「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキング・グループ(第6回) 議事録

1.日時

平成30年2月8日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3丁目2-2)

3.議題

  1. 「高校生のための学びの基礎診断」に係る意見について
  2. 「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準及び手続等について
  3. 平成29年度「高校生のための学びの基礎診断」に関する試行調査・研究事業の実施状況について

4.出席者

委員

(主査)荒瀬委員
(委員)岡本委員,柴山委員,関根委員,長塚委員,前川委員,宮本委員

文部科学省

髙橋初等中等教育局長,白間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),滝波高校教育改革PTリーダー,田中高校教育改革PT専門官,中村高校教育改革PT専門官

5.議事録


【事務局】資料の1を御覧ください。「高校生のための学びの基礎診断」の制度創設の更なる検討の参考にするために,平成29年12月8日に「高校生のための学びの基礎診断」に係る教育委員会説明会を開催しまして,意見交換を実施するとともに,全都道府県・政令指定都市教育委員会67団体を対象にアンケート調査を実施いたしました。これらによって得られた意見としてまとめたものが下にございます。
 まず,基礎診断として認定された測定ツールの活用に対する教育委員会としての関わり方をお尋ねしたのですが,検討状況として,「教育委員会の一定の関与の下,活用する方向で検討している」というお答えが8団体ございました。理由としては,学校任せではなく,組織的に学力向上を図っていく必要があるためですとか,基礎診断への対応を目的としたワーキング・グループを設置し,自治体としての対応を検討していくというようなお答えでした。
 次に,「現時点では判断できない」という答えが52団体ありました。理由としては,教育委員会の一定の関与の下で活用する方向で考えているが,測定ツールの内容等が明確でないためですとか,本県で実施している学力調査に替わるものとして活用したいと考えているが,内容や金額面の具体を踏まえ,その活用や方法について見極めたいと考えているということですとか,教育委員会が関与する場合,目的や期待される効果を具体的に示す必要があり,実施方式,実施回数,実施学年等について経費負担も考慮した慎重な検討が必要であるためというお答えでした。
 最後に「検討していない」というのが6団体というような答えです。
 次に,教育委員会の関与の内容を具体的にお聞きしました。具体的にお答えがあったものとしては,平成30年度,学力向上に係る外部検証委員会を立ち上げ,これからの時代に必要な「学力」及び学力を把握するのにふさわしい「指標」について定義していき,教育委員会としては,その定義を踏まえつつ,生徒の実態に応じた民間測定ツールを各高校が必要に応じて選択し,実施していくように指導する予定というようなお答えですとか,2つ目と3つ目は同じようなものなのですが,実施時期等の一定の方針の下で,個々の学校や学科・学級等の状況に合った測定ツールを活用していくというような内容でして,3つ目は,その対象学年を高1,高2というように絞っているような内容でございます。
 最後にお答えがあったのは,学力等の実態に応じて学校群等ごとに1つの測定ツールを活用していくというようなお答えでした。
 次に,活用に際して重視する観点をお聞きしたところ,低廉な受検料というようなことですとか,2つ目から4つ目に関してはフィードバックに関する内容ですが,フィードバックが明瞭であることですとか,授業改善や生徒の学習意欲の喚起につながるというようなこと,それから前回からの改善やつまずきの確認が把握しやすいといった内容を挙げられました。最後2つは,高校や生徒の多様性の観点に着目した御意見だと思いますが,多様な学力に応じた難易度が設定されていることですとか,個々の学校や学科・学級等の状況に合っているかどうかという観点を重視する観点として挙げられました。
 2ページ目を御覧ください。
 教育委員会の支援の内容を具体的にお聞きしました。
 お答えがあったものとしては,民間の測定ツールを活用する高校に対し,受検費用の一部を公費により補助するですとか,実施に当たり経費負担の在り方を検討しているというようなお答えがありました。
 次に,教育委員会における高校生の学力を把握するための取組についてお聞きしました。
 まず,実施の有無と今後の予定についてですが,「実施している」というお答えがあったのが15団体ありまして,その15団体のうち,平成28年度に実施した取組の今後の方向性について,更にお聞きしたところ,「当該取組で活用した試験等を基礎診断に置き換える方向で検討している」というようなお答えが3団体,「当該取組で活用した試験等を基礎診断に置き換える方向で検討しているが,当面の間は当該取組と教育委員会における基礎診断を活用する取組の両方を実施する方向で検討している」というお答えが1団体,「当該取組を継続・発展させる予定であるが,教育委員会において基礎診断を活用することは検討していない」というのが2団体,更に「当該取組を廃止する方向で検討しており,教育委員会において基礎診断を活用することも検討していない」というのが1団体,残り,「今後検討予定」というのが8団体でございました。そのほか,「現時点で実施していないが,今後実施する方向で検討している」というのが7団体,「現時点で実施しておらず,今後も実施する予定はない」というのが28団体,「その他」としては,検討中という内容で16団体でございました。
 次に,民間の試験等の活用状況についてお聞きしました。
 各学校の判断により実施しているというのが60団体,教育委員会の策定した一定の方針に基づき実施しているというのが6団体ございました。その具体的な内容としましては,全ての公立高校の全日制・多部制昼間部に対し,民間が提供する国語・数学・英語「読む」「聞く」の2技能の試験を実施しているということですとか,一部の学校に対し,基礎学力を測定する民間の模試を実施しているということ。それから,下の3つについては,いずれも英語に関するものですが,一部の学校に対し,英語4技能を測定する民間の資格検定試験を実施しているですとか,全校に対し英語の「読む」「聞く」の2技能を測定する民間の資格・検定試験を実施している。英語の達成状況を把握し,英語学習への意欲向上を図る一助として,英語の民間の資格・検定試験の受検料を補助しているといった答えがありました。
 次に,民間の試験等の受検に係る支援についてでございますが,支援の内容として,具体的にお答えがあったものとしては,全校又は一部の高校2年生全員を対象に,英語の民間の資格・検定試験の受検料全額を補助するということですとか,義務教育段階の基礎学力の定着が十分でない生徒を対象とした事業において,民間の試験の受検料を支援するといった答えがありました。
 3ページを御覧ください。ここからは基礎診断に係る全般的な御意見を頂いております。
 まず,制度全般に係る御意見としましては,実施に関して「教育課程に位置付ける」ということは好ましいと考える。現在,普通校中心に高1・高2で行われている模擬試験は定着度診断の要素が強いので,レベルを何段階か設定して,現在の模擬試験が基礎診断に移行するのであれば,費用負担もこれまでと余り変わらないので,採用校が多くなると考えられる。民間業者のアセスメントツールが教育課程に位置付けられて,平日に実施できるようになると,週休日の業務が減り,教員にとって(生徒にとっても),多忙化解消,時間創出の可能性が高まると期待できるといった前向きの答えもありました。次に,次期学習指導要領が実施される平成34年度までを準備期間として,教育委員会の関わり方や実施方法を検討しても良いと考えるといった御意見もありました。
 次の3つについては,必要性について疑問を呈するような御意見でございますが,必ずしも認定ツールを使用しなくても良いという現状に加え,活用しなくてもペナルティーがないという状況では,生徒や保護者に対して実施する必要性の説明が難しいということですとか,教育委員会として,授業のPDCAを回すツールとしても機能させるために,各校が異なるツールを採用した場合でも難易度を比較・対照できるなどの一定程度の共通性を確保してほしいということですとか,自校の結果だけなら「基礎診断」に頼らなくても,定期テストや実力テスト等を含めた各種テストや授業の中で把握できるのではないか。「基礎診断」を活用することのメリットを具体的に説明してほしいといった御意見がありました。
 次に,受検料関連としましては,1つ目にありますように,設定金額については企業努力との説明があったが,審査要件として上限を示してもいいのではないかといった御意見がありました。
 それから次に,費用負担は保護者になるために,保護者全員の了解を得るのが難しいかもしれない。様々な家庭状況があり,新たな金銭的負担を掛けることにも問題があると思われる。特に4技能の測定ニーズがあるため利用度が高いと予想される英語の測定ツールに関しては受検料が高額になることも危惧され,国レベルでの何らかの方策が講じられることを望むといった御意見がありました。
 3つ目については,「高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「学習意欲の喚起」を図るために,高校生及びその保護者が費用負担をするという制度になることは疑問であり,県として方針を出しにくいといった御意見がありました。
 最後に,受検料が無料となるよう,全額を国が費用負担すべきといった御意見もありました。
 次に,情報提供関連としましては,1つ目から3つ目の部分に関しては内容的に似ているものなのですが,都道府県や学校が「基礎診断」の活用について判断するのに必要な情報ですとか,それから都道府県教育委員会や高校が行うこと,それから対応の検討に当たり参考となるような文書,こういったものを説明会や通知等を通じて積極的に情報発信していただきたいといった内容でございます。
 次に,4つ目から,次のページの4ページの1つ目にかけての3つにつきましては,こちらは各自治体での予算措置に関わる御意見だということですが,3ページの4つ目の丸にございますように,各都道府県等の教育委員会が,管内の高等学校に「高校生のための学びの基礎診断」についての指針を示す必要があるとのことだが,予算検討に間に合うように他県の状況等を遅くとも平成30年8月中には把握したいということですとか,認定ツールの一覧を平成30年10月に各学校が閲覧できる現在のスケジュールでは,各教育機関及び各学校の次年度予算編成計画に大きく支障を来す。確定した測定ツールの提示は少なくとも現スケジュールより2か月早めることが不可欠である。また,申請状況の情報提供もなるべく早く行ってほしいというようなことですとか,各自治体独自で行っているPDCAを回すための調査があり,当該調査のために何らかの予算取りの時期が早いところだと9月であるので,その前に各事業者からサンプル問題等何らか採用するかどうかの判断材料となるものを提供していただきたいといった内容がございました。
 次にありますのは,予算措置の話とも関連してきますけれども,できるだけ早期に,設置者及び各学校が認定ツールの検討・選択ができるようにしてほしいということですとか,その次の2つは同じような内容ですが,認定に向けて申請をした民間事業者の測定ツール名や,その内容について申請を受け付けた段階で公表してほしいというような内容でございます。
 それ以降については説明を割愛させていただきまして,次は,その他を御覧ください。
 その他の1つ目ですけれども,英語のスピーキングテストが入ったことは大変有り難い。それも含め,思考力・判断力・表現力を問う問題を認定基準に入れていただけるのは,これまでの教育改革を前進させる上で画期的なことであるといった前向きな御意見を頂いております。
 それから,次の4つまとめて同じような御意見ですが,公平性の確保ですとか,進学・就職等への活用に関する御意見になっておりまして,2つ目については,こちらは問題がすぐにネット上にアップされてしまうというようなことで,生徒が実際に受検する前に問題や解答を見ることができるような,こういった状況の中で成績評価の材料の1つにするということには懸念があると。国や教育委員会が主導するものとして実施する以上は,公平性が担保されていないのはやはり問題ではないかといった御意見がありました。
 その次につきましても,実施日が統一されない場合,問題漏えいが生じる可能性ですとか,その次につきましても,結果が将来の進路選考の手段の1つとするとなれば,実施日の設定や欠席や出校停止の生徒への対応,問題の機密性などを検討していく必要があると。それから最後に,大学入試や就職等への活用について,早めの決定をお願いしたいといった御意見がありました。
 資料2につきましては,この教育委員会の意見の詳細の結果になっておりまして,この説明自体は割愛させていただきます。
 その次の別紙1というものは,これは資料2の附属になっておりますので,こちらも同じように割愛させていただきたいと思います。
 資料3を御覧ください。
 平成29年12月に,「「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等について(原案)」を公表いたしまして,平成29年12月15日から平成30年1月13日の期間でパブリック・コメントを実施しました。その結果,提出意見の件数としては141件,意見数としては275件の意見が寄せられました。
 主な御意見を紹介させていただきたいと思います。
 制度全般としましては,上から3つ目までは,制度の必要性に一定の理解を頂いた上での御意見というものですけれども,1つ目から申し上げますと,実施に当たっては,学校において生徒・保護者に対し十分な説明期間が確保できるよう配慮するとともに,実施に向けた詳細のスケジュールを適切な時期に示してほしいといったこと。次に,各学校が独自選択する方向性が良いのか,各都道府県内で教育委員会が選択した「基礎診断」とした方が良いのかを含めた更なる論議が必要であると。次に,「地方公共団体が施策として実施する学力調査」や「校長会等が実施する農業,工業,商業等の検定試験」も「基礎診断」として認定できる緩やかな基準にすべきといった御意見がありました。4つ目以降は,制度の必要性について疑問を呈するものですとか,制度化に反対するような御意見ですが,4つ目のところですが,授業の内容が基礎診断対策となることが懸念されるということで,定期考査などの活用で十分であるといった御意見。次のところですが,民間事業者による測定ツール等が学校の実態に応じて活用されている現状があるので,今あえて文部科学省が基礎診断として測定ツールを認定する必要はないという御意見。次に,3行目からですが,基礎診断の結果を教育委員会が教職員定数の配置などの判断材料とすることは,認定ツールの活用を各学校に強制することになるのではないかといった御意見。
 少し飛ばしまして,2ページ目を御覧ください。
 2ページ目の上から2つ目の丸ですが,学校での実施が前提であり,教職員の長時間労働につながる。具体的に業務削減がなされていない現状を踏まえれば,導入すべきでないといった御意見がありました。
 次に,出題に関することの部分ですが,こちら,上から順に,「学習指導要領を踏まえた出題」が設計されているということは重要であるという御意見。対象を国・数・英の3教科に限定せず,職業学科の学習内容等,広く対象に含めるべきという御意見。「主として思考力・判断力・表現力等を問う問題」に関しては,従来の知識や学力だけを問うのではなく,探求力や批判力など,子供たちの生きる力を測る問題になることを期待するという御意見。それから,記述式問題の導入は受検料の増額につながるため,記述式問題の出題を必須とせず,選択式問題のみでも認めるべきではないかという御意見。
 この次以降は英語に関する御意見になってございまして,この5つ目のところですが,受検料を安価なものとするため,英語については,4技能を測定するのではなく,「読む」,「書く」の技能のみを測定するなど,測定する技能を絞る必要があるのではないかという御意見。1つ飛ばしまして,英語の「話す」技能測定について確立された技術が整わない現段階において,技術開発を期待する目的で出題を行うべきではないという御意見。次に,「英語について4技能を測定することが明らかなこと」を条件とすることは必要であると考えるが,特に「話す」技能の測定手段,場所等に関しては,全ての実施方法,実施場所が具体的に提示されていること等を認定基準に設定することが必要であるという御意見。最後に,「話す」試験の実施は必須としないなど,緩やかな基準とすべきといった御意見がありました。
 次に,結果提供に関することとしましては,認定ツールから分かりやすいアドバイスが提供されると取り組む意欲が湧くのではないか。いいものができることを期待したいという御意見や,診断の結果が,ルーブリックに基づく段階表示など生徒にとって「自らの学修の成果や課題の確認」について可能な限り具体的に分かりやすい形で提供されること,これに加えて学校への提供に関しても,様々な観点から「教師の指導の工夫・充実に資する結果提供」が具体的に実施されることが必要であるという御意見を頂きました。
 次に,運営その他に関することですが,「学校にとって過度な負担が掛からない方法」をとることは重要な条件である。このことを含め,各学校及び都道府県教育委員会等の理解を十分に得られるような認定基準設定が基礎診断の普及には必須であるという御意見。実際に学校の負担にならないよう,「過度な負担」について具体的な例示を示すなど,基準等を設けるべきといった御意見。全日制・定時制・通信制など様々な学校がある現状に鑑み,学校での実施を前提とせず,受検者の利便性や学校の負担を考慮して,学校以外での実施も可能とする必要があるといった御意見。それから,離島・僻地を含め全国どこでも実施されることなども基準に入れるべきといった御意見。「知識・技能を問う問題に加え思考力・判断力・表現力等を問う問題」及び「記述式問題」の出題は重要項目であると考えられるが,「学校における成績評価の材料の一つ」となる可能性も考えられることから,採点における公平性担保が必須であるといった御意見。最後2つは,障害のある生徒への配慮に関するものですが,障害のある受検者等に対する合理的配慮の提供を認定基準に盛り込む必要があるといった御意見。英語の4技能を測定する際,視覚,聴覚に関する配慮の方法を具体的に示す必要があるといった御意見を頂きました。
 次に,認定後の遵守事項についてですが,結果の順位を公表すべきでないことは同意するといった御意見。生徒・学校・都道府県等の間で比較できるような情報の公表は禁止すべきであるといった御意見。それから,「受検した学校等の同意なく,試験等の結果の順位を示すなど生徒・学校・都道府県等の間で比較できるような情報を公表し,又は第三者に提供しないこと」とあるが,受検者の同意が必要であることを明記する必要があるといった御意見。結果情報が外部に流出することを防ぐことは無論のこと,系列の業者間においても情報が共有されることのないよう,守秘義務に対する方策が設定され,関係者に徹底されているか否かを認定の重要な基準とする必要があるといった御意見。最後に,学校等の同意の有無にかかわらず公表しない範囲を予め文部科学省で設定する必要があるといった御意見を頂きました。
 次に,情報提供に関する御意見としては,情報提供に関して,「文部科学省ホームページで公表する」ことが示されており,適切であるといったことや,文部科学省からの情報提供先が「教育委員会等」とされているが,この「等」には私立学校や大学が含まれることを明示すべきであるといった御意見を頂きました。
 4ページの多様なレベルの問題セットについては,「義務教育の内容を含む」測定ツールを作成することについては,高等学校進学率98%という状況の下で必要とする学校等も多く存在すると考えられることから,適切であると考える。このことを含め,高等学校に在籍している生徒の学力は極めて多様であることから,難易度の異なる複数の測定ツールが提供されることを望むといった御意見。それから,異なる事業者の測定ツールを用いることになるので,測定ツールごとの特性や目的,測定ツール間の難易度比較,共通尺度による評価等を俯瞰的に示す資料を作成いただきたいといった御意見。一方で,基礎診断の目的は基礎学力の定着であることから,難易度の異なる問題セットは必要ない。また,同一の学校の生徒であっても学力は多様であることから,難易度の異なる問題セットが提供されることにより,学校が適切な測定ツールを選択することが難しくなるといった御意見を頂きました。
 次に,低廉な受検料に関しましては,受検者の費用負担増が考えられることから,受検料の上限額を設定するなど,認定基準を見直すべきであるといった御意見。それから,次の2つについては同じような御意見ですが,家庭の経済状況に左右されることなく,「基礎診断」が受検できるように,都道府県財政に対する補助金も含め,国による経済的支援を求める御意見となってございます。
 次に,結果の副次的な利用については,基礎診断の結果を指導要録に記載することとした場合,その内容が進学や就職の調査書に反映され,生徒の進路に重大な影響を及ぼす可能性があるといった御意見。基礎診断の結果が進学や就職の選考・選抜の材料となる場合,基礎診断の結果を踏まえた学習改善の取組が正当に評価されないおそれがあることなどから,基礎診断は進学・就職等に活用すべきではないといった御意見。それから,今後の学習に活用する前の段階における基礎診断の結果を総括的な評価を記述すべき指導要録に記録する必要はないといった御意見を頂きました。
 最後,その他については,統一された測定ツールを活用することになると,どこか一部の民間事業者だけが利益を得るようになり,教育が金儲けに利用されるのではないかと懸念する。また,将来的にはIRTなど大規模なシステム開発が求められており,一部の事業者しか対応できず,その他の事業者が参入することが困難になるおそれがあるといった御意見。専門科と普通科との特性を考えなければいけないといった御意見を頂きました。
 今,御紹介しましたパブリック・コメント等で頂きました御意見を踏まえまして,資料4に用意しております「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等について,原案を案の形で修正を施しておりますので,その修正箇所を中心に御説明したいと思います。
 資料4の2ページ目のところですが,2ページ目の2ポツ,枠組み概要のところにつきましては,こちらは文言の適正化の観点から修正を加えているものでございます。
 それから,4ページ目ですが,4ページ目のマル3,運営その他に関することの2つ目のところですが,こちら,情報開示を求める学校等が測定ツールを選択するのに必要な情報や選択に資する情報といったところが,より明確になるように,様式中にある情報開示の項目を脚注にも明記することとしております。
 それから,10ページ目ですが,一番下の方の低廉な受検料の部分ですが,こちらについては大学入学共通テストの大学入試英語成績提供システムの参加要件の中でも,民間事業者に対して,経済的に困難な受験生への検定料の配慮など,適切な検定料であることを公表していることを求めているということや,さきに紹介しましたパブリック・コメントでも,家庭の経済状況に左右されることなく受検できるようにすることを求めるような御意見があったことを踏まえまして,受検料について,できるだけ低廉な価格設定に加え,「経済的に困難な事情にある生徒への配慮など」といった部分を加筆しております。
 変更点としては,主なところは以上になってございます。
 次に,資料5を御覧ください。基礎診断に関する今後のスケジュールイメージです。
 一番上の国の段を御覧いただきたいと思いますが,昨年,2017年12月に認定基準等の原案としてパブリック・コメントを実施いたしまして,本年,2018年2月のところにありますように,本日の第6回基礎診断検討ワーキング・グループでの御議論を経まして,3月には正式に認定基準等として策定・公表したいと考えております。その後,周知・広報活動を行いながら,民間事業者の申請を受け付ける期間がございまして,6月に申請を締め切る段階で,その時点で申請のあった測定ツールについて情報提供を行うことを考えております。
 申請のあった測定ツールにつきましては,7月から9月頃に掛けて,文部科学省において専門家による審査会での審査を行い,10月から11月頃に,認定した測定ツールの一覧を公表し,詳細な情報提供を行う予定です。
 これと並行いたしまして,2段目の教育委員会等の段にありますように,これまでも教育委員会向けの説明会等を通じて,教育委員会としての基礎診断への関わり方を検討いただくようお願いしているところですが,基礎診断の活用方針や支援策の検討を継続的に行っていただき,検討の進捗状況に応じて,段階的にその活用方針や支援策を現場の学校にもお示しいただきたいと思っております。
 そして,一番下の学校の段にありますように,各学校では,教育委員会の方針の下に,基礎診断の実施時期や回数等を含めた活用方法の検討ですとか,個別の測定ツールの吟味・検討を行っていただき,次年度の年間指導計画等に適宜位置付けていただいた上で,平成31年,2019年4月から本格的に基礎診断が活用されていくことを期待しております。
 最後に,資料6を御覧ください。基礎診断の結果の進学・就職等への活用など副次的な利用については,パブリック・コメントを実施しました認定基準等の原案におきましては,上の破線で囲まれた枠内にありますように,基礎診断の結果の進学・就職等への活用など副次的な利用については,実施方針に基づき,本制度の着実な定着を図りつつ,高校生の学習意欲や進路実現への影響等に関するメリット及びデメリットを十分に吟味しながら,高等学校や大学等,民間事業者をはじめとする関係者の意見を踏まえ,具体的な検討を行うことが望まれるとされております。
 この点について,基礎診断の制度がスタートしようとする現時点での考えを整理したものが,真ん中の実線の枠内でございます。
 先に,経緯として改めて確認いたしますと,実線の枠内の一番下の米印にありますように,従来,「高等学校基礎学力テスト(仮称)」として検討されていた際には,「試行実施期」(平成31年度から34年度)は,結果を入学者選抜や就職には用いないとされておりました。この点,基礎診断においても,主たる目的が学習改善・指導改善を通じたPDCAサイクルの促進であって,進学・就職等への活用を目的としていないということについては変わりありませんが,多様な民間の試験等を認定する基礎診断の仕組みに改めたことに伴いまして,既に進学・就職等に活用されている民間の試験等についても認定される可能性があるということで,従来の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」のときとは一部異なる事情が出てきているということですから,1度考え方を整理したいということでございます。
 具体的に御説明しますと,実線の枠内の1ポツ目から記載していますように,基礎診断は,生徒自身の学習改善や学校・教師による指導の工夫・充実など,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの取組を促進するために活用されることを主目的としているため,これに必要最小限の要素を大綱的に要件化したものであり,不正防止のための措置や公平性を確保するための措置まで要件としておりません。
 このため,基礎診断の認定を受ける測定ツールの中には,これら不正防止や公平性確保のための措置を講じていないもの,例えば,一定期間内において実施日を自由に選択できるものや,毎年度同一の問題セットの出題をするものなどが考えられますが,このようなものもあれば,これらの措置を講じている資格・検定試験のような性格のもの,例えば,実施日が統一されているものや,試験監督に関する基準が設定されているものなどもありまして,一様ではないと考えております。これまでも様々な資格・検定試験が進学・就職等に活用されていることもあり,仮に基礎診断の認定を受けたとしても,このようなものまで一律に進学・就職等のために活用してはならないという趣旨ではなくて,あくまでも個々の測定ツールの性格を踏まえた上で,活用の有無,具体的な活用方法等を判断する必要があるということでございます。つまり,現時点で,その制度設計上,基礎診断の結果を,進学・就職等のために活用することは想定しておりませんが,少なくとも,既に進学・就職等に活用されている実態がある資格・検定試験のようなものについてまで進学・就職等のために活用できなくなるといったことではないということでして,2017年度の基礎診断の仕組みを創設する現時点では,このような考え方であるということを,資料の右側のスケジュールと対応させております。
 いずれにしましても,資料の下の黄緑色の部分にありますように,基礎診断の結果の副次的な利用につきましては,基礎学力の習得のための学習動機となるといったメリットがある一方で,選抜等に過度に利用される場合に,試験対策に重きを置いた指導を引き起こしかねず,多様な教育活動の展開が阻害されるおそれがあるといったデメリットがあることも踏まえて,今後,本格的に基礎診断の利活用が始まる2019年度以降の実施状況を検証しつつ,その取扱いの更なる明確化等を検討してまいりたいと思っております。
 説明は以上です。

 

【荒瀬主査】ありがとうございました。大変丁寧な御説明を頂きました。
 それでは,今,資料としましては,資料1から資料6まで,あるいはまた別紙という形のものもありましたが,これについて御質問とか御意見を頂戴したいと思います。ただ,全体に関わりますので,少し分けて,まず教育委員会の御意見ですとかパブリック・コメントに関しての御質問とか御意見とかございましたら,お願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。


【前川委員】少し質問なのですが,資料1の3ページの一番上の意見ですね。基礎診断が入ると多忙が解消する,時間創出の可能性が高まると書いてある,そういう意見と,あと資料3の方の2ページの上から2つ目の丸は全く逆のことが書かれていると思うのですが,現場では,これはどちらの意見が信頼すべき意見なのでしょうか。


【荒瀬主査】宮本委員,いかがですか。先生にお尋ねするのは,本当に申し訳ありませんが。


【宮本委員】多分,学校によって随分状況が違うのではないかと思います。だから,一律に,本当にこれが入ると楽になるとかということではないと思うので,実際には,どういう形でこれを学校で使うのかという使い方で大分変わってくるのではないかと思っています。


【荒瀬主査】多分,お書きになった方がどういう使い方をするのかということを想像しながら書いてらっしゃるので,その想定に基づく御意見ですから,必ずしもそのとおりかどうかというのは,全体に対しては言えないということでよろしいですよね。


【宮本委員】そうです。はい。


【前川委員】いずれにしても,余り負担が掛かるようではまずいですよね。


【事務局】若干補足いたしますと,意見としては両方捉え方がありますけれども,教育課程に位置付けるということで,教員にとって多忙解消等につながっていくというふうなことの御趣旨として,推測する限りですけれども,こちらについては,いわゆる休日,土曜日を中心に,民間のテスト,業者の模試のようなものも含めまして,かなり活用されている実態というのが現場にあるようでして,そういったものが,いわゆる土曜日,週休日に行われているということで,先生も生徒も,それぞれ休日に出てきていて,そういうテストを受けているということを今やっているのだが,そういうものが仮に教育課程の中で,正規の授業の中で,学習改善としてPDCAを回すために,こういった基礎診断を取り組んでいくというようなことを,いわば正式にといいますか,教育課程の中に位置付けてきちんとやっていくと,指導計画の中に位置付けてやっていくということであれば,今まで休日にやっていたようなものが本来業務としてやっていけるので,その部分がかなり大きく異なるのではないかというような御意見があるのかなというふうに思っています。


【荒瀬主査】今,御説明いただきましたが,いわゆる模擬テストと,こういった学習改善にも資するようなものとの取扱いは,これは違いますよね,今,ただ,前川委員おっしゃいましたように,本当に過度な負担になるというのであれば,それはよっぽど考えなければならないということですよね。


【関根委員】この教育委員会等の意見,私もそういうところにいたので,なかなか概要が分からないので,判断がしかねるという状況だったと思うのですが,今度,こういう形で認定基準とか手続等が出てくると。そうすると,具体的に,来年度,再来年度ですか,やっていくときには,大体予算でいうと8月ぐらいから検討を始めますので,その段階で,ある程度の判断基準が出るような資料が欲しいという意見が多分あったと思うので,ここら辺は,やはり対応していってほしいなと思います。
 また,検討してないという団体もあるようなので,やはり学びの基礎診断がどういう,何のためなのかというのは,基本的に重要性が分かっていないといいますか,そこがちょっと懸念されますので,もう一度きちんと教育委員会なり学校なりに,きちんと広報していただきたいなと。
 特に,次回の改訂される学習指導要領では,何を学ぶか,どのように学ぶか,何ができるようになるかと,この3点ですよと。今までは何を学ぶかだけだったのですね。3つになったということで,何を学ぶかというのが学力の3要素ですね。前から言っているのですが。どのように学ぶかというのは,対話的で深い学びであると。最後の,何ができるようになるかというところが,やはりよく見えてこないのだと思うのですが,これの1つが基礎診断だと私は思っているのですね。そう理解しております。
 つまり,子供たち一人一人の学力を保障しなくてはならないというときは,何ができるようになるかですから,その保障したというところの証明をしていく必要があるというときに,基礎診断というものを国で民間と一緒に用意したと。ですから,それは確かに必ずしも強制ではないので,自由参加ですけれども,これをやらないのであれば,別の形で都道府県なり学校なりがきちんと学力保障,証明するということをする必要があるのだというところは,きちんと教育委員会には伝えなくてはいけないと思います。でないと,今の,何で高大接続改革をしていくのかという面でいうと,一人一人の学力をきちんと保障する。そのためにPDCAも回す,個人でも回すし学校でも回すと,そういう仕組みとして基礎診断を提示しているのですから,これはやはりほかの方法でもいいのですけれども,きちんとそういう保障をするということを,教育委員会としてはきちんと,各学校がどのようにやっているかということ,また教育委員会としてどうやってやるかということは,きちんと公にする必要があると思います。そういった意味で,文科省としても,各都道府県教育委員会に対して,どのようにするのですかと,どのように学力保障するのですか,しているのですか,そういうことの調査は是非やっていただきたいなと。そうでないと,学習指導要領の改訂の,何ができるようになるかという部分については伝わらないまま行ってしまう気がしてしようがないのです。ほかの2つの部分はかなり浸透しています。どのように学ぶかについては,かなり浸透してきていますが,何ができるようになるかという部分については,まだまだ理解が足らないと思うので,そうした意味での基礎診断であるということを,やはりきちんと示していってほしいと。そのために,先ほどの,戻りますけれども,きちんと学校や教育委員会が活用できるようにするための情報提供とか,そのタイミングですね。時期等はきちんと押さえてほしいなと思います。


【荒瀬主査】ありがとうございました。
 時期のことは資料5で先ほど中村さんから御説明がありましたけれども,もう少し,この部分,改めて御説明いただけますでしょうか。


【事務局】今,御指摘いただきましたように,教育委員会等からも,早めにその判断材料となるものを頂かないと,予算要求も含めて検討がなかなか間に合わないといった御意見を頂きましたので,こちらといたしましても,次の6月末で申請を受け付ける段階で,そこから審査に入っていきますので,厳密には,その後,認定されるかどうかというのは,まだ分からないわけですけれども,申請段階の情報といったものを頼りに,教育委員会としてのスタンスを決めるといったことにもつながっていくというようなお声も実際に頂きましたので,そういったことに資するように,我々として,申請された書類を100%丸ごとお渡しできるということは難しいかもしれませんけれども,少なくとも,その測定ツールの名前ですとか,事業者とか,あとは価格とかですね。いわゆる基本となるような情報につきましては,その申請を受け付けた段階で速やかに情報提供して,都道府県における検討の材料となるような形で取り組んでいきたいと思っております。


【荒瀬主査】では,そういった御意見を踏まえて,今回,「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等について,原案ではなくて案という形でお示しいただいたわけですが,このことにつきまして,御意見,御質問,頂けますでしょうか。
 今回の案は,基本的には,これまで議論してまいりました原案を,そのままほとんど踏襲しています。頂きました御意見,御懸念も含めて,この形で対応したいという判断であります。この高大接続システム改革という大きな流れの中での学習指導要領の改訂も視野に入れて考える訳ですが,何ができるようになったかということを,どう測定するのかということが,生徒の学びの質を十分なものにしていくためにも,そのための授業改善にも欠かせません。それに使っていく1つのツールであると。これしかないという訳ではありませんが,生徒の状況を診断しつつやっていくということで,これまでの議論を踏まえて,ほぼこれまでどおりのものが出ているわけですが,よろしいでしょうか。


【長塚委員】この原案を案にするに当たっては先ほどのアンケートで,いろいろな御意見があったことを受けて,実際には,数点確認したようなことで留まっているわけですが,結局,今まで議論が相当されていて,例えば,先ほどの働き方が厳しくなるのではないかとか,いや,そうじゃなくて,運用の仕方で随分と変わるものであるとか,この原案は,相当それらのことも踏まえて議論された結果であるというふうに私も思いました。ということで,これに異論がないというか,これでよろしいかなというように思っているところでございます。


【柴山委員】私も長塚委員と同じ意見です。全体的に今回の高大接続ということを考えたときに,共通テストと学びの基礎診断の,この2つが動いているわけです。共通テストの方は選抜目的,学びの基礎診断の方は指導目的ということで,原理的には競争原理と,それから質保証の原理で動いているという根本的な違いがあるという認識で,発言してきました。
 それで,細かいところはともかく,制度全体としては,私のような測定技術の方の人間から見ると,無理のない,合理的な,割合成長可能性含んだ制度設計にしていただいたのかなというふうに全般的には感じております。まだまだ,当然,ブラッシュアップしていかないといけないところはあるかと思いますが,まずはスタートの時点としては原案というか,この案に私は賛成いたします。


【前川委員】この厚い冊子の1ページのところに,3という,基礎診断に望まれる事項というのは,当初から望まれることと,今後の発展的な改善という2つに分けて書いてありますけど,実際,その3のところを読んでみると,どれが最初から望まれていて,どれが今後というのが,少し分かりにくいかなという気がしています。
 例えば,11ページのところ,異なる事業者の測定ツール間の難易度比較云々というのが2つパラグラフがあって,最初は「望ましい」という文章で,2番目は「望まれる」という文章なのですが,これ,「望ましい」の方は最初からで,「望まれる」というのは今後なのかとか,ちょっと,この辺のところ,どう。3の開始時点で望まれることと,始まってからというところ。すいません。私,前回休んだものですから,少し聞き漏らしたところがあるかも分かりませんけれども,幾つかの,この3の取扱いに関して,どこが最初からで,どこが今後なのかというのを,はっきりした方がいいのではないかなと思いました。


【事務局】御指摘ありがとうございます。
 前回も同じような趣旨の御意見を頂きまして,それで工夫はいたしたつもりですけれども,なかなかその辺は難しい部分もございまして。
 このローマ数字3の中には,おっしゃるように,運用開始当初から望まれるものと,将来的な検討課題と2つ入っているということなのですが,主には,いわゆる運用開始当初から求めるということに関しては,開発をする民間事業者に対して,運用開始当初から,こういったことが望ましいというふうな形でまとめているものが主になってございまして,一方で,将来的な課題につきましては,どちらかといえば国ですとか,この制度を作る側に対しての検討課題というものをまとめたようなものになっているということでございまして,具体的に示していただいた,異なる事業者の測定ツール間の難易度比較,共通尺度による評価,この部分につきましては,業者が異なる場合の共通性を確保するということですので,単一の業者に求める内容ではありませんから,どちらかというと制度設計側,国側の方で検討すべき課題というような受け止めでありまして,その中で何ができるかというのは,今後,この3年後の検証・見直しといったことを想定しておりますので,引き続き検討していきたいと考えております。


【前川委員】はい。そういうような切り分けが全てのこの項目に関してあるということですね。分かりました。


【荒瀬主査】9ページからの3のところですよね。今こうして時間を置いて読み直してみると,そこのところが必ずしも明確でない部分もあるかもしれませんが,だから伝えていく際に,十分御注意いただくということが必要かということを思います。あるいは,若干の修正が必要ならば,それも含めて。 今の件に関しまして,何か御意見がございますか。よろしいですか。
 そうしましたら,まさに今のところにも関わるのですが,その資料4で申し上げますと,12ページに出てきていて,別途資料6といたしまして,今回,これまでの経過と,これからどうしていくかということをまとめたものをお作りいただいたわけですけれども,結果の副次的な利用に関する事柄につきまして,これ,今すぐに決められないという面もあるわけですけれども,御意見,御質問等ございましたら,お願いをいたします。


【柴山委員】資料6の一番下の米印の尚書きのところで,念のために質問いたします。英語の資格検定試験の取扱いというのは,基礎診断の方の基準というか,認定手続と,それから大学入試センターが別途検討ということは,これはたとえ同じ英語のそういう測定ツールがあっても,それは別途,別々に認定をするというふうな趣旨で書かれているということでよろしいでしょうか。


【事務局】御指摘いただきましたとおりの理解でございまして,この基礎診断につきましては,認定基準に適合しているものを認定していくという手続で進めると。それとはまた別途,こちらの大学入試センターの大学入試英語成績提供システムの参加要件が示されて,今,申請を受け付けていると思いますけれども,それはそちらで,また別途,検討がなされているところでして,それぞれの基準も別ですし,目的も違いますから,それぞれ別々の手続によって,認定というか,参加要件の方は参加するということですけれども,手続が進められていくということでございます。


【柴山委員】先ほど申し上げた競争原理と質の保証原理という原理が違うものは,同じ測定ツールであってもやはり使い方が違うと思います。今お答えいただいて,それは別々の基準で照らして十分であるかどうかということを判断するということで,合理的かなというように思いました。ありがとうございます。


【荒瀬主査】今の点,非常に大事なことで,同じ測定ツールであったとしても,共通テストで使うものは選抜ですし,こちらの方は指導の改善,あるいは生徒自身が自分の学習目標の設定ですとか,もう少し頑張ろうとか,そういったようなことを考えるためのものでありますから,どういった結果が返還されてくるかというのも当然違いますので,そこのところは基礎診断は基礎診断として使えるものということですね。よって,この赤の部分ですか。資料6でいうと,真ん中の赤のところで,要は,場合によっては基礎診断の認定を受けたものの中には,既に大学入試等で使われているものもあり得る可能性があるということでありますから,ただし,それはしかし,あくまでも指導の改善とか,生徒の学習に資する形として結果返還がされるという,そういうものであって,そこのところは使う性質が違うということですね。そこは見ておかなければならないということであります。


【柴山委員】何で原理が違うということになぜこだわっているかと申し上げますと,今回の高大接続システムというのは,「多面的評価」とかというキーワードが入っていますように,多様性みたいなものを何とか広げていこうとしているのだと思います。どうも基礎診断の最初の頃の議論ですと,基礎診断も選抜みたいなイメージであったのですけれども,質保証という原理で見ていきますと,学校側のカリキュラムマネジメント,それから,個人のレベルでのPDCAサイクルみたいな,全体としての改善システムの中で,質の保証と言ったら高校生に失礼ですけれども,そこで保証された高校生でありますよという使い方も当然できて,そういう高校生なら大学に来てくれてもいいですよという判断も当然可能です。大学入試にはそういう使い方をされている測定ツールも当然包含されていきますから,その辺,全然原理が違うのだというところで切り分けしておいた方が,今回の高大接続システム改革の一つの理念の多様性みたいなところもきちんと両方から保証できるのかと思います。


【長塚委員】高大接続改革の中で,いわゆる大学入試のセンター試験に代わるものは,当初,複数回実施することが原理的に構想されて,最終的にはそうではない形で落ちついたわけです。しかしながら,英語に関する外部検定を利用するということにおいては,実は複数回実施の外部検定を利用するということにつながっていたり,あるいは,こちらの基礎診断の副次的な利用の,いわゆる進学に使われるという意味合いでは,現在でも,例えば,大学の推薦入試などでの調査書に書き込むことができるようなものとして使われているわけです。今回のこの副次的な利用の考え方は,実はその辺がつながっていて,切り分けるとは言っても,現実上は実はつながっている。ただし,複数回の活用に関して,あるいは外部検定の活用に関しては,今まさにこれから慎重に進められようとしているのだろうと思いますので,そういう意味では慎重に進めるのだろうと思いますけれども,実はもともとあった議論の複数回の試験というようなことの可能性を,実はこれはたまたま示してしまっている,その道を作っているとも言えるのだろうと思うのです。
 ですから,いずれ基礎診断の副次的な利用と大学入試のテストの関連性が,たまたまこの部分では実はつながってしまっておりますから,今後それがどのように変化していくか分かりませんが,外部検定が英語だけでない部分でもつながっていく可能性があるのではないかと思われます。もちろん,今,これをそうしろとかそういう意味合いではありません。しかし,これはそういう可能性を,実は図らずも道を作っているものであると言えます。これは同じものをどう見るかということでありますので,そういうことになるのだろうとも見ております。
 念のため,申し上げました。


【荒瀬主査】ありがとうございます。共通テストの議論の中での複数回実施というのとは,私はまた少し質が違うとは思っておりますが,いろいろなお考えがあるのは当然のことかと思います。ただ,あくまでもこの会議は基礎診断のことということでありますので,そこのところはしっかりと線引きをしておきたいと思います。
 ほか,いかがでしょうか。この副次的な利用は今後検討していくということで,実際に実施していく中で,先ほど御説明も頂きましたが,この資料6にあるとおりでありまして,今ここでは結論は出せないわけであります。そもそも,どういった基礎診断の申請があるのかということさえ,今,分からないわけでありますので,したがいまして,そういうことを見ながら,あるいはまた実際にやっていかれる高等学校や教育委員会等の御意見も聞きながら考えていくことになろうかと思いますが,このことは現時点ではこれでよろしいでしょうか。


【長塚委員】くどいようなのですが,現場なので,指導要録にどう書くかとかいう問題なのです。基これから各民間事業者の方のネーミングが出てくるとは思うのですが,今使われているネーミングをそのまま残される基礎診断の認定を受けるものもあるだろうし,「基礎診断」という冠があって,その中の一つとしてなってくるものもあるのだろうと思うのです。そういう意味では,先ほど整理していただいた副次的な利用に資するところの意味合いで指導要録に書いたり,それを調査書に書いたりしていくことになるので,現在のものを否定するものではないということですから,そのまま基礎診断のものが実は進路にも使われていくということにはなりますよと,それを否定してないのだということの確認が先ほどされたので,現場でもその辺を受け止めていくことになると思います。確かに,改善には使うのだけれども,最終的な進路にも使うことになっていくということの両面性があるということだけは,現場で困らないように,それでいいのだという確認を現場は求めてくると思います。そのことだけは押さえておきたいと思った次第であります。


【柴山委員】たびたび済みません。ここで申し上げるべきことかどうか,よく分からないのですけれども,この制度を運営していくときに,私自身,大学に移る前に民間の採用試験を作っている会社に勤めていて,テスト開発とその品質保証の仕事の経験がございます。そのためテストの開発がいかに資本力,技術力が必要かということを,実感といいますか,体感として持っております。もちろんこの制度は,まず第一に,高校生のための制度になるようにというところが一番優先だと思います。
 それに加えて,この制度にいわば協力してくださっている中小の民間企業の方々の活力もそがないように,この制度を丁寧に運営していっていただきたいということを,一委員,としてお願いしたいと思っております。


【宮本委員】ここに書かれてある文言だけだと,なかなか具体的なイメージが湧かないので,議論がなかなかかみ合っていかないのだろうと思います。例えば,これまでも様々な資格検定試験が進学,就職等に活用されています。例えば,民間の英語検定みたいなもの,あるいは専門高校が行っています様々な各種試験,これは今も長塚先生がおっしゃったように,調査書に書いているわけです。ここで書かれているものがそういうようなものを指すのか,あるいは,新たにこれから開発する試験も含めて,それに当てるのかというのは,これはまだ今のところでは何とも言えないということですよね。ですから,現段階ではそういういろんな可能性があるのだということで,これはいい,これは悪いというような話は出てきたところで判断するしかないということだと理解したほうがいいと思います。 ただ,これから認定される可能性のあるものの中には,既に今言ったような形で,進路のところで使われているものもありますよ。そういうようなものも,新しく基礎診断という枠の中に入ってくる可能性もありますよというぐらいの認識でよろしいのでしょうか。


【荒瀬主査】ありがとうございます。全くそのとおりではないかと思います。それでよろしいですね,今のお話のとおりで。ありがとうございました。
 あと,これ,基礎診断の副次的な使い方ということで,前にも出たと思うのですけれども,大学に送られることが,単に選抜に使うという目的だけではなくて,それこそ初年次教育に生かしていくということも想定されるわけです。ユニバーサル化の時代の中で,基礎学力が十分でない大学入学生がたくさんいるのも事実ですから,その中でどうしていくのかというときに,入ってくる人たちが高校までにどんな学びをしていたかという,これは大変大事な資料になるのではないかということも思っております。
では,次に進ませていただきます。またございましたら,後ほど出していただくことにしまして。
 それでは,三つ目の議題であります。「高校生のための学びの基礎診断」に関する試行調査・研究事業の実施状況について御報告いただきまして,その後,質疑の時間を取りたいと思います。


【事務局】それでは,資料7を御覧いただければと思います。 今年度行いました試行調査の実施状況について御報告させていただきます。資料7の1ページの「実施期間」とは受検期間のことであり、対象校と受託事業者の間で個別に日程調整の上,受検日程を設定しています。実施対象は,実践研究校20校全てにおいて,1年生と2年生を対象としております。
 試行調査につきましては,公募を掛けて決定した各事業者に委託して行っていますが,継続団体の学校については1事業者に,新規校については,教科などによってそれぞれ複数事業者に担当していただく形となっております。
 現時点では,テストが終了して間もないところであり,今後のスケジュールとしましては,採点・分析を行った上で,来月には受検校における指導改善に資するデータを提供する予定です。
 2ページは各実践研究校における受検日等をまとめた資料です。このうち,新規団体を中心に,私ども事務局で試行調査の実施日に学校を訪問させていただき,試行調査の様子を見せていただくのと併せて学校や教育委員会の方から取組の状況についてお話を伺いましたので,3ページ以降にその概要をまとめています。
 主なものを紹介させていただきます。3ページの上の表が訪問校です。2ポツの「受検の様子」につきまして,全般的にはテスト実施そのものについては混乱が生じることはなかったという状況でした。これは,実践研究校の教職員の皆様方の御尽力によるものかと考えております。
 生徒の受験の様子としては,おおむね真剣に受検をしている様子でしたが,学校やクラスによっては,一部途中で断念をしたような,机に突っ伏してしまっているような状況の生徒も見られたところです。
 英語のスピーキングについては, CBT方式で実施したところ,発話できている生徒も見られる一方で,一部,ほとんど発話ができてないと思われる生徒も見られました。
 CBT方式については,生徒からは,紙とCBTとでは,やはり紙の方が慣れていてやりやすいという反応であったと聞いています。それから,CBT方式については,パソコンの操作には慣れているので問題ないという学校もある一方で,キーボード入力が厳しいという学校も一部見られました。
 4ページの(2)の「事前準備・実施面」につきましては,新規校では,各教科とCBT調査においてはそれぞれ受託事業者が異なっており,各受託事業者とやりとりするのに労力を要したというところでありますとか,事業者ごとに実施方式や実施マニュアルが異なっていたことから,様々な事前確認や問合せに手間が掛かったということで運営負荷が大きかったという御意見を頂きました。この点,継続校については,1事業者で3教科を実施したということもあろうかと思いますが,運営準備をスムーズに進めることができたという状況です。
 英語については,スピーキングテスト
は, CBT方式で実施しましたが,その際,今回の調査では事業者によるサポートが入ったうえでの実施でしたが,特にCBTのシステムトラブルが起きたときに対応が大変なのではないかと。今後,学校だけでシステムを使うことになると,トラブルに対しての対応が大変なのではないかという御意見を頂きました。
 5ページは,CBTについて,特にCBT方式に伴う入力ということかと思いますが,試行調査に先立って,特別に情報教育の授業を行って対応したという学校もありました。
 (3)の「問題内容等」について,英語については,一部,設問文が日本語でなく英語でなされた問題もありましたが,設問については日本語でないとなかなか厳しいという学校も一部ありました。
 それから,丸の四つ目のところで,思考力・判断力・表現力などを問う問題への対応について少し不安を感じているという学校もありました。
 (4)の調査日程につきまして,今年度の試行調査日程の設定に当たっては,昨年度の試行調査における実施校の御意見も踏まえて, 1月に設定をしたところではありますが,訪問した各学校の御意見では,2月実施の方がよいとか,又は1月までがよいといったように,学校によって,それぞれ希望する時期が異なっている状況でした。
 6ページは,試行調査の状況を拝見させていただくとともに,実践研究校の取組などについてもお話を伺ってまいりましたので,いくつか紹介させていただきます。まず,授業改善への取組については,各学校ともいろいろと御努力をされておられまして,指導改善に向けた取組を進めているとのことでした。
 丸の4番目のところでは,例えば,公開授業の実施に当たって,教員が三,四名のユニットを作り,その中でお互いの授業を参観し,参観者がコメントや評価を書き込むための様式も作り,検討会を行って成果や課題を共有するといった取組を行っている学校がありました。
 また,自校の基礎学力の定義をどこに置くのかというところで,学校独自のスタンダードを構築して共有する取組を行っている学校もありました。
 その次に,プロジェクターやタブレットを使った,いわゆるICTを活用した授業については,是非このような授業を進めていきたいと考えているけれども,機器の台数の問題や事前の準備などに時間を要するといったような課題を挙げる学校もありました。
 続きまして,(2)の「民間試験・教材の活用」については,多くの学校において,基礎学力を把握するための民間の試験であるとか,検定を活用しているといった状況が見られました。
 一方で,学び直しの教材を用いた学習を続けることで成果があったという声もある一方で,高校生のプライドの面では動機付けにならなかったという両面の課題を挙げた学校も一部ありました。
 7ページのを(4)の「高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善のための研究開発事業」,いわゆるPDCAサイクルを構築する事業に取り組んでみた感想等として,生徒の変容をどのように測るのかということがなかなか難しいという御意見もありました。PDCAサイクルを回していく中で,どの取組がどのように効いたのか,あるいは,しなかったらどうなったということの把握がなかなか難しく,PDCAサイクルの構築に関する取り組みを行う上で悩ましいとの御意見がありました。
 最後に,(5)の「県独自の学力調査とその活用」では,高知県を訪問させていただいたときに,教育委員会から伺ったものですけれども,高知県では,「学力定着把握検査」というものを実施されていて,民間事業者のテストを使っておられるということでしたが,生徒の成績,生活面,学習状況の把握や,各学校での授業改善に活用されているとのことでした。受検結果を基に,各学校で分析の上,「学力向上プラン」というものを各学校独自で策定し,それを県教委の指導主事等と共有いたしまして,このプランを基に学校と教育委員会が連携して取り組んでいくという取組でありまして,私どもの学びの基礎診断の活用方法としても参考になる取組ではないかということでお話を伺いました。
 続きまして,8ページですが,この試行調査の中では,教科のテストと併せてアンケート調査等を実施しております。こちらの資料については,速報のために一部データを集計したものであり,御参考に紹介させていただければと思います。
 今回,中間集計を行ったのは,継続校4校,新規校4校の8校分のみであり,全体の傾向を示すものではないことにと御留意いただければと思います。また,アンケート項目についても,教師用,生徒用,それぞれ大変多くの設問を用意していますが,中間集計で取り上げましたのはごく一部であることにも御留意いただければと考えております。
 項目だけ紹介させていただきますが,まず,教師用につきまして, Q1から10ページのQ7までは教育課程全般と学習指導や学習評価に関する設問の例です。
 Q3につきましては,生徒が問題や課題を解決する際に,「分からないときでも諦めずに考えようとしていますか」という設問であり,これは先生に聞いているのですが,後ほど出てまいります生徒向けのアンケートでも同じ質問をしており,学校側の認識と生徒側の認識を比べるようなことができるといった設問も一部設けています。
 11ページから13ページの, Q8からQ13までは科目ごとの指導と評価の状況に関する設問の例です。
 続きまして,13ページからは生徒用の設問です。生徒用のQ1から15ページのQ5までについては,学校内外における学習状況, Q6については,生徒が希望する進路に関する設問の例です。Q7以降は,各教科,科目に関する設問の例を挙げております。
 なお,このアンケート調査につきましては,今後,本体調査である国語,数学,英語の結果とのクロス集計分析も行い,来月には学校に提供することとしており,学校における学習指導改善等の参考にしていただければと考えております。


【長塚委員】全て実証的に調査の上で進めていくことは非常に重要なので,このような試行調査,そして,その上で在り方を決めていくのは非常に重要だと思っておりますので,このような取組,もう2年目かとは思うのですが,非常に意味があると思っております。
 しかし,その上で,あえて,ここに民間の方のお力で,統一のテスト作りをしているわけでもないわけですよね。ですから,その狙いは,実施方法などについて,これまで余り知見のなかったことについての調査をしているということ。例えば,英語のスピーキングの方法論,あるいはCBTという,これまで各学校で行われていなかった方策についての調査をされているのだろうとは思うのですが,そのように受け止めてよろしいでしょうか,この狙いは。


【事務局】基本的には,おっしゃるとおりでございます。あと,できれば,このような問題がいい問題であるとか,そういったご意見を学校の先生方からも伺いながら,問題例のような形で一部を公表していくことができたらと考えております。
【長塚委員】その上で,こうやって結果を拝見しますと,CBTに関して,ある意味,将来形かもしれませんが,診断に非常に有効な方策であると思われます。PISA型のテストなどもCBT化しているなどを考えれば,非常に重要な取組だと思うのですが,いかんせん,やっぱり設備環境が不十分であるとか,あるいはキーボードの操作ができないとか,そういうことが改めてはっきりしてきているわけですよね。そういうことについてはどうするのかというようなことを,この調査結果からより明らかにして,直ちにできることばかりではないですけれども,ここから導き出した一つの結論として出していく必要が大いにあるのではないかと感じたところです。


【荒瀬主査】ありがとうございます。これは試行調査ですから,いずれ終わるわけですけれども,こういった調査は教育課程の実施状況調査とかでもやっていらっしゃるのですよね。【事務局】方式は異なると思いますけれども,実施状況調査の中でもやっているのではないかと思います。


【荒瀬主査】試行調査では非常に興味深い結果が出ていると聞いています。【柴山委員】このテストのCBTとかIRTとか使って,新しいテストの形式や在り方,診断の在り方を探っていくときに,一つは,企業サイドに要求性能仕様書を出して,その要求性能に合うようなプロトタイプを複数作ってもらって,コンペをして,どれを取るというタイプと,国がお金を出して,技術開発をして,それを一般に広げていくやり方があります。テストという抽象的なツールを扱っていますから,なかなか狙いが定めにくいのですけれども,どっちのスタンスで試行調査をやっているのかをはっきりさせられた方が,試行調査の意味みたいのがよりはっきりするのではないでしょうか。
 確かに,これからCBTとかIRTとかを使って大規模テストはどんどん普及していくとは思います。それは当然起こることで,その非常に重要な開発の最初の段階にいらっしゃるような印象を今受けましたので,余計なことかもしれませんけれども発言させていただきました。


【事務局】ありがとうございます。CBTについては,ICT環境の面によるところも大いにあるのかなと思います。今回の試行調査においても,学校の設備だけでやり切ったところは一部にとどまっておりまして,事業者さんが学校にパソコンやタブレットを持ち込んで,ようやく実施できたというところや,設備があったとしても,インターネット回線の状況によって,一度にアクセスが集中すると厳しいとか,そういったところもありますので,状況によるのかなというところではありますけれども,今後,コンピューターならではの問題を出せるとか,あとは即時性という優位性もありますので,そのあたりは引き続き研究ができたらとは考えておりますが,予算の面もございますので,引き続き委員の御意見を念頭に置きながら進めていきたいと考えております。


【荒瀬主査】これ,問題自体は業者の方に基礎診断ということを意識して作ってくださいという形で,もう御依頼なさっているという形ですよね。


【事務局】はい,先ほどの資料7の21ページに「参考」ということで「本体調査における出題の枠組み」という表がありますが,このような仕様をこちらから示しまして,各事業者に問題を作っていただきました。なお,昨年度の試行調査では基礎的な知識・技能を問う問題を中心として併せて思考力・判断力・表現力等も問う問題をバランスよく取り入れるという形で実施しましたが,今年度は,思考力・判断力・表現力等を問う問題に特化をするという調査方針で取り組んでいるところです。


【荒瀬主査】ありがとうございます。お尋ねしてばっかりで申し訳ないのですけれども,問題自体に対する学校の評価というようなものは取っておられますか。


【事務局】今回,学校を訪問させていただいた中では,一部,この教科の問題がちょっと難しいかなとか,そういう感想を頂くこともありましたが,受験の様子から見た感触ということもありますので,正確には採点結果を見てみないと何とも言えないところかとは考えているところです。
 なお,各事業者において,自分が作った問題に対して,事後アンケートということで,生徒に対して問題の難易度や感想,学校に対して問題に関する所見等を取っていただいていますので,そのあたりも,実際の解答状況と併せて分析をしますと,もう少しいろんなことが見えてくるのかと考えています。


【荒瀬主査】済みません,もう一つ,お尋ねしたいことがありまして,これで2年やりましたよね。1年目と2年目で変化があったということを答えていらっしゃる学校とか,あるいは教育委員会とかはありましたか。


【事務局】まず,今年度から取り組んでいただいている学校におきましては,まだ準備段階ということで,来年度から本格的に取り組んでいくという感触でした。昨年度から取り組んでいただいているところも,先ほど御紹介したように,生徒の変容をどのように把握して,どのようにPDCAサイクルに生かしていったらいいのかについては実際には難しいという感想がありましたが,テストの成績は伸びているという事実はあるものの,それはこの取組によるものなのかどうかという,取り組みの成果がはっきりとしないところもあり,いろいろな検証が必要なのかなと思います。各学校とも一生懸命に取り組んでいただいている中で課題を明らかにして,更に改善を図りながら進めておりますので,一応,期間としては,昨年度から取り組んでいただいているところは3年間ありますので,もう少し長い目で見ていく必要があるかと考えております。


【長塚委員】この基礎診断は,民間事業者の方にいろいろなタイプの問題を作っていただいて,いろいろな方策でやっていくことをよしとして,むしろ意味があって,そうしたわけですけれども,そうすると,こういうテストの仕方も,例えばCBTにしても,各事業者のある種の方法,それぞれの方法とかやり方になっていくのだろうと思うのですね。それはそれでよしとして進めようとしているわけですよね。しかし当初は,何か統一された方策のために,統一した,ある種の決めを作っていく必要性があったので,試行調査も必要だったかとは思うのですが,現段階では,もうそれぞれのやり方でよしとすることの中で得られる知見を,それぞれがむしろできるだけ共有するようなことを,国がそれを全体に還元していくようなことをしないと,試行調査の結果が余り生きないのではないかと思われます。
 例えば,少し話は戻るようですが,都道府県単位の自治体のいくつかで,もう各テストをやっていらっしゃるわけですよね。そういうところでは,そこには相当な知見があるのだろうと思うのですね。ただし,やっていらっしゃるのは,実は自治体といいながらも,各事業者の方が応援してやっていらっしゃるようなことがあるのだろうと思うのです。それが今度は,国としてこれを認定した中で,ほかの県でも使っていくというのでしょうか,各県単位だったようなものが,あるいは事業者単位だったものが,国の中でいろいろ活用されていくという,全体をつないでいくような,知見をつないでいくような役割が国のこれから,認定後の役割となっていくのだろうと思うのです。
 そういう意味では,都道府県で相当やっていらっしゃっている知見などをもっと,オープンにしていただいて活用したいところですね。各自治体の公費でやっていらっしゃるわけですが,事業者を通じて,実はほかのところにもそれは生きるのかもしれません,間接的には。そういう全体が,認定ということを通してノウハウがつながっていくような,そういうことを推進していただければなと思います。各民間事業者の方には,それぞれの,ある種の企業の中での秘密部分があるのかもしれませんけれども,しかし,例えば本案件後半に「基礎診断に望まれる事項」の一つとして記されている「異なる事業者の測定ツール間の難易度比較・共通尺度による評価」の構築など,そういうものが共通されていく中で認定していくことの意味が生きてくるのだろうと期待しています。少し回りくどい物言いをしましたけれども,全体を通じた感想を持ったところでございます。


【荒瀬主査】ありがとうございました。
改めて全体を通じましていかがでしょうか。今の試行調査の内容も踏まえて。


【岡本委員】この試行調査にも関係するのですけれども,「高校生のための学びの基礎診断」に関する試行調査研究事業というのは,一義的には高校生の基礎学力の定着に向けた学習改善が目的で,その中で,今回のこういう基礎診断みたいなものをどうやって使っていくかということだろうと思います。
 したがって,この研究事業の役割は,大ざっぱに分けて二つあって,初めてやってみたCBTとか,いろいろなテストがうまくこなせたかというのと,同時に,どういう学力定着に向けて前進があったかというのを知りたいと思うわけであります。
 そういうことを考えれば,いろいろ困難もあるけれども,我々がよく言う言葉で,優良事例みたいのもあるはずなので,困難はこのようにしてうまくいったとか,こんないいことがあった,事例でいいのですけれども,ということを,こういう研究に協力された学校,あるいは教育委員会に話してもらって,そうすると,先ほど出た,例えば,ほかの教育委員会や学校もいろいろ心配なところが少しは先へ進もうと思うのかと思うので,是非そういう御工夫をお願いしたいと思います。
 2点目は,私のところのページ数でいくと,資料7の17ページ,通し番号だと何ページなのか,生徒のアンケートのところです。数学になっているので一言申し上げますと,ここで生徒のアンケートが行われているわけです。「数学の学習が好きだ」,「そう思う」「どちらかといえばそう思う」,40%って,結構悪くないのではないかと思うのですけど,ほかの調査に比べれば。それよりも,その次の「数学の学習は大切だと思いますか」,七十何%。次を取ってみると,「数学の学習をすれば,普段の生活や社会に出て役立つ」,多いわけですよね。「数学の学習は,受験に関係なくても大切だと思いますか」,やはり多いわけです。これは,自動的に多くなったわけではなくて,恐らくこの間の,一義的には高校生,偉いねって言ってあげればいいのだけど,学校の先生方,随分頑張ったねということの表れだろうと思うのです。
 一方では,例えば,クエスチョン16とか17にあるみたいに,「数学で学習したことを,日常生活や他教科の学習で使おうとしていますか」とか「数学の授業で,数学の知識や技能を日常生活や社会の場面に利用することがありますか」という部分は余り多くない。しかし,クエスチョン16,17というのは,詳細を私は知りませんけれども,間もなく発表される次の高等学校の指導要領の要にあるところですよね。だから,こういうところがよくなったということならば,それはエビデンスの一つでしかないけれども,かなり教育がよくなったのかなと思われるので,そういう点でもこの資料は結構使えるのかなと。
 一方,12ページを見ますと,今度は先生方に,「日常生活や社会の場面に数学を利用する活動を取り入れた授業を行っていますか」というと,「どちらかといえば行っていない」が50%。これは,こういうところに改善の余地があるのかという目で見ていましたので,これも結構教育の現場では役に立つデータかな,そういうのをフィードバックすることも大事かなという,それだけの発言です。


【前川委員】この試行調査で,かなりの数の問題が作成されて実施されたと思うのですけど,これは今後,何か文科省で利用される予定はあるのでしょうか。公表若しくは,先ほど長塚先生がおっしゃっていたような,将来の関係付けのために,この問題を利用してとか,そういう計画は。

 


【事務局】試行調査は昨年度と今年度の2回行いましたが,両社のテストにIRTを用いて一部共通問題を設定するといった設計にはしておりますので,全体的に公表するとなりますと,調査の精度の問題で課題もあろうかと思いますので,どの辺まで公表するかというのは,また御相談などをさせていただければと思いますけれども。


【前川委員】いや,問題を公表するということではなくて,今後,ここに出ている報告書以上の研究というか,調査活動はまだ続いていくという感じなのでしょうか。


【事務局】おっしゃるとおりです。これまでの調査で使用した問題についても活用しつつ,一部共通問題として活用したりしながら,予算の関係もありますけれども,引き続き必要な調査に取り組んでいきたいと考えております。


【関根委員】せっかく最後ですので,要望という形でお願いしたいのですが,結局,これは子供たち,生徒にとってもPDCAで回して学力を伸ばしていく,保証していくということ,学校としても,PDCAを回していくということ。これ,民間企業にとっても,民間が入ってくるということは,PDCAを回しながら民間の中でどんどん改善していってほしいという点で言うと,例えば,学校でやったときに,PDCAを回したときに,こういうことをやったらよかった,成果があった,そういうものの一つが情報提供。ただし,実を言うと,私の経験でも,いいものの情報を提供しても意外と流通しないのですよ。ですから,いろんな面で,例えば,戦後,私なんか高校でしたけれども,高校が70年ぐらいあって,その間にいいものがあったにも関わらず,きちんと蓄積,流通してないのですね。そういった意味では,蓄積するだけでもだめで,流通する仕組み,つまり,PDCAを回して,こういうことをやったらよかったというものが広がっていくためには,学校間のネットワークとか学校間で学び合う,そういうネットワークがないと,実は学んでいかないんですね。
 ですから,そういう意味で,学力保証ということで,子供たちの力をきちんと学力を保証していこう,そのためにPDCAを回していこうというのですから,国としても,学校間のネットワーク,学びのネットワークが何らかのプラットフォームを作るような形も研究していかないと,単に基礎診断をやったらば必ず上がるかというと,そうではないのですよね。そういう学校間のネットワークじゃないですけれども,都道府県教育委員会間でもネットワークがないですから,そういうところが後押しできるようなこともやっていかないと,こういう診断をやれば必ず伸びていくわけでもない。確かにPDCAを回しますから幾らかましですけれども,でも,PDCAを回しても,自分のところだけで考えてやっていたのでは進歩は遅いですから,やはりいいものを取り入れる。取り入れるためには,そういうネットワークがないと,意外と取り入れないです。そういう点での工夫も是非研究していただければ有り難いと思います。


【荒瀬主査】ありがとうございました。これからに向けた御提案を頂きました。恐らく事業者の方は,同じ基礎診断を使っている学校に呼び掛けて,どういった使い方をするのがいいのかといったようなことをなさると思うのですけれども,これ,余りがちがちにならない形で,国がそういった機会を提供していかれることも非常に大事ではないかと思います。


【宮本委員】今のお話と関連ですけれども,やはりそういう意味では,できるだけ情報をオープンにしていただいた方がいいと思います。診断という使い方だけではなくて,その問題をヒントに,自分たちの学校で少し工夫をして,こういうことをやってみようとか,そういうようなものに使っていくためには,材料となるものは,できるだけオープンにしてもらう。それをどう活用するかという方法まで,例えば,教育委員会が絡んでとか,いろんな形でできるのかと思うのです。
 診断をすればいいだけじゃなくて,目的は診断を使って,どう子供たちの学力を上げていくかということですから,そのためのヒントになるものは,どんどん,どんどんオープンにしていく,いい取組はどんどん広めていく,そういうことを重ねてやっていかないと,多分うまくいかないのかと思います。
 最後ですけれども,この案自体はこれでいいと思うのですけれども,一番心配なのは受検料のことです。結局,いくらいいものであっても,受検料が高ければ,活用はなかなかできない。教育委員会からのアンケートでもありましたし,やはりいろんな意味で,費用をどう安く抑えることができるかということが重要です。あたりです。これは,申請する民間事業者がそれぞれ考えることと書いてあって,要件として低廉なものにすることとは書いてありますけれども,やはりそこのところを何とか,国も通して下支えをしていただかないと,なかなか定着していかないと思います。
 特に,学びの基礎診断は,多くの高校生が対象になる,対象にしなくものですので,そこのところを本当にこれを定着させるためには,国としてこれを定着するための財政面,経済面での後押し,これも併せて考えていただかないと,せっかくいいものを作ったけれども高過ぎてちょっと無理だよねとか,そういう学校,あるいは,受けたくても受けられない子供たちがたくさん出てきてしまったのでは,せっかく作っても意味がないと思いますので,是非そのあたり,なかなか難しいとは思うのですけれども,併せてお考えいただきたいと思います。


【荒瀬主査】ありがとうございました。まずは定着させることと,その後どうするかということですけれども,診断の定着にはお金が掛かります。毎度のように出ていますけれども,教育予算を増額していただきたいですよね。授業料を無償にするのも大事です。それは間違いありませんが,教育そのものにお金を掛けることは大変重要なことではないかと思います。是非その点もよろしくお願いしたいと思います。
 これは常に言いっ放しで,どうなるかということですが,文科省の方では当然受け止めてくださって,今後,具体化がどうなるかは別といたしまして,是非よろしくお願いしたいと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 そういたしましたら,本日御議論いただきました認定基準の案ですが,最終的な取りまとめにつきましては,私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。(「異議なし」の声あり)


【荒瀬主査】ありがとうございます。なお,御意見とかお気づきのこととかがございましたら,今日以降でも結構ですので,事務局にお寄せいただければと思います。
 では,本日の議事はこれで終了したいと思います。本当にありがとうございました。
 閉会に当たりまして,高橋初中局長がお見えですので,御挨拶を頂きたいと思います。


【高橋初等中等教育局局長】このワーキング・グループも,本日で一区切りということになりますので,一言御挨拶をさせていただきます。
 昨年の7月に,ちょうど私が着任してすぐ,この御議論を始めていただきまして,約7か月にわたりまして,皆様方,大変お忙しい中,この学びの基礎診断の実施方針を踏まえた認定基準や手続の具体的設計について大変熱心な御議論いただきました。この場をおかりして,重ねて御礼を申し上げたいと思います。
 特に荒瀬主査には,非常に重要かつ多岐にわたる課題について議論の取りまとめを頂いたことにも併せて御礼を申し上げたいと思います。本日は,認定基準の案が主査御一任となりました。本日の議論も踏まえまして,皆さんにはまた御相談をした上で,今年度中には認定基準を策定・公表するための準備を進めてまいりたいと考えております。
 その上で,文科省としては,基礎診断制度の円滑な立ち上げ及び本制度の普及定着に向けて積極的な周知広報に取り組んでまいります。また,
 本日は受検料についてのお話も宮本委員からございましたし,主査からも言及がございました。委員の皆様からの御指摘はしっかりと刻み込んだ上で,対応も併せて考えていきたいと思っております。
 それから,高等学校の学習指導要領も,いよいよ今,パブリックコメントを公表すべく最終段階に入っております。年度内に策定,告示の方向で,現在,最後の準備を進めております。次の学習指導要領の対応など,必要な措置を講ずるため,この基礎診断制度の定着を図りながら,引き続き検証,見直しを行っていくことが必要でございますし,更にそれを踏まえた発展も考えていかなければなりません。このワーキング・グループ自体は一区切りとはなりますけれども,是非引き続き,荒瀬主査をはじめ委員の皆様方の更なる御指導を賜りたいと思いますので,併せてどうぞよろしくお願い申し上げます。


【荒瀬主査】ありがとうございました。7か月ということでございましたけれども,その前の検討の段階から考えますと,相当な長い期間,御一緒させていただきまして,いろいろと議論を重ねてきたわけであります。最後に当たりまして,先生方の御知見を注いでくださったことに対して本当に感謝を申し上げたいと思っております。
 さっきもお話が出ましたけれども,認定基準が決まっていくことが,すなわち高校生の学びが深まっていくとか充実していくことにすぐつながるわけでは決してありませんので,これから各高等学校でありますとか,あるいは設置者である教育委員会などの皆さんが一緒になって,高校生の力,学力がしっかりとしたものになるようにしてくださることを心から御期待申し上げて,このワーキング・グループを終えたいと思います。ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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