「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキング・グループ(第5回) 議事録

1.日時

平成29年12月5日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F 3F1特別会議室 (東京都千代田区霞が関3丁目2-2)

3.議題

  1. 「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準及び手続等について
  2. 「高校生のための学びの基礎診断」に関する試行調査・研究事業の公募結果について
  3. その他

4.出席者

委員

(主査)荒瀬委員
(委員)岡本委員、清水委員、柴山委員、長塚委員、根岸委員、藤森委員、宮本委員

文部科学省

白間大臣官房審議官、滝波高校教育改革PTリーダー、田中高校教育改革PT専門官、中村高校教育改革PT専門官、桜井国際教育課課長補佐

5.議事録

 

(1)「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準及び手続等について

 

【事務局】資料1を御覧ください。「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等について(原案)といたしまして取りまとめを今回お配りしております。

 資料の1ページ目から御覧ください。1ページ目の前のページに目次としまして,この取りまとめの構成が書かれておりますけれども,ローマ数字1としまして,この基礎診断の認定基準・手続等,それからローマ数字2としまして,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクル構築のための測定ツールの効果的な選択・活用ということ,それからローマ数字3としまして,基礎診断に望まれる事項という三つの構成で成り立っております。

 それでは,資料1の1ページ目から,ローマ数字1の「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等についてですが,まず,「1.趣旨・目的」といたしまして,平成29年7月13日に文部科学省が公表した「高校生のための学びの基礎診断」実施方針に基づき,義務教育段階の学習内容を含めた高校生に求められる基礎学力の確実な習得とそれによる高校生の学習意欲の喚起を図るため,「高校生のための学びの基礎診断」の仕組みを創設することにより,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの取組を促進し,もって高等学校教育の質の確保・向上に資することを趣旨・目的としております。

 「2.枠組み概要」としましては,基礎診断は,高等学校段階における生徒の基礎学力の定着度合いを測定する民間の試験等を文部科学省が一定の要件に即して認定する仕組みと考えております。

 「3.活用の基本的な考え方」としましては,基礎診断は,高等学校における多様な学習成果を測定するツールの一つであり,民間事業者等から高等学校の実態に応じて選択可能な多様な測定ツールが開発・提供され,その利活用が促進されることが期待されるとともに,基礎診断の結果は,学習成果や課題を把握することにより,生徒自身の学習改善や教員の指導の工夫・充実,学校における成績評価の材料の一つなどに活用されることを基本と考えております。

 「4.認定基準等」としまして,これ以降,認定基準,それから認定後の遵守事項,認定の効果,それぞれ説明しておりますけれども,2ページ目から認定基準が始まりますが,まず「丸1 出題に関すること」といたしまして,学習指導要領を踏まえた出題の基本方針を定め,当該方針に基づき問題が設計されていることとしております。

 次に,対象教科は国語,数学又は英語とし,共通必履修科目を中心に出題すること,義務教育段階の内容を含むことを明らかにしていることとしておりますが,ただし書といたしまして,義務教育段階の学習内容の定着度合いを測定することを重視することを明らかにしている測定ツールについては共通必履修科目からの出題を少なく設定すること,あるいは,学習進度に配慮して出題範囲を設定する場合において,受検時期に応じて共通必履修科目からの出題を少なく設定し,又は義務教育段階の内容を含まない設定とすることは,差し支えないこととしております。

 次に,主として知識・技能を問う問題に加え,主として思考力・判断力・表現力等を問う問題を出題することを明らかにしていること。

 それから,主として思考力・判断力・表現力等を問う問題として,一定数の文字や数式等を記述させる記述式問題を出題することを明らかにしていることとしております。

 それから,英語は「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を測定することを明らかにしていることとしておりますが,ただし書といたしまして,国語,数学及び英語の3教科セットの測定ツールにおける英語の「話す」技能については,平成33年度までの間に利活用されるものに限り,測定することに代えて問題,解答例及び採点基準を提供することとしても差し支えないこととしております。

 こちらにつきましては,同じページの脚注3で補足をさせていただいておりますけれども,国語,数学及び英語の3教科セットの測定ツールについても,英語4技能のバランスのとれた育成・評価を促進する観点からは,本来の4技能測定の機能が具備されることが望ましいとした上で,「話す」技能測定の機能が具備されていない場合においても,学校におけるスピーキング試験の実効性を高める観点からは,問題,解答例及び採点基準にとどまらず,実施マニュアル(試験の運営例など),得点ごとの応答例,採点研修用ツール等が提供されることが望ましいとしております。これらを活用して,学校等で実施・採点を行うことにより,求められる英語4技能のバランスのとれた育成・評価に資することとなるが,学校等で採点した結果を事後の学習改善や教員の指導の工夫・充実により生かすことのできるよう,その結果を集計・分析するサービス等が提供されることも効果的であるというふうにしております。

 この脚注の内容は,後ほど出てきます9ページにも同じ内容が登場します。

 それから,3ページ目,「丸2 結果提供に関すること」といたしまして,学習指導要領に示す目標に照らした定着度合いの測定を通じて学習の成果や課題が確認でき,事後の学習改善や教員の指導の工夫・充実に資する結果提供がなされることを明らかにしていること, 試験等の結果(正答状況やスコア等)に対する全体及び領域等ごとの評価(ルーブリックに基づく段階表示をはじめとした「~できる」の記述文による評価など)の考え方と分析の手法を明らかにしていることとしております。

 「丸3 運営その他に関すること」としまして,学校において実施可能で,学校にとって過度な負担が掛からない方法で実施されるものであること,学校等が測定ツールを選択するのに必要な情報や選択に資する情報が開示されていること,その他実施内容に関し特に著しく不適切と認められる内容が存在しないこととしております。

 「(2)認定後の遵守事項」としましては,毎年度の事業概要を文部科学省に報告すること,実施内容に変更が生じる場合又は認定された測定ツールを廃止しようとする場合に必要な届出を文部科学省に提出すること,受検した学校等の同意なく,試験等の結果の順位を示すなど生徒・学校・都道府県等の間で比較できるような情報を公表し,又は第三者に提供しないこととしております。

 次に,「(3)認定の効果」としましては,認定の有効期間は,認定したときから3年後の年度末までとし,認定要件を欠くことや欠くおそれがあることが判明した場合は,必要に応じて5.(2)に示す審査会を経て,認定を取り消すとしております。なお,基礎診断の認定は,それ自体が法的効果を伴うものではなく,認定基準への適合性を確認したという性質のものであるということを付言しております。

 次に,「5.認定に関する手続」でございますが,認定につきましては,3ページから5ページ目にかけて示します手続の流れにのっとって行って,文部科学省の方でその申請を審査した上で認定し,教育委員会等に情報提供を行うことを考えております。

 「(1)申請」としましては,認定を受けようとする民間事業者等は,認定を受けようとする年度の6月末までに,様式1から5の申請書に必要事項を記載の上,文部科学省に提出することとしております。また,申請に当たっては,複数の教科で構成される測定ツールや学習進度によって各回の出題範囲が異なる一連の測定ツールについては,原則,それぞれまとめて1件として申請することとしております。

 「(2)審査」としましては,文部科学省は,申請内容が認定基準に適合しているかどうかについて,有識者で構成される審査会の審査に付し,その結果に基づき,認定又は不認定を決定するということ。それから,標準審査期間は概ね3か月程度とすることしております。

 その審査の内訳でございますが,「丸1 審査員による分担審査」ということで,審査は,申請された測定ツールごとに,文部科学省において形式的要件を確認の上,文部科学省が委嘱する教科教育の専門家,高等学校教育関係者,試験運営の専門家,テスト理論・教育測定の専門家等の有識者で構成される審査員が分担して行うこととしております。

 分担審査では,原則,審査員と申請を行った民間事業者等との間で書面を通じた申請内容の確認を行い,必要に応じてヒアリング等も実施することとしております。審査においては,申請内容に関する懸念事項や,更に改善が望まれる事項等が生じた場合は,その内容を指摘事項の案として取りまとめることとしております。

 「丸2 審査会による全体審査」としまして,分担審査の後に,分担審査を行った審査員全員及びその他の有識者により構成される審査会を開催し,申請のあった測定ツール全てについて全体審査を行い,認定又は不認定を決定することとしております。認定する場合において,申請内容に関する懸念事項やさらなる改善か望まれる事項等がある場合は,その内容を指摘事項として決定することとしております。なお,複数の教科で構成される測定ツールについては,一部の教科のみを対象に認定することもあり得ることとしています。

 次に,「(3)認定・情報提供」の「丸1 認定」としまして,審査会による全体審査を経て認定された測定ツールについては,文部科学省が申請者に対しその旨を通知するとともに,審査会の指摘事項がある場合はこれも併せて通知するとともに,認定されなかった測定ツールについては,理由とともにその旨を申請者に通知することとしております。

 「丸2 情報提供」としまして,認定ツールについては,文部科学省ホームページで認定ツールの一覧として公表することとしておりまして,公表に当たっては,認定ツールの名称,対象教科,概要などの基本情報のほか,申請内容や審査会の指摘事項についても情報提供を行うこととしております。教育委員会等に対しましても,文部科学省から基礎診断の趣旨の周知と併せて上記内容を通知することとしております。

 「(4)認定後の手続」の「丸1 事業概要報告」としまして,認定ツールを提供する民間事業者等は,毎年度終了後6月末までに,様式6による事業概要報告を文部科学省に提出することとしております。

 「丸2 変更・廃止」に関する届出としまして,認定ツールを提供する民間事業者等は,認定ツールの実施内容に変更が生じる場合又は認定ツールを廃止しようとする場合には,あらかじめ,それぞれ様式7による変更届又は様式8による廃止届を文部科学省に提出することとしております。

 6ページ目を御覧ください。ローマ数字2,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクル構築のための測定ツールの効果的な選択・活用としまして,「1.基礎診断の具体的な活用方法」としまして,大きく2点記載させていただいております。

 まず一つ目の丸ですが,各学校においては,生徒の実態等を踏まえて教育目標を設定し,その実現を目指して各教科・科目等を選択し,教育課程を編成する上で,生徒に身に付けさせたい学力の水準やその把握方法を設定することが望まれるが,これらを通して育成しようとする資質・能力を測定するのにふさわしい認定ツールを選択・活用することが重要であるというふうにしておりまして,その際,それぞれの認定ツールの出題の設計図に当たる「測定しようとする資質・能力の具体的内容」,別添1の様式4になりますが,この情報を基に,自らの学校の実情等に相応した認定ツールを選択することが効果的であるとしております。また,各学校においては,当該情報を参照して,教育目標や学習到達目標を設定したり,見直したりすることも効果的であると考えられるとしております。

 もう一つの丸でございますが,基礎診断の結果については,ローマ数字1,の3.に示される活用,つまり学習成果や課題を把握することにより,生徒自身の学習改善や教員による指導の工夫・充実,学校における成績評価の材料の一つなどに活用することでございますが,こういった活用のほか,例えばとしまして,生徒自身が学びの質の向上に取り組めるように,学習の成果や達成感を実感させ,自己肯定感・自己有用感を高めることを通じて,学習の動機付けを行うこと。学校において,学習成果や課題を分析した結果を基に学校全体としての対応策を検討し,受検した生徒たちに対する進級後の学年における対応や,受検後に新たに入学・進級してくる生徒たちへの対応として,次年度の教育課程や指導計画,指導方法などに反映させること。設置者として,基礎学力定着に向けた基本方針等を企画・立案したり,教職員定数の配分や補習指導員の配置など,生徒の学習状況等を踏まえた人材配置や,基礎学力向上に取り組む重点校の指定,重点的に取り組む課題の設定などを行ったりするための判断材料の一つとすることなどの活用が考えられるとしております。

 次に,「2.基礎診断以外の測定ツールを含む多様な測定ツールの効果的な選択・活用」としまして,認定ツールの活用に当たっては,学校の実情等により,教科ごとに複数の認定ツールを組み合わせたり,複数の認定ツールを目的に応じてそれぞれ特定の時期,回数で実施したりするなど,必要に応じて複数の認定ツールを組み合わせつつ,活用することが考えられるとしております。

 また,認定ツールと併せて,多面的な評価を推進する観点から,地方公共団体が施策として実施する学力調査や校長会等が実施する農業,工業,商業等の検定試験,その他の各種検定試験等を含めた多様な学習成果を測定するツールについて,必要に応じてこれらを組み合わせながら活用していくことが期待されるとしております。

 次に,8ページを御覧ください。ローマ数字3,基礎診断に望まれる事項としまして,まずこの位置付けを説明しておりますが,具体的には,実施方針にも示されているとおり,基礎診断の制度については,運用開始から3年経過をめどに文部科学省において実施状況について検証を行い,その結果に基づき,平成34年度から実施される予定の次期高等学校学習指導要領への対応等の必要な措置を講じることとしております。このことも踏まえ,今後,本制度の定着を図りつつ,望ましい姿に近付くよう発展的に改善していくことを視野に,文部科学省において継続的に実施状況のフォローアップ・検証を行い,必要な制度の見直しを行っていくことが期待されるとしております。

 本ワーキング・グループでは,基礎診断として認定を受ける測定ツールや基礎診断制度自体の望ましい在り方についても議論を行い,高大接続システム改革会議最終報告や高等学校基礎学力テスト(仮称)検討・準備グループの論点整理において示された内容も踏まえつつ,特に基礎診断に対して望まれる事項を以下のとおり取りまとめたという位置付けの下で,国及び関係者においては,これらの事項を十分考慮し,制度の運用や改善,測定ツールの開発・改良並びに利活用に取り組むことが期待されるとしております。

 以下のところで具体的な内容を記載させていただいておりますが,名称としまして,本制度の名称を決めるに当たり,受検者を選抜するという印象を与える「テスト」ではなく,基礎学力の確実な習得と学習意欲の喚起という制度の趣旨・目的が正しく理解されるようにする観点から,「高校生のための学びの基礎診断」という名称になったことに鑑み,基礎診断として認定を受けるそれぞれの測定ツールの名称についても,その趣旨を踏まえたものとなることが望ましいとしております。

 次に,効果的な結果提供としまして,基礎診断として認定を受ける測定ツールを開発・提供する民間事業者等においては,診断結果によって学習の成果や課題が確認でき,事後の学習改善や教員の指導の工夫・充実に資するよう,試験等の結果(正答状況やスコア等)や全体及び領域等ごとの評価(ルーブリックに基づく段階表示をはじめとした「~できる」の記述文による評価など)のみならず,例えば,誤答類型に基づいたアドバイスや復習問題の提供,分析会の実施など,きめ細かな情報提供がなされることが望ましいとしております。

 また,基礎学力定着に向けたPDCAサイクルをはじめとしたカリキュラム・マネジメントの実効性を高める観点から,受検した生徒個人のみならず,学校や設置者に対しても,学級・学年全体の平均点,得点分布,課題が多く見られた分野,経年変化などの情報が提供されることが望まれるとしております。

 次の3教科セットの測定ツールにおける英語の「話す」技能の扱いにつきましては,先ほど2ページの基礎診断の認定基準の箇所で御説明いたしましたことと重なりますため,説明は省略させていただきます。

 次の多様なレベルの問題セットにつきましては,高等学校における多様な学習状況や学習ニーズの多様化を踏まえ,高等学校の実態に応じて選択できるよう,個々の民間事業者等や基礎診断制度全体において,難易度が異なる複数レベルの問題セットをはじめとした多様な測定ツールが開発・提供されることが望まれるとするとともに,一つの民間事業者等が難易度の異なる複数レベルの問題セットを提供する場合には,それぞれの問題セットにおけるスコアや評価の考え方などの関係性を明らかにしておくことが望まれるとしております。

 次に,低廉な受検料としまして,できるだけ多くの生徒が受検しやすくなるよう,基礎診断として求められる要件や有することが望ましい機能とこれらに係る経費とのバランスを踏まえながら,受検料についてできるだけ低廉な価格設定が望まれるとしております。さらに,基礎診断の結果が受検者である生徒個人による学習成果や課題の把握を通じた学習改善のみならず,教員による指導・工夫・充実や,学校におけるPDCAサイクルの構築,教育委員会等による教員配置や予算措置を含めたカリキュラム・マネジメントにも活用されることに鑑みれば,公費による低所得世帯の生徒等への経済的支援も望まれるとしております。

 次に,CBT・IRTの活用といたしまして,CBT及びIRTについては,既に実用化されている例があり,また,同一試験時間内において,問題正答率に応じてそれ以降の問題の難易度を変えたりすることのできる適応型テストへの拡張ができ,受検者の学力の定着度合いをより正確に測定することが可能となるなど,多くの展開が想定されるということを踏まえて,国において基礎診断への実用可能性に関する継続的な研究・検討を行うとともに,民間事業者等においても学校での実施を念頭に置いた積極的な測定ツールの開発・提供が望まれるとしております。

 次に,異なる事業者の測定ツール間の難易度比較・共通尺度による評価としまして,英語の場合,CEFRという共通枠組みにより,異なる測定ツール間の難易度を一定程度比較することができるが,その他の教科についても何らかの方法で異なる測定ツール間の難易度を比較・対照できることが望ましいとしております。また,英語におけるCEFRの活用などを参考に,何らかの共通尺度の開発を通じて,試験等のスコアがどのような意味を持つのか,どのような能力レベルなのかについて一定程度の共通性を確保することが望まれるとしております。

 次に,対象教科・科目等の在り方としまして,学校の実情等に応じた多様な測定ツールを充実させる観点から,国語,数学,英語に加え,将来的には,地理歴史,公民,理科その他の教科にも対象を広げていくことが望まれるとした上で,その際,平成34年度から実施される予定の次期高等学校学習指導要領への対応を踏まえつつ,対象となる科目や出題範囲を検討することが必要であるとしております。

 次に,結果の副次的な利用としまして,今年7月に公表しました実施方針にもほぼ同様の記載がございますが,改めて,基礎診断の結果の進学・就職等への活用など副次的な利用については,実施方針に基づき,本制度の着実な定着を図りつつ,高校生の学習意欲や進路実現への影響等に関するメリット及びデメリットを十分に吟味しながら,高等学校や大学等,民間事業者をはじめとする関係者の意見も踏まえ,具体的な検討を行うことが望まれるとしております。

 最後に,調査研究の推進としまして,こちらも実施方針において調査研究の推進が記載されておりますが,改めて,今後,学力の概念に関する社会情勢や国際情勢も踏まえつつ,学力の三要素を総合的に育成する観点から,基礎診断の充実や高等学校における基礎学力定着の取組の充実に向けた調査研究を継続的に推進することが望まれるとしております。

 取りまとめの文章は以上でございますが,次の12ページ以降に,その別添として様式を添付しておりますが,特に9月の第3回のワークキング・グループでお示ししたものからの主な変更点として補足をいたしますと,12ページの様式1につきましては,この様式の中の「丸5 測定内容の区分」として,基本タイプ,標準タイプとありますが,この欄を新たに追加したということと,同じくこの12ページの「丸7 申請する測定ツールの特長・活用例等」として,測定ツールの特長やPDCAサイクルの取組の促進に資する活用例等について,学校の選択に資する情報を記載する欄を設けております。

 13ページ目以降につきましては,13ページの上の米印の二つ目に書かせていただいておりますが,この記載における留意点を一つ追加しておりまして,「高校生のための学びの基礎診断」として認定された測定ツールについては,原則として申告内容を全て公表することとしているが,情報の一部又は全部を公表することが困難な場合は,公表が困難である情報の内容及びその理由を記載することとしておりまして,なお,申告内容を公表する主な目的は,学校等が各校の実状に応じて適切な測定ツールを選択し,効果的な活用を促進することであることに鑑み,公表する情報として,可能な限り具体的な内容を記載するよう努めることとしております。

 それから,19ページでございますが,様式5のサンプル問題について,こちらにつきましても,留意点としまして米印を追加させていただいております。米印の二つ目と三つ目なのですが,国語及び数学については,サンプル問題の大問2題を提出すること。なお,主として思考力・判断力・表現力等を問う記述的問題を1題以上提出することとしております。

 更に英語につきましては,大問2から4題としまして,「聞く」「読む」「話す」「書く」の技能ごとに小問1題以上が含まれるように提出することとしております。なお,こちらも主として思考力・判断力・表現力等を問う記述式問題を1題以上提出することとしております。

 それから,20ページ,21ページ,22ページにつきましては今回初めてお示しするものでございますが,20ページ,様式6につきましては,事業概要報告の様式になっておりまして,毎年度終了後に事業者の方から提出いただくもののフォーマットとしまして,(1)から(7)に掲げてある項目を提出いただきたいと考えております。具体的には,実施校数・受検者数,試験実施後の検証内容,今後の改良の方向性,CBTでの実施に向けた展望・検討状況,IRT導入に向けた展望・検討状況,適応型テスト導入に向けた展望・検討状況等としております。

 様式の21ページ,22ページにつきましては,それぞれ変更届と廃止届につきましてですが,説明は省略させていただきます。

 資料1の説明は以上でございまして,続けて資料2も御覧ください。今後のスケジュールとしまして,本日,12月5日,第5回のワーキング・グループを開催し,この取りまとめの認定基準等の原案について御議論を頂きましたら,その後に,12月中下旬をめどに認定基準等の原案を公表いたしまして,パブリック・コメントを実施したいと考えております。その上で,平成30年2月頃に第6回のワークキング・グループを開催しまして,最終的な取りまとめをいたしたいと考えております。その後,3月中に認定基準等を正式に策定いたしまして,その後,申請受付という形を考えておりまして,来年の6月末に申請の締切りを設けまして,7月から9月頃に審査,10月から11月頃に認定・情報提供を経まして,各高校等での選択・利活用が始まるというようなスケジュールを考えております。

 説明は以上です。

 

【荒瀬主査】ありがとうございました。逐一,大変丁寧な御説明を頂きました。ただいまの御説明に関して,御質問,御意見を頂きたいのですが,内容が多岐にわたりますので,最初に目次の御説明がございましたけれども,ローマ数字の1番,2番,3番,そして最後,別添資料に関してということで,大きく四つに分けて御質問,御議論を頂ければというふうに思っております。

 まず,一つ目の認定基準・手続等の全体像でありますけれども,こちらに関して何か御質問とか御意見とかございますか。資料は,委員の皆さんは事前に御覧いただいているかと思いますので,そういったことも踏まえて,先ほどの予定でいきますと,パブリックコメントに掛けるところまで持っていきたいということでございます。全体像はよろしいでしょうか。

 また後から何かありましたらおっしゃっていただくということで,では,6ページからのローマ数字の2番であります。基礎学力の定着に向けたPDCAサイクル構築のための測定ツールの効果的な選択・活用ということで,こちらの方は2ページにわたっての記述でありますが,こちらに関していかがでしょうか。

 

【長塚委員】私は私立学校に所属している関係で,そう思うのかもしれませんが,6ページの一番下のところです。設置者として基礎診断をした上での対応について書いてあるのですが,例えば教職員の定数配分とか,あるいは基礎学力向上に取り組む重点校の指定とかいうのは,これは公立学校を念頭に置いた考え方というか,取組なのです。3分の1方を占める私立学校としては,こういう施策には預かれないというか,いわゆる財源的な問題があります。逆に言えば,この財源的な問題を各自治体の設置者が考えろということも含めての話になりそうなことでもあるので,余り踏み込んだ表現まで必要ないのではないかと思います。そういうようにした方がいいという促しは必要かもしれませんが,例えば人的配置とか,あるいは基礎学力向上に取り組む重点校指定ではなくて,重点的に取り組む課題の施策とか,そういう言葉にした方が良いのではないかと思います。特に重点校の指定という言葉は,私立学校側にとってはかなりきつい表現です。そうすると私立学校は,ここはもう読み込まないで基礎診断を受け止めるような話になってくるので,若干の疎外感がある,そんな感触があります。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。先生がおっしゃることは,まことにそのような感触を私も持ちますが,ただ,一方で,高等学校の学習指導要領はこれからですけれども,既に出ている中学校学習指導要領総則の部分で,先生も御承知のように,中教審で議論のありましたカリキュラム・マネジメントに関して三つの側面というのがありましたけれども,その三つ目のところは,「教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に」という,こういう文言がございますが,済みません,釈迦に説法なことで申し訳ありませんが,実は学校が人的又は物的な体制を確保するとか改善するということができるのかというと,設置者の判断といいますか,設置者としてどのように考えてやっていくのかということなしにはできないということで,私はむしろ,この2番の一番下の,今先生御指摘の部分は,学習指導要領の内容とも一つの整合性というのでしょうか,関わりもあるのかなと思っておりますので,当然のことながら,私立学校に十分配慮した表現でなければならないというのも間違いないと思うのですけれども,そのあたりを含めて,また御意見がありましたら。

 

【宮本委員】やっぱり私も今のところなのですけれども,こういうような形で設置者が何かを取り組む材料とするためには,当然,管下の学校が同じものを使わなければ比較できないのではないかと思います。同じものを使わないのであれば,比較できる何か,物差しがないと難しいだろう。

 最初に,そもそもこれは,高校における多様な学習成果を測定するツールの一つですよと言っておきながら,ここでこういう記載があると,ある特定のものを使わないとなかなかこういうことができないのかという,つまり,設置者としてかなり強制力みたいなものを持たせるようなニュアンスも受けるわけですよね。そもそもこれは測定のツールの一つと一方で大きく言っておきながら,こういう使われ方もされるんだよといったときに,学校としては,一体これはどうなのだろうというように困惑する部分もあるのかなというふうには感じました。施策としてこういうことをやるということは当然あるのだろうと思うのですけれども,ちょっとそのあたり,読んだ学校の人たちがどう受け止めるかというところで,心配になるところもあるのかなと思いました。

 

【荒瀬主査】要は,学校が困らないように,学校が本当に生徒の基礎学力の定着に向けて取組を自信持って進めていけるようにということですよね。

 

【宮本委員】そうです。

 

【荒瀬主査】だから,今の宮本先生のお話も,設置者が無関心でいていいというわけではもちろんないわけであります。先日,一つの研究会がございまして,それこそ,後で御説明いただくことになると思うのですが,資料3にあります試行調査の対象というところの20校の学校のうち,幾つかの学校のお話を聞きまして,実際にこの研究をなさっていらっしゃる学校の先生の,2年足らずではあると思うのですけれども,その取組を振り返ってのお話の中で,実際にこういうことをやっていくといろいろなことが分かってきて,生徒の基礎学力向上に本当に様々な形で動き出したと。それについては,管理職はもちろんのこと,教育委員会との関わりというのが大きいということもおっしゃっていましたので,そういうよい面が出るような書きぶりというのでしょうか,これはなかなか難しいのですけれども,そこのところは御配慮いただくとしまして,ただし,学習指導要領にも明確に記されますし,多分,高等学校も,この部分については変わらないのではないかと思いますので,そういった趣旨を生かしながら,学校が困られないということを留意していただくということで,よろしくお願いします。

 注文を付けるのは簡単ですけれども,やっていただくのはなかなか難しいかと思いますけれども,よろしくお願いします。

 

【清水委員】今の第2章に当たるところの問題ともちょっと関わるのですけれども,この取りまとめ全体の構成の,ローマ数字の1,2,3の層の関係について少し気になりました。事前に拝見したときは,すっきり,うまく収まったなと思っていたのですけれども,特に3のところは,基礎診断に望まれる事項という表題になっていますが,この中に2種類のことが入り得る項目になっていて,1で規定された基準等々の要件は手続的に明示された要件ですけれども,その背後にも望まれる事柄というのもあって,その利活用の仕方とか云々ということが出てくるのですけれども,3のところは,どちらかというと,平成31年から実施した後,その状況も鑑みながら,将来的にどういう改善の方向があるかという,そういう意味での,今後望まれる事項,時系列で見るとそういう面も入っているので,そこを分けて示すようなことができないかということを,今拝見して思いました。

 実際には,9ページの3教科セットのツールの問題というのは,実は1の脚注にも出ていて,両方に書きたくなるようになっていますけれども,1の要件の方でも注で触れた上で,今後もこういうところをという位置付けなのかどうかという,その点から少し整理することが可能かどうかと。ですので,3の中には,名称や結果提供について,民間側で事前に準備しておくべき要件のような事柄と,文科省として制度設計上,今後も考えていかなければいけないICTの問題とか,IRTの導入とか,いろいろなことがありますので,そこを項目として,大くくりで分けることができないかなというのを思っていました。

 

【事務局】御指摘ありがとうございます。現時点で,このローマ数字3の基礎診断に望まれる事項の取りまとめの位置付けといいますか,考え方としましては,おっしゃるとおり,複数の面が入り込んでいまして,時系列的には,まさしく運営開始の当初からと,更に将来的な課題というように時系列的なものも複数ありますし,あと,アクターとしても,民間事業者等に求めるものと国に求められるものと,その他,関係者に求めるものと複数入り込んでおります。

 その中で,今,はっきり区分を入れておりませんが,おおむねといたしまして,名称のところから後ろに行くにつれて,どちらかというと,一つは,民間事業者等に認定基準を最低基準としてこなしながら,こういったことも望まれるというふうな形で,主に民間事業者等に対して望まれることを初めの方から書き下しておりまして,後ろに行くに従って,それが国や地方公共団体,学校等々の別なアクターの方にも触れる格好になっているということと,それと,それに比例してというか,おおむね対応して,だんだん将来的な課題に移るような格好で記載させていただいているつもりでございまして,ですので,名称,効果的な結果提供,次の3教科セットの測定ツールにおける英語の「話す」技能の扱い,多様なレベルの問題セット,低廉な受検料,このあたりぐらいは,どちらかというと,制度運用開始当初からもこのようなことが望まれるというふうな形で時系列的に早いものかなと思っているということと,主に民間事業者等に対して期待することが書かれているということと,一部国若しくは関係者に対して求めるようなことも書いているというようなことでございまして,それ以降のCBT・IRTの活用以降のところは,民間事業者に開発を求めるような内容もございますが,どちらかというと,国側,行政側の方に期待するような内容といったものを多く書いているといった内容で,今のところは書いております。

 記載の内容をもう少し整理できるかどうかは,またちょっと考えて,御相談できればと思います。

 

【藤森委員】今の清水委員のお話に関わるかと思うのですけれども,やはり読んでいまして,特に8ページにある「効果的な結果提供」の部分の内容は,6ページの「具体的な活用方法」の,6ページの二つ目の丸とかなり重なってくるだろうという印象を持ちました。すなわち,結果をどう提供するかという問題と,それをどういうふうに活用していくのかという問題はセットの問題だと思います。

 その中で,この点については,ある程度もっと明確化していただけた方がいいかと思いますのが,結果の提供と活用の中で,実際にこれを受検する子供たちの成長や,子供たち自身の自己肯定感,自己有用感を高めていく側面と,学校の成長というのも今後への見通しが,出てくるのではないかと思うのです。

 例えば,9ページに,「経年変化などの情報が」という部分がありますけれども,一つの大きな意義というのは,やはりまとまった形で子供たちが受検,この診断をしますので,将来的に蓄積されていくと,その学校がどういう側面で成長し,どういう側面で特色化していったのか,どの辺の課題が子供たちの健全育成にとって,今後更に努力しなくてはいけないのかということを知る上で非常に有効な情報源になると思います。その意味で,個々への対応という,一人一人を育てていく側面と,学校という一つの社会を成長させていく両側面がもっと強く明示されていいのではないかという印象を持ちました。

 

【根岸委員】今の使い方,結果提供ということとも関わるのですが,2ページの下のところに,まず,使い方として,単教科,2教科,又は3教科で構成される測定ツールのことを指すところがあります。英語の場合はそれに絡まって,いろいろ書いてあるのですが,資料3のところの委託業者の例でも,3の例と1の例というのがあります。

2というのがあるというのは,2ページをよく読むと分かるのですが,必ずしもはっきりは出てきていないというのが,まず印象としてあります。前の回で新井先生が発表された調査があったと思うのですが,ああいった,国語というか言語能力みたいなことを中心に,教科にわたっての分析のようなところが全体としてはあまりありません。統合的に結果を解釈するであるという部分が,我々の議論の中でももしかしたら十分でなかったかもしれません。本当は数学でつまずいているとか。英語でつまずいていることの元が言語能力であったりすることも十分にあり得ると思うので,どこかで結果提供というところですかね。複数教科の場合の総合的な評価みたいなところも入れていただけたらよいかと思いました。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。先生が今おっしゃいましたところは,例えば,10ページの下にあります「対象教科・科目等の在り方」というので,こちらは国語,数学,英語のみならず,地歴,公民といったような教科型の話が書いてありますけれども,その最後のところに,「対象となる科目や出題範囲を検討することが必要である」とあるわけですけれども,この出題範囲という中に,一定,いわゆる合教科であるとか,あるいは教科の全てのそこにあるところの本当の基礎学力であるとか,そういったものも含まれるのかと思い,私は勝手にそういう読み方をしておりましたが,今,根岸先生がおっしゃいましたこと,皆さん,いかがでしょうか。これ,大変重要な観点で,かつての議論の中にはそういったことが出ておりましたし,リーディングスキルテストというのは実際,対象校にはやっていただいているわけでもありますので,そのあたりの書き込みをお願いできますでしょうか。

 

【根岸委員】それでいいと思うのですが,出題範囲ということと,出した問題の結果の解釈というところもあると思います。例えば,英語でつまずいているというと英語が問題であると思うわけですけれども,国語と共通するような言語能力そのものの問題とかぶるところもかなりあります。英語だけで問題が解決できない可能性もあるので,複数教科をやることは意味があるかと。

 あと私,数学のことはあまり分からないのですが,数学で例えば,思考力,判断力,表現力のところに何か問題があるとなったときに,言語能力に関わっている可能性もあったりするので,そういう部分も,せっかくの調査なので,分析できたらいいかと思います。

 

【荒瀬主査】ありがとうございました。それは,業者の方に分析していただくということもあるでしょうけれども,活用の方法として,各学校とか,それこそ,さっきの話ではありませんが,教育委員会とかも含めてしっかりと考えていって,その学校の現状がどうなっているのかをしっかりと見ていきましょうと,そういうことにつながればよいということですよね。

 

【長塚委員】今の9ページの「対象教科・科目等の在り方」のところで,草稿の段階では,それに続いて題目が,「対象教科・科目や測定しようとする資質・能力の多様化」という題目だったのですね。それを本文中には,今の「出題範囲」とか,あるいは「次期の指導要領への対応」という言葉では,なかなか資質・能力の多様化というのがくみ取れないので,そこは題目を少し整理した方がいいだろうということで,このようになったようなのですけれども,その点を踏まえて,最後の「調査研究の推進」のところ,「学力の三要素を総合的に育成する観点から」とだけあるのですが,むしろここに「学力三要素を踏まえた資質・能力を総合的に育成する観点から」とした方がよいのではないでしょうか。この後の様式のところで触れようかと思ったのですが,学力三要素を踏まえた「資質・能力」という言葉が実は本文中にはどこにもなくて,後の様式の方で,「測定しようとする資質・能力」というものが出てきているのですよね。

 この前,百合田先生が,余り分析的に資質能力としての学力三要素を分けない方がよいというようなサジェスチョンもございましたけれども,三要素を踏まえた資質・能力を,基礎学力もしっかり把握する方向に行くことが大事ではないかという意味では,調査・研究段階でそういうことをやらないといけないと表記すべきでしょう。恐らく当初の基礎診断は,そういうことも調査・研究しながら進めていくような段階にならざるを得ないのではないかという思いもありまして,ちょっと加えました。

 

【柴山委員】今議論されているところですが,基礎診断という,「診断」という言葉が付いておりますから,いわゆるお医者さんが,生徒を,患者に例えると非常に悪いのですけれども,様々な専門医が集まって,カンファレンスというのはやりますよね。多分,基礎ツールの中に何もかも詰め込んで,現在,資質・能力という,教科とは違う抽象的な概念で語られている能力を,この測定ツールの中で測ろうとすると,多分,行き着く先は知能検査になると思います。

 それでやっぱり,今の日本の教育の特徴である教科型というのを大切にしながら,運用の方で高校の先生方が様々集まって,その子の状況を見ていくような,そういう発想で捉えられた方が,測定ツールの基礎診断というものの中での使い方がスマートなんじゃないかと思って,お聞きしておりました。

 

【藤森委員】今の問題ですけれども,これ,基本的には測定可能な事柄について,診断ですから行うことになると思うのですが,もう一つ,それをどう表現していくのかという,そこが非常に重要なポイントになってくると思うのです。

 例えば,8ページのところで,「結果提供」の中に,括弧付けで「(ルーブリックに基づく段階表示をはじめとした『~できる』の記述文による評価など)のみならず」とありますけれども,私,この「のみならず」以降が非常に重要だと思っておりまして,「のみならず」の前でいくと,ややもすると,進学校は大学受験向けに,それから,いわゆる卒業後,就職等を目指すことが多い学校では職業の適性的な形で,結局,できた,できないだと,必ず「できない」という表現が出てきますので,それが子供たちの自己肯定感,自己有用感につながるかというと,結果的には,ある評価尺度の中で,あなたがどこにいるかという数直線上の評価になってしまうとすると,それはやはり,これまでのあしき状況が助長されるのではないかと心配です。

 すなわち,あの子たち,こんなことができてない,うちの生徒はこんなことじゃだめだという形で,生徒のせいに帰してしまう。ではなくて,例えば,誤答類型とありますけれども,いわゆる誤答というよりは,その子の思考のパターンとか物の見方,考え方の傾向が測定された結果の中から,ある程度見えてくるような,特に国語の場合は,単に数直線上の正解や不正解じゃなくて,こういうふうに物の見方,考え方をすると,こういう解釈が生まれてくるし,この点に注目する子はこういう解釈が生まれてくるという,ある種の複線的な正解があるのですよ。そういう要素の部分について,当然,柴山先生がおっしゃるように,何もかもこれに詰め込むわけにいきませんが,どうそれを解釈して,どういうふうに表現して届けていくかという問題については,工夫,改善の余地が非常にあって,そこに大きなメッセージが込められるのではないかと思います。なので,特に8ページの「例えば」の後のあたりのところをもうちょっと強調されてもよいのではないかという印象で拝読していました。

 

【柴山委員】おっしゃるとおりで,私も全く,同じことを考えていると思います。ずっと以前から,私,カリキュラム・マネジメントの概念が分からない,分からないとこの会議でも申し上げてきたのですが,カリキュラムのマネジメントをするために測定ツールを入れる。その測定ツールを入れるということは,先ほど,藤森委員がおっしゃった数値化をする。数値化をすると,それがものすごくパワーを持ってしまって,カリキュラムではないところに,いわゆる,以前の言葉で言えば,ヒドゥンカリキュラムとか,学校風土とか,そういったものが全部無視されていくという怖さを持っています。したがいまして,そういうデメリットを考えつつ,この測定ツールを入れていくのだという,そういうスタンスがやはり重要かと思っております。

 

【岡本委員】皆様の御意見を伺っていて,私も全く納得しているのですが,ここの議論が,11ページにある「調査研究の推進」に踏み込んでいるような気がします。これはあくまでも「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等に関する議論をしているわけです。

 先ほど,清水委員がおっしゃったように,これ,すっと読んだら,最初はすっと入ったけど,後ろにいろんなことが書いてあるよねということをおっしゃって,私もすっと入ってしまったのですけれども,考えてみると,我々,ずっと前からこの議論に加わっているので,いろんなことに気が付いてしまうのですけれども,パブリックコメントにかけるときに初めて見る人が多いわけです。これでパブリックコメントにかけると,いろいろな意見が出てくるだろうと思います。

 そして,一つ大事なのは,根岸先生がおっしゃったように,これはいろいろなツールができてきて,そこを学校が,自分たちの学校の目標に沿っていろいろ選ぶ。うちは2教科でやるんだ,3教科でやるんだ,1教科でやるんだ,これとこれをやるんだ。あるいは,今,先生がおっしゃったように,表現力とか,基礎的というか,基礎とは言わない,もうすこし学科にとらわれないような試験をやるんだというような。汎用的なことをやるのだということを,まず,自分の目標に沿って学校を選ぶというのが大基本にあるわけです。そうすると,業者の方がそういう問題を作りたいというのを排除してはいけないと思うので,一番気にしなくてはいけないのは,これを受け取った人に,そういうことも排除されていませんよということがまず分かることが大事だろうと思います。

 だから,結局,結論として申し上げると,確かに3節のところはいろんなことを書き込んであるのですが,これ,分けちゃうと,それぞれのところが意味を持ってしまうので,最初,すっと入ったものを,とりあえずパブリックコメントの段階では,個人的には大事にしたいと思います。

 具体的な提案としては,これ,1,2,3とありますけれども,4もあるのですが,いわゆるゼロというか,イントロダクション,我々も本を書くときに,最初にこの文章はどういう構成になっていくかと。1のところで手続が書いてあって,2のところでこういうことが書いてあって,3のところは今までの議論が書かれているというようなことを,冒頭ないしは,お役所の言葉で言うと,鑑を書くとか,そういうことでみんなが分かるように対処していただくのがよろしいのではないかと個人的には思います。それで,今の議論になったことに異論というより,この文書の扱いとしてそういう提案をさせていただきます。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。今のようなまとめをしていただいたわけですけれども,よろしいでしょうか。

 

【根岸委員】そういう視点を改めていただいて,もう一回見てみると,2ページは「認定基準」ということなので,認定するとしたら,これは守らなければいけないということだと思うのですが,8ページは「望まれる事項」となっています。これは,望まれるけれども,満たしていなくてもやむを得ないというようなニュアンスで業者の方に理解していただいていいのでしょうか。

 あと,それに絡んで,さっき発言しようと思っていたのは,今やろうとしているのは新しいことだということです。いろいろな能力観もあるし,いろいろな測定が考え得るということを議論してきたと思うのですが,それを,業者にやってもらおうということです。我々は直接作らないので,こんなのがあったらいいなみたいなことはどんどん言えるのですが,それは現実的にどの程度可能なのかということです。この中の幾つかは,業者が既にやってきたこともあると思うのですが,もしこれを望まれるままに作ろうとしたときに,かなり未知のゾーンに入らざるを得ないのではないかと,今,岡本先生の発言で思いました。

 

【岡本委員】そういう意味でも,やはり脈絡をはっきりさせておけばいいと思うのですが,例えば,この文書を業者の方が見るとき,高等学校の先生方が見るとき,そのほか,いろいろな,教育産業,もっと広く,あるいは一般の国民の人が見たときに,先ほど申し上げたとおり,1,2,3の道筋みたいな,何が書いてあるかというのを最初に書いてくださいと申し上げたのですけれども,3のところは多分,最初,違和感がなかったのですが,将来のことが書いてある部分がありますよね。恐らく問題を設計するときに,これ1回やって,それでおしまいじゃないわけで,そうすると,将来,例えば,新しい指導要領が実施されるときに,将来,こういう方向に行くということを元に設計する。例えば,自分自身が参画するときも,CBTについても課題として残っているんだよね,そういう方向はいい方向なんだよねということを前提に物を考えるとか,そういう意味で,個人的な意見ですけど,余り縛ってないのではないか。ある意味では縛っている。将来,ずっと続けようと思えば,全然あらぬ方向に行くのではなくて,こういう方向へ行かなきゃいけないという意味では。という意見です。

 

【柴山委員】パブリックコメントに掛けられるということですが,そこから,この制度自体のPDCAサイクルが回り始めるわけです。現在,いろいろな制約・状況があって,まずは確実な形で始めよう。そして,そのPDCAサイクルを回しながら制度自体も伸ばしていこう,育てていこうという観点が,私自身は3の「基礎診断に望まれる事項」のところから読み取っておりまして,強いて言うなら,基礎診断にこれから望まれる事項とかと,理想形は向こうの方にあるけれど,ただ,それは今のところ,手探りの状態で分からないので,大体こういう方向ですよという書きぶりで,私自身は解釈しておりました。

 

【清水委員】今までの議論を踏まえて,目次の欄のタイトルを改めて眺めますと,やっぱり2の表題が突出して見えてしまうという感じがして,1は認定要件,手続,2は恐らく,その効果的な運用に関わるようなこと,その中身が実際には,高校の基礎学力定着のPDCA云々という下位の項目に現在のタイトルがおりていくようなものかと。3は,基礎診断自体の今後の展望のような事項。要するに,基本のスペックというか,要件と効果的活用はこうあるべきだという望ましいことと将来像という。それにイントロダクションが付くと,全体の構成がちょっと見やすくなるという感じもしていたのですが。2のところが結構大事で,実装されて,どう効果的に活用されていくかというところですので,そこが大事なところです。それで,申し上げたいのは,6ページの二つ目の白丸のところなのですけれども,もし,大きな2のところを効果的な運用ということに絞ったときに,やはり三つの主体が見えにくい感じがします。一つ目は「生徒自身が」と書いてあるのですけれども,実際には「取り組めるように」ということで,動詞が「実感させ」「動機づけを行う」ですので,恐らく先生が主体のように書かれていて,二つ目は学校が,目の前の授業云々よりも,むしろ制度設計として学校自体のPDCAのための項目で,三つ目が設置者ということで,教育を大局的にどう動かすかという話になっていますので,生徒目線のところをもう少し書き込んでもいいかと思いました。

 中学校と小学校の全国学力・学習状況調査の場合は,学校と教育委員会と国という三つのレイヤーで整理されて趣旨が書かれていますが,これもやはり「学びの基礎診断」という名称にしたからには,生徒の「ポツ」がもう1個あってもいいかということを思って,そうすると四つになってしまうのですが,もう既に1の要件のところに,基本とするのは生徒自身の学習改善と教師の指導,工夫,充実,そして,学校における云々と書いてあるので,そこの整合性も見ながら,実装されて効果的に使うとなったときの活用,そこをどう書き込んでいくかというところ,まだ整理する可能性があるかと思いました。

 ここは,「そのほか」と書いてありますので,プラスアルファの部分を書いていると見れば,これでもよいのですけれども,ちょっとそこが気になりました。

 

【宮本委員】私も,今の清水委員の意見に全く同感です。結局,この「学びの基礎診断」は誰のためにやるのか。これは子供のためにやるわけです。やはり子供のためにやるということがもっともっと前に出ていかないと,別のことのためにやるように思われてしまう。例えば,私もいろいろな校長先生方と基礎診断の話をするときに,学校のPDCAサイクルを回すことが目的の一つですと言うと,宮本さん,それは分かるけれども,学校のPDCAを回すために,何で生徒からお金を取って受検させるのだ,だったら国がやればいいじゃないかと。つまり,子供の学びがもっともっとよくなるためにやるというのであれば,受検料を払ってもらってもよいのだろうけれど,そうでなければ受検料を取ることについての理解が得られない。まさにそうかなと僕も思ったわけです。ですから,受けた子供たちにちゃんと学力が付くように,そういうようなことをしていくための大事なものなのですよという意味では,やはり今,清水委員がおっしゃったように,ここのところはもう少し,これが生徒自身にとっていかに有効なのかというあたりのことをしっかりと書いた方がいいと思いました。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。要は,学校で教員がとか,設置者がとか,それらは何のためなのかということが明記されるということですよね。

 

【宮本委員】そうです,そうです。

 

【荒瀬主査】だから,当然,当たり前のことでありますけれども,当たり前だからといって省略しないで,きちんと書いて皆さんに理解していただくと。当然,生徒にも分かるように伝えるということですね。

 

【宮本委員】はい。

 

【荒瀬主査】私も1点,気になりますのは,9ページの低廉な受検料ですけれども,今の宮本委員のお話とも関わりますが,これ,実際に,先ほど未知の領域にというお話もありましたけれども,大変な苦労をしていただく業者の方と,それから教育委員会等にはしっかり考えろということは言っているわけですが,これは是非,国としても,どのような対応ができるのかというのはお考えいただきたいと思います。そうならないと,今も相当数の高等学校が,いろいろな業者の方の測定ツールを利用していると思うのですけれども,その測定ツールを利用しているのだから同じだろうということだと,国が認定基準まで作ってやる意味が希薄になってしまうと思います。だから,その点は,なかなか厳しいことは承知の上ですけれども,何らかの意思表明を,これは望まれることですから,是非お願いしたいと思います。

 

【根岸委員】今のお金の点ですが,今,高校で行っている模擬試験みたいなものでお金を取っているわけですが,そのようなお金がこちらに振り返られるのか,純粋にこちらがプラスになるのか,どちらなのかと思っていました。

 そして,安くということなのですが,2ページの一番下のところに「ただし,国語,数学及び英語の3教科セットの測定ツールにおける英語の『話す』技能については,平成33年度までの間に利活用されるものに限り,測定することに代えて問題,解答例及び採点基準を提供することとしても差し支えない」とあります。つまり,このような形でやればお金が掛からないので,やりなさいということですが,33年度,2021年度になるとお金の問題が解決するというイメージなのでしょうか。

 もし,何年後かには話すこともフルでやらなければいけないとなり,しかも,この低廉なという押さえがあると,参入できなくなってしまう可能性もある。業者としては,3年もたったら何か安くできるのではないかという,楽観的な感じで入ってくるかもしれないですけれども,そうでないとすると,今の技術でいっても,結局,3年後にはある程度のお金と投資が要ると思ってしまうと,この「低廉な」がある限りはなかなか参入が難しいのかなと思ったりしたのですが。いずれにしても,難しい問題だろうとは思うのですが。

 

【荒瀬主査】本当に難しい話ですけれども,3年たったらとんでもない発明があって,極めて低廉にできるようになったということがあるならいいわけですが,そうでなければ金額的には変わらないということですね。金額の問題だけで2ページ,あるいは9ページの記述がこのようになっているとは言えないにしましても,具体的にどうしていくのかというのは非常に大きな課題として残るということですよね。

 

【根岸委員】昨日まで,上海で英語教育のとても大きい大会があったのですが,そこで出ていたのは,話すことの測定であるとか,自動音声認識であるとか,です。技術的な研究はかなりお金を掛けて,英語の母語話者ではない人の音声認識とか,自動採点とかを今,様々な形で試みている段階なのです。ですから,技術的に可能にはなるかもしれないですが,その場合は,今度,それを開発した会社なり,人なりに対するお金が掛かってしまいますから,ここで想定しているような値段でいくような低廉なテストには,逆にまたならない。簡便なテストが可能になるかもしれないけれども,安くはならない。具体的には名前を出すべきではないないですが,今でも自動音声認識のテストをおこなっているところはありますが,多分,5,000円ぐらい取っていると思います。人間が全く介在していないタイプのテストです。そうなると,1教科でもなく,英語の1技能だけで,今,その値段が付いてしまっているので,ここら辺のあんばいが難しいなと。特にどうすべきという案はないですが,今,低廉なというところに議論が移ったので,発言しました。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。課題の解決が,先送りになるだけではどうにもならないということですね。当然,考えなければならない。そうなりますと,これはやはり国としての方向をどのように考えていただくかというのは,非常に重要ではないかと思います。よろしくお願いしますとしかもう申し上げられないですけれども,よろしくお願いします。

 では,たくさんあるけれども,別添1,12ページ以降の様式につきまして,22ページまでのところですが,何か御意見,御質問ございましたら,お願いいたします。はい,どうぞ。

 

【長塚委員】質問や意見というほどでもないのですが,確認でしょうか。18ページ,(様式4)測定しようとする資質・能力の具体的内容について,本文中にはほとんどない「資質・能力」という言葉が,「測定しようとする資質・能力」として,ここに出てくるわけです。これが何かということは,13ページに出題に関することということで,(1)の下の方に記載例があって,測定しようとする資質・能力の記載例がある。ここも,数学,英語それぞれに関する資質・能力とあって,現段階の学習指導要領と次の学習指導要領をつなぐような意味合いで,このようにしか書けないのかと。

 そういう感覚でここは読んでおりましたけれども,学力を三要素に分けてという意味合いにしてしまうと,ますます分かりにくくなる。ただし,ここで資質・能力という言葉が,話すこと,聞くこととか,教科につながっているものとして,広い意味では資質・能力のそれぞれであるとは思うのですが,これから目指す資質・能力観の全体からすると,言葉としてはまだ足りないというか,つながり切れていない部分があるのはやむを得ないなと思われます。事業者さんも,これをよしとする方も,ここはよしとして見なさなくてはいけないのだなという確認のような思いをいたしました。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。要は,具体の審査となったときに,人によって資質・能力の考え方が違っていたりすると,とんでもないことになるということも言えるのではないかと思います。大学入学共通テストでどんなことを聞こうとしているかということを出していたわけですが,ああいった内容が想定されていると考えればいいのではないかと思います。

 

【柴山委員】今の資質・能力の件ですが,これは新学習指導要領のキーワードになっていて,私,本当によく分からない概念で,ずっとどういう概念なのかと整理していたのですけれども,日本語で資質・能力というよりも,英語でスタッフ・アビリティーと捉えていくと,スタッフ,アビリティー,コンピテンシー,スキルという順序で抽象から具体になっているということが,大体,方向性としてあります。資質・能力といったときには,かなり抽象的な概念で全体をカバーしているようなものだと解釈しておくと,割合,分かりやすいのかなというのが個人的な思いです。

 アビリティー,コンピテンシー,スキルの順番は私が言っているのではなくて,ISOの「学習サービスの成果のアセスメント」の手引きで,今,議論されているところで言われている順序ですので,多分,そのように解釈しておくと,割合,一般的に利用できるかと考えています。情報提供ということで申し上げました。

 

【清水委員】小さなことかもしれませんが,19ページにサンプル問題についてという項目があります。この中では,一応,国語も数学も記述式の問題を1題は例示しなさいということになっていて,下の方に解答例というのはあります。恐らく解答例に加えて大事なのは,記述式の場合の正答条件とか,どれだと満点で,どこが欠格かというようなところまで本当はあった方が分かりやすい。ちょうど共通テストの例示問題もそうですし,小学校,中学校の学力調査もそうですけれども,教育のツールというのはサンプルの問題が象徴的に多くを語ります。OECD・PISAなどもそうなのですが,サンプル問題の解答例が結構大事な役割をすると思いますので,記述式については正答条件のようなことも書いてもらうことを求めてはいかがかと思ったりもしたのですが,いかがでしょうか。

 

【荒瀬主査】当然,そうだと思います。ここからは,むしろ文部科学省の方々にお尋ねしたいのですが,業者の方々対象の説明会などをなさっていますよね。そういったところで,これだけでも相当な分量の情報提供を求めるわけですけれども,どのような感触があるのでしょうか。

 

【事務局】今,お尋ねの件に直接,民間事業者の方からの声を頂いたことはないので,直接的には分かりかねるのですが,この件というよりは一般論として,採点基準につきましては,これも全ての業者ではないのですが,企業のノウハウに当たるような情報にも配慮してほしい,採点基準がそれに当たったりもするという声は一部にも聞いたりしました。その辺がどうかという全体のところは分かりかねるのですが,一部にそういう声がありました。

 

【藤森委員】14ページの結果提供に関することですけれども,特に(1)受検者個人への結果提供内容・方法とございまして,先ほどの議論の中でも学習者への還元というのが非常に大きな課題になっています。※の内容を見ますと,主に内容に関する記述が中心で,どのような方法をもって結果を提供していくのか。視覚的なイメージで言うと,一覧表なのか,レーダーチャートなのか,あるいは成績分布表なのか,どういう形で示すのかが非常に大きなポイントだと思うので,ここでは,それについてもう少し記述をしていただいた方がいいかと思いました。

 

【荒瀬主査】そういう御意見もありますので,それも踏まえてお考えいただければと思います。ただ,これこそ,どういう業者の方がどんなふうにお考えかということが,また逆に見えることにもなるかと思います。

 

【根岸委員】今のことと,1つ前のこととも関係する採点基準の話ですが,一方でIRTをということが前に出ていて,採点基準は採点基準であると思うのですが,その採点基準で採点したものをIRTなどに掛けている場合も,英語のテストなどではよくあるんですね。そうすると,単純に足し算して60点でしたみたいな形でないものというのは,これからどのように世の中の人に伝えていくのかということが問題になります。センター試験も今のところは足して自分で分かりますが,IRTを使っている場合,どういう点数になるかわからないですよね。

我々の分野で,アセスメントリテラシーという言葉があります。一般の人たちに我々がどういうことを行っているのかをある程度伝える必要があります。サンプルと採点基準があっても,結果がどうなるかが分からない。例えばIRTを通して採点しているような作文のようなものだと,それぞれの採点基準の点数を足していったものと,生徒が手にしたものは違っていることがあるわけですが,その説明はどうするのか。これだけだと,業者は,ここに書こうとすると書く必要は特にない。書きたくないというか知らせたくないことかもしれない。

それから,もう一点,もう少し前の,測定しようとする資質・能力の具体的内容というところの書き方なのですが,これは学習指導要領のような書き方を期待しているのでしょうか。ほかの教科はどうなのかわかりませんが,特に英語の場合,中学校の新学習指導要領ですと,何々できるようにすることという形で学習到達目標設定がされています。それは,CEFRなどの考え方もそうですが,最終的に行う行動が書かれるという形の書き方だと思いますが,テストによっては,英語の場合だと言語処理能力の効率性がどれだけ高いかのような,どちらかというと根底にある能力の方を見ようとするものもある。そういうテスト設計の方だと,本来的に自分たちのデザインで書いてくるとそちらを書くと思うのですが,行動ベースのアクションオリエンテッドと言われているCEFRみたいに書こうとすると,表面的な,最終的な現実の生活での行動を書くことになりますが,その書き方は自由でよいのですか。それとも,上がってきたときに学習指導要領に合っていないから,何としてでも合わせろということなのか。そこは,どうなのか。

 

【事務局】お尋ねの点については,第3回,9月のワーキング・グループの資料の中で,記載例を検討中という形ではありましたけれども,お示ししています。そこでは,はっきりどちらかということでは言っていないのですが,具体的にこういったことができるという,いわゆる行動といいますか,現実といいますか,そういったことを具体的に書いていただきたいというつもりではおります。ただ,余り具体的に書き過ぎると,それはまた別の部分で支障が出る可能性があるので,明確にこうでないとだめと縛ってはいないのですが,学校に選んでいただく参考になる情報にするためには,指導要領のどこに関連するかというのは示すことになっておりますので,関連する指導要領の項目が示された上で,具体的にどういった力をこの問題群は見るのかということを,可能な限り具体的に書いていただきたいというつもりではおります。

 

【根岸委員】それは,ある種のテストというか,もしかしたら多くのテストにはそれでいけると思うのですが,英語のテストの中には設計上,例えば,最終的にそういう能力,目に見える顕在化する能力とCAN-DO的に結び付けろと言えば,間接的には結び付けられますが,テストそのものを見ると,そういう能力を測っているように見えないものもあります。例えば,センテンスレペテションテストという聞いたものをそのまま繰り返すテストは,CAN-DO的には現実に何をやっているのかよく分からないのですが,頭の中でやっている「音声を処理して,蓄えて,生成する」という行為が効率よくできればできるほど,より多くの行為ができるというロジックに基づいているテストもあります。そうすると,審査された人たちがそういう能力観に立っていない場合は,その能力をここで測っていると自分たちで言っているけれども,測っていないのではないかみたいなことも起こり得なくはないのですが,そのところをどう扱ったらいいのか。やはり目に見える感じで明示的に扱うことが期待されているのか。そこら辺がちょっと,悩ましく思いました。

 

【荒瀬主査】だから,実際,審査に係る申請について,それぞれがどういう意図でもって設計をなさったかを伝えていただくということは,当然,必要になってくるでしょうし,文書によるやりとりとか,実際のヒアリングも可能であるといいますか,必要に応じてやるということですので,その中で明らかにしていくことが必要かと思います。これは,そういうことをお考えですよね。

 

【事務局】はい。

 

【荒瀬主査】ありがとうございました。今はまだ机の上の話ですけれども,これが本当に具体化していきますと,いろいろなことがまた出てくる可能性はあろうかと思います。

  では,全体を通じましていかがでしょうか。来週,中教審の教育課程部会の児童生徒の評価に関するワーキング・グループというものがございますが,こういった取組が具体化するというのはもちろん皆さん御存じなわけですけれども,今度は,それをどのような形で指導要録に反映するのか,しないのかといったようなことも含めて,今後,向こうのワーキング・グループでは議論が行われるのではないかと思います。私も入っております。その際,必要なことは申し上げようと思いますので,御承知おきいただければと思います。

 

【長塚委員】参考資料で,後ろの方に絵がたくさん載っています。例えば,26ページの制度全体のイメージとか,先ほど議論になったことで言えば,29ページの事業概要報告のイメージとか,つまり学校とか事業者のPDCAを中心とした絵があるのですが,イメージ図というのは意外と教育現場でもこれだなとつかんでしまうところがあります。そうすると,先ほども大事な議論だなと思っていたのは,生徒にとってどうなのかという生徒のPDCAのような意味合い,そこを中心としたイメージ図というのでしょうか,この目指すところを分かりやすく伝える図があってもいいのではないか。むしろ,それが中心ではないかということを改めて感じました。そんな思いです。

 

【荒瀬主査】ありがとうございます。こういったことの上にというか,これが下支えになって生徒の学習活動が進んでいくといいますか,それこそ自己肯定感とか,自己有用感とかを含めて増進していくというイメージが必要ではないかということですね。

 

【根岸委員】低廉な受検料についてもう一回考えたのですが,低廉なと書いてあるだけで,幾らぐらいとも書いていないわけですが,この意味が,あいまいです。我々もいろいろなものを安いなと思ったり,高いなと思ったりするのは,そのものとしては高いとか,そのものとしては安いと思うわけです。例えば,英語の4技能で「話す」も「書く」も測っているとすると,我々の世界でいうと予想される値段はある程度高くて,文法しか測っていないとか,単語だけといったら,そんなにお金は取れないだろうということがあると思うのです。ここのイメージ,基準になっているのは,現状,高校でやっている様々な模擬試験みたいなものに比してなのか。そうでなく,今,作ろうとしているものとしてなるべく安くということなのか。そこは,改めて考えてどちらだったのかなと思いました。

 

【事務局】今の御指摘ですが,我々としては,当然,幾らという具体的な線引きは難しいと思っている中で,書き方としても,できるだけ低廉な価格設定という言い方をしています。なので,平たく言うと,求められるスペックや期待されるスペックというのは当然,一方ではありますので,それを踏まえながらも,できる限りここを抑えていただきたいという意味があるので,今,このぐらいの値段設定のものが世間に流通しているというのも一つの参考情報にはなるのですけれども,スペックが高くなれば値段が高くなります。そういったことを踏まえたときに,当然,コストもあるが,その上で,受検者の利用のしやすさの観点からも,できる限り抑えていただきたいという意味合いで使っているつもりでございます。

 

(2)「高校生のための学びの基礎診断」に関する試行調査・研究事業の公募結果について

 

【事務局】それでは,資料3を御覧いただければと思います。

 今年度の試行調査の計画につきましては,8月4日の第2回検討ワーキング・グループにおいてお諮りをしたところですが,その後,公募を行い,外部有識者による審査を経て,委託事業者を決定いたしましたので,御報告させていただきます。

 今年度は,3.委託事業者のとおり,調査対象や教科によってAからEの5つの事業に分けて公募の上,各事業者を決定しております。

 試行調査は本体調査ということで,教科に関するもの,それからアンケート調査で構成しており,クロス集計も行う予定です。今年度の本体調査は,調査問題の作成から配送,回収,採点,分析,結果,返却までの一連の業務を,同一の事業者で実施していただく予定です。昨年度は,問題作成と実施を分けて実施しておりまして,この点,異なるところです。

 実践研究校における調査は,来年1月中を予定しており,現在,各事業者において,調査問題の作成とともに,具体的な実施日程を実践研究校と調整をしていただいているところです。

 調査につきましては,実践研究校の第1学年,第2学年の全学級を対象としております。ただし,事業EのCBT調査は,新規団体の第1学年,第2学年の各1学級を対象としております。

 2ページは本体調査における出題の枠組みですが,今年度は,国語,数学につきましては思考力,判断力,表現力等を問う問題を中心に出題するという方針です。英語については,4技能を問うこととしております。この資料は,事業ごとに各事業者の企画提案書などに基づいて概要をまとめたものでありまして,簡単に説明させていただきます。

 事業Aは,昨年度からの継続校を対象としております。国語,数学,英語を1つの事業者で実施するというパターンで,国語,数学については基本的に記述式を中心としております。英語は,「話すこと」はタブレットを用いたCBT方式を予定しております。

 事業B以降は,今年度からの新規校を対象としておりまして,事業Bは国語です。こちらは,事業Aと同じ事業者が採択されており,内容は事業Aの国語と同じです。

 事業Cは数学で,基本的に記述式の問題です。

 事業Dは英語で,4技能を測定することになっておりまして,「話すこと」についてはCBT方式により実施いたします。使用するパソコンについては,各実践研究校のパソコンの環境等を事業者の方で調べていただいて,学校の端末を使用するか,若しくは事業者の方で用意していただいた端末を持ち込んで実施する方式のいずれかを検討するということです。

 事業Eは,CBT方式による調査を計画しております。事業AからDまでは,スピーキングを除いては紙による試験を行っていただくわけでありますけれども,事業Eは,CBTの特性を生かした出題や解答方法について調査研究を行っていただくという趣旨です。このため,国語,数学の出題内容については,思考力,判断力,表現力等に重点に置くということではなく,知識,技能を問う問題も含めて出題することにしております。英語については,事業Aと事業DはスピーキングをCBTで実施することになっており,事業Eでは「聞くこと」,「読むこと」,「書くこと」の3技能を対象としております。

 最後に,アンケート調査です。マル1の継続校と新規校で共通に行うアンケート調査と,マル2の事業Aから事業Eまでの5つの事業に関する事後アンケート調査と,二通りのアンケート調査を予定しています。マル2のアンケート調査では,各事業者においてアンケート項目を設定していただいて,マークシートやウェブ入力の方式で調査を頂くとともに,学校の協力が得られれば,各事業者において一部の学校を訪問していただいて,先生や生徒にインタビューを行うことも検討されているということです。

 

【長塚委員】最後のアンケート項目とか,前回のものとか含めて,これは公表というか,分かるようになっているのでしょうか。

 

【事務局】公表につきましては,検討させていただければと思います。

 

【長塚委員】これ,結構大事な要素だと思います。将来的にも,アンケートを実施して診断することになるだろうと思いますので,その意味では,これ自体も研究する対象ではないかと思いますので,よろしくお願いいたします。

 

【事務局】ありがとうございます。試行調査は,かなり対象校が絞られておりまして,生徒の学習状況とか,そういったことをアンケートで聞いておりますので,それを公表すると学校の状況が大体分かってしまうという面もあるものですから,ちょっと検討させていただければと思います。

 

【岡本委員】戻りまして,先ほどの基礎診断のところですけれども,最後に出たとても大事な議論で,高等学校の生徒自身がこれにどのように向かうかという部分で,清水委員や宮本委員から提案があったところですが,せっかくですから別に無視してくださっても結構ですけれども,提案をします。

 6ページのところは,活用について,下のマルはAのほかBがあると言っているので,BにAを書く必要はないだろう。

 Aのところですが,すみません,教員なものですから,こういうことを言うのですけれども,括弧の中に大事なことを書くなと指導しているので,これは恐らく大事なことは括弧の中に書いてあることで,1.3というのは条文,前文に書いてあるわけですよね。そちらは1.3参照とか,そういうようにすれば,すごく目立つのかなというのがまず1点です。これは御検討願いたい。

 それから,これはもっと無視してくださって結構ですが,1.3の活用の基本的な考え方のところに「基礎診断の結果は,学習成果や課題を把握することにより,生徒自身の学習改善や教員の指導の工夫・充実,学校における成績評価の材料の一つなど」と書いてあります。私,荒瀬主査の隣で国語のことを言うとおかしいかもしれないけれども,「改善や」というのが気になります。これは,恐らく3つ大事なことが並べて書いてあるので,私的な文章を書かせれば句読点ではないか。これと,これと,これと。

 そのように工夫していただいて,生徒が大事だというのだったら,生徒自身の学習改善のところはゴシックにするとか,いろいろな工夫があるかと思います。これは無視してくださっても結構です。提案です。

 

【荒瀬主査】ありがとうございました。「まず,そのためには」という感じで,明確に書いていただくことを御検討いただければと思います。

 そうしましたら,これは,今後,具体的に必要な修正をお願いすることになるわけですけれども,日程ありきではございませんが,日程の関係もありますので,今日,言い足りなかったこととか,お気付きになられたこととかは,また事務局の方にメール等で御連絡いただくということと,具体的にこれまでもやってまいりましたけれども,様々な形で個別にも御相談させていただく中で案を作っていただいて,パブリックコメントに掛けていただくということでよろしいでしょうか。 そうしましたら,次回の日程につきましてお願いいたします。

 

【事務局】次回,第6回は,年明け2月の開催を予定しております。開催案内は,後日,改めてお送りいたします。

 また,本日,御議論いただきました取りまとめの原案につきましては,荒瀬主査からも御紹介がありましたけれども,来週,11日に開催予定の,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキング・グループにおきまして,事務局より報告させていただきます。ワーキング・グループ終了後でも御意見等ございましたら,事務局に御連絡いただきますようお願いいたします。

 

―― 了 ―

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