教育相談等に関する調査研究協力者会議(平成27年12月4日~)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成28年1月22日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

市川委員、岩永委員、加藤(崇英)委員、加勇田委員、小泉委員、佐々木委員、鈴木委員、中西委員、中根委員、永山委員、野田委員、笛木委員、福田委員、森委員、山野委員、横張委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、藤原大臣官房審議官、坪田児童生徒課長、平居生徒指導室長、山本専門官、高井課長補佐、齊藤課長補佐

5.議事要旨

(1)6団体からのヒアリング
(2)ヒアリングに関する質疑応答を行った。質疑応答の概要は以下のとおり。

【事務局】  スクールカウンセラー(以下、「SC」という。)の業務について、個別の相談だけではなく、保護者への対応、教職員へのコンサルテーション、関係機関との仲介などが考えられる。しかし、仮に週5日の勤務になったとしも、これら全てに対応できるようになるのか。例えば、管理職が理解しない場合、人材の質など、ほかに改善すべき課題がないのか。
また、SCの活動状況をどのように把握しているのか。

【発表者】  多くの場合、SCはカウンセリングルームにこもっているようなことはなく、学校でいろいろな活動をしているが、人によっては、子供たちあるいは先生・保護者から声が掛からない場合もあると思う。そのような場合、一般的には先生方と信頼関係を作り、子供たちの様子を見に行く。若いSCであれば、給食を一緒に食べるなど、いろいろな努力をしている。また、相談がないときには保健室で、養護教諭から情報をもらったり、保健室に来て、多少元気のない子供たちと一緒に話をしたりすることもある。相談室で相談を純粋に待っている人は少なく、SCを養成する大学院でもそのような指導をしている。
しかし、どうしても相談件数があまりないSCも実際にいるのは事実であると思う。SCを指導する立場としては、専門性がないSCは声が掛からないということで、その辺のことを様々な形で研修していきたい。
時間が足りないSCの場合は、5日間は本当に充実すると思われるが、声の掛からないSCは毎日行くから解決するというものではないと思う。
また、今まで週1回であったためできていた中立性の問題や外部性に関して、毎日行くことになれば、SC自身がそのことを十分理解して専門性を高めなければ、学校の中に巻き込まれてしまったり、問題に巻き込まれてしまったりということが起こると思う。そのようなことを防ぐため、スーパーバイズの制度の構築や職能団体としての定期的な研修等について、教育委員会と定期的な話合いをしながらSCを育てていくシステムを作っていかなければならない。
SCは、心、見えないものを扱う仕事ですので、成果が評価しにくいと言っている心理の専門家もいるが、エビデンスとして数字的に評価できる。例えば不登校が何名減ったかということも把握して、対応していかなければならないと思う。

【委員】  不登校、中途退学というのは非常に大きな課題であるが、進路未決定で卒業してしまう生徒に対する対応も非常に大きな課題となっている。進路を決定させるために、カウンセラーの役目として何かあれば教えてほしい。

【発表者】  日本の場合、進路指導はほかと分けてしまっており、SCの議論において、キャリア達成については含まれない部分がある。
アメリカのSCは、ガイダンスカリキュラムという、簡単に言えば授業型の生徒指導が必須で、養成課程でも必須となっている。その中で特にキャリア、進路に関して、キャリアカウンセリングとかキャリアガイダンスの教育を受けている。
実際には、キャリアカウンセリング抜きの教育相談というのは学校現場ではないと思う。SCの守備範囲の中に、キャリア意識とか進路に関わること、キャリアカウンセリング、キャリアガイダンスをどのように組み込んでいくかがポイントであると思う。

【委員】  ガイダンスカウンセラーについて、構成団体が現在6つあり、それぞれが認定し、ガイダンスカウンセラーという形でステージを上げていく形であると思う。今後、公認心理師プラス専門のライセンスを乗せるなどの資格団体としてのビジョンがあれば、教えてほしい。

【発表者】  公認心理師は、例えば教育、福祉、心理など総合的な汎用資格のため、公認心理師の方をSCに採用する場合、本当にできるのかという話になる。そのため、汎用資格、プラスアルファの専門的なライセンスをもう一つ持っている方がスムーズであると考えている。公認心理師が得意とする分野を担保する専門的なライセンスを持っておかなければ、実務的には難しいと思う。
ただし、特に教員に関しては、ガイダンスカウンセラーのような、教育ベースの知識やスキルを持った人がいいと思う。

【委員】  チーム学校という考え方になったときに、専門職の立場で心理師が入ってくるが、学校、校長に求めるもので何か具体的な考えがあれば教えてほしい。

【発表者】  保護者あるいは児童生徒とカウンセリングしたときに、担任の先生にフィードバックするが、内容が担任の先生の批判や、担任の先生とどうしても相性が悪いというものであると、担任の先生ではなく、校長先生に話したい、管理職に話したいという場合がある。その場合でも、教育相談のコーディネーターを通してくれ、担任を通してくれということがあると、対応が非常に難しいということもある。内容によっては直接校長先生に話すということもあってもいいと思う。

【発表者】  SCの活用では、管理職の判断、実質的なマネジメントが非常に重要である。例えば、教育相談室にいて、生徒からの、あるいは保護者からの個別の相談だけ聞いていじめを解決できるか、あるいは不登校になった子が教室復帰できるかというと、非常に難しい。それは、SCそのものは学級を知らないからである。
特に、今後のSCは、学級経営、ホームルーム経営に関していろいろなアドバイスをすることも求められる。そのため、管理職の方がSCをどのように位置付け、どのように働いてもらうかをSCと最初に話し合って、なおかつ学校の今の生徒の状況を加味して教育相談担当の協働体制を作ることがポイントになると思う。

【委員】  担任の先生の中には、発達障害の子供を抱えると鬱病になることが多い。これは、教員養成課程でそういうものをしっかりと教えていないからではないかと思っている。SCが最初に導入された頃は、不登校だけを対象にしていると言われた時代があったが、最近は発達障害についても扱っている。SCについて、養成課程で発達障害をどのように教えているのか。

【発表者】  今の相談内容は発達障害が多い。SCの仕事は、そういう診断はしないが、そのような要素を持っていれば病院につなぐとか、あるいはその子供に対して、どのような関わりをするのが望ましいかというコンサルテーションができないSCは、現場ではほとんど役に立たないと思う。実際、SC養成に際しては、いろいろな検査を通じて、どのように見立てるか、どのような支援が必要か、実際に母親にどう関わってもらうかなど発達障害に関して物すごく勉強する機会がある。
また、SCは、先生に対しても、その子供が単に怠けているのではなく、こういう要素でこういうことがある、このような関わり方がより有効であるなど、アドバイスしたりしている。

【委員】  保健室には、様々な課題を抱えた子供たちがたくさん来ている。その中でたくさんの情報がある。その情報を生かすためには、SCとも連携を取って、子供たちに対応していきたいと思う。しかし、教育相談コーディネーターは、学級担任を持っていたり、業務がたくさんある中でやっていたりするのが学校の実態である。コーディネーターがもう少し働ける環境が整うと変わってくると思う。そのため、学校の中でコーディネーターの位置付けを校内組織の中にしっかりしていくことが必要ではないか。

【委員】  神奈川県の取組について、関係機関との連携支援モデルは、連携に必要なことをまとめて、何らかの形で各学校に配付されているのか。
また、年1回、教育相談機関の連絡会議を開いているということであるが、実際に連絡会議で扱っている内容をもう少し詳しく聞きたい。

【発表者】  1点目について、関係機関との連携支援モデルは、例えば児童相談所と連携する場合には、どのような形でやるのがいいか、市町村の福祉部局につないでいくにはどうやったらいいのかなどスクールソーシャルワーカー(以下、「SSW」という。)が担当した具体的な事例を一般化してまとめたものである。
また、連絡会議の内容としては、具体的な事例の共有を始めとして、困難な事例等から、今後、生かせるものはないかという事例検討、参加者の専門的な立場から情報を提供してもらうことなどがある。特に大事にしたかったのは、顔の見える関係を作ることであり、関係機関同士の顔が見えていることで、つないでいくことができるというところが成果であると思う。

【委員】  神奈川県のSCの配置について、指定都市を除いて、その割合はどの程度か。

【発表者】  全ての中学校にスクールカウンセラーは配置している。高等学校は大体4校から5校に1人を置いているので58校と整理している。

【委員】  SCとSSWの協働の協議会等の会議体、連絡協議会等はどのような形か。

【発表者】  資料7の連絡会議の中にSCも参加している。

【委員】  何か事件が起きたりすると、その情報が取れていなかったということが多いように感じる。情報共有のやり方、ポイントについてどのように考えているのか。例えば、電子データ化するということも含めて考えを聞きたい。

【委員】  神奈川県には市町村でSSWを独自採用されているところもあるということであり、県と市町村の役割分担、関係性が聞きたい。
三重県には、問題サポートチームの活用ということで、特別指導員など、いろいろな職種が登場するため、連絡会があるのか、またそこでの守秘義務の扱い方を聞きたい。

【委員】  神奈川県では、全校に教育相談コーディネーターが配置されているが、三重県においてはコーディネーターが全校に配置されているのか。また、県で取り組んでいる研修があれば具体的に教えてほしい。

【発表者】  まず、情報共有の件について、SSWとSCの情報共有は、各学校で支援に当たっている場合、生徒指導委員会などの部会の中で情報共有を図るということを学校の方で計画して進めてもらっている。そこには、市町の教育委員会の担当者や県の指導主事も入り、定期的に情報共有を行うようにしている。
平成27年度はSCの研修会にSSWも参加して、グループワークなどをしながら、お互いに顔の見える関係作りをしている。
続いて、問題行動サポートチームの件について、例えば生徒指導特別指導員が入っている学校では、生徒指導特別指導員、SSW、SCそれから学校関係者、関係機関が集まり、学校で情報共有するような部会や生徒指導委員会、事例検討会などの場で計画的に情報共有に努めている。守秘義務については、校内の守秘義務という形で共通認識の下に取り扱っている。関係機関が入る部分については、子供の支援に係る情報ということで、守秘義務を皆が共通認識しながら取り組んでいる。
最後にコーディネーターについて、SCのコーディネーターは、全ての配置校に設置してもらうように、校長会や各市町の教育委員会へ働き掛け設置している。しかし、担任をしながらコーディネーターをしているなど課題も残っており、研修会や市町の教育委員会との合同の協議のときに、コーディネーターの育成について課題になっている。

【発表者】  情報の共有について、例えばSSWやSCが連絡協議会の中で情報共有する場合の情報共有の仕方は、具体的なAさん、Bさんなど、そのケースの内容から個人が特定されるような資料の提供は求めていない。校内でSSWやSCがケース会議に入る場合は、当然のことながら、生徒との関係の中で言えないところもあるため、県の教育委員会が求めている守秘義務を超えない範囲で情報提供するという形となっている。
続いて、市町村と県のSSWの役割の整理について、自治体による力の差があるため、SSWを独自で採用できる自治体は、一定程度は自力で対応できる市町村ということで、困難事例でSSWのスーパーバイザーの助言等を求めてきた場合に、県として助言をするという関係となっている。

【委員】  守秘義務や情報共有に関するルールを明文化されているものがあるか。

【発表者】  三重県では、スクールカウンセラー等(非常勤)取扱要綱の中に、秘密を守る義務として明文化している。情報共有のルール化という、更に細かいところについては、まだ今、説明したような状況である。

【発表者】  神奈川県においては、SSWのガイドラインの中で大枠は決めている。あとは、具体的な研修の場面等で資料を持ち寄る際に、個人情報の取扱いについて注意事項を載せて対応している。

【事務局】  要綱やガイドラインで守秘義務を定めているとのことであるが、それは当事者に対する拘束力はないのか。

【発表者】  三重県では、一定の拘束力があるものという認識をしている。

【発表者】  神奈川県においても、最初に説明し、その内容でもって理解してもらった方を雇用しており、一定の拘束力を持っているものと捉えている。

【委員】  今後の対応として、チーム支援、チーム学校ということが非常に強調されて、話題の中心が問題のある個人をいかにチームで支援するか、サポートするかということになっている。しかし、学校現場では、例えばいじめの問題、不登校の問題にしても、子供たちの学級が居場所として機能していないことが一番大きな問題であると思う。そのため、集団への対応、どういう集団を作るかという専門性が問われていると思う。
例えばいじめの場合、傍観者がいる限り、いじめはなくならない。傍観者をなくすためには、クラスの中で問題解決する、話合いができるかどうか、チーム会議が開けるかどうかという取組が有効である。そのため、SCには、日常的にソーシャルスキルトレーニング、構成的グループエンカウンターといった取組がなされているかについて、集団のアセスメントができるかどうかが求められていると思う。

【委員】  情報の問題が大きな問題になっているが、要保護児童対策地域協議会に学校の先生も入り、開示対象外ということで実名を出して話し合う方法もある。そこには、児童相談所も福祉事務所も警察も全部来てもらい情報を共有する形になる。

【委員】  これからの学校を支援していく上で、集団という視点は非常に重要である。学校という有機体をどのように育て、学校が子供たちにとって安心・安全の場となるのかという切り口で、学校という子供たちの生活の場に積極的に変革をもたらすような何らかの活動がSSW、SCあるいは学校保健の専門家の責務になっていくのではないかと思う。従来の教育相談の枠組みを一度広げるなり、変革するような視点をアピールしていきたい。

【委員】  チーム学校において、学校内の教員による教育相談コーディネーターの存在は大変重要である。学校によっては、教育相談に関する詳しい知識を持っている教員がいない場合もあると思う。そのため、教職員の研修の在り方や教育相談コーディネーターの位置付けを明確にしていくということも話合いの中に含めてほしい。

【委員】  コーディネーター役の教員の重要性は理解できるが、特別支援教育コーディネーターと教育相談のコーディネーターと、そもそもそれぞれの学校で別々に立てるほど、学校としての枠があるのか。一緒にするならば、特別支援の方でも業務が膨らみ、教育相談でも膨らんでいくという流れにあると思っており、本当にできるのかという心配がある。

【委員】  コーディネーターの仕組み、配置が充実されていくことはいいと思うが、今の平均的な学校は、生徒指導主事や進路指導主事の先生が頑張っている。そうであるならば、従来の生徒指導主事や生徒指導主任、進路指導主事の役割の変容や新たな役割を求めるような部分についても話題にしたい。

【委員】  アメリカとかカナダ、イギリスであれば、49%ほど学校の中に教師以外の人がいる。ところが、日本は十何%というところであり、教育相談体制の在り方を考え、チーム学校を考える場合、今までの教育相談の人の役割をちょっと増やすというレベルではなく、そもそも教育相談の枠組みを変えるなど、発想の転換をしなければならない。
さらに、OECD加盟国の中で教員の就業状況が最悪といわれている状況にあって、コーディネーターに関する客観的な数値と、役割の整理と、両方見越していく必要がある。

【委員】  児童相談所の立場から、今まで学校は家庭の問題には介入しない、教育の問題だけやっていくという考えが強く、問題解決を図るためには、SSWやSCを窓口にしてつながらなければならなかった。しかし、週何日しかいなければ、窓口としての役割は果たせないところがある。
チーム学校は、教員の負担をある意味で減らしていくというものであるため、SCについては、その量と役割を増やし、SSWについては、学校の中に目を向けるだけではなくて、外の社会資源を同時に理解できる資質を求め、学校の先生方の負担を軽くするのと同時に、外とのパイプになってほしいと思う。

【委員】  専任の相談教諭を置く余裕が今のところ日本にないということであれば、時間軽減をするなど、ある先生が特別にそういう役割を持つという共通理解を全職員が持つことで機能・役割を発揮できると思う。学級を持ち、同じ授業時間を持ちながら、コーディネーターとなるのは難しい。授業時間をゼロにするのは、一般的ではないが、特別な配慮を管理職がすることで、コーディネーターの存在は現状でも可能であると思う。

(3)事務局より連絡
○今後の予定

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第二係

電話番号:03-5253-4111(内線3289)

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導第二係)