いじめ防止対策協議会(平成28年度)(第2回) 議事録

1.日時

平成28年8月22日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省三階 3F1会議室

3.議題

  1. いじめに対する組織的対応について
  2. その他

4.出席者

委員

相上委員、愛沢委員、石鍋委員、實吉委員、水地委員、種村委員、田村委員、東川委員、道永委員、村田委員、森田委員、横山委員

文部科学省

小松文部科学審議官、藤原初等中等教育局長、瀧本大臣官房審議官、坪田児童生徒課長、松林生徒指導室長、丸山生徒指導調査官、山本専門官

5.議事録

※議事に先立ち、松林室長、山本専門官より挨拶があった。


《議題(一)学校によるいじめの防止等に係る対応を、確実に組織的な対応とするための方策について》
※事務局より資料一から資料三まで説明。
【委員】  担任と部活顧問の問題だが、やはり部活は子供たちが行っているのだから、日頃、部活の活動内容についても会話を当然しておくことが担任として大事だと考えている。そういうことによって、子供の視線に立って物事を担任が考えられると、こういうような認識を持てるのではないかと思う。そういう前提を引っくるめると、それをやらないと、やはり教師の力量不足というところにつながるおそれがあるので、十分そういう会話を大事にしながら子供を見ていくということになったらどうかと思う。
  そして、教職員との会話の中から教師が広い心を持っているな、相談できるな、というような信頼関係が出てくるので、教師の姿勢というのは非常に大事だと思う。
  また、日頃から校内の巡視をしながら、自分の担任だけではなく、ほかのクラスも学年も超えて見ていく、そういう目が必要ではないかと思う。
  あとは、なかなか時間がないと言われれば、やはり本人の持ち時間の工夫ということも学校側としていろいろ考えるか、あるいは、自治体としての、教育委員会としての人員の派遣というものも考えるか、それはまた予算がかかることなので別問題としても、いろいろな関わり合いでこれらをまとめていけるのではないかとも思う。
【委員】  担任の先生が報告しづらいという背景には、いじめは自分の指導力によるものではないかと考える傾向があり、いじめの芽を発見して、クラスの中にいじめがあったんだということを報告をしなければならないというような構造を少し変える必要があるのではないかと考えている。
  いじめの手前というか、もしかしたらいじめは起きているかもしれないが、先生はそれに気が付かない場合と、気が付いていても認知できない場合がどうしてもあると思う。その辺の差は個人に任せれば起こり得るということを前提にして、組織として判断をする、そういう仕組みが必要だろうと思う。
  学校以外の、例えば、福祉の施設とか病院等では、インシデントレポートというヒヤリハット報告というようなものがだんだん日常化してきている。子供同士のちょっとしたトラブルや、行き違いや、そういった芽になるようなものを気付いた段階で、それをちゃんと報告して共有するということを大前提にして、それについては誰が責任者だと責任を追及するのではなく、その情報を共有する中で対応をみんなで検討する。そういう仕組みを当たり前にすることで、責任がどこにあるのかという判断をする手前で共有する。そういうシステムにしなければいけないのではないか。そのための研修は、担任の先生個々の先生だけではなくて、管理者も徹底して最初に学んで共有することが必要ではないか。
  まず予防的な問題に学校の組織がちゃんと対応して、子供の日常生活を守るんだということを前提としたようなヒヤリハット報告と対応検討の方が、より前向きな検討がしやすいか。それがいじめの芽の発見につながると私は思っている。
  ただ、前提として、今回の法律自体がきちっとした対応ができなかったことが始まりにあるので、まず学校の組織として、学校個々で、誰がどういう担当で、いじめが実際に起きたときの対応をきちんと明文化して、それを共有した上で、そういう予防的な対応に重点を置いて進めていくべきではないか。
【座長】  学校の抱え込みといわゆる教育委員会への報告等についても意見を頂きたい。また、各学校の対策組織をどう実効性あるものにしていくか、このあたりも一緒にお願いしたい。
【委員】  学校の組織の中で、いじめ対策を担当する専任の教員を置くのは確かに難しいのかもしれないが、やはり責任者を明確にして、その責任者が、いじめ対策組織と学校の管理職との間の調整、日常的にいじめ対策の組織が機能していくように年間の計画を立てる、学校職員にいじめの基本方針の徹底をする、そういう中の職員向けと、例えば、PTAや保護者、地域の方にも学校の状況と課題に協力を求めるような、そんな中と外の日頃からの研修と、講演とかのPRと、そういったものを進めていくために、いじめ対応組織の責任者の方というのは、やはり顔が見える関係になれるような方をメーンに据えて、できれば専任になれた方がいいのかもしれないが、なかなか難しくても、その責任者の方を中心にまとまる組織づくりみたいなものが有効かと考えている。
【委員】  学校では一週間に一時間ぐらい、空き時間を設けて、担当の方、学年主任、あるいは、生徒指導主任が集まって、生徒指導委員会という名目で話合いをしている。それがいじめに関わる内容であれば、その中でしっかりと詰めていくが、もしいじめが出た場合には、共有していくことが大事である。十分、ほかの学年の方々、先生方に公表するなり話をするなりして、そして、かつ、今度は教育委員会との関連も出てくるので、それもちょっと打診をしてみると。しかし、教育委員会は、打診しただけでは困るから、率先して担当の指導主事、生徒指導主事がいる市町村もあるので、学校へ出ていって、それらについていろいろ話を聞く。こういう前向きな姿勢が行政として大事。その中で出てくるのは、やはり必要があれば、アドバイスをどこかの方に頼んでみたり、あるいは、支援する立場から方法を考えたり、学校教育を支えていこうと、こういう姿勢が行政側に出てこなければ駄目ではなかろうかと思う。だから、学校とすれば、「あ、報告してよかったんだ」、こういうほっとした気持ちを持たせるような流れ、そういうものを醸成していきたいなと思う。
【委員】  まず、教員の抱え込みに関して。中学校の場合には、学級担任というよりも教科担任なので、学級で起きているいじめについては、いろんな教員が授業で関わっているので、部活動に比べると見えやすいかもしれない。小学校に比べれば、それは間違いない事実かなと思っている。なので、学年会などで、「A君はB君にちょっといじられてるよ」とかという話は出やすいかと思う。ただ、部活動になると、どうしても顧問が一人
であったり二人であったりして、なかなかその情報を共有する場というのは、あるようでない。だから、部活の部分については、今後、どのように情報を共有していくかというのは、中学校としては考えなければならないなと、この資料を見て思う。
  指導力不足で発生するんだよという一般的な考えを払拭しなければならないというのは、全くそのとおり。では、それはどうするのかというと、私は非常に単純に考えていて、いじめが起きるのは指導力不足ではないよとそのまま言う。それを、例えば、校長として職員会議等で言い続ける。そして、実は、教育委員会への報告をしないというのも同じで、学校長の指導力不足がいじめを発生させているというのではないんだよと。早く報告することによって解決は早まるよという当たり前のことをどんどん文字化したり、言葉に出して言うことというのが一番大事。言うこと、言い続けること、それはすごく単純なようだが、効果があると思っている。
  そして、日常業務が多忙であるので抱え込みの背景になっているのではないかというところだが、実は、ここもリーダーとなる校長であったりミドルリーダーが若手に伝える一つのポイントだと思っている。実は、組織的な対応をすることは、最初は時間がかかるんだけれども、早期発見につながりやすい。早期発見するということは、結果として、負担は減るんだと。これは当たり前のことだが、なかなかそれが伝わらないことがある。なので、そのあたりをしっかりと伝えていくということが重要。
  あと、最後のところ、学校のいじめ対策組織をより実効的なものとするということは、生徒指導部会とか、生活指導部会とか、いろんな言い方があるが、その部会とか、ミドルリーダーが集まる企画調整委員会、企画会とかの会議に、このいじめ防止の対策組織の機能を併せ持たせるという方が、私は非常に効果は上がると思っている。なぜかと言うと、生活指導部会とか企画委員会というのは、割と定期的に開かれており、分掌のリーダーを取るような教員が集まっている。そこでの話題はすぐに各分掌や学年の中で広げやすいという、非常にやりやすい部分があると思っている。実際に私が今まで働いてきた学校、校長として働いた学校、全てそのようにやっており、その方が教員の方もやりやすいと、別個の組織よりも非常に動きやすいという声は出ている。
【委員】  ここに書かれていることは、公立学校のことが主体になっていると思うので、私立学校としてどうということはなかなか言いづらい部分はあるが、事例として、自校ではということでお話をさせていただく。
  一つは、共通のアンケートを全学年で実施するということが有効だろう。それによって、各教員が問題を同じように、これについてはこういうふうに判断するんだよねという情報を学年会の中で共有していくということが有効だろう。できれば二週間に一回、あるいは、三週間に一回ぐらいの頻度で、うちの学校ではやりたいなと思っている。質問事項は七項目ぐらい。必ず記名式で行っている。その中で自由記述はさせないようにしている。自由記述をさせると、アンケートの回答する時間が非常に長くなってしまうので、二~三分で実施するようにしたいと思っているので、そのような方法をとっている。
  それから、担任の抱え込み防止というのは、これは前回にも話したかもしれないが、私どもの学校では、時間割の中に学年主任会、あるいは、教科主任会という会議を週一回設けており、そこで必ず各学年の状況報告が出てくるので、それを教頭、あるいは、学校長が、その内容を見た上で、各学年に聴き取り調査をする、あるいは、担任に聴き取り調査するということを実施している。
  それから、日常業務が多忙であるということだが、ともすると先生方は、自分の仕事の重要度の順番付けが非常に苦手な先生が多いかと思う。だから、仕事の重要度の順番を指示してやることによって、この問題は第一の事項としてしばらくやってみるということが多分有効だろう。
  教育委員会のことについては、特に私立の場合はないので、あえて、東京都の場合には生活文化局の中に私学部というのがあるので、その私学部への報告を怠らないようにという発信はしている。今年も夏、湯河原で理事長・校長の研修会があったが、そこにも私学部の方が御出席いただいた。私学部と各私立学校との関係をどうするかということは、そこでも話題になり、学校として隠さないというか、私学部とよく連絡を取った上で、マスコミ対応も含めて、連絡していくことが必要だよねという話をした。
  それから、実効的なものにするというのは、各学校いろんな努力があるようだが、やはり全教員がこのことを共有していくということをどう徹底させるかということに尽きるのではないか。
【委員】  まず一つ目の複数制というところについては、複数だと、その人と誰かと相談をすると報告がしやすくなるというのは人間誰でもあると思うので、例えば、部活とかで複数が持てない、副部長さんとかがいたりするところもあるだろうが、そうではないとしたら、どこかを副で持つみたいなことをそれぞれが作る。それは自分が話しやすい人でも誰でもいいと思うが、それぞれが一人ではなくて、相談する相手みたいな、ペアを先生方も作っておくというようなことがあると、相談しやすいのかなと思う。
  それと、基本的にどうすれば報告ができるか。繰り返し言っている指導力不足ではないということを、どう、本当に上の人はそう思っているかということを伝えていくということだと思う。そういう報告をしたときの対応、「あ、そこで出ちゃったのね」みたいなことが出ないような、本当にそこで気付いてくれたから次の対応が取れるんだというところをどうお互いに表していくかというようなところだと思う。それはやはり頂点としては、教育委員会のところに、各学校が報告を上げたときに、それをどう対応するか。例えば、教育委員会が中心となった、そういった情報を出したりするような、どこの何件でしたみたいなことを報告する機会があるときにも、ここがこういう対応ができたという積極的な事例としてお伝えをするとか、そういう対応が徐々に見えていくということが、やはり皆さんが発言しやすくなるもとなのではないかと思う。
  実効性を持つということについては、いろんなアイデアを各校お持ちで、それはやはり学校の規模とか、いろいろなところで違うだろうが、具体的にどういうふうにうちは対応しているというような情報を共有し合うような場面というのをどれだけ持っていけるかが重要。
  そして、先生方のペーパーワークの多さ。学校評議委員で学校に伺ったりしたことがあるが、そういうのを持つのはいいが、そのときにまた先生たちが資料を作って報告をしてくれる。これも準備してくれるのも有り難いんだけれども、またこういったことが積み重なると大変だなと思うので、本当にさっきおっしゃった重要性の順番みたいなので、余り大変にならないように、今年はここはできないとかいうようなことも、勇気を持って上の方がこうして整理していくというのが大切かなと思っている。
【座長】  あえてもう一つお尋ねするが、対策組織、学校の組織と弁護士の方々とが連携していろいろと協力したり、一緒にやられたりする。その点で、何か今の組織的な対応についてお感じになっていることはあるか。
【委員】  今おっしゃったのは、問題が生じた後。
【座長】  後もあるが、先にも。
【委員】  本当は、先のところでもっとちゃんと関与していなければいけないと。今は、何となく問題が出てきたところ、後に加わるということが多い。そうではなく、その前の段階のところから、お考えになっているスクールロイヤー云々(うんぬん)というようなレベルの話ではなくても、学内の組織とかに一定程度、毎回は出られないとしても、病院とかの定期的なヒヤリハットでも弁護士が関わったりする場合があるので、そういう感じに入っていくみたいなことを、もう少し、あそこに持っていくと事が大きくなると思わないで、予防の段階のところからも各地でそういう組織に入れていただくということをお考えいただきたい。日頃、敷居が高いとか、持っていくと事を大事にされるみたいなところはあるかと思うが、大事にしないためのものだというところを、それを分かっていただくための発信は、もっと我々がしなければならないと思う。
【委員】  今までお話があったように、少しずついろんなことをやりながら一歩一歩進んでいるのかなという感じがするが、本当に実効性のあるものについては、なかなかこの対応では難しいと感じている。
  というのは教員の意識、校長も含めて、高めていかなければいけないが、その高めていくための時間がない。教員の勤務時間は七時間四五分なので、うちの学校で言えば、八時一五分から始まって、四時四五分。途中、一般の会社とか公務員みたいに昼の休憩時間はなく、最後の三時四五分から四時半までの四五分間を休憩時間にして、最後、一五分間勤務して終わりという状況。学校の子供たちの指導は、大体六時間授業の三時半までで、あと四時半から四時四五分の残り一五分。水曜日に、六時間授業ではなくて五時間授業にし時間を取っているが、この週一の水曜日を、例えば、それぞれ区市の研究会、学校で学校の研究会、特別支援に配慮する校内委員会、食物アレルギーの委員会等をやっている。
  勤務に位置付けられる会議というのは、勤務時間内でなければ位置付けられない。学年会をしっかりやってもらって、情報交換してもらって、それをまた生活指導部会に上げてもらって、これはどうなのというのを一つ一つ丁寧にやっていかなければ、実効性がない。幾ら周りがいろいろな対策を作っても、徹底するその時間がない。
  これからますます、小学校で外国語、英語が入ってきて、一時間プラスになる。時間が全くない中、では、どうするのかと。それ以外にも、今言ったように、いろいろな会があれば資料を整える。それはほとんど勤務時間外である。土日で出てきたりしてやっている。それはそれで、私も先生方はよく頑張っているなと。勤務時間外でも、土日とか、遅い時間まで使ってやっているが、校長としてやらなければいけないのは、勤務時間内で会をしっかり設置しなければいけない。自分たちはボランティアでやるのではなく、それはしっかりした時間を設定しないといけない。その時間が設定できない。これは、私は一番の大きな問題だと思う。
  それが全く分からずに、いろいろなところで何とか委員会、何とか教育とか、いろいろな教育が入ったり、いろいろな会議があったり、虐待防止とか、食物アレルギーの委員会で、何で研修をたくさんやらないんだと。「いや、それは分かっているんです。命に一番大事なものだから分かっているんだけど、その委員会がなかなか設けられないんです」と言っても、「いや、そんなのは、命が大事でしょう」と。委員会ごとに、みんな大事だよと言うが、その時間がない。この時間を解決しない限り、幾らいろいろなことを言っても、ちゃんと定例の会は設けられない。
  これをどうするかは、やはり私が思うに、いろいろな個別の委員会を開くのではなく、学校の組織というのはどうなっている、どのぐらいの時間があって、どの時間でどのぐらい設定可というしっかりしたものが設けられない限り、幾らそこで何々をやってくれと言っても、いじめ防止対策会議を一回しかやっていないとあるが、やる時間がない。
  細かいことを申し上げれば、幼・小・中・高の文化があって、中学に行くと、学年で解決してしまう、管理職まで行かないとか、高校へ行けばその傾向が更に強いと思われる。小学校は比較的校長まで上がってくるが、幼稚園は、ちゃんと園長も絡んでくる。そのような組織的な問題はあるが、しかし、問題は、一番究極的には、時間がない。これをしっかりやらないと、幾ら言っても、現実問題、うまくいかないのではということが私の率直な現場の校長としての意見。
【委員】  今の先生のお話を伺うと、何を言っても、時間がないのでというお話になるだろうなと思うが、あえて言わせていただくと、やはり先ほどから指導力不足で発生するという考えは違うんだという話は出ていたが、やはり発見できないということ、それから、発見されても報告が上がってこないということは、指導力不足以外の何物でもないというふうには思う。
  きつい言い方になるかもしれないが、校長先生方が、きちんと、これは大事なことだから報告を上げてくれとか、発見したら速やかに周りでお互いに相談するようにしようということ、そのこと自体が教員の指導力不足を問うものではなく、むしろそこは教員が評価されるんだということを丁寧に伝えていく、学校の中であれば、やはり校長先生ではないかと思う。校長先生たちをそこに力付けるのは教育委員会の力ではないかと思うので、それぞれの方々が指導力をきちんと発揮される体制をどう作るかという話なのではないかと感じた。
  それから、小学校と中学校でやはり仕組みが違うと思うので、先ほど委員もおっしゃったように、発見の仕組みについては、別々に考える必要があると思う。ただ、いずれにしても、担任であれ、顧問の先生であれ、これはちょっと心配だなというふうに、あれっと思ったときに、そのことを発信できる場がきちんと設けられることが大事。病院だと、医療事故を防止するために、リスクマネジメント会議というものが定例で行われることになっている。そこには各職員が感じたひやりとした、はっとしたという案件を全てレポートで出すような仕組みになっていて、それらの出てきたレポートの中で、組織的対応が必要なものはどういうものなのか、個人の要素が大きいものはどういうものなのか、また、環境的な要因が大きいものはどういうものなのかということを分類したり、それから、特に急いで取り上げるべき案件と、これについては少し経過を見ていくものでいいだろうという案件と分類していくといった、そういう作業を毎月の会議の中で行うということが仕組みとしてある。それをやっていくことによって、一つの案件の中から、こういうことについては気を付けようねという共通する教訓みたいなものを抽出することもできるし、その抽出されたものを各職員に伝えていくことによって、今まで気付いていなかった方々にも気付いてもらえるようにすると。つまり、これは何かというと、そういうひやりとしたりしたことをレポートとして発信してもらうことで、本当の事故を防げるんだという、そういう普及啓発でもある。そういったことを、結局、根気よくやっていくということが大事なのではないか。
  それと、もう一つ、大きな二番のところにも重なるのかもしれないが、先生方だけでやるのではなく、例えば、学校でも職員がいらっしゃるし、それから、子供たちとも共同して、いじめをなくしていこうというふうな取組が、どういう形かでやられているところも多分あるんだろうと思うので、そういったことについても考えてもいいのではないか。子供たちの中にも、いじめが本当はよくないということを感じている人というのはたくさんいるはずで、なかなかそれを、今度、自分がいじめられたら嫌だから言わないとか、勇気がなくて言えないとかということもあるだろう。そこはもう少し人間教育ということも含めて、子供と一緒に取り組むということも組織的に考えてもいいのではないかと思う。
  それから、あと、教育委員会の仕組みは全く分からないので、無責任な言い方になるとは思うが、その報告を待っているというよりも、各学校に巡回して、そういうリスクマネジメントのような会議が行われているときに出席させていただいて、現場の声を聞いていただくとか、そういうことも、なされているのかもしれないが、より積極的にされてもいいのかなというふうにも思う。
【委員】  この法律が、どちらかと言うと、教育委員会とか学校の先生方に主眼を置かれたところではあるものの、PTAとしても、やはり保護者の責務という条文もあるので、そのあたりの観点から、全国のPTAの皆様に、どうあるべきかというようなところは、いろいろな会合等でお伝えはしている。
  現場で見ると、やはりいろいろな保護者の方がおり、非常にいろいろな意味での知識がある方、又は、そうでない方と。そもそもいじめの定義自体も非常に不明確。二年前だけれども、日本PTAで、いじめ対策に関する保護者向けハンドブックというものを作り、これは主に保護者の責務と、条文だとやはりちょっと難しいので、それを少し解説を加えたような簡易な書き方にして、お配りはしているが、やはりそれでもまだまだ不十分。
  先ほど委員がおっしゃった、先生方がペアで報告をするというのは非常にいいなと思っているが、一番望ましいのは、例えば、先生と保護者がペアになるという、そういう方策もあるのかなと思う。
  そこで言うと、よく言われる、子供たちに対する取り巻く環境はという言葉に始まる挨拶って非常に多いかと思うが、やはりコミュニケーション力の不足であるとか、学力の問題、それから、大体出てくるのがいじめと、この三つ出てくるが、子供たちもそうだが、そもそもの保護者自体がそうであるというようなところが非常に多く、私たち日本PTAの在り方のそもそもが、子供たちの健全育成ではあるが、一方では、やはり成人教育という観点から、全国にたくさんいる保護者の皆様に対する、いじめも含む、いろんな部分の成人教育を行っていく。余り成人教育と言うと、上からというような形も少し見られるので、余りよろしくないのかも分からないが、このいじめの定義付けにつきましても、もう少し普及啓発させていくことが必要だというふうに我々団体も捉えており、その動きは今加速をさせているところ。
  先生方の指導力の不足ということも、全くそうではないと言えないのかも分からないが、やはり非常に言いづらい環境というのはあるのかなと思う。最近、こんな言葉を聞いた。「いじめは布団の中で行われている」。特に、SNS等で、夜中、布団をかぶってずっと遅くまでやっているという、その仮想空間の中で起きているというような中で、これはなかなか気付くというところも難しいのかなと。教育の第一義的責任は家庭からというところで言うと、やはり保護者がそこはしっかりしていかないといけないかなと。そのことさえよく分かっていない保護者というのは、全国にたくさんいらっしゃるので、その辺を周知啓発していくことがもっと必要。
  今、先生方といわゆるPTAの会員であったり保護者の皆様がコミュニケーションを取っていく、なかなか難しい、そういうふうになっていない現状というのが非常に濃淡はあるがよくあると思う。会えるとすると、授業参観日であるとか学級懇談会というのはあるが、学級懇談会も、どちらかというとワンウェイになっているケースが非常に多く、参加はしているが、保護者の皆さんが発言できる機会が非常に少ない。ということから、最近、いろいろな全国で見られるのが、いわゆるKJ法的な手法で、小グループに分かれて、今、学級で取り組んでいるのはこんなことをやっていると。司会者は当然保護者の学級役員がやるということから、多くの方が発言できるような機会が出てきて、その中からコミュニケーションが取れて、非常にシンプルな話合い活動の中から、いろんなものを察知していくというようなところがやはりあった方がいいのではないのかなと思う。
  既にいろいろなところで聞かれる、特にこの問題に関しては、もはや学校だけではなかなか立ち行かなくなってきているという。というところで言うと、やはり保護者側がもっと知識と見識と、それから、いろいろなスキルを身に付けてコミュニケーションを取っていくことが非常に重要なのではないのかなと思っている。
【座長】  大変心強い。保護者の第一義的責任ということを皆さん方が心得ながら、学校と協働体制を取っておられる。しかし、協働体制も教師の多忙さとどう折り合いをつけるか、また体制を作ったらそれはそれで、学校側にもいろんな責任がかかってくるが、一つの活路として進めていくべき途かなと思っている。
【委員】  今、親という立場が出てきたが、結局、親も子供も同じ教育を受けている。だから、もしかしたら、教育そのものを大改革しなくてはいけないのかなという気持ちもある。
  あとは、今、小学校の校長先生のお話があったが、そんな七時間四五分という時間内に全てをやって、食物アレルギーの話は、医師会が少し関与しているが、やはり本当に現場の先生方が、教科だけでなく、子供の指導だけでなく、もっとほかに知らなければならないことが余りにも増えている。それを今までと同じ時間内でやるというのは、もうはっきり言って無理だと思う。やはりどこかを変えなくてはいけない。
  あとは、学校そのものの、前に申し上げたかもしれないが、やはりどっちかというと閉鎖的な部分というのがとても見える。だから、もう少し地域で、医師会学校医というのもいるが、もう少し学校が地域にオープンになって、それこそ世話焼きおばさんみたいなのも絶対いるので、そういう方々が子供たちを見る。そういう視点、そういった方に変えていかないと、本当にいじめというのはごく一部のことで、今、スマホの話も出たが、医師会ではスマホ依存みたいなことを今問題視している。それもやはりいじめに重なっている。だから、もう本当に氷山の一角であるので、もう少し広い視点で文科省に考え方を変えていただきたい。それが一番の根本かなと思っている。
【委員】  まず、本題にあるように、確実に組織的な対応とするための方策ということで、冒頭に結論というか、私の思いを申し上げると、これは小・中・高問わず、校長の姿勢なのかなと思っている。
  恐らく、心配されているような、要するに、力量不足だから報告しないというケースは、そんなに多くはないのかなと思っている。
  特に最近、いじめというものの内容が複雑化・陰湿化、一番分かりやすいのは、例えば、SNS等の発信、布団の中で起こっているというような部分があったが、簡単に言えば、それを察知する、目に見える部分で教員がそれをつかむことが、以前に比べると格段に難しい。ということは、こうした理想的な、要するに、教員が解決したいという気持ちを表す、それ以上にどんどん深刻になっていくんだろうなと考える。そういった、情勢の変化というか、一言で言えば、一人で担任が抱えてというよりは、解決することがまず不可能なんだと。であるならば、そういったことをしっかりと学校全体に周知させる役割は校長にあるのかなと思っている。それが冒頭に話したことである。
  そして、もう一つだけ述べさせていただくのは、きょう頂いた資料で、生徒指導リーフというのがある。これを作っている国立教育政策研究所の生徒指導・進路指導研究センターという部署があるが、実は、昨年の十月に全国の高等学校の校長会生徒指導部会、四七都道府県の生徒指導の代表が集まって講義、研修を受けた。そのときに非常に印象に強く残っているのが、いじめは教室の中で発生すると。それはどういうことかと言うと、ちょっとした生徒同士の悪口があったとする。そこに、知っているか知らないかは別にして、授業担当の教員がそれを見過ごす。要するに、そこに対して注意をしなければ、それはそのことが公になったと認知されたということにつながると。そういった本当にちょっとしたきっかけ、そこから始まるケースがあるんだからと。要するに、解決どころか、ある意味、その発端になっている可能性が教員にはあるんだということ。そのお話を伺って、すぐ学校に持ち帰って、研修を取る時間というのはなかなかないので、職員会議の冒頭にそういう話を職員にした。こういった注意喚起というか、意識改革、これをしっかりと伝える義務が校長にあると思っている。
  もう一点だけ具体的に申し上げると、前回頂いたいじめの問題に関する資料の中で、例えば、一二六ページから、学校におけるいじめの防止等のための職務別ポイントというのが四ページにわたってあり、担任、養護教諭、生徒指導担当、あるいは、管理職、それぞれのケースの中で具体的にどういう取組、どういう対応が必要かということを本当に分かりやすく書かれている。こういった資料を果たしてどれだけ教育現場の中で理解をして、あるいは、それをただ読むだけではなく、先ほどから何回も申し上げているとおり、職員全体に周知できているのか、いないのか。そういったところが非常に大きな課題になっている。
  この機会に申し上げたいのは、ここにもそういうアンケートがあるように、日常業務が本当に忙しい。やはりそういった、今、いじめだけに限らなくても結構だが、教育相談的な要素を持った、今、養護教諭が多くの学校ではそれに当たっているのかと思うが、当然、けが人、病人が出て、そういった対応が第一の責務かと思われる。是非、心理的な部分でのカウンセラー的な役割を果たしてくれるような専門医、チーム学校として、これから文部科学省の方で提唱されている部分、できるだけ早い段階でそういった人員を学校ごとに頂けると非常に有り難い。これこそ余計な話かもしれないが、退職された先生方、非常に多く今いる。多分、これはどこの県でもいらっしゃる。そういった中から、是非、そういう取組を、授業をしないで済むような職員がいることが、一つの方向付けになるのかなと思っている。
【委員】  現場の先生方の貴重な御意見を頂いたので、外から見てどうかといったところに絞って少しお話しさせていただく。
  まず、先生方の方でいじめ問題を抱え込んでしまうというのは、やはり評価といったことを気にしているのではないのかなというところは、押さえておくべきところではないかなと思う。やはりいじめが起こると、学級経営能力がないかと評価されるのではないかという、そういうおびえというのは人間あると思う。先生方というのは力があって、何とか、変な話、評価されたいというのは誰しも思っているところなので、マイナスにならないようにという意識があるとは思う。しかし、いじめの問題というのは、いつでも、どこでも、誰にでも起こること。今回の文科省の統計で毎年一八万件というようにたくさんある。そうすると、それが全部教員の問題なのかと。そうではないよといったところをまず意識付けするということが大事。だから、問題行動研究でいろいろ出ている統計を、もう一度、学校現場でもしっかりとそれの意味を感じていただいて、学級経営能力、先生方の能力の問題ではないんだといったところの意識改革というのは非常に大事。
  それから、毎回申し上げているが、文科省の方の通知で、要するに、いじめの問題というのは、どんどん認知をいっぱいしていくことが大事だという通知を出されている。あれをもう一度徹底して、現場の先生方に、先ほど出ていたような、校長先生を通して、それを周知徹底していただく。やはりペーパーの意味はすごくあるということを今感じたので、先ほどの統計の問題と通知をしっかりと徹底するという形にしていただければ、現場の先生方の意識が大きく変わってくるのではないかなと思う。
  それから、先ほど委員からもあったが、予防を意識して、外部の人間を入れていくということも大事。私の方も結構教員研修に呼んでいただいて、いじめ予防ということについての意識改革をしようということで、外部から話をさせていただいている。どうしても内部の先生方で話すと、違った見方をしているのではないかというところはあると思う。そうではなく、外部の人間が行ってしゃべるということの意味も、そこではあるかなと最近ちょっと感じているので、外部委員を呼んでの研修なんかも非常に大事ではないかなと思う。
  それから、PTA、あるいは、子供たちもその中に関わっていくということ、これは本当に大事なこと。全て学校に任せてしまって先生方が疲弊してしまっているのではないか。そこのところをもう一回切り口を変えていくということが非常に大事。
全ては意識改革に関わっていくのではないかなと思うので、やはり教育の問題とか、そこの根底からもう一回見直していくといったところを考えていく必要があると思う。
  それから、日常業務の多忙の点については、やはり報告が多いというのを学校に行くといろいろ感じる。なので、それをいかに削減するかといったところが大事。ある先生とちょっとお話ししたところ、例えば、幹部職員でいろいろ統計なんか処理してできるようなところは、そちらの方にシフトして、現場の先生方はもう子供たちと関わることに専念してもらうということも一つの在り方ではないかと言う方もいるので、そういうことも意識されたらどうかと思う。
  加えて、先ほど委員の方からもあったとおり、現場のことをよく分かっている退職された先生方にまた入ってもらうというようなことというのは、非常に大きなことではないかなと思う。
  最後、学校のいじめ対策をより実効的にする方法ということで、組織があるけれども年一回ぐらいの会議というのは、これは本当に意味がない。しかし、定期的に集まるということが大事ではないかなと思う。みんなで集まって、例えば、軽微の事案でもいいからみんなで議論していくということも大事。あるいは、過去に起きたその学校の問題、あるいは、今こういう形でいろいろ報告書も出ているので、一応報告書を読んだ上で、シミュレーションみたいなのをしていくということも、ある意味大事ではないかなと思う。報告書を他人(たにん)事として捉えてしまっているのではないか。自分の学校でも、いじめはいつでもどこでも起きるのだから、こういう死亡事故が起きる危険性はあるということで、自分事して一応シミュレーションしてみるということも、ある意味大事。要するに、防災のときには避難訓練するのと同じように、そのようなことを事前にやっておく、通常の危機管理ということをもうちょっと意識するということで、取組をしていただけたらと思う。そこに外部の、例えば、弁護士なんかがスクールロイヤーとして入るというケースもあるし、そうではなくても、弁護士というのは、意外と教育委員会あるいは学校で関わっていることがあるので、そういうメンバーを入れていただいて会議を活性化するということも、ひとつ御検討いただければうれしい。
【座長】  一点だけ、私から。皆さん方の御意見を聞いて、一言付け加えさせていただくとすれば、PTA、あるいは保護者が、先ほどのペアの話、それと、加わっていただくという御意見もあった。海外の事例なんかを見ていると、やはりPTAが学校の中に入られて、子供たちの遊び時間だとか、あるいは、運動場のいろんな施設の盲点だとか、あるいは、学校の中をいろいろと見て、気が付いたらアドバイスをしたり、子供たちに注意をし、学校の先生にそれを報告するという、こんな仕組みを持っているところも随分ある。
  そういう面で、PTAの御協力も大事だし、先ほど委員から、世話焼きおばちゃんが地域にいるという、こういうお話もされた。今、文部科学省でも、地域学校協働本部という方向へ学校を位置付けていく動きが始まっている。つまり、学校にも活動のコアがあり、地域にもコアがあるという。その地域コアづくりは、これまでは社会教育がほとんど担っている部分が非常に多かった。そのために、この社会教育の部分と学校教育の部分との連携協働というのは、今回の地域本部づくりでもいろいろと御苦労されたと思うが、行政の縦割り機構の中で、双方が協働してやっていくというのは非常に難しいところがあるが、この動きを少し進めていただきながら、やはり地域で子供たちを育てていく、あるいは、問題があったら協働体制を引いていくという方向へ向けていくのも、今のいじめの問題としては非常に大事な点。
  地域コアの人たちは学校の内外に亘(わた)って協力いただくことになる。子供たちは、学校の外でも、帰り道、いろいろなところで問題が出ているし、もちろん、自宅の中で、先ほどスマホだとか、携帯だとか、いろんな問題が出てきている。そういうところへ、学校の組織だけでなく、PTAも地域の方々も共に御協力いただくという、そういう体制をこれからは指向していく必要があるのではないか。先生方の多忙さをサポートしたり、教育課程についてもいろいろなことで支援できる部分もあるだろうと思っているので、その辺はこれから考えていかなければいけない1つの方向かなと思っている。地域学校協働本部づくりもまだまだ展開があるだろうが、御検討いただく点かなと思っている。
  とりわけ行政の社会教育と学校教育と言われる部門、この壁を低くしていただくということを是非ともお願いしたい。議論がどうしても今の学校の中のチームなり組織の問題ばかりに焦点が行っているが、もう少し広げて、拡大して見ていただいたらと思っている。


 《学校いじめ防止基本方針の機能促進・周知について》
《いじめの情報共有が確実に行われるための方策について》
※事務局より資料一を説明。


【座長】  二の論点の(一)と(二)は、ほぼ各学校の基本方針の課題という問題に尽きるかと思うので、まとめて御議論いただき、それから、(三)は、とりわけ課題になるところなので、ここは是非皆さん方の御意見を頂きたいところである。
 それから、三の論点については、先ほどの議論に加えて、情報共有を広く考えていただいて、御意見を頂きたい。
【委員】  まず、学校のいじめ防止基本方針の機能の徹底の関係だが、これはつくっただけで全然使われていないというようなところはあると思う。あれはつくっただけでは意味がなく、どんどん現状に合わせて変えていくということが当然のことながら大事なので、一回つくって終わりということではなく、どんどん改定していくということが当然の前提としてあるべきだ。
  当初つくるときから、学校だけで、それも上からおりてきたのをそのまま自分の学校にというようなことなのだろうが、これが三年経(た)ったところで、その学校の特色をもっと出していいというようなことは当然分かっていると思うので、先ほどの組織が中心となって改定作業に入ると。そこに、先ほどからいろいろ話が出ている保護者が入り、あるいは、子供たちも入ってくるという形で、うちの学校ではいじめに対してどういうような文化をつくっていくのか、正に学校文化をどういうふうにつくるかといったところに関わってくると思う。学校文化をどのようにつくるのだといったところの意識で、この基本方針の改定を進めていくといったことが大事。 
   それから、地方のいじめ防止基本方針について、努力義務となっているところをどうすべきかといったところは、これはいろいろ議論があるところだと思うが、私としては、余り義務化といった方向に流れるのはどうかと。これは在野の弁護士も、委員も同じような意見を出されている。やはり柔軟性を持たすということはすごく大事で、自分らから自ら動くといったところをどこか残しておかないと、結局、いじめの問題も上から来て義務でやらされているのだというところで、現場からの情報発信というのがなくなっていくのではないかなと思う。
  それから、今、このような現状にあって、かえってつくらないというふうにやったら、つくらないというのはまた一つの在り方だと思うので、では、何でつくらないのかといったことをしっかりと表明するといったところまでしていただいたらどうかなと思う。そのような逆の発想で取り組んでいけばいいのではないか。
  それから、三点目のところで、いじめに対する指導ということだが、これは必ずしも加害者側の方にいじめという言葉を出す必要性というのはないし、いじめという言葉を出さないと指導できない、ということはないのは、これはもう現場の先生方は分かっていることなので、それはそのとおりの形で指導はしていただければいいのではないかなと思う。統計上の問題としては、それはいじめに該当するのであれば、しっかりと報告していって、どのように解決したかということはしっかりとしていくべきだ。
  基本的に、そういう数字としてあげる意味がどこにあるのかについては、逆に、文科省が、何でこういう調査をしているのか、それはどういうところに意味があるのかということをもう一度しっかりと現場の先生方に御理解いただくように、もっともっと文科省の方も努力すべきではないか。一所懸命フィードバックしていただいているとは思うが、なかなか現場の個々人の先生方にそのことは届いていない。これは本当に正直届いていないと思う。それをどのように届けるかということをもう一度考えていただくということが大事。
【委員】  座長が先ほど最後におっしゃっていたように、学校だけではなく、保護者、あるいは、学校評議会等に代表される地域の方々への情報発信として、各校がこういったものを用意するのはもう必然というか、非常に大切。
  ただ一点、つくった側(がわ)の立場から申し上げると、学校ごとの特色というのは当然なければいけないと思うが、目標がそこに相当するだけで、基本的なものは、少なくとも小・中・高それぞれについては共通でもいいのかなと思う。
  ただ、どうしても、つくって、それっきりになっているケースが非常に多いのかなと思う。これも先ほど申し上げたとおり、前回の資料の中に、点検の重要性というものが非常に述べられている。正直言って、点検していない。多忙を言い訳にはできないと思うんだけれども、恐らく、多くの学校が、何か大きな課題がなければ、恐らく数年間、そのままのものを持ったままでいるのではないか。要するに、数年間というのは、つくったときはともかく、四年後、五年後になってきたときには形骸化するおそれが非常に多いのかなと思う。そういったことをしっかり毎年確認をするというのは、こういった必要な学校ごとの責務である。
  そして、もう一点は、やはりこの基本方針の一つの大きな核としては、外部機関との連携にあるかなと思っている。そういった意味では、司法関係や警察、教育委員会、そういったところとの連携も含めて、しっかりと確認をすべきだ。
  ただ、やはり実務的な忙しさ、これに関わる忙しさというのは、正直、非常に厳しい。これも先ほど申し上げたとおり、きょう頂いた生徒指導リーフの、特にいじめに関する項目の、一九、二十あたりを見れば、ちょっと言い方は変かもしれないが、本当にもうバイブルというか、そういったものかなと思っている。ただ、本当に申し訳ないけれども、恐らく、これを一冊このような形で頂いたとしても、きちんと精査して見るというのは、これだけ頂ければ別だし、私のように生徒指導に携わる立場の校長であれば別だが、やはりこれの恐らく十倍ぐらいの様々な資料が入ってくる。そういった中で、しっかり吟味するというところが、時間的な猶予のなさ、心の余裕のなさというのが正直あるので、本当に大切な部分、読めばもちろん分かるが、そういったところをしっかり浸透させる。先ほどの繰り返しになるが、各学校の校長の本当に大きな責任、仕事だと思う。
【委員】  何事もそうだが、基本計画にしろ、基本方針にしても、つくると安心という部分があるから、それを定期的に見直すことが皆さんへの周知になるし、機能に結び付くと思う。二つ目は、保護者の方も、今おっしゃっていた外部機関とか、そういったところにも必ずその基本方針をきちんとさせる必要はある。
  あと、地方いじめ防止基本方針の策定については、その地域によって差があると思うので、全て同じようにつくりなさいという義務化は難しいのかなと思うので、今の考え方でよろしいのではないか。
あとは、情報共有にしても、今、委員がおっしゃったみたいに、結局は校長先生、管理職のトップの方の考えがどういうふうに変わるかということなので、それを校長先生に全部強要するわけではないが、それが一番必要であると思う。
  あとは、教育委員会への報告を促すのは、もう最初と同じだが、報告は決して恥ずかしいことではないと。報告をすることで、自分たちの肩の荷が下りるのだという、そういった周知が必要。
【委員】  いかにこれを浸透させていくかということに関して言うと、日本PTAでも、いろんな成果物、紙ベースであったり、調査事項であったりを、出すが、なかなか浸透しないというのは、もう同じような悩み。ただ、いじめに関しては、やはり先ほど申し上げたような喫緊の課題として捉えている中で、実は私ども、ある団体と連携を始めた。というのが、日本PTAは、全国の公立の小・中学校の保護者でできている組織で、今、会員数でいくと、少子化の影響もあって減っているが、八百五十万人ということで、恐らく最大の団体かと思う。同じような悩みを持っている、例えば、国立大学附属の小・中学校とも今連携をし、高等学校のPTA、幼稚園・こども園のPTA、その他、全国連合小学校長会・全日中の先生方、あとは教育新聞社さんとか、いろいろ入った中での、いわゆる広報に関する研究会というのを昨年から立ち上げて、いろいろな成果物はできるが、どうやったら浸透するのかと話合いをしている。
  例えば、ホームページの運用でも、学校でもつくっていると思うが、これはいろいろまちまちだと思う。私どもの団体でもそうだが、いろいろあるけれど知らない、活用されていないということが非常に多いと感じる。
  先ほど、連携をした一つの目的は、それを浸透していくということが一つの大きな目的と、それから、先ほど、同じような教育を実は受けたのだという委員のお話もあったように、やはり成人教育はこれから先、非常に重要になってくる。これは私どももやらなければいけないと思っており、やはり若い保護者の皆様、特に幼稚園・こども園の保護者の皆様が率先して使っている、例えば、スマホであるとかメディアの問題に関してであったり、いろいろな社会的な基本的な行動のような、当たり前の規範意識というものがまだまだ不十分なのではないのかなと感じる。それはもう学ぶ機会がなかったということであれば、やはり学ぶ機会をつくらなければいけないのではないかと思い、幼稚園・こども園から小学校の接続、それから、中学校への接続、高校と、大学は残念ながら入っていないが、こういう縦の連携の中からのいわゆる研究会も発足させ、いかに浸透させるのかということを今ちょうど議論している。早い段階でシンポジウム的なことも今やろうと意識をし、私どもの団体で言うと、全国に六四の都道府県政令市の協議会があり、そこにある程度周知すれば、活動としてはやっていけるような方向に今パワーとして持っている。我々は、ここには非常に重大な認識を持っているので、ある程度の答えは出していきたいなと思っている次第。
【委員】  基本方針については、方針をもとに誰が何をやるのかということが多分大事だろうと思う。それは校長先生とか特定の人だけがやるのではなく、保護者なら保護者の立場で、うちの子がいじめられていないかどうか、ちゃんと毎日子供の様子を見ようとか、話を聞くようにするとか、街中を歩いていて、一人の子がみんなから責められているようなところがあったら声を掛けてみようとか、自分の立場で、この方針に基づいて何ができるのかという、そういうことについて誰もが目標を設定して、それについてどう取り組んだかというふうなことを話し合う場なんかを設けることができると、基本方針というものが、もう少し一人一人の身近なものになってくるのではないかと思う。多分、床の間の掛け軸のようにされていても使われなくて、常に持って歩く地図みたいなものに基本方針をどういうふうに位置付けいくことができるのか、その工夫を考える必要がある。
  そして、浸透させていくことが多分重要だと思うので、方針がつくられているかつくられていないか自体が大事ではないと思う。努力義務というふうに聞いたときに、一般的な聞こえとしては、やらなくてもいいけどやってもいいよというふうに言われている印象はあると思う。だから、もちろん地方自治ということがあると思う、それぞれの地域特性などを加味して、裁量に任せるという発想も重要だとは思うが、一方で、国の姿勢としては、やってもやらなくてもいいというふうに聞こえることをどう考えるかなというところはあるように感じた。
  それから、教育委員会への報告のことに関しては、先ほども発言したように、教育委員会の側(がわ)からどのぐらい出向いていけるかということがあると思う。あとは、報告されたことについて、教育委員会がどういうふうに今度また学校にフィードバックしているのか。その中身が私は全然分からないので、何とも言えないが、おたくからこういう報告が上がってきたことで、ほかの学校さんにもお伝えできて役に立ったとか、そういうプラスの要素を加えていただけると、多分、報告しやすくなるのではないかと思う。報告したことで、うちがにらまれるのではなくて、この地域のいじめを防止していくことに役に立てたのだというふうな、そういう感覚を持っていただける仕組みをつくることができれば、もしかしたらもうやっているかもしれないが、そういうことがあった方が、多分、報告しやすくなるのではないか。
【委員】  法制化されて、学校のいじめ防止基本方針を学校がつくらなければいけないとなったときに、私は都の教員なので、都の方からこの基本方針が示されて、それを参考にしながら作成した。校長として、いじめについて本当に意識をしたなと思っている。だから、法制化されて、この基本方針をつくるというのは、とてもよかったなと思っている。それを今度、一所懸命いろんなことを、早期発見、早期対応とか、いろんな項目で、具体的にどうなんだというイメージを持ちながら、各自の学校のイメージを持ちながら、どうすれば今の勤務体系の中で、効果が上がる方法をよく考え、それを職員に説明する。ただ、教員は毎年異動して替わるので、毎年、その説明を丁寧にするという機会をつくってきた。だから、いじめについての学校の対応は、かなり昔よりは意識を持ってきているのではないかなというのは私の実感。
  十年ぐらい前に、私はある地区の教育委員会の担当をしていた。いじめでまた問題になって、議会の質問が四十項目以上いじめについて出て、その答弁をつくるときに、基本方針の中身まで書けなかった。だから、今回は、この基本方針ということを国が示して、都が示して、そして、学校はそれを受けてつくって、そして、これを教員に示したということについては、ある程度の成果があったのではないかなと思っている。ただ、若干、学校によっては、報・連・相が薄くて、うまくいかなかったところが出てきているが、成果があったというようには思っている。
  もしかしたら校長の中には、リスクマネジメント、危機意識が薄く、基本方針も自分でイメージを持たずにそのままなぞっていけばいいのではないかと、つくっている校長がいるかもしれない。その校長が、教員に説明ができるかとなると、私は調査していないが、もしかしたらいるのであれば、校長のリスクマネジメント意識を高めていかなければいけない、そういう可能性もあるかなというところで手を打たなければいけない。
  「いじめ対応」という冊子に、いろいろな教育委員会の方策が載っている。そこにちょっと気になったのが、いじめゼロを目指してと。いじめゼロとなったときに、それを校長なり教員がもし見たときに、基本的にはゼロは難しい。一番大事なのは件数ではなく、とにかく丁寧に対応するということが大事。一つ一つ丁寧に対応しよう。ゼロとなると、数値化にいくものだから、では、なるべく少ないのがいいかなと。本質はそうではないと分かりつつ、ゼロとなると、報告しづらくなる。教育委員会のその対応策でゼロを目指してというのは多かった。
【座長】  多かった。
【委員】  だから、学校だけの問題ではなく、教育委員会とか、全てのところで、いじめゼロは、方向性としては、少なくするということが大事で、一つ一つ丁寧に対応するということが一番大事。だから、京都の方にはいじめ件数が多い。だから、丁寧に対応しようという方向性で動いていると思う。もしかしたら、教育委員会の方はゼロだから、そんな細かいことまで出さないでいいのではないかという意識がどこかにあれば、それは校長・教員もそういう意識を持つ。言わなくても何となくなるので、それが報告としてもしかしたら制限させているのではないかなというのは、その文章を見ていて思う。
  年末、三答申が出て、学校教育や社会教育も含めて、学校をよりよくしていこうということがあるが、私の学校には、今、スクールコーディネーターというのが入っており、学校の中にも入ってきてくれている。だから、教員だけでは見切れないものを見てくれる。そうすると、教員では気付かないものも気付いてくれる。そうすると、学校の教員だけでは、一所懸命頑張っているけど、見ていない、特に若い先生なんかは、まだそういう部分の感覚が分からないところがあるので、それをほかの人が見て、なるほどなということで報告ができる。いろいろな人が見て、それはもしかしたらいじめではないかとか、みんなで話合いをされて、それはもしかしたらもうちょっと丁寧にやった方がいいのではないかということができればいいのかなと思っている。
  最終的には、そういうのも含めて、校長のリスクマネジメントが大事なのかなと思っているが、もう一つ、私が今やっているのは、週案というのは、必ず教員が毎週、週の指導計画という形で、どういうものをやるかと書いてあるが、先週の所見の中で、必ず子供のトラブルとか、いろんなことがあったら全部明記するようにと私は指示をしている。今までは全く無記入だったが、子供に関係することは、私も教員一人一人と話し合う時間がないものだから、必ずそこに書いてくれと。で、気になったことは、呼んで、どういうことなのかということで話をして、それは報告してもらってよかったなということが時々あるので、そういう部分での報・連・相をもうちょっとしっかりしていくということも、これは大事なのかなというようには思っている。
【委員】  やはり具体的なつくったものを機能させるというのは、それを使っていくということだと思うので、その書いてあるようなことが今対応できているかというのを定期的に、全項目をやるというのは大変かと思うが、一部ずつでも、ここができているかというようなことを短い時間でも、例えば、各組織の責任者になった方が見直して、みんなにここのテーマを投げかけてみるみたいな機会を少しずつでも持てるということが、結局、それが浸透していくということについてもつながるのだと思う。
  確かに、いろんな成果物が届くというのは大切だが、やはり届いたものを自分で読んでいくというのはなかなか難しい。やはりそれを何人かで議論する形が、実際に文章がしみ込むためには、必要があるのかなと思っている。
  それと、浸透させる方法として、さっきPTAの方からもお話があるように、いろんなラインから行くというのが、どこかで引っかかるということがあると思う。学校から保護者に向けてももちろん通知が出ていくが、それがまたPTAの方からのお伝えだとか、それから、地域の方の回覧板に入ってくる紙だとか、いろんなことで同じようなことが行くと、どれかを目に留(とど)めるということがあって、それが皆さんに浸透していく一つの方法だと思うので、もちろん、ホームページを見る人もいるし、来た通知を見るという人もいるので、本当に手間のかかることではあるが、重層的にやっていくということが必要。
【委員】  基本方針は、とにかく学内で徹底させればいいことであって、それを外部に発する話ではないだろうと私は思う。内部で立てた方針をどう理解して、教員がそれをどう実行していくかということがまず大事。
  やはり子供中心にものを考えていくという原点。学内の子供たちがどういう日常を過ごしているかということを常々我々が見ていくということが私は大事。
  私立学校は、いじめの問題があれば一遍に学校がつぶれてしまう。そういう意味では、大変重要な問題だと思う。
【委員】  いじめ防止基本方針を機能させたり周知する、浸透させたりというのは、実は大変難しいとは思っている。一言で言うと、場の設定というキーワードがあるのかなと思う。例えば、保護者にどうやって周知をするかというと、いろいろな手段がある。Webもあるし、学校便り、学年便り、保護者会等々あるが、では、全員が見るかというと、見ない方が多い。小学生は、プリントを家に帰ると親に渡すが、中学になると渡さない。そうすると、どういうふうにするかというと、先ほど出ていたが、重層的にやっていくというのがやはり非常に重要なポイント。
  ただ、その場をどう生かすかだが、例えば、保護者会で担任の教員にいじめ防止基本方針の話をさせる。そういう場の設定というのがある。そうすると、教員の意識が変わってくる。教員が基本方針を理解する。そうすると、次に、生徒への指導の中で、その基本方針をベースにして指導が行われるようになる。そういう見方ができるのではないかなと思っている。
  そんな中で、ある学校の例は、いじめの防止ということで、基本方針にも書かれているが、生徒に、では、自分たちで考える場を与えようと。それはどういう場かというと、朝礼の時間を使ってパネルディスカッションをやろうと。いじめの防止についてパネルディスカッションをやって、それを各学級に持ち帰って、今度は学級の中で話し合い活動をしよう。そういうような取組をしている学校もある。
  これはやはり教員の意識が変わってきた。そういった取組をすると、それを学校では次々に発信する。Webで発信する。そうすると、今までただ読み流していた保護者が、少し思いを込めて読み出す。そうすると、次の保護者会で、人数は多くなくても、深い話合いができてくる。それが積み重なっていく中で、この方針は浸透していくのだろう。時間はかかるかもしれないが、正に継続すること、重層的に行うこと、これが重要。
【委員】  やはりちゃんと方針をつくって、それをみんながちゃんと読むことが大事。ただ、読むだけだと、時間が経(た)つと何となく形骸化してしまうようなところがあるので、やはり実際に事例の中で考えていくときに、これに落とし込みながら具体的に考えていくということが大事。具体例と対比しながら考えていくことで、浸透していくのだろうと思うし、また、そのときに、うまくいかなかった事例ばかりではなく、逆に、何かいいところがあって、こういう対応ができて、基本方針からこんな気付きがあったよねみたいなものを積み重ねていくということも、同じ以上に大事かなと思う。
  やはりそれをしていくときに、先生方だけではなくて、できれば外部の委員の方であったり、保護者の方たちであったり、いじめに対応する組織がちゃんと責任を持ちながら、校内と学外と保護者の方や、あと、是非スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーも活用していただきながら、幅広い働きかけをしていく中で、気付きを共有していくということを大事にすべきではないか。
  義務化するかどうかについては、非常に難しいところはあるかもしれないが、やはりつくることが強制されることよりも、なぜできていないかを一緒に確認し合いながら、つくっていないところは、もしかしたら支援が必要なところかもしれないし、そういう見方をしながら、それぞれの地域に合ったものをつくっていくことを促していくことを大事にされるべきかなというふうに私は考えている。
【委員】  教育委員会という言葉が大分出ているので。教育委員会の中には指導主事がいる。
  学校訪問というのがある。このときが、いじめの問題について情報をキャッチするいいチャンス。まず校長さんと行く前に話をして、自分の学校で困っていることを自分なりに把握していく。あとは、これは指導主事だから、教科指導とか生徒指導とかという部門で研究会なんかやって戻ってくるわけだが、その中で、いろんな情報が得られる。先ほど先生が言ったように、報・連・相。私は、報・連・相・価、「価」を入れた。価というのは、評価。価値。報・連・相では流されてしまうから、価を入れろと。価を入れて、その価でどういうふうに評価してくるのか。価値を見つける。そういうものを作って、一冊の本にしたんだ。だから、それは活用されている。
  やはり指導主事の力というのは、学校把握のために非常に役立つ。それから、校長さんと手を携えて、その地域の行政を進めていかなければならないから、非常に気持ちがつながる。また、校長さんからも信頼されれば、相談される。そういう中で、いじめの問題について、もっとやっていけばいいのではないかなという点も考えた。
  それから、もう一つは、特に学校でやる場合には、先ほど委員がおっしゃったように、やはり保護者に、いろんな会合、学校便り、学校中心にいじめの問題について普及できるチャンスもあるし、そういう中からまたいろいろな情報を得られることもあるので、小さなことを早くつかむという点で、非常にそういう面はいいのではないかなと思う。そうすると、先ほど言ったように、教師の変化というのも、そういうところから自分なりに、担任、あるいは、教師からも出てくるように感じる。私はしっかりやろうと、そういう意気込みも出てくるので、周りからそういうものが高められるような工夫をしていくことは大事。
  それから、もう一つは、新しい教育委員会法ができたこと。今度は、教育長がかなりの実権を持って進める。そうすると、今まで教育委員さんと教育長がいて、五人でやっていたものが、教育長の更にリーダーシップが必要になってくる。指導主事が行くときに、自分の代わりに学校を訪問するのだから、もうちょっと詳しく見てきてくれという指示もできる。今までは、教育委員さんと分けて学校訪問をしていたようだが、そういうようなところも、非常に学校との連携というものが強まることもできるので、新しい法を使ってやっていくことにしたらどうかと思う。しかし、余り上からどんとやると、また上から来たというふうになるので、それは抜きとして、いろいろ考えて、何しろ情報を共有するという、こういう点が大事。
【座長】  先ほど委員の方から、いじめゼロというのは、これは非常にリスクの伴う表現だと。これは文科省もいろいろな啓発教育への資料の中に入れて周知していただきたいことである。やはりその点は、抱え込みを呼びかねない。しかも、自分のクラスで起こること自体が悪であるという、こういうラベルを負ってしまいかねない。今までいじめに対しての基本認識は、いじめはどの学校にも、どの学級にも、どの子にも起きる可能性があるという表現だった。ここのところの基本認識は、ゼロではなく、どこにでも起きているんだという認識に改めまず対応の出発点をそこから考えていただく必要があるだろう。
  東京都の調査では八割方の子供がいじめに関わっている。国立教育政策研究所だと、フォローアップ調査であるが九割の子供たちが何らかの形でいじめに関わっているという。だから、その学校・学級単位を取れば、それはもうどこにでも起きているんだという、その認識に今や改めていただかなければいけない。そこのところは大事なポイントである。
  私もいろんなところでお話し申し上げるんだが、委員が御指摘のように、基本方針の頭にいじめゼロが出てきている学校がある。それは間違いではない。そういう文化を目指して、あるいは方向性として、学校風土というものをそういう方向に向けていこうや、起きたものを減らしていこうやということも含めて、やはり長い時間の中で醸成される風土づくりには必要なことだろうと思う。しかし、基本方針は、具体的、実効性のあるものでなければならない、基本方針から年間計画がおりてくるわけだが、やはり理念や目標を具体化するつなぎがうまくいってないところがある。
  当然、年間計画なので、絶えずそのフィードバックがある。絶えず見直しがあり、実行体制をもう一度検討しながら、改めて次年度で取り組んでいくということは当然行われなければいけないが、そこのところはしっかりもう一度伝えていただきたい。
  それから、もう一つ、地方公共団体や教育委員会の基本方針の策定と組織の設置だが、これもやはりもう少し強調していただかなければいけない。正確な文言は覚えていないが、たしか法律の方では、組織は置くことができる、それから、基本方針、これは定めることができると書いてある。ところが、文部科学省が出した基本方針は、その文言を改めて、全て望ましいという表現に改めている。ここのところのフォローアップがまだ効いていないところがあるので、もう少しそのあたりをしっかりとお伝えして、都道府県は全部できておるけれども、市町村の教育委員会、あるいは、市町村の方へ御協力を願うということがやっぱり必要だろうと。そのときに、先ほどから出ておるけれども、それがつくれないところは支援を申し上げることも必要になってくると思う。
 間もなく三年目の見直しがあるが、国の基本方針については皆さん方の御意見を頂きながら、対応例、あるいは、好事例も踏まえながら、今の問題点・課題を解決できるような形で国民にお示しする必要があるだろう。それが具体的には文部科学省の基本方針の改正版になるのか、あるいは、補遺というか、それを補う版になっていくのか。マニュアルづくりも含めてどういう形かは検討していただくとして、今後、そういう方向をにらみながら、この場での御議論を委員の皆様方から頂ければ、実りある議論とすることができ、ひいては現場の、あるいは、子供たちのために生かせる議論の場とすることができると考えている。
  そのあたり、事務局の方でも御検討いただいて、次回にでも、今後の皆さん方の御議論のアウトプットをどういう具合にするのかというところもひとつ御提案いただければと思っている。
【事務局】  非常に大事な論点を頂いた。正に社会教育との関係、去年の三答申を正に生かしていくということが大事だと思う。あるいは、福祉でもヒヤリハットのような事例をやっていると先行事例を幾つか示していただいた。我々、スクールソーシャルワーカーという専門人材も拡大していく方向。
【座長】  医療でもヒヤリハットがある。
【事務局】  もちろん医療も含めた福祉全体から学ぶということや、学び合いもあると思う。教育のことを更に御理解いただくことも大事だし、あるいは、法律の専門家から学ぶということも、学校現場にも浸透させていくということも大事だと思う。そういうような多分野相互乗り入れで学校を支えていくということだと思うし、あと、PTAという保護者のもう一つの当事者、あるいは、児童生徒にもいろいろと関わっていただくということがもう少し基本方針に反映できないかということも示唆を得たんだというふうに思う。
  本当にいろんな論点をこれから反映させていきたいと思うけれども、法律はともかく、まずはこの範囲としては、基本方針をどう改めることができるか。先ほど座長がおっしゃったとおり、そういう表現も我々が事務局的にリードするということもあり得るが、むしろ積極的に、こういう表現を加えるべきだとか、基本方針のこの部分はこう改めた方がよりいいのではないかとかという、そういう具体的に頂けると、みんなでつくり上げたという、また新たな基本方針になっていくと思う。国もそういうふうに、不断の点検・見直しをしたわけだから、各学校や自治体においても、もう既につくった基本方針をもう一回見直していただく。より運用しやすい状況とか、子供を救いやすい状況に変えていただくとか、先ほどのいじめゼロを目指すというスローガンで、逆に隠匿になってしまったということが起こっているのだったら、そういうことはやめて、きちんと丁寧に対応していくんだ、どんなものでも芽を摘(つ)んでいくんだという姿勢に変えていただくとかということを促していくことにもなると思う。

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