資料4 日本学校図書館情報学会配付資料

平成28年1月31日

学校図書館の在り方と学校司書制度に関する基本的な考え方

日本学校図書館学会 会長  小川哲男


*配布資料
1 『学校司書の資格、養成・研修』平成27年3月発行
2  説明資料

説明内容
1 学校図書館の運営に係る基本的な視点について
2 学校司書の資格の在り方やその養成の在り方について

  1. 学校司書制度にかかわる基本的な構想
  2. 学校司書の養成カリキュラムと研修プログラム(含む「試案」)

3 本学会の今後の研究課題

1 学校図書館の運営に係る基本的な視点について

1 学校図書館の現状と課題
(1)学校図書館は、多くの学校において教育課程外の読書を中心に運営されており、教育課程の展開に寄与している学校は少数であるのが現状である。
(2)学習指導要領の理念である「生きる力」を育成するためにその鍵を握っている探究活動を展開する上で学校図書館を活用することは有効であり、また学校図書館法に規定されている学校図書館の目的から見ても、学校図書館を教育課程の展開に寄与するように改革していくことが課題である。

2 教育課程の展開と学校図書館の役割
(1) 各教科等の学習指導とりわけ探究活動の質を高める観点から、学校図書館の活用することを教育課程編成方針の中に位置づけ、指導計画の中で具体化を図る。
(2) 学校図書館職員は、教材・学習材の面で授業担当者と協働による授業づくりを行う。

3 学校経営と学校図書館活用の推進体制
(1)校長をはじめ管理職が教育課程の展開に学校図書館を活用する必要性を理解し、リーダーシップを発揮してその実現を図る。
(2)学校経営方針の中に学校図書館を活用することを位置づけ、それを実施できる体制を整備する。
(3)学校図書館の活用を推進するために必要な人的・物的条件を整備する。学校司書制度は、この一環として構想し、その充実を図る。

2 学校司書の資格の在り方やその養成の在り方について

<1>学校司書制度にかかわる基本的な構想

1 学校図書館の基本的性格と学校司書制度(資料p1)
学校図書館は、学校における教育活動を支援することを目的とする組織である。学校図書館は、教育課程の展開に寄与し、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的とした教育施設であることから、学校司書制度は、学校図書館の在るべき姿を実現するための人的条件の整備と捉え、その資格や養成等の制度設計をする。

2 学校司書の基本的性格(資料p‐1,2,3)
(1)学校司書の専門性
学校司書は、学校図書館法に規定されている学校図書館の目的を実現するために創設される職であると捉える。その専門性としては、学校図書館の管理業務に加え、各教科等の学習指導及び教育課程外の読書活動を支援するために必要な資質能力を備える必要がある。
(2)学校司書の資格
学校司書の資格は、その専門性を担保するため、大学等において必要な単位を取得した専門職と する。
(3)学校司書の養成
学校図書館は学校の一組織であり、学校司書は、学校組織、教育課程を中心とした教育活動を支援する役割を担っている。したがって、学校司書を養成するためには、司書制度とは異なる学校司書制度としての独自なカリキュラムを構想する必要がある。
(4)学校司書の研修
学校司書としての資格を取得していない者が任用されている場合は、所定の研修を受講する必要がある。その場合には、二つのタイプの研修が必要であり、一つは、専門性を高める研修、もう一つは、教育課程に寄与するという観点からの研修である。
(6)学校司書制度への移行措置
現在、学校には、学校司書の資格を取得していない職員が配置されている。これらの職員の学校司書資格取得が円滑に行われるように、移行措置が講じる必要がある。

3 学校司書との協働による授業の質的向上(資料‐p3)
(1)学校教育の課題と協働による授業づくり
学習指導要領に示されている目標達成の授業づくりのため、授業担当者と学校司書それぞれ の専門性を生かした協働が大切である。
(2)協働による授業づくりの考え方
協働による授業づくりは次のような考え方で進めることが大切である。

  1. 児童生徒、学校や地域の実態、現状分析
  2. 育てたい力を具現化実現化への共通目標の設定
  3. 学校司書はその目標に向けて教材・学習材の面で授業担当者を支援

<2>学校司書の養成カリキュラム構想と研修プログラム構想

○学校司書の養成カリキュラム構想

1 学校司書制度と学校司書の専門性(資料‐p4)
学校司書制度は、学校司書の資格を取得した者だけがその職に就くことができるクローズな制度が望ましい。また、学校司書の専門性としては、学校図書館の管理・運営業務等に加え、各教科等の学習指導及び教育課程外の読書活動への支援をするための知識・技能・使命感などの資質能力が必要である。学校司書の養成カリキュラムは、その専門性を担保できるものとする。

2 学校司書の養成カリキュラムの基本的考え方(資料‐p4)
学校司書の養成カリキュラムは、次のような観点から構想する必要がある。

  1. 学校司書は学校組織の一員であること
  2. 学校司書は学校図書館の専門職であること
  3. 児童生徒の教育に関わる職であること
  4. 学校段階や学校種別などにより実態が異なっていること

3 学校司書の養成カリキュラムの内容(資料‐p5)
具体的な学校司書養成のカリキュラムを構想すると次のような科目及び単位数が必要となる。
(1) 資格の取得に必要な科目
1 学校教育に関する科目
2 学校図書館に関する科目
3 教養に関する科目
4 学校図書館にかかわる選択科目
(2) 資格の種類と取得のための単位数
  第1種資格 56単位(4年制大学課程)
 第2種資格  42単位(短期大学課程)

★試案 学校司書養成カリキュラム案 (資料‐p6~8)

○学校司書の研修プログラム構想

1 学校司書と研修(資料2‐p9)
学校司書は学校図書館に従事したその日から、新規採用であれ、経験の有無を問わず、しかも周囲に相談する人のいない状況の中で学校司書としての職務を果たすことが求められている。そのためには、次のような資質能力を育成するための研修プログラムの編成が必要である。

  1. 学校の職員としての知識・理解
  2. 学校司書としての専門性
  3. コミュニケーション能力
  4. 状況に応じて臨機応変に対応できる柔軟性

2 学校司書の役割・職務(資料‐p9)
文部科学省調査研究協力者会議は学校司書の職務の標準として、間接的支援、直接的支援 及び教育指導への支援をあげている。学校司書には、これらの役割を果たすための資質能力が求められる。

3 学校司書研修プログラムの在り方(資料‐p10)
学校司書研修プログラム作成に当たっては、次の4つの視点が重要である。

  1. 教育基本法・学校教育法に基づく学校制度等について学べる内容
  2. 児童生徒理解の方法や、学校図書館の運営等について学べる内容
  3. 学習指導要領についての基本的な理解、司書教諭との連携、図書館資料の活用等について学べる内容
  4. 読書活動推進に関する様々な知識・手法・技能等について学べる内容

4 研修プログラムの内容構成(資料2‐p10)
学校司書の資質能力を高めるために、各教科等の学習指導の支援及び学校図書館の運営に関する研修が重要である。そのためには、次のようなの講座を開設することが考えられる。

  1. 学校司書の位置付けと役割
  2. 学校図書館を利活用した授業等の推進に役立つ手法・技術
  3. 学校図書館の各種サービスや読書活動の推進に役立つ手法・技術
  4. 学校図書館の管理・整備・運営に役立つ手法・技術

★提案 学校司書研修プログラム案(資料‐p12~13)

3 本学会の今後の研究課題

  本学会は、「学校」図書館学会である。教育課程の展開に寄与し、児童生徒の豊かな人間性はもとより学力向上に資すること、すなわち、「はじめに児童生徒ありき」「児童生徒のための学校図書館」であるとの立場である。
  したがって、今後、学習指導要領に示されている目標を達成するために、授業担当者と学校司書それぞれの専門性を生かし、協働し、学校図書館を活用した授業の改善・充実に取り組むことが急務である。
  具体的には、学校図書館を活用した授業を「計画・実施・評価」し、その結果、児童生徒の「学び」がどのように変容し、「学力」がどのように形成されていくのかについて、質的・量的な視点から、「実証的研究」を推進することが今後の課題である。

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初等中等教育局児童生徒課