【資料4】有識者会議における主な意見(第1~3回)(未定稿)

1.現状認識・総論

○日本で生まれ育ち、母語を話せない外国人児童生徒や、母語も日本語も習得できていない保護者が増えているという新しい課題が出てきている。母語による支援者をつければよいという状況ではなくなっている。
 
○ライフコースの観点からいうと、例えば将来、母語、日本語だけでなく、英語、中国語も活用できるグローバル人材として日本と海外を結ぶ役割を担うなど、子供たちにどのような未来が開かれているのか、その先に見える像を明確にすることで学習の動機付けがされる。子供がロールモデルと接することが大切であり、そういう世代がでてきていることを外国人の保護者や日本の社会に知ってもらうことが必要。
 
○市民から市に対する提言として、提言1、市として、学校として外国人の子供について意識を統一してください。提言2、研修制度の充実を図ってください。提言3、コーディネーター(調整役)を配置してください。提言4、ライスコースの観点を意識してください。提言5、リソースルームを設置してください。提言6、支援に関わる人材の身分保障を図ってください。提言7、福祉分野との連携強化を図ってください、をまとめたことがある。個々の文脈は違うが、現場で感じている課題、方向性ということはこの7つにかなり集約されるのではないか。
 
○日本、ブラジルの両国に住んでいる子供及び保護者は、「私は、何国人なの」と感じている。「何を学んでいけばよいのか」という原点をはっきりさせることが本人にも家庭にも必要である。日本で生き、活躍するために「生きるために何が必要か」を理解することで、子供の学びのモチベーションが変わる。
 
○本有識者会議の議論に関するこれまでの施策がどういう効果をもたらしているのかについての評価を行うべきではないか。


2.学校における外国人児童生徒等に対する日本語指導体制の整備・充実

(日本語指導担当教員の配置)
○市では拠点校教員5名の配置があり、外国籍の児童生徒が200名程度、そのうち80~90名ほどについて日本語指導が必要、という状況であるが、編入によって緊急度の高い子供が入ってくると、生活言語のレベルはあるが学習言語が十分でない子どもでも指導を終了にしなければならず、体制の整備充実が必要。
 
○外国籍の児童生徒は年度の途中で編入してくる場合が結構あるが、そういう場合にはクラスの定員を超えた場合であったとしても、教員加配はされない。年度途中で増えることを見込んだ上で、日本語の指導教員の配置や学級編成を行い、十分な指導体制を整えることが課題。
 
(学校・教育員会等における指導体制の構築)
○(1)教育委員会に設置された日本語サポートセンターにコーディネーターとなる教員を配置し、児童生徒の日本語能力等の把握、指導・助言を実施、(2)拠点校に集中教室を設置、拠点校指導教員が日本語指導支援員と連携して通級又は巡回による初期指導を実施、(3)日本語指導担当教員の配置校において、自校や近隣校児童生徒に対する通級・巡回による日本語と教科との統合学習指導を実施、等の指導体制を構築している。
 
○(1)国際教室担当の加配教員を学校に配置、学級担任と連携しながら取り出し指導・入り込み指導を実施、(2)日本に来たばかりの外国人の子供たちを支援する特別の教室(プレクラス)における初期支援を行いつつ、(3)教育委員会における人的支援として、外国人児童生徒教育コーディネーターや外国人児童生徒教育相談員を配置、加配教員未配置校を中心に巡回指導による通訳支援や日本語指導、相談業務、翻訳等を行う、等の指導体制を構築している。
 
○外国人児童生徒等の散在地域の学校に共通する課題として、予算がない、教員の経験・指導力不足、支援者の不足、教材の不足、地域全体における支援の重要性の認識不足などがある。学校における日本語指導は支援員に頼っているところが課題であり、日本語指導を行う教員や支援員の指導力を向上させるためのコーディネーター等の配置や予算の確保、しっかりとした位置付けが必要。

○日本語指導担当教員の年齢が若い場合、校長や教頭の理解等が得られず学校で孤立してしまって、なかなか思うようなコーディネーター的な役割ができないというような話も聞く。学校現場における全校的な指導体制の在り方について議論が必要。
 
○現職の教員がコーディネーターをしていたり、日本語指導をしている支援員をコーディネーターに想定しているなど、自治体によってコーディネーターの役割がそれぞれに違っている。例えば拠点校なり教育委員会に所属してしまうと、学校の中のことを学校外の人がいろいろと意見を言いづらい状況がある。うまく体制を作っていくためにはコーディネーター自身も学校の中で支援をしていくという立場をとらないと、意見が通らないという悩みがある。
 
○公立の小学校、中学校での日本語指導の推進には、設置者である市教委の強力な指導力が重要であるが、よくできている市教委のノウハウを財政的に弱かったり散在的な近隣の市町に普及させることが課題。日本語指導に取り組む力や発信する力の面で、県市両方からの取組が必要ではないか。

(多言語に対応する支援人材の確保)
○拠点校方式による巡回指導を行い、週1回の指導者間における情報共有を行ったり、多言語に対応できるスクールソーシャルワーカーや年度途中の転編入に対応するスペイン語・ポルトガル語などの語学相談員を配置している市町がある。特に語学相談員については人材の確保が課題。
 
○小学校で12か国語の児童生徒に対応した日本語指導をやっているが、それだけのいろいろな言語を操れる人を集めるためのネットワークの確保が課題。円滑にいろいろな多言語を操れる方を招くことができるよう、関係団体に対する事業助成や団体の運営支援を国が検討すべきではないか。

(学校とNPO等との連携)
○学校と様々な関係者との連携に関し、「虹の架け橋事業」の大きな成果として、学校、行政ができないところを中間支援組織に支援してきたということがある。学校とNPOの連携・協働を支援するような行政としての仕組みも作っていくことを検討すべきではないか。
 
○外国人児童生徒等の散在地域の学校における取組が進んでいる地域の成功の要因としては、地域で活動するNPO等の団体、大学、行政の担当者が、連絡協議会やシンポジウムなどの場を設定し、問題点の可視化、問題意識の共有、キーパーソンとなる地域の人材発掘などを行ったことが大きい。
 
○地域の大学等で、日本語指導人材や教材等のリソースルームを設置し、大学生や地域ボランティアの活用も含めて、個々の児童生徒のニーズに対応していくことで成果が上がっている事例があり参考にすべきではないか。

(その他)
○自治体が独自の特徴を持っていろいろ取り組んでいるが、国が例えばDLA、JSL、特別の教育課程などの方向性を示しつつ、各地方自治体が独自性を生かしながらどう進めていくべきか、国と地方自治体の関係の整理について検討が必要。
 
○外国人児童生徒を学校に受け入れ、高校進学して将来社会参加できるように教育していく中で、受入れ側の自治体も様々な国との人脈や多様性に対応する知見を得られる。外国人児童生徒等に関する予算獲得をしていくにあたり、将来国際社会で活躍できる人材育成のための投資だということをしっかりと訴えていくことが必要。


3.日本語指導に携わる教員・支援員等の養成・確保

(教員養成課程の在り方)
○DLAをきちんと実施・分析できる教員が少なく、研修の必要性は強く感じる。専門性を担保した教員の配置、日本語指導に関わる担当教員の配置が必要。大学とタイアップして、日本語指導担当教員に教育実習生が付いて学習をし、日本語指導のノウハウを学んでもらっているが、専門性・意欲を持った教員を育成するため、教員養成系の大学の中では是非そういう専門性を育む科目を必修の教育課程にする等、質の担保が必要。
 
○日本語教師の人たちは単に日本語を技術的に教えるというだけではなく、なぜ日本語を勉強するのか、将来どうするのか、自分の国の文化がどう認められるのか等、日本で生きていく児童生徒の生活全般を引き受ける面がある。外国人に寄り添えるような、外国人の子供のメンタリティを深く理解するような専門性のある日本語教師が求められるので、理科や社会科の免許があるように、日本語教師の免許のようなものを検討してはどうか。
 
○外国人児童生徒数の少ない散在地域での受入れにあたって十分な体制整備がなかなか難しいことを考えると、やはり現場の教員の意識を変えていく必要がある。今後教員養成において、教育の多様化の一環として外国人児童生徒の受入れや、日本の学校の国際化にどう対応していくかということを、全ての教員を目指す人が学ぶ機会あるいは認識を改める機会があるといいのではないか。つくば研修とか教育委員会等の主催する研修でその辺はカバーされていると思うが、長い将来を考えるときに、やはり教員養成の段階でそういうシステムが組み込まれていくことが必要。

○大学等で日本語教員養成課程を修了、あるいは修了見込みの者が、教員採用試験のときに一定の加算評価がなされることで、日本語教育に知識と経験を持った学生が教壇に立つことが推進できるのではないか。
 
○子供たちは学校で教科学習をすることを踏まえ、教科担任が全て日本語指導、あるいは背景の異なる子供たちがどういう問題を抱えているかということを、基礎・基本として学んでおくべき、その意味で、教職課程の中に国際理解教育、外国人児童生徒・帰国子女を含めた日本語教育に関する科目を組み込むことが必要。まずは、教員養成のためのカリキュラムというものを体系化・構造化して、それを見える形で共有できるようにすることが必要ではないか。

(現職教員の研修の在り方)
○学校で日本語指導に関わる教員、支援者を対象に研修を行っているが、毎回「初めて担当になったので、支援の仕方が分からない」という意見を聞く。実践や情報が積み上げられていない実態があると考える。
 
○教員や支援者には、少人数でも深い専門性を身に付けてもらうのか、広く外国人児童生徒等教育を理解してもらうのか、研修の目的が課題である。
 
○日本語指導のための教員の養成・研修にあたっては、(1)日本語指導者、日本語学級担当者としての専門性を高めるということ、(2)初めて担当される初任者を支えるということ、及び(3)担当ではない全ての教員に広くこの件に関して知識を得ていただくということ、の3つの側面での研修が必要ではないか。
 
○現職教員に関しては、まず外国人児童生徒等への対応を日本語指導の支援員に任せるのではなく、教科担当が責任持ってサポートすることが基本。このための現職教員の研修をどうするかについては、研修を受講するインセンティブを与える観点からは、夏あるいは冬、春というような時期を活用した研修を受けることによって、資格認定されるような仕組みがあっていいのではないか。

(日本語指導のための支援員人材の育成・確保)
○日本語教育の専門性を持った支援員が学校で活躍する場面が増えているが、謝金が非常に低額であるため別の仕事を選んでいく。例えば、大学の日本語教員養成課程を卒業した外国籍の学生たちが日本語教師として学校現場の中で活躍できるような枠組みを考えられないか。
 
○日本語教育の素地をきちんと持っていらっしゃる専門的な指導員・支援員の方々に対して、例えば学校の中で年少者に日本語を教えるための研修を行うことで、日本語教育の専門性を学校の中で生かすといったような人的リソースの活用方策が必要ではないか。
 
 
4.日本語指導における指導内容の改善・充実

(指導内容の改善・充実について(DLA,教材等)
○DLAを県内3市と1郡の学校で学校の先生又は日本語指導の方が実施しているが、評価がばらばらになりがちである。評価が統一的に少し標準化されるようなものがあった方がよいのではないか。
 
○日本語に課題のある子供に対し、タブレット端末を活用して授業ができないか。家庭での復習にも使え、親にも多言語機能の対応ができるようなコミュニケーションツールとしてタブレットの端末の活用ができないか。また、そのようなタブレット用に、日本語指導や親とのコミュニケーションのためのアプリの開発を検討すべきではないか。

(「特別の教育課程」による指導の充実)
○「特別の教育課程」による指導の実施の課題としては、限られた条件の中で工夫をしているものの、全ての児童生徒に指導や支援がうまく行き届いている訳ではなく、個に応じた指導・支援を充実させるためには、人的な配置について行政として検討することが必要。特に、小学校と中学校での授業形態の違いを踏まえた指導体制作り、取り出し指導でない児童生徒の在籍学級での授業作りが課題。
 
○取り出しの日本語指導を進めるにあたっては、加配教員の存在が不可欠。その一方、将来的に入り込みや一定の教科型の日本語指導に持っていくためには、加配教員以外の全ての教員の共通理解が必要。日本語指導が必要な子供たちのみならず、日本の子供の学力の部分も、そのような意識を持った担任教員等の指導が低い学力の子にも行き渡ることにより対応できるのではないか。

(その他)
○保護者の日本語力の向上や、家庭での学習指導のために保護者の協力が必要。授業での指導や取り出し指導をしっかりやるだけでは十分でなく、家庭での学習習慣を付けさせることが必要であるが、保護者の協力が得られない。

○教育委員会に行ったヒアリングでは、特別支援教育を受けている外国人児童生徒が増えており、今後も増加すると予測される。特別支援が必要な外国人児童生徒等への対応の在り方についても検討すべき。


5.外国人の子供の就学の促進及び進学・就職への対応

(外国人の子供の就学促進)
○中学校で編入した生徒の日本語力をどのように効率的に向上させ、,短期間で高校進学させるか。下学年に編入させた場合、しばらくすると学校へ行きたがらなくなる等、本人の精神的なモチベーションの観点から課題がある。
 
○米国カリフォルニア州の事例では、日本のDLAに相当する、外国人児童生徒の英語力を測るカリフォルニア・イングリッシュ・ランゲージ・ディベロップメントテストを実施、保護者と相談しながら、授業中の取り出し指導や授業後のアフタースクール等、英語教育が充実している。また、英語力を伸ばすためには、母語の能力もしっかりと身に付けることが重要と考え、母語指導にも力を入れている。さらに、アメリカに初めて来た外国人家庭に対して、地域の保護者が、教育の重要性、アメリカでの生活等について説明しながら、定住化に向けて、地域ぐるみで子供や保護者を支援している。こういう手厚い地域ぐるみの外国人のサポート体制を取っているところが参考になる。

(高校進学の促進)
○全校生徒の過半数が外国人児童生徒という学校もあるが、実際には日本生まれの外国人児童生徒が8割であり、将来的には高校へ進学を希望する子供が多い。高校の入学定員特別枠を普通科だけではなく専門学科まで広げ、多様なニーズに対応することが必要。
 
○高校に在籍する外国人児童生徒の割合が中学の半分くらいしかない。中学校に行っていて高校に行かないが、就職するかというとそうでもない状況の中で、中学校を卒業したが高校に行けない生徒の実態を把握し、どの地域でも高校進学ができるような制度を検討することが必要。
 
○全日制高校は公立が20%で、それ以外は私立である現状で、お金がない外国人児童生徒等は定時制に行かなくてはいけない状況は問題であり、貧困の連鎖につながりかねないので改善方策を検討することが必要。
 
○定時制にいかざるを得ない外国人児童生徒等は、全日制に行くだけの学力がないことが課題。小中学校の時から高校進学を見据えた指導を行うことが重要。
 
○どうして高校へ上がる段階で、その子たちが一番得意な言葉で受験するということができないのか。学ぶべきこと、基礎知識や必要な学力は何語で学んでも結果は一緒だと思うので、柔軟に日本の教育体制の中で受け入れられないか。地元の企業も本当に英語のできる人、スペイン語のできる人、中国語のできる人を人材として求めている。

(高校進学後の指導の充実)
○外国人児童生徒について、高校入学の特別枠を設けることは、受入れの責任が発生するということ。持っている能力は非常に高いものがあるので、選択授業、特別なカリキュラムの設定、教科指導の取り出し等、日本語の面でどのようにサポートするかが課題。
 
○高校において、日本人・外国人児童生徒を含めた子供たちが発信する形で行う国際理解教育、多文化共生教育を行っている。外国人児童生徒との違いを認めながら、日本の子供も巻き込んだ人材育成が必要である。
 
○留学生が大学に入学した場合は、日本語教育も受け、母語の支援も受けるようなシステムになっている一方、日本の中学・高校を経て大学進学した外国人児童生徒等はそういう教育を受けられない。外国人児童生徒等が大学卒業後に能力を生かして社会参加できるようになるため、大学において、日本語教育・母語の支援の両面を行うべきではないか。また、企業がそういう人たちの社会参加につながるような奨学金を出すなどの仕組みが必要。


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