資料2 「高校生等への修学支援に関する調査研究事業」について

「高校生等への修学支援に関する調査研究」
<テーマ1> 高校生等への修学支援の効果及び影響等に関する調査研究概要

1.調査研究の趣旨
平成25年以前の「公立高等学校等の授業料不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」のもとで実施されていた、高校生等への修学支援制度では、公立高校と私立高校に通う生徒の間では教育費負担に大きな格差があることや、低所得者世帯では教育費負担が依然として大きいことなどの課題のあることが指摘されてきた。そこで、平成26年度からの高校等学校入学者を対象として、その問題の解消を目指したものが、平成25年の法改正であった。この修学支援制度は、さらに、同じ年度からの高校等学校入学者を対象として、高校生等奨学給付金も創設されるなど、高校生等への修学支援制度は、大きく改善された。
それでは、この制度改正が実際に、とくにどの層の高校生に、どのような形で、どの程度の改善をもたらしたのか。あるいは、そこには何か問題はないのか。以上を、定性的・定量的に分析・把握することが、本調査研究の目的である。

2.調査研究の内容
(1)アンケート調査に向けての事前聞き取り調査
以下の(3)のアンケート調査票の作成の事前調査を兼ねて、地域間のバランス等を考慮して、全国都道府県のうち5都道府県(東京都、北海道札幌市、宮城県仙台市、大阪府大阪市、沖縄県那覇市)の2高等学校の協力をえて、そこの担当教員・保護者に対する対面による聞き取り調査を実施し、現状を把握し、その成果にもとづき、(3)のアンケート調査を実施する。

(2)全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査
全国の高等学校を対象に、平成25年度から28年度における生活保護世帯及び準保護世帯数の状況ならびに卒業後の状況調査と就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況(平成26年度以降)、現行の高等学校等就学支援金・高校生等奨学給付金制度の周知方法、などを調査し、就学支援金と高校生奨学給付金の効果を検証する。とりわけ、所得制限の有無による効果の差異を検証する。

(3)現行の高等学校等就学支援金、高校生等奨学給付金の効果及び影響に関する調査
(1)の(a)の聞き取り調査の成果を踏まえ、現行制度の課題等を検証するため、以下の複数の時点における高校生等(高等専門学校・高等専修学校を含む)に相当する年齢の者の保護者等に対する調査を実施する。
<1>平成7年4月2日以降平成8年4月1日までに生まれた者 (=旧制度の施行下の平成25年度に高校3年生であった層)
<2>平成10年4月2日以降平成11年4月1日までに生まれた者 (=現行制度の施行下である平成28年度に高校3年生であった層) 等
<3>平成11年4月2日以降平成12年4月1日までに生まれた者 (=現行制度の施行下である平成29年度に高校3年生である層) 等

<1>~<3>のアンケート調査については、ウェブモニター調査により実施し、全国で各層1,200名を対象とする。なお、この調査については、所得階層別の分析が必要になってくるため、そのサンプルとしては、現行の高等学校等就学支援金、高校生等奨学給付金の受給対象所得層に重点をおきながらも、それ以外の所得層も比較対象として、加えることにする。

 調査内容は、卒業後の進路や高校在学時および進学時の教育費の捻出方法、高校在学時および進学後の教育費の負担(奨学金やアルバイトなど)、現行の高等学校等就学支援金、高校生等奨学給付金制度の認知度などである。これらの3つの層を比較することにより、旧制度と現行制度の比較をする。ただし、<3>については、現在高校年生であり、卒業後の進路は調査できないが、教育費の調達方法、将来の進学後の教育費のための預貯金や学資保険などを最も的確に把握できる。 特に子どもの数とりわけ就学中の兄弟姉妹の数による教育費の負担感の差異などを詳細に分析する。

(4)現行の高等学校等就学支援金、高校生等奨学給付金、学び直しへの支援及び家計急変世帯への支援による効果及び影響、制度的課題等についての聞き取り調査
高等学校の修学支援の実態・課題については、全国都道府県および、全国高等専修学校協会、日本私立中学高等学校連合会、一般社団法人全国高等専門学校連合会、独立行政法人 国立高等専門学校機構、全国公立高等専門学校協会、日本私立高等専門学校協会などの団体に対して、すでに文部科学省による調査が今年度になされている。そこで、とくに追加調査が必要な事項が出てきた場合には、ターゲットを絞り込んで、特定の都道府県・団体に聞き取り調査を行うことにする。

3.調査研究計画
平成29年9月:第1回調査検討委員会(全体の計画、聞き取り調査の実施体制、委員の役割分担など)
平成29年9月:高等学校、保護者、都道府県の、教育委員会ならびに私立高校に対する就学支援金や奨学給付金を扱う部局、全国高等専修学校協会、日本私立中学高等学校連合会、一般社団法人全国高等専門学校連合会、独立行政法人 国立高等専門学校機構、全国公立高等専門学校協会、日本私立高等専門学校協会に対する聞き取り調査の実施
平成29年10月:第2回調査検討委員会(聞き取り調査の結果のまとめ、都道府県の教育委員会ならびに私立高校に対する就学支援金や奨学給付金を扱う部局、高校へのアンケート調査、保護者へのアンケート調査の設計)
平成29年10月:都道府県の、教育委員会ならびに私立高校に対する就学支援金や奨学給付金を扱う部局への調査実施
高校調査の実施
保護者調査の実施
平成29年12月:第3回調査検討委員会(中間報告会での報告についての検討)
平成29年12月:中間報告会
平成30年1月:第4回調査検討委員会(都道府県の教育委員会ならびに私立高校に対する就学支援金や奨学給付金を扱う部局、高校、保護者へのアンケート調査の分析、報告書の執筆分担等)
平成30年2月:第5回調査検討委員会(調査報告書案の検討)
平成30年3月:報告書の提出

4.事業の実施体制図
本事業を実施するための調査検討委員会を以下の委員および研究協力者によって組織する。

委員
岩田 弘三 武蔵野大学・人間科学部・教授
 (総括)
江原 昭博 関西学院大学・教育学部・准教授
(教育委員会・高校生インタビュー調査担当)
王 傑 東京大学・大学総合教育研究センター・特任研究員
(保護者WEB調査担当)
王 帥 東京大学・社会科学研究所・特任研究員
(保護者WEB調査担当)
大島 真夫 東京理科大学・教育支援機構 教職教育センター・講師
(教育委員会インタビュー調査統括)
黄 文哲 兵庫大学・高等教育研究センター・特別研究員
(教育委員会・高校生インタビュー調査担当)
古賀 正義 中央大学・文学部・教授
(全調査の企画への助言担当)
小入羽 秀敬 帝京大学・教育学部・講師
(教育委員会インタビュー調査担当)
小林 雅之 東京大学・大学総合教育研究センター・教授
(全調査の企画への助言担当)
島 一則 東北大学大学院・教育学研究科・准教授
(全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査担当)
白川 優治 千葉大学・国際教養学部・准教授
(全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査統括)
末冨 芳 日本大学・文理学部・准教授
(全調査の企画への助言担当)
妹尾 渉 国立教育政策研究所・教育政策・評価研究部・総括研究官
(教育委員会インタビュー調査担当)
濱中 淳子 東京大学・高大接続センター・教授
(全調査の企画への助言担当)
濱中 義隆 国立教育政策研究所・高等教育研究部・総括研究官
(保護者WEB調査統括)
日下田 岳史 大正大学・質保証推進室IR・EMセンター・助教
(保護者WEB調査担当)
藤森 宏明 北海道教育大学・教育学研究科・准教授
(保護者WEB調査担当)
谷田川 ルミ 芝浦工業大学・工学部・准教授
(高校生インタビュー調査統括)
吉田 香奈 広島大学教育本部・准教授
(全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査担当)
米澤 彰純 東北大学・インスティチューショナル・リサーチ室・室長、教授
(全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査担当)

研究協力者
呉 書雅 弘前大学・非常勤講師
(全国高等学校における就学支援金と高校生奨学給付金の受給状況調査担当)

会計担当
 馬場 清一 武蔵野大学・武蔵野学部事務室・係長

再委託先
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社

■高校生等への修学支援に関する調査研究事業に関する指摘事項
(1)制度対象を所得で比較する必要があるように思う。その点についてはっきり記されていた方が良い。
(2)研究分担者が多いが、責任体制がやや不明確。
(3)再委託金額の根拠が不明。
(4)ウェブ調査での低所得世帯の捕捉率が確保できるのがやや疑問。
(5)制度の周知や捕捉状況についても明らかにすべき。
(6)高校卒業後の進学費用などだけではなく、高校生活そのものにおいてどのように費用をまかなっているのか、不足しているのか、高校生のアルバイトなどの実態や保護者の負担などについても明らかにすべき。
(7)企画提案書に記載されている分析視点に、更に、保護者=家庭の所得階層別に就学支援金・奨学給付金の影響がどう違っているか等の分析視点も加えるべき。
(8)受給有無で分析する必要があるのかどうか、その要否について検討されているのか気になった。
(9)教育委員会調査では、私立高等学校の状況が把握できない。各都道府県の私学担当課、私立高等学校団体や専修学校、高等専門学校への調査も重要。
(10)都道府県の教育委員会だけではなく、現場の教職員の方々も実態を把握していると思われるので、考慮すべき。
(11)厳しい状況にある高校生や家庭への視点を充実させるために、実績の豊かな古賀正義氏もしくは酒井朗氏の協力を得ることが重要。

■指摘事項への対応
(1)・(7)、(6)→企画提案書段階ですでに考慮されていたが、明記。
(5)→全国高校では、この点の質問を挿入。
(10)→インタビュー調査対象に追加。
(4)→アンケート調査では、プライバシー保護の観点から、家計所得を調査するのは困難。
低所得世帯に比重をおいたサンプルの確保が容易な点こそ、ウェブ調査の利点。
(8)→これは、受給資格があるにもかかわらず、受給していない理由を明かにするためにも必要と考える。
(9)これについては、すでに今年度、文部科学省による調査がなされているので、それらの結果をもとに、必要に応じて、ターゲットを絞り込む形で、特定の都道府県・団体に聞き取り調査を行うことにする。
(3)→ウェブ調査の性格上、このような形になることを、ご容赦いただければ幸甚です。
(11)→古賀正義先生に加えて、小入羽秀敬先生(帝京大学・教育学部・講師)、妹尾渉 先生(国立教育政策研究所・教育政策・評価研究部・総括研究官)に委員に加わっていただいた。酒井朗先生は固持。
(2)→第1回目の全体会議で決定。

お問合せ先

初等中等教育局財務課高校修学支援室企画係

(初等中等教育局財務課高校修学支援室企画係)