるのが妥当だろうということ。そして、基本的にその5つというのは、好奇心・探求心を踏まえた遊び・活動というものが、それができているか。あるいは受容・共感・傾聴、それができているか。それから、集団での遊び・活動の支援というのがどれぐらいできているか。温かく受容的な雰囲気。それをどのぐらいちゃんと醸し出すことができているか。生活・遊びの決まりの明示ということが、どれぐらいしっかりできているか。そういった5つの側面ということになりました。
 そして、これは3歳児クラスの結果なのですが、凹凸のパターンを見ていただきますと、基本的には受容・共感・傾聴というところと、集団の遊び・活動の支援というところが相対的に得点が高くなっております。1つの目安として考えていただきたいのは、5点満点というふうに考えていただいて、その5点を、5点にどれぐらい近いかということを5点満点のうちで、受容・共感・傾聴とか、集団での遊び・活動の支援というのは、平均で4.4ぐらいということで、相当高い自己評価がなされているというふうに考えることができるかと思います。
 一方で、若干低いのが、好奇心・探求心を踏まえた遊び・活動の支援。これに関しては、自己評価が若干低くなっているということを見て取ることができるかと思います。5歳児クラスに関しても同様の傾向なのですが、更に5歳児クラスにおいては、温かく受容的な雰囲気。ここの自己評価というのが低くなっております。そういう意味からすると、日本の場合、3歳児、5歳児とも受容・共感・傾聴というところのそこができているというふうな高い自己評価。そして、集団での遊び・活動の支援というもの。それができているというような高い自己評価というのが、傾向として見て取ることができたなという気がいたします。
 実はこの受容・共感・傾聴であったりとか、集団での遊び・活動の支援です。これは心理学的な知見とか理論というところに照らして考えると、受容、共感、傾聴というのは、感情の制御とか調整とか、あるいは調律とか写し出しと言われて、子供の心理的な側面の発達。あるいは社会情緒的な側面の発達に極めて重要だというふうに言われている関わり方の特徴というふうに言えるかと思うのですが、そこにおいて、高い自己評価がなされているということ。そして、家庭とは違う集団の中での大人の関わりというところで、特に重要だということが指摘され始めているのが、集団的な敏感性ということなのですが、集団全体に対する目配りというのがどれぐらいできているかというのが、子供の育ちに深く関わるということが指摘されているのですが、実はその側面に関しても高い自己評価というのがなされている。そういうふうな傾向を見て取ることができました。
 こういうのが、もしかしたら、日本の保育・幼児教育の強みというふうに言えるのかなという気がします。
 ただ、一方で、好奇心・探求心を踏まえた遊び・活動の支援であったり、あるいは温かく受容的な雰囲気。これに関しては、相対的に低い自己評価ということでございました。ただ、これにつきましては、1つ考えられるのは、基本的には日本の場合は特に3歳以上になりますと、1人当たりの先生が担当しなければいけない子供の数というのは、世界基準で見たときには、ある意味一番多かったりします。さらには、子供1人当たりのスペースということを考えたときには、これが非常に狭いというふうに考えることができます。
 そういうふうな中で、一人一人の好奇心というようなものを、これに沿った形の探索ということを促すということをどれぐらいできるかというと、やはりなかなか狭いスペースで、しかもたくさんの子供たちの個別の欲求とか好奇心に応じた関わりということ。やはり難しいというふうに感じていらっしゃる先生が非常に多いかなと。あるいは、たくさんの子供たちが比較的狭い空間の中で生活するというふうな中で、温かい受容的な雰囲気を醸し出すということ。これにも非常に苦悩を抱えているというようなことが、比較的あるのかななんていうふうに、そこの部分は解釈されるような気がいたします。
 次に、リーダーシップということに関する分析結果ということに関しても提示させていただきたいと思います。リーダーシップ。近年は非常に保育・幼児教育の場においても、重要だということが指摘されてきております。その中では、それこそ階層的なリーダーシップ。いわゆるカリスマ的なリーダーシップというよりも、むしろ分散型、協働型のリーダーシップというのが、特に園というふうな環境においては有効に機能するということが議論されてきております。
 そういう中で、既に幾つかの先行研究というようなものの中で、リーダーシップというのをどういうふうな観点から考えていったらいいか。そういう理論的な提示というのもなされているわけですが、私どもはそういう先行研究にならって、項目を設定して、そして日本の園の園長先生であったり、あるいは主任の先生方のリーダーシップということの測定を行いました。若干先行研究と違っているところがあったんですが、やはり因子分析というような手法を用いたところ、結果的には5つの側面。組織運営とか、園の風土。それをしっかり作ることができているか。そういった意味でのリーダーシップあるいは専門性の向上の支援ということがどれぐらいできているか。あるいは、日々の保育実践の援助。これがどれぐらいできているか。あるいは、方針、理念の明示。それがどれぐらいできているか。保護者との連携がどれぐらいできているかというようなこと。そういう5つの側面から、リーダーシップを捉えることができるというようなこと。具体的にどういう項目からなっているかというところは、後ほど資料の方で御覧いただければと思います。
 それで、1つ結果として、ここでお示ししたいのは、じゃあそのリーダーシップが発揮されている場合に、保育者の先生方。幼稚園教諭の先生方の人間関係、負担感であったり、あるいは職務満足感がどういうふうになっているかということ。特に実は組織の運営とか園の風土の改善というところにリーダーシップがしっかり発揮されている場合です。保育者の先生方お一人、お一人の人間関係にまつわる負担感が低くなっている。それから、労働環境の待遇に関する負担感が低くなっている。一方で、そういうリーダーシップが発揮されている場合には、職務満足感。仕事に関して満足感が高くなっているということです。
 現実的にリーダーシップが、特に運営とか園の風土ということの改善というところに発揮されている場合においては、そうしたストレスというようなものが低減し、逆に仕事に関するやりがいというようなことが増進するという。ある意味当然と言えば当然なのかもしれませんけれども、これは実際にリーダーシップについて答えているのが園長先生で、満足感に答えているのが保育者の先生ということになりますので、独立の回答者間でこういった統計的に優位な関連性が認められたということの事実の重みというのは、それなりに注目していいところなのかなという気がいたします。
 それから、さらにはこれ全部のリーダーシップを全部含めまして考えたときには、そのリーダーシップ全体としてしっかり発揮されている場合に、担任の保育者のプロセスの質ということを、正に保育の質、幼児教育の質というのが、確実に高くなっているということを、環境構成にしても、子供に対する関わりにしても、その質というのが現実的に高いという傾向があるということ。そういうふうな中で、リーダーシップというのが、幼児教育保育というようなことの質向上ということを考えていくときには、非常に大きい鍵になっているのかなというようなことを。
 先ほど見ていただいたように職場での人間関係というところに対する負担感というのが、実は職務満足感を非常に低くするというような結果があったわけですが、逆に言うと、そういう人間関係です。職場内の人間関係などにしっかりと配慮がなされていて、園の風土というようなもの。それを温かく受容的なものに高めていくということができると、逆にストレスが減って、満足感というものが増大するということです。そういうような傾向というのが、しっかりとこういう数値の分析の中でも見えてきたということを少し注目していただきたいところだなという気がいたします。
 それで、そういう大規模調査の結果に加えて、今現在私どもが取り組んでいるスマート保育ということ。それを通した幼児教育、保育の質向上の可能性と課題ということについて、お話をさせていただきたいと思います。お手元の資料にあるのは、ごくごく限られたところでございますので、こちらの方のパワーポイントの方を見ていただければと思います。
 現在、私どものセンターというのは、それこそSociety5.0ということ。Society4.0が情報社会ということだったのですが、更に進んで、Society5.0を情報というようなものを取りにいくんではなくて、どんどんとその情報というものが自動蓄積されて、それに対してAIというものを応用していく。そして、IoT、ICT。それを社会の中に実際に役立てていくというようなこと。それが今国も含めて強く打ち出されているわけですけれども、Society5.0というのを子育てや保育分野というところにどういうふうに現実的に生かすというか、反映させることができるか。そういうことに対する取組というのを、今現在しております。
 安全・安心で質の高い保育・幼児教育の実現であったり、保育者の職能開発の支援というところに先端の技術というのを、どういうふうに使うことができるかということの可能性、課題ということを見いだそうというふうにしているわけでございます。
 具体的には、園の中での安全管理というところに役立てることができるだろう。そして、幼児教育、保育施設の衛生環境の整備。そこに役立てることができるだろう。保育者の負担軽減というところに役立てることができるだろう。保育者の専門性の向上。あるいは保育記録の質の向上に役立てることができるだろう。そして、保育記録とドキュメンテーションなんかも含めたそれを共有し、保育者同士。あるいは保護者と共有するというようなことに関して、役立てていくことができるだろう。あるいは、保育記録のデータというものをどんどん蓄積して、それに基づいて研修などにそれを役立てていくということもできるだろう。そんな幾つかの方向性を考えながら、それに関わる研究というのを今現在進めているところでございます。
 既に着手しているものといたしましては、IoTカメラ。非常に小型のカメラと、あるいはAIを用いながら、保育環境というものを評価していくような試みであったり、あるいは乳児版のフードログということで、子供が食べたものをスマホなどで写真を撮るだけで、そのカロリーと栄養素というようなものの自動解析がなされるようなそういうシステムの開発であったりとか、あるいはアタッチメントというようなことを自動的に判断するようなシステムの開発であったりとか、いろいろな試みをしております。
 少し具体的なところをお見せしたいと思いますが、これは東大内の情報理工の山崎先生の研究室の共同ということになるんですが、非常に小さいカメラです。カメラだけではなくて、そこには温度センサーであったりとか、CO₂センサーであったり、紫外線センサーであったりとか、赤外線であったりとか、照度センサー。全て組み込まれています。非常に小型のカメラなんですが、それを室内の幾つか4つぐらいに設置いたしますと、実はそこでいろいろなデータというものが自動的に得られるというような仕組みになっております。
 既に全国いろいろな園の先生方に御協力を頂きまして、実際に設置していただいております。そういうふうな中で、ちょっと見えてきたのは、もちろん例えば二酸化炭素とかあるいは湿度とかに関しては何%以上が望ましいとかっていうような一定の基準というのが示されているわけですけれども、でもそれに現実的にどれぐらいかなっているかというと、実は40部屋ぐらいなんですが、40部屋ぐらいのところで、例えばCO₂濃度っていうのは、1,000ppm超えっていうのが、全てであったりします。要するに、1,000ppm以下が望ましいというのが基準に対して、ほとんどの、要するに子供たちが生活するような部屋においては、それを全て超えているというような状況があったりします。湿度に関しても、実は非常に乾燥のしやすい園環境の中で、子供たちが生活をしているというようなことが見えてきています。
 当然二酸化炭素であったり、湿度とかというようなものは、目に見えないものです。目に見えないので、人間が直感的にそろそろ換気をしようというような判断ではなかなか最適な環境というのを作り出すことができないというふうな中で、こういった新しいそういう技術というようなことを応用していくと、時々刻々と変わる子供たちの園内環境というものを把握し、そして、例えば一定の基準を超えた場合には、アラートというようなところでそれを知らせるというようなことが可能になって、それこそ構造の質という部分で、子供たちの育ちを支えるということが可能になっていくだろう。
 あと、騒音ということに関しても、かなり日本の園環境というのは深刻なレベルにあるというようなことが分かってきています。騒音であったり、あるいは残響ということです。子供たちの声が長く響いてしまって、逆に言うと、要するに人の声が聞こえないというところで生活をしているというようなこと。そういうところも見えてきているというようなことがございます。
 そういう意味で、こういったセンシングを駆使するということには一定の意味があるのかななんていうふうにも考えております。
 それから、人の動きということも、これも要するに自動解析ができるというようなこと。仕組みが今整いつつあります。誰が、要するに園内でどんなふうな行動をしたかというようなことです。それをデータとして蓄積して、一人一人の行動パターンみたいなものを明らかにしていくというようなこと。それが可能になりつつあるという状況がございます。
 こういった技術です。もちろん安全管理というところで言えば、うつ伏せ寝の自動検出などにも当然使えるわけでございまして、そういう意味で物理的な環境ということを改善していくというところにおいては、かなり有効な方向性なのかなというふうに考えるところがございます。
 あとは、これはフードログということなんですが、先ほど申し上げたように、食べたものをどんどんと写真に取り込んでいくというふうな中で、どういうふうな栄養というものがどれぐらいバランスよく摂取されたかというようなこと。それが記録として残っていくということ。さらには、食事だけではなくて、このアプリは睡眠とか排便とか体調ということに関するデータということの蓄積というものも同時にしていくものでございます。そうした特に生理的な側面に関するデータの蓄積というものを通して、子供たちの健康ということ。これをしっかりと管理し、そして支えていくというようなシステムです。そういったこともできるんではないかというようなことを今考えていたりします。
 あとは、これはトヨタさんとの共同研究ということなんですが、先ほども既にお話をしたんですけれども、子供の行動パターンというのを、それこそ小型のカメラというところでデータを収集していくと、さらにはそれをAIに自動認識させていくということができます。私どもはそういった園に協力をしていただいて、子供たちの特にアタッチメントというようなことに関して、人の手によってではなくて、言ってみればAIによって、それを自動認識できるような仕組みということを作ることができないかということを考えてきました。
 アタッチメントというのは、要するに家庭において、2者関係、親子関係なんかでは、よくタイプ分けをしたりするんですけれども、実は集団状況でのアタッチメントというのは、家庭におけるアタッチメントと同じ原理で測定しても、余り役立つことはないんじゃないかということで、逆に言うと、集団状況では怖くなったときにはしっかりと逃げ込む避難所としての保育者、幼稚園の先生とかの機能というものが十分発揮されているか。あるいは、そうした、要するに大人の人を基地として、どれぐらい探索活動ができるかというところ。そこがどれぐらい、その部分が測定できれば子供たちの行動パターンというのをかなり正確に理解することができるんじゃないか。そういうふうな立場で、実際小型のカメラというのを設置させていただいて、そういうふうなことの測定を行ってきました。
 そうすると、いろいろなことが見えてきたとか、これは子供たちの個人認識だけではなくて、要するに感情の認識というようなこともできます。そうすると、例えばどれぐらいポジティブな感情というのが多くなっていったかとか、逆にネガティブな感情が減っていったか。あるいは、園の感情的な雰囲気、風土というのがどんなふうに改善されていったか。そういったことも分かるようになってきます。
 そういうようなことと、あとはやはり子供一人一人の個別の特徴というのも現実的に分かってきます。要するに子供同士の相互作用というようなことというのが、どれぐらい起きているか。あるいは、いざこざ、攻撃行動みたいなものが一人一人の子供によって、どういうふうに違うか。これは、人間の手によるコーディングなんですが、言ってみれば、要するに人間がコーディングしたものを、AIに覚えさせていく。いわゆる人間のコーディングが教師になって、教師信号に対して、AIが学習していく。そうすると、そのうちAIがそのデータを自動認識して、各子供の個別の特徴ということを明らかにすることができるということ。今では80%ぐらいの認識率になっております。かなり人間に近いぐらいまで、AIがそういった認識ができるようになってきております。
 まだまだ課題はあるんですけれども、そういう形で子供の個別の特徴ということが明らかになるということ。さらには、実はこのシステムというのは、それをこういうふうなグラフで表すというか、数値で表すということで、数値で表すだけでは、実は余り園の先生方にお使いいただけないということもあるんじゃないかというようなことを考えて、例えば1日の行動パターンというのを2分とか3分というふうなダイジェストにするということです。園の中での行動パターン。
 特に、例えば非認知というようなことに関して言うと、子供に対して思いやり行動というのをどういうふうに見せたかとか、あるいはそれこそいざこざというようなことがどんなふうに発生したか。そういったダイジェスト版というのを作っていくと、実はそういうものは非常に有効に活用していただけるのではないかなどというようなことを考えながら、システムの開発などもしているということでございます。
 そういう中で、例えば、試みでやってみたこととして、これは保育の世界のあれなんですが、担当制というのがどれぐらい子供のアタッチメントというところに有効に機能しているかなんていうことについての分析結果なども得られております。
 そういうようないろいろな可能性があるということでございます。
 それから、実は、アイトラッカーということを保育者の先生方に付けていただいて、例えば、これは試みにということなんですが、ベテランの先生と新任の先生方がどういったところに注意を向けて保育をしているかというあたりです。きょうは時間の関係で映像をお見せできないんですけれども、実はやはりかなり違いがあるということが分かってまいりました。やはりベテランの先生方は全体に対して視線というものを向けていることが多い。それに対して、新任の保育者の先生方というのは、小さい子供の顔というところにどうしても視線というものを向けてしまう可能性が高いということです。
 視線の動きというのが、ベテランの保育者の先生の方が早いということ。それから、注視する長さというのが新任の保育者さんの方が、注視する。1つのものをじっと見つめる傾向があるということ。特に子供の顔をじっと見つめる傾向があるというような傾向であったりとか、従来わざとか暗黙知というふうに言われていたものなんかをこういう形で可視化していくということができるようになると、言ってみれば今までは経験的に、こういうふうな保育というのが、子供を落ち着かせていたり、あるいは行動の安定ということを図るときには有効だというふうに言われていたものを、もう少しうまく取り出して、見える化して、それを研修などの中で生かしていくというようなこともできるんではないか。そんなことを今考えているというようなことがございます。
 ほかにも労働負担です。幼稚園の先生や、あるいは保育者の先生方の労働負荷。それを精細に捉えるようなシステムというようなことも、今開発しつつあるというようなことを、時間がもう既に来ておりますので、私の発表はこれで終わりたいと思いますけれども、こういった先端の技術というものを使うと、先端の技術を使うということに関しては賛否両論いろいろあると思うのですが、私どもは例えば安全管理というところで、要するに人が楽をするために、こういった技術を使うというふうには考えていないわけでございまして、どちらかというと、それこそセーフティーネットをどれぐらい多重化・多層化していけるかということを、人が当然保育・幼児教育の中心であるということ。これはもう絶対に変わらない事実だと思います。ただし、なかなか人の手だけでは見えないところ。あるいは十分に子供たちに対して、うまく対応できないところ。そういったところに関して先端の技術というようなものを使いながら、子供たちを取り巻く環境が、より安全・安心なものになるように、セーフティーネットを多重化・多層化していくというふうなところに、こういった新しい技術ということをうまく使っていくことができればなというふうに思っております。
 さらには、先ほど申し上げたような個別の子供たちの行動のデータの圧縮とかということができると、これは研修に生かしていただくこともできますし、さらには、それを保護者の方に還元していくということ。あるいは双方向のコミュニケーションというようなことに、こういう技術ということを使っていくというようなこと。いろいろな可能性ということが考えられるのではないかななんていうことを、今思いながら、まだまだ研究の途上でございますけれども、中間成果ということをお示しいたしました。
 以上でございます。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 それでは、お二人に御発表いただきましたので、それらについての御意見、あるいは御質問をお出しいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 なお、お手元に参考資料という形で、これは第1回にお配りした資料3でございますけれども、そこに検討課題例というのが4つあってございます。それらにも結び付けるということで、御意見を頂戴いただければ幸いでございます。
 どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。

【中山委員】  御発表ありがとうございました。
 東委員に質問があります。高知県でもECEQの取組がありましたが、園内研修あるいは公開保育で、質を上げていく際に、事前と事後がとても大事だと思いますが、このコーディネーターの先生方が大事にされている視点と、特に事後の場合に大切にされている視点、やってみての効果というところが、もし分かるようでしたら、教えてください。

【東委員】  あくまで事例のリサーチや調査とか、園内研修大事にしているのは、コーディネーターが基本的に誘導しないということなんです。あくまでも、その問題の自覚化をすることと、あくまでも現場の職員が、自分たちでその課題を紡ぎ出していくということで、ワークショップを中心に行っていくわけです。そのときに、例えば、最初ステップ1のところでの、園長や教頭、主任のリーダーの理念というか、園をこうしたいとか、ここがうちの幼稚園のいいところというところと、そごを起こさないようなバランス調整を図っていくということも、コーディネーターの役割としているんです。
 その上で、公開保育をするときに、こういうところを見てほしいというところの問いを立てて、実際に参観者に保育を見てもらい、その中で気付きを附箋のような形です。問いの欄に附箋をどんどん貼り付けていくような形で、まずは参加者の意見を募っていくわけです。その後に、協議会を、ディスカッションの場を必ず設けて、それもまた修練していくというようなことをまず公開保育までに行うんです。
 そうすると、自ら課題抽出やよさについて、ほかの保育者はどういうふうな見解を持つのかと。自分たちと見方が違うようなことが当然起きてきますから、それによって構造化されるというか、perspectiveに見ることによって、なお、新たな課題が抽出されてくることもあるでしょうし、その辺や当事者が気付かないよさについて、再確認することができるということに、公開保育はなるんです。
 事後の指導に当たっては、その気付きを定着化するというか、改善プログラムを生かすためなので、公開保育で終わってよかったねで終わらないような、正にコーディネートをしていくということなんです。それも、コーディネーターが指導するわけではなくて、あくまでも当事者の園長や主任。あるいは、現任のクラスの担任や、自覚化をしていって、新たな課題だとか、関係者評価や第三者評価につなげていくのであれば、それをもう明確な文字化をしていく。見える化をしていくためのコーディネートを。正にファシリテートをしていくというのが、ECEQの基本的な進め方ということです。
 そういうような進め方をしていくので、遠藤先生のお話でも共通するのかもしれないんですけれども、風土が変わってくる。問題、課題抽出する段階から、一人一人のそれまで持っていた課題意識だとか、場合によってはネガティブなものも含めて、相互に理解をし合うことができる。それは、主任や園長の形的なものではなくて、ビルドアップしていけるということがありますので、それは実は保育を通して、外部からの意見を通して、そのような改善プログラムの職員間の同僚性、関係性も含めて、園内の環境風土が変わってくるということが、実際ECEQに取り組まれた実践の一番の自己評価というんでしょうか。改善評価につながっていくという御意見が多いです。
 以上です。

【中山委員】  ありがとうございました。

【無藤座長】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。

【古賀委員】  すみません。御発表ありがとうございました。京都教育大学の古賀です。
 東先生に今のECEQのことで、さらにお尋ねしたいんですけれども、今、私どもの方でも、公立、私立とか、保育所とか認定こども園であるとか、多様な幼児教育施設が共同的に研修するということを進めているところなんですけれども、ECEQの仕組み、非常にすばらしくて、魅力的で、取組もどんどん進んでいらっしゃるかと思うのですが、他団体との実践知の交流というのを、どうお考えかということを教えていただきたいのと、またちょっと違う視点なんですけれども、きょう御発表のところでは、含まれていなかったかなと思うんですが、私立幼稚園さんの方では、非常に幅広い2歳児保育であるとか、預かり保育であるとかという教育課程外のあたりの取組もあるかと思います。そちらの研修体制ですとか、質の保証のあたりをどうお考えかというところを教えていただけたらと思います。

【東委員】  ありがとうございます。
 ECEQの他団体への交流はなかなか正直、支援に入っていない。まず、我々傘下の私立幼稚園、あるいは私立幼稚園由来のこども園のECEQの実施率を高めていこうというところにまず主眼を置いていますので、なかなか他の公立ですとか、保育所さんとの交流とかは、正直行っていないというのが事実だというふうに考えています。
 それと、後段の課程外の保育については、実は今年度の文科省の深化・充実事業のテーマになっていまして、全国調査をすることにしています。この課程外の事業についても、給付型の一時預かり事業であったり、事業助成型の預かり事業であったり様々混在しているんです。それと実態的に規模の大きい幼稚園だと、預かるといっても50人、60人まだ残っている園もあれば、毎日残っても四、五人というような園もある。それも学年が混在していたりだとか、ある程度学年を整理したり、様々な形態で実施もしていますので、そこで起きてくる問題・課題がまた変わってくるという。まずは、そこの実態調査をして、どのような計画と評価、反省によって行っているのかというあたりから調査を掛けているところです。全網羅的に我々把握しているというところまでは至っていないというのが現状であります。
 未満児については、先ほど研修俯瞰図の中でも意識しているということと、できるだけ既に満3歳保育の中で、学齢2歳のときから既に長くやられてきていますし、先ほど24年度の実態調査でも、2歳児の母子通園という形態もあれば、2歳児から1人でバス通園するような形態の幼稚園もある。これもまた幅広い実態が。その辺についても、今年度は当年度事業にはなっていないんですが、当然いろいろな調査をして、実態を把握した上で、様々な方策を立てていきたいというふうに考えているところです。
 以上です。

【佐々木委員】  失礼します。鳴門教育大学附属幼稚園の佐々木です。
 遠藤先生に教えていただきたいことがあります。今回の先生にお教えいただいた園長、管理職のマネジメントが、保育の質も決定するということについては、本当に身につまされるような思いで聞いておりました。自分自身は、平成元年から附属幼稚園で勤務しているので、大変古参であるのですが、管理職の先生方も、新任の園長先生とか、あるいは今までそういうことをやったことのない方が施設長となって、教育関係以外の方が来られるとかいうことがあって、逆に管理職の方が大変ストレスを抱えているというようなこともたくさんあります。
 そういう園全体というか、組織全体のマネジメントとか、あるいはリーダーシップの方略ということで、きょうお話しくださったほかに何か知見がありましたら、お示しいただきたいと思いまして、質問させていただきます。

【遠藤委員】  きょうはお示ししなかったんですけれども、私どもは、例えば園長先生です。管理者の先生が、例えば有資格であるかどうかというようなことであったりとか、あるいはそれに先行して子供に関連したお仕事をされてきているのかいないのかというようなこと。それによって、リーダーシップというところにどういう違いがあるかとか、あるいはその園の風土とかというところ。あるいは、その中での保育者の先生方の子供に対する関わりというようなところにどういう違いがあるかとかいうことも、実は分析はしております。
 そういうふうな中で、実は現実的には子供に関して余り経験をお持ちでない先生がいきなり管理者になったときには、少なくとも一時的には混乱が生じるということが比較的生じがちなのかもしれません。そういうふうな中で、なかなかうまくリーダーシップが発揮されないというようなことは現実的にあるというような感触は得ております。
 そのあたり、しっかり本当は結果をお示しした方がいいのかどうかというところが、私どもが今逡巡しているところがございまして、ただ、やはりそういった園長先生が、あるいは管理者の先生が、御自身がどういうふうな考えをお持ちであったり、方針をお持ちであったり、あるいはどういうふうな専門性をお持ちであるかということ。これが、園の運営というところに関係してくるということ。これはもう否めないところかと思います。
 そういう意味からすると、これは、諸外国なんかは正にそういう試みが進んでいるんですけれども、管理者の先生、園長先生に対する研修ということであったり、あるいはスキルアップということです。それまで経験をお持ちでないということ自体が、それが悪いということでは決してないと思います。そうではなくて、新しい視点から、それこそ幼児教育を変えていくというような意味では、むしろプラスに働くところもたくさんあるんだとは思いますので、そういう意味からすると、そうしたモチベーションを高く持った先生方がしっかりと研修の中で専門性を高めていけるっていうような、そういうふうなシステムということがむしろ作られるということが、すごく重要なのかなというふうに個人的には思っております。

【佐々木委員】  ありがとうございます。

【無藤座長】  他にはどうでしょうか。 どうぞ。

【新山委員】  今日はありがとうございました。国公幼の新山と申します。
 公立もそうなんですけれども、こども園が増えてきたりとか、預かり保育が増えてきたことも含めて、研修の機会の確保ということが結構大きな問題になっています。
 東先生の方で、ECEQというところで、公開保育をするということですけれども、公開保育は、公立では結構やっている方だと思いますけれども、なかなか公開保育自体もできないということがずっと続いていました。ただ、我々の方でも若い先生たちが増えてきたことで、実際に保育を見合わないと分からないことがとても多いということで、いっとき公開保育がなくなったのを、また再開させてきているところがあります。
 先生に御質問なんですけれども、今までどのぐらいの回数をやっているのかとか、どういう方たちが参観に来られているのかということと、それから今度は遠藤先生や中山先生にも関わってくることなんですけれども、我々は全国組織なので、地方のお話を聞くと、東京なんかはこの園に集まりたいと言えば、交通の便がいいので割とみんな集まれるんですが、遠隔地で「この園にいい保育をする先生がいるよ」とか「そこ見に行きたいけれども、なかなか行けない」という状況があると思うんです。そこに関して、中山先生はいろいろな工夫されていると思いますし、IoTの技術とかを活用したものが何かあればということを、お二人にお聞きしたいと思います。

【東委員】  実は、私立幼稚園も同じような歴史たどっていまして、かつての公開保育研究が、現場の担った職員にとってはつらい場になっているというのでしょうか。経験のある先生から、重箱をつつくように後ろ向きなことばかりを御指摘されてというふうなことで、どんどん衰退していった歴史があるんです。
 その中でも、私北海道ですが、北海道ですとか東北ですとか、意外と地方の方が、公開保育研究も研修大会のときにあわせて行っているケースが多いんです。というのは、大会じゃないと、みんなが集ってなかなか研修機会を持てないということもあるんだというふうに思うのですが、遠く北海道は、ずっとなくなることなく輪番制がほとんどなんですけれども、地域を輪番制にして、公開保育研究が脈々と続いてきたという経緯があります。
 そういう意味で、そういうこともあって、ECEQの手法というものの開発になったという経緯があるんですよね。それによって、今まで公開保育を実施してこなかった地域についても掘り起こしていこうということと、そこを拠点にして、先ほど多分現場の先生方から危惧されるのは、公開保育を行うことが園にとって負担になるんじゃないかということは、我々当然経験値を持っていますので、そうならないような手法の開発。要するに改善プログラムでやった園がよかったというふうな、充実感や達成感が持てるようなプログラム開発をしてきたということがありますので、そのために逆にコストが掛かるんです。何回も事前から訪問することであったり、ファシリテート的なコーディネーターの養成をするために時間が掛かりますので、そういうコストを払いながらも、そういう仕組みを作らないと公開保育はなかなか進まないということで、今取り組んでいるところです。
 面展開するのは、正直まだ難しいので、チャレンジプランにあるように、そこが我々の課題と。チャレンジだということになっております。

 【遠藤委員】  公開保育の重要性、有効性ということを、私どものセンターも非常に認識しておりまして、それに着目して、今後の研修というようなこと。より高度化していくということの必要性というのを強く感じております。
 ただ、公開保育というのをどういう形で、例えば先端の技術を使いながら公開していくことができるかというふうに考えたときに、多分オンタイムでそれをただ流しても、余り意味がないんだろうという。当然カメラのアングルというようなことも含めまして、要するに発信される情報というのは非常に限定されてしまうということがあるかと思います。
 それよりは、どちらかというと、公開保育というようなことを、多視点からいろいろな角度で、カメラなどでそのデータを収集し、さらには、ある程度の編集を加えた上で、それを教材として、全国全ての園の先生方が御利用いただけるような、そういう多分システムを構築した方が結果的には有効に活用していただけるんではないか。ただ単純に普通のインターネットでつなぐということをやっても、余りそれほどの効果はないかなというふうに思っているところがございまして、そういったいってみれば研修のための素材というものを現場の先生方のいろいろな取組というようなこと。これをデータ化して、さらにはそれをうまく編集・加工しながら教材を作っていくというようなこと。それができればいいかなどということを少し今現在検討しているところでございます。

【中山委員】  高知県は、東西に長いので、13に地域を分けて、その中で公開保育を実施する園を決めていただいて、そこに集まっていただくのが一番近い園で保育を見ることができると思います。 
 それ以外に、地域を越えて、他ブロックを見るということも非常に刺激を受けやすいので、市町村を越えて、高知県内でも保育の在り方は多様なため、「こういうやり方、こういう考え方があるんだ」ということに触れることによって、自園の保育を見つめ直すということもできると思っています。
 そのため、13ブロック、13園で行う公開保育の実施日、公開年齢、時間といった公開案内を差し上げ、ブロックを越えての参加も呼びかけています。
 それに加えて、視察を広報しています。公開保育や園内研修等に行かせていただくと、研修に沿いながら見せていただくということになるので、普段の保育を見せていただいて、園の課題に即して聞き取りをさせていただいたり、具体的に見て回らせていただくことも大変重要かと考えています。そうしたことをお勧めし、具体的に実現するために市町村主管課へ説明に上がり、協力を得たりということを、公私立問わずやっている状況です。

【無藤座長】  ありがとうございます。

【神長副座長】 大変興味深いお二人の御発表伺っておりまして、なるほどと思って伺っておりました。私は、園長先生のリーダーシップということで、大変興味深く思ってうかがっていたんですけれども、遠藤先生にお伺いしたいんですが、先ほど、どういうキャリアを持っているかということで、リーダーシップ分散型になったり、いろいろなるというお話だったのですが、私、質問紙調査で、リーダーシップというより園内研修の進め方を調べたときに、園の規模ってすごく大きいなと思いました。園の規模はそれぞれのリーダーシップをとる必要感というのが相当違うかと思うのです。 その辺、先生どんなふうに感じていらっしゃるんでしょうか。

【遠藤委員】  もう御指摘のとおりであると思います。実際、私どもは、形態別の分析もしておりますので、それこそ幼稚園であったりとか、あるいはこども園であったりとか、あるいは小規模な施設であったりとか、それぞれにおいて、リーダーシップというのが、どんなふうに保育者の先生方の保育の質と関連するかとか、負担感と関連するかというような分析もしております。
 そういうふうな中で、やはり規模というのは、非常に大きい要因になっておりまして、やはり大きい組織になればなるほど、実はその中で分散型というか、共同体制を築いていくこと自体にどれぐらいリーダーシップが発揮できるかというところが、実は一番管理する立場の園長先生の大きな役割になるなんていうことを、要するにどういうふうな役割分担というようなことを、この園の中でしっかりとしていくことができるか。そういったことについてのポリシーとか、実際の実践というようなところが、特に規模が大きくなればなるほど、非常に重要になってくるというような、そういう認識は持っております。

【神長副座長】  ありがとうございます。

【無藤座長】  時間は近づきましたけれども、私の方も、もう質問やり取りの時間がないので、感想ということになってしまいますけれども、東先生の御発表の中で、正に今これから考えないといけない論点がたくさんあると思うんですが、例えばいろいろな研修を体系化していくときに、私立幼稚園団体としてのフォーマルなもの以外もあるわけですが、そうすると、個々の保育者にとっての学習履歴をどう保管していくかとか、様々な他の研修に参加したときのポイントをどう記録していくか、評価していくかとか、あるいは、真面目に考えれば、講演に座っていればオーケーではないだろうと思うんですが、そういうことです。そういうことをどこまで踏み込んでいくかということ。
 それから、例えばECEQで半分ぐらいまでに持っていきたいということでありますけれども、率直に言ってなかなか高い目標だという気はするわけなんですが、結局インセンティブが余りないものは、あるところまでは行くかもしれないが、それから先がなかなか大変だと思うので、でも逆に言えばインセンティブどういうふうに作っていくかということと、あるいはインセンティブまでいかないにしても、多分公開保育というのは、公開保育をした側の準備を含めたメリットといいますか。やってよかったという点はあるかもしれないけれども、見る側にとっては、それがどういう学習機会になるのかは曖昧な感じがするんですが、その辺の仕組みづくりはいろいろと考え得る話だと、例えば思います。
 あるいは、免許更新講習とか、上進講習とか、法定レベルであるわけですけれども、それを組み込むためにはどうしていくかというようなことは、なかなか法律上のいろいろな壁もありますけれども、それを考える必要もあるということをいろいろ教えていただいたように思います。なお、これは検討すべきことが多いと思います。
 遠藤さんの発表のところで、特に最後のSociety5.0というんでしょうか。新しい技術を活用するということが、正に東大という環境の中でわくわくするようなことがたくさん出てきて、あと数年後に実用化に向けてということで有り難いと思います。そういうふうに考えてみると、今、働き方改革みたいなことで、労働環境整備とか、働き過ぎは防がなきゃいけないということ。あるいは、そのギャップみたいなことですが、子供の安全を確保しなければいけないことあたりに一番すぐにでも適用できると思いますけれども、その上でこういった技術を活用することが、どういう意味での保育の質の改善につながるのかということが、少しずつ見えてくることを期待して、本当に楽しみな研究を教えていただいたと思います。
 すみません。残念ながら、これ以上議論するゆとりが今日はありません。

【遠藤委員】  1点だけ、よろしいでしょうか。

【無藤座長】  どうぞ。

【遠藤委員】  これは質問というよりは、お願いなんですけれども、私いろいろ子供の発達の学会などに出させていただくと、必ずといっていいほど出る話なんですけれども、こういう形でキャリアアップの研修というのが体系化されて、実践されていくということ自体、非常にこれは方向性としてすばらしいということ。ただ、少し内容を見ていったときに、子供自身を知るというところが、少し全体として不足しているんではないかということを、子供の発達の特徴であったりとか、あるいは発達の仕組みというようなところ。それを知るというところが少し不足しているということと、あと、もちろん一部にはあるんだろうけれども、その入っている内容が若干というか、相当古めなのではないか。半世紀前ぐらいの、もしかしたら発達研究の知見というようなことが、そのまま残っているという場合が比較的多いので、そのあたりをできるだけ新しいものに変えていただき、そして、子供自身を知るというところを少し内容として充実させていただければという、これはそういうふうな学会の中での話ということとして、受け止めていただければと思います。

【無藤座長】  私も全く同感ですけれども、と同時に、現実の養成課程において、バージョンアップしてほしいよねということ。それから、今日のようなレベルの高いところに少人数でも持っていくとすれば、大学院修士課程の活用とか、それに類したもので、最新のところをやっていくみたいなことまで踏み込むこともいずれ考えなきゃいけないと思います。
 ありがとうございました。
 さて、時間でございますので、ここまでにさせていただきたいと思います。
 最後に事務局から今後のスケジュールにつきましての御連絡をお願いします。

【山川専門官】  次回は8月以降の日程で、現在委員の先生方と調整中ですので、決まり次第追って御連絡させていただきます。
 以上です。

【無藤座長】  ありがとうございました。
 以上をもちまして、幼児教育の実践の質向上に関する検討会、第3回を終了いたします。本日はありがとうございました。

── 了 ──

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課