全国的な学力調査に関する専門家会議(平成29年6月12日~)(第8回) 議事要旨

1.日時

平成30年11月29日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 東館16階 16F大会議室

3.議題

  1. 平成31年度全国学力・学習状況調査における質問紙調査について【非公開】
  2. 平成31年度全国学力・学習状況調査の実施について
  3. 平成31年度全国学力・学習状況調査の中学校英語「話すこと」調査に向けて
  4. 全国学力・学習状況調査の効果的な活用事例集 事例発表
  5. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、斎藤委員、清水(静)委員、鈴木委員、髙木委員、戸ヶ﨑委員、長塚委員、針谷委員、吉村委員、渡部委員

5.議事要旨

議事2:平成31年度全国学力・学習状況調査の実施について

・資料2に基づき、事務局より説明の後、各委員より意見を伺った。主な意見は以下の通り。

【座長代理】
 英語の導入によって、「聞くこと」「話すこと」の調査が始まるため、聴覚障害の生徒や発話が困難な生徒への対応が必要だが、どれくらいの規模で具体的にどういう対応を想定しているのか。

【事務局】
 今回「聞くこと」「話すこと」について、聴覚に障害がある生徒への対応は、まず調査の対象としない児童生徒の範囲としては、右耳、左耳それぞれの平均聴力レベルが60デシベル以上の生徒は、「聞くこと」「話すこと」調査の対象としないこととはすることができると設定させていただく予定である。「することができる」ということで、必ずしも調査対象外にしてはいけないということではなく、各学校で個々の生徒の障害の状況に応じて御判断をいただくという整理をしている。
 それから、発話が困難である生徒における「話すこと」調査は、生徒の発話を録音した解答をもとに、学校の方で代筆した解答をもって解答に代えるということが可能という整理にさせていただいている。その他、解答時間が通常より長い、実質的に1.3倍程度の補助資材をこちらの方で作成している。これは聴覚の障害に関わらず他の障害の方にも使っていただけ、また、そういった資料も使っていただけるように考えている。その他、通常の学校の教育活動において例えば中間、期末考査等で対応されているいろいろな支援や補助があると思う。そういった範囲であれば各学校の判断で対応していただいて差し支えない。これは他の障害の場合にもそういう取扱とさせていただいている。

【座長】
 今、御説明いただいたことは、この後事務的な文書の形で周知はされると考えてよろしいか。

【事務局】
 実施要領やマニュアルに記載する予定。

議事3:平成31年度全国学力・学習状況調査の中学校英語「話すこと」調査の実施について

・事務局より、資料3に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】
 現場に近い立場から大きく5点程ある。一つ目は、資料3を全国の自治体にお知らせいただいたということについて、迅速で的確な対応にまずは敬意を表したい。
 二つ目は、英語4技能の育成の充実に向けて大変重要な一歩。まずはこの一歩を踏み出すということが何より大切なことだろうと考えている。
 一方で、三つ目として、コンピュータを利用するという新しい取組。教育委員会や学校には多様な負担、本番での想定外の混乱などもあるかもしれない。しかし、今回文科省が特例的な措置を設定されたのも、ある意味現場への後押しであると理解することもできるのではないか。負担や混乱を事前回避するよう努めることは、全国的なICT環境の整備の加速化の絶好のチャンスであると前向きに捉えたい。これを逃したらもう次のチャンスは来ないのではないかぐらいの緊張感や危機意識を持って、それぞれの自治体が対応すべきと考えている。
 4点目は、今回の調査実施の準備において、国の第3期の教育振興基本計画の中で目標とされているICTの基盤整備水準、それに対して自治体また学校が、課題が何かということがその基準に対して可視化されたのではないか。今後混乱や負担ということが予想されると思うが、それを英語教育の推進とセットにして、首長も巻き込んで自治体が首長等の協力を得て危機回避などに努めていくチャンスとすべきと思っている。そういう意味でまさにそれぞれの自治体、教育委員会の正念場なのではないかと思っている。
 最後5点目は、市内中学校や近隣の教育委員会と情報交換などをする中で課題が見えてきている。具体的な課題として、まずOSが限定されていること。今回はWindowsに限定されているので、Chrome OS、iOS、Android OSなどを使用している自治体や学校は困ってしまうであろう。それから環境復元ソフト(再起動させるとそれ以前にインストールされたものがなくなるという設定にするソフト)や、フィルタリング、セキュリティソフトなどの設定のし直しということ。更には台数不足のため市内小学校などからコンピュータを借用するとなると、ネットワーク環境に係るSSIDとかIPアドレスなどの設定も改めてやり直さなくてはならない。台数が多いので大変設定に手間取るようなことも報告されている。
 また、人数の多い学校はどこでも起きるのだろうと思うが、15分ごとの生徒の入れ替えの問題である。一人一台環境になっていれば問題ないが、台数が制限されていると15分ごとに入れ替えがうまくいくのかどうかという課題が挙げられる。クラウド上のCBTになれば解決することがあるので、一刻も早く実施できるような環境を自治体も努力しなくてはいけない。また国も整備に向けた支援も進めていっていただけるとありがたいと思う。以上である。
 なお、来年1月に配付される事前検証ツールを用いた検証作業については、ある意味、本当に課題意識を持って、確実に実施されるということが何よりも大事と思っている。ここを逃すとまた新たな問題が発生することがあるので、是非説明会の折などで必ず確実に実施するように強く働きかけていただけるとありがたい。

【委員】
 今回の「話すこと」調査の対応というのは非常に迅速で、しかもいろいろなところに本当に細かに目配りをした対応だと思っている。実際、実施に向けて様々な問題が出て、それらが次の回には改善されるということになると思う。ただ、次回の「話すこと」調査はどうするのかということが、今後の全国の動きを左右する非常に大事なメッセージになると思う。それは今回と同じもので、次回は今回実施できなかったところも含めて100%を目指すのか、あるいは3年ということを考えてまた違う実施の仕方になるのか、それは重要なメッセージになる。おそらく「話すこと」調査をめぐってはワーキングでいろいろ議論された時に選択肢が出ていたと思う。ICT環境の前進に貢献できる「話すこと」調査ということもあれば、この「話すこと」調査を日本の英語教育、「話すこと」における現場の先生方の指導の質を高める絶好の機会として捉える捉え方もある。最終的にどういう調査をしていくことが日本の子供達のためになる確かな間違いのない英語教育を作っていくことになるのか、その展望との兼ね合いでもあると思う。

【座長】
 座長として3点、特に要望を申し上げておきたい。
 第1点は周到な準備をお願いしたいということ。今回はあくまでも特例措置を取り得るということで基本的な方針、今後の進め方には変更はないということだが、来年の4月の調査はもちろんだがもっと先に向けて将来のテスト環境というのがどうなるのか、どうあるべきかということを視野に入れた上で準備を進めていっていただければと思う。
 2点目は丁寧な現場への支援をお願いしたいということ。学校現場や教育委員会への丁寧な情報提供はもちろんだが、おそらく相談をしたいことも多々ある思う。それに対応することはコストがかかると思うが、是非現場に混乱が生じないように丁寧な支援をお願いする。
 それから3点は事前のトラブル防止対応や事後の対応が重要だということ。幾ら準備をして備えて実施をしたとしても、機械のことなので事故というのは、あるいは人による事故もあると思うが、事故は防ぐことはできないと思う。そういう事故があった時にどうしたらいいかということも含めて、何でそういうことが起こったのか、あるいはそれを防ぐためにどんなことで努力する余地があるのかといったことについて、丹念に調査をしていただいて次に生かしていただくようにお願いをしたいと思う。

【委員】
 今回は特にテストを実施してからのことがとても大切になると思う。御承知のとおり最初はいろいろ試みて、対面型などということをやった。それが余りにもぶれが大きいという問題点を指摘されて今の結果になった。機械を使うということにはそれなりのメリットがあることは確かである。その一つは、終わった後も生徒は受けるチャンスがあり得るということだ。中には学校としては実施しないことになったが、生徒としては受けてみたいと、これは将来を懸けたテストではないので、生徒自身はこういうテストだと受けてみたいということもあるかと思う。機会均等ということを考慮すれば、生徒にとって義務というよりも権利でもあるという考え方もできるのではないか。実施後にも、また受けることができるということを将来の配慮として考えてもいいと思う。そのためにはネット上でということが一つの解決策としてあり得るということを申し上げたいと思う。

議事4:全国学力・学習状況調査の効果的な活用事例集 事例発表

・長野県教育委員会(本田指導主事)、浜松市教育委員会(村田指導主事、今田指導主事)、松江市教育委員会(濱岡指導主事)より全国学力・学習状況調査の効果的な活用事例について発表が行われ、その後、これらに関する質疑応答が行われた。質疑の方法は、自由質疑とした。主な質疑応答は以下の通り。

【座長代理】
 松江市の教育委員会にお尋ねしたい。確かに解答類型や誤答の分析が授業改善につながる一つの手立てになるが、実際に現場ではその細かいデータを先生方が見る機会がないと思う。学校にはデータが渡っているが、目にする機会がないことからなかなか活用につながらないというのが実態ではないかと思う。これは教育委員会がデータを可視化したのか。

【松江市教育委員会】
 解答類型については各校に配布されており、配付は調査結果CDの中にあるという話をした。教育委員会が作成した発表データを用いて学力育成担当者が解答類型の有効性を説明した。解答類型が添付されている意義を説明すると先生方は自分の学校の解答類型を興味深く注目するようになった。比較的余裕がある夏休み前半に研修を行ったことで、校内で時間をかけて分析することができた。

【座長代理】
 その見せるところがポイントで、見てもらわないと先に進めない。なかなか見る機会がないというのと、もう1点は先ほども出てきたが、要するに全ての先生方が参加できるような機会を設けないと、該当する学年の先生が中心になって自分の事ではないような感覚に陥る。全員が参加するという形でそういう演習や、研修は必要だと思う。

【松江市教育委員会】
 島根県教育センターが作成した分析補助シートを用いて設問ごとに正答率を出している。松江市教育委員会では加えて、例えば1番の1は何年生が学習する問題ということを付け加えて学力育成の担当の先生方に今回お渡しした。それを基に各学校の学力育成担当者が、これは何年生の問題ということを職員会や研修の場ではっきりと明示できたというのを聞いた。やはりそこが大切だと思う。

【委員】
 事前に配られていた活用事例を一通り眺めたが、実際に話を伺うと、改めて分かることがたくさんあった。ただ、単に紙ベースで配られるというのはどうなのかと思っている。これまでも分析をした後、冊子を作り、解説資料やアイデア集、報告書などのセットがあり、すばらしいものができて配られているにも関わらず、本当にそれが学校現場や教育委員会等で活用されているかということに疑問がある。もったいないと思う。
 具体的な話なのだが、今はひとつの自治体が報告を5分ずつされたが、活用事例は22自治体ぶんあるので110分である。そうすると一遍に110分を研修等で見聞きするのはかなり苦痛である。半分ぐらいに分けてシリーズもので、50分と60分というような形で研修をする。それぞれの自治体も5分でまとめるというのは時間が短いが、エッセンスをそこの中にいかにうまく伝えるかで、よりインパクトがあるのではないか。動画でまとめてYouTube等で発信してもらうと様々な利用価値があって、この場で聞けなかった方々も全国で聞くことができる。動画発信ということを前から私は言っているが、是非、こういうものを発信していただけるとありがたい。

【事務局】
 検討させていただく。

【座長代理】
 長野県のS-P表というのがある意味では今回の目玉というか、授業改善につながるための資料提供だった。長野では以前から活用されていたのか。今回新たに活用を目指して先生方が努力されたのかということと、実際の問題としてどの程度理解が図られているかというところはどうか。

【長野県教育委員会】
 S-P表の活用自体は今年度が初めてのこと。配付されたのは今年度が初めてだと思う。本当は全職員に広めたかったが、とりあえず対象の学年、教科のみとなった。実は県教委として全部の小中学校へ支援に入るのは初めてのことだった。これを機にできるだけ県教委としても各学校の授業改善に入りたい。
 それから現場の先生方の理解だが、指導主事が見て、分析して、見えてきたことをお伝えすると非常にうなずいてくださる先生方が多かった。その様子を学校長が見て、これは全職員でやった方がいいだろうということで、再度指導主事の派遣要請で指導主事が全職員を対象にS-P表の分析検証を行った学校もあるが、残念ながら少数派ではある。いかに広げていくかというのが課題と思っている。

【委員】
 浜松市の研修に行った経験もあるが、かなり大きな市である。少し関わっている神奈川県の小さな市でもなかなか先生方の意識を高めるのは難しいという現状がある。その中で研修会や指導主事の訪問もされているので、二つ質問がある。大学として具体的にどのような関わり方をしているのか。人数などは書かれているが、先生方がどの程度どの頻度でどんなことについて関わられているのかということ。あと、保護者への働き掛けというのは大事だと思うが、それについての具体的な反応など、どのようなものがあったかということを教えいただければと思う。

【浜松市教育委員会】
 浜松市では、大学の先生と連携しながら本調査の分析をし、速報として教育委員会や学校に対して浜松市の結果についての概要版を作成している。それぞれの教科の担当指導主事が原稿を作成し、国語は国語の担当、全体に関しては全体の担当の大学の先生を、それぞれ訪問して、自分の書いた原稿について御教授をいただいていている。
 それから今後の対策についての検討や保護者リーフレットを作成する際にも見ていただいている。静岡大学にお伺いして、実際に担当指導主事がお話しをさせてもらっている。
 さらに、浜松市では、指定校を指定して研究をしているが、そこに大学の先生方をお呼びし、指導主事と一緒に授業参観をしていただき、直接、感想を聞かせていただいたり、事後研修で御指導をしていただいたりしている。それぞれの先生方から、それぞれの教科の立場でお話しをしていただけることで、大変、有意義な機会となっている。
 また、長年、関わっていただいているので、これまでの経年変化をも見ていただいている。本調査を分析する際、どうしても、調査に答えた学年のみの傾向として捉えてしまうが、経年変化を見ていくと、その学年だけの問題ではなくて、その学校の問題という部分も明らかになる。そこから、どのような手を打ったらよいかというご示唆もいただいている。
 保護者の反応は、どうしても平均点が全国と比べてどうなのか、浜松市が何番目で、静岡県や静岡市に勝っているのか負けているのかという話になってしまいがちである。本市としては、きちんと分析をした上で、学習状況調査を前面に出しながら、本市が目指している子供の姿に近づいているか、また、学力が十分でない部分に関しては、どのような部分が苦手で、今後、学校としてどのような対策をしていくのかということを、問題も一緒に提示しながら保護者に説明していきたいと考えている。本年度については、まだ配付したばかりなので、この後どのような感想を保護者が持つのか、報告を待っているところである。

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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

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