学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議(平成27年11月5日~)(第4回) 議事録

1.日時

平成28年3月7日(月曜日)14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 第2講堂 (旧文科省庁舎 6階)

3.議題

  1. 外国人の子供の就学の促進、進学・就学への対応
  2. 有識者会議の主な検討事項について(全体会議)
  3. その他

4.出席者

委員

池上委員、伊東委員、各務委員、古角委員、佐藤委員、佐原委員、菅原委員、高田委員、高橋委員、竜澤委員、藤巻委員、松本委員

文部科学省

藤原大臣官房審議官、小林国際教育課長、齋藤国際教育課主任学校教育官、村松国際教育課専門官、松木大臣官房国際課国際協力企画室長、岸本国語科長(文化庁)

オブザーバー

浅田内閣官房教育再生実行会議担当室長、村田内閣府政策統括官(共生社会施策担当)定住外国人施策推進室参事官、小川外務省領事局外国人課長、山形法務省入国管理局入国在留課在留管理業務室法務専門官、庵田総務省自治行政局国際室総務事務官、久知良厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部外国人雇用対策課長、松崎経済産業省産業政策局産業人材政策担当参事官室長補佐

5.議事録

【佐藤座長】 定刻になりましたので、会議を始めたいと思います。本日はお忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。本日、4回目でしょうか、学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議の会合を始めたいと思います。
本日、外国人の子供の就学の促進、進学・就職への対応のテーマについてヒアリングを予定しております。また、その後、引き続いて、これまでの有識者会議でのヒアリングなどを踏まえた、全体を通じての議論を予定しております。本日、14時から17時までという3時間の長丁場ということでございますけれども、御協力のほどお願いいたします。
本日、吉住委員が欠席と伺っております。
また、事前にプレス関係者と傍聴者の傍聴登録がありましたので、これを認めております。
早速ですけれども、議事に進みたいと思います。まず、事務局から本日の配布資料について説明をお願いいたします。

【齋藤主任学校教育官】 それでは、私の方から本日の配布資料について御説明申し上げます。
第4回の議事次第をごらんください。4ポツの配布資料の資料1から資料6までが配布資料でございます。それから、その下、参考資料は前回からアップデートしたちょっと厚めの資料でございます。そのほか、前回同様、卓上資料として参考の冊子等を用意させていただいております。過不足等ございましたら、事務局の方に御連絡いただければと思います。
以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。それでは、議題1、外国人の子供の就学の促進、進学・就職への対応についてのヒアリングに入っていきたいと思います。御発表者のプレゼンテーションの前に、事務局から本日のヒアリングの参考資料の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【齋藤主任学校教育官】 それでは、資料1及び資料2に基づきまして、本日のテーマに関わります参考のデータ、情報等につきまして、御説明申し上げます。
まず、資料1をごらんください。1ページ目を開けていただければと思います。まず、外国人の子供の就学機会の確保に関しまして、文科省から出しております通知の概要でございます。
前提としまして、外国人児童生徒の保護者が、自分の保護する子供を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望される場合には、無償で受け入れるという仕組みとなっています。このため、この通知にございますように、外国人の子供の就学機会が着実に確保されますよう、例えば、1つ目、住民基本台帳の情報に基づきまして、学齢相当の児童生徒に対して就学案内を通知すること、それから1ポツの3行目あたりでございますが、学齢簿に準じるものの作成の依頼、それから外国語による就学ガイドブックの作成等、多言語による就学案内を行うといったことを教育委員会を通じて各学校に求めているところでございます。
また、その下でございますが、自治体の住民基本台帳担当部署、福祉担当部署、これは具体的には子育て支援等の部署が考えられますが、それからハローワーク等と連携した適切な情報提供といったこと。それから、いわゆる郵便物や公共料金の支払の証明などの書類によって居住地を確認するといった柔軟な対応をお願いするようなことを求めているところでございます。
2ページ目をごらんください。こういった通知の実施状況の調査の結果でございます。通知に基づきまして、右上の円グラフでございますが、外国人児童生徒の在住しない自治体を除きますと、約9割の自治体が実際に就学案内の通知を行っていただいているということでございます。
それから、右下のグラフでございますが、関係機関との連携につきましても、住民基本台帳部署ですとか、福祉担当部署との連携には多くの自治体が取り組んでいただいていると御回答いただいております。
課題としましては、左下の円グラフでございますが、通知文の案内につきましては、日本語のみで通知されているところが7割以上ということで、多言語での対応について課題があると考えているところでございます。
3ページ目でございますが、そのほかに就学の機会を確保するための取組、文科省の補助事業の実施自治体における実践例ということでここに例を挙げさせていただいております。例えば、就学時健診時の戸別訪問、通訳の派遣、幼稚園と連携した就学ガイダンスを行う、それからプレスクール等々、就学促進のために様々な取組を行っていただいているところでございます。
もう少し個別の事例ということで、2例ほど挙げさせていただいております。まず4ページ目が、兵庫県の取組でございます。これは就学状況の調査を組織的に行っている例ということで、域内の市町村教育委員会、それから私立学校、外国人学校等との連携体制を構築していただいた上で、就学年齢にある外国人児童生徒等の在籍状況を把握していただきまして、それを通じて不就学の児童生徒の把握等の取組を実施されているといった事例でございます。
それから、5ページ目にも1例、これは後ほどお話が出てくるかと思いますが、浜松市の例でございます。こちらも転入時の就学案内ですとか、2か月おきの定期的・継続的な就学状況の把握等の取組に加えまして、就学に向けての教育相談、それから就学後の日本語・学習支援、初期指導等の取組を組み合わせる形で行っていただいておりまして、不就学ゼロという目標を掲げて実際に達成されており、組織的な取組の事例ということと理解しております。
以上が就学促進に関する参考情報でございましたが、6ページ目以降が高校進学等の情報でございます。1回目でも御紹介申し上げましたが、公立高等学校における入学者選抜における、いわゆる特別定員枠に関しましては、平成27年度は12都道府県の公立高校の入試において、外国人生徒の特別定員枠などの設定を行っていただいている状況でございます。
7ページ目に少し具体的な選抜の検査の科目等の例を挙げさせていただいております。これら特別定員枠における入試の方法につきましては、例えば、一番左のところを見ていただきますと、学力検査で面接や作文等を課しているケース、それから受験科目を限定、例えば国語、数学、英語などとした上で、問題へのルビ振りですとか、辞書の持込み等の配慮をしていただいているようなケースがあると認識しております。
8ページ目でございますが、こちらは中学卒業後の進路の状況で、外国人集住都市の8県29市町における調査の結果ということで引用させていただいております。外国につながる中学校卒業者の8割が高校進学を果たしていまして、3割が定時制、通信制という状況でございます。
9ページ目に、もう少し進学後の状況ということで紹介させていただいております。同様の外国人集住都市会議の調査によりますと、高校進学した生徒のうち45%程度が通常の授業の理解に課題がある。内訳としましては、全日制の高校では約3割、定時制の高校ですと、6割超の生徒にそのような課題があるといった状況のデータでございます。
以上、簡単ではございますが、就学、進学等に関する参考資料でございます。
引き続きまして、資料2でございます。今回のヒアリングを受けての議論の観点でということで、飽くまで御参考ということで御紹介申し上げますと、まず1つ目の外国人の子供の就学の促進に関しましては、例えば、就学前段階からのきめ細かな就学案内・就学相談をどのようにしていくべきかといった論点。それから、特に中学校への編入学者等の扱い等について現場で課題となっていると聞いておりますが、そこに関する就学促進の在り方、それから外国人児童生徒等の適応指導や保護者への対応ということで、様々なサポートの在り方、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、特別支援、母語支援等も含めた在り方をどうするべきかといったこと。それから不登校・不就学への対応といった点が挙げられるかと思います。
また、高校進学に関しましては、特別定員枠を含めました在留外国人に対する高校入試の在り方、それから入学後における日本語指導等の教育支援の在り方というのも課題になるかと思っております。
最後に、外国人児童生徒等の就職の促進でございますが、こちらも、そういった就職支援に当たって企業との連携等をどのように考えるかという論点、それから小中高を通じまして、外国人生徒等に対するキャリア教育ですとか、インターンシップ等をどのように考えていくのかといった論点等が、事務局として挙げさせていただいております。
以上、簡単ではございますが、資料1と2の説明でございました。

【佐藤座長】 ありがとうございました。特に資料2は後ほどの議論の際の参考にしていただければと思います。
それでは、予定しているヒアリングに入っていきたいと思います。本日、4名の方からのヒアリングを予定しています。資料3にヒアリングの御発表の資料が配られていると思いますので、御参照していただければと思います。ヒアリングはそれぞれ発表が15分間、その後5分間、ちょっとタイトでございますけれども、できるだけ時間厳守でお願いいたします。
では、初めに、主に中学校などにおけるNPOとの連携による就学促進の取組状況について、元国際移住機関(IOM)の駐日事務所の職員の山野上麻衣さんに御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【山野上氏】 ただいま御紹介にあずかりました山野上と申します。本日はよろしくお願いいたします。お手元の資料に沿って御説明させていただければと思います。
まず、パワーポイントの資料ですけれども、今回、就学促進事例についてということの中で特に高校進学の支援を中心にというお話でしたので、そこに合わせてレジュメを作りました。委員の方々から、各地の実践については御報告があるとのお話でしたので、かなり一般化した形で全体的な課題を把握するという形で作っております。
それでは、スライドの2枚目、タイトルの次のところですが、「はじめに」というところです。まず、外国につながる子供というのは、日本国籍の子も含めてこういう呼び方をしているわけですけれども、外国につながる子供のたどる道筋の多様性についてというところで、日本人の両親の間に生まれて、日本で育ち続ける子供たちよりも、外国人だったり、日本国籍なんだけれども外国で育ったりというような子供たちは、たどっていく進路の道筋がとても多様になります。
今回、高校進学というお話だったんですけれども、高校進学を含めて進路について考えるときに、いわゆる日本の一条校と言われる中学校から日本の高校への切れ目のない接続、つまり、中学校3年生から高校1年生に上がるという、そこだけを見ていると見落とす子供が多く存在するということは、前提として指摘をしておきたいと思います。
そして、今回、NPOによる支援という題で頂いているんですけれども、そういう制度に乗らないような子供たちこそ困難を抱えがちであって、制度の外にいるので学校がなかなか手を出せない子供たちですので、そういう子供たちほどNPOが一生懸命に支えてきたということをお伝えしておきたいと思います。ただ、学校における教育支援を中心に考える場というふうに伺っておりますので、ここでは中学校から高校への進学に限定し、個々のNPOの事例というよりはNPOと中学校との連携を中心にということでお話を伺っております。
次の3ページですが、これは先ほど申し上げたことを図式化しているものなんですけれども、小学校、中学校、高校から大学というところが赤い矢印で示されています。外国につながる子供の場合、母国との行き来があったりですとか、あるいはブラジル人学校に通う子供も一定数おりましたり、学齢を超過してから日本に来る子供もたくさんいるわけです。さらに、中学を出て1回就労してやっぱり高校に行きたい、そういう子供もおります。そういうふうに多様でありますが、真ん中の赤の丸を付けたところについて、今回は中心にお話をさせていただきます。
それで、データをざっと見ていきたいんですけれども。まず、4枚目のスライドの(1)高校在籍状況で、3年前に中学生だった子供の人数に対して、今、高校生が何人いるかというところで、中退者数が減ってしまうので全体では進学率より低い93.4%となっているんですけれども、この数字、外国人に関しては6割を切ってしまうという状況があります。
次のスライドの5枚目ですが、国勢調査のオーダーメード集計による国籍別のデータです。出身国によって高校に在学している率に差がある。左側の青い方が16歳、赤い方が17歳なんですけれども、国によっては16歳から17歳に掛けて高校在学率が下がってしまう、つまり、中退するということです。というような状況もこちらから把握できます。
3枚目、(3)全日制と定時制の進学者比率です。もちろん定時制が悪いということでは全くないんですけれども、一定の学力があって全日制に行きたいというお子さんも当然たくさんいる中で、全体を見ると、定時制進学者は2%ですが、外国人の場合、先ほど文科省の説明にもありましたけれども、3割程度が定時制ということになっております。
スライド7枚目です。こちらはいろいろ解釈が難しい数字ではあるのですが、日本国籍の子供に関するデータがとても少ないので一応載せておきました。日本語指導が必要な生徒数で、日本国籍のお子さんでも中学校には1、586人いて、高校に行くと332人になっている。ただ、こちらはカウントの問題等もありますので、高校に行けていないというそのままの指標にはならないんですけれども、御参考までに載せておきました。
以上のデータから読み取れることとしまして、外国人の子供は日本人の子供よりも高校に進学しにくい状況がある。そして、進学後、進学したからよかったと思っていたら、その後なかなか通い続けることが難しい子供も多く、在籍し続けるのも日本人の子供より難しい。そして、更に出身国によって進学率とか、在籍率ですとか、そういう状況が少し異なるのであろうということが読み取れます。
留意点を書いておきましたが、データには現れない子供もいますので、実際の数値としてはもっと低かったりするような可能性もあります。その点御留意いただければと思います。
次の9枚目ですけれども、それでは、なぜこのように高校進学や在籍に際して差が付いてしまうのかというところで、想像しやすいところでいうと、日本語で試験をするので日本語ができないと難しいというような言葉、言語の差異によるものですとか、あるいは母国のカリキュラムとの差異で、いきなり日本の歴史とか、日本の地理が出てくるととても難しいということもあります。それとともに、母国での学校教育の状況が日本ほどに整っていない国から来る子供もたくさんいます。そのことでなかなか学校に継続的に通っていなかったですとか、学習がきちんと続けられていなかったような状態で来日する子供もいます。
次に、子供、学校、保護者の三者それぞれのコミュニケーションの難しさと書きましたが、子供と学校ですとか、学校と保護者というのは言葉の面からも、いろいろな文化の面からも前提の違いからコミュニケーションを取ることが難しかったりもするんですが、子供と保護者の間でも時としてコミュニケーションが難しい場合もあります。それは、日本育ちの子供であったら言語的な問題であったり、日本で生活する中で、保護者が本当に大変な中で仕事をしていて時間がなかったりとかいろいろな状況がありますが、コミュニケーションが難しい中で、子供の方では、日本語が分からず友達が作れないですとか、授業に付いていけない、そして、それを親も分かってくれない、学校も分かってくれないというような中で、学習への動機付けも低下しますし、居場所がないと感じる子供も増えていきます。このように子供を取り巻くいろいろな要因に加えて、得てして外国人の御家庭、生活が不安定で仕事もなかなか安定しなかったり、収入も安定しなかったりというようなところから派生する見通しの立たなさというのもあって、仕事があれば日本に残りたいんだけれども、でも、仕事がどうしてもなかったらもう帰るしかないかな、じゃ、高校は行かなくていいかなというようなことで迷ってしまったり、子供の方が自分が働いて家計を助けようと考えるようなこともあります。
このようなことに加えて、いろいろな家庭があって一般化は難しいんですけれども、保護者の方が進学をサポートするための情報がなかったりだとか、教えてあげるということもできなかったり、誰に助けてと言えばいいか分からなかったりですとか、そういうところから来る差もあります。このようなことから総合的に見て、外国人の子供や外国につながる子供は、高校入試という壁を乗り越えることが難しくなっているのだろうと考えられます。
次に、なぜ学校とNPO等との連携なのかというところですけれども、学校というのは、これはもちろん学校が悪いといっているのではなくて、学校とはこういうものであるというお話なんですけれども、学校はある年齢の子供に決まった内容を身に付けさせることを目指す場であり、一定年齢に達したら卒業して、替わりに新入生が入ってくるという場です。また、ちょっと例外はありますけれども、原則として学区の子供が対象になるので、学区の子供向けの取組を行うことになります。
対照的に、NPOは組織としてこれが大切だと思っていてこれをやるというミッションに適合すれば比較的何をやってもいいし、小さな規模でも動き出せるような機動性というものがあります。そして、年齢に関わらず、地域で長く子供たちと付き合い続けられるので、就学前のこの子供の様子を知っていたりだとか、中学校を出た後のその子供の状況をずっと知っていたりだとか、地域でのお付き合いという強みがあります。そしてまた、学区や行政区域に縛られないので、小さな市がたくさんあるところで、拠点となってたくさんの市の外国につながる子供のケアができるというような強みもあります。こういうことから、学校では対応できないことでも、NPOなどなら対応できる可能性があるかと思います。
11枚目の(8)NPO等の果たしてきた役割ですけれども、まず第一に学習支援ですとか日本語指導を学校の外で行う場合と、学校と連携していろいろなやり方があります。こちらは分かりやすく学力ですとか、日本語力、成績を上げることを目指したもので、居場所ですとか仲間を学校の外で作る、特に学校には外国人の子供は余りいないんだけれども、そこに行けば同じような立場の子供と会えるというようなところを作ることによって、子供たちの気持ちを支えるような機能もあります。
そして、例えば、多言語による進学ガイダンスのような進路を選択するための支援ですとか、多言語による情報提供、あとは、ロールモデルと書きましたが、こういうふうになりたい、こういうふうになれるというような先輩のお兄さん、お姉さん方の姿を見せていくということも、NPOはかなり前から積極的にやってきたと思います。ロールモデルというのが、子供にももちろん必要なんですけれども、保護者の方も「ああいう子が高校に行けるんだったらうちの子も行ける」と思いますし、学校の先生方も、「外国人でも日本語が今のところこれぐらいでも高校に行けるんだ」と思うようなところがありますので、ロールモデルの提示は、子供にはもちろん、保護者や学校に対しても必要なものであろうと思います。このようなことで、見通しを立てるための支援ですとか、あるいは先ほど申し上げたなかなか言語的なことですとか、いろいろ言葉も気持ちも通いにくいところで子供、保護者、学校をつなぐような機能も果たしてきました。
あとは、アドボカシーと書きましたが、NPOの方で何が足りないのかというのを当事者に変わって発信するようなことというのもかなりされてきたかと思います。学校の中ではちょっと見えにくいんだけれども、この子供たちはこういうことが必要なんだという支援の必要性ですとか、あるいはこういうふうにすれば支援できるというようなやり方の提示もしてこられましたし、あるいは高校の特別入試枠の設置拡充運動などに関しても、いろいろな地域でNPOが訴えてこられ、それなりの成果も上げてこられたという歴史があると認識しております。
それで、(9)からは連携の在り方のパターンという、かなり一般化した、抽象化した話です。4つの象限に分けて考えていければと思ったんですが、いろいろな地域の差がある中でどのようにNPOとの連携を考えていけばよいかというところで、それぞれの地域の特徴を学校の中の資源がたくさんあるところ、ないところ、あるいはNPOなどに代表される学校の外の資源の差がたくさんあるかないかというところで、4つの象限に分けております。ここでは、資源というのは目的のために動ける人や組織ですとか、目的を達成するための情報、知識やスキル、情報を得られるネットワークなどを想定しています。
次、13枚目のスライドに参ります。最初に、学校内外に資源がある場合。学校の中でも特別な手当があって、加配された先生がいたり、通訳がいたり、同時に学校の外にもたくさんのNPOが活動されていたり。資源がある場合、これは恐らく外国人が集住している学区だと思われまる。これは、連携がうまくいけば、相乗的な効果が期待されて、子供たちはとても伸びると思うんですけれども、ただ、丸抱えとか、丸投げとか、連携のときに課題になるようなリスクがないわけではないかと思います。こういう場合は、連携のための調整が最大の課題となります。前提の違いを学校とNPOが互いに理解して尊重できるかどうかというところが鍵になります。
次のスライドに参ります。次は、学校の中だけに資源がある場合というのを想定しまして、学校の中でもそれなりに何とかなっている場合、つまり、学校が結構頑張っていらっしゃるようなところを想定しているんですけれども、ただ、それでも学校だけでは対応できないニーズというのがたくさんあるかと思います。こういう地域ではこういうニーズが必要だと見えているのであれば、そのニーズに応じて資源をどう創出していくかということが最大の課題になります。外から見て学校がやるべきことを学校の外でやってくださいというと反感を生むようなことにもなりますので、子供とか保護者にとって、どういうことがもっと必要なのかという目線に立ちながら、学校の外でこういうことも必要だということを考えていければいいのではないかと思います。学校の先生方が、学校の外でこういった資源を作り出すような事例もいろいろと聞いております。
次に15枚目のスライドなんですけれども、学校の外だけに資源がある場合ですが、これは例えばですけれども、外国人、うちの市には多いんだけれども、うちの学区には3人しかいませんというような学校、結構あると思うんですけれども。そういう場合、学校の中では特別な手当がないんだけれども、隣の学区ではNPOが活動しているということがあったり。あるいは外国人が結構いるんですけど、規模が小さめの数万人とか、そういう自治体が集まっているような地域だと、率で見ると結構高いんだけど絶対数では結構少なくて、学校に特別な手当をそんなにできないというような自治体がたくさんあるような場合は、地域の中でNPOが行政区を越えて活動されているところがあると思います。こういう場合ですが、学校はNPOが頑張ってくれているからあそこを頼りにしようということで、外国人の子供について非常に丸投げになりがちです。こういうところでは、外国人が入りやすい高校はどこだということも、学校よりもNPOの方がよく知っていることがあるので、なおさら、じゃ、あちらにというふうになってしまって、学校内の資源、余力ですとか、手のすいている先生がいないですとか、関連情報がない中で、学校の関わりをどう生み出せるかというところが最大の課題になるかと思います。こういう学校だと外国人の子供はその子の担任の先生だけが気にしているような状況があったりもしますので、大変だけれども学校の外の資源とどうつながっていこうかという検討を重ねる中で、学校の中でも情報共有につながっていく場合もあるかと思います。
16枚目ですけれども、どこにも資源がない場合です。学校の中にも資源はなく、学校の外にもない、これは恐らく広域で見ても外国人が余りいないような散在地域が想定されます。こういうようなところでは、そもそもニーズに気付かない学校もあると思いますし、地域からもニーズは見えにくいです。あるいは学校の先生方が外国人の子供だから高校には行けなくてもしようがないよねと、どこかのところで諦めてしまうようなことが多いのではないかと思われます。こういった場合、諦めずに最初の一歩をどうにかしようと思えるかどうかというところが課題だと思います。他地域の資源をうまくかりてくることから、IT化の恩恵などで、例えば、インターネットで日本語の授業を配信するような試みを進められているNPOがあると聞いているんですけれども、つながり合うことであれば、いろいろSNSなどを使うこともできますし、こういう地域で子供たちももちろんですし、保護者も先生方も孤立させないためには何が必要かというと、その地域の人が頑張るというよりは、その地域に向けて周りからどれだけ発信ができるかというところではないかなと考えます。
最後、17枚目のまとめですけれども、こちらは総括になります。日本ではほとんどの子供が高校に進学し卒業します。でも、その中で外国につながる子供に関しては高校に進学したり、卒業したりということが難しい現状があります。さらに、そういう子供たちのための具体的な支援に当たって利用できる学校内外の資源には地域差があります。それは現実としてあります。ただ、その地域差があるということが、子供たちの取り得る進路の差、進路の制約となって表れてはいけないというふうに考えます。もちろん、財政支援を含めて教育行政ももちろん含め広域の行政の課題でもあるんですけれども、せっかくNPOという問いの立て方をしていただいているので、市民社会の課題としても考えていければと思います。地域の現実から出発しながらも、いろいろな資源をうまく活用しながら、子供たちの進路をどう保障していけるのかを考えていければと思います。こういうときに、やはり、目指すのは子供たちの最善の利益であるというところ、ここを一致して目指していけるといいのではないかと思います。
以上です。ありがとうございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。ヒアリングの中身に関わる議論は、後ほど一括でお願いしておりますので、現時点で何か確認すべきところ、あるいはちょっと分かりにくい、実際の現実のデータであるとか、そういうところで分かりにくいようなところがあれば今お伺いしますけれども、いかがでございましょうか。よろしいですか。
それでは、非常に興味深い発表ですので、後ほどまた全体的な議論を展開していきたいと思います。
続きまして、2件目のヒアリングでございます。高校での学力保障に向けた取組について、高橋清樹委員の方からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【高橋委員】 高橋です。よろしくお願いします。私は、高等学校における学力保障に向けた取組という10ページからのパワーポイントのシートに従って説明をさせていただきます。
高校での取組の前に、神奈川県の高校入試制度について御説明をしたいと思います。神奈川県の高校入試制度は、在県外国人等特別募集という、滞日3年以内の外国籍を有する、又は日本籍を取って3年以内という条件もありますけれども、そういった特別募集枠があり、10校で現在119名の募集定員を持っています。それからもう一つ、海外帰国生徒特別募集という、海外で2年以上という条件で、6校で募集定員が70名という特別募集があります。
特に特徴的だと私が思っているのは、シートの3枚目になりますけれども、在県外国人等特別募集という神奈川の募集方式、これは他県でも余り数は多くないと思いますけれども、募集定員がはっきり決まっていて、そして、その中で、原則、定員内不合格の禁止という規則があります。これは、例えば、定員をオーバーした場合は定員まできっちり合格者を出すということと、逆に、定員の中で定員が収まった場合は原則全員合格ということで、これにより自動的に日本語ができない生徒も高校に入ってくるということがあります。これは、もともと20年ほど前に、神奈川県がノーマライゼーションの1つとして、定数枠があるに関わらず、その中で希望する生徒を不合格にするのはどうかということがスタートで、やはり、チャンスを与えるべきだろうというところから始まったものです。入った後、当然、入った子については対応をしなければいけないということから、日本語指導が高校の中でもきちんと位置付けられているというふうに思っています。
その結果、4ページにありますように、一時、震災で受験者数が減ったんですけど、今年は非常に受験者数も多くて150名を超えるような状況になっています。
そして、12ページの上のところですけれども、高校の外国人生徒数もどんどん増えている状況です。訂正が1箇所あります。12ページの上の5番の公立高校の全日制・定時制となっていますけど、これは私立も含まれていました。公立、私立の全日制・定時制の人数ということで御訂正をお願いします。
それから、12ページの下は、かながわ国際交流財団が、昨年の3月の中学校を卒業した国際教室に在籍する生徒の100%に対して、教育委員会に協力いただいて出た調査結果です。それを見ますと、251人のうち全日制が47.4%、やはり、定時制の割合が必要に高くて28.7%というような状況になっています。右側にある全中学校の生徒と比べても、定時制が多いというのが歴然かなと思っています。
続きまして、13ページのところから、入学後の支援、取組についてお話しさせていただきます。一応、4つの項目に分けていますけれども、まずは外国人生徒の授業支援、外国人生徒への授業以外の支援、それから日本人生徒との関わり、学校外での支援というふうに4つに分けました。まず、外国人生徒の授業支援につきましては、先ほど申し上げた経過から、特に特別募集枠の学校では日本語支援、日本語の授業が定着しております。
13ページの下には、3つの項目として授業支援を挙げています。日本語学習の授業の設置、一般教科の個別対応授業の設置、それから全体も含めた一般的な教科指導の取組。
14ページをごらんください。14ページの上の段は、私が昨年3月まで勤務していました相模原青陵高校というところでの特に日本語と個別対応授業の年次ごとの経過として設置しているものをお示ししました。日本語の授業は、国語とは別に設置するという形を取っています。それから、個別対応授業も基本的に1年生は手厚く。それから、基本的には個別対応授業から一般クラスに戻るということを目標にしていますので、年度の途中でも順次教員の方で相談して戻すという形を取っています。ですから、設置はしていますけれども、生徒によっては1年次から一般クラスに入る生徒もおります。
一般教科での取組というのが14ページの下になりますけれども、一般教科での取組が一番重要になってくるというか、先生方との取組の共有化ということをしていかないと。外国につながる子供が目の前にいて、自分だけで一体どういう指導をしたらいいか、ということで試行錯誤しながらやっている先生が多いと思うんですけれども、これを全体共有していくということが大切かなと思っています。ここは例示を挙げていますけれども、例えば教材の工夫では、本当にいろんなことが考えられると思います。
それから、授業での工夫というのが右にありますけれども、私が授業を担当して特に感じるのは、日本語教育と教科指導のところをつなぐ、意識させる取組として、発話を促すというのが非常に重要だということです。子供自身は問い掛ければ自分の文化であるとか、自分の持っている考えとかを何とか日本語で表現したいという意欲がすごくあるんです。授業の一方通行というか、黒板に書いて説明するような授業だと、生徒はなかなか理解できない状況にありますから、常に対話を意識したり、発話を促したりするような授業というのは非常に効果的だと思います。それからあとは、一般クラスに入ったときに、日本人生徒との取組の中で、グループ学習とか、説明した内容が本当にどこまで理解できているかというところで、ディクテーションを最後に取り入れるということでも非常に効果的だと思っています。
それから、最終的にこういった取組を学校の一教員だけでなく、学校の教員の全体で共有しつつ、なおかつ地域の支援者とつなげるために、学校内で公開授業をやったり、研究会、セミナーをやったりするということが非常に大事だと思っています。1つの例として、相模原青陵高校では毎年夏休みに教員研修を兼ねて地域向けのセミナーを行っています。それが15ページの上になります。
それから、授業以外の支援としては、まず、在留把握をしっかりして、いろんな生徒の状況に応じてきちんと情報を持っておく。本名についても、きちんとした本名を把握しないまま、例えば、指導要録とか、大学に進学する際の調査書に通称名を書いたために、大学から在留カードと違うじゃないかと問合せがあって、もめたケースがあります。そういった意味での把握は大切かなと思っています。
それから、通訳支援制度は、神奈川県の場合には、各学校を年に10回から30回ぐらい保護者面談のための通訳、それから合格者説明会のための通訳、学校説明会のための通訳等を県の教育委員会が派遣するシステムがあります。
それから、翻訳資料ですが、ちょうど就学支援金の翻訳を神奈川県と当NPOで行っていますが、そういったものも提供しています。
それから、県と協働して神奈川県独自の多文化教育コーディネーター派遣制度を行っています。これにつきましては、次の13ページに多文化教育コーディネーター、現在16校にコーディネーターを派遣し、各学校と協議しながら、その学校の持っているものを生かしつつ、足りないものをコーディネーターがコーディネートしながら生徒の支援に当たっています。
それからもう一つ、日本人生徒との関わりというのが、私としては大事な視点だろうと思っています。多文化共生教育の推進ということで、各学校が取組を始めたばかりという部分もありますけれども。例えば、相模原青陵高校で多文化共生科目を設置していますけれども、16ページの下にあるように、日本人の生徒が授業の中で外国人生徒に自分から聞き取りをして、今困っていることはどんなことかとか、文化の違いを感じていることはどんなことかということをヒアリングして、そして、国際理解発表大会に発表したということがあります。優秀賞を頂いております。
それから、17ページの上の座間総合高校の国際フェスタの取組という、これは、特徴的な活動として御案内したいと思います。座間総合高校は、日本人生徒は日本語以外、外国人生徒は母語以外の言語を使って発表する国際フェスタを学校行事として年1回行っています。ですから、中国語選択者は、日本人も中国ルーツの子もいますけど、こういった表現活動をしたり、それから、外国人生徒は日本語でのスピーチ、日本人生徒はフランス語や中国語の劇をやったり、英語でスピーチしたりということで、同じ立場でそういった発表活動を学校全体で取り組むというのは、日本人生徒、外国人生徒の壁をなくす非常に有効な活動ではないかと思っています。
それから、学校外での支援については、3つのケースを御紹介したいと思います。18ページと19ページです。18ページの上は、高校、大学とNPOが連携して取り組んでいる多文化学習活動センターで、ここに学校外の学びの場として行っているところです。文化庁の「生活者としての外国人」に対する日本語教育事業の委託を受けて継続して行っています。中学校、高校から、更に大学、社会人まで、継続した支援をする場として、若者、それから大学生のボランティアが集まって活動しています。おとといの土曜日も40名以上の若者が来て、スタッフが20名以上参加し、そういった場が求められているんだなと思っています。
それから、18ページの下はキャリア支援の1つですけれども、保育園に体験、見学活動というのを行っていて、YMCAいずみ保育園というのは外国ルーツの方が職員として働いている場所で、外国ルーツの子供たちも非常に多いというところで、4名の高校生が見学と体験に行って、直接そういった保育士の方に話を聞くような機会を設けることができました。
それから19ページは、若者交流としてフェスティバルを3月26日に予定しています。
19ページの下にあるように、在県外国人等特別募集で入学した生徒が卒業時にどういう進路をたどったかという調査をしたものがありますので、そちらを載せましたが、見ていただくように、意外と大学に入る率も高いんですけれども、その他というところも割合が高いという特徴を示しています。
実は、その他というのが、私たちが今課題に思っている点ですけれども、いわゆる在留資格が家族滞在で来ているお子さんが一定程度いらっしゃるんです。多分、2割、3割いらっしゃって、その方たちの親の在留資格に伴うものですから、就労制限があって高校を卒業した後、正規就労に就けないとか、奨学金が受けられないという状況で、そういった子供たちが非常に将来の選択でなかなか厳しい状況に置かれています。私どものNPOと県の教育委員会と弁護士会と今共同で、そういった家族の新たな、例えば定住とか永住の資格を取ったり、本人が自分から在留資格を国際とか、そういったものに切り替えたりするようなことができないかという相談活動もしております。 20ページ、まとめになりますけれども、幾つかの視点でグローバル人材の育成ということの視点を挙げさせていただきたいと思います。特に20ページの下、22番目のスライドになりますけれども、学校教育の場では、残念ながら、多くの先生方が外国につながる子供がいるというか、来るということに非常に負担感をお持ちになっていて、困った、大変なことが起きてしまうというような感覚を持ちかねない状況があります。支援体制が不足しているとか、どうしても外国につながる子供が集まる学校は、よく言うせりふなんですけど、日本人も大変なんだからみたいなことを言う先生も多くて、非常にマイナスのイメージをお持ちなんです。それというのは実は子供たちにもいい影響を与えない、周囲の日本人の子供にもいい影響を与えないというふうに思います。これは発想の転換というか、教育というのは育てるものであるという観点に立てば、逆に外国につながる子供がいるというのは、先ほどの発話を求めることからもそうですけど、刺激的な授業ができたり、コミュニケーションが豊かになったりということで、考え方によっては面白いことばかりというふうになると私は思っています。そういったことがグローバル人材、これは、外国につながる子供だけじゃなくて、日本の子供にとってもそういった場をきちんと作っていくということが大事ではないかなと思っています。
あわせて、大学でのバイリンガル教育とか、企業とか、そういうところと連携したキャリア支援というものを継続的に展開できたらいいかなと思っています。
以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございました。何か、どうしてもということがありましたら。どうぞ。

【高田委員】 愛知の高田です。スライド4のところで1点だけお聞きしたいと思います。
原則、定員内不合格の禁止ということで、2016年119名の募集人員ということで御説明がありましたけれども、このグラフの見方について。募集人数に対して受験者数、合格者数とありますが、合格者数が募集人数より若干減っているように思われますが、そのあたりの読み取りについて少し教えていただければと思います。

【高橋委員】 募集定員は119名なんですけど、それは学校ごとに10名であったり、20名だったり、15名だったりするものですから、例えば、10名枠のところに15名志願すると、その学校は5名不合格になるんです。それで、10名のところに例えば5名しか受験しなかったところは結果的に合格者5名となります。ですから、119名全員埋まるというわけではない。残念ながら、募集が定員に届かなかった学校が今年の場合は2校ありました。
以上です。

【佐藤座長】 それでは、次に移らせていただきます。きょう3組目のヒアリングとして、まずはキャリア形成につながる支援の在り方について、池上委員に御発表いただき、続きまして、きょう、静岡文化芸術大学の文化政策学部国際文化学科4年の宮城ユキミさんにおいでいただいておりますので、御自身の経験なども踏まえながらお話をお願いしたいと思います。それでは、池上委員、宮城さん、お願いいたします。

【池上委員】 池上でございます。私は宮城の話の前座のような扱いですので、5分ほど時間を頂いてお話をさせていただきます。
資料22ページからスライド8枚分、参考資料も含めてこれが私の話で、関連する資料として、26ページから31ページまでは浜松市教育委員会にお願いをして、きょうのこの会議のために少し情報を編集していただいた資料です。それにも若干触れながら話をしていきたいと思っております。
私の話はこの後宮城がする話の背景を説明するという位置付けになります。日系定住外国人の第二世代が今大学に少しずつですが、確実に入り始めて、特に浜松においてはそういった学生たちがある種のグループというか、集団を作って発信を始めている。その発信は日本の社会へ向けてであったり、あるいは保護者たちへ向けてのものであったりします。非常に先駆的な取組が浜松で始まっている、その背景を簡単に御紹介します。
22ページの下のところ、1番、ブラジル人第二世代の進学ということで、幾つか先行研究を踏まえて概略をお話しします。
2000年の国勢調査のオーダーメード分析をした研究によれば、2000年当時、ブラジル国籍の高校在学率は極端に低く、大学についてはほぼゼロです。ところが、先ほど山野上さんも言及していた2010年国勢調査のオーダーメード分析では、ブラジル国籍でも大学進学を果たす者が確認できます。夢ではなく目標として大学進学を志す時代が、ブラジル人についても到来したんだというコメントがこのペーパーの中では記されています。
静岡県教育委員会の非公開資料によれば、きょうはさすがに非公開なのでここに持ってきてませんけれども、県内の進学校、いわゆるエリアトップ校というようなところの全日制にも、ブラジル籍の生徒が在籍し始めているということが確認できます。
静岡県西部地域は、言うまでもなく外国人の集住エリア、とりわけブラジル人が多いところですけれども、私どもの大学を含めて、そのエリアではブラジル人大学生の在籍の情報が聞こえてきます。しかし、大学においては、在籍状況の制度的・体系的な把握はなかなか困難で、どこに何人在籍という明確な情報はなく、在籍状況は伝聞系、あるいは経験的なものから裏付けするしかないという状況です。
また、参考のところに書いてありますが、ブラジル人学校出身者でも日本の大学に進学する傾向が若干ですが見られるようになってきております。
次に、23ページの上です。浜松市における教育の現状と取組というところなんですけれども、外国籍の児童生徒の53%がブラジル籍になっています。27ページをごらんいただけますでしょうか。下の円グラフを見ると53%がブラジル籍、一方、フィリピン籍の子供たちも増加していることがお分かりいただけると思います。また、28ページの折れ線グラフをごらんください。日本生まれ・日本育ちが増える傾向がありまして、2014年4月の小学校1年生については、何とほぼ7割が日本生まれ・日本育ちです。
浜松では、市立高校にインターナショナルクラスがありまして、進学を目指す教育を行っています。きょう、この後話をする宮城も、そのインターナショナルクラスに入学しました。
市内2か所でステップアップクラスといって、外国人中学生のための日本語・学習支援が進んでおります。31ページにそのことが書いてあります。今、ステップアップクラスには私どもの大学の学生たちなども支援に入っておりますし、ブラジルなど外国につながる大学生が弟たち、妹たちの世代を支援するというような枠組みも始まっています。
今一度、23ページにお戻りいただけますでしょうか。私どもの大学は、静岡文化芸術大学という大学ですけれども、静岡県が浜松市に設置した大学で、2010年に県立の大学になりました。まだ開学15周年の若い大学です。芸術大学と付いているんですが、いわゆる芸大ではございません。文化政策学部とデザイン学部があって、文化政策学部の国際文化学科には日系ブラジル人の教員もおります。また、日系ブラジル人の准研究員もおりますし、現在、十数名のブラジル人第二世代の学生が、1学年定員300人のところに在籍しております。
続いて、24ページをごらんください。本学における南米系の第二世代の学生たちの増加の様子がその表からお分かりいただけます。2010年代になって複数が入ってくるようになってきました。また、そういった学生たちは地域活動の担い手としても活躍しております。例えば、24ページ下の5番、バイリンガル絵本プロジェクトですけれども、これは、デザイン学部を卒業したブラジル人学生が、自身の経験も踏まえながら、小学校に編入、あるいは入学してくる子供たちが日本の学校に入ってみたいな、楽しそうだなと思うような絵を付けたバイリンガルの小学校導入絵本です。この絵本を使って、本学の学生たちが家庭訪問をしてヒアリングの調査を行いました。保護者にとってはブラジル人の子供の日本での教育達成の具体例を知る機会になりました。保護者にしてみれば、大学に進学したブラジル人の学生とじかに接することができる貴重な機会を得ることになりました。また、子供たちにとってみては、ロールモデルとの出会いが学びの動機を高める、ロールモデルのデリバリーというような枠組みをここで考え出しました。そして、大学生自身にとっては、自分の持つバックグラウンドの社会的意義を実感し、エンパワーメントの機会になるというような、こういう実践的な研究活動なども展開しております。
25ページの上をごらんください。ブラジル人第二世代の格差拡大のモデルということです。きょう、これからお話を聞いていただく宮城は、このうちの上のところ、大学に進学し、語学力や異文化適応能力を生かして、大企業の総合職として活躍するグローバル人材であります。けれども、下のところに書いてあるように、日本語はおろかポルトガル語も中途半端な一方、日本での生活になれて、親世代が従事していた重労働に耐えられずバイトでつなぐ底辺層も現れております。ポルトガル語でもなかなかコミュニケーションが難しいという世代も現れてきていて、私たちとしては上下に伸びただ円形を少しでも上の方に比重が高くなるような支援をしていきたいなと思っております。
私からは以上です。どうぞ。

【宮城氏】 静岡文化芸術大学の宮城と申します。よろしくお願いします。
前半部分は私の経歴と小中高校時代の日本語指導や支援について話をして、最後には、そこから見えてきた4つの部分をお話しさせていただきます。
1枚目のスライド、経歴ですが、ブラジルのサンパウロ州で生まれて、2005年、10歳のときに家族と来日しました。そのとき、日本語は全く話せませんでした。
当時、来日目的はいわゆる出稼ぎでした。私たちも3年のみ滞在予定で、その後帰国する予定でしたが、家族も私も日本になじみ、現在日本11年目です。母は日系ブラジル人2世、母の両親も日本人です。父の方は日本生まれで、2歳のときにブラジルに渡りブラジルで育ちましたので、私の国籍は日本になり、家庭の中では全部ポルトガル語です。文化もブラジルの文化の方が多いです。その後、日本の公立の小中高で教育を受けて、現在、静岡文化芸術大学に至ります。4月からは日本企業へ就職します。
では、小学校時代について話をしていきたいと思います。来日後、小学校6年生に編入しました。このときは4月からの編入で、事前に準備説明を受けました。そのとき、ピアスを付け、ネイルをして、髪を染めていました。それは全部駄目と言われて、文化の違いをそこで感じました。さらに、習字の授業や音楽の授業、あと体育で水泳の授業があるということは私にとって今まで経験がなかったことだったので、それも文化の違いで戸惑ったことがたくさんありました。習字の時間では1人だけ筆を持っていなかったので、友達に借りました。
そのときは、日本語が本当に全く理解できていませんでした。おはよう、ありがとう、さようならしか自分の語彙にはなかったです。そのときに、国語と社会の授業で取り出しスタイルで一から、いえ、ゼロから日本語を学びました。別の教室で、平仮名、片仮名、ドリルを使って1年間で1年生から6年生の漢字を一通り終わりました。毎日出る宿題、小学校のときには「本読みカード」という本読みをしなければいけないものと、書き取りが全クラスに課せられていて、私もそれをみんなと同様に行って提出をしていました。ただ、そのときは取り出し教室の先生が出してくださった漢字は、みんなと同じ6年生の漢字ではなくて、小学校1年生とか小学校2年生の漢字と、教科書は小学校2年生の教科書から本読みをスタートしていきました。
小学校1年間だけ行って卒業して、中学時代には、日本語教室へ通うことを勧められました。しかし、私、そのときはすごく嫌だったので断りました。その理由としましては、月曜日と水曜日の午後の授業を全て休まなければいけない状態が、自分にとっては、ほかのクラスのみんなと比べて特別過ぎる扱いだと感じてしまって、1人で頑張るということを決定していました。さらに、運動部に所属していまして、部活動で日本の上下関係とか、敬語とか、日本の先輩後輩という概念をそこで学んだので、教室へ行かなくてもリアルな体験をすることができました。
しかし、日本語を覚えていく一方で、使用頻度がすごく減少した母語であったはずのポルトガル語の衰えをすごく感じました。例えば、ブラジルにいる親戚にメールを送るときに、あれ、このスペルってこうだっけと母に一々確認したり、買物リストでポルトガル語の単語が出てこなかったりしたことが自分にとって衝撃でした。それを受けて、ポルトガル語も日本語もどっちも中途半端になるよりも、せめて母語であるはずのポルトガル語で義務教育をちゃんと終わらせたいと思って、中学卒業後にブラジル人学校に通い、日本の高校へ進学をしない予定でした。
しかし、中学の三者面談のときにそのことを担任の先生に伝えたところ、「あなたここまで頑張ったなら、それはもったいない」というふうにおっしゃってくれたんです。でも、浜松市の高校にちょうど、先ほど池上先生の紹介にもあったように、インターナショナルクラスがありました。外国籍を有する者が所属でき、普通課程に加えてポルトガル語課程を学ぶことができるインターナショナルクラスです。その存在を知って、進学校でハイレベルな高校でしたので、内申点や合格するために必死で勉強して、何とか無事合格することができました。
1年生だけ少人数クラス、5人、10人程度のクラスで、2年生、3年生からは一般クラスに交ざって勉強を行ってきました。そこで、同じ苦労をしてきて、大変な思いをして高校に入ってきたという自分と同じ境遇の仲間に出会いました。そして、それとともに、高校進学を果たした自分たちの存在がすごく希少であったことを初めて知りました。みんなが高校へ行けるわけではないというところが衝撃的で、自分のこの経験を生かして何かできることがあるのではないかなと思って、大学進学を目指そうかなとこのとき思いました。
しかし、経済的に私立へ行くお金はなく、絶対的に国公立の大学でなければいけない状況で、自分はセンター試験を越えて日本人と同じ土俵で戦えるかどうかがすごく心配でした。さらに、入学費とか授業料など、外国人でも受けられる制度があるかどうかというのがとても心配でした。大学進学を果たした先輩や学校の先生から様々な情報を得て、今の大学に進学することができました。大学では自分にしかできないことをモットーに様々な活動に携わってきました。
次のスライドで私が行ってきた活動を紹介しています。どうぞごらんください。
このような経験を経て、私は4つのことを考えました。それが以下の4つのスライドになります。1つ目は、自ら企画、実行することの大切さです。浜松市では外国にルーツを持つ若者が自ら企画して、自ら運営していく企画が最近できてきました。1つは大学で行ったもの、2つ目は浜松市の国際交流協会の協力の下、行ったものです。
1つ目、左側にあるFesta Julina na SUACというものは、ブラジルの伝統的な祭りを大学でやってみたいというブラジル人学生の声から実現しました。そこで実際に大学の特別イベント費を得て、実行員メンバー25人中8人がブラジル人、あるいはブラジルにルーツを持つ学生が携わってきました。誰かが企画したイベントに参加するのではなく、自分たちで企画、実行して、自分たちの仲間を呼ぶことが実現できたと思います。
更にもう一つ、COLORSというものです。浜松周辺で活動する外国にルーツを持つ若者グループで、学生に限らず社会人の方も参加しています。現在の主な活動は出張カラーズといいまして、ここでは定時制高校へ出張して、自分のルーツ、日本での暮らし方とか進学、就職について、アクティビティーを通して高校生へメッセージを発信しています。ここでの大切なことは当事者から当事者へ伝えていくことなのではないかと思います。
2つ目、活動を通して私が感じていることは、親への啓発の必要性です。ブラジルで育った自分の両親は、様々な日本制度を知らないんです。例えば、部活動。夜遅くまで部活、7時に帰ってくる、土日で家にいない、練習試合がある、送り迎えをしなければいけない、弁当を作らなければいけないということへの理解がまだ足りないと思います。さらに、受験。受験準備で進学校、定時制高校への認識の違いがあります。ブラジル人の私の両親は進学校とそうではない工業高校や商業高校の違いを知らなくて、どこでもいいんじゃないかというのが実際のところ多いですし、私が家庭教師をしていた家庭もその考えでした。
さらに、定時制高校、ここで批判をしているわけではないんですが、ブラジルでは定時制高校は働きながら勉強ができるとして立派な学校なんですが、日本ではそうではない場合が多いように感じます。
もう一つ、大きな違いは就職です。新卒ブランドを日本はとても重視されています。更に履歴書の書き方、今はエントリーシートの書き方であったり、自己紹介、自己PRの書き方を私の両親は経験していないので、そういうことについて、子供への指導であったり、アドバイスをできない場合が多いと思います。自分の親のように、そのことを経験した親がほかの親への情報を提供する、あるいは収集する場が必要なのではないかと思います。
3つ目ですが、自分のルーツを認めてほしいということです。先ほど、特別扱い過ぎることが自分は嫌だったということを言いましたが、外人、外から来た、みんなと違うというふうに扱われるのはすごく嫌でした。ただ、自分のルーツを認めてほしい気持ちと相反するものかもしれませんが、例えば、外国人だから宿題はやらなくてもいい、テストは0点でもいいという扱いではなく、日本語もポルトガル語もできてすごいね、であったり、日本語は分からないのによく宿題やってきたねという、認めてほしいのはそこの部分だと思います。
同じ日本社会の中で1人だけ特別扱いをされてしまうことで、外国人であることや自分のルーツを隠してしまう。私はブラジル人ではなく、私は日本人だというアイデンティティーの問題ともなってしまうんですが、そこがあるのではないかなと思います。
また、自分が違う文化、ルーツを持っていることに誇りを持ってほしいと思います。ただ、指摘もあるように、外国にルーツを持つみんなが母国の言語とか自分の国のこと、文化を知っているとは限らないです。
4つ目、最近とても感じていることは、母語や継承語の大切さです。自分自身、就職活動を経て経歴を話しますと、ポルトガル語を話せますかというふうによく聞かれます。自分は自信を持って、「はい、話せます」と答えますが、言語へのニーズも今の社会において多いのではないかなと思います。また、母語、継承語を話すことによって、親とのコミュニケーションであったり、アイデンティティーはもちろんのこと、21世紀のグローバル化時代におけるバイリンガルのニーズはとても高いと思います。ただ、日本生まれ・日本育ちが増える中、母国の言葉、継承語を話せる子供はとても少ないように感じます。
よって、母語、継承語支援を増やす必要があるのではないかと思います。NPOや地域との連携によって、例えば、浜松市などで母語教室、継承語支援教室が行われております。バイリンガルな人材は日本にとっても大きな資源になるのではないかと感じております。
以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございました。様々な意味ですばらしいプレゼンを聞いていただきました。本当にありがとうございます。何か、ここでどうしても確認したいことはございますか。どうぞ。

【菅原委員】 ありがとうございました。学芸大学の菅原です。
1点確認させていただきたいのですが、市立高校のインターナショナルクラスですけれども、1年次のみの特設学級で、2年次からは日本人の生徒さんと同じクラスに交じるというふうに考えてよろしいですか。

【宮城氏】  はい、そうです。

【菅原委員】 ありがとうございます。

【佐藤座長】 多分いろいろ論点が出てくると思います。後ほどまた皆さんで議論を重ねていきたいと思います。意見交換の時間ですけれども、その前に古角委員と竜澤委員の方から今回の議論のテーマに関連したお取組の紹介をしていただけるということでございますので、大変短くて恐縮でございますけど、5分程度でお願いしたいと思います。まずは、古角委員の方からお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【古角委員】 それでは、貴重な時間を頂きまして、兵庫県の取組を御紹介させていただきます。38ページからパワーポイントの資料を付けております。
兵庫県の状況についてつぶさに説明する時間は省かせていただきたいと思っています。神戸市は若干集住な校区がございますけれども、いわゆる散在地域でございます。本県の日本語指導が必要な外国人児童生徒というのは、全国で12番目、13番目という地域性でございます。そういう中での取組ということを御理解いただきたいと思います。
まず、兵庫県におきましては、阪神・淡路大震災がございまして、その後に外国人の住民の皆さんへの情報提供が十分できていないという中で、公立学校に在籍している児童生徒の支援ということで、母語による支援というのを平成11年度から実施をしております。これが、39ページにございます(4)の自己実現を支援する取組のマル1の子ども多文化共生サポーター派遣事業でございます。これの現在の状況については、その真下のシートでございますが、平成28年2月末現在で、延べ325校に対して162名のサポーターを派遣しているということでございます。複数校派遣先があるサポーターもいらっしゃいますので、派遣校数に対してサポーターの人数はこういう状況であるということでございます。現在、17言語でございます。主に母語による支援を中心にこの17年ほど継続して実施をしております。
現在は、市町立の学校につきましては、来日当初から18か月は兵庫県が経費負担をすると。18か月以降になりますと個人差もございますので、この部分は市町の経費で引き継ぎ、同じサポーターを継続して派遣をするというように、県と市町の経費負担で進めておる事業になってございます。
それから、41ページをごらんいただきたいのですが、子供たちの自己実現とともに、全ての子供たちに共生の心を育むということで、県教育委員会として、相談事業とか情報提供を進めていくセンターを設置いたしました。これが平成15年度でございます。県立の学校の施設の中に独立して子ども多文化共生センターの設置をしておりまして、そこに指導主事1名とコーディネーター1名を配置しているということでございます。実際、平日の9時から17時という限られた時間での対応となってございますけれども、兵庫県においては、外国人児童生徒の教育に対する相談でありますとか、情報共有、また提供をこのセンターを核にいたしまして、進めているというところでございます。
最後でございます。42ページの新たな取組ということで、先ほど、齋藤主任学校教育官の方からも御説明ありました外国人生徒の特別定員枠は12都道府県であるということでございますが、本県におきましては、平成28年の2月に実施をいたしました推選入試の中で、外国人生徒の特別定員枠を初めて設置することになりました。全国で13番目ということになるのかなというふうに思います。この外国人生徒の特別定員枠については、実は、阪神・淡路大震災の後からも議論はございました。長年、NPOや外国人の支援団体からもやはり外国人生徒の特別定員枠をという御要望があって、20年近く掛かったということでございますが、本県においては入試の特別定員枠については、公平性の観点から長年設定せずに小学校、中学校段階における日本語指導を充実させていこうというところがございました。しかし、現実に中学3年生段階で、本県におきますと大体30名から50名が日本語指導が必要な状況でございます。特に中学校段階に来日をされた子供たちの進路保障、これはやはり特別定員枠でないとなかなか対応できない。日本語の壁というんでしょうか、現実に母語で学力判定をすれば十分に通用する子供たちが、日本語の壁のために希望する学校に行けないという状況は解消しないといけないということで、3校をモデル校といたしまして、それぞれ3人の枠がございます。
これが神戸市に1校、それから阪神地域に1校、それから姫路市に1校、計3校で実施をいたしまして、結果9名の受験がございました。これも学校によりまして、特別定員枠内の応募しかなかったところがございまして、1校は1名のみの応募ということで、その方は合格いたしましたので、あと2校は3名の枠をいっぱい合格いたしまして、計7名の合格となりました。
実施内容については、面接と適性検査ということで、日本語による試験で、適性検査で英語、数学、国語を実施しているところでございます。なお、入学後につきましては、7名についてはそれぞれの3年間の卒業までのカリキュラムを独自に指導計画を立てまして、その中で母語による支援や日本語支援をしていく予定でございます。
なお、それと連動いたしまして、来年度の小学校、中学校、段階における日本語指導につきましても、兵庫県の県費で日本語指導の支援員を派遣する、これは市町補助事業ということで、経費の2分の1は市町、2分の1は県ということで実施をする予定でございます。そういう中で新たなステージに兵庫県も入っているかなというふうに、この事業での成果も期待しているところでございます。
以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。続きまして、竜澤委員の方からお願いいたします。

【竜澤委員】 よろしくお願いします。竜澤です。
資料は特に新しく用意してございません。46ページをごらんいただければと思います。46ページ、5)の方に中学卒業後の支援ということで、高校入試特別措置に関わって概略を挙げさせていただきました。中学卒業後の進路状況も併せながらお話をさせていただきたいと思っています。
山梨県では外国籍生徒に関わっては、定時制がかなり受皿になっておりました。ただ、昨今、定時制の方が不登校の生徒を受け入れる傾向が非常に強くなってきておりまして、外国籍生徒はなるべく受け入れたくないというような現状が現在ございます。それに併せて私立高校の方で若干受皿を用意していただけているようなところがございまして、生徒が私立高校にも進学するような状況になっておりますが、ただ、経済的な状況から考えて、それが可能なお子さんというふうに限られているのかなと考えています。
山梨県では外国籍生徒は、あるいは日本語指導が必要な生徒の進路状況調査ということを全県的に行っておりませんので、状況的にどの程度のお子さんが高校に行き、途中で中退し、あるいは進学していくのかということがはっきり分からないのですが、いろんな統計の中を見るに、3割から4割のお子さんが公立、私立合わせて高校に在籍しているのではないかと推測するところであります。
ただ、甲府市は県都でございますので、定時制高校も私立高校もございます。選択肢がある分、比較的救われている部分はあるのですが、山間部、散在地域につきましては、交通の便も含めて進学を諦めるというような状況もかなりあるという話を聞いています。
46ページにありますように、山梨県の公立高校入試に関わって、特別措置ですが、1996年ということですからほぼ20年前に大幅な入試制度の改善がございまして、中国帰国生徒のみの特別措置が外国籍生徒へ拡大し、また、県内全ての県立高校に定員枠以外に学級数と同数の受入れ枠ができた。例えば、1学年が240人定員の学校は6クラスございますので、240名定員の外で6クラス分6名まで合格することができるということですので、上限を取ると246名合格できる、そういうような制度ができておりまして、これによって救われている生徒も多くございます。在住7年以内ならば5教科のうち自己選択した3教科で受験することができるということで、国語はなかなか得点が難しいということがありまして、数学、英語ともう1教科という生徒が多いのかなというふうに思いますが、3教科受験をしています。
また、日本語指導のための教育課程を置く高校を3校指定されておりまして、実際にそれを目指していく生徒も多いですが、なかなか実際には難しい。教育課程といいましてもなかなか手厚い指導は得られないという状況があるような話も聞いています。
課題としましては、制度としてはある程度どこの学校にもどの地域の生徒も入っていけるということがあるので手厚いのかなと見るんですが、一方では、学力や意欲よりも日本語がどれだけ話せるのかということで合否の判定に大きく影響を与えられるような状況が疑われるようなケースもあるということで、やはり、高校側の理解を深めていただくことが大事なのかなと思います。例えば、これは、ある定時制高校の先生から、「校内で何とか支援しているんだけれども、生徒が非常に授業についていくのが難しい、結果的にできるだけ受け入れない状況でいきたいな」というような話を聞きました。これが学校の総意とは思いませんが、実際に高校側の中にはそのような思いを持つ先生方がいるということを強く感じ、それを何とか是正していかなければならない、何とかそれを改善していっていただきたいなと思うところであります。
そのために必要なことは、やはり、他県には見られているようですけれども、加配措置ですとか、巡回指導体制の確立ですとか、講師代の予算の増額ですとか、高校においても日本語指導が受けられる、そのような状況を少しでも多くの学校にできればなと。集住地域ですとそういうことも可能なのかなと思います。地域によっては、これだけの人数がいれば1名の教員加配というような状況があろうかと思いますけれども、山梨は加配や巡回指導までなかなかいかず、講師代の予算も1年生のときにいればその学校に予算を配当されるんですが、2年次以降は次の学年に1年生が入ってこなければそこは予算はなくなってしまうというような状況があります。散在地域における高校の受入れ体制はやや弱い部分があるので、そこの部分をきちんと保障していかなければ、せっかくどの地域からでも県立高校に進学できるという制度がありながらも、高校に入ってからその生徒たちが伸びていくことができない、日本語ができないが故に学力を伸ばしていくことができないという、その状況があるので、ここをやはり課題として声を上げていきたいなというふうに考えております。
以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございました。竜澤委員は、1月18日に大雪のため出席できなくて、きょうこのような形で報告いただいた次第でございます。
ありがとうございました。全体、5件のヒアリングをさせていただきました。きょうのヒアリングについて、就学支援、高校進学、就職の支援の在り方などについて今お伺いした次第でございます。
前半、残り20分ぐらいで、きょうのヒアリング全体に関する自由な意見交換をさせていただければと思います。もちろん質問なりコメントも含めてで結構でございます。先ほど事務局の方から資料2についての説明もございましたけれども、そのような柱を参考にしていただきながら自由な意見交換を20分ぐらいして、それが続くようであれば後半の方に持ち越していきたいと思います。どなたでも結構でございます。あるいは今、それぞれ簡単な質問だけに限らせていただきましたので、これはどういうことなのか、あるいはこういうふうに思うんだけどということも含めてお話をお伺いできればと思います。どうぞ、御自由に。
じゃ、各務委員。

【各務委員】 宮城さんに1つだけ質問をしたいんですけれども。中学に入学した後、国際クラスに取り出しを受けないで自分は頑張るという決意をされて学校生活を過ごされたということですけれども、加配の先生とか母語の支援の先生の配置があったかどうかを教えてください。

【宮城氏】 中学のときに加配教員という意識はなくて、通訳が週に1回来ていたかなという認識でした。誰かが付いて勉強を見てくれるというのは当時はなかったです。

【各務委員】 1年間で日本語習得をして、中学に入ってからみんなと同じように勉強したというふうに理解していいんですか。

【宮城氏】 そうですね。1年間で、ある程度自分で何とかできるような日本語力を身に付けたという言い方が正しいかもしれないですね。

【池上委員】 池上です。少し補足をさせてください。宮城が通った中学校は、浜松市内でいうと、外国人の生徒がものすごくたくさんいる学校ではありません。何で浜松なのに支援が薄いの、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それは学校の特色によるということです。それから、今、彼女は謙虚で言わなかったけれども、彼女の場合はブラジルで、かなり基礎的な教育のベースをポルトガル語で作ってきて、それを6年生の1年間で日本語に置き換える作業がうまくいったパターンです。たまたまですけれども、数年前、先ほど紹介したバイリンガルプロジェクトのときに、宮城が小学校6年で来たときに日本語指導に当たった先生と私と宮城と3人で会ったことがあるんですけれども、その先生は日本語ゼロで来た子が今こんなになっているといってびっくりされていました。それも少し付け加えておきます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。菅原さん、どうぞ。

【菅原委員】 菅原です。高橋委員にお尋ねします。先ほど山野上さんの御報告の中にもありましたけれども、高校に入るというだけではなくて、高校を辞めずに済むということが子供たちにとってとても大事だと思うのですが、そういうふうに考えたときに神奈川県内の在県枠をお持ちの10校の配置といいましょうか、神奈川県内に住んでいる外国人のお子さんの視点から見たときに、通いやすさという点ではどうなのでしょうか。御存じの範囲で教えていただければと思うのですが。

【高橋委員】 お答えします。神奈川県は今、10校の在県外国人等特別募集があって、地域的にはちょっと偏りがあって、横浜地域が3校しかなくて、横須賀とか川崎地域にはなくて。これはNPO側から、そういった偏りがあるために横浜地域から例えば私がいる橋本高校まで、電車でいうと1本なんですけれども、場合によっては通学時間が1時間を超える生徒がいたりするような状況で、何とかしてくれないかということをずっと訴えていたんです。実は今度、神奈川県が高校改革で、来年の募集から地域割りががらっと変わって、横浜市内にも在県外国人等特別募集の学校が増え、川崎にも新しく出来るということで、そこのところは、この間いろいろと県の方も、全県的な見直しをする中で配置校も修正をして、再来年度から変わる予定になっています。募集人数はまだ発表されていないんですが、今年の状況を見ると大幅に募集人数も増えるだろうと予想しています。

【佐藤座長】 よろしいですか。ほかに。
はい、どうぞ。

【松本委員】 松本でございます。高橋委員にお尋ねしたいんですけれども、在県枠の高校が10校あると書かれていますが、プレイスメントテストで1年生から2年生へのレベルアップ等を見るというふうにおっしゃったんですけれども、10校で受入れについて共有されている情報とか方法はありますでしょうか。

【高橋委員】 10校のうち1校だけ、横浜市立の高校なので行政間の連携がちょっと難しいところがあるんですけれども、残り9校は、16ページにもありますように当NPOの多文化教育コーディネーターが9校全てに入っていまして、年に2回は多文化教育コーディネーターと在県枠の9校の管理職と担当者、それから県の教育委員会が情報交換会を開いています。それで基本的に、プレイスメントテスト等は当NPOが用意して各学校で取り組み、我々の方で分析をするというような形を取っています。

【松本委員】 ありがとうございます。高校のプレイスメントテストを、NPOが内容について吟味して、その結果をまた返却するという形なわけですか。

【高橋委員】 はい、そうです。

【松本委員】 すばらしい連携ですね。ありがとうございます。

【佐藤座長】 ほかに、どうぞ。
どうぞ。

【池上委員】 池上です。山野上さんにちょっと質問をしたいんですけれども、資料の8ページ目のところです。マトリックスでとても分かりやすい説明をしていただいて、ありがとうございました。
学校の外に資源がある場合の結び付け方なんですけれども、学校とNPOが直接コンタクトを取るというのは、簡単なようでなかなか難しい。そこのつなぎの役を果たすのは、市の教育委員会のようなものがいいのか、あるいは市長部局のようなものがいいのか、どういう人たちがつなぎをしていくと効果的になっていくか、お考えをお聞かせいただけますか。

【山野上氏】 御質問ありがとうございます。つなぎ役になり得るのは、まさにおっしゃったとおり、教育委員会か首長部局のいずれかだと思います。それは結論から言うと、地域によって、どちらがいいかはきっと異なるだろうという感じがあるんです。首長部局の方で外国人担当部署がきちんとあって、例えば多文化共生課とか国際課というところで外国人のことにいろいろ力を入れているところだと、そういうところが包括的に情報を持っていたりするので、つなぎ役になるという意味では、情報は持っているんです。ただ、学校の立場からするとやっぱり教育委員会から言っていただいた方が連携しやすいというのは、制度上、当然そうだと思います。だから、どちらかというよりは、教育委員会と首長部局も連携しながら学校と学校外の組織を結び付けていくという考え方でいけるとベストかなと思います。

【佐藤座長】 よろしいですか。ほかに何か関連する質問はございますか。
どうぞ。ほかでも結構でございます。

【藤巻委員】 藤巻です。宮城さんにお伺いしたいんですけれども、宮城さんのケースは非常にすばらしい成功例といいますか、外国から日本に来られて成功した例だと思うんですけれども、お友達とかお知り合いの中にうまく適応できない方もいると思うんですね。それで、どうしても日本人というか、こちらのサイドで教育というのを考えてしまうんですけれども、実際に教育を受ける、外国にルーツを持つ生徒さんの視点から、そこを分けるものは何なのか。つまり、成功できるところとうまく適応できないところ。つまり、学校の支援体制、教育制度の在り方なのか、さっき出た母語教育といいますか、母語による支援の重要性なのか、あるいは本人の努力というものが大きいのか、あるいは文化の違い、習字とか音楽の授業、給食や掃除、そういうものを学んだということで、いろいろな要素があると思うんですが、外国人に対する教育の中で一番求められているものは何かということを知りたいんですけれども。御自身の経験から、どういうところが成功するポイントなのか、失敗してしまう、うまく適応できないポイントなのかということをちょっと教えていただけますか。

【宮城氏】 質問ありがとうございます。多くの会議や講演でよく聞かれる質問ですが、実際に答えは分からないです。ただ、自分が思うことは2つあって、1つは個人的な問題、努力であったり意欲であったり、あとは家族のサポートがすごく関係しているのではないかと思います。そもそも高校へ行く意欲がない子たちも実際にいます。その子たちに支援をしようとしても、高校へ行く意思が全くない場合は、それは効かないものだと思います。そして親が工場で働けと言ったら、周りの環境で、もうそうなってしまう場合が多いのではないかと思います。実際、私の場合、絶対に工場で働くなと親は言い続けてきました。勉強しろとは一切言わず、工場だけは行くな、そのために自分は何をするかという問い掛けがありました。
2つ目に大きく関係しているものは周りの環境だと思います。例えば団地の中でも、ブラジル人学校に通っていて夜まで遊んでいたりするグループと、実際に日本の学校に通って部活をやっているグループで、じゃ、どっちが進学や、より明るい未来につながるかといいましたら後者だと思います。自分がどう関わってくるかとか、先生がどういうふうな指導をするかにも、大きく関わってくるんじゃないかと思います。それによって、学校での対応、先ほど特別過ぎる扱い、外国人だからできなくてもいい先生なのか、あなたならここまでできるんだよという、背中を押してくれる先生の対応も大きく関わってくるんじゃないかなと思います。

【佐藤座長】 よろしいですか。
ほかに何かございますか。どうぞ。

【伊東副座長】 伊東です。高橋委員にお聞きしたいのですが、スライドの14ページ、教科指導での取組についてお聞きしたいと思います。
先ほど、夏休み等を利用して公開授業だとか研究会、研修会を行うとおっしゃいましたけれども、全ての教科担当教員が、基本的にはこういった外国人児童生徒への、いわゆる取組、JSLカリキュラムの内容について理解したり、あるいは実践したりしたというふうに理解してよろしいでしょうか。

【高橋委員】 夏休みに行っているのはセミナーという形で、教員は一応、学校内の研修として参加というのを原則として、他方、地域の支援者の方も入っているという状況です。私が昨年の3月までいた相模原青陵高校は、在県外国人等特別募集で入ってくる生徒が各学年10名ずついますけれども、実は地域的にその枠を超えた年数で、3年を超えた滞日年数で、一般受験で入ってくる生徒もすごく多いんですね。全体で倍ぐらいですから、60名近くいるということで、学校全体の中で外国につながる生徒を意識しないで授業をすることができない状況になっているんですね。
それから基本的に、いわゆる個別対応授業を担当するのは、講師ではなくて常勤の教員がやろうと学校で決めたんです。それはなぜかというと、進度を合わせなければいけない問題とか、それから、そういった子供たちの状況を指導するに当たって共有しなきゃいけないと。だから、講師の先生が来られて、そこだけ教えたら帰っちゃうということではなかなか情報共有ができないので、常勤が持とうということで始まったということで、基本的には常勤の教員は、何らか必ず関わることになるだろうという状況にあります。その中で、公開授業を10月とか11月にやるんですけれども、そのときはそういった個別対応授業も含めて、全部公開をしてやるという形を取っていました。

【伊東副座長】 そうですか。ありがとうございます。そうしますと、学校全体の取組として、全員が参加するという形で取り組んでいらっしゃるということになるわけですよね。
そこまで持っていくために何か御苦労をなさったことはあおりですか。もしあれば簡単に。

【高橋委員】 たまたま相模原青陵高校は、できてまだ7年ぐらいの学校なんですね。再編・統合で2校が一緒になって作ったんですけれども、いろいろな国から来た生徒が散在している地域なので、学校の教育目標として、多文化共生という取組をということでスタートした学校です。ほかの在県の特別募集を持つ学校も、多文化共生に関して学校の指針を作ってやっている学校もありますし、いろいろな形で学校の中で取組を、例えば4月当初にそういったことを確認するとかいう取組が、いろいろな形でされている状況にあります。

【伊東副座長】 どうもありがとうございました。

【佐藤座長】 ほかに何かございますか。はい、どうぞ。

【佐原委員】 浜松の隣の豊橋市の佐原です。どなたにお聞きすればいいのかちょっと分からないのですが。宮城さんの最後のコメント、「母語も大事にして、せっかく外国の人がいるんですから、これを生かす」というのは大賛成でございます。
宮城さんはお母さんが2世ということですけれども、私が30年近く前にブラジルにおったとき、当時、だから、一世代前ですから、1世、2世、3世ぐらいだったんですけど。親が何世かということによって、教育に対する意識が全く違うなと。親が2世ぐらいまではいいんですが、3世、4世になってくると、それを強く感じていました。そして、日本人の生徒さんでも一緒ですけれども、親の教育への関心の度合いが、間違いなく子供の成績につながるということを考えましたときに、文部科学省かどちらかの機関で、外国人籍の方のお子さんが、親が何世なのか、どんな状況なのかということによって進学の度合いを調べたとか、そんなデータがあったら教えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

【池上委員】 池上です。すぐには思い当たらないですね。私もいろいろな調査を静岡県や浜松市でやっておりまして、これまでは親が何世か聞くことが多かったですが、最近の調査では余り、親が何世かということは本質的に重要じゃないような印象を持つのと、あと静岡県でも愛知県でもそうですけれども、ブラジル人のみじゃない外国人が増えてきたので、何世かという属性を聞かない調査も多いかなと思います。
ただ、今、佐原委員がおっしゃったように、2世までの親、つまり、親が日本人だった人たちの教育に対する構えというのが、それ以降と明らかに違うというのは、私もブラジルに何回か行って共感するところはあります。

【佐原委員】 実はおととしまで、豊橋市役所にブラジル籍の子がいて、結婚の都合で離れていったんですけれども、彼なんかも中学で来たのに、大学を出て、アメリカの大学に留学してと。やっぱり親と本人の意欲、それともちろん、いろいろな環境に恵まれたということがあるけど、ここまで行けちゃう子が出てくるんですね。ですから、機会の与え方、それから親と子供さん、先生、学校、いろいろな環境がベストフィットすると、とんでもない才能がそこから生まれる、とんでもなくいいことが生まれるということは、是非認識していただきたいと思います。ですから、文部科学省もある意味型にはめる部分と、そうではなくてもうちょっとルーズにすることで、よりよい成果を出せる部分と、このことを話し合っていただけたらうれしいなと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございました。恐らく今の世代間のものは個別の研究ではあると思います。ただ、データ的ものは日本にはまだ蓄積がないかなと思います。
今それぞれ発表の中から、就学支援の在り方、山野上さんからは連携の在り方への示唆というふうに、いろいろな連携パターンを示していただいて、どういう連携の在り方が可能なのかということを示唆いただいたような気がします。それから、高校での取組、特に入学後の多文化共生といった視点からの日本語指導の在り方、あるいは教育の在り方を少し考える必要があるんじゃないか。それから、第2世代、ライフコースの方から見た、どういう支援の在り方が可能なのかと。特にきょうは宮城さんの方からすばらしいプレゼンをしていただいて参考になる点が多々あったように思います。そして高校の特別枠の設置が、兵庫県が13番目ということで、各都道府県で試みられるようになって、もっと積極的に進める必要がありますけれども、それと同時に、その特別枠だけではなくて入学後の指導の在り方、特に日本語指導の在り方についても少し重点を置く必要があるのではないかという御指摘があったと思います。
この後、今のものも踏まえながら、これまでの会議を踏まえて、事務局の方から少し論点整理をしていただいて、その上で足りない分、あるいはもう少し議論を深めるべき点についての意見交換をしたいと思います。
今51分ぐらいですので、4時ちょっと過ぎから再開したいと思います。10分ほど休憩にさせてください。よろしくお願いします。
( 休憩 )

【佐藤座長】 それでは、所定の時間になりましたので会議を再開したいと思います。
先ほどお話しましたように、議題の2に移りまして有識者会議の主な検討事項について。これまでヒアリングを重ねてまいりました。そして、そのヒアリングを基に議論をしてまいりましたけれども、これからその全体的な議論を進めていきたいと思います。
これまでの会議で出された主な意見をまとめていただいておりますので、事務局の方から、まず説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【齋藤主任学校教育官】 それでは、資料4をお開きください。本有識者会議の第1回から第3回までに頂きました御意見を、テーマごとに区切って、事務局の方でまとめてさせていただいております。一部ヒアリングで御発表いただいた中身についても、適当であると思われるものを盛り込んでおります。これまでの会議で出ました御意見ということで、本日の前半の議論での御意見と併せて御参照いただければと思います。それぞれかいつまんで、簡単に御紹介させていただければと思います。
まず、資料4の1番、最初のところでございます。現状認識・総論ということで、1つ目の白丸でございますが、先ほどの池上委員からのお話にもございましたけれども、日本で生まれ育ち、母語を話せない外国人児童生徒、それから母語も日本語も習得できていない保護者等が増えているといった新しい課題について御指摘があったところです。2つ目の白丸ですが、ライフコースの観点ということで、将来、母語、日本語だけでなく、英語、中国語等、様々な多言語で活用できるグローバル人材の観点から、子供たちにどのような未来が開かれているのかということを示すことで、学習の動機付けができるのではないかという御意見がございました。それから、飛びまして1ポツの一番後の部分でございますけれども、本有識者会議の議論に関連するこれまでの施策がどういう効果をもたらしているのかについて評価を行ってはどうかという御意見がございました。
2番目でございますが、こちらが有識者会議の主な検討テーマの1つ目、「学校における外国人児童生徒等に対する日本語指導体制の整備・充実」に対応しております。その中で主に担当教員の配置というところについての御意見として、1ページ目の一番下のところでございますが、散在地域の事例として、編入によって緊急度の高い子供が入ってきた場合に、生活言語のレベルはあるが学習言語が十分でない子供から順番に、先に指導を終了しなければいけないといった状況があって、体制の整備・充実が課題であるといった御意見。それから2ページ目の一番上でございますが、同じような状況で、年度の途中で編入してくる場合が結構ありますが、そういった場合にはクラスの定員を超えても教員加配がされないということで、そういうことを見越した教員配置や学級編成が課題であるといった御意見がございました。
それから全体的な指導体制の構築といったところでは、最初の2つの丸は、これはそれぞれヒアリングの事例の紹介でございますが、1つ目としましては、例えば教育委員会に設置した日本語サポートセンターにコーディネーターとなる教員を置きまして、そのほか拠点校に集中教室、それから日本語指導担当教員の配置校といった形で、組織的な指導体制を構築している事例がございました。2つ目でございますが、こちらも国際教室担当の加配教員を学校に配置し、それからプレクラス等における初期支援を行いつつ、教育委員会における人的支援として、外国人児童生徒教育コーディネーター等の配置を行っているという事例の御紹介がございました。3つ目の丸でございますが、散在地域の学校における共通する課題といたしまして、予算がない、教員の指導力、支援者、教材等もなかなかない部分で、まず日本語指導を支援員に頼っているというところが課題であって、そういったところの位置付けですとか予算の確保が必要であるといった御意見がございました。
それから、飛びまして3ページ目でございます。3ページ目の上の部分が多言語に対応する支援人材の確保ということで、2つ目の白丸でございます。例えば小学校で12か国語の児童生徒に対応した日本語指導をやっているといったところにおきまして、それだけのいろいろな言語を操れる人を集めるためのネットワークの確保が課題であるといったことで、そういった関係団体への助成等の検討が必要であるという御意見。それから、その関連と申しますか、学校とNPOとの連携というところで、その項目の2つ目でございますが、特に散在地域におきましては、そういった地域で活動するNPO等の団体、大学、行政の担当者が連絡協議会ですとかシンポジウム等の場を使って、問題の可視化、問題意識の共有、キーパーソンとなる地域の人材発掘などを行うことが重要であるといった御意見でございます。
その他の項目の一番下の部分でございますが、特に外国人児童生徒に関する予算獲得をしていくに当たって、そういった人材を育てていくことで、将来、国際社会で活躍できる人材育成のための投資になるんだということをしっかりと訴えていくことが必要だという御意見でございました。
4ページ目でございます。3番の日本語指導に携わる教員・支援員等の養成・確保といったところで、ここは非常にたくさん御議論があったところでございますが、まず教員養成課程の在り方ということで、1つ目の丸、専門性を担保した教員の配置、それから日本語指導に携わる担当教員の配置が必要であるということで、教員養成系の大学の中で、是非そういう専門性を育む科目を必修の教育課程にする等の対応が必要であるという御意見がございました。それから、その項目の上から4つ目でございますが、大学等で日本語教員養成課程を修了、若しくは修了見込みの者が、教員採用試験のときに一定の加算評価がされるといったことが必要ではないかという御意見。それからその下の項目でございますが、全ての教科担任が日本語指導、あるいは背景の異なった子供たちがどういう問題を抱えているかということについて学んでおくべきではないかと。その関連で、教育課程の中で国際理解教育、外国人児童生徒・帰国子女を含めた日本語教育、そういった科目を組み込んでいくことが必要、さらに、そういったカリキュラムを体系化・構造化するべきではないかという御意見でございました。
その次からが現職教員の研修の在り方で、次の5ページに飛んでいただきまして、2つ目の丸でございますが、現職教員の研修はどうするかということにつきましては、研修を受講するインセンティブを与えることが必要で、例えば夏とか冬、春という時期を活用した研修を受けることで資格認定をされるような仕組みがあってもいいのではないかという御意見でございました。
続きまして、日本語指導のための支援員人材の育成・確保というところの2つ目の項目でございますが、日本語教育の素地をきちんと持っていらっしゃる専門的な指導員・支援員の方々に対して、例えば学校の中で年少者に日本語を教えるための研修を行うことが必要である。それによって、いわゆる人的リソースの活用ができるのではないかというような御意見でございました。
続きまして、4ポツの指導内容の改善・充実というところでございます。この2つ目の白丸でございますが、家庭の復習にも使えて、親にも多言語機能の対応ができるようなコミュニケーションツールとして、例えばタブレット端末、また、そのためのアプリの開発等が考えられないかという御意見。それからその下が「特別の教育課程」による指導の充実でございます。一番下の丸のところでございますが、「特別な教育課程」による指導の実施の課題として、個に応じた指導・支援を充実させていくためには、人的な配置を行政として検討するべきではないかと。特に小学校と中学校の違いを踏まえた指導体制作り、それから、取り出しでない部分の在籍学級での授業作りといったところが課題ではないかという御意見でした。
それから6ページ目にいきまして、5ポツの外国人の子供の就学の促進、進学・就職への対応というところで、本日も引き続き追加で御意見を頂いているところですが、前回までにあった意見としまして、1つ目、中学校で編入してきた生徒の日本語力をどのように効率的に向上させるか、また短期間で高校進学させるのかといったところが課題である。特に下学年に編入させた場合のモチベーションの低下等の御指摘がございました。それから高校進学の促進に関しましては、6ページ目の下から2つ目の丸でございますが、高校の入学定員特別枠を普通科だけではなく専門学科まで広げ、多様なニーズに対応することが必要であるといった御意見。それから7ページ目の一番上でございますが、全日制高校は公立が2割で、それ以外は私立であるということで、お金がない外国人児童生徒は定時制に行かなくてはいけない状況という問題の御指摘。それから2つ目の白丸で、それに対して全日制に行くだけの学力がないことが課題ではないかといった御指摘がございました。
高校進学後の指導の充実でございます。白丸の下から3つ目でございますが、高校入学の特別枠を設けることは受入れの責任が発生するということであるということで、特別なカリキュラムの設定、教科指導の取り出し等、日本語の面でどのようにサポートするかが課題であるといった御意見。それから一番最後の項目でございますが、大学に進学した後も、大学において、日本語教育・母語の支援の両面を行うべきではないか。また、企業がそういう人たちの社会参加につながるような奨学金を出すなどの仕組みが必要ではないかといった御意見等がございました。
全て御紹介ができませんでしたけれども、こういった御意見が出ております。ここに加えまして、どういった論点が必要か、更にどういった点を掘り下げるべきかというところについて、御意見いただければ有り難いです。以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。今お話しいただいたように、今までいろいろと意見を出していただき、そして、それをまとめていただいております。
あと数回の会議で論点の整理をする必要がありますけれども、抜けている点、あるいはさらに、ここはもうちょっと深めなければいけないのではないかというような論点を出していただいて、まずは洗い出しをしたいということでございますので、広くいろいろな観点からお出しいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。どうぞ、何かありましたら。
各務委員、どうぞ。

【各務委員】 各務です。宮城さんは、1つのロールモデルとしてキャリアを積まれたわけですけれども、誰もがそういうふうに意欲を持ってやれるわけでもない状況の方が大きいと思うんです。じゃ、意欲のない、進学に対して余り意識をしない子供たちへの取組をどうしたらいいかということが1つあると思うんですが、いろいろな地域でやっていらっしゃる保護者向けの進路ガイダンスとか、そういうこともある程度、どの地域でも行われるということが1つ重要かなと思いますし、どうしたら勉強に向かって取り組んでいけるかということを、いろいろなことで意欲を持たせるような、何かきっかけを与えていくようなことをやっていかなくてはいけないのではないかなと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
どうぞ。

【高橋委員】 高橋です。今の御意見とも関連すると思うんですけれども、進路ガイダンスについては、県の主催者交流会というのを毎年1月にやっていて、情報交換をするんですけれども、子供たちに進学の意欲がないのか、逆に希望しても入れないのかというのは表裏一体のところがあるんですね。それで、神奈川県の場合を見ていると本当に、周りの子供たちがみんな高校に入っていく中で、私もというケースが多くて。ですから、どちらが先かみたいなところがあって、私の報告にもあったように、枠がないし、受けても合格しないというところでは子供たちの意欲は生まれないと思います。
どっちが先かというのもありますけれども、やはり受入れ枠をきちんと保証していくということがないと。今の進学率というのは、本当にこのままでいいのかと私は思います。以上です。

【佐藤座長】 要するに13都道府県と先ほど言っていましたけれども、その特別定員枠がまだ足りないんじゃないかと。要するに制度がなければ意欲も湧かないだろうという、もっともな話ではありますが、もちろんそういう議論も積極的に進めるということが今の提案だと思います。
ほかに何かございますか。どうぞ。

【池上委員】 池上です。制度を新たにというのとはまた違う観点でコメントをしたいと思います。
2014年6月に、私どもの大学で「多文化子供教育フォーラム~ブラジル人保護者は何を考えているか~」という会を行ったんですが、きょう、その資料を持ってきたので、そこから紹介をします。
日本人の場合は日本の学校を経験しているので、例えば中学校から高校へ行くときに受験があるとか、部活動とは何なのかというのは、もう暗黙知として知っている。先ほどの宮城の話にもあったように、外国の方はそれがすっぽりと抜けているんです。そのフォーラムでお話をしてくださったブラジル人の保護者は、小学校のちょうど高学年になるあたり、5年、6年あたりの保護者に、この先の中学校、高校のことをちゃんと説明してもらえる機会があるととてもうれしいと言っていました。つまり、高校入試は中学校の案件だから中学校に入ってから教えればいいんだというと全然そうじゃない。もっと部活のことを知っていたかったという発言がありました。市レベル、町レベルの、個々の教育委員会の取組というだけじゃなくて、もっと体系的に、小学校段階からその先の学校教育に関することを少しずつ伝えていくという枠組み作りも大事なのかなと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。進路ガイダンスというのは、単なる入試の在り方とかじゃなくて、今、そういうものを含めた広い観点から、ライフコースとして一体どういうふうに支援していくのかというのが必要だろうという御提案、もっともな話だと思います。
どうぞ。

【池上委員】 まさにそのとおりで、単に受験がどういう科目ですよというんじゃなくて、中学校に行くと学びがどう変わっていくとか、日本において部活動がどういう意味を持っているとか、そういう、いわゆる学校文化的なところを伝えていくような機会を設けるといいということです。

【佐藤座長】 ありがとうございます。そういう広い意味での、まさしく進路形成、キャリア形成、進路ガイダンスというものを積極的に充実させていく。しかも保護者を対象にして、そういうことをきちっと伝えていく努力も必要なのだろうと。そういうことが論点として、これから必要だろうというお話、具体的な施策として必要だろうというお話でしたけど。
ほかに。どうぞ。

【藤巻委員】 今の話に関連して申し上げたいんですけれども、先ほど宮城さんの話で非常に印象に残っているのは、親御さんから工場では働くなと言われたという話ですね。
昔、愛知県豊田市の保見団地という日系ブラジル人の多い団地に、私は住み込み取材をし、あるNPOの日本語指導のサポートみたいなことを1か月やったことがあります。そのときに、そこのNPOの人は子供たちを連れていろいろな会社を訪問するということをやっていたんです。そのNPOというのは、不就学、不登校の子供に日本語を教えるNPOなんですけれども、何でそんなことをやるかというと、要するに何で勉強をするのか、勉強するための動機付けを与えるためなんですね。それで、かつてそのNPOにいて不就学だったけれど、学校に戻ってその後就職して働いている先輩の子供を呼んできて、自分の経験を話させるなんてこともしていました。つまり日本語を勉強すると、こんなにいろいろな将来があるんだ、こんな前途があるんだということを、まず子供たちに教えて、それで勉強する意欲を湧かせるということをやっていたんです。
さっきも話が出ましたけれども、外国人の保護者の方は、池上委員が言うような僕らが暗黙知として分かっていることも分からないので、子供たちに将来の進路について教えられない。そういう意味では高校というよりももっと前の、小学校とか中学校という段階で、広い意味での進路指導みたいなことが必要になってくると思うんですけれども、じゃ、それは学校がやることかというと、学校がやるのが適切かどうかという問題もあるので、まさにNPOとか行政とかいろいろな機関が連携して、外国人の保護者、子供たちに、日本で勉強するとこういう将来があるんだということをちょっと見せてあげるような、そういう仕掛けが必要じゃないかなと僕は思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。学校だけではなくて、もしかしたらNPOの方が得意なのかもしれない。
どうぞ。

【松本委員】 松本でございます。それに関連してですけれども、やはり学校がやるべきことはしっかりやらなければいけないというふうに思います。実際に今お話が出ました保見の地域の小学校では、当然上がる中学校があるわけですけれども、中学校の進路担当の先生に小学校に来ていただいて、そこで外国人の保護者を集めて、もちろんそれは日本人の保護者も参加していい懇談会の場なんですけれども、中学校に来るとこんなふうにいろいろなことが変わります、部活もこんなふうに変わります、進路もこんなふうに中学校ではやっていますということで、日本人の人たちには当たり前のようなことも含めて、毎年そういう時間を設けていらっしゃるわけですね。ですから、それは集中地域じゃない散在地域でも、どこでもやれることだと思います。進路指導の担当の先生というのは、当然どの中学校にもいらっしゃるわけですので、そういう身近なところで見過ごされていることをしっかりやるということがまず第1で、そこでは足りない部分を、地域のNPOだとか地域の人材をうまく活用して補っていくということが望ましいのではないかと考えます。

【佐藤座長】 ありがとうございます。中学校の先生が小学校に来られていろいろなガイダンスを実際にもうやっていると。学校はやるべきことをやりなさいということだと思いますけども。
最近は中教審などでも、義務教育学校が、小中連携が取り沙汰されておりますので、こういう仕組みをどう活用していくのかという議論があってもいいのかもしれませんね。つまり、小学校は小学校、中学校は中学校と切れていますので、そのところを義務教育学校としてリンクしていけば、今のようなことが円滑になる可能性もあるだろうと思いますので、そういうところと併せて議論が深まればいいかなと思います。
ほかに、どうぞ。
どうぞ。

【伊東副座長】 伊東祐郎です。先ほどの資料4は、文科省の事務局の方でうまくまとめてくださったなと思っております。しかしながら、我々はただ課題を出しただけで済むというわけではないので、こういった課題や問題をどう解決に向けていくかというのが、すごく重要かなと思います。私自身、その中で2点、いわゆる教員養成の在り方をどうすべきかということと、その中身を我々は検討していくべきではないかと思います。自分自身、JSLカリキュラムを作ってきたり、あるいはカリキュラムガイドライン、最近ですとDLAを作ってきたときに、自分自身の限界を感じました。やはり教科学習に結び付ける教育をするということになると、日本語教育を専門とする者だけではどうしても限界があるなと。教科学習や日本の学校を終えて卒業するということが子供たちの最終目的であるならば、教科担任、あるいは学校の先生方が、この多言語・多文化社会で外国人を受け入れることがどういうことであるかというのを、これまでの教職課程で必要なカリキュラムと同じように、変化のあるこの現代では学ぶ必要があるかなと思います。
そういう中で、今年の4月から免許状更新講習が新たに変わったということで、その中でも選択必修領域というものが加わっています。しかしながら、内実を見てみますと、一番近いのは国際理解教育だとか異文化理解教育ですが、まだまだ視点が日本人児童生徒にいっているなと思います。むしろ我々は外国人児童生徒の多言語・多文化という背景をもっと知る必要があるだろうし、また、日本人児童生徒の場合ですと、我々が共通に理解していることなのでそう問題はないですけれども、外国人児童生徒の後ろには保護者もいる、また、異なる文化や価値観もある、まずそこを知ることが必要ではないか。もちろん日本語指導も重要だろうと思いますけれども、めんどくさい、分からないというところの背景には、複雑だ、あるいは多様だ、そして自分の専門家外だというところがあると思いますので、ここらを何とか講習等で解決できたらいいかなと思いました。
それと同時に、日本語指導担当者が教科教員であったり日本語支援員であった場合に、我々は、このそれぞれのところでの専門性を再度点検する必要があるのではないかと思います。その点検といったときには、きょうの資料は非常に有益でしょうし、きょうの御発表も多くの示唆を富んでいると思いますが、あれを一つ一つ、いわゆる、どの面で問題があって、どういうことを我々は学んでいかなければいけないかというのを、言語面、子供たちの精神発達面、そして、認知面も含めて整理をしていくことによって、そのことを教員養成や講習等に反映していくということを実現できたらいいかなと思っております。
時間は掛かるかもしれませんが、できれば一番直近のところから、文科省の講習や免許状更新講習なんかから、即取り入れることによって、我々のこれまでの蓄積を実際の研修や人材育成に生かせるのではないかと思います。
ちょっと長くなりましたが、以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございます。私どもはただ単に言いっ放しではなくて、当然これをいかに実現していくのか、政策におろしていくということまで、少し視野に入れて議論をする必要があるというお話だろうと思います。特に教員養成であるとか現職教員の研修について、いろいろと今、示唆に富むお話を頂きましたけれども、教員養成の場合には免許制度も絡んでいて、非常に難しいのは事実だろうと思うんですね。今、64単位ぐらいですか。卒業単位の半分以上が教科専門、それから教科教育、教職科目でかなり縛られていて、その中にプラスアルファがどれだけできるかというのは、教職課程を持つ大学でもかなり厳しい現状だろうと思うんです。その中で、こういう科目をどうやって入れ込んでいくのかということでございますので、この辺も是非、文科省の方の力も借りながら進めていく必要性があるかなと。
あと、現職研修の方はいろいろなところで、かなり裁量の余地の高いものでございますので、この中でもいろいろと議論があったと思いますけれども、是非これも加えていただきたいと思いますし、個人的には日本語は教科指導に関わってきますので、今、伊東先生のお話の中にありましたように、私どもはこの日本語指導というものを学習指導要領等に記述していただきたいという思いもございます。
藤巻委員の方からもございましたけれども、日本語を教科にして、専門の教員養成をしたらどうかというような御提言もあったと思いますけれども、そこまで視野に入れて、少し議論をしていく必要性があるかなと、今、思っているところでございます。
ほかに、どうぞ御自由に。どうぞ。

【竜澤委員】 今の教員養成に関わって、中長期的には是非、今、佐藤座長のおっしゃるようにお願いをしたいところなわけですけれども、短期的に考えると、やっぱり教員の質の担保は、先ほど宮城さんからもお話があったように、教員との出会いが非常に大きな要素であると感じ取ったわけです。日本語指導の先生方は、私が現場感覚で考えると、学校長の指名によって日本語指導員の先生になることが多いのですが、その先生方の研修がなかなか進んでいかない、そこの部分は目の前のお子さんたちの成長にとって大きな問題になっているだろうと考えています。それに関わっては、単に加配をその学校に付けるということも、もしかしたら1つとしてあるかもしれませんが、そのように、日本語指導を自分でももっとやってみたいという先生がいれば、県で採用するですとか、採用するという言い方はおかしいですけれども、研修を受けることで何かしらの専門性を身に付けた人が手を挙げて、日本語指導に従事できるような仕組み、制度も1つに加わることで質を十分に担保できると思うので、その辺のところの施策での工夫を頂けると、現場としては有り難いのかなと考えています。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
ほかに。どうぞ。

【高橋委員】 高橋です。ちょっと視点を変えてというか、山野上さんの御報告にもあったんですけれども、今、いろいろな連携のパターンの中で、地域間格差というのが非常に大きいというところで、この場で出てきた報告の中ではいろいろな取組が出てきていますけれども、それがどうしても地域間格差を逆に広げる可能性もありますし、そもそも論なんですけれども、そもそも外国人児童生徒を受け入れるに当たって、国として何か方針が必要なのではないかと思うんですね。国の方針を踏まえて、地域的なところに拠点的なセンターを、兵庫県の子供多文化共生センターが1つ、いいモデルになっているかなと私は思うんですね。神奈川県でやっている多文化活動センターも、本当は県の方でやってくれないかということを訴えてはいるんですけれども、今、行政がなかなかオーケーと言わない状況なんですが、あと一押しあれば、そういった各地域、都道府県に1つ拠点的なセンターを作り、兵庫県でもやっているような教育相談というのは非常に大きい役割を果たしていると思うんです。先ほどの就学ガイダンス、進路ガイダンス的なこともスポットでやる必要はあるとは思うんですけれども、恒常的な教育相談が常に拠点のセンターにあるという形を取ったり、学校とかNPOとの連携の役割を果たしたり、行政も関わるようなセンター的なもの。イメージとしては、韓国がやっているような多文化家族支援センターが各州にあるというようなイメージが、日本でも国としての受入れの方針を基にやる時期に来ているだろうと私は思うんですね。この会議、いろいろな部署の方もいらっしゃっていますから、集結して、そういった形の拠点化に今まで出てきたノウハウが集まると、そこから更にいろいろつながっていく可能性をすごく感じると思っています。
以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございました。要するに、国の施策として基本的な方針を少し打ち出したらどうか、あるいは、これは国がやるべきことなのか、都道府県がやるべきことなのか、兵庫県のきょうの御報告のように、共生センターといったようなものが設置されればよろしいのではないかと。それに向けての基本方針をどういうようなことを考えたらいいのかという御提案だろうと思いますけれども、大事な点だろうと思いますし、ほかに何かございますか。どうぞ。

【佐原委員】 佐原です。行政と教育の世界と2つの分野がこうやって議論するのはとてもいい機会で、私としてはすごくためになる話をたくさんお伺いしていて、うれしく思っていますけれども、行政としてみると2つのパターンがあると思うんです。1つは、大きな山の底辺をどうやって引き上げるかということ。もう一つは、山の頂上をどうやって高くするかということで、どちらも相まって、全体として上へ上がっていくんだと思います。
きょう御報告いただいた宮城さんのように、うまくいった事例をどうやって生かしていくか、そこから得られる私たちのノウハウがどこにどれだけあるのか。これは私たち、日本人社会が海外に赴任した事例なんかを見ておりますと、赴任先で日本人学校があるところとないところの差ももちろんありますけれども、何をやっているかといったら、自分の子供の教育をどうしたらいいか、成功事例をいっぱい探すという仕事を、そこへ行った家庭はみんな必ずやって、その中で、自分たちは成功事例を参考にしながら上手にやっていく。いかにして日本語をちゃんと維持し続けるか、そして、現地の言葉、例えばインターナショナルな英語などをしっかり習得するか、この機会にしっかりやろうじゃないかということを皆さんされています。それは、成功体験をいかに上手に自分のところに情報として仕入れるかということが大変大きな役割を果たしていると思う。その仕事を是非私たちのこういう場所でも作っていかなきゃいけない。そういった情報を共有していく。高橋委員のやっている県立高校の中でどうやっているか、そして、宮城さんのような、どうやって日本語を1年で上手に習得できたか、こんなことも大変大きなノウハウだと思うので、そういったものを1つはやっていかなきゃいけない。
そして、先ほど高橋委員が言われたように、全体として引き上げるために、皆さんおっしゃっていたようないろいろな情報をきちっと理解していただいてやると。それを上手に行政と教育の場でお互いに情報共有しながら、関わり合いながらやっていくということを、ここの場所で是非出していっていただけたら、私なんかがきょう、こういうところへ出ているのは、行政の場所で発言する役をやってくれという伝道師の役割もきっとしょってしまうことになるので、そこを上手に、国も支援しているよ、県も支援している、だから、市町村も頑張ろうねという言い方ができる仕掛けを作っていただけたら、とっても有り難く思っております。

【佐藤座長】 ありがとうございます。心強いお言葉でございます。私どももただ単に理念的に、ただ主張するだけではなくて、具体的にどう実行可能なものを提案していくのか。そのときには今のようなお話がとても大事だろうと思いますので、是非そういう議論を進めていきたいなと。
私、この会の冒頭で、今までやってきた評価も必要ではないかというお話をさせていただきましたけれども、それも踏まえながら、同じような提案をしてもしようがないので、きちっと評価をしながら、新しい提案を是非進めていきたいと思いまけれども、何ができていないのか、あるいはどこまでできているのか、新しいのは何が必要なのかという議論も少しやる必要があるかなと思っているところです。
ほかに、どうぞ。

【菅原委員】 菅原です。今、佐原委員から底辺を引き上げるというお話が出たので、それに関連して申し上げます。底辺を引き上げていくというときに、こういう場に来て発言をしてくださる方がいるような地域ばかりではないと考えるんですね。そういう発言をする代弁者がいない散在地域、学校に1人とか、市町村に1人というようなところも含めて、全国的なものを考えていくということがとても重要なことになるだろうと思います。いろいろな施策が出てきて動いていくときに、うまくそれを伝えられない、あるいは問題が見えていないような、山野上さんの4つの象限の中で、学校内外ともにリソースがないのではないかと思われるところで何をしていったらいいのか、どう伝えていったらいいのかというのを併せて考えていかないと、先ほど来出ている地域格差が広がっていく一方になってしまうのではないかなと考えます。
どうしていったらいいのか、具体的には浮かばないんですけれども、どうしても大きく動けるところに目が行きがちですが、そうじゃないところにも目を向け、そうした地域の課題にも対応する施策を作っていくことが、文科省の会議の大きな役割かなと考えております。
以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。

【古角委員】 菅原委員の御意見に関係してなんですけれども、県としての役割は何なのかなと。国の役割、方針でありますとか、教員の養成に関与することとかということはもちろん国でありますし、市町立学校の場合でしたら、市町の教育委員会が直接関与するわけですが、県の役割は何なのかなと考えたときに、先ほど菅原委員がおっしゃったように、兵庫県の場合、散在地域、特に都市型ではないところにも外国人の方が入っておられると。兵庫県でモデル校の特別枠ができたと申し上げましたけれども、いわゆる都市部だけですので、都市部でない外国籍の子供自身には外国人枠の恩恵がないんですよね。そうすると、今はモデル校で研究を兵庫県としてようやく始めたところなんですが、現実にそういう対象外の子供たちへの学力保障をどうするかということになってきたときに、日本語指導ということを全ての教員が共通理解していかないと、多い少ないだけではなくて、日本語指導の要素を全ての教員が理解することによって、取り出しのみならず、教科型ですることで、外国人の子供もそうだけれども、全ての子供が同じく分かる授業ができるという点でも、日本語指導の可能性は大変高いかなと思います。
それと、中学校段階ですね。進路がようやく目の前に来たときに、中学校段階での学力保障、中学校段階で来日した子供の母語の力を考えていくと、母語の支援等の必要性も関係してきますから、教員だけではどうしてもできない。そうすると、母語支援という方々との連携、そこにはやはりNPOとか、地元の国際交流協会とか、日本語教室とかという方々と連携しないわけにはいかないと。学校だけではなくて、放課後、また、土曜日、日曜日にそういう学習環境がある、そこに仲間作りもできるというところが少しでもあれば、学校での取組に補完していくという形がありますので、是非そういった点でも、国県市町が連携した取組がやはり必要ではないかなと改めて思いました。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
はい、どうぞ。

【各務委員】 各務です。私もNPOとしてずっと子供に関わってきて、この場で何か発言することがちょっと難しいなと思うところはあるんですけれども、せっかく私たちがずっと取り組んできて、少しずつ蓄えてきたノウハウを活用いただければいいなといつも思っているんです。可児市は集住都市で、たくさん外国の子供がいる学校もあれば、宮城さんが行かれたような、本当に学校に1人、2人しかいない学校もあって、集住地であってもいろいろな課題があります。それは、教育委員会と連携していろいろ取り組んでいくということで、可児市においては、行政と、というか、教育委員会とNPOは円滑にいっているんではないかなと思っています。
ただ、可児市、美濃加茂市の周りの市町も同じような課題を抱えているところがあるんですけれども、本当に1人、ぽんと入ってきただけで、どうしようということになったときに、私たちが、ある程度、制度ができて、予算が付いてやれるまでの橋渡しみたいなことができるといいなと思って、今、取り組んでいるんですけれども、そこには予算の問題が出てきてしまうということになるので、先ほど言われたような国ではこう考えていて、県ではこう考えていてというところがまだ足りていないのかなと少し思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。
ほかに、どうですか。どうぞ。

【藤巻委員】 藤巻です。外国人の子供の就学の促進という点からお話をしたいんですけれども、外国人の子供の社会統合ということを考えた場合、学校に来ている子供はまだいいわけですよね。来てない子供、浜松市は不就学ゼロということですけれども、不登校、不就学の子供に対する就学の促進を考えていかなきゃいけないと思うんですね。
時期尚早かもしれないですけれども、外国人児童の教育を義務化すれば、どこの教育委員会でも必死になって、小学校に子供を入れて勉強させるという取り組みをすると思います。それがまだ時期尚早であるとすれば、例えばフランスなんかがやっているように、外国人の移住者が来たときに生活講習会をやるという方法もあります。生活支援とか、行政の手続だとか、いろいろなことを教えるんですけれども、そういう場で学校教育についても説明する。そういうことを日本でも、単に就学の時期が来たから、日本語の就学案内を送るだけではなくて、外国人の方が引っ越してきたら、行政がいろいろな生活指導といいますか、支援といいますか、講習会なんかをやる一環の中で、学校教育についてもきちんと説明するとか、そういう不就学、不登校を減らすための努力をもっとやっていくということを考えていったらどうかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

【佐藤座長】 ありがとうございます。国際教育課は主に学校を所管しておりますけれども、文化庁の国語課などでは、生活者としての日本語の支援とか、広い観点から今のようなお話の取組も行っているようなところがありますけれども、松本先生、そういうところは先生の御存じの中に何かございますか。

【松本委員】 不就学のこと……。

【佐藤座長】 そうですね。それも含めて対応しているようなところは。

【松本委員】 そうですね。文化庁の方は子供を単独で対象とするのではなく、保護者を巻き込んだ形での支援というような事業を進めていると思うんです。例えば、外国人の保護者が子育てをするときに様々な問題にぶつかる。それで、文化庁の予算を取って親子の支援をしようということで、いろいろなところが取り組んでいるということを、たまたま地元の方で関わっている方を集めたシンポジウムを昨年末にやりました。
そうしましたら、たとえ日本人男性と結婚された家庭であっても、子供の教育に中心になっている母親が、言葉の問題もあって、日本の制度のことが分からないというときに、その事業を使って多くの地域に働き掛けて、そういった方たちに就学前から、日本の教育制度だとか、学校に入ってからの様々な問題について考えるような取組をしているところがある。それはとても意味があることだなと思いました。
それともう一つ、よろしいですか。関連して、実は愛知県は、2006年からプレスクール事業を始めています。その中で、随分いろいろなことが分かってきました。3年後にそれまでのモデル事業の成果を集めて、プレスクール実施マニュアルを作って、ホームページで公開しました。今は普及に努めている段階です。実際に小学校に入ってからでは遅い。5分、10分、授業に座っていられないだとか、全く日本語が分からないような子供たち、それから親も日本のことを知らないということで、新1年生になる子供を対象とした事業が愛知県のプレスクール事業です。どの保育所にも幼稚園にも通っていないような子供たちを就学時健診のときに見付けて、その後、12月から3月ぐらいまでの4か月間に、期の日本語だとか、学校生活に適応できるような支援をする、そして、親御さんには日本の学校制度について情報提供をするということをやっています。それがスムーズな就学に結び付けられるということで効果を上げているところです。
ただ、そうしたプレスクール事業に関わっていて、私自身が今、痛切に感じていることがあります。きょうはいろいろな分野の方がお集まりなので、是非、一言付け加えさせていただきたいと思います。日本で子育てをする外国人の御家庭で多言語環境で子育てをする場合には、言語習得に対して特別な留意点があるということを、母子手帳を渡す段階でしっかりと伝える必要があるのではないかということです。日本生まれが非常に増えてきている状況にあって、日本生まれなのに、いつまでも日本語指導が必要な子供たちがなかなか減らないというのは、ゼロ歳から6歳までを全く手付かずな状態に置いて就学させてしまう。就学させてからあれこれの施策を考えるというのでは遅いのではないか。母子手帳を渡す段階、それから、乳幼児健診の制度をうまく活用して、しっかり育てていく必要があるのではないかと感じています。

【佐藤座長】 ありがとうございました。
ちょうど予定していた時間になりましたけれども、まだ発言のない方、もう一方ぐらい、どうぞ。

【池上委員】 発言がなくはないですけれども。

【佐藤座長】 どうぞ。

【池上委員】 2つ。今の松本委員のお話と関連することが1つと、先ほどの佐原委員の御発言に関連することを1つ、話をさせてください。
三角形の比喩を使いますけれども、ここは文部科学省の会議なので、学校の中の三角形にまだ乗っかってくる前の子たちをちゃんと乗っけていこうというところが、今の松本委員の御発言だったと思います。一方、三角形に入っているはずの年代なんだけれども、外れちゃう子たちというのもいますよね。何らかの理由で不登校だったり、あるいは不就学になってしまったり。そうすると、そこには福祉の分野との連携が非常に重要になってくると思います。学校の現れを学校の中だけで解決するのは実は難しくて、福祉の分野との連携、具体的には例えば児童委員であるとか、民生委員であるとか、そういう地域の福祉との連携というのも是非考えてみることで、その三角形に子供たちが乗っかってくるだろうと思います。
それからもう一つ、三角形の上の方を伸ばしていくということを考えたときに、きょうの宮城のような存在がそうですけれども、日本で育つ外国につながる子供たちの中に本物のグローバル人材になる原石がたくさんいるんだということを、経済界の方々にも是非知っていただきたいと思います。私自身が外国につながる子がたくさんいる大学にいて、増えてきた当初、一番危惧したことは、これで就職でこけたらどうしようということだったんですね。けれども、本学に限らずですけれども、さすがに今、この21世紀の日本の社会で、グローバル企業はこういう人材を欲しいという明確な意思表示をしてくれます。これまでの日本に、ある意味でいなかったようなマルチリンガルで、しかも、一歩家を出れば多文化環境に柔軟に対応している。一方で、日本の社会で育って、日本のはやり歌も知っていれば、同じドラマも見てという、日本のことをよく知ったグローバル人材の原石がいるのに、留学生を、留学生をということしか経済界は言わない。もっと足元の原石を磨いていく、そういった期待に応える人材が今やっと社会に出始めている状況なので、それも広く日本社会、とりわけ経済界にも伝えていくと、三角形の上の方に対する期待が高まって、結果的には底が上がっていくと同時に、上も伸びていくということになるのかなと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございました。
きょうの議論を踏まえると、もちろん、この有識者会議を国際教育課が所管するということは、当然、学校教育に焦点化されるものだろうと思いますけれども、ただ、広い意味で言うと、前書きでもいいし、前文の方でも結構ですので、広い観点からその国の在り方、あるいは教育に限らずに、文科省の中での連携、さらには今、池上委員からございましたけれども、当然、教育というのは医療や福祉と連携なしにあり得ない話なんですね。ですから、そういう広い観点から少し視点を書き込んで、その上で具体的な学校教育の課題を書き込むようなスタイルを取れればいいかなと思っておりますけれども、これもまたいろいろ議論をさせていただいて、どういうふうになるか、これからも議論を続けていきたいと思います。
きょうはいろいろと御発言いただきましてありがとうございました。また、ヒアリングに応じていただきました方々、ありがとうございました。次回以降、これをまた事務局の方で整理していただいて、報告書の取りまとめに向けて具体的な議論を進めていきたいと思います。
最後に議題の3、その他として、今後のスケジュールの説明について事務局からお願いいたします。

【齋藤主任学校教育官】 それでは、資料の6をごらんください。資料の6でございますが、有識者会議の今後のスケジュールについてでございます。
これまで、本日含めまして4回まで議論、ヒアリング等をしていただきまして、次回の第5回有識者会議、4月18日を予定しております。その後、今、時間調整中でございます5月9日にも、基本的には最終回に近い形で会議を予定しておりまして、この2回にわたりまして報告書案の骨子及び報告書案ということで、本日頂いた御意見も踏まえて御議論いただければと思っております。取りまとめに当たりましては、今、座長から御指摘いただきましたように、今回、学校における有識者会議となっておりますが、文科省内もきちんと連携を取っております。さらには、今回、オブザーバーでも各省庁からお越しいただいておりますので、こういった方々とも相談しながら、なるべく広い視点で報告書案をお示しできたらと思っております。
それから、4月18日に最初の骨子をお示しすることになりますけれども、そこに前後いたしまして、来年度の政府の様々な予算化に向けました議論ですとか、取りまとめ等の作業が入る可能性がございます。場合によっては、4月18日に前後する場合につきましては、あらかじめ委員の皆様に少し事前に御紹介させていただいた上で、文科省として少しこの議論を先取りして、そういった政府の提言等に打ち込んでいくといったことにつきましても御相談させていただければと思っております。必要に応じてメール等で御意見を頂ければと思っております。その際にはどうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。次回は4月18日ということで、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、本日、これで閉会とさせていただきます。皆さん、きょうはありがとうございました。

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