学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議(平成27年11月5日~)(第1回) 議事録

1.日時

平成27年12月1日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 座長・副座長の選出及び議事の公開について
  2. 学校における外国人児童生徒等に対する教育支援について
  3. その他

4.出席者

委員

池上委員、各務委員、古角委員、佐藤委員、佐原委員、菅原委員、高田委員、髙橋委員、竜澤委員、藤巻委員、吉住委員

文部科学省

藤原大臣官房審議官、小林国際教育課長、齋藤国際教育課主任学校教育官、村松国際教育課専門官、松木大臣官房国際課国際協力企画室長、岸本国語課長(文化庁)

オブザーバー

浅田内閣官房教育再生実行会議担当室長、村田内閣府政策統括官(共生社会政策担当)定住外国人施策推進室参事官、小川外務省領事局外国人課長、長尾法務省入国管理局入国在留課補佐官、植村総務省自治行政局国際室長、久知良厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部外国人雇用対策課長、松崎経済産業省産業政策局産業人材政策担当参事官室長補佐、

5.議事録

【佐藤座長】  それではまず,文部科学省から御挨拶を頂きたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【藤原審議官】  失礼いたします。学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議の開催にあたり,一言御挨拶を申し上げます。
 まず,本日御出席の皆様方におかれましては,御多忙中にも関わらず,当有識者会議の委員への御就任を快くお引き受けいただきましたこと,ここで改めて感謝を申し上げたいと存じます。また,今回オブザーバーとして有識者会議に参加をしていただきました関係各府省の方々にもお礼を申し上げます。
 現在,我が国では,様々な分野でグローバル化が進展をしております。我が国の在留外国人数も平成26年度には210万人に達しているところでございますけれども,公立学校に就学する外国人児童生徒の数も10年前と比較いたしまして,1割以上増えているというふうな状況になっているところでございます。また,こうした子供たちが在籍する学校数は,全学校の約2割,そしてまた市町村別に見た場合には,おおよそ全体の5割の自治体にこうしたお子さんが在籍をするというふうな状況でございまして,この問題は既に自治体にとって全体として取り組むべき大きな課題となっているというふうな状況でございます。
 文部科学省では,小中学校における外国人児童生徒の就学支援や適応指導,日本語指導を充実させるため,これまで日本語指導教員の加配措置や,あるいは日本語指導を行うための教員研修の実施,また,外国人児童生徒に対する様々な支援を行う自治体への補助などの取組を行ってきているところでございます。
 しかしながら,近年,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の増加や支援を必要とする児童生徒の母語の多様化,また,外国人児童生徒の在籍校が散在化しているという状況,また,その一方で集住化が進んでいるという状況もございます。こうした環境変化に対応して,その対応が各自治体で難しくなってきているというふうな状況があるわけでございます。また,更に政府におきましては,第5次出入国管理基本計画において,我が国経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく基本方針が示されておるわけでございますけれども,こうした中で,今後,こうした外国人の子弟の児童生徒も増加も予想されているという状況だと考えております。
 こうした中,これらの外国人の子供たちが日本人の子供たちと同様に進学の機会を得て,阻害されることなく,我が国の社会で活躍することを可能としていくことは,その子供たちにとっても,また我が国にとっても極めて重要と認識をしております。
各御専門の分野や各地域で先進的,専門的に取り組まれている委員の皆様におかれましては,外国人児童生徒に対する支援のための体制整備,教員,支援員等の養成確保,外国人児童生徒の進学,就職への対応や,地域社会における支援の在り方などに関しまして,現状の課題や今後どのような方策を講じていくべきかなどの点について御意見を賜ればというふうに考えているところでございます。
文部科学省といたしましては,本有識者会議の御提言を踏まえ,今後関係府省とも連携しつつ,更なる外国人児童生徒教育に関する施策の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
委員の皆様方におかれましては格段の御協力をお願い申し上げまして,開会に当たっての御挨拶とさせていただきます。。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。議題の2,学校における外国人児童生徒等に対する教育支援について,文部科学省より資料の説明をお願いしたいと思います。

【齋藤主任学校教育官】  それでは,事務局より資料の3-1,3-2,それから資料4の順に従いまして説明を行わせていただきます。
 資料3-1をお開きください。まず1ページ目が,外国人児童生徒に関するデータでございます。公立学校に在籍する外国人児童生徒数では,近年7万人程度で推移しておりまして,平成26年度7万3,000人余りということで,増加傾向にあります。
 それから,2ページ目にお進みいただきますと,日本語指導が必要であるという児童生徒数のデータを示しております。上段の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒数は,2万9,000人余りということで,全体の約4割となっております。
 下段でございますが,御両親のうちどちらかが外国籍や,外国のルーツを持たれるなど,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒が最近急増しております。平成26年度現在で7,800人余りという現状でございます。
 それから,3ページ目の上段でございますが,日本語指導が必要な児童生徒が多様化しているという状況を示しています。上段の左側は外国人の児童生徒の母語の状況を示したグラフでございますが,ポルトガル語,中国語,フィリピノ語,スペイン語,ベトナム語等々多様となっております。日本国籍の児童生徒の使用言語が右側のグラフでございますが,こちらも同様に多様化しています。近年の傾向としましてはポルトガル語が若干減少傾向でございますが,中国語,フィリピノ語等が増え,「その他」,具体的には資料右側に「その他の言語」が書かれていますが,こういった言語が増えております。
 下段でございますけれども,日本語指導が必要な児童生徒には集住化・散在化の傾向が見られます。先ほど審議官の挨拶の中にも言及がございましたが,左側の児童生徒が在籍する学校数のグラフですと,全体の約22%の学校に在籍があるということでございます。この内訳は,1人しか在籍していない,2人在籍といったところが全体の過半を占めている一方,5人以上という学校も1,600校ほどあり,中には100人以上在籍という学校があるということで,両極化しているという状況でございます。
 右側グラフの在籍市町村ベースで見ますと49.5%に在籍しているということで,かなり多くの自治体に関係する問題であるという認識でございます。
 4ページ目は帰国児童生徒数の動向でございます。近年1万1,000人程度で推移しておりまして,日本語指導が必要な生徒数が1,500人程度というような状況です。
 以上がデータ的なところでございます。5ページ目以降が学校に関する施策等の御説明になります。まず外国人の子供の公立義務諸学校への受入れの基本的な考え方についてです。日本国憲法,教育基本法に基づく日本人の子弟とは異なり,外国人の場合には就学義務というのは課せられてございません。ただし,国際人権A規約,児童の権利に関する条約をそれぞれ昭和54年,平成6年に批准しておりまして,これらの条約に基づき外国人の保護者がその子供を学校に就学させることを希望する場合には無償で受け入れ,日本人と同一の教育を受ける機会を保障しております。
 6ページ目では,文科省における帰国・外国人児童生徒に対する支援施策でございます。まず一つ目は,学校における日本語指導を行う教員の加配定数を基礎定数とは別に措置しているということでございます。これは児童生徒支援の加配という8,582人の内数ですが,日本語指導担当教員を加配しています。
 二つ目でございますが,予算事業として帰国・外国人児童生徒教育推進支援事業を行っております。「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」については詳細がスライド8ページ目左側,ブルーの部分がそれに該当いたします。自治体における受入れから卒業後の進路までの一貫した指導支援体制を構築するための独自の取組に関しまして,文科省が3分の1補助で支援しているということでございます。平成27年度で53の自治体に対して実施中でございます。
 それから,戻りまして6ページ目の三つ目の丸,指導者に対する研修の実施ですが,こちらは教員研修センターにおきまして,外国人児童生徒教育に携わる教員,管理職,指導主事を対象とした実践的な研修を実施しております。年1回,4日間で毎年100人程度というような研修でございます。こちらも具体的なスケジュール等につきまして,スライドの10ページ目に書いていますので,御参照いただければと思います。
 それから,6ページ目の四つ目の丸ですが,就学ガイドブックの作成・配布ということで,外国人の子供が就学の機会を逃すことがないように日本の教育制度や就学の手続をまとめたガイドブック等を7か国語で作成し,教育委員会・在外公館等に配布しております。また,法務省の地方入国管理局で在留資格の手続をされる際にもこういった関連の資料を配布することとしております。
 次に7ページ目,一つ目の丸,日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施でございます。こちらはスライドの11番に詳しく書いていますが,平成26年4月に学校教育法施行規則の一部を改正いたしまして,このような制度を設けております。主に小中学校段階に在籍する外国人児童生徒等のため,日本語指導担当教員が指導するという条件で,年間10単位から280単位時間の授業時数について,いわゆる取り出し指導という形で特別の教育課程を編成できる制度となっております。その際には個別の指導計画の作成や学習評価の実施といったことを行っていただいております。
 まだ始まって間もない制度でございますが,12ページ目に現状データを付けております。下段の表のとおり,日本語指導を受けている者のうち特別の教育課程で日本語指導が行われている割合は,児童数ベースで20%程度,実施学校数ベースでも大体20%前後ということで,引き続き普及の必要性があると考えております。実施のために必要だと考える取組として人員のところも含めた体制整備という御意見が出ております。
 それから,7ページ目に戻って,「外国人児童生徒の総合的な学習支援事業」として平成24年まで行ったもので,各種の基盤的な資料や情報等の整備を行っております。一つ目が「外国人児童生徒受入れの手引き」で,こちらは机上資料として冊子を置かせていただいておりますが,様々な外国人児童生徒の受入れに携わる学校管理職,担当教員,学級担任,都道府県教育委員会,市町村教育委員会等の役割,連携の在り方等について分かりやすくまとめ,配布をしているものです。
 二つ目に,情報検索サイト「かすたねっと」を設けておりまして,これはスライドの13番のとおり,主に教育委員会が独自に作成されている多言語文書,例えば在学証明書ですとか健康診断の案内ですとかそういった行政文書に加えて,多言語の教材等でほかの団体でも利用可能なものをアップロードして,共有できるようなサイトとなってございます。
 7ページ目の3番目,「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント~DLA~」でございます。こちらは14ページ目に概要がございますが,日本語の指導を行うに当たり,子供たちの言語能力を把握することが喫緊の課題となっているということで,その学習支援の必要性ということの観点からの言語能力を把握するためのツールとして,作成,配布しているものでございます。「はじめの一歩」というところから,話す,読む,書く,聴くといった各数十分程度のアセスメントを行った上で,6段階のステージに沿って,子供の発達段階を評価し,その後の指導に役立てるといった仕組みです。
 それから,7ページ目,最後の4番でございますが,「外国人児童生徒教育研修マニュアル」として,教育委員会が研修会を計画するときの参考となるもの,具体的には企画立案から研修プログラムを作るまでの手順,研修プログラムの作成例,研修項目等につきまして冊子にしております。これも机上配布の資料でございますので,お時間があるときに御確認いただければと思います。
 それから,少し飛びまして,19ページ目を御覧ください。こちらは進学関係の状況でございます。まず高等学校における受入れの状況でございますが,高等学校の入学者選抜におきまして,帰国生徒の特別定員枠,外国人児童生徒の特別定員枠を多くの自治体で設定していただいているという状況でございます。
 それから,20ページ目でございますが,これは外国人集住都市会議における配布資料の一部を参照させていただいておりますけれども,中学卒業者の卒業後の進路についての参考データでございます。卒業者の約3割が就職されているということと,進学者のうちの約4割は定時制,通信制の高校に進学されているという状況でございます。ただ,この調査対象としては,家庭内での日本語以外の言語を使用している,日本語のネイティブスピーカーではないということを学校が把握している方を対象としており,日本語指導を受けているかどうかということに関わらないデータという状況でございます。
 以上,駆け足でございましたが,資料3-1の説明でございました。それでは,引き続きまして官房国際課の方から資料3-1の一部につきまして,御説明申し上げます。

【松木国際協力企画室長】  国際課国際協力企画室長の松木と申します。私から定住外国人の子供の就学促進事業につきまして,御説明をいたします。資料3-1の戻っていただきまして8ページ目,右下に8と書いてあるスライドを御覧いただきたいと思います。
 このスライドの右側でございますけれども,「定住外国人の子供の就学促進事業」を本年度から開始しております。これは不就学の外国人の子供を支援対象としているものでございます。本事業は従来,「虹の架け橋教室」と呼ばれておりました事業の後継事業に当たるものでございまして,この「虹の架け橋教室」の元になっていた基金の存続年限が昨年度満了したことに伴いまして,本年度より新しく実施している事業となります。
 現状といたしましては,外国人の集住地域またその他の地域におきまして,不就学の定住外国人の子供が存在しており,その地域,生活・家庭環境,国籍・言語など背景が多様になっております。
 こうした状況を踏まえまして,子供たちが公立学校や外国人学校など適切なところに就学できるように地域の実情に応じた支援が求められております。本事業はこうした支援を各都道府県あるいは市町村が実施していただくことを前提にいたしまして,それに対して補助金を交付することで支援をするというものになっております。
 対象となる取組の例でございますが,学校とのコーディネートを通じた就学の促進,日本語教室における日本語指導,また教科指導や母語指導,地域社会に溶け込むことも重要でございますので,地域の生活,文化に適応するための地域社会との交流などの取組となっております。
 事業の実施につきましては,都道府県や市町村が直接実施するという形だけではなく,各自治体からNPO法人などに委託して実施することも可能となっております。本年度は10の自治体に対して補助金を交付し,うち7つの自治体がNPOなどと連携をして事業を実施するということになっております。
 次のスライドを御覧いただきたいのですが,9ページ目でございます。これが私が冒頭申し上げました前進となる事業「虹の架け橋教室」でございます。もともとは2008年9月15日に起こりましたリーマン・ショックに端を発します景気後退を受けて,日本でもその影響により不就学あるいは自宅待機になる定住外国人の子供が多く見られました。これを受けまして平成21年度からこの事業を開始したものでございます。平成21年度補正予算にて国際移住機関(IOM)と言われます国際機関に拠出金を出しまして,そこに基金を創設し,その基金からNPO等に委託をするという形で事業を実施いたしました。
 もともとこの基金は平成21年度から3か年度で満了する予定でございましたが,更に3年間延長し,平成26年度までの計6年間この事業を実施いたしました。
 この6年間の中で8,751人が教室に通い,4,333人が公立学校あるいはブラジル人学校などに就学をいたしました。この「虹の架け橋教室」から換算いたしますと,今やっている事業は7年目ということになります。来年度以降も引き続きこうした定住外国人の子供たちの支援について丁寧な周知を図りつつ,継続して実施をしていきたいと考えております。
 私からの説明は以上でございます。

【岸本文化庁文化部国語課長】  失礼いたします。文化庁の国語課でございます。
 文化庁では,外国人の生活者としての側面に着目いたしまして,地域の日本語教育に関する施策を実施しております。お手元の資料の3-2を御覧いただきたいと思います。まず,日本にどの程度の在留外国人がいるかということですけれども,左のグラフを御覧いただきたいと思います。法務省の統計によりますと,平成27年6月末現在で217万人程度いらっしゃるということになります。左端に平成元年のデータが載っておりますけれども,平成元年で98万人程度ということでございましたので,2倍以上に増えているということになります。
 そして,右のグラフでございますけれども,日本語学習者数の推移を表したものを載せてございます。これは文化庁で実施している日本語教育実態調査によるものですけれども,平成26年11月現在で約17万人となっております。この調査は昭和42年から開始しておりますけれども,17万人というのは過去最高の数字となっております。この学習者数でございますが,地域の日本語教室ですとか大学,短大等で日本語を学んでいらっしゃる方の数の合計となっておりまして,こちらの方は載せていないんですけれども,0歳から9歳までの学習者が1,938人,10歳から19歳までの学習者が1万7,685人という形になっております。
 めくっていただきまして2ページ目でございます。こちらは文化庁の日本語教育施策の概要になっております。まず審議会における検討でございますけれども,平成19年に文化審議会の国語分科会に日本語教育小委員会を設置しております。そして,地域の日本語教室などの参考にしていただけるようにということで,生活上の行為の事例を取り上げました標準的なカリキュラム案ですとか,教材例集などの報告書を計画的にまとめてきております。また,平成25年には今後の日本語教育の推進に向けた課題を11の論点として整理いたしまして,順次審議を行っているところでございます。
 その下,具体的な事業の実施でございますけれども,大きく分けまして5つの事業を実施しております。左から「生活者としての外国人」のための日本語教育事業,条約難民及び第三国定住難民に対する日本語教育,日本語教育に関する調査及び調査研究,日本語教育研究協議会等の開催,そして省庁連携日本語教育基盤整備事業となっております。この中で例えば日本語教育研究協議会として,先ほど申し上げました標準的なカリキュラム案を活用した地域の取組事例を周知するようなことも行っておりますし,その下の省庁連携日本語教育基盤整備事業のところでございますけれども,地域の日本語教室等で作成していただきました教材などを共有する,日本語教育コンテンツ共有化推進事業を実施しているほか,関係府省,日本語教育を実施されている関係機関等にお集まりいただきまして,情報共有を図る日本語教育推進会議の開催なども行っております。こういった形で各地域での日本語教育あるいは関係機関での日本語教育施策をより効果的に実施していただけるようにということで,情報共有の取組なども行っておりますけれども,本日は時間の都合もございますので,文化庁の日本語教育予算の7割を占めます「生活者としての外国人のための日本語教育事業」の御説明をいたしたいと思います。
 めくっていただきまして3ページを御覧いただきたいと思います。生活者としての外国人のための日本語教育事業,予算額は1億5,000万円程度となっております。これは国内に定住する外国人を地域社会の一員としてしっかりと受け入れまして,日本での日常生活に必要な一定の日本語能力を習得していただく,そのための各地の推進拠点となる取組を支援することで,地域日本語教育の体制整備を図ろうという事業でございまして,平成19年度から実施をしております。具体的には左上にございますように,地域日本語教育実践プログラムのAとBという二つのプログラムを実施しております。Aの方は先ほど申し上げました文化審議会でまとめていただいた標準的なカリキュラム案を活用していただくということを前提としまして,日本語教育の実施,人材の育成,教材の作成,この3点をパッケージとして実施していただいております。
 その隣,プログラムBの方ですけれども,地域資源の活用・連携による総合的取組として,地域の文化活動・市民活動,例えば外国人が参加しやすい子育て支援講座ですとか防災教室などのような活動に参加を促しつつ,日本語教育を実施する取組ですとか,日本語教育に関する地域における連携体制を構築・強化する取組などを支援しております。
 今年度,平成27年度は地方公共団体ですとか国際交流協会,地域のNPO団体等,56の団体に委託をしまして,日本語教育を実施しております。対象としましては在留資格ですとか年齢等に特に制限はございませんので,幅広く様々な外国人の方に対する日本語教育を実施しているということでございます。
 その下,地域日本語教育コーディネーター研修がございますけれども,こちらは地域における日本語教育プログラムの編成ですとか地域の関係機関の調整などに携わっていらっしゃる方などを対象といたしまして,コーディネーターとしての研修を行っております。
 めくっていただきまして4ページ目でございます。こちらは先ほど申し上げました文化審議会国語分科会日本語教育小委員会で,平成25年にまとめていただきました11の論点についての資料となっております。現在論点7「日本語教育のボランティアについて」,論点8「日本語教育に関する調査研究の体制について」,この二つの論点に関しまして議論を進めていただいておりまして,今年の8月に中間まとめをしたところでございます。中間まとめの概要はその後ろの5ページ目にございますので,後ほど御覧いただければと思いますけれども,現在各都道府県,政令市等から頂いた御意見をまとめているところでございまして,今後,年度末をめどに最終まとめをする予定でございます。その他の論点につきましては,来年度以降に日本語教育小委員会において適宜審議していく予定でございます。
 簡単でございますけれども,文化庁の日本語教育施策は以上でございます。

【齋藤主任学校教育官】  それでは,最後に私の方から資料4につきまして,御説明させていただきます。こちらは今回の有識者会議の検討事項案ということで,事務局の方でこれまでの関心事項等参考にまとめさせていただいたものでございます。いろいろ御意見いただきまして,修正等をしていければと考えております。
 主に四つのポイントに分けさせていただいております。一つ目が学校における外国人児童生徒等に対する日本語指導体制の整備・充実ということです。先ほど現状で申し上げましたとおり,児童生徒の散在・集住化等多様化が進んでいることを踏まえ,各自治体で多様なニーズに対応するため,「拠点校」を整備するなどにより,対応されているケースも多いと聞いておりますが,どのような地域にどのようなモデルが必要なのかといった検討が必要かと考えております。
 また,拠点校を中心として学校にとどまらず様々な関係者等の連携,ネットワークを構築する必要があるという声を聞いております。具体的には自治体の広域連携,学校種の幼・小・中・高間の連携,学校外の社会教育関連の施設,部署等の連携・NPO・企業等の連携,ネットワークの構築の仕方等を検討課題と挙げさせていただいております。
 2番目は,日本語指導に携わる教員・支援員等の養成・確保ということでございまして,こちらも多くの現場から日本語指導に必要な教員,支援員,母語が多様化する中で母語による支援員等の役割分担,また,実際に配置が十分でないといった地域も含めた配置の在り方等について御意見を頂いているところでございます。また,配置される教員,支援員等の専門性向上のための方策というのが喫緊の課題でございまして,先ほど御紹介した教員研修センターでの研修を含めた様々な研修の在り方,養成段階での在り方といったところも含めた議論というのが検討課題としてあり得るかと思っております。
 それから,3番目は,日本語指導における指導内容の改善・充実というところでございます。こちらは先ほど日本語指導のための基盤整備ということで御紹介申し上げた様々なツール,例えばJSLカリキュラムやDLA対話型アセスメントなどをどうやって普及・促進していくのかというところが課題かと考えております。
 それから,「特別な教育課程」を昨年策定したところですが,導入に必要なノウハウもまだまだ共有ができておらず,「特別な教育課程」を踏まえた指導の在り方,それから,日本語指導のための教材の在り方についても地域によって様々な状況にどう対応するかという観点も重要かと思っております。
 それから,四つ目,外国人の子供の就学促進及び進学・就職への対応でございます。まず就学については,自治体におかれましては関係部署とも連携しながら,かなり対応を頂いているところですが,例えば就学前段階からのきめ細かな就学相談の在り方をいかにすべきかといった課題。それから,保護者等への対応に関するサポート体制の在り方。それから,学齢超過の段階で義務諸学校に来られる方がいらっしゃるということで,その対応も自治体によってかなりばらつきがあると聞いております。そういった事柄に対する対応の在り方ということを挙げさせていただいております。また,外国人児童生徒等にとって高校進学がハードルとなっていることを踏まえ,入学の「特別枠」というもので足りるのか,あるいは中学段階からの学力保証の対応も含めて,高校進学の促進をどう考えていったらいいのかという課題。それから,最後に書いてございますが,そういった就学促進等に当たっての企業等との連携の在り方等も検討課題になり得るのではないかと考えております。
 以上,事務局としての案でございますので,本日それから今後の御議論でブラッシュアップしていければと考えております。以上,資料3及び資料4の説明でございました。

【佐藤座長】  ありがとうございます。事務局から資料3によりデータ,様々な資料,施策について説明がありました。私どもがこれから議論していく前提になりますので,御質問等がありましたら受けたいと思います。いかがでございましょうか。よろしいですか。
文科省においても様々な施策を行われてきており,もう四半世紀がたっておりますけれども,その施策について今,御説明いただいたと思います。これはこれとして了解して,私どもはこの後,これを前提に議論をしていきます。折々また御質問等ございましたら受けたいと思います。今日の説明としてはこれでよろしいですか。
 それでは,資料4でございます。主な検討事項ということで4点提案をしていただいております。これまで様々な文科省の施策を見ていたときに,日本語の指導体制の問題,それから,指導者の問題,指導内容の改善の問題,子供の就学促進,進学,就職への対応というこの四つの柱を立てていただいて,今後議論をしようということでございます。先ほど説明がありましたように,これについては,これから今日皆様から様々な御意見を伺いながら,また修正を加えながらこれをブラッシュアップしていくという御提案でしたけれども,何か御質問なりありますでしょうか。よりいい方向でこれを改善していきたいと思っておりますけれども,こういうことはどうなんだとか,ここに提案に挙げられていないこういう内容についてもう少し議論したらどうかとか,伺いたいと思います。いかがですか。

【佐原委員】  じゃあ,一つ。

【佐藤座長】  どうぞ。

【佐原委員】  豊橋市の佐原です。今回の中身を見ていきますとあくまでも日本語力の不足している子供たちをどうしようかということにほとんど話がいっていると思うんですけれども,逆に外国の子供たちがたくさん入ってくることをどう生かして,日本の社会行動を変えていこうかとか,日本からの国際化を進めようかという視点は議論の対象にはなっていないんでしょうか。ちょっとお尋ねさせていただきます。
【佐藤座長】  どうぞ,お願いします。

【齋藤主任学校教育官】  ありがとうございます。貴重な御指摘ありがとうございます。もちろん我々といたしましてはそのあたりのところも議論の範囲となっているかと思います。過去のいわゆる地方自治体に対する通知におきましても,そういった日本語指導というところだけではなくて,特性,個性を伸ばしていくといったところも含めてお願いしているところでございますが,具体的に我々としてどういった対応をするべきかということは御意見いただければ有り難いと思っております。

【佐藤座長】  この「外国人児童生徒受入れの手引き」などでも,第1章のところで,日本語指導体制というよりは受入れ体制そのものをどう考えていったらいいのかということは,既に文科省としても提案をさせていただいているところでございます。ですから,今の御提案を受けますとこの1のところに日本語指導体制のみならず,もう少し広い観点からこの子供たちの受入れ体制であるとか,これをどう考えていくのかという基本的なコンセプトみたいなものが多分必要ではないかというお話かもしれませんので,後ほど委員の皆様からお伺いしたいと思っております。今回提案していただいたのは3番まで,日本語指導というところに少し特化してございますけれども,もうちょっと広い観点というような意見だったと思いますけれども,そのほかいかがでございましょうか。どうぞ御自由に御意見いただければと思いますので,いかがでございますか。どうぞ。

【各務委員】  可児市国際交流協会の各務と申します。教育委員会の方にもヒアリングをしたところ,最近特別支援の方に多く外国の子供たちが在籍していたりとか,それから,これからも外国の子たちが生まれ育って,また転入してくることの増加を考えると,その日本語以外の特別な支援というところも検討していただけないかと思いますが。

【齋藤主任学校教育官】  本日御議論いただきまして,そういったところも含めて御提案いただければと思います。

【佐藤座長】  ありがとうございます。4の子供の就学促進の一環の中で特別支援等も多分視野に入ってくるかなと思います。その辺のところで是非私どもよく聞きますので,外国人の特別支援教育の在り方みたいなものも含めた議論が,就学促進としては必要だろうという御提案だと思います。私どもも是非議論をしていきたいと思います。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【吉住委員】  細かいところで恐縮なんですが,8ページの先ほど御説明いただいたところで,「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」の補助対象なんですが,こちらは隣の1と2で並んでいますけれども,1の方は中核市までということになっていまして,私ども特別区という立場なんですが,それとあと町村といったところにはこの補助は使えないということなんでしょうか。

【佐藤座長】  これは直接3の質問でございますので,いかがですか。

【齋藤主任学校教育官】  現行では都道府県,指定都市,中核市対象ということになっております。これは「日本語指導の充実」の項目において,必須の要件として「特別の教育課程」を用いていただくというから,教員の配置というところが前提となってくるということを踏まえて,現状としましては教員配置も含めて対応できる都道府県,指定都市,中核市が対象とさせていただいております。今後,改善の必要性も当然あるかというふうに考えております。

【佐藤座長】  それでは,適宜また御意見を頂ければというふうに思います。是非それぞれのお立場から,皆様からお話をお伺いしたいと思っておりますので,このお話を伺った上でこの柱もまた修正していくというふうにしていきたいと思います。
 それでは,1回目ということでございますし,是非委員の皆様からお一人お一人お話を頂ければと思います。資料を出していただいている委員もおられますけれども,何せ人数が非常に多うございますので,大変恐縮でございますけれども,お一人5分程度で少しお話を頂ければ有り難いと思います。名簿順にお願いしたいと思いますので,早速池上委員の方からお願いいたします。

【池上委員】  池上でございます。私は静岡文化芸術大学というところの教員をしておりますが,その大学は静岡市ではなく浜松市にございます。言わずと知れたブラジル人集住地域のど真ん中にある公立大学であります。
 これから短い時間で3点お話をさせてください。今日の資料3-1の3ページのところ,外国籍児童生徒の母語という言葉がありますよね。また母語による支援といったこと,保護者への対応ということはあるんですが,今,私たちが一つ留意しなきゃいけないことは,実は母語で伝えれば全て済むわけではなくなっているんだということです。実は母語もうまく通じない子供もいますし,また保護者の中には御自身が日本で育って,義務教育をしっかりと終わられていない保護者という方もいらっしゃいます。去年,ブラジルから来たメンタルヘルスの専門家の方が浜松及び隣の磐田市でヒアリング調査した結果を本学のフォーラムで御報告いただいたんですけれども,やはりこれまでなかった新しい課題が出ている。それは保護者が日本の学校をよく分かっていないし,母語も実は中途半端,そういう状況が出ているということです。
 かつては例えば90年代前半はブラジルで教育を受けた方が日本に来て親になった。だから,学校で学んだ経験がある。ポルトガル語ができる人だった。ところが,今の保護者の中には日本でもブラジルでも教育を受けていない。また,日本語もポルトガル語も非常に中途半端な保護者の方もいらっしゃるということで,母語で対応すればいい,人を付ければいいという問題ではない,もっと深いレベルの問題が出ているなと感じます。そこをどうやって私たちが考えていくかが一つ課題として挙がってくるだろうと思います。これが1点目。
 次に,連携というところについてお話をしたいと思います。私どもの大学では2012年度から地域のNPOの方や場合によっては先生方,研究者等々が緩やかに集まる多文化子ども教育フォーラムというのを年に二,三回開催しております。そこで初年度(2012年)いろいろな人たちと議論した結果が,私が書いた「浜松における多文化子ども教育フォーラムとバイリンガル絵本プロジェクト」の中に,提言として書いてあります。ちょっとページ数が見づらいんですが,紹介します。2ページのところの提言1,市として,学校として外国人の子供について意識を統一してください。3ページの提言2,研修制度の充実を図ってください。提言3,コーディネーター(調整役)を配置してください。提言4,ライスコースの観点を意識してください。提言5,リソースルームを設置してください。提言6,支援に関わる人材の身分保障を図ってください。提言7,福祉分野との連携強化を図ってくださいということが挙がっています。
 これは具体的には浜松市と浜松市教育委員会に対する提言ということで市民の側の声をまとめたものなんですが,これをウェブ上等で紹介しますと,ほかのまちの方からこれぞまさに自分たちが伝えたかったことだという応援というか賛同の御意見を頂いたりしています。自治体によって個々の文脈は違うと思いますけれども,恐らく現場で関わっておられる方々が感じている課題,方向性ということはこの7つにかなり集約されているんじゃないかなと思っております。是非御参照いただければと思っています。
 3点目はポジティブで明るい話題をお話ししたいと思います。私どもの大学は,浜松にある公立大学ですけれども,そこに今,十数名の在留外国人学生がおります。ブラジル人が多いですけれども,1学年定員300人ほどの小さな大学に十数名います。本学には外国人枠の入試制度はございません。全員日本人と同じ入試を通って入ってくる,この国で教育を受けた学生たちです。その学生たちはポルトガル語が第一の言語で,日本語も入試を突破できるレベルを持っていて,しかも英語も物すごくよくできる。中には更に中国語ができるなんて学生もいて,本物のグローバル人材であります。
 ここ一,二年そういった学生たちは浜松市あるいは静岡県を代表するグローバル企業の総合職として就職の機会を得て,まさに日本と世界をつなぐ人材として羽ばたこうとしているという状況です。ライスコースの観点というところに引き寄せて言うと,子供たちにこの先にどんな未来が開かれ得るのかということを先輩たちの姿を見てもらってイメージしてもらえると思います。個々の学習の支援,日本語の支援も大事なんですけれども,その先に見える像というのが明確になることで,うんと学習の動機付けは進んでいくんじゃないか,モチベーションを高めるという意味でロールモデルと接する機会は大事だと思うし,ロールモデルとなり得る新しい世代が出てきていることを外国人の保護者やまた日本の社会にも広く知ってもらうようなことも背景を整える意味で大事なんじゃないかと思います。
 以上です。

【佐藤座長】  ありがとうございました。次,各務委員,お願いいたします。

【各務委員】  教室をたくさんやっているもので,教室名載せた資料を付けさせていただきました。私は岐阜県の可児市国際交流協会事務局長の各務と申します。
 外国人の人数ですが,今,全人口の5.5%を占めております。ずっと日系ブラジル人の方が多かったのですが,主に日系の方ですが,フィリピンの方が多くなり,昨年6月に逆転しました。最近もずっと微増しているというような現状です。けれども,ブラジルの方も最近少しずつ,また帰ってきていらっしゃるという現状があります。
 可児市国際交流協会は,市民が作った少し特異な協会になっております。可児市の建物である多文化共生センターの指定管理を行っていまして,指定管理の業務と自主事業を行っています。自主事業の半分以上,主に外国人の子供たちの支援の活動をしている国際交流協会です。
 教室はいろいろやっていますが,就学前のお子さんから過年度,中学を卒業した年齢のお子さんまでの教室があります。それは「虹の架け橋事業」で6年間取り組んできたものが基礎となっておりまして,今年度は可児市の委託です。先ほど説明がありましたが,可児市が交付金を利用して,すぐ予算化をしていただいたので,今年も継続して事業を行えているというような現状があります。
 就学前のお子さんにつきましては,概念を育てるということを目的に母語指導の時間を毎日1時間入れております。ただ子供たちの母語の数が増えてくると,この先対応が課題になってくるとは思いますけれども,基礎を作るには母語の力が大事だということで行っています。
それから,保護者への対応ですけれども,子供は少しずつ日本語を習得します。先ほどの説明にもありましたが,教育制度とか生活環境が違う保護者の方たちにこちらが当たり前と思って伝えていっても,なかなか伝わらないことがあります。学校のルール,いろいろな規則,持ち物というものを特に小さいお子さんがいらっしゃる保護者の方に対しては月1回の保護者懇談会を設けまして,繰り返し伝えています。
 それから,近隣の教育委員会への働きかけについてです。可児市教育委員会とは連携をとっています。可児市には,「ばら教室KANI」という初期指導の教室があるんですが,今,定員をオーバーしておりまして,自宅待機になっている子供たちを受け入れているという現状もあります。
 「虹の架け橋事業」で私たちが培ってきたものに,近隣の教育委員会に働きかけがあります。可児市には子供たちが大勢いるからいろいろな支援体制がありますが,可児市の近隣の市町は同じような支援体制がありません。例えば市の境に外国の子供たちが来たときに対応ができる教育委員会ばかりではないということで,今,3つの教育委員会さんと連携をとって子供を受け入れたり,指導者を派遣したりということもしております。
 それから,過年度の子供たちへの取組ですけれども,一番課題だと思っているのは,ドロップアウトしてしまう子供がまた最近少し増えていることです。将来的にまた学び直して高校に行きたいと思ったときには,「中学卒業程度認定試験」という,外国の子供たちにとっては大きなハードルがあり,しかも1年に1回しか受検ができません。タイミングを逃すと2年後,3年後となってしまうこともあります。教育委員会とは連携をとって,なるべくドロップアウトしないような支援をしていきたと思っています。
 それから,高校の進学先ですけれども,可児市の近隣では一つの普通科の高校と定時制の高校が外国人の子供たちが行きやすい高校となっておりまして,国際学級があって子供たちにとって学びやすいという条件があります。ただ,外国の子供たちだけの学級であり,日本人の子供たちと交流が進まなかったり,母語は大事ですけれども,日本語の習得が進まなかったりするという課題もあります。可児市には外国人の子供の在籍が100人を超える公立中学校,小学校がありますけれども,そこにも同じような課題があるのではないかと思っております。高校の進学先も国際教室のある高校だけではなく,キャリア教育というか,地域と交流する,大学生と交流することを通して,将来を考えた高校の進学先を見せていくような活動も必要だと考えいろいろ行っています。
 もう一つはグローバル人材ですけれども,これも国の交付金だと思うのですが,市から委託を受けグローバル人材育成事業を11月から始めました。これは母語の力を強くして,将来的に日本語と自分の持っている母語を生かして,「私にはこういう言語を使える力がある」と,その特性を生かした人材を育成することが目的です。それから,グローバル人材につながるのですけれども,人材の活用,先ほど池上先生もおっしゃいましたけれど,身近なロールモデルを増やしていくということで,可児市は高校を卒業した相談員を2名雇用しております。可児市国際交流協会も定時制の高校生4年生を採用し,今年は卒業して次のステップとし,大学に行くために,勉強しながら働いています。定時制の高校生のお子さんもインターンとして受け入れ,母語のサポートなどをしていただいております。
 以上,今,私たちが取り組んでいることを説明しました。ありがとうございました。

【佐藤座長】  ありがとうございました。続きまして,古角委員,お願いします。

【古角委員】  それでは,私の方からは,兵庫県教育委員会の取組,また課題という点でお話をさせていただきます。
平成23年に文部科学省の方で取りまとめられました「外国人児童生徒受入れの手引き」の47ページから,第5章「都道府県教育委員会の役割」に兵庫県教育委員会の取組を御提供させていただいておりますので,そこを御覧いただきましたら本県の取組が概略,御理解いただけるかなと思います。兵庫県は41市町ございまして,最たる,多文化共生都市の神戸市をトップに置きながら,その他の40市町というのはいわゆる散在地域ですが,いわゆる外国籍,また日本語指導が必要な児童生徒は全ての市町に在籍をしております。また,そのうち母語による支援が必要,つまり来日間もない児童生徒におきましては,41市町中31市町に大体8割の市町に在籍をしておりますので,なかなか予算状況,又は環境,人材というところでは,なかなか神戸市のような取組はできないところが多いわけでございます。
 そういう中で,神戸市のノウハウも頂きながら,その他の40市町をネットワーク化するという取組を,阪神・淡路大震災の後に地域国際化していくという県の施策の一つといたしまして,県教育委員会として,また人権教育課として,教育を受ける権利という中で,外国人児童生徒への教育支援をしてきたところでございます。
 平成11年度に,国の緊急雇用を活用して「子ども多文化共生サポーター」という母語による支援を実施いたしまして,今年で17年目を迎えます。現在は県の事業の部分と市町との役割分担によって,各市町に経費の負担をしていただいている状況がございます。県内外に在住する母語が話せる支援者を採用いたしまして,支援が必要な子供が在籍し、派遣を希望する学校全てに100%配置をするという事業でございます。
 ただ,ややもすると,この母語によるボランティア,支援員任せになるというところがございまして,日本語指導がなかなか推進できておりませんでした。国の「きめ細かな支援事業」,またその前進でございます「受入促進事業」,またその前の「JSLカリキュラム支援事業」も,全て本県は活用させていただいたところですけれども,一部の学校,研究校でしかそういう取組が進んでいない,全ての学校に普及していないというところがいまだにございます。そういった中で,兵庫県といたしましては,来年度から,この日本語指導に力を入れるという点で,是非ともまた国の事業のお力も頂きながら,日本語指導の支援員派遣事業を展開していきたいと考えています。
 話は少し変わりますが,本県におきましては,県立の高等学校に外国人枠は長らくございませんでしたが,来年度の高校の入試枠に特別枠がようやくできました。これも大変長い間本県におきましても議論をし,団体や県民の方からの御要望もございました。やはり入学させるだけではなく,入学をさせた子供たちの進路保障をするという体制づくりを進めていかなければならないということで,今回その入試枠とともに,入学後の日本語支援,また母語による支援ということをセットにした事業に取り組んでいこうと考えております。
 併せて義務教育の段階におきましても,当課,人権教育課から支援員を派遣しますが,これも市町との役割分担の中で進めていきたいと思っています。そういった状況でようやく次のステージに上がってきたと考えております。なお,本県におきましては,県立芦屋国際中等教育学校がございまして,小学校卒業の段階で約30名の外国人枠がございます。中高一貫校ですので,そういう枠もあったわけですけれども,いわゆる通常の高校入試では自己実現できる制度が少ないという状況がございました。
 今までは総合学科ですとか,定時制。7割ぐらいの生徒は高校に入学しておりますけれども,そういう実態でしたので,少ない人数ですが,ようやくそういった形が実現することになったかなと思います。
それと,これは県もそうですし,市町もそうなんですが,教育委員会と地域との関係性が薄いところがございます。地域の方が情報,人材等お持ちですので,兵庫県におきましては県国際交流協会及び市町におきましては市町の国際交流協会や日本語教室とできるだけネットワークを組んでいこうということで,そういう方々と事業でコラボレーションしながら進めていきたいと思っております。また,文化庁の「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」に取り組んでいる団体もございます,そういったところと連携してこれからも進めていきたいと思っています。
以上でございます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。続きまして,佐原委員,お願いいたします。

【佐原委員】  豊橋市の佐原です。今朝ほどドイツから帰ってきたところです。
 多分,私がここに入ったのは,一つは市の代表,そして今年から首長が教育に多少なりとも関わるようになったということがあること。それからもしかしたら,私が3年間ブラジルにいたことがある,2年半パナマにいたことがあるということが背景に,多分日本と英語とスペイン語とポルトガル語を操る珍しい市長だということだと思っているんです。
 そんな中で豊橋市の教育のありようについては,これは教育委員会から多分いろいろ報告されていると思うんですけれども。私の手元には資料があるのですが,皆さんにお配りしていないので,後ほどもう一度きれいにしたものでお手元にいろいろな数字や何かをお届けできるときがあればそのときに。
 そんなにすごく変わったことをやっているわけではないのですけれども,特徴としてはプレスクールを充実させて学校へ上がる前にできるだけの支援をしていこうじゃないか,学校に入ってからできるだけ早く地域に,学校に溶け込めるようにしていきたいということを考えている。そして,やはり高校への進学率を高くしたい。実は今90%ぐらいまできているんです,ブラジル人に。その進学率を高くしたいということ,そして,それを支えている仕組みを持っていることがちょっと違うのかと。
 私たちの市では市立の高校を持っているのですが,通常の高校ではなくて定時制,その定時制も昼間夜間とも単位制でやれる学校を持っています。したがって,最大4年間という時間をもらえる中で,学習意欲さえあれば,極端なことを言えば日本語はいいかげんでもと言ったら怒られますけれども,そこそこ話してくれれば4年間で徹底的に鍛え上げてやろうじゃないか,という方針を持って市立高校を運営しています。
 もちろん一般の日本人の子もいますから,ブラジル人の子,フィリピン人の子ばかり関わっているわけではありませんが,一般の子たちもどちらかというとそういう子を一生懸命集めている。学校に先生との関係やら友達の関係で上手に通えなかった子とか,学習意欲を持っている子たち。とにかく今までの人生,極端な言い方をすれば,やり直すんだというぐらいの気持ちでいる子たちを一生懸命育てるということに数年前から学校の方向性をはっきり切り替えました。
 そうすると,いいかげんだった高校が,先ほど池上先生が言われた目標を持つことによって子供が学習に対する取組が変わるというのを日本人も外国人も間近に見ることができる,そんな経験をしている。もっともっと充実させていけば面白いことになるのではないかと思っています。
 ただ,4年間ですから,もう一つ上のところにいくというのはハードルがまだ高いなという現状であります。それぐらいが豊橋市の子供の日本語教育,そして高等教育を受けさせるところでの特徴。いろいろな数字はまた後ほど,先ほどお話し申し上げましたようにしたいと。
 今回,実は3か国回ってドイツから帰ってきたのです。アメリカ,ブラジル,ドイツと回ってきました。私たちは,ブラジルのパラナ州という,サンパウロ州の一つ南にあります州の教育局と帰国子女のフォローアップを中心にやっていたんですけれども,それだけではなくて,日本で暮らしている子たちにどんなサポートが必要か,いろいろな意味でブラジル側の意見や何かを聞き入れる窓口となっています。併せてブラジルの教育改善の支援をするという立場ももちろんやっているわけですけれども,私たちとしてはそういった中で得られるものがあった。
 今回伺ってきた大変重要なキーワード,先ほど池上先生の話にも通じると思うのですが。日本にいてもブラジルにいても,中途半端になってしまった場合に,「私は何人なの」という疑問から子供たちも親もスタートしているということです。「私の母語は何」というさっきのお話と多分通じるんだと思うんですけど,何国人なのか分からない,日本にいれば外人と言われる,ブラジルに行ったら日本人と言われる。一体私は何をこれから勉強していけばいいかという原点をはっきりさせることは大変大事。それは子供本人もそうですし,家庭も同じで,学校で学ぶ,そして,この国で活躍したいという意識を持つための前提となるいろいろなものが欠けてしまっているということを強く感じます。
 ただ単に日本語を一生懸命教え込むということ以前に,「日本語を学びましょう,併せて自分の持っている母語をしっかり自分のものとして得意技として持っていることはすごく意味のあることです」ということを学んでいただきたいし,家庭でそれを支える環境を作っていただきたいなということを大きく強く感じました。
 そんな中で,いろいろ面白い事例があるんですけれども,私たちの市でブラジル人学校に行っていた子。もちろんブラジル人学校に通っていますから日本語はほとんど話せない状態で,友達もブラジル人。その子があるときタレントを目指してタレントになりました。まだローカルのタレントで東京進出はやっとこれから,ぐらいのレベルかと思いますが,そうすると日本語が必要なんですよね。このモチベーションはすごく大きいです。あっと言う間に日本語をしゃべるようになりました。今では私たちよりも若者言葉は上手なぐらいになった。やっぱりこういう生きるために何が必要かということをしっかり理解した上で学ぶというのは大変大きいなと,先ほどの先生の言葉を強く感じたところです。
 それから,アメリカでは,実はほとんど目的もなく行っていた部分があったんですけど,日本で英語をしっかり学べる環境,アメリカがインターナショナルカレッジみたいないろいろな大学でやっているのと同じような環境を日本で作ってみないかという提案を受けたりしました。国際化の進展の速さという,そして彼らが世界にどういうふうに人材を求めて目指しているかということを強く感じたので,やはり日本も国際人材を得るためのいろいろな仕掛けがいるなということを感じました。本当に先ほどこれも池上先生が言われていましたが,990年代初頭,私がブラジルから帰ってきたばかりの頃は,本当にすばらしい人材が来ていた。日本はチャンスを逃したと私も思っています。ブラジルから当時出稼ぎで来ていた。私,当時は知り合いがいっぱいいたのですけれども,親はほとんどサンパウロ大学卒業というレベルでした。日本で言えば東大卒がどっと日本に押し寄せてきた。この人材を全部逃しちゃったんですね,日本はね,本当に惜しいことをしたなと思います。でも,これからでもまだ遅くない。同じようなことを,アメリカと同じように。
 そしてドイツでは,今,難民で大変でしょうという話をしてきました。これまでドイツはいろいろな移民を受け入れていたのには,実は国にとってこういうメリットがあるんですよという話をされました。高等教育を教えるまで金をかけずに母国語だけ教えれば,高等教育を終えた高等人材が自国の戦力になる,こんなに効率的な話はないじゃないですかと,日本はなぜしないんですかと,こういう話をされましたね。ただ難民がこれだけ来ると自分たちにも実はまだ母国語をしっかり教えるシステム,実は確立されていないんです。今までどちらかというと,ちゃんとしていた人たちを受け入れるということでやってきた。だから,これから大変だと思うけど,国になじむ,この国の国民として生きるという気持ちをしっかり教え込むことができれば,この国の国民としてドイツ語を母国語として,そして,世界の人脈を持った人材として,国民として価値ある存在になっていくと思うから,私たちは大統領の声だけでなく,地元の声としてもしっかりこの難民を受け入れていくべきだと,地方自治体の長たちが思っているということを聞いて,とても驚きました。
 地方で国際化のこと,そして難民の受入れのことをこんなにしっかり考えて,是非システムを作る中で参考になることがあったら学ばせていただきたいというお話をさせていただいてきたところです。
 以上です。

【佐藤座長】  ありがとうございました。それでは菅原委員,お願いします。

【菅原委員】  東京学芸大学の菅原と申します。よろしくお願いいたします。
 所属しておりますセンターで,あるいは個別にお声がけいただいて学校の現職の先生方に研修等でよくお目にかかっております。私が所属しておりますセンターで,主催する研修会は土曜日に開かれます。本当にお忙しい先生方が土曜日の時間を割いて自費でお集まりくださるんですね。なぜかというと,「初めて担当しました。何をしていいのか分かりません。」という現状が学校の先生の方の中にあるからだと感じております。
 ですから,なるべくそういう先生方のニーズにお応えしたいと思いますけれど,その半面,ある程度一定以上の期間を続けて研修をしておりましても,毎回そういう先生方が大勢お集まりになるので,なかなか研修の中身が積み上がっていかないという現状もあると感じております。
 そうした中で,この日本語指導に関わる先生方の専門性の向上を図るというところはどこを目指すのかというところは,1点検討していく課題かと思っております。
今日の検討事項の2番になるのですが,日本語指導に携わる教員といったときに,どこまでが範囲なんだろう。分散地区,散在地区ですと,本当に全ての先生方が日本語指導に携わっていると考えられますし,そうした先生方にもきちんと情報を伝えていくということを考えますと,深く専門性を持って御指導いただく学校の先生を養成していくのと同時に,広く多くの先生に「日本語指導というのはね。」ということをお伝えしていくということが重要なのではないかと思います。その両方があって初めてその学校の教育現場の中で子供たちへの日本語指導,日本語の支援というのが可能になっていくと考えます。
 それともう一点は,その専門性を向上させた先生方がその個人のスキルを高めるだけではなくて,その高めたスキルを次の先生方にどうつないでいくのかというところも含めて検討していくことが必要で,それによって学校の中で日本語指導を必要とする子供たちが生き生きと生きていけるような環境になったらと思います。
以上でございます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。それでは高田委員,お願いします。

【高田委員】  愛知県教育委員会義務教育課の高田でございます。
 愛知県は,日本語指導を必要とする外国人児童生徒が全国で一番多い県でございまして,11月には,「あいち多文化共生月間」ということで初めて「外国人児童生徒等による多文化共生日本語スピーチコンテスト」を他部局ではありますけれども,実施し,外国人児童生徒教育について非常に関心が高まっている県でございます。
 そうした中で,今日は本県から幾つか紹介させていただきたいと思います。県内には人材派遣会社ですとか,あるいは公営団地等が集まることによって,外国人の集住地区が幾つかございます。その集住地区の一つの取組といたしまして,本日の検討課題の1番にあります拠点校方式がございます。この先進的な取組をしているところは,その域内の学校全てに日本語教育適応学級担当教員が配置をされており,多くのところは,それぞれの加配教員がその学校のみを指導するということが多いと思うのですけれども,ここは市を挙げて外国人児童生徒の子供たちを育てていこう,将来の日本を支えてくれる,また,日本と母国とのパイプ役になってくれる子供たちを育てようということで,どの加配教員も複数校の学校を巡回指導しています。
 あわせて,週に一回必ずこの担当者が集まって,情報共有し,その中で話し合われていることは,当然,作成教材の紹介だとか,指導内容についてはあるのですけれども,さらには,最近では保護者の対応も含め,その子供たちのルーツについてもっと学習していこうと,こういうところまで話が進んできています。そして,昨年度からはプレスクールも開設し,小学校入学前の子供たちの様子も,幼稚園とか保育所に情報収集に行き,手厚い,きめ細かな指導を進めているというところに特徴がございます。
 少し話がそれますが,保護者の対応ということで言いますと,今お話している集住地区ではないのですけれども,先ほどの佐原委員さんのところは,これがすばらしい取組で,外国児童生徒のための教育コーディネーターに,スクールソーシャルワーカーをバイリンガルの相談員でお一人置いてみえて,今後そうした対応が必要になってくるところもあるのではないかなと感じています。
 一方,こうした多国籍化あるいは集住化とは別に,散在化というのも大きな課題となっております。一校当たりの在籍数が非常に少ない,4人以下の学校は小学校だと27%,中学校だと36%という数字が出ており,こういう所になるとなかなか支援員を置くことも難しいし,急な転入・編入があったときの対応にも右往左往してしまうという状況がございます。
 こうしたなかなか対応しにくい所に対して,語学相談員を配置しているのが愛知県の特色であろうかと思っています。本年度,ポルトガル語,スペイン語については以前から配置をしてきていたわけですが,更に拡充して,現在はフィリピノ語の語学相談員も含めて11人体制で進めています。
 とはいえ,まだまだ足りない。現状では2週間に1回は子供たちに関われるように,あるいは保護者の支援ができるように配置を進めてているわけでありますけれども,非常に難しいところです。これにつきましては,先ほどもありました,国の「帰国・外国人児童生徒等教育推進支援事業」のお力添えも頂きながら進めているところでありますが,やはり人,教育において人は大事でありまして,その人件費や教材開発に費用不足を感じているところは否めないと思っております。
 あわせて,この語学相談員につきましては,市町も同様であり,なかなか人材確保が難しい状況にあるのではないかと思っています。子供たちに熱意を持って関わっていただける方,そして母語が堪能な方,当然,保護者の方への通訳文書を作っていただくこともありますので,そうした方を見つけるのが非常に難しいという課題を抱えているところでございます。
 ちょっと話が幾つか飛んでしまって恐縮ではありますけれども,本県においては小学校において児童数の半分を超える日本語指導が必要な外国人生徒が在籍している学校もございます。学校の例を一つとりますと,その子たちのうち,日本で生まれた児童は8割というような所も出てきているのです。子供たちはみんな将来進学したい,高校へ行きたいという夢を持っています。何とかそれをかなえていくことも大事なことでありまして,こうした学校は本当に地域にNPOや大学生のボランティアの方に支えられていて,今があるというふうに考えています。
 そして,愛知県は高校入試制度の特別枠を持っている県の一つでありまして,これまで普通科のみに特別枠を持っていたのですが,今度の入試からは,多様なニーズに応えようということで専門学科も含めて幅広く特別枠を作っていく取組を始めようとしている状況であります。
 本当に子供たちはこれからの本県や日本を支えていく重要な人材でありますので,みんなで育んでいく,そういう施策をしていきたいというふうに考えているところであります。
 以上でございます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。それでは,高橋委員,お願いします。

【高橋委員】  皆さん,こんにちは。高橋と申します。私は神奈川県の県立高校の教員をしております。橋本高校というところで,今話題になっている特別枠がある学校です。今年からその橋本高校に勤務していますが,その前も相模原青陵高校に6年おりまして,そちらの方も特別枠を持っている学校でした。それから,併せてNPOの多文化共生教育ネットワークかながわの事務局長を20年くらいやっていまして,学校とNPOの立場,両方の立場から今回こういった形でお招きいただいたのかなと思っています。
 やはり特別枠の課題が,私としては一番お話ししたいと思うことです。神奈川は10校特別枠があります。全日制が9校,定時制が1校の枠を持っていて,今度の入試は119名の枠で募集をするという形になっています。
 先ほど古角委員からもあったと思いますが,やはり高校で枠を設けるということは,受入れの責任が発生するということが大きいと思います。神奈川県の場合は選択授業や特別なカリキュラムを作ったり,教科で取り出して個別の対応の授業をしたりして,特別枠のある全部の高校で日本語指導をしています。それは特別枠で入った生徒が持っている能力は非常に高いものなのですが,それに対してやはり日本語をどうサポートするかということが大きなポイントで,学校の中できちんとした指導をすれば,非常にのびしろが大きく,神奈川県でもその結果として4割ぐらいの子たちが大学に進学したりしている実績があります。ですから,特別枠というとどうしても負担感ばかり目に付いてしまうのですけれども,そうではなくて学校としてきちんと人材を育てることだと思います。特に私は日本人生徒に非常に大きい,いい影響を与えるものだと思います。これは中学校もそうですし,高校もそうですけれども,早い段階から共に違いを認め合う,よさを認め合って学校生活を送るためのプログラムが必要で,JSLカリキュラム等もありますけれども,現場では十分こなし切れていないというのが率直な感想です。早い段階から日本の子たちを巻き込んだ取組,私ども神奈川では,今,日本の子たちが発信する形の国際理解教育,多文化共生教育を進めています。日本の子たち自身が自分からそういった子たちに対してアプローチをして,一緒に学び合う,言語,文化も学び合うようなスタイル。そういうところまでいくと,むしろ彼らは,池上先生がおっしゃっていたように,将来につながる人材として小学校,中学校の段階から高校へ行きたいと希望し,高校へ行ったらそういう学びをして,大学へ行きたいと希望すると思います。大学で社会に向けて,そこまで見通した継続的な支援が今求められていると思います。
 そういった意味で言うと,特別枠が残念ながら地域によって非常に差があります。高校進学はどのくらいの割合か考えたときに,今日は文科省の方から資料を頂いて,非常に参考になったのですが,資料1ページの全体の外国人児童生徒数を見ると,高校生は中学生の半分くらいしかないという状況です。単純に中学生数がそのままスライドしていくと考えると,進学率が90数%のだとするとこんな数字にはならないはずです。だから,中学校には行って高校に行かない。高校に行っていない生徒がみんな就職するかというとそうでもない状況の中で,やはり中学校を卒業したけれど,高校に行けない生徒の実態をもう少し把握して,高校にどの地域でも進学をできるような制度を是非何かとして検討していけたらと思っています。
 それから,今日資料を提供しています。私どもは県の教育委員会や市の教育委員会とついこの間の日曜日も先週ぐらいも会議を持って情報交換をしたりしていますが,一つはDLAの実施についてです。確かに神奈川県でも3市と1郡で,各学校で実施をしている状況です。学校の先生方がDLAのテスターとして実施するというケースもあれば,日本語指導員の方が実施するケースもあるようですが,評価がばらばらになるため,評価が統一的に標準化されるようなものがあった方がいいという意見をたくさん頂きました。
 それから,教員がやるとなるとどうしても専門用語等が難しいため,もう少し分かりやすい評価のスタイルを,ということで横浜市は市独自の評価表を作って対応しているようです。そういった取組がどんどん進むと各地域で積極的に取り入れられて,しかも横浜市では指導要録に添付をして,小学校,中学校,高校までつないでいこうという取組をしています。そういった実践例を是非取り入れていただければと思います。
 それから,最後に最終的な就労と大学のところです。ここのところ,大学進学について何件か相談を受けています。留学生がすごく注目を浴びている状況とは違い,日本の中学校や高校を卒業して大学に行った子供たちは普通枠で入っています。留学生は日本語教育も受け,母語の支援も受けるようなシステムになっているのですが,一般入試で入るとそういう教育を受けられないので,彼らは大学の授業は分からない,母語は忘れてしまう。大学を卒業した後に一体彼らはどういう能力を生かして,社会参加できるかということを考えると,実は大学が両面のところの支援が必要で,先ほど池上先生がおっしゃっていた静岡文化芸術大学のような大学や,今年,宇都宮大学が国立として初めて外国人生徒をこの4月に受け入れたのですが,そういう大学が増えて,大学がそういった人材を高校からつないで育てるような流れを,しかも企業がそういう人たちを奨学金制度も含めてうまく社会参加につなげるようなものも仕組みとして是非考えていけたらなと思います。

【佐藤座長】  ありがとうございました。続きまして,竜澤委員。

【竜澤委員】  よろしくお願いします。甲府市教育委員会,竜澤です。指導主事という立場は恐らく現場に近い,現場の声を届けやすいという考えの下にここにいるのかなと思いますので,その視点に立ちながらお話をさせていただきたいと思います。
 特別の教育課程は,26年初年度より見切り発車でございますが実施し,2年目になっているところです。本日3点お願いしたいと思います。
 まず1点目は日本語指導体制の整備充実というところに関しまして,是非日本語指導教員の増加を考えていただきたい。甲府市では拠点校教員を5名配置いただいております。実際に外国籍のお子さんが甲府市には月々違いますけれども200名ほどのお子さんがいる中で,80名から90名ほどの日本語指導の必要なお子さんがいらっしゃいます。5名の教員が自校で2日,巡回校で3日ということで実施しております。実際にはその3日間をスケジュール割りしているのですが,この日にここに行きますからこの時間は取り出し授業をしてくださいと単純に言えないところがございます。当然実技教科は取り出しをしたくない。そうなるとスケジュールを管理しながら進めていくという状況なのですが,緊急度の高いお子さんが転入してくると,そのスケジュールをその都度その都度変えなければならない。それでも教員はスケジュールに余裕があれば,「ここを入れていきます」とか「2時間配置のところを1時間にします」という形で対応しています。日本語の指導の必要なお子さんが増えていることは資料3-1で見させていただいたところなんですが,甲府の場合は5名の教員で目いっぱいやっている中で,緊急度の高いお子さんが転入してくると,生活言語と学習言語というレベルがあるかと思いますが,学習言語のレベルなら日本語が何となくでき,友達ができるのお子さんから指導を終了しなければならない。学校からすれば,「えっ,ここで指導終了されては困る」というお子さんでありましても,指導を終了しなければならない。甲府市の場合は指導人数が増えていくという状況は,この5名の教員数が続く限りは,もうどうしても指導する人数を増やすことができないという現状がございます。それはどこの市町村も同じ状況なのか,あるいは集住地域や散在地域が違うのか,それはいろいろあろうかと思いますが,そういう部分は数字に表れない部分でございますので,その辺のところもお酌み取りいただきながら,また体制の整備充実をお願いしたいと思います。
 2点目は研修でございます。短期的には山梨県の場合は年間3回県で研修を行っていただいておりますが,当然のように3回では研修がうまくいくというふうには思えなく,また,先ほどDLAの話もありましたが,その研修の必要性は強く感じるところです。中長期的には専門性を担保した教員の配置,日本語指導に関わる担当教員の配置をしていただきたいというところであります。甲府市では山梨大学とタイアップしまして,日本語指導の先生方に付く教育実習,半期ものの単位ですけれども,教育実習として5月から7月まで毎週1回,日本語指導の先生に教育実習生が付いて学習をし,日本語指導のノウハウを学んでいただいています。そのような専門性を持った,また意欲を持った学生さん,教員を育成していきたいということで,教員養成系の大学の中では是非そういうコマを設け,必修の教育課程にしていただけたらなというところです。是非質の担保という部分でお願いしたいと考えています。
 最後3点目ですけれども,中高の接続の部分です。山梨県では有り難いことに全部公立高校で特別措置を頂いております。日本入国7年以内,今年度でいいますと平成28年4月1日現在で日本入国が7年以内の生徒については全ての学校,全ての学科を受験する中で,5教科でなく3教科受験を特別措置で対応していただいているところです。その部分は非常に有り難いところではありますが,入り口部分ではそれで対応できるのですが,高校に入った後,日本語指導を継続的にしていただけるところが県内に3校しかございません。甲府の場合はその1校が定時制高校でありまして,日本語がなかなか難しい,学習を続けたいというお子さんはその定時制高校を選択せざるを得ない。全日制高校に例えば英語,社会あるいは数学等で受験する枠で入れても,高校での学習にやっぱり付いていけない。ですから,途中で中途退学してしまうというお子さんが少なからずいる。この問題はこれからも引き続き問題となるだろうと考えています。小学校から中学校への接続は特別の教育課程の中で学習の継続性は担保できるようになってきていますし,今後もなっていくだろうと思いますが,高校との接続は今後の課題として大きいものかなと考えております。
 以上です。

【佐藤座長】  では,引き続いて藤巻委員,お願いします。

【藤巻委員】  北海道教育大学の藤巻と言います。私は今の職に就く前は日本経済新聞の編集委員をしていまして,主に何をやっていたかというと外国人の多い地域に実際に住み込んで取材するということをしていました。例えば愛知県豊田市の保見団地,東京の大久保,外国人花嫁の多い新潟県の南魚沼市というところに行きました。そのどの地域でも外国人児童の教育というのは大変大きな課題になっていました。
 例えば保見団地では,私はトルシーダというNPOに毎日行って,実際に外国人の子供に僕自身が日本語を教えるみたいなことをやったんです。ここには西保見小学校という小学校があって,学校に通っている子供を支援する「子どもの国」というNPOもありました。トルシーダというのは不就学の子供たちを教えるNPOです。このように学校とNPOの連携があったんですけど,当時はリーマン・ショックのときで,トルシーダに来ている子供たちの中にはちょっと年配,年齢のいった子供たちで,工場を解雇されてきていた子供が何人かいました。
そこで「先生,面接の仕方を教えてください」とか,「履歴書はどう書くんですか」と言われました。それまでは日本語ができなくても工場には勤められていたわけですけど,サービス業などに新たに就職しようと思うと日本語ができないといけない。だから必死に日本語を勉強していました。そのトルシーダの代表の方は,子供たちを連れていろいろな会社や工場に見学に行って,そこで日本語ができたら,いろいろ世界が広がるということも教えていました。つまり先ほどから出ている何のために日本語を勉強するかという動機付けがないとなかなか日本語を勉強しない。保見団地の場合はブラジル人の親がほとんど日本語はできなくて本国に戻ったり,またこっちに来たり,ブラジルで生きていくのか,日本で生きていくのか方針の定まらない人も多くて,子供たちもそれに影響されるんですね。どうして日本語をやらなきゃいけないのかという動機付けが非常に大事だというのを感じました。
 東京の大久保では,大久保小学校という外国人が6割,7割という学校へ行って,そこの国際理解教育というのを見たんですけど,韓国とか中国とかタイとかいろいろな国から来ている子供たちが日本という社会に入ってきて,自分たちが持ってきた文化が否定されるという感じを抱くんですね。そこの先生は何をやっていたかというと国際理解教育ということで,中国や韓国の文化を日本人にも教えるという子供たちの自尊感情に配慮したような教育が行われていました。
 南魚沼市では外国人のお嫁さんと日本人の夫との間の子供は日本語は小さい頃から覚えており,問題ないんですけど,お嫁さんが本国から前夫との間の子供を連れてくるケースがよくあります。そこで南魚沼市内の小学校も取材したんですけど,専門の先生はいないんですね。日本語支援員という形で市民の方が,中国に長く住んでいたという市民の方が中国人のお子さんの面倒を見るんですけど,これは日本語を教えるというだけではすまない。生活全般というか,日々の悩みから始まって日本で生きていくためのいろいろな相談に乗るというか,そういう意味ではすごく負担が重い。
 どこでもそうなんですけど,日本語教師の人たちは単に日本語を技術的に教えるというだけではなくて,外国人の子供が日本で生きていく生活全般を引き受けちゃうようなところがあるんですね。そういう中で,子供たちがどうして日本語を勉強しなきゃいけないのか,将来どうするのかとか,あるいは日本という国の中で自分の国の文化がどう認められるのかを考えるように仕向けていくことが重要になると思います。今は非常にボランティアの人に頼っているところがあるんですけど,これからは是非,理科や社会の教員免許があるように,日本語教師の免許みたいなこともちょっと検討していただき,専門的な教員を増やしていただいたらどうかなと思います。
 大学で私は多文化共生論という講義を持っているんですけど,今,学生はこういう分野に非常に興味があるんですね。多文化共生とか日本に入ってくる移民や難民の問題とか,そういうことの学習に非常に意欲を持った学生たちがいる。こういう学生たちを育成し,優秀な日本語教員,単にテクニックで日本語を教えるだけじゃなくて,外国人に寄り添えるような,外国人のメンタリティ,子供たちのことを深く理解するような専門性のある日本語教員を育てていけたらいいなというふうに思います。
 以上です。

【佐藤座長】  最後に吉住委員,お願いします。

【吉住委員】  新宿区の吉住と申します。新宿区における外国人児童生徒に対する日本語指導などの現状についてお話をいたします。
 まず,外国籍住民の方は11%です。ただ,11%なんですが,国籍数としてはコンスタントに110か国,多いときは120か国に届きます。日本の国籍を持っていても当然ながら外国にルーツを持っているお子さんも大勢いらっしゃって,日本語の課題を抱えています。外国人居住者向けの意識調査を行っていますが,その中で保護者の方からの御意見で,大体5年以下の滞在の方が持つのは,やはり子供の日本語の習得,母国に帰った後に母語が操れるかどうかということの不安,それから学校に適応できるかということについて不安を持っておられます。5年以上,長くいらっしゃる方に関しましては,やはり繰り返し話で出てきました進学,就職。それから,子供が母国に帰ったときの母語の習得あるいは適応できるかということ,それから,学費の確保でした。
 区内における日本語教育のシステムは今日お配りさせていただいた別紙の資料に載っておりますが,日本に来たときにまず日常会話ができるかどうかという意味での集中授業,これは教育センターでやります。その後,学校に来た後に学校での勉強に必要な日本語習得のための授業をやります。そこから更に取り出しの授業をやっています。そして,そこで進学に向けた進学コースの授業も更にやる場合もあります。それとさらには働いている保護者が多いので,学校の授業についていけないお子さんたちを指導するためのNPOの皆さんに協力していただいて,そういった授業,場所を提供するという形でやらせていただいております。
 区内における保護者自身も日本語に課題を抱えていますので,自分の国の言葉も十分な習得ができていない状態で保護者も日本語が分からない,家で日本語を教えられると間違ったことになりますので,保護者には家で日本語の教育はしないでくださいということにしてあります。日本語の教育は学校でしっかりやりますということでやらせていただいています。
 今回事前に頂いた4つの課題について状況をお話しいたしますと,今,ちょうど藤巻委員からお話が出た大久保小学校では,今年度は12か国語で授業をやっております。その子供の日本語能力に応じた日本語指導をやっているということです。ただ,これはもうそれだけの多言語を操れる人を集めるとか,人件費もさることながらネットワークが非常に私どもだけでやっているという限界がありますので,そこに対する御支援を頂ければ有り難いと考えています。特に私どもは人間も雇っていますが,同時にネットワークを確保するに当たって,そうした活動をしている団体に対する事業助成ですとか団体の運営支援といったことを国の方でやっていただけると,円滑に私どももいろいろな多言語を操れる方を招くことができるんじゃないか,そんなような期待を持っています。
 それから,区立学校の中で日本国籍を持っている,外国籍を持っているいろいろありますが,小中で541人の外国籍のお子さんのうち169人が日本語に課題を持っています。そして,日本人でありながら国籍を持っているが,課題があるという方が63人,併せて232人を今年1年間で指導している状況になります。先ほど事例に出た大久保小学校は今年は今45名で,もうすぐ46人になるという話です。大抵50人弱,50人を超えるかなという人数で推移しています。そして,その学校に配置されている日本語指導担当教員は3名です。本来マンツーマンでやらなきゃいけない授業を複数授業でやっていますが,3人の先生で担当しているというのが実情です。
 それともう一つ言えますのは,外国籍の方は年度の途中で転入してくる方が結構います。そういう方々が増えた場合に41名を超えた場合であったとしても,加配はされません。そういう意味では年度途中で増えることを見込んだ上で,日本語指導担当教員ですとか学級編成をやっていかなくては,十分な指導を行える状況にないということが現在私どもにとっては課題になっております。
 それから,日本語指導に携わる教員の指導員の養成確保でございますが,日本語指導を必要としている児童生徒の在籍校は公立40校のうち30校になります。ただ,日本語指導担当教員を配置できている学校は2割に当たる8校しかありません。そこで,児童生徒の母語を使用して日本語をサポートするサポート指導員を派遣しています。
 それから,日本語指導における指導内容の改善充実ですが,JSLカリキュラムについては年度の途中でどんどん子供さんが入ってきますので,日本語レベルの段階が大分違いますので,これをちょっと今やるのは非常に難しいなと考えていますが,ただ,有意義であることは認識していますので,今後の課題として今,区としても捉えております。
 それからDLAについては,東京外語大学の協力を頂きながら判定,診断していただくということをやっていますが,あと指導していく中で,今後日本語に課題のある子供たちにはタブレット端末を活用して授業ができたらどうかと。当然家に帰ってもタブレットで音声が聞けるとかそういった復習もできますし,できれば保護者に対してやはり母語も余り覚えないまま来ちゃっているといいますか,複数の言語を操っている国からいらっしゃっている方の場合は,一つ一つの言語で全てのことを理解できない状況の方もいらっしゃいますので,もう分からないときはとにかく学校に電話してください,幼稚園に電話してくださいということを言っていますが,保護者にも多言語機能の対応ができるようなコミュニケーションツールとしてタブレットの端末を活用できたら有り難いなと考えています。
 それで私どもでなかなかアプリの開発までは行き着かないところもありますので,全国的にいろいろな課題を抱えているところがあれば,アプリケーションを作っていただいて,日本語の指導に当たるものを作っていただくとか,親とのコミュニケーションツールとしてのアプリも作っていくとか,そんなようなことをもし御検討いただければ有り難いと考えております。
 それから,外国人の子供の就学及び就職についての支援でございますが,現在保護者会にも11か国語の通訳を派遣していまして,ただ,どうしてもそれだけで日本の教育システムの理解ですとかそれが理解ができていないゆえに就学手続をしない保護者も結構いらっしゃいますので,いざ4月になっていくところがないと大騒ぎになるとかそういうこともありますので,そういったことに力を入れております。ただ,今後やはり進学や就労について,私ども新宿区立,区では高校以降はどうしても手が届かない話になっていきます。そこについて是非力を入れていただきたいと思っています。やはり将来に希望が持てないようですと,日本語習得あるいは学校の授業というものに対して取り組むモチベーションが上がっていかないと思っています。そして,そういう子供たちが将来社会の中でそういう学歴を持たない,技術も持てない中でどういう人生を送っていくかということを考えると非常に暗たんたる気持ちになってしまいます。そういった子供たちの将来の夢が持てるような,人生設計ができるような受入先をどこか作っていただけるようにお願いしまして,私の方からの話は終わらせていただきます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。皆様から御意見を頂きました。ちょうど予定していた時間になりましたが,5分ほどオーバーさせていただければと思います。
 論点がかなりいろいろな形で浮かび上がってきたんだろうと思います。資料4で先ほど示していただいた論点整理を,今日の議論を踏まえて改めてさせていただいた上で,次回御提案をさせていただきたいと思います。
 私は一言だけ。私もこの施策に携わって随分長いのですけれども,施策の評価はやった方がいいだろうなと思っています。これまで相当いろいろな施策をやっていますけれども,果たしてそれがどういう効果をもたらしているのかということについての。その評価の在り方,基準をどうするかという議論はありますけれども,やはりやるべきではないかなと思っています。
 それから,今日委員の皆様の御意見を伺って,自治体が独自の特徴を持っていろいろ取り組まれておられるので,国と地方自治体,一体どういうことを改めてこの関係を作っていったらいいのか。国がやりましょうといっても例えばDLAにしてもJSLにしてもそうですし,特別の教育課程もそうですけれども,国の方向性で一挙にやれるようなシステムではないということはもう分かり切っていますので,具体的にどう地方自治体の独自性を生かしながら,この取組を国としてどう進めていったらいいのかを改めて検討すべきかなと思いました。
 それから,もう一点,連携というお話が今日出ましたけれども,「虹の架け橋事業」,非常に大変効果的だと思うのです。事業の大きな成果は何だったのかというと,やっぱり学校,行政ができないところを中間支援組織に支援してきたということだと思うんです。これをどうしていったらいいのかということ,改めてその連携というときに学校はこうです,NPOはこうですということではなくて,まさしくそこを支援するような行政としての仕組みも作っていくということを,私どもは「虹の架け橋教室」から学ばせていただいた点ではないかなと思います。
 いずれにしても,皆様の御意見を大変興味深く聞かせていただきました。これを基にして改めて次回以降にまた提案をさせていただいて,具体的な議論を進めさせていただきたいと思います。
 少し時間が超過しておりますけれども,最後に議題3でございます。今後のスケジュールについて事務局から説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【齋藤主任学校教育官】  それでは,資料5を御覧ください。手短に御説明申し上げます。本日は第1回の有識者会議を開かせていただきました。今後でございますが,月1回程度の開催ということで,次回は年明けの1月。座長を始め皆様にこれから日程照会をさせていただきまして,日程を決定させていただきたいと思います。本日頂きました論点を踏まえまして,また議論のトピック,ヒアリング等につきまして皆様に御案内申し上げたいと思います。最終的には平成28年6月をめどに報告書を取りまとめることを目指すということで,お願いできればと考えております。
 以上でございます。

【佐藤座長】  ありがとうございました。本日これで閉会とさせていただきますけれども,この机上の資料についてはここに置いておくということでよろしいですか。

【齋藤主任学校教育官】  机上資料はまた次回も同じものを用意させていただきますので,置いていただければと思います。配付資料は全てお持ち帰りいただいて結構でございます。もしお荷物になるようでしたら,こちらから郵送もできますのでよろしくお願いいたします。

【佐藤座長】  今日はお忙しいところ,お集まりいただきましてありがとうございました。本日はこれで閉会させていただきます。

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