高校生等への修学支援に関する協力者会議(第4回) 議事録

1.日時

平成29年8月31日(木曜日)13時00分から15時00分

2.場所

文部科学省 6F3会議室

3.議題

  1. 前回の指摘事項について
  2. 委託事業「高校生等への修学支援に関する調査研究事業」について
  3. 末冨委員による御発表
  4. 国による高校生等への修学支援に関するアンケート集計結果
  5. その他

4.出席者

委員

大橋弘委員,小河光治委員,小川正人委員,小林雅之委員,柴田悠委員,末冨芳委員,濱中淳子委員(敬称略・五十音順)

文部科学省

髙橋道和初等中等教育局長,下間康行大臣官房審議官,伊藤学司財務課長,塩田剛志高校修学支援室長

5.議事録

【小川座長】  ただいまより、第4回目になりますけれども、高校生等への修学支援に関する協力者会議を開催したいと思います。委員におかれましては、大変御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 柴田委員には今回もウェブにて参加いただいております。よろしくお願いいたします。また、本日は文部科学省の委託事業である高校生等への修学支援に関する調査研究事業を行っていただくことになりました武蔵野大学の岩田弘三教授にも御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、前回の会議以降、7月11日付けで事務局の異動があったということですので、事務局の方から御紹介をお願いいたします。

【塩田室長】  7月11日付けで異動がございました。紹介させていただきます。
 髙橋初等中等教育局長でございます。

【髙橋局長】  どうも、高橋でございます。よろしくお願いいたします。

【塩田室長】  下間大臣官房審議官初中局担当でございます。

【下間審議官】  下間でございます。よろしくお願いいたします。

【小川座長】  せっかくの機会ですので、局長、一言御挨拶をお願いいたします。

【髙橋局長】  改めまして、初中局長の髙橋でございます。
 4年半ほど教育再生実行会議やスポーツ庁の方に行っておりまして、初中局を離れておりましたが、以前初中局にいたときには、ちょうどこの高校生の就学支援金の制度を作るときにも立ち会ったりしましたので、随分時間が経ったなという思いがございます。そういう意味で、小川座長をはじめ、当時お世話になった先生にまたこれから、再度お世話になるということで、大変ありがたく思っております。
 この会議は今回で4回目ということで、これまで、修学支援の在り方について大変熱心に、精力的な御審議を頂いておると伺っております。申すまでもなく、全ての子供が家庭の経済状況に左右されることなく希望する質の高い教育を受けられるということが重要であることは言をまちません。こういったことは今の内閣の中でも、特にこれからの最重要テーマと位置付けられておりまして、来月いよいよ、人生100年時代構想会議というのが政府の中でも立ち上がって、茂木担当大臣の下、恐らく文科省もそれには全面的に関わることになると思いますが、その議論が始まります。その中では大きなテーマが今幾つか、報道も既にされておりますが、その中でも教育の無償化、教育負担の軽減の問題というのは重要なテーマになってくるのではないかと思っております。是非この会議におきましては、専門的な見地から、教育の機会均等の観点はもちろんでございますが、少子化対策、子供の貧困対策といった観点からも御検討いただきまして、高校生の修学支援をよりよい制度に見直すための方向付けを是非頂きたいと思いますし、また、この場での議論を私ども政府全体の議論にもしっかりと生かしていくようにしたいと思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

【小川座長】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入っていきたいと思います。最初に配付資料の確認について、事務局からお願いします。

【塩田室長】  お手元の議事次第にありますように、資料1-1から参考資料2までございます。もし不足等ございましたら事務局までお知らせを、よろしくお願いいたします。

【小川座長】  それでは、議事の1に入っていきたいと思います。これは前回の協力者会議での指摘事項、また指摘事項に関係した関係資料の追加等があるかと思いますので、事務局から説明をお願いいたします。

【塩田室長】  それでは、資料1-1です。下線部が前回の会議で御指摘いただいたことを追記したものでございまして、まず1点目でございますが、高等教育機関への進学状況については都道府県別を含めた分析が必要ではないかということが1点。また、その都道府県ごとの取組状況と、進学率のアウトカム等をリンク付けした分析が必要ではないかという御指摘。また、アルバイトの実態を含めまして、低所得世帯の家計状況についての調査の必要性、また、中学から高校に所管が替わりますので、それへの対応、また都道府県をまたぐ生徒の移動に対する対応、こういった連携の必要性の御指摘がありました。
 次のページですが、所得基準のところで、各地域の所得差をどのように考えるべきかというような問題提起がありました。また、事務負担の軽減につきまして、保護者の事務負担の軽減という観点と、さらには提出書類の作成が困難といった御家庭があるので、スクールソーシャルワーカーとの連携というような御指摘がありました。また、現場からの問い合わせに対するQ&Aのようなものを作成という御指摘もありました。
 その他のところですけれども、不正受給の防止等のための説明責任の果たし方の在り方、また、支給額や支給基準の見直し、システムの効率性を高めるための制度見直し、国、地方自治体、学校の役割分担の見直し、こういった3点が検討する柱になるのではないかというような御指摘がありました。
 参考で、前回、関係4団体からヒアリングいたしましたが、関係団体から御指摘いただいたことをさらに下線で追記しております。就学支援金関係では、私立高校の授業料の全国平均額まで支援してほしいと、所得制限も撤廃すべきではないかといったこと。また、定時制、通信制を先行的に実施すべきではないかということ。また、高校生等奨学給付金関係でございますと、第2子以降の対象範囲の拡大と支給額の増額、所得制限の緩和による対象範囲の拡大、このような御指摘がありました。
 次の4ページですが、所得の判定基準のところにつきましては、分かりやすさの観点から現行制度を基本とすべきというような御意見。一方で、現行基準では考慮されない16歳未満の子供についての負担を考慮できる基準を設定すべきではないかというような御指摘もありました。手続につきましても簡素化、効率化をすべきだというような御指摘があったところであります。
 それに関連いたしまして、資料1-2であります。これは、前回御指摘があったことを踏まえて、事務局の方で用意できるデータをまとめたものであります。
 ページをめくっていただきまして、都道府県別の大学進学率の推移、これは現役生の数字でございます。浪人生を入れた数字は都道府県別には出ておりませんので、現役生のみの数字となっております。枠囲みに書いてありますように、進学率が21から29にかけて上がったのが24、下がったのが23となっております。最大格差は28.7から26.7に、いずれも最高値は京都、最低値は沖縄です。全国平均は21年度が53.9、25年度は53.2、29年度が54.7ということであります。
 各都道府県の独自施策との関連性を見ていきますと、詳細な分析はできておりませんが、例えば、2ページを見ていただきまして、これは都道府県別の独自支援の星取り表みたいになっておりますが、一番進学率が高い京都府につきましては、600万円以上世帯も含めたかなり充実したものになっていて、一方、沖縄県につきましては250万程度のところのみの手当てにとどまっていると、このような現状が見られるということであります。
 続きまして、ページをめくっていただきまして3ページです。他の都道府県の高校に進学する方がどれぐらいいらっしゃるのかというような御指摘がありました。ここに書いてございます一番上の枠にありますように、他県への進学者数は5万人程度で、割合でいうと4.48%ということでございます。赤く着色しているのが、その割合が多い県ということになってございます。一番下の枠に出身中学の国公私立の内訳が書いておりますが、残念ながら進学先高校の国公私立別のデータはありませんでした。
 続きまして4ページですが、就学支援金の認定事務を委託している都道府県はどれぐらいあるのかというような御指摘がありました。これにつきましては、全ての都道府県におきまして一定の事務を学校等に委託しているということであります。ただ、これは、権限の委任、移譲はできないので、あくまでも委託ということです。
 次のページですが、これは私立高校の授業料の都道府県別の変化であります。枠囲いのところを見ていただければと思います。AとBの合計――ちなみにAというのが授業料、Bが施設整備費ですが、一番右端ですけれども、21年と28年と比べまして授業料と施設整備費の上がったところが35、下がったところが12。さらに入学金を含めて考えますと、上がったところが31、下がったところが16と、このようなことになっております。
 続きまして6ページで、これは東京都就学支援金の事務を財団に委託しているので、そこでどれぐらいの人が関わってやっているのかというような御指摘がありました。これにつきましては、一番下に書いておりますが、就学支援金に関わる財団職員というのは、管理責任者が1名、その他6名ということでありますが、業者に委託しているようで、最大では170人ぐらいの人が関わっていらっしゃるということであります。
 続きまして、7ページが事務費交付金。国の方で就学支援金の事務に関する予算を手当てしているわけでありますが、これについてどのような状況かということであります。各都道府県別に書いておりますが、ページをめくっていただきまして9ページに総括的な合計額を記載しております。交付決定額というのは都道府県からの申請に基づきまして決定した額、これは基本的にはこちらで査定していないので、概ね申請のあったとおりの金額を出しておりますが、確定額、これが実際に使った額でありまして、31億。結果として2億余っているというような状況ですので、金額的には少々不用が出ているような状況でございます。
 10ページが学校徴収金、いわゆる私費の滞納が増えているのではないかという御指摘があり、それに関連するようなデータがないかということで調べました。残念ながら高校に関してそのようなデータがなかったのですけれども、参考までに小中の、例えば給食費の未納状況でございますが、22と24を比べますと、若干ではありますが減少しております。修学旅行の調査ですが、これも中学校段階ですけれども、経済的理由学校数というのが枠囲いにあるかと思いますが、経済的理由で不参加の生徒がいる学校が、27と28で比べると減少しているということで、中学校段階では、ここに挙げているような指標でございますと数が減っているというようなデータであります。
 すみません参考までに、参考資料1と、参考資料の最後の資料を見ていただきますと、事務局にて概算要求をしており、その関連資料でございます。参考資料1が、文部科学省全体の概算要求のポイントでございますので、こちらはお時間があるときに見ていただければと思います。
 参考資料2が本協力者会議に関連する概算要求のポンチ絵でございます。1枚目が就学支援金ですけれども、これにつきましては現在まさに御議論いただいておりますので、特に変更は加えておりませんで、粛々と必要額を要求しているというものでございます。
 次に奨学給付金でございます。こちらの方は若干増要求をさせていただいております。これは2点ございまして、まず1点目が一子単価の引き上げということで、一子単価がどうしても低いということがございますので、一子単価を引き上げられないかと、教科外活動費というところで上げられないかということを要求しているのが1点。2点目が、多子世帯への支援を強化という給付要件の見直しとなってございます。現在、第2子単価の適用が15歳以上23歳未満の兄弟今日がいる場合に限っておりますので、この枠囲いにございますように、高校生がいて大学生のお兄さんとかがいる、このような場合は対象になりますけれども、逆に、左の方で、中学生の弟がいても、これは第一子単価の適用になってしまう。またさらに、高校生に兄弟今日が2人いても、1人は一子単価で、もう1人が二子単価ということでございます。これを今回概算要求で、中学生の弟がいても単価適用になるようにということと、高校に2人いた場合は2人とも多子単価で見られる、このようなことで、対象人数が10万人増ということで倍近くに増えると、このような要求をしているところでございます。ただ、これはあくまでも概算要求でございますので、認められるかどうかは今後の調整次第ということであります。
 次のページは参考までに、義務教育段階の就学援助ということで、就学援助につきましては、3つ目の枠の修学旅行費の単価引き上げというところで、修学旅行費の単価が実態よりも低くなっているというようなデータもございましたので、修学旅行費の単価引き上げをお願いしております。
 説明は以上です。

【小川座長】  ありがとうございます。今の資料1-1と資料1-2、それと関係した概算要求に関する資料に関わって、何か委員の方から御質問があれば、お受けします。議論は後で一括して行いますので、質問に限定していただければと思います。何かございますか。
 柴田委員、よろしいですか。

【柴田委員】  大丈夫です。ありがとうございます。

【小川座長】  よろしいですね。ありがとうございます。
 それでは、次の議事に進みたいと思います。議題2として、委託研究を行うことになっていますけれども、先ほどお話ししましたように受託者が武蔵野大学の岩田教授に決定したということです。つきましては、岩田先生の方から委託調査の実施計画について御説明いただいて、若干意見交換をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岩田教授】  お願いします。今回この委託事業を受託させていただきました武蔵野大学の岩田と申します。何とぞ宜しくお願い申し上げます。
 まず研究の趣旨ですけれども、資料に書きましたことはさておきまして、私の理解といたしましては、高校生等への修学支援制度の効果というのを新制度に合わせて検証することには2つの面がありまして、1つは、もらった人たちにどういう効果が及んでいるのか、要するにどのような費目の出費が削減できて、それをどこに回すようにできたのか。さらには、その中には子供がアルバイトをせざるを得なかった分だけ、勉強に励めるようになったという面などを含めての効果の検証が第1の調査事項になるというふうに理解しております。もう一つは、今の支援を拡大するとしたら、支給対象だけではなくて支給額の拡大を拡大するという考え方もあるかと思いますので、広くするのがいいのか、厚くするのがいいのか。両方とも充実するのがベストなのですが、限られた財源の中でどちらを優先事項にしていくのか。さらには、今の制度の中でも支給対象者の捕捉率は100%ではない、特に私学の方でその状況が割というふうに聞いているわけですけれども、高校がどういう周知をしているのか、それによる情報ギャップの問題と併せて、何か理由があって、情報としては知っているのだけれども応募していないとしたらどういう理由なのか、なぜそこに行き渡らないのかということを調査するというのが第2点目に鳴るかと思います。それら2点を中心に据えて調査を行うというのがこの事業の趣旨かと私は理解しております。何か足りないことや間違っている点がありましたら、委員の先生方から御指摘いただければと思います。
 趣旨の方はそれくらいにさせていただきまして、委員の先生方の一番御関心があるのは、どういう調査をやるのかということだと思いますので、そこに話を移らせていただきたいと思います。
 まず、アンケート調査、の事前調査を兼ねまして、47都道府県のうち5都道府県を選びまして、それぞれの県内にある2つの高校を対象にいたしまして、第1に保護者、第2に現場で生徒や保護者の人に対応していらっしゃる先生、さらに校長先生も含めることになるのかと思いますけれども、まず聞き取り調査を行いまして、アンケート調査でどういう質問項目を立てる必要があるのか、どういう課題が存在するのかということをまず検討したいと思っております。聞き取り調査の対象高校の中には私学も幾つか含める必要があるのではないかと思っております。原案では、とりあえず私の方で、東京都、札幌、仙台、大阪市、それから那覇の4地域を挙げておきましたけれども、是非ともこの県の高校のことは聞いてほしい、聞いておいた方がいいという御助言を委員の先生方から頂ければ、そちらの方へ重点的に調査をかけたいと思いますので、この点は御指導、御鞭撻、何とぞよろしくお願いいたします。
 2番目の調査は、全国の高等学校で、まず奨学給付金の対象者、具体的に言いますと、例えば生活保護世帯とか準保護世帯が各高校にどれくらいいらっしゃるのか、さらに、そういった対象者の生徒さんというのが、きちんとその支援金に応募し受け取っているのかどうか。また教育委員会による周知方法につきましては最近文科省の方でお調べになったかと思いますので、問題は高校の現場におりてきたときに、どういう周知をしているのかということが問題になるかと思いますので、それも併せて調査する。さらには、先ほどの前回会議の論点整理にもありましたけれども、卒業後の進路状況調査です。要するに修学支援の効果によって大学だとか専門学校にどれくらい進学するようになったのかと、ここら辺についても調べたいと思っています。一応これらにつきましては、回収率は別にいたしまして、全国の高等学校全て、悉皆調査を行うという予定になっております。
 3番目です。これは応募要領にも書いてありましたように、めどといたしましては資料に示しました?、②、③といった3つの集団間でいろいろな比較を行ない、効果を測定するようにという指示があったかと思いますので、その調査対象をそのまま採用してあります。そして、それらを対象とした調査を通して家計状況であるとか、就学支援金の効果であるとかについてのアンケート調査を行おうと思っています。これについては後でもう一度立ち返りますけれども、アンケート調査の場合、所得を聞くことが極めて困難だということに気付きまして、最初は、現在の高校3年生、つまりまだ高校に通っている生徒の保護者に対しましては、学校を通して直接アンケート調査を行うという企画になっていたのでございますけれども、所得の把握が難しいということで、これはもうウェブ調査で行うしかないという結論になりました。つまり、これらの3対象につきましては一括してウェブ調査で行うということにいたしました。これは保護者調査になります。
 それから4番目は、教育委員会に対する調査を行い、高校生を対象としてものとして各県がどのような経済的支援制度を持っているのかを調べるという調査を最初は計画に盛り込んでおきましたけれども、これも最近、文科省の方で相当しっかりした調査がなされているということを知りまして、もう一度教育委員会宛てに同じような趣旨のアンケート調査票を送ると、重複した内容を答えさせられるといった負担感の問題もあるかと思いますので、文科省で実施なさいました調査というのをもう1回こちら側でも逐一見まして、さらには委員の先生方のアドバイスなり文科省なりの意向を踏まえた上で、是非ともこの県についてだけは詳しく聞きたいという県の教育委員会や私学担当部局を回って、ヒアリングで補うという形に設定してあります。
 事業計画につきましては、もう相当、日が押していますけれども、一応こういう形だと何とか12月の中間発表に間に合うかなということで、逆算して作らせていただきました。
 事業の実施体制は3ページ目になりますけれども、メンバーとしては、これだけのメンバーになっております。
 概略の説明は以上でございますけれども、最初に企画提案書を出しましたときに幾つか指摘を受けました。その指摘は、5ページ目にまとめておきました。それに対して、それらの指摘をどういうふうに取り込んだのかということだけ御説明させていただきたいと思います。
 まず、所得比較が必要であるのではないかという1番目の指摘。それから7番目の保護者に関しても所得別に分析した方がいいという指摘。それから6番目の高校生のアルバイトの状況や、保護者自体が労働時間などの面で、例えば今まで働いていたのが多少楽になったとか、そういうことも含めて調査した方がよいという指摘。これらにつきましては我々は、当然のことだと思って考慮はしていたのでございますけれども、余りにも当然過ぎて企画提案書には書かなかったという経緯があります。けれども、御指摘のとおりきちんと明文化しておいた方がいいと思いまして、それは全部、今回の事業計画書の中には明記いたしました。
 それから、5番目です。制度の周知や捕捉状況、これも全国高校調査では、この質問をきちんと入れたいと考えております。
 10番目です。教育委員会だけではなくて、現場の教職員の方々へのヒアリングも最初の聞き取り調査段階で行っておいた方がいいというご指摘。これにつきましても取り入れました。
 4番目です。ウェブ調査で低所得者層をサンプルとして充分に確保できるかどうかといった問題点があるのではないかという指摘です。ただ、先ほど申し上げましたように、アンケート調査ではかえって所得の把握が難しい可能性が高いということが分かりました。それで、これはウェブ調査でしかなかなか調査できないという点と、それから再委託を出したところにも確認しましたけれども、低所得者の方に比重を置いたサンプルを提供していただくのは可能だそうでございます。ですから、それらの人々にウエイトを置いたサンプルの確保という面でも、こちらの方がいいというふうに私は理解しております。
 8番目です。支援金の受給資格で分析する必要性についてですが、これは先ほど申し上げましたように、受給資格があるにもかかわらず受給していない人たちの問題、さらには情報ギャップの問題で周知が徹底していないということをあぶり出すためにも、要するに受給していない人というのがなぜ受給しなかったかということを分析する必要があるのではないかと思いまして、これは是非とも必要だというふうに私は考えております。
 それから、9番目でございますけれども、高等専門学校や高等専修学校などの団体への調査が確かに抜けておりました。ただし、これは後付けで大変恐縮ですけれども、先ほど申し上げましたように、既に教育委員会の調査は文科省の方でしっかりした調査がなされております。それからそれら各種団体にも調査がすでになされているというふうに聞いております。そこで、もう一度やるというよりは、そこで抜けたところを聞くという形で、ここの御指摘の団体も取り込んだ形で進めていきたいと思います。
 3番目です、再委託金の根拠。これは今も確認の最中でもありますが、ウェブ調査というのはこういう積算にならざるを得ないと業者の方も言っていまして、実はうちの事務方もこれでいいのかと気にしたのですが、ほかの出し方というのは委託業者も今まで例がないみたいです。ただし、根拠を示せるものについては、いくつか追加する形で、委託業者にお願いいたしておりますので、それで、御容赦いただければと思います。
 それから、11番目です。確かに今回最初に提出したメンバーは高等教育の専門家が多くて、高校に詳しい人がそれほど入っていなかったという難点がありました。これはこちら側も十分承知していた点でございます。それに対する指摘だと思いますけれども、古賀先生、これは委員会に加わっていただくことに同意いただけました。酒井先生は自分の専門でないのでということで、固辞されました。ただ、それに加えまして、今回のテーマのような高校関係の支援の問題の専門家でございます、小入羽先生と妹尾先生に、メンバーに加わっていただくようお願いいたしまして、同意を得ております。
 それから、責任体制がはっきりしていないのではないかとのご指摘に関しましては、おっしゃるとおりですけれども、これは企画提案書段階では小林先生を代表とする今までの委託事業の組織体制を踏襲いたす形で、提出いたしました。ただ、今回の委託事業に関しましては全員の同意をとってあります。のみならず、今までの委託事業でもきちんと責任を持って成果を出してきていただいた方々ばかりを集めておりますので、心配ではございましょうけれども、きちんとした成果は出るかと思っております。正式な責任分担につきましては、9月4日に第1回会議を開きまして、そこでメンバーの皆さんの意向を聞きながら、責任体制及び分担を明らかにしていく形にさせていただきたいというふうに思います。
 よろしいでしょうか。何か御質問、御助言がございましたら、何なりとお申し付けいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【小川座長】  ありがとうございます。今、委託調査研究の内容について説明ありましたけれども、これについて何か御質問とか要望があれば、よろしくお願いします。この委員会のメンバーの小林さんと濱中さんと、末冨先生も入られているんですよね。

【岩田教授】  はい。

【小川座長】  そういう点では非常に安心しますけれども、何か御質問、御要望があれば。
 柴田委員、いかがですか。

【柴田委員】  大丈夫です。ありがとうございます。

【小川座長】  はい。では、濱中委員。

【濱中委員】  これは幾つか調査が、柱として柱が設定されているのですが、大体のイメージをつかむために、それぞれの予算配分を大体予算を幾らの配分で考えていらっしゃるのか教えていただきたいのですが。

【岩田教授】  まず、再委託に関しましては約300万を計上しております。全サンプルで、3,600人分で、再委託の業者さんに聞きましたら、この金額になりました。それから、全高校へのアンケート調査の方ですが、アンケート調査票郵送費等含めて、大体150万円くらいです。あとは旅費になりますけれども、教育委員会への追加調査と、それから高校へ行く分も含めまして、大体100万円くらいです。このような経費で行う予定になっております。よろしいですか。

【濱中委員】  これは、この調査研究のプロジェクトのメンバーで御相談していただければということだとは思うのですが、おそらくメインになるのは保護者調査なのではないかと推察しています。だとすると、高校の悉皆調査にそこまでこだわる必要があるのかなという疑問も持つわけです。旅費を含め、高校の調査のための費用を少し抑えて、できる限り保護者調査に予算をまわすほうがいいのではないでしょうか。といいますのは、低所得層の回答をどれだけ確保できるのかという疑問があると同時に、やはりウェブモニターというのは、ある意味パソコンに親しんでいる保護者に限定されます。そしておそらく一番知りたいのはそこではないと思います。時間も限られていますので、ウェブモニターを対象にというお考えも十分わかるのですが、だとすれば、本当に知りたい層の回答を少しでも得るという目的で、規模を拡大するなどの方向性を検討する必要があるのではないかと思います。

【小川座長】  ウェブを使ったアンケート調査についてはその信憑性については、バイアスもあり、学会レベルでもウェブを使ったアンケート調査の信憑性をめぐってはかなりいろいろな議論があるのも事実ですので、その辺可能な限り、その弱点を補強できるようであれば、補強するために経費を使っていただく方がいいのかなという気持ちは私にもあります。

【大橋委員】  今回この就学支援金及び奨学給付金の効果を分析するとき、その効果というのは何かというと、教育費の負担あるいはその調達方法とかについて分析を行うということですが、これは手法としてどういうふうに見るのかなというのが質問です。そもそも見たいのは何かというと、理想的には、ある家庭に、この給付金をあげたケースとあげないケースでどういうふうに、支出の形態だとか、あるいは調達方法が変わったのかということを本来だったら見たいわけです。ただ、そのような実験は恐らくできないので、代わりにどのように効果を見るのかということなのだと思います。
 そこのあたり、多分統計的な手法が幾つもあると思うのですが、今回そういうふうな手法を使うことができるという理解でよろしいのか。あるいは別のアプローチをけんとうされているのか。

【岩田教授】  先生のおっしゃった先ほどの方法で、家計状況がどう変わったかというのをアンケート調査でとれないかなという設計になっています。それには2つの比較方法がありまして、要するにもらったことによってもらう以前と何が変わったのという、これは過去にさかのぼっての分析になるかと思います。どれくらい信頼性があるかどうかは別にいたしまして、それを、だから過去ではこういうふうな収入と支出構造を持っていたものが、もらったときにはこう変わったという点を、もらった人に対しては聞くというのが1つだと思います。それと、制度が変わる前と後で、同所得の人の支出、収入構造がどう変わったかというのが2つ目の視点になるかと思います。3つ目は、新支援制度の下でもらっている人ともらっていない人とで支出と収入構造がどう変わったかを調べるという、3つの方法を我々は想定しております。

【大橋委員】  これは、その世帯に関して、そのような仮想的な質問を投げてあげて、その仮想的な状況に対する回答をもって効果と見るということでよろしいですか。

【岩田教授】  一応我々が今までやってきた研究ではそういう形をとっておりましたので、想定しているのはそういうことでございます。

【大橋委員】  なるほど。実のデータを使ってというのはすごく難しいと思うので、多分それは一つの方法で、そうすると、今回、支給対象の拡大とか、あるいはそれに厚みを設けるとかということも多分今回の検討会のスコープに入っていると思うのですが、そうすると、それについても子供が1人しかいない人に2人目がいたらどうとか、そのような質問をすると。

【岩田教授】  おっしゃるとおりです。

【大橋委員】  そこのあたりのクレディビリティ、先ほどのウェブアンケートと同じようなコンテクストだと思うので、クレディビリティがどこまであるのかというのを、やはり政策の実効的にはすごく予算がかかるものなので、ぜひ担保していただけるといいなというところは重要な論点かなと。

【岩田教授】  ありがとうございます。まず1つは、先ほど申し上げましたように、なかなかアンケート調査の形で所得を把握するというのは、今の状況を考えますと非常にプライバシーにかかわる問題で難しいということがありますので、それで我々が検討した末の結果としてウェブ調査しかないだろうということにまず落ち着いたという点は、繰り返しになりますけれども、ご指摘いたしたいと思います。 また小林先生を代表とする委託事業でも、何回かウェブ調査を実施してきましたが、その分析を担当なさってきたベテランの先生の感触によりますと、確かにウェブ調査のバイアスはありますけれども、高所得者が多くなるのではないかという懸念につきましては、ウェブ会社に低所得者のサンプルを重点的に取ってもらったりという方法などで、ある程度調整はできており、それほどサンプルに偏りはないようにできる。ただ問題があるとすると、これまでのウェブ調査の傾向として都市部の人が多いという点はあるということはおっしゃっていました。今回もそのウェブ調査についてのベテランの先生にメンバーに加わってもらっていますので、そこら辺はその先生が中心になって解析していただけるかと思います。さらにその先生はサンプリングの問題につきましても専門家でございますから、うまいことバイアスを考慮しながらの解析をしていただけるのではないかというふうに期待しております。

【大橋委員】  2点あって、1つはサンプリングの問題と、あともう一つの仮想的な状況に対する回答がどこまでクレディブルなのかと。これは、おもしろい話があって、例えばハンバーガー店がありますよね、そこが顧客にアンケートをしましたと。何をはさんだらいいですかといって、ほとんどの人がベジバーガーがいいと言いました。それでベジバーガーを出したら、全然売れなかったというふうな話があったりします。アンケートでいいという回答と、実際にお金を払って買うのかというのは全然違う話の可能性があって、そこのあたりすこし心配したというのが問題意識です。

【岩田教授】  分かりました。それは十分考慮しながら、どこまで、私の研究的知識でお応えできるか分かりませんけれども、それはきちんと考慮しながらやらせていただきたいと思います。

【小川座長】  小林委員、何かありますか。

【小林委員】  この調査は実は非常に難しい調査でして、委託を引き受けるかどうかということもグループで議論したくらいです。効果の検証というのがこういう形でできるのかというのはかなり難しい問題で、その上に、実際上の問題点として出ております所得の把握が一番難しいということと、サンプリングにバイアスがかかるということも承知しておりますので、そういった点を全部考慮しながらやっていくということになりますので、かなりそういう意味ではこの調査に限界があるということは御承知いただければと思います。その上でできるだけ補正していくというようなことで考えたいと思います。
 
【小川座長】  よろしくお願いいたします。
 小河委員、ありますか。

【小河委員】  短期間であの調査を、あの少ない予算でしなければならないということをお伺いして、本当にいろいろ、ここに至るまで大変御苦労を皆さんされたのではないかということを思います。
 その中で、今、濱中委員はじめ皆さんから御指摘あったように、私自身も実は昨日まで大阪の西成で終日、本当に大変な子供たちと接している方の話を聞いていると、やはり、さっき言ったようになかなか、あそこにいる保護者の人たちがここにつながるのかというようなことを思ったりとかという部分ももちろん懸念があります。そういう意味で、今話がありましたけれども、是非やはりこの調査の中で、例えばこの事前の聞き取り調査もなかなか時間のない中でやられることだと思うのですが、これを見ると政令市が多くて、北海道の中でも例えば札幌の学校と、それと違う学校、地域の学校と、全然これまた違うということもあるかと思いますし、通信、定時制の高校だとか、いわゆる教育困難校と言われている学校だとか、これだけの中でいろいろなバラエティーを持つというのはすごく難しいと思いますが、そのあたりも是非御考慮いただいて、そういう現場からの声というのも大切にしていただけるとありがたいなということを思います。それから現場の先生方の声というのを、高校でもやはり、例えば校長先生が子供たちの現状を必ずしも把握していないという部分もあって、学校によってはスクールソーシャルワーカーの方だとか、あるいは養護教諭の方だとか事務職員の方だとか、いろいろなケースもあるかと思いますので、そのあたりも含めて、大変短い時間に御無理を申し上げますけれども、是非よろしくお願いしたいと思っております。

【岩田教授】  小河先生、是非ともここの地域は回った方がいいというところを御教示いただければ、助かります。今回のヒアリング候補地は確かに都市部中心です。これは旅費の積算をなるべく抑えなければいけないとか、いろいろな事情のもとに選定した仮のものでございまして、まだまだ変更の余地はあるかと思います。どこかここはというところはございますか。

【小河委員】  また、じゃあちょっと。

【小川座長】  今でなくても、後で。

【岩田教授】  失礼いたしました。それではメールか何かでも頂けましたら幸甚です。

【小川座長】  小河委員はいろいろな地域の事情をよく御存じの方なので、いろいろなアドバイス頂ければと思います。

【岩田教授】  何とぞよろしくお願いします。

【小川座長】  時間もないので、そろそろこの議題は終わりたいのですが、柴田委員、何かございますか。

【柴田委員】  ありがとうございます。1点だけ、マイクが聞こえなかった部分があったので、もし重複していたらおっしゃっていただければと思うのですが、ウェブ調査で地域の層別といいますか、例えば都道府県のバランス、あるいは都市部・地方のバランスというのをちゃんと考慮してサンプルをとるという設計になるかどうかという点をちょっと確認したくて。といいますのは、3,600件回収と書いてあるのですが、旧制度と今の制度とで比較されるということですので、それぞれの制度の回答者において地域のバランスが異なってしまうと、例えば旧制度の生徒は地方が多かったけれども、新制度の学生はたまたま都市部が多かったとなりますと、それは都市部による効果が入ってしまいますので、そこら辺、結構難しいかと思うのですが、バランスをどういうふうにとるかという、地域のバランスです。都道府県と都市部、都市度の違いというのをどのようにとるかというのは何か設計がありますでしょうか。

【岩田教授】  小林先生、これは、今までウェブ調査をなさってきた経験から考えていかがですか。可能でしょうか。

【小林委員】  それでは、私からお答えしますが、これは2つ考え方がありまして、余り時間もないということなので簡単にお答えしますと、サンプリングの段階で考慮することと、それから後でサンプリングをウエートバックしてというやり方で、考慮はいたしますということで、答えておきます。

【柴田委員】  考慮いただければと思います。

【小川座長】  考慮するということで対応可能だということでしたので。では、よろしくお願いします。

【濱中委員】  あと1点だけ。やはりウェブ調査のことが気になっていまして。本当に大事なところの層の回答がとれるのかどうなのかということと同時に、現時点で予定している1,200というサンプルだと、単純に47都道府県で割ると、1県当たり25人ですよね。今日も私学に関しては文科省の方から、それぞれどのような支援制度を試みているのかという一覧表が出てきましたけれども、やはり自治体によって全然状況が違います。こうした多様性を考慮した分析が、各県25人というサンプル規模の調査でできるかということを考えると、かなり心もとないのではないでしょうか。そういったことを考えても、やはりもうちょっと規模を拡大した方がいいのではないかということと同時に、本当に必要な部分のデータを集めるという点で、学校側に保護者を紹介していただいて、保護者への聞き取りを本調査に含めてもいいのではないかと思いました。

【岩田教授】  分かりました。検討委員会で、考慮させてください。ただ、予算と時間が許せばということだけ、御容赦ください。よろしくお願いします。

【小川座長】  すみません、よろしくお願いいたします。とにかくこの調査はデッドラインが明確に定まっているものですので、かなりハードで、いろいろ御苦労をおかけするかと思いますけれども、どうかよろしくお願いいたします。

【岩田教授】  こちらこそ何卒よろしくお願いいたします。

【小川座長】  それでは、議題3の方に入っていきたいと思います。議題3については、内閣府の子供の貧困対策に関する有識者会議の委員もされている末冨委員の方から、子供の貧困対策の観点から、この修学支援の在り方について御報告いただけるということになっていますので、よろしくお願いいたします。

【末冨委員】  それでは、早速始めさせていただきます。子供の貧困対策の視点からの高校生支援策の拡充ということです。
 メインコンテンツは、自治体の子供の貧困実態調査からある程度当事者ニーズが分かることと、それから都道府県のグッドプラクティスも昨年私たち調査しておりますので、それと突き合わせると国が埋めるべきところが明らかになるという話です。
 1枚めくっていただきまして、ポイントとしましては、都道府県のグッドプラクティスは首都大と、それから小河さんがいらっしゃるあすのばと、また日大が共同調査していますが、ごらんのようなグッドプラクティスを取り上げておりまして、特に私立高校の授業料の無償化だとか、塾・大学受験料のバウチャーなどが経済的支援策としては注目されます。それから当事者ニーズの方は、先に言っておきますと、圧倒的なニーズは大学や専修学校に進学するための資金が足りないということですが、残念ながら割愛します。ただ在学中の経費についてはやはり不足感が多い。プラス居場所や勉強できる場所、そして高校の指導体制を問題だと認識する生徒たちもいるということです。なお、最後の方で申し上げますけれども、実は高校就学支援金制度や奨学給付金、それから支援制度自体の認知が低いという課題も明らかになっております。
 本題に移る前に、もう2点申し上げておかなければいけないのですけれども、まず高校現場のニーズなのですが、私がつながっている限りの現場や教職員の方からの話を聞いたところ、やはり中学の進路指導で支援制度が周知されていない、それから制服、ジャージや、あと英検や模試などの進路指導経費が非常にかかっている。高大接続改革を踏まえますと、例えば英検受験料みたいなものというのがかかってくる時代がもうすぐ来ますけれども、現行制度で大丈夫ですかという懸念があります。なお、多忙化問題につきましては、4月から慢性的に多忙化、これは支援制度が増えたことによる高校の負担というのがかなりあるということで、今年度、ついに大学等給付型奨学金の手続が高校におりてきて、今年初めて私のところにも高校の現場からの悲鳴が直接寄せられて、ついにコップから水がこぼれたかという状態になっております。それから支援金や給付金については支給時期を改善してほしいと、特に私立高校は一旦納めてもらって後で還付するというルールをとるけれども、その一旦納めるということができないがゆえに退学する高校生がいると。そして、高校生の場合には食の支援ということでした。
 細かい話になりますが、やはり高校の負担は手続サポート。国、県、市町村それぞれに独自書式があり、それから保護者の手続き支援に要する教員だとか事務職員、スクールソーシャルワーカーなんかの配置拡充要望もあると。マイナンバー認定ができればということと同時に、すぐにでもしてほしいのは、やはり支払い期限や支給時期のギャップがあることはどうにかならないでしょうかという声が聞かれました。1枚めくっていただいて、図式化しておりますが、中、高、大学、専修学校、それぞれの間での接続が問題であると同時に、市町村、県、国、それから熱心な市は独自の補助制度がたくさんあるのですが、自治体ごとに異なっていて、高校で、特に困難な子が集中する高校ほど一生懸命、この子が住んでいる市ではこれが使えるのではないかというリサーチをして、さらに高校生や保護者に手続のサポートをするという状況があります。ちなみに高校の就学支援制度を利用しない一番の理由は、恐らく手続ができない状態の保護者が多い。心身の状態が悪いだとか、手続そのものが、例えば外国籍であったりして、手続きし切れないということがございます。このようなことが現場ニーズとして1点あります。
 それから(4)ですけれども、誰かが言っておかなければいけないと思ったので私が申し上げますが、高校就学支援金問題を考えるときには普遍主義的制度で、ということを、もう1回申し上げておく必要がございます。基本的には、やはり公立学校無償化というのは先進国では所得制限はございません。なぜかというと、子供本人が権利主体であると考え、学習権保障を重視するがゆえに、これが国際的な子供の権利の保障の流れですけれども、保護者属性は勘案されません。それからもう一つですけれども、高卒学歴保障も実は先進国では貴重な、大事な大事な教育投資です。高卒学歴が保障されないと、日本でも継続的な雇用の確率は低くなっていくわけですので、こうした観点からももう一度お考えいただければと思います。衆議院の附帯決議でも出ておりますし、それから、所得制限は女性の労働に対しては中立的ではないので、いろいろな根拠を挙げて改めて、申し上げておくということです。
 それから、もう1枚めくっていただいて、所得制限を維持する場合には、先ほど岩田先生のお話にもありましたけれども、まずは奨学給付金の所得制限を広くしていただけないか、所得制限緩和していただけないかと。これはなぜかというと、中学校まで就学援助を受給できていても、高校で奨学給付金が受け取れない高校生がいます。これが子供の貧困対策大綱に示す切れ目のない支援と矛盾しておりまして、支援が切れてしまうのです。ということで、せめて就学援助受給世帯の支援は続けられるようにですとか、あるいは金額そのものを拡充していくとか、いろいろなオプションを書いております。なお、子育て世帯への再分配という点でいうと、柴田先生にもお教えいただきたいのですが、恐らく特定扶養控除が縮小されて以降、910万円以上の層について所得制限が入ることで再分配制度が悪化したままになっているのではないでしょうか。より広い所得ゾーンの捕捉ですとか、あるいは所得に応じた段階的補助、あるいは先進国と比較すると日本は若者手当がございませんので、こうした再分配政策についても併せて考慮する必要があると同時に、私も気になっているのが都道府県による制度利用率格差です。これはそのまま都道府県の所得分布の格差を反映しておりますが、所得制限を維持するならば都道府県の物価調整等必要ないでしょうか。なお、国連の社会権規約委員会からは教科書費も無償化の対象が望ましいという見解があるようですので、この教科書費の普遍的な無償化だけでも子供の学習する権利の保障についても大きな意義があるのではないかと思われます。
 ということで、ここから本題に入りますが、まず都道府県のグッドプラクティスでどういうものがあるかということですけれども、昨年の8月に記者発表いたしまして、大体右側のような、特に経済的支援策で申し上げますと、低所得、ひとり親世帯の高校、大学の授業料だとか入学金の補助が当時19県、特に東京都の受験生チャレンジ支援貸付事業が最も充実した制度であるという話です。それから私立学校の無償化の考え方については、前回の議題にもなりましたので、次のスライドで詳しく申し上げます。あとは、通学費補助や学用品・制服費補助などの補助をしている自治体もございます。特に、岩手の学び希望基金というのは部活費なんかも利用可能で、使途をかなり広げ、かなりゾーンを広くとって高校生の活動を保障するというような仕組みもございます。
 それから、1枚めくっていただきまして、私立学校の無償化スキームについてですけれども、これは記事が多分この資料の最後にとじられているので、興味があればごらんください。ダイヤモンド社さんの御許可を頂いて転載しておりますが、私立高校の授業料の支援については都道府県ごとにかなり大きな違いがございます。それは先ほど、今回文科省としてもお調べになられた結果を出されていましたけれども、まず所得基準が都道府県によって様々。やはり京都が一番ゾーンが広いのと同時に、助成の上限額も、金額だけ見るとやはり京都のカバーは広いです。入学一時金制度もあります。また大阪のみ世帯の事情を斟酌(しんしゃく)しております。世帯の事情というのは、高校、大学生とか一浪生がいたら所得基準を緩和していくということですが、世帯の事情の斟酌(しんしゃく)の仕方が、例えば国立大の授業料免除の仕組みと比べると結構粗いと思われます。所得だけで切っていいのかどうか、先ほどの給付奨学金の積み増しの考え方にもありましたが、どういう家庭が支援を要するのかというのを所得だけで切っていいですかといったときに、こういった考え方があります。なお、個人的には大阪府の無償化制度が一番完成度が高いかなと思っておりまして、これは制度加盟校の授業料58万円を上限に設定して、ある程度安定的な運用が可能になっています。と同時に制度への非加盟もできるということで、低い所得ゾーンの子が集中する私立高校なんかで、大阪府の私立高校無償化のようなことができれば、より多くの子供たちが、公立を落ちても安心して私立に行けるということになります。
 話を続けます。当事者ニーズにつきましては、東京都、沖縄県、横浜市、長野県で子供の貧困実態調査で高校生をカバーしているのが見付かりましたので、それをメインに申し上げます。
 1枚めくっていただきまして、当事者ニーズでやはり多いのが、在学中の経費がとにかく賄えないという話です。沖縄県の調査の円グラフを見ていただくと、奨学給付金でカバーできていると回答した世帯が52%だけです。これ、何で足りないかというと、恐らく通学費や部活費が、遠かったり熱心だったりして足りない可能性と、実は家計管理能力の低さや金銭的虐待の可能性も隠れてはいるのだろうと考えておりますが、ともあれ現行の給付額では足りない世帯があると。その足りなさ感というのが次のページの自由記述欄に出ておりまして、保護者はやはり在学経費全般、特に修学旅行費が高校は負担が重いので、そういったものへの厳しさだとか、生徒の方はやはり通学費がかかるということ。1枚めくっていただいて、長野県の当事者調査からも、交通費は、長野は援助が出ているけど千曲は出ていない、困っている。それから、部活が大変であるなどがあります。
 次のページは通学費の話なので、飛ばします。
 1枚めくっていただいて、東京都調査の帯グラフの方に進みます。16ページからになりますが、東京都調査からは困窮層の方が公立高校の進学率が高く、かつ低所得層の全日制以外の進学率が高いということが明らかになっております。1枚めくっていただきまして、スライド番号の18になりますが、なぜ公立に行きましたかと聞いたところ、やはり私立の授業料が高いという理由です。下の19枚目は、何で私立に行ったのですか、公立の高校に合格しなかったからだということで、やはり私立の授業料負担がかなり厳しいという認識が一般的であると。さらに1枚めくっていただくと、低所得層の在学中経費の悩みを保護者の方に聞いているわけですが、授業料や教材費、それから通学費、修学旅行費や部活費、教材費の中には恐らく、先ほど申し上げたような模試だとか進路指導のいろいろな経費も入っていると思われます。ひとり親も同様の認識があります。
 1枚めくっていただきまして、横浜市調査でも、対象者アンケートというのは困窮世帯のことですけれども、困窮世帯の子供たちの30%は文具や教材も買えない経験があるということで、在学中経費はやはり保障していく必要があるのではなかろうかと思われます。
 それから、当事者ニーズの2番目としまして、給食、居場所・学習支援、アルバイト(学校の指導体制)とありますが、1枚めくっていただいて東京都調査では、どんなサービスを利用したいですかというときに、給食や勉強ができる場所、家以外の居場所、無料の学習支援などといったものの利用意向が高いのと、それから、スライド番号25は長野県調査ですが、長野県ではアルバイトに学校の厳しい目があると、バイトがしたいのにできない。あるいは勉強場所だとか居場所が欲しいということがあります。
 スライド番号の26ページですけれども、グッドプラクティスと照らし合わせていったときに、やはり当事者ニーズをカバーし切れていないなという部分が幾つもあると思います。基本的には、公立学校を志望しながらも私立高校に進学せざるを得ない高校進学市場を前提としたときに、これは就学前教育の市場と同じ構造をしていると考えられます。公立部門、国公立で全部受け切れないので私立の公共性が高いときには、私立高校の授業料支援制度いうのは拡充が必要です。ただし、現行制度は都道府県格差が余りにも大きく、このあたり国としてどこまで普遍的な教育機会を高校進学に保障していくのかという課題があると思われます。それから、給付型奨学金で不十分層の問題というのをどう解釈するか。これは先ほどの調査とも関わるのですが、何が足りていないのだろうということは解明が必要ですけれども、特に通学費の補助は地方の高校生の悩みの種であることは確かですし、それから部活費ですけれども、現行、大学等給付型奨学金の場合には、成績がちょっと足りなくても部活などで活躍していれば受けることができます。本当の困窮層は部活ができないから排除されてしまいます。というふう状況があるのならば部活費も何とかしてあげてほしい。それから、やはり現場の教員も生徒も食事の支援が高校ではなくなるだとか、修学旅行費は生活保護の支給対象外となる自治体もあるというようなことがございます。
 最後ですが、当事者ニーズの3番目として、制度を知らない、利用していても認識されていない問題というのがございます。スライドの28ページ、これは沖縄県の高校生と保護者調査ですけれども、保護者に聞きますと、高校就学金制度を利用していても利用していないと回答している、あるいは分からないというふうに、制度の認知率が低いです。奨学給付金制度についても同じ傾向が見られます。なお、多分本当の困窮層は分からないと回答しているはずだと思います、制度自体を知らない。1枚めくっていただいて東京都調査のグラフですけれども、やはり同じような回答です。例えばですが、高校の就学支援金、知らない、あるいは先ほど申し上げた塾・受験料バウチャー、受験生チャレンジ支援貸付も知らないというのは、ひとり親世帯の方が高く、困っている人ほど支援を知らないということになります。
 これらについては、例えばですけれども、切れ目のない支援をするためには、やはり中学校進路指導からの接続が大事で、(仮)と書いてありますが、高校生対象支援制度リストみたいなものがあればいいかなと考えます。それとともに、やはり支援体制の拡充を国公私立かかわらず充実させていくことプラス、高校生の修学支援制度について、やはり長く安定的に続いてほしいので、この支援制度リストと併せて、こういう制度であなたたちの76%がカバーされていますよという制度の意義を高校生や保護者周知した方が、より息の長い仕組みになるのではないでしょうかということで、終わらせていただきます。

【小川座長】  ありがとうございました。今の報告についての質問を受けたいと思います。議論については、先ほど言ったように最後の方、少し時間を一括してとって意見交換したいと思いますけれども、質問について何かあれば。
 私の方から一つ質問というか確認をさせてください。26ページの「給付型奨学金では不十分層の存在」のすぐ下の矢印のところの「学校委任の一般化」、これはどういう意味でしょうか。

【末冨委員】  これは、給付型奨学金というのは、今もそうなのですが、学校に委任状を出せば、学校で子供たちのための経費を引いて、残額が発生した後に家計に戻してくれる仕組みがあります。就学援助も同じですが、ただ、これが保護者任せになっていて、要するに給付型奨学金が目的外に使われる可能性を高める仕組みとなっています。若しくは保護者の家計の金銭管理支援ということも、現行の生活困窮者自立支援事業でやっておりますので、そうしたものがないと恐らく目的外使用になっているかなということです。

【小川座長】  分かりました。ありがとうございます。
 ほかに何か、説明をさらにお願いするようなことはございますか。
 柴田委員、よろしいですか。

【柴田委員】  大丈夫です。ありがとうございます。

【小川座長】  確認すべきこと、質問等々、よろしいですか。
 では、これに基づいた議論はまた後で、一括して議論していきたいと思います。末冨委員、ありがとうございました。
 それでは、今日最後の報告、議題4ですけれども、国による高校生等への修学支援に関するアンケートの集計結果の説明です。よろしくお願いします。

【塩田室長】  それでは、資料4-1です。実際の回答は4-2の別添、この実際の回答をまとめたものが資料4-1でございます。1ページに書いてある20団体から回答を得ましたので、それの概略を2ページ以降まとめております。2ページをごらんいただければと思います。
 まず1点目です。ここに書いてありますように、現行制度は所得制限を導入しまして、それにより捻出した財源で加算拡充ですとか奨学給付金の創設を行ったと。こうした一連の制度改正による効果、影響についてどう評価されますかというのが1点目の問いです。
 肯定的評価のみを記載した団体が7つありました。肯定的評価の理由といたしましては、経済的負担の軽減ですとか、低所得世帯の生徒の進路選択の幅の拡大、経済的理由による中退者の減少等が挙げられています。具体的には、それ以降いくつか書いてございます。下線部分を見ますと、保護者負担ですとか、私立高校が対象となって選択の幅が拡大ですとか、私学も選択の一つ。また金銭面に関係なく、教育方針、カリキュラム等を精査して学校を選択する状況が見られるようになったとか、あとは公立、私立に通う家庭間の教育費の負担格差や低所得世帯の負担が解消、生徒の進路の可能性が広がると。公立高校受験の中で上位校にチャレンジする生徒が増える傾向、経済的理由により高校を中退する生徒が減ったというようなことですとか、3か月以上の学費滞納者が減っている、こういったような御指摘がありました。
 続きまして3ページですが、肯定的な評価と否定的な評価を併せて記載されている団体が7つでございます。否定的評価の理由としては、主に所得制限導入による保護者や学校負担の増ということでありまして、具体的には、ここに書いておりますように就学機会の確保に一定の効果があると考えられるものの、業務の煩雑化を招いているとか、経済的負担の軽減につながったと言いつつも、所得制限により教育委員会の業務に支障が出ているとの声がある。また、母子家庭や低所得世帯でも私立高専へ入学することが可能になったけれども、これは4・5年からは対象外ですので、4・5年になってからは学費が急激に増えるということで、奨学金の利用が増えているのではないか。また、ここに書いてありますように、進学を希望する生徒の選択肢を広げているということでありますが、私立学校への手当てを公立よりも厚くすることに違和感があるというような御指摘とか、学校の事務負担が増えている。さらに、これは前回のヒアリングでもおっしゃっていましたけれども、進学を希望するが経済的支援を受けたいという家庭には有効ですけれども、消極的な御家庭ですと退学につながる傾向があるのではないかというような御指摘であります。さらに、次ですけれども、全ての生徒に豊かな学びを保障する制度になっていない。むしろ所得制限があるので全ての生徒が対象になっていないということと、保護者等の作業量の増大ということ。一方で、奨学給付金はいい制度ではないかということですが、書類不備等で必要な生徒が実際に活用できていない実態がありますというような御指摘。また事務職の業務量が増大しているが、給付金は一定の効果があるのではないかと、このような御指摘がありました。
 最後が否定的な評価ということでありますが、1団体ございまして、ここに書いてありますように、やはり所得制限導入によります不公平感、また事務手続の増大ということで、導入以前にはなかった不満、負担が生じておるというような御指摘がございました。全体的な評価のものが問い1です。
 次が2番で、4ページの2ポツ、今後の方向性ということで、就学支援金の充実の方向性として次のいずれの優先度が高いですかということで、1が250万未満世帯の充実、2以降、どんどんその層、目安が上がっていきまして、どれが高いでしょうかと聞いて、それを集計したのがこちらであります。
 上位3つを優先順位を付けて選んでいただきましたが、ここにありますように、やはり低所得、非課税世帯、一番低いところの充実というのが一番多くて、次に2ということでありますけれども、5の所得制限の緩和又は撤廃ということを選ばれている団体も一定数あると、こういったような状況でございます。
 続きまして、次のページ(2)の奨学給付金の充実の方向性ということで、1が第1子の支給額の引き上げ、2が第2子以降の支給額の引き上げ、3が第2子以降の定義見直しによる該当範囲の拡大。4が、非課税世帯だけが今は対象でありますけれども、もっと対象層を広げると。このような選択肢の中で、4の非課税世帯以上層への支給対象の拡大、これを1位として選んだのが多かったということでございますが、全体的に一番多かったのは2ということで、第2子以降の支給額の引き上げと、このようなのを選ばれたところが多いということであります。
 続きまして、(3)です。支援金や給付金について見直すべきと考える課題、要望等がありますかということですが、かいつまんでいいますと、これはよく出ますが、年限等の上限見直しの撤廃。支給基準でありますが、わずかに所得基準を超える家庭の負担が大きいと、特に当該家庭が多子の場合はさらに負担が大きくて、見直しが必要になるのではないかということと、多子世帯には収入基準だけではなくて、各家庭の事情に寄り添った基準も必要ではないか、また地方の収入格差も勘案すべきではないかと、このような御指摘であります。
 ページをめくっていただきまして6ページですけれども、これも今までにも御指摘がありますけれども、都道府県格差の是正が必要ではないか、そのために国の支援を充実させるべきではないか。また、都道府県の独自事業への財政支援もすべきではないかというような御指摘があります。公私間格差ということでは、私立については授業料プラス施設整備費、こういったところまで国が支援すべきではないかというような御指摘。続きまして手続関係ですけれども、提出書類について様式の統一等、効率化、簡素化が必要ではないか。また、新入生は4月と6月に求められますけれども、それが合理化できないかといったような御指摘があります。
 続きまして、奨学給付金関係です。支給単価につきましては、1子、2子の差を解消すべき、また課外活動等にかかる経費も多いので、支給額を引き上げてほしいと。支給対象としては、現行の非課税世帯以外でも貧困にあえぐ子供は多いので対象を拡大すべきというような御指摘。また現在、在校地主義で支給していますけれども、在住地主義、いわゆる生徒が在学している学校のある都道府県が支給する制度にすべきではないかというような御指摘。また、入学金を補助対象とすべきではないかというような御指摘があります。
 7ページに移っていただきまして、手続関係では、奨学給付金の方は事務費を交付しておりませんので、事務費を交付すべきですとか、全国的に手続を統一、各都道府県ばらばらなところがございますので、そういったものを統一すべきではないかというような御指摘があります。
 また、両制度共通の課題といたしましては、類似の制度で保護者が混乱して不備が発生しているということや、年度内に合計3回の処理が必要になるのですが、もう少し合理化できないのかというような御指摘があります。また周知のところでは、進学前にきちんと周知すべきではないかということ、その他のところでは、アルバイトをして学費を払うという状況をなくすことに重点を置くべきと、このような御指摘がございました。
 (4)は、所得基準の在り方であります。ここに書いてありますように、現在では市町村民税所得割額を設けておりますけれども、海外保護者の所得を考慮していないですとか、年少扶養控除が廃止されているために家族構成を見る機能が低下していると、このような課題があるので、どう思いますかということであります。
 見直しの在り方といたしましては、結構な数の方が、やはり事務負担の観点から現行を基本としていいのではないかというような御指摘もありました。一方で、住宅ローン、ふるさと納税など税額控除によって不公平が出ているので、課税所得を基準に直すべきではないかというような御指摘もあります。また、多子世帯支援のところでございますけれども、先ほど来出ていますけれども、16歳未満の子供のいる世帯の負担が考慮できる基準に直すべきではないかというような御指摘があります。ページをめくっていただきまして、これは海外在住保護者の実態とのずれということで、海外が高額な給与をもらっている保護者がいたり、事実婚があったり、例えば別居で事実上はひとり親家庭になっているような状況とか、このようないろいろな現実の収入状況と一致しない世帯があるために、そういったことが考慮できないかとか、あと、これも同じくですけれども、父母だけでなくて世帯収入の総額を見てもいいのではないかと、このような御指摘もありました。
 時間の関係上、説明は以上にさせていただきます。

【小川座長】  ありがとうございます。それでは、今までのものを踏まえて少し、一括して意見交換をしていきたいと思います。当然、質問もございましたら、質問含めて御意見を頂ければと思います。
 最初は、幾つかの柱、論点を設定して議論しようかなと思いましたけれども、時間が30分程度しかありませんので、資料1-1に今まで議論されてきた論点を整理していますので、そうした資料1-1の論点の整理を少し踏まえながら、これまで議論がまだ不十分であった点、また新たに論点として付け加えるようなこともありましたら、自由に委員の方から御意見頂ければと思います。どなたからでも構いません。いかがでしょうか。
 無ければ、私から一つお聞きしたいのですが、所得制限無しと現在の所得制限の導入によって生じる財源は、900億円程度とお伺いしていますが、所得制限に伴う行政、学校、保護者の事務量の増加などの社会的コストとの兼ね合いをどう考えて行けば宜しいとお考えでしょうか。

【末冨委員】  所得制限を入れる入れないは、やはり理念問題であると同時に、現場の事務負担問題でもあります。所得制限を入れることによって、特に4月から6月の高校の多忙化で、確かに派遣職員さんが来ておられる公立学校は多いですが、私立の支援体制はやはり手厚くはないですね。今いる教職員で何とかするというのが原則になりますので、それを考えると現場負担と、それからその900億ですか、とのバランスをどう考えるかという問題はあります。しかし、やはり普遍主義であることについての考え方の整理というのをしていかないといけないし、今の所得制限を入れたときの考え方の整理というのは、上位層の所得を切って、下の方を2.5倍加算にするというような世代内の所得の再分配でしかなく、高校生のいる世帯の間で調整してどうするのですかということは、たしか私も当時、文科省の中で会議があったときに申し上げた気がするのですが。基本的なアイデアとして世代内で所得の再分配をしてしまっているというのが非常に違和感があることと、どの子にも高卒学歴を保障していくというのが人的投資なり、あるいは子供の貧困対策でも高卒学歴の保障はベースラインなのです。なので、そのことについてどういう考え方の整理をされるおつもりなのかなというのは、いずれ確認させていただきたいなと思います。

【小川座長】  ありがとうございました。ほかに。

【末冨委員】  1点だけ、どうしても現場から言ってくれと言われて、削除し切れなかったものについてちょっと申し上げるのですが、私のスライドの4枚目を見ていただきたいのですけれども、左側に吹き出しで書いてあるのですが、高校授業料の支援金の見直しだからといって、最初は削除していたのですが、複数の方がこれを言ってほしいと言われていたのが、高校の進路指導で、大学や専修学校進学のために、民間の奨学金だったり、あるいは進学資金を何とかアルバイトなんかで貯めましょうといったことをするのですが、生活保護世帯が収入認定されてしまって、保護費が減額される。高校が頑張った分だけ生活保護費が減額されて自立できないということで、だから高校の進路指導とか生徒指導の先生たちはすごく頑張っておられるのだけれども、高校生も保護者も頑張ってそういう奨学金にアプライして合格するのに、それでも効果が出ないというのは、生活保護制度がよくないので、どうか文科省からも厚労省に改善をお願いしていただけませんかと言われたので、言い忘れましたので、付け加えておきます。

【小川座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 では、小河委員、どうぞ。

【小河委員】  末冨先生、ありがとうございます。今の所得制限のこともありましたけれども、この次の6ページで、もし所得制限を維持する場合ということでいろいろ書かれているところもあるかなと思うのですが、まさに私もずっと、前にも申し上げているように、高校生のアルバイトとか、あと保護者の方もやはりダブルワーク、トリプルワークを、要するにお金が足りないからそういうふうにしているというようなことも、特にひとり親のお母さんなどでは多いという話も聞いていますので、このあたりも調査等でもちろん明らかにしていただきたいのですが、そういう意味で、ここの赤字で書かれている、特に高校版就学援助制度への改編というふうに書いていただいていますし、そもそもこの奨学給付金というのは、ある程度そういうものを目指して創設された部分もあるのかなというふうに思いますが、このあたり、もう少し具体的にいうと、どのあたりまで制度を充実させたらいいかというようなお考えはありますか。

【末冨委員】  基本的には義務教育段階の就学援助と同様の基準を作って、別に修学旅行費も全額はカバーされる必要ないと思いますけれども、例えばですが中学校と同じ水準ぐらいは出る、援助受給できるというような、見通しが立つことが極めて大事かなと思われます。特に高校生家計の厳しさというのは、中学までの支援が全部切られていきます。その中でまた新しい支援制度につながれた場合はいいけれども、何につながられるのか見通しが利かない。つながれなかった場合には高校生として非常に苦しい家計になるので、進学を断念せざるを得ないという問題が起きてくるということで、見通しを立てて、高校生や高校生の保護者たちが3年間、若しくは定時だと4年かかる場合もありますが、高卒学歴を得るまで乗り切れて、将来へのビジョンが立てられるという意味で、就学援助制度のように、こうしたものについてはこの金額までカバーできますよといったように、ある程度シュアな金額を保障していく仕組みもあっていいと思われます。
 特に生活保護世帯の修学旅行費をあえて取り出しているのですが、生活保護世帯の修学旅行費は扶助の対象外になっておりますので、アルバイトしなければいけないけれども、アルバイト禁止校則で修学旅行に行けない子というのは今の高校生でも結構いますので、そうした実態を捉えたときに何がしか、やはり在学中の経費を見通しを持って賄える仕組みとして奨学給付金の運用なりを少しグレードアップしていけないかなというのは、個人的な思いとしてはございます。

【小川座長】  小河委員、よろしいですか。

【小河委員】  はい。ありがとうございます。

【小川座長】  ほかにはいかがでしょうか。
 先ほど末冨委員から言われた4のところの収入認定に関わることですけれども、大学レベルでは生活保護世帯の子供については世帯分離というような形でやって、その世帯分離によって生ずる住宅扶助とか生活扶助の削減についてはやはり問題とされてきて、これについては厚生労働省の方も見直すというような形で、対応するというようなことを伺っています。大学レベルについてはそういうふうな改善の方向での検討が進んでいるようです。高校レベルでは同じような状況がまだ続いているのでしょうか。事務局の方でもしもその辺の実情を御存じであれば、御説明いただきたいのですけれども。

【塩田室長】  生活保護。

【小川座長】  先ほど4ページに、末冨委員がお話しされていた高校生等民間奨学金や進学資金貯蓄の収入認定によって、これは生活保護のいろいろな扶助の金額が減額されるという趣旨ですよね。

【末冨委員】  はい。

【塩田室長】  ちょっとすぐには。申し訳ございません。

【小川座長】  そうですか。

【末冨委員】  このあたりは多分、教職員の方に聞けば分かる問題ですが、厚労省指針としては自立に役立てられるものは収入認定しないという話になっているのですけれども、実は市町村の現場の運用が改まっておりませず、例えば民間の奨学金を使ってオープンキャンパスに行くと、それは全額ぜいたくで、収入認定するねという運用がされる場合もあります。ちなみにオープンキャンパスは今、高校生の夏の宿題としてマストとなっておりますが、それでもですか、というケースが後を絶ちません。さらに言うと進学資金です。受験料をためるということも収入認定するケースが多いので、だから夢を諦めるという現状があると。それをどうにかしてくださいというのをどうしても言ってくれという高校の教職員要望が多いと、現場的には生徒や学校が頑張っていてもだめな例はありますということに、非常に悔しい思いをしておられるということです。

【小川座長】  これは事務局の方で事実を、ちょっと確認していただけますか。

【塩田室長】  はい。

【小川座長】  よろしくお願いします。
 ほかにはいかがでしょうか。何か御意見ございますか。柴田委員の方、何か御意見ありますか。

【柴田委員】  大丈夫です。ありがとうございます。

【小川座長】  はい。では小林委員、どうぞ。

【小林委員】  幾つかあるのですが、1つは大学等の給付型のときの議論で、やはり厚労省との連携というのが非常に重要だという話がありまして、ここで問題になっているような方、世帯、かなり経済的に厳しい世帯の場合には、給付型奨学金だけではとても進学できないというのが当然議論になりましたので、厚労省の支援と併せて行うということが当然検討されるということで、厚労省の方も何か調査をやるということが報道でこの前出ていたのですけれど、そのあたり、もし何か事務局でお分かりになれば、少しお伺いしたい。厚労省が就学支援というか進学支援に乗り出すというような報道があったりましたが、それが1点です。
 それから2点目は、これは非常に原理的な問題になるのですが、私立と公立の問題ですが、本来私立というのは、やはり授業料を払っても特別な教育を受けたいという方が行くというのが大体の考え方だと思うのですが、日本の場合はそういうふうにできていないということで、この末冨さんの資料でも19ページのところにはっきりそれが東京都調査で出ているのですが、公立高校の入試に合格しなかった人がやはり行っているということです。ですから、これは選択して行っているのではなくて、行かされているということになるわけで、そのあたりを日本の場合、公立と私立の問題を考えるときに特別な要素があるということで、この就学支援金の問題を考えるときもそれを考えなければいけないという、これは原理的な問題です。
 それに関連してですけれど、これは質問ですが、我々、効果のところでも学力の向上というのが就学支援金によって図れたらいいなと思うのですけれど、これが非常に難しくて、就学支援金の効果として学力向上ということがあるかどうかということで、もし末冨さんの方で何かそういうようなエビデンスがあれば伺いたいという、そういう質問です。
 それから4点目ですけれど、この資料の8ページですが、国立大学の授業料減免について細かな控除がありますということですが、これはこのとおりですが、こういった控除があるということは非常に重要なことなのですが、控除があればあるほど仕組みとしては難しくなるし、分かりにくくなるという問題があります。こういった点をどう考えるかということですけれど、1つの参考ですが、東京大学の授業料減免というのは、この方式以外に年収400万円以下という非常に明確な基準を持っています。これはよく誤解されるのですが、どちらかというわけではなくて、400万円以下だったら無条件にもう授業料減免を受けられるというやり方で、分かりやすさを狙っています。ですから、そういったことを考慮するというのも1つかなと思います。これは、私も所得制限をなくすことの方が問題だと思っているのですが、もしその所得制限ということを給付型奨学金等で付けるとしたらこの問題が起きますので、そういった点で分かりやすさということも考慮する必要があるかなと思います。
 以上です。

【小川座長】  最初の質問ですけれども、厚労省の方のそういう調査等について、もしも事務局で把握しているならば少し教えていただきたいというのと、あと就学支援金が学力の向上にどれだけ効果云々という話は末冨さんの方に、そういうデータがあるのかということの確認だと思いますので。
 最初の方、どうでしょうか。

【塩田室長】  すみません、厚労省の方が今、生活保護基準の見直しをされているというか、もしかしたらその中の過程で何かそのような調査をするという話が出ているかもしれないので、尋ねてみます。

【小川座長】  では、よろしくお願いします。
 末冨委員、何かございますか。

【末冨委員】  多分テストスコアに簡単には効かないと思います。恐らく、これまでの子供の貧困研究でいうと、まず所得保障なり奨学金が入ると家族ストレスが緩和されるので、それがある程度高校生の、例えば自尊感情スコアですとか、そういうメンタル面にまず響いて、その後に落ち着いた状況が続いて初めてテストスコアになるので、家族ストレスモデルには多分当てはまるかなとは思います。ただ、即テストスコアの向上のようにはいかないはずです。高校生までに既に学びにつまずきを抱えている子が困窮世帯に集中しますので、そういったことというのは多分これからの課題です。私自身も幾つか子供の貧困調査に関わっていますので、そういった効果について何か結果が出れば、実施自治体の御許可を頂いて報告できればと思います。
 あと世帯の事情斟酌ですけれども、恐らく家計急変世帯への補助を手厚くというのは現場の声、アンケートとも重なるのですが、確かにシンプルに所得基準だけが一番分かりやすいのですが、同じ所得でも急に、例えばですが専業主婦のお母さんが病気になるだけで簡単に世帯は困窮していきますので、そういった急な事情だとか特別な事情、例えば身内に障害者がいて本当に負担も重いのに、なぜ400万で切られるのかみたいなところへの不公平感を緩和するためには、所得で切りながらも、こういった事情がある場合には制限緩和していきますというようなきめ細かい世帯の事情の斟酌がないと、その収入の前後にいる方たちの不公平感というのは多分あるかと考えます。

【小川座長】  何かありますか。

【小林委員】  もう一度繰り返しになりますけれど、その授業料減免に2つの方式を持って、どちらも選べるということが重要だということを申し上げているので、ですから分かりやすさということと両立するためには両方の基準が必要だということを申し上げたかったです。

【末冨委員】  はい、ありがとうございます。そのとおりだと思います。2つある方がいいです。

【小川座長】  ほかにいかが。

【大橋委員】  これまでの質疑を敷衍してしまうことになるのかもしれませんけど、末冨先生の資料は大変勉強になって、ちょっと私自身内容を咀嚼しないといけない部分が幾つかあるんですけど、先ほどの質疑とも関わるんですが、高校の無償化というよりも支援をするという話ですけれど、多分政策の建付けとしては世代間の移転というよりも、国民で支えているのだと思います、税ですから。ちょっと私も財政の専門家ではないですが、そのうち、要するに高校に経済的理由で行けない人に関しては国民で支えようということが多分、明示的に言われていないかもしれませんけれども、背景としての哲学としてあるのかなというふうに思います。それをさらに所得制限なく広げるかどうかというのは、高校教育というこのサービス、現物サービスをどう考えるのかということに依存している話なのかなと。
 当然、国民の了解が得られれば、その普遍主義みたいなものも入っていいのだと思うのですけれど、まだそこまで、確かにおっしゃるように熟していなくて、どっちかというと経済的理由というところが入ってしまっているところが多分現状なのかなと思います。高校の関係者の方のアンケートも、どっちかというと今の制度の枠を持ったまま支給額を厚くしてくれというふうな感じの御回答が実はメインだったなと、ここのあたりの御回答も、その高校サービスの捉え方によっては本来変わっていかなければいけない部分なのですが、まだちょっとそこまで、アンケート調査を見ると変わり切れていないのかなという感じをちょっと持ったというのが1点です。
 2点目は、この私立高校の進学の理由というのもすごく参考になったのですが、これははっきりゼロイチで切れてしまう話なのかなというのを若干疑問に思いました。僕も専門家でないのですけど、自分の、もう何十年も前の幼い頃を思い浮かべて、だけど私立高校はレベルの高い私立高校もあるなという気もしていて、そうすると多分、二極化しているのか、あるいは私立高校自体も多極化してしまっているのだろうなと。そのうちの一局面としては、もう先生おっしゃるようなことなのだと思いますけれど、これで100%全部漏れなく捉えられているかどうかというのは、何かもし教えていただけたらいいなというところであります。
 最後、ちょっと戻ってしまった恐縮ですが、OECDのうち34か国中31か国というのがありましたが、これは日本がそのうちの1か国であるというのは分かりますが、ほかはどの国なのか、もし分かっていたら教えてください。

【末冨委員】  先に31か国の話になりますけれども、たしかこれは調査を見ると韓国が入っていたのですが、でも韓国は無償化になるからというようなことが書いてあり、日本はそうすると、さらに残り少ない公立学校が普遍的に無償ではない国になるなというふうに思いました。
 あと学校選択のメカニズムですが、都道府県によって全然違いまして、東京の過半数が私立高校生で、私立高校自体のレベル差だとか特色差が物すごいことになっています。例えば19ページの資料を見ていただきたいのですが、一般層と困窮層を見比べると学校選択の理由が全然違います。私立を選んでいる一般層の43.6%が私立の方が教育の質が高いと言っているのに対して、困窮層だけが過半数、公立に落ちて仕方がなくということで、高校の幅の広さと同時に、やはりどうしても東京の場合には公立に行くことの方が実は難しいのですね。やむを得ない場合には公立の定時だとかチャレンジスクールなどを選んで行きますけれども、ある程度のレベルの学校に行きたくても公立に受からず、私立に行かざるを得ないという意味からいえば、多分東京の私立高校選択が一番不本意というか、公立に落ちて私立に行くという構図になっています。やはり高校に行くこと自体が、もう今の日本ではシチズンシップの基礎的な条件なので、やはり併願しますよねと。併願したときに、受からないから私立に行って、いろいろ高い経費を払っているのだという認識は困窮層の方が強いと判断して差し支えはないかなというふうに、このデータを私は受け止めています。

【小川座長】  大橋委員、よろしいですか。

【大橋委員】  はい。

【小川座長】  では、濱中委員、どうぞ。

【濱中委員】  末冨先生の資料はすごく勉強になったのですが、個人的にとくに衝撃的だったのは、「制度を利用していても認識されていない」という点でした。というのは、支援制度を認識しているということはかなり大事なことだと考えるからです。例えば高校で学習するに当たって、どれぐらい経済的に困っている人たちに援助できるか、それがどれだけまだ足りていないのか、どこを改善すべきなのかということを議論する。こうしたことも、今回のこの会議の重要な役目だと思うのですけれど、一方で、この政策が国民の意識にどのような影響を与えるのか、税金の使い方や支え合いに関しての意識であったり、そういうところに対してどのような影響を与えるのか、こうしたこともかなり重要な論点になるはずです。
 具体的に言えば、自分たちは税金に支えてもらいながら学習していると認識しているかどうか、子供たちが税金に支えられて高校で学んでいることを分かっているかどうかということは、これから先、税金に対してどういうような姿勢で臨むかということに関わってくるのではないでしょうか。自分たちが助けられたから、後々の世代の人たちにも使っていいのではないかというような意識が芽生える可能性もあるような気がします。
 これから政権で人材育成のこと、どのように人生100年を構想していくのか、どこに税金を割り振っていくのかということを問い直すという話も出ているようですし、そういったところに関してもちょっと踏み込んで、この政策の意味を問うていく必要があるような気がします。
 そういうことを考えると、やはり岩田先生の委託事業の話につながっていくのですが、この会議は4回目で、いろいろ資料も出てきて、いろいろな団体さんの意見を聞いて、今回末冨先生の意見、あと関係団体のアンケート結果も出てきますと、問題点というのは大分出てきているような気がしております。今、岩田先生が構想されている、ウェブ調査のことばかり言って申し訳なのですが、そこで設けられている項目を見ると、「まだ困っている層がいる」「通学費という問題がある」「部活動にも費用がかかる」という点はクリアに出てくると予想されますが、ただ換言しますと、既に意見として収集されているものの裏付け資料、しかも一部の情報の裏付け資料といった位置付けにしかならない可能性があるように思います。
 そういうことを考えると、もう一歩先に視点を伸ばした調査というものができないでしょうか。この政策が一体どういう意味を、保護者たちの意識をどういうふうに変えて――変えていないのかもしれないのですけれども、例えばそういうような意識の変化の芽生えみたいな、そういうものが何か抽出されたとしたら、この政策の必要性を訴えるエビデンスになるようにも思います。「まだ足りていない層がいる」ということを超えた、多面的な、社会的な効果というのが一体どこにあるのかという点を考察することができる調査を設計する必要があるのかなと。ちょっと感想ですけれども。

【小川座長】  ありがとうございます。時間もないので、最後に柴田委員、感想も含めて何かございましたら、一言お願いします。

【柴田委員】  末冨委員からの指摘は、本当に私も非常に同感するところが多くて、そのように思いました。
 最後の濱中委員からの、やはり拡充していくためには財務省を説得する必要があって、それはこの制度がどういう社会的な効果があるかという、より広い視野での効果の話というのは恐らく今後もっと必要になるかとは思うのですが、なかなか今回のウェブ調査等では、例えばその子供たちが大人になってどういった仕事に就いて、どのぐらい収入が上がっているのかとか、そういうのがいずれ分かったらいいのですが、今回はなかなかそこまでは難しいのかなと思うのですが、いずれはそういう制度設計といいますか、調査の設計ということはやっていく必要があるのかなとは思います。
 今、厚労省のミレニアム調査を文科省が引き継いでやっているかと思います。2001年に生まれた子供たちが今16歳になっていると、中学から高校に入って、彼らは現制度しか享受していないですけれども、何かしらそういう政府の行っている、文科省がもうそのデータをとっていると思いますので、そういうデータも活用して、例えば今回も1割ぐらいの保護者は制度を知らないということですから、そういう支援を受けている生徒と同じ困難状況にありつつも制度を知らずに利用していなかった子供たちと、制度を知って利用した子供たちを比較することができると思います。ミレニアム調査で今文科省がとっていますので。それを数十年とっていけば、数十年かかってしまいますけれども、例えば10年後であれば、ちゃんと就職したのかとか、大学に行ったのかとか、そういうのも数年間で分かってくると思いますので、そういった今とっているきちんとしたパネルデータを2次分析するというのも今後は必要かなと思っております。
 ちょっと感想になりますけれども、ありがとうございます。以上です。

【小川座長】  ありがとうございました。ほかに何かございますか、よろしいですか。
 それでは、今日の論議はこの辺で終わらせていただきたいと思いますが、これは事務局とも今後、第5回以降どのような形でこの会議の議論を深めていくかというのは御相談したいと思います。先ほど濱中委員からもお話あったように、基本的に、もうこれまでの議論の中で、設定された論点に即してどういうふうな検討すべき課題があるかということについてはかなり整理されてきているかと思いますので、できれば次回以降、より具体的に深めた議論を進めていきたいと思っています。
 岩田調査の結果は、大体、この会議の検討に付せるようなデータが出てくるのは、早くていつ頃ぐらいになりますか。

【岩田教授】  先ほど申し上げましたように中間報告のときに1回目のまとめを行う予定です。そこでどこまで提言できる話になるか分かりませんけれども、その場で報告できるような形で、それでもきちきちですけれども、逆算したのが今のスケジュールでございます。ですから、各調査に関する単純集計だとか、やや粗い集計くらいであれば中間報告のときにはできるかと思います。その後にメンバーの各先生方に詳しい分析をやっていただきまして、それは多分報告書の形になるのではないかと想像しております。

【小川座長】  中間報告は、大体11月。

【岩田教授】  文科省との打ち合わせでは12月中旬くらいを想定しているとのことでした。時間的余裕が余りにもありませんので、研究を行う側といたしましてはなるべく末までまっていただけると本当は助かるのですが。

【小川座長】  分かりました。データが出てくる時期にも合わせながら、次回以降どういうふうな進め方で、どういうふうな論点、柱の詰めをやっていくかというのは、事務局とまた相談させていただければと思います。ありがとうございました。
 なければ、今日準備していた審議は全て終了しましたので、この辺で終わらせていただきたいと思いますけれども、事務局の方から次回の連絡をお願いします。

【塩田室長】  次回でございますけれども、9月25日月曜日の13時から、文部科学省の5F5会議室を予定してございますので、お時間の確保をよろしくお願いいたします。

【小川座長】  ありがとうございます。これで閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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