学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事録

1.日時

平成28年1月31日(日曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省3階 第2特別会議室(東京都千代田区霞が関3‐2‐2)

3.議題

  1. 関係団体ヒアリング(1.公益社団法人全国学校図書館協議会、2.公益社団法人日本図書館協会、3.学校図書館問題研究会、4.学校図書館を考える全国連絡会、5.日本学校図書館学会、6.日本図書館情報学会)
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事録

【堀川座長】
  おはようございます。日曜日わざわざおいでいただきまして、ありがとうございます。ちょっと定刻より早いですが、皆様お集まりのようですので、始めさせていただきます。第3回学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議を開催いたします。
  お手元の議事次第にありますように、きょうは大きく二つの議事になっております。まず関係団体のヒアリング、そして、自由討議です。自由討議は恐らく三、四十分になるかと思いますが、皆様の御意見をきょうはお伺いしたいと思います。
  関係団体のヒアリングは6団体あります。学校図書館に関する団体として、1、公益社団法人全国学校図書館協議会、2、公益社団法人日本図書館協会、3、学校図書館問題研究会、4、学校図書館を考える全国連絡会、5、日本学校図書館学会、6、日本図書館情報学会の6団体からお話を伺いたいと思います。
  前回のヒアリングは3団体でした。現場の実践を中心にお伺いしました。今回はそれぞれの団体から御意見を中心にということになるかと思いますが、委員さん方におかれましては、この前も案が出ていました、この先の論点整理、それを念頭に置いて、その論点整理に付け加えることがあればということを考えていただければと、そう念頭に置いてお話を伺えればと思います。
  それでは、議事進行に移る前に、事務局の方から何かありますでしょうか。お願いいたします。

【水之浦児童生徒課指導調査係長】
  おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。本日、小西委員と佐藤委員がお休みということで御連絡承っております。
  また、配付資料と致しまして、委員の皆様方におかれましては、座席表、議事次第、資料1「公益社団法人日本図書館協会配付資料」としてワードの資料です。そして、資料2と致しまして、学校図書館問題研究会様よりワードの資料、また、リーフレットが2種類、そして、冊子の資料。資料3として、学校図書館を考える全国連絡会様よりパワーポイントの資料、交流紙、それから、冊子を2種類。日本学校図書館学会様より冊子、またワードの資料。そして、資料5として、日本図書館情報学会様よりパワーポイントの配付資料を配らせていただいております。委員の皆様におかれましては、配付資料がない場合などには事務局まで申し付けください。
  また、前回第2回会議において事例発表のあった文京区に対して、後日対応するとした質問と回答をまとめた資料を机上配付としておりますので、事務局から簡単に説明を差し上げます。

【中安児童生徒課課長補佐】
  失礼いたします、前回先生方から御質問いただいたものの中で回答がなされてないものがあったとしたら整理をして報告をしてほしいというお話がございました。座長と事務局の方で議事録精査の上御相談申し上げまして、文京区に対してなされた以下の質問三つがその場では十分に回答されていなかったのではないかということで、今回机上配付資料としてお手元に配付させていただいております。
  1問目ですけれども、文京区の支援員派遣に関する契約内容。そちらは机上配付資料、別紙にありますけれども、小中学校全30校に原則週4日、1日4時間、期間内に168回並びに672時間以上の支援を行うということで、支援日・支援時間の具体については各学校と調節する。要員配置については、支障のない人員数を確保した上で、管理統率する責任者を定め、専任する支援員を1人以上配置するといったようなことが書かれております。
  具体的な業務内容として、図書館資料の管理として図書館資料の選定・収集・発注業務の支援・受入れ作業、図書の修理・補修等、学校と相談の上の蔵書点検、さらに、貸出し・予約受け付け等についてそれが促進されるよう工夫するとか、読書活動等に当たって学習を支援するといったこと、また、連絡調整会議を、全体会議年1回、担当者連絡会年3回といったところで連絡調整を図っていくというような契約内容になっているということでございます。
  次ですけれども、文京区が指定管理という手法をとっている理由についてでございます。文京区さんの御回答を読み上げさせていただきます。「学校図書館には、「学習センター」「情報センター」「読書センター」としての役割が求められる。専門性のある人的支援により、学校図書館を活用した子供の学習活動の充実、学習や読書に必要な蔵書等の質と量の向上、読書環境や読書活動の充実を図る。これらの実現のために、区立図書館(指定管理者)からの司書派遣を行うことで、専門性の高い人的支援が可能となり、学習指導や蔵書の環境、読書環境、読書活動の充実が可能となる。また、児童が学校図書館と区立図書館とをより効果的に利用することになり、区立図書館の利用促進につながる」ということでございます。
  最後の質問ですけれども、図書館流通センター、ヴィアックスの方で目指されている学校図書館像についてということで、それぞれ御回答いただいております。図書館流通センターさんの方からは、「学校図書館は、学校教育現場に直接的に関わる教育施設であると考えております。児童・生徒に対し、読書の喜び、知る喜び、調べる喜びを感じていただく場所であり、また、先生方が行う教育を学校図書館の資料を通じてサポートする教育支援を目的とする場所であると考えております。
  学校図書館は、児童・生徒の成長過程における最も身近な図書館であり、自発的に図書館と出会い、自由に好きな本を選んで読むところから始まり、「調べる楽しみ」と「知る喜び」を体系的に学ぶ初めての場であります。児童・生徒が目的の本を探すスキルや図書館利用のルール等を覚え、図書館を効果的に利用する知識を得るとともに、社会生活をしていく上での情報リテラシーを身につけ、将来、自ら考え自ら課題解決できる大人へと成長していくことを支援いたします。
  TRCは、学校図書館において、児童・生徒が人と人のつながりを育みながら好奇心を喚起し、幅広い知識にふれあう環境作りを行うことを通じて、児童・生徒の健全な成長に寄与していきたいと考えております」とのことでございます。
  ヴィアックスさんでございますが、「学校教育において主体的学習、探究的な学習が重視されるなかで、学校図書館の役割は大きくなっています。ヴィアックスは、専門的知識・技術を持つスタッフを学校図書館支援員として育成、配置をしています。図書室の利用指導、読書活動支援、図書室の環境整備や蔵書計画、行事計画のアドバイスなど、各学校の現状やニーズに応じた運営支援を行います。また児童・生徒が地域の中で主体的に学習活動・読書活動を行える環境づくりを支援するため、公共図書館との綿密な連携体制を構築します。資料の団体貸出しや事業協力といった交流をとおし、学校図書館の充実と公共図書館の利用促進など相互の事業拡充をはかります」とのことでございます。以上でございます。

【水之浦児童生徒課指導調査係長】
  事務局からは以上です。座長におかれましては、議事の進行をお願いいたします。

【堀川座長】
  ありがとうございます。それでは、議事の進行をいたします。各団体10分ということで御意見について発表していただきたいと思います。多くの団体に御参加いただいておりますので、御説明については、申し訳ありません、8分経過の時点で事務局からお知らせするようにします。時間内で御説明いただき、円滑な進行に御協力をお願いいたします。また、発表に対する御質問等は、6組の皆様の全ての発表が終わりました後にお願いしたいと思います。
  それでは、公益社団法人全国学校図書館協議会、森田理事長さん、お願いいたします。

【森田】
  よろしいでしょうか。堀川先生、もうよろしいですか。

【堀川座長】
  お願いいたします。

【森田】
  それでは、失礼します。全国学校図書館協議会理事長の森田と申します。10分間ということですので、若干早口になるかと思いますが、是非よろしくお願いします。なお、資料等につきましては、まだ成案ができておりませんので、きょうは配付しておりません。耳だけのヒアリングになってしまいますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、全国SLAの基本的な考え方を申し上げたいと思いますが、その前に前提がございますので、それを三つほど申し上げます。まず一つ目は、学校図書館というのは、学校教育の中核であるということでございます。これは国の方でも言っておりますし、以前は学校の心臓であるという、そういうキャッチフレーズもございましたが、現在では学校教育の中核ということで位置付けられているということです。二つ目としましては、学校図書館というのはあくまでも学校教育を支えるというのが第一義的な目的でございますので、そこを前提としております。それから、三つ目で、ここはもしかするとほかの方々と若干違うかもしれませんが、専任の司書教諭、専任の学校司書が配置されているということを前提としています。ですから、現状を追認した形ではございませんので、そこの点は誤解のないようにお聞きいただけたらと思います。
  大きく分けまして二つございます。本題に入りました。一つが学校図書館の運営に係る基本的な視点、それから、大きな二つ目が学校司書の資格・養成の在り方、この大きな二つで申し上げます。
  まず大きな一つ目、学校図書館の運営に関わる基本的な視点でございますが、これを五つの項目に分けております。一つ目が学校図書館整備費の予算化等です。それから、二つ目が運営を支える人材、三つ目が学校図書館メディア、四つ目が教育委員会による支援、五つ目が特別支援教育、大きな一つ目はこの五つに分けて申し上げたいと思います。
  まず学校図書館整備費の予算ですが、これはきょうのヒアリングでは直接関係も少ないとは思いますが、やはりいろいろな事業を行うためには予算が担保されなければなりません。ヒト・モノ・情報をきちっと担保するような予算の確保がやはり大前提にもなっていると思っております。ここは先ほど申し上げましたように今回の基本的な論点になっておりませんので、このぐらいにとどめます。
  二つ目が運営を支える人材ですが、この人材としましては六つを考えております。まず司書教諭、それから、二つ目の学校司書。この司書教諭と学校司書につきましては、この前の学図法改正により学校図書館はこの2職種で中心的に活動していくということが明確になりましたので、大変に喜んでいます。全国SLAは以前からこの2職種でということを訴えてきましたけれども、これが法的にきちんとなったということで、より学校図書館が振興され、またその活動がやりやすくなっていくのではないかと思っています。ですから、運営を支える人材としましてまず司書教諭、学校司書。それから、この2職種だけでは当然学校図書館の経営・運営はできません。そこにはやはり担当の係教諭が必要になると思います。
  この三つがいわゆるスタッフになりますが、そのほかに外側から学校図書館を支援するとか、保護者又はPTA、それから、ボランティア、そして、地域の方々。地域の方々とボランティアの方が重なる方が多いと思いますが、必ずしもボランティアでなくても地域の方々が支えてくださることができると思っております。以上、この六つの方々が運営を支える人材と言えるのではないかと思っております。
  それから、三つ目の学校図書館メディアですが、今までは図書館資料という古い言い方をしておりますけれども、学校図書館メディアの中心が、今までは紙の本でしたが、これからは電子資料、いわゆるデジタル資料が大きなウェイトを占めると思います。しかし、問題がありまして、なかなか学校図書館の校務分掌上、デジタル資料、電子資料が扱いにくいというところがございます。これは校務分掌上、是非一体化、いわゆる情報教育の分掌、学校図書館の分掌との一体化又は連携・協力が必要になってくると思いますが、まずは紙と電子が大きなメディアの中心になるのかなと思っております。
  それから、四つ目の教育委員会による支援ですが、是非この二つを強調したいなと思っております。まず一つ目が、学校図書館を熟知し、豊富な経験を持つ指導主事による支援でございます。この点が今、大変弱くなっておりますので、当然、学校教育の中核である学校図書館を支えていくためにはそういう指導主事が必要になるかなと思っております。それから、二つ目ですが、学校図書館支援センターの設置、これが今後大きな課題になるかと思っております。幾ら司書教諭、学校司書が専門的に置かれたとしてもやはり限界がございます。それには、教育委員会の中にある学校図書館支援センターが、指導面におきましても、学校図書館メディアの面におきましても支援してくださることが大変重要ではないかと思っております。
  それから、五つ目、特別支援教育。これにつきましては、学校図書館の機能が十分に果たせないところがございます。まず特別支援学校に学校図書館がないところも多数ございます。法律には違反しているわけですけれども、まずは全特別支援学校に学校図書館を設置する。それから、予算措置が大変少なくなっております。これは考え方を反対にして、特別支援学校、特別支援教育こそ厚く予算措置をしていく必要があるのではないかと思っております。
  それから、二つ目ですが、学校司書の資格・養成の在り方。ちょっと時間がなくなってきましたので、更に早口になります。まず学校司書の職務ですけれども、大きく分けまして三つ考えております。一つ目が学校図書館の機能を発揮できる環境整備。具体的には学校図書館メディアの組織化や、施設・設備の維持管理等がございます。それから、二つ目として、学校図書館サービス。具体的に言いますと、情報サービス。特にレファレンスサービスが今後ますます重要になってくるかなと思います。それから、学校図書館メディアの提供、貸出し・返却、そういうものがございます。それから、三つ目、特に学図法の改正により注目を浴びています学習活動への支援でございます。司書教諭や教諭とともに学習活動を支援していく。これがこれからの学校司書の職務の中では大事なものになってくると思います。それから、望ましい資質ということが書いてありましたが、これにつきましては、学校司書というのはあくまでも学校現場で児童生徒と対面して教育活動に携わるという大事な役割を持っておりますので、望ましい資質というのは、これは教員が求められる資質と同じではないかと思っております。
  それから、三つ目、既存の資格に足りない内容です。この既存の資格というのは、恐らく司書資格又は司書教育資格を想定していると思いますが、六つございます。
  まず学校図書館におけるICTの活用。学校図書館におけるということでは、これは司書教諭資格にも司書資格にも不足していると思っております。それから、二つ目、学校教育に関する内容。これは司書資格を持って学校司書をされている方がたくさんいらっしゃいますけれども、やはり学校教育に関する内容が不足しているのではないかと思っています。それから、特別支援教育。これからますます特別なニーズのある児童生徒が増えていくかと思いますので、特別支援教育に対する知識・経験等が必要になるかなと思います。それから、4番目、学校図書館と教科学習の支援。学校図書館の中心たる学習活動への支援に密接に関係するもので、この4番の学校図書館と教科学習の支援がこれから特に喫緊の課題となると思っております。それから、学校における情報サービス。それから、六つ目が、学校図書館関係の法制度等も必要になるかと。以上六つが既存の資格に足りない内容かと思います。
  それから、資格の在り方ですが、早口で申し上げます。四つございます。まず国が定める資格ということが大事かと思います。司書教諭と同様に国が定める。それから、二つ目、これが大事だと考えています。他の資格の流用ではなく、やはり独自の学校司書という資格を創設する、これが大事かと思っています。以前の司書教諭の二の舞にならないように、きちっと専門性を認める学校司書資格を創設する必要があると思っています。それから、大学における養成や、専門職員と言われるのにふさわしい科目内容、単位が必要かと思います。それから、研修方法ですが、内容としましては、基礎知識や技能に、更に学校司書としての専門的な知識や技能、特にICT関係が重視されると思っています。
  それから、二つ目です。教育委員会、教育センターによる公的な研修制度。もちろん民間の研修も必要ですが、教育委員会による公的な研修制度がこれからもっと充実する必要があるかと思っております。それから、三つ目ですが、学校図書館に関する造詣の深い講師、ますますこういう講師の方々が、学校司書の研修にふさわしい内容等で講義をしていただければ有り難いと思っています。
  以上申し上げましたが、若干時間が過ぎてしまって申し訳ございません。では、以上で全国学校図書館協議会としての発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは続いて、公益社団法人日本図書館協会、森理事長さん、お願いいたします。

【森】
  皆様、こんにちは。本日はお招きいただきまして、ありがとうございました。私は、公益社団法人日本図書館協会の理事長、森茜です。本日、私どもの法人の学校図書館部会の高橋恵美子さんと、それから、図書館情報学教育部会の松本直樹さんの3人で参りました。これから御説明させていただくことは、この方々を中心に日本図書館協会の中で議論した方向性を踏まえたものでございます。
  それでは、私から御説明させていただきます。日本図書館協会全体の組織や活動の概要につきましては、お手元に資料1として既に配付させていただいております。ごらんいただければ有り難く存じます。学校図書館に関わる活動は学校図書館部会が中心でやっておりますが、図書館専門職の教育・養成という観点からは図書館情報学教育部会が、公共図書館との関連は公共図書館部会が、また、図書館の自由など図書館の基本方針との関連などからは20以上ある委員会がというふうに、学校図書館についても多様で多角的な連携の中で取組を行っているところが私どもの大きな特色です。
  2014年6月の学校図書館法改正以降の大きな取組と致しましては、同法改正を受けて、同年の12月に当法人内に学校図書館職員問題検討会を設置し、総合的な観点から検討を行っているところです。この検討会の報告書は3月末を予定しており、まだまとまっておりません。そこで、本日は当法人の今までの活動、当法人が今まで出した要望・意見・見解を踏まえ、この検討会での議論の方向を基にお話ししたいと思います。
  早速、内容に入らせていただきます。文部科学省からあらかじめ御連絡のありましたヒアリングの内容の線に沿って申し上げます。最初に、学校図書館の運営に係る基本的な視点についてですが、5点ほど申し上げます。
  1点目は、学校司書の専門性についてです。学校司書は、学校図書館がその機能を十分に発揮する上で重要な役割を担っております。図書館の整備はもちろん、読書や学習の場面で子供たち一人一人に対応して、ふさわしい資料情報の提供や相談活動を行うことができます。先生方、職員に対しても同様の活動を行います。学校司書の教育指導への支援の役割は、2014年3月に出ました学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上等に関する調査研究協力者会議の報告の中で、学校司書の職務内容が入ってまいりました。学校司書が学校図書館を運営する、また児童生徒の教育活動への支援を行うために専門的な知識・技能が必要であるとこの報告書に書かれております。当協会が2013年に出しました「『学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)の骨子案』に対する要望」に書きましたように、当協会はかねてより学校司書を専門職員として位置付けることを強く求めております。資料の2ページ目にそれを書いてございます。
  2点目は、司書教諭の役割についてです。当協会が学校図書館法改正後に出した学校図書館法の一部を改正する法律について(見解及び要望)、資料2になります。先ほどのに引き続いて掲載しております。そこでは、改正学校図書館法審議の際に国会で出されました附帯決議に即して述べていますが、その5に司書教諭の配置の促進、その6に司書教諭と学校司書の職務の在り方を挙げております。ここでは、学校司書が司書教諭との円滑な協力協働関係によって学校図書館運営を行う、また、司書教諭の職務の在り方をどう整理するのか、実態を踏まえた検討が必要であると指摘しております。学校司書が新たに制度化され、教育活動への支援を行う専門的職員として位置付けられたことを踏まえまして、これからこれら二つの職の協力協働の在り方について再検討が重要であると考えております。
  3点目は、学校司書の専門性を担保するための条件についてです。学校司書は、自治体によって雇用条件が大きく異なることが課題となっております。先ほどの見解及び要望においてもこの点を重視しております。6ページをごらんください。そこに1)として、現在の配置水準を下げないこと、2)として、政府による学校司書配置の促進、3)として、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境の整備を挙げています。1)の現在の配置水準を下げないという点ですが、実は現在の配置水準自体が明確でないという問題があります。必要なのは、確かな実態把握であり、それを踏まえて配置水準を明確にすることであります。したがって、2)の政府による学校司書配置の促進についても、ただ学校司書を配置すればいいとするのではなく、3)で挙げている学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境の整備が重要であると考えております。
  当協会が2013年に出しました「『学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案』に対する要望」の3ページでは、もっと具体的に、学校司書を有資格の職員にすること、1校1名以上の配置にすること、正規職員にすることを挙げております。なお、近年、特に高校を中心に学校司書の非正規職員化が急速に進んでいる点には大きな懸念を抱いているところです。
  4点目は、学校司書を学校の正規の教職員の一員に位置付けることについてです。学校司書が特に教育資料への支援を実現していくためには、幾つかの先進的な自治体の例に鑑みますと、司書資格等の資格を持っていること、正規職員の位置付けがなされていることが重要な要素になっていると考えられます。学校司書は、日常の図書館サービスを通じて学校図書館への理解を教職員に広げ、授業等で活用されるときには事前に必要な資料を準備し、図書館からガイダンスやブックトーク、資料の案内を行うなどの活動をしています。
  そのためには、日頃から教科を担当する教員とのコミュニケーションが欠かせません。図書館運営の基本方針に関わる議論に参画し、図書館活用のきっかけを知るために、職員会議に出席すること、教員と対等に話ができることが重要です。そのためには、学校の正規の教職員の一員であることが不可欠です。したがって、この会議の論点の一つに民間のノウハウの活用ということがありますが、学校司書の業務を民間に委託するとか、民間雇用の人材の派遣を依頼するとかといったことはあり得ないことと考えております。
  5点目は、学校司書の専門職としての位置付けについてです。文部科学省中央教育審議会は、昨年12月「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」をまとめ、公表いたしました。この答申には、授業等において教員を支援する専門スタッフとして学校司書に関する記述がございます。この答申素案に対する意見募集が11月に行われましたが、主な意見の例に、学校司書の資格免許について検討し、学校司書についても、学校教育法や義務標準法に規定し、国庫負担の対象にしてほしいという例が記載されています。国はこの中央教育審議会の答申を堅持していただきたいと願っております。学校司書の配置の促進をはじめとして、学校司書が専任で専門資格を持ち、正規の職員として働くことができる措置を強く求めます。
  最後に、文部科学省から依頼があったヒアリングの内容の二つ目、学校司書の資格の在り方やその養成の在り方について申し述べます。改正学校図書館法附則第2項にも触れられており、当協会としても重要な検討事項として先ほど申し上げた検討会で議論をしております。学校図書館像から始めて、学校司書の専門職員の在り方、さらには養成・研修などという内容を取り上げております。学校司書資格については、大学等高等教育機関において、司書、司書教諭、教職の各科目をベースに単位修得により資格を取得できるようにしてはどうかと検討しているところでございます。どうも御清聴ありがとうございました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは次に、学校図書館問題研究会、松井事務局長さん、お願いいたします。

【松井】
  おはようございます。学校図書館問題研究会の事務局長をしております、松井と申します。

【木下】
  事務局次長をしております木下と申します。

【松井】
  私たち学校図書館問題研究会は、学校司書や司書教諭、市民、研究者など学校図書館に関心を持つ幅広い会員で構成されている個人加盟の研究団体です。本日私どもの方から御用意させていただきました資料、4点あります。一つ目は、これからお話しする内容をまとめたレジュメです。二つ目は、こちらですけれども、学校図書館問題研究会の入会案内になります。三つ目、この「学びが広がる学校図書館」は、学校図書館の役割についてまとめたリーフレットです。それから、最後になりますが、『学校司書って、こんな仕事』という本ですが、これは本会がまとめた学校司書の実践記録集になっております。
  きょうは、学校司書の役割に触れながら、学校司書がその役割を果たすためにはどのような資格が必要か、配置に当たってどのようなことが必要かについて私たちの考えを述べます。
  最初に、資格について述べたいと思います。学校図書館には、朝から子供たちがやってきます。本を返して、次に借りる本を自分で探して借りていく子もいれば、カウンターにやってきて、「次に読む本を紹介して」とか「何か面白い本ない?」と尋ねてくる子もいます。そんなときは、学校司書は一人一人とコミュニケーションをとりながら、その子に合った本を探して紹介していきます。
  また、先ほど紹介した本の中に出てくるエピソードですけれども、特に小学校では、朝、学校に来る途中で見つけた小さな卵を持って、「これ、ヤモリの卵かもしれないから」と調べに来たり、バケツに川ガニを入れて、「これ、雄か雌かな」ということで調べに来たりとか、朝から生き物や植物を持ってくるということも珍しくありません。ですので、まず学校司書に求められるのは、虫やは虫類が苦手でないことです。それは冗談ですけれども、学校司書はそういうときは、「それならこの図鑑に載っているかもしれないよ」と図鑑を紹介したり、その子が調べるのに慣れていないようだったら一緒に調べたりして、子供たちの疑問に応えていきます。
  調べていると、子供たちは時々本によって違うことが書かれていることを発見します。これも先ほどの本に載っている、実は委員をされている加藤さんの学校での授業の場面の事例ですけれども、若山牧水の「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」という歌がありますよね。これを調べていた中学生が、「こっちの本には白鳥は海に浮かんでいると書いてあるのに、こっちには空を漂うように飛んでいると書いてあるよ」と発見する、そういうエピソードが出てきます。担当している教員は「いい着眼点だね」と評価して、学校司書も、じゃ、それならということで関連する本を追加して紹介すると、中学生は更に調べを進めていくんですね。
  そうするうちに今度は、「ねえ、白鳥って1羽なの? それとも何羽もいるの?」というふうに新しい疑問を見つけます。というのも、本の中に挿絵で1羽だけ載っているのと、何羽も載っているのがあったんですね。
知るということは学びの基本です。そこから考えるということが始まり、次の問いが生まれます。ですから、子供たちの知りたい気持ちや読みたい気持ちにその場できちんと応えることはとても大切なことです。
  また、こうして子供たちは情報リテラシーを身に付けていきます。情報リテラシー教育というのは、カリキュラムの中で系統的に取り組んでいくことはもちろん重要なんですけれども、ここまで述べてきましたように、自発的な知りたい・読みたいを解決するときに本当の意味でリテラシーが身に付くんではないでしょうか。
ですから、学校司書は、資料や情報についてよく知っていなければなりません。さらに、子供たちが多面的に考えることができるように、多様で幅広い視点から資料を収集し、使いやすいように分類し、本棚に並べていくことが必要です。
  もちろん子供たちの知りたい気持ちや読みたい気持ちを待っているだけではありません。本棚に並んでいる本を見ているだけで興味が湧き起こってきて、思わず本を手にとってしまう、そういう経験は誰でもあると思いますが、そのような魅力的な本棚を作ることそのものがまず本との出会いを生み出します。それから、もっと積極的に、ブックトークをしたり、読み聞かせをしたり、読書会を開いたり、そうやって子供たちの興味・関心を呼び起こしていきます。学校司書は、資料や情報のことを知り、子供たちのことを知り、そして、資料や情報と子供たちとの出会いを作り出していきます。
  でも、それだけではありません。教員の授業づくりを支援することも、学校図書館、学校司書の重要な役割です。授業に計画段階から関わり、教員と一緒に授業目標や授業展開を確認して、綿密な打合せをしていきます。学校司書は資料を活用する視点から、教員は教えるという視点から、どのように課題を提示するといいか、どのような資料が必要か、学校司書は授業の中でどのように関わるかなどを打ち合わせていきます。
  今述べてきましたように、学校司書は、専門として司書資格の修得をベースに、更に学校教育に関する知識を併せ持っていることが必要であると私たちは考えています。資格や養成を検討するときには、是非学校図書館現場の意見を取り入れていただければなと思います。
ただいま述べてきました学校司書の役割に対して、司書教諭は別の役割を持っていると考えています。司書教諭はまず率先して学校図書館を活用し、それを他の教職員に発信していき、そして、授業や教育課程と学校図書館の橋渡しをすることが司書教諭の大きな役割だと私たちは考えています。
  さて、学校司書は、専門的な知識があればそれでいいというわけではありません。続いて、配置について述べます。

【木下】
  話をつなげさせていただきます。今、松井の方からも紹介がありましたように、先生方が教科の専門家であるように、私たちはやはり本をしっかり読んで、その本の中身を知っている、本の専門家であることが重要だと思って日々の仕事を作っています。そのことを知っていただきたいということで、お手元にお配りしたこの本をきょう、会としてはすごく頑張って皆様に配付させていただきました。
  お手元の本の中の8、9ページを開いていただけますでしょうか。こちらを見ていただくと一目瞭然なんですけれども、毎日学校司書がいる学校図書館と学校司書が非常勤の学校図書館という図が出ています。子供たちの動きが、毎日司書がいて本のことをよく知っている人がいる場合と、そうでない場合、こんなに違うというのを一目で分かっていただけると思います。この本には第一線で活躍している約20人の学校司書の実践が書かれていますが、読んでいただくと、学校司書のはたらきがよく分かると思いますので、是非お読みいただけたらと思います。
  そして、私たちは配置について以下のようなことをお願いしたいと思っています。まず学校司書は図書館専任、フルタイムで1校に1名配置されていること。学校教職員の一員として教育活動に関わり、継続的に勤務することができること、そして、研修が保障されていることです。他団体の発言の中でも、職員会議に出席して先生方と同じように発言ができるというような御意見がありましたが、そこの部分というのもとても大切だと思っています。私たちは、民間委託に関しても学校図書館にはそぐわないと考えています。実際、文部科学省も法改正後の国会の答弁の中で、学校図書館法上の学校司書は、学校の設置者が雇用する職員を想定するものと理解していると答弁されていらっしゃいます。
  ということで、最後、まとめになります。もう一度言わせていただきますが、専門として司書の資格をベースに、学校教育に関する知識を併せ持っていること、図書館専任でフルタイムで1校1名以上配置されていること、学校教職員の一員として教育活動に関わり、継続的に勤務することができること、研修が保障されていることを是非盛り込んでいただきたいと思い、私どものお話を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは、次に、学校図書館を考える全国連絡会の水越代表さん、お願いいたします。
  今度はパワーポイントですかね。
  ちょっと今の時間を利用して確認させていただきたいんですが、関係団体さんの方には、幾つのポイントでお願いしているかという、御意見を伺うというのは、分かりますでしょうか、今。もう始まりますか。
  じゃあ、よろしくお願いいたします。

【水越】
  学校図書館を考える全国連絡会から発表いたします。水越規容子と……。

【梅本】
  梅本恵です。どうぞよろしくお願いいたします。

【水越】
  協力者会議の検討事項のうち、(1)学校図書館の運営に係る基本的な視点について、学校司書を中心に意見を述べます。
学校図書館を考える全国連絡会は、1997年に発足いたしました。全国の学校図書館を考える会などのネットワークとして活動しております。年に1回会合を開き、勉強会や日常的意見交流も続けております。
  配付した資料については省略いたしますが、後ほど水色の表紙の2015年の記録誌を御参照していただくことがございます。
  本題に入ります。なぜ市民の目が学校図書館に向いたのかということです。1980年代後半から市民の学校図書館に対する関心が高まり、全国で様々な活動が始まりました。それは、我が子が通う学校の学校図書館に鍵が掛かっているとか、本の倉庫あるいは自習室の域を出ないという現実を見たからです。そして、岡山市などの学校司書が配置されている学校図書館の実践を見聞きし、地域によって学校図書館施策に差があることを知りました。学校図書館に人がいることでこんなに豊かになるということを知ったのです。そして、様々な活動をしていく中で、学校図書館が機能するためには、人が配置されることが重要であるけれども、人が入っただけでは解決しない。配置の条件整備や研修などの様々な問題があるということも気が付いてきました。
  更に学習を重ねる中で私たちは気付きました。学校図書館は、読書活動を支えるだけではなくて、教育の根幹に関わる問題であり、学校図書館が変わることで学校教育そのものが変わる可能性があるということに。
  私たちが求めるものは、学校図書館の機能によって保障される子供たちの主体的な学び、子供たちの豊かで自由な読書、そして、それらのことがどの町においても、特別支援学校も含めて全ての学校で実現することにあります。
  さて、ここで全国の状況を見ますと、文部科学省が2年に1回しております学校図書館の現状に関する調査結果によっても、確かに小中学校では学校司書配置は少しずつ増加しているように見えます。これは学校司書の実践の積み重ねと市民の強い要望や運動があり、市民の間に学校司書の必要性が認識されるようになり、また、自治体も学校司書配置の努力を続けてきた結果だと思います。そのことが国の地方財政措置にもつながりました、さらに、学校教育の在り方と学校図書館は切っても切れない関係にあり、国の学校図書館政策の方向性が学校図書館を必要としているということ、ここにも重要なポイントがあると思います。
  最新の調査結果では、小中学校の学校司書配置は50%を超えています。しかし、この調査による配置率だけではなかなか実態は見えません。お手元の2015年の記録誌最後にございます東京都公立小中学校学校司書配置表をごらんください。東京都内で学校司書配置があるのは62自治体中45自治体です。しかし、その内容を見ると、職名、勤務日数・時間、複数校配置の実態など待遇のばらつきがあります。資格もまちまちでございます。一概に配置とされている50%の中に実はこれほど多くの差があるということです。
  さらに、都内公立小中学校では、2015年5月の段階で、15区市に内実的に民間委託が導入されています。これについても様々な問題があると思います。先ほどの表を御確認ください。
  この会議で検討される学校司書の資格・養成の在り方が重要であることは異論がありません。しかし、それらのことを実りあるものにしていくためには、雇用形態も併せて考えていくことが欠かせないと私たちは考えます。

【梅本】
  ここに小中学校のデータがあります。正規採用で司書資格を持ち、専任で配置されているO市の場合と、週10時間程度で配置されているT市を比較しています。今表示しているのは、平均貸出冊数のところですけれども、図書館が使われた授業時間数でも大きな差があります。T市の場合は、資格が問われ、研修も保障されていますが、このように差があります。資格や研修の保障だけでは十分ではないという事例の一つです。
  鳥取県では、正規採用の学校司書が教職員の一員として司書教諭や教諭と連携し、図書館活動や図書館教育を行っています。一例として、鳥取県立鳥取西高校のデータを挙げますけれども、平成25年度に学校図書館を活用した授業数は年間220時間を超えており、レファレンス件数も1,584件となっています。
  鳥取県立高校では、学校司書も教育活動に参画できる体制がとられています。それは、県立高校全てに司書資格を持った正規採用の司書が配置されていること、職員会議などに参加し、図書館の立場から起案もできるということ、研修の機会も保障されており、校内研修はもちろんのこと、公務で出張することも可能です。また、これはとても大事なことですが、基本的に図書館が常に開いていて、いつでも教職員や生徒が利用でき、資料を的確に手渡すということができています。また、県の職員として、ほかの図書館をはじめ、地域や行政機関、会社など外部と連携をとるということが可能です。
  こうしたことから、勤務日や勤務時間によって学校司書がいたりいなかったりするようでは、毎日の学校図書館を活用した教育活動が十分に行えません。日常的な学校図書館活動がなければ、児童生徒、教師が学校図書館に信頼を寄せるといったことは難しいです。教師の教材研究や授業を資料提供の面から支援するといった観点からも大切なことです。
  こういったことから、2番目に大事なこととして、自治体の直接雇用であるということです。学校司書は、学校長の指揮監督下にあって、教職員の一員として位置付けられることが必要です。例えば一つの授業をつくるためには、学校司書は教師とどのような授業をするのかという打合せの段階から共に話し合い、授業中はもちろんのこと、授業後の振り返りも含め、全てのプロセスに関わることが欠かせません。また、自治体の直接雇用であることは、各学校の取組を各自治体の教育施策に反映させることにもつながります。
  三つ目の結論として、自治体施策を守り、前進させるということです。厳しい財政状況の中、各自治体は学校司書を配置するという努力を続けてきました。それは学校司書配置の要望が市民の中にあり、その重要性が強く認識されてきたからです。しかし、その自治体施策を見ると、先ほどお話ししたように、自治体によって大きな差があります。日常的な学校図書館の活動が保障されるよう、自治体施策を前進させていくことが必要です。
  最後に、専任・専門・正規を追求し続けるということです。これから学校司書の資格や養成の在り方などが検討されていくわけですが、それらのことについても現場での実践が可能となる雇用条件の保障があってこそです。一般的な学校司書像は、まだまだ読書活動を推進するといった役割の域を出ていません。学校教育に深く関わる学校司書の専門性を明確にした上で、それをいかに保障していくのか、そして、今回の法改正を踏まえて、司書教諭と学校司書の協働をどう考えていくのかを含め、学校図書館施策の前進につながる報告がまとめられることを期待します。以上です。ありがとうございました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは次に、日本学校図書館学会、小川会長さん、お願いいたします。

【小川】
  日本学校図書館学会の小川と申します。きょうはありがとうございます。お手元の資料に基づきまして、これから学校図書館の在り方と学校司書制度に関する基本的な考え方について、学会として述べます。配付資料は、お手元に、今ごらんの説明資料と、もう一つ、白表紙の冊子がございます。その二つが配付資料でございます。
  これから申し上げる内容は、大きく三つになります。一つ目が、学校図書館の運営に係る基本的な視点についてです。二つ目が学校司書の資格の在り方やその養成の在り方についてです。その内訳は二つです。一つは、学校司書制度に関わる基本的な構想、そして、もう一つは学校司書の養成カリキュラムと研修プログラムです。その試案を持ってまいりましたので、後ほど御提案申し上げます。三つ目は本学会のこの問題に対する今後の研修課題は何かといった流れで申し上げます。
  では、お手元の資料にお戻りください。まず初めに、学校図書館の運営に関わる基本的な視点について述べます。1番、学校図書館の現状と課題につきましては、学校図書館は多くの学校において教育課程外の読書を中心に運営されており、教育課程の展開に寄与している学校は少数であるのが現状だと捉えます。この現状を踏まえますと、学習指導要領の理念である「生きる力」を育成するために、その鍵を握っている探究活動を展開する上で学校図書館を活用することは有効であり、また学校図書館法に規定されている学校図書館の目的から見ても、学校図書館を教育課程の展開に寄与するように改革していくことが課題であると考えています。
  2番に入りますが、今述べました教育課程の展開に寄与する視点から、学校図書館の役割は二つあります。一つ目が、各教科等の学習指導、とりわけ探究活動の質を高める観点から学校図書館を活用することを教育課程編成方針の中に位置付け、指導計画の中で具体化を図ること。二つ目が、学校図書館の職員は、教材・学習材の面で、授業担当者として協働による授業づくりを行うことであります。
  そのように、学校図書館の役割が十分に発揮できるようにするためには、3に入りますが、学校経営と学校図書館活用の推進体制を充実することが大事になってきます。そのためには、第一に、校長をはじめ管理職が教育課程の展開に学校図書館を活用する必要性を理解し、リーダーシップを発揮してその実現を図ること。二つ目が、学校経営方針の中に学校図書館を活用することを位置付け、それを実施できる体制を整備すること。そして、三つ目が、学校図書館の活用を推進するために必要な人的・物的条件を整備する。学校司書制度というのはこの一環として構想し、その充実を図ることであります。
  2枚目に入ります。次に、学校司書の資格の在り方やその養成の在り方について述べます。このことを考えるに当たっては、学校司書制度を基本的にどう捉えるかが大きな問題となってきます。1番になりますが、まず学校図書館の基本的性格と学校司書制度をどう考えるかについてでありますが、学校図書館は学校における教育活動を支援することを目的とする組織であります。したがって、学校図書館は、教育課程の展開に寄与し、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的とした教育施設であることから、学校司書制度というのは、学校図書館のあるべき姿を実現するための人的条件の整備と捉え、その資格や養成の制度設計をするという視点に立つことが極めて大切だと考えています。
  次に2に入りますが、学校司書の基本的性格については幾つか考えることができますが、まず一つは学校司書の専門性についてです。学校司書は、学校図書館法に規定されている学校図書館の目的を実現するために創設される職であると捉えます。その専門性としては、学校図書館の管理業務に加え、各教科等の学習指導及び教育課程外の読書活動を支援するために必要な資質・能力を備える必要があります。
  二つ目ですが、では、学校司書の資格についてです。学校司書の資格というものは、その専門性を担保するため、大学等において必要な単位を取得した専門職とすることが大事だと考えています。
  そして、三つ目ですが、では、学校司書の養成に当たっては、学校図書館というのは学校の一組織であり、学校司書は学校組織、教育課程を中心とした教育活動を支援する役割を担っているわけです。したがって、学校司書を養成するためには、司書制度とは異なる学校司書制度としての独自なカリキュラムを構想することが必要であると本学会では考えてあるわけであります。
  (4)、(6)は飛ばします。
  3番に入りますが、学校図書館学会としては、この問題を検討するに当たって極めて重視していることは、学校司書との協働による授業の質的向上であります。すなわち、授業をどのように変えていくのかといったことが極めて大事であるといったふうな立場をとります。
  それでは、そのページの一番下に入ります。今述べましたような基本的な構想に基づいて、学会として養成のカリキュラムと研修のプログラムを作ってみました。その話に入ります。
  では、もう1枚おめくりください。まず学校司書制度と学校司書の専門性についてどのように考えるかであります。学校司書制度は、学校司書の資格を取得した者だけがその職に就くことができるクローズな制度が望ましいと考えます。また、学校司書の専門性としては、学校図書館の管理・運営業務等に加え、各教科等の学習指導及び教育課程外の読書活動への支援をするための知識・技能・使命感などの資質・能力が必要であると考えているわけです。したがって、学校司書の養成カリキュラムは、その専門性を担保できるものでなければならないと考えているわけであります。
  2番に入ります。では、学校司書を養成するカリキュラムの基本的な考え方について述べます。(1)学校司書は学校組織の一員であること。(2)学校司書は学校図書館の専門職であること。そして、(3)児童生徒の教育に関わる職であること。(4)学校段階や学校種別などにより実態が異なっていること。そのような観点を踏まえることが大事とあります。
  そのような形で、配付資料の白表紙をお出しください。白表紙の6、7、8ページをお開きください。ここには大きく三つのまとまりでカリキュラムをつくってあります。6ページのところが学校教育に関する科目群、そして、7ページが学校図書館に関する科目群で、内訳が運営、メディア等になります。もう1枚おめくりください。8ページです。ここが学校図書館に関する科目といった大きな三つのまとまりの科目群でカリキュラムを構成したらよろしいのではないかというふうに考えています。
  時間がなくなってまいりましたので、研修のプログラムについては割愛させていただきます。
  では、お手元の説明資料にお戻りいただきまして、4ページの最後のところだけ申し上げたいと思います。本学会が今一番研究課題として捉えていることを短く申し上げます。本学会は、鍵括弧をあえて付けましたけれども、「学校」図書館学会であります。したがって、学校図書館というのは、教育課程の展開に寄与し、児童生徒の豊かな人間性はもとより、学力向上に資することが基本であります。すなわち、初めに子供ありき、子供のための学校図書館であるとの立場をとります。
  今後、学習指導要領が改訂もされ、その改訂を見据えたときに、その目標を達成するために授業の改善が求められてくるわけです。そのためにも、これまで以上に授業の担当者と学校司書は、それぞれの専門性を生かして共通の目標の実現に向かって協働し、学校図書館を活用した授業の改善・充実に取り組むことが急務であると学会としては捉えています。
  具体的には、学校図書館を活用した授業を計画し、実施し、評価をし、その結果、子供の学びがどのように変容し、学力がどのように形成されていくのかについて質的・量的な視点からの実証的な研究を本学会としてはこれから鋭意進めてまいりたいと思っているわけであります。以上です。ありがとうございました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは最後に、日本図書館情報学会、小田会長さん、お願いいたします。

【小田】
  おはようございます。日本図書館情報学会の会長の小田光宏です。きょうは、副会長の倉田敬子とともに報告をさせていただきたいと思います。お手元に資料あるかと思いますけれども、パワーポイントの方もありますので、こちらを適宜ごらんいただければと思っております。ここでは、本学会は学術団体であるのが基本的な性格ですので、これに基づきまして、意見を幾つか述べたいと思います。
  最初のスライド、それから、次のスライドと続きますけれども、ヒアリングの内容の一つ目、学校図書館の運営に係る基本的な視点を得る参考になるように、この数年間に当学会において発表された学校図書館を対象にした研究状況を示しています。短くするために、タイトルだけ掲げさせていただいています。上側は、日本図書館情報学会誌、本学会の機関誌に掲載された過去5年間の論文となります。下側は、研究助成をして現在研究を進めていただいている研究のタイトルということになります。
  続いて、研究発表としまして、研究大会、研究集会における口頭発表のタイトルを掲げています。やや字が小さいので詳細は見ることが難しいかもしれませんけれども、上から2015、14、13という年度のまとまりを設けて整理してあります。2014年度に16件という大変数の多い研究発表が行われていて、学校図書館に関する研究が活発であるということをここから読み取ることができます。
  この内容を少し大きく傾向といいましょうか、特性を捉えていくと、幾つかの課題が見えると考えられます。それがこのスライドに記したところですが、まず研究成果を普遍化させることがなかなか難しい、苦労されているということが読み取れます。これは学校の校種、地域性、学校の環境といった点で実践が一様ではない。したがって、なかなか普遍的な結論を導き出すということにそれぞれの研究者は苦労しているということ、これが一つ指摘できると思われます。
  次に、学校図書館活動を研究する際に、広く図書館における活動の一部として位置付けて研究している方もいれば、もう一方、学校における教育活動の一部として位置付けて研究している方もいらっしゃいます。研究の寄って立つスタンスが、あるいはアプローチが大きく二つ異なるということにつながります。別な言い方をすれば、図書館情報学と教育学の諸領域との協同による学際的な研究を指向していく必要が研究面では生じているということにもなります。スライドの下の方には、欧米における学校図書館の成果報告でよく見られる、確認できるトピックを挙げています。一番下に、学校図書館とディスレクシアといったように、日本でいえば特別支援教育につながるような要素もここにあるということが分かります。
  一つ前のスライドのところで、研究の対象となる学校図書館の実態が一様ではないということを述べました。したがいまして、一様ではないからこそ研究を行う意義もあるという、そういう見方もありますけれども、やはり標準化を進めることは、日本の学校図書館における課題の一つであろうということが指摘できます。
  その際に着目すべきは、学校図書館の基準になるだろうと受け止められます。本学会で作成しています『図書館情報学用語辞典』を引きましても、学校図書館基準に関しては、現在は全般的なものについては作成されていないといいますか、改訂されていないという状況になっています。個別の領域、例えば蔵書の数量等個別の基準は、こちらにいらっしゃいます全国学校図書館協議会さんあるいは文部科学省の方でこの間策定が進んだわけですが、やはり全般的な学校図書館の基準が今求められるでしょう。これなくしては標準化、学校図書館というものを一様に捉えていくというところにはつながらないであろうと思われます。
  もう一方で日本社会もグローバル化ということが課題となっていますので、諸外国の状況を踏まえることがやはり必要になります。ここに挙げましたのは、アメリカの学校図書館員協会で公表されています近年の基準・ガイドラインの策定の例になります。これもちょっと字が小さいのですが、タイトルを見ていただくと気付くのは、学校図書館という言葉はごく一部でありまして、learningという言葉が目立ちます。これは図書館情報学の研究の蓄積に立ちながらも、学習理論や学習科学の成果を組み入れて、取り入れて、こうした基準を作っていることの成果の表れと言えることになります。
  それでは、ヒアリング内容の二つ目になりますけれども、学校司書の資格の在り方あるいはその養成の在り方について、意見を述べたいと思います。これは本学会が過去に取り組みましたLIPERをもとにします。「情報専門職の養成に向けた図書館情報学教育体制の再構築に関する総合的研究」、済みません、一息でなかなか述べられない長いタイトルなんですが、これの英文の頭文字をとりましてLIPERという名前を付けております。これが平成15年度に開始されて3年間の研究がスタートし、その後、2回目、3回目ということで2014年度まで続いております。いずれも科学研究費補助金を得ての研究となっております。
  このLIPERの最初、LIPER1とでも申し上げればいいと思いますが、最終的な報告書はこうした大変大部なものにまとめられましたが、同じものが本学会のホームページからダウンロードできますので、御関心ある方は是非ともごらんいただければと思います。この報告書の中で特徴的なのは、図書館情報学教育改革案を提示していることです。そしてまた、図書館情報学検定試験を実施することを実験的に行うことを示しています。ここでは、ヒアリングに関係する内容として、図書館情報学教育の改革の提言、こちらを活用したいと考えています。
  その中での提言としまして、学校図書館の職員に関係する課題として、図書館の職員のコンピテンシー、専門的な能力、こちらに着目した部分がありますので、それを図としてここに掲げています。まず右側のだ円形の方を見ていただきたいと思いますけれども、これは情報専門職、図書館員を含む者として位置付けていますが、情報専門職に共通のコア領域を設定したところに特徴があります。コア領域として、図書館情報学基礎から始まって経営管理に至る7領域を提示しています。
  それとともにもう一つポイントとなりますのが、左下の図になりますけれども、共通の領域を設けたことです。ということは、それぞれに特徴的な能力がまた別にあることを意味しています。公共図書館なら公共図書館に独自のコンピテンシーもあれば、大学図書館には大学図書館の、そして、学校図書館にはという、そういった位置付けになります。共通のものを作り、それに学校図書館ならではのものを付加していくという、そうした組立てがあり得るのではないかということです。
  ただ、このLIPERでは、学校図書館の専門職員という言い方を極力避けています。なぜかといいますと、学校図書館ではなくて、学校としての情報専門職が必要だというスタンスに立っているからです。公共図書館、大学図書館、こちらはそのままで掲げていますけれども、学校図書館に関しては、あえて学校での情報専門職と位置付けているところがここでのポイントになるかと思います。
  最後に、このLIPERの提言に基づく学校司書養成の要点となるところを申し上げます。一つは、先ほども申し上げた、他の資格制度あるいは他の情報専門職との関係で制度を新たに創設する必要があろうというのが当学会の研究成果、LIPERプロジェクトから導き出せる要点かと思います。養成制度は、他の館種のものを含めて捉え直して新たな制度を作り出すということが求められると考えます。
  そして、そうした中で、学校図書館の情報専門職という話と、学校における情報専門職、これらの位置付けも整理していくことが必要である、明確に規定していくことが求められると考えております。
  もう1点、これが最後になりますけれども、養成は高等教育機関において行うべきであるというのが提言の要点にもなっております。これは先ほども言葉を使いましたけれども、グローバルな視点に立つ以上、当然のことと理解しております。さらに、もう1点申し上げるならば、グローバルということを強調するならば、学部教育ではなくて、大学院教育が見据えられていなければならないということになろうと思います。もちろんこれは中長期的な課題になるということは承知しております。研修という話も、リカレント教育という文脈で更に捉え直していくならば、大学院の存在がやはり重要になります。その位置付けも検討していただければ幸いと考えております。以上となります。どうもありがとうございました。

【堀川座長】
  どうもありがとうございました。
  ありがとうございました。六つの関係団体の皆様におかれましては、時間に配慮していただきまして、無事にここまで進んでまいりました。本当にありがとうございました。お忙しい中、この発表のために御準備や、あるいは資料の作成等ありがとうございました。お礼申し上げます。この会議におけるこれからの議論を行っていくに際して大変参考になる御意見、それから、いろいろな観点を提示していただきまして、大変有り難く思っております。
  それでは、ただいま発表していただきましたことに関して、特に御質問があればお願いいたします。今後の全体の進行もありますので、大変申し訳ありませんが、二、三名の方ということにさせていただきたいと思います。そして、その後の、あと40分ぐらい時間がありますが、その中で御意見とともに質問も加えながら御発言をお願いしたいと思います。
  それでは、どうぞ御質問をお願いいたします。
  加藤委員さん、お願いします。

【加藤委員】
  たくさんの示唆を頂く発表ありがとうございました。3点質問があります。
  まず、学校図書館問題研究会の方にです。学校図書館活動を作ってこられた方のとても現実を踏まえた具体的なお話ありがとうございました。実際に学校図書館の活動をされている立場で、お話の中にもあったんですが、改めて学校司書として必要な専門性、これをどういうものと捉えておられるかということをお聞かせください。
  二つ目で、全国連絡会の方にです。O市とT市の貸出冊数、利用された時間数、この歴然とした差をグラフで見せていただきました。改めて専任・専門・正規ということの必要性を感じたわけですけれども、市民運動として学校図書館の充実を目指されている立場とされて、学校図書館が変わることで学校教育が変わる可能性ということの発言もありました。その学校教育がどのように変わることというのを学校図書館は可能とすると捉えておられるか、そこをもう少しお話しいただきたいと思います。
  三つ目、全国SLAと日本学校図書館学会の方にです。学校司書は司書制度とは別の資格や養成が必要ということだったんですけれども、司書資格では不十分なカリキュラム、これは何かということをもう一度教えてください。以上です。

【堀川座長】
  ほかに御質問ありますか。あとは討議の中でということにさせてください。
  それでは、今の加藤委員さんの御質問に関して、最初の御質問から。

【松井】
  学校図書館問題研究会の松井です。ただいま加藤委員から御質問を頂いた件につきまして、資料としましては、私どもが用意しましたレジュメの2ページ目、1ページ目の裏側になります。こちらのところに、資格についてということで、私どもが考える専門性についてまとめておりますので、それを御覧いただきたいと思います。
  少しだけ説明をしたいと思います。私どもは先ほども話しましたように、学校司書・司書教諭の、現場で学校図書館に携わる者が主に会員としております。その活動を通してこれまで考えてきたこととして、やはり学校図書館ではありますけれども、ベースには図書館があると考えていまして、子供たちが知りたい、あるいは読みたいと思ったことにきちんと応えていく、それがやっぱりベースになければいけない。そこからやっぱり教育活動が上に積み上がっていくんだというふうに考えてきました。
  それで、1から5、まとめ切れないところではあるんですけれども、五つにまとめてあります。一つ目としては、資料や情報の収集・提供を通して、子供たちの知的自由、知りたいと思ったことにきちんと応えていく、それを保障するということが第1にあると考えています。二つ目としましては、教員の授業づくりや子供たちの学びを学校図書館として支援していくということです。それから、三つ目としては、それらの活動を通して、情報リテラシーを育んでいくということです。それから、四つ目は、子供たちの読書体験を豊かにして知的な世界を広げ深めていく。そして、五つ目として、きょうは触れませんでしたけれども、子供たちが学年・クラスを超えて集まってくる場所なんですね。ですので、そうした枠を超えた文化創造の場を作る、そういうようなところが学校司書の専門性だというふうに考えております。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは次は、どちらになりますか。

【梅本】
  学校図書館を考える全国連絡会の梅本です。2点目の質問についてお答えします。学校図書館が充実することによって学びが変わる可能性があるといった発言に関しての質問でしたが、日常的な教育活動、授業等でも、先生方は面白い授業、分かりやすい授業をされようと大変努力をされております。例えば基礎・基本を押さえるような授業においても、教科書だけではなくて、そこに幅広い資料、学校図書館の資料が加わることで、例えばデータの提示があったり、写真や図表等の資料が提示されたりすることによって単元ごとの基礎や基本を分かりやすく面白く学べるといった可能性も出てくると考えております。もう一つは、例えば一つの単元にしても、そこを教科書だけではなく資料を使うことによって深められる可能性も出てくると考えています。そういった観点で先ほどのような発言をしました。
  学校図書館は、ほかの図書館や機関との連携をとってネットワークによって、そこの一つの学校にある図書館の資料だけではなく、幅広い資料を、求められた資料が提供できるという機能がありますので、そういう意味でも学校の中に図書館があるというところでどんどん深めたり、幅が広がったりという可能性があるという意味での発言でした。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  それでは、三つ目の御質問でした……、はい。

【小川】
  御質問ありがとうございました。学校司書の専門性と司書教諭の専門性に関わって、どこをどういうふうに重点的に考えていくのかといった御質問だというふうに受け止めました。お手元の配付資料にもう一度だけお戻りいただきたいのですが、白表紙の6、7、8のところになります。例えば6ページのところの科目群というのは学校教育に関する科目群、そして、7ページのところがいわゆる学校図書館の運営等に関する科目群、そして、その裏のところがいわゆる教育資料に関する科目群と、こういう大きな三つのまとまりで我々はカリキュラムを考えているところです。
  そのように大きく考えてみたときに、例えば6ページに戻っていただきたいのですが、6ページのところ、例えば学校教育に関する科目群の中のすぐ下、学校教育の概論、例えば憲法、教育法規並びに学習指導要領うんぬんの理解とか、あるいは三つ目の学校経営に関する科目群の中での二つ目の「・学校経営と学校組織・校務分掌に係る基本的理解」といったように、やはり大きく学校司書を専門職として位置付けたときに、学校経営の視点、あるいは教育法規の視点、そういった大きなとても大事なこともカリキュラムの中に位置付けることが大事だというふうに考えてみたわけであります。以上でよろしいでしょうか。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは、今まで頂いた……、大変失礼しました。お願いします。

【森田】
  全国SLAの森田です。加藤委員からの御質問は、学校司書独自の制度を作るべきだということはなぜですかということでよろしいでしょうか。先ほどの私の話では、時間がないということでかなりはしょった言い方で御理解しにくかった面があるかと思います。
  まず大きな理由の一つとしましては、前の二の足を踏む※ことをちらっと申し上げましたが、あれは何かといいますと、司書教諭のことでございます。司書教諭科目が7科目8単位の時代、司書教諭の資格は誰でも取れた、簡単に取れたという時代がありました。なぜ簡単に取れたかといいますと、司書資格を取りますと、あと1科目2単位をついでに取れば司書教諭の資格が取れたというところがございます。そのようにして司書教諭の資格を取った先生方もたくさんいらっしゃいますが、司書資格プラス「図書の整理」を取っただけで司書教諭資格を得られた。それで司書教諭の専門性といいましても、なかなか現実的には司書教諭の専門性や専門職としての働きということは期待されないということになってしまいました。
  専門性を言うからには、やはり独自の専門職としての養成カリキュラム、資格制度が必要になると思います。他の資格をベースにしたという形では専門性はなかなか認められないのではないかと思います。また、司書教諭と同じ二の舞になります。すなわち、学校司書の専門性について学校現場でどこまで認められるか、というところがある、そういう危惧がございますので、まず一つ目の理由として掲げさせていただきました。
  それから、これは先ほどの小田先生のお話にもありましたが、あと、学校図書館学会の御意見にもありましたが、学校図書館をどう捉えるかということで、例えば学校図書館を「学校にある図書館」と捉えるのか、「学校教育を支える機関」として捉えるかによっても変わってくると思っております。60年以上なぜ学校図書館が学校において孤立しがちだったのかということも考え併せますと、やはり学校司書というのは学校教育を支えるということを基盤にして考えていく必要があるのではないかと思っています。そうしますと、当然、学校司書資格というものも司書教諭と同等に独自のものが必要になると思っております。
  それから、冒頭申し上げましたように、現在の実情を前提に議論していきますと、なかなかうまくかみ合わないところがあるかと思います。ここでは文部科学省のヒアリングですので、きちっとした制度、制度をどう設けるかということになりますので、もちろん実状ということは参考にして、これに立脚していくのですが、余り現在の実状にとらわれ過ぎますと、将来を見通した制度というものは作りにくいのではないかと思っております。是非10年20年先を見通した学校司書のきちっとした資格制度、養成制度を作っていただければ有り難いと思います。以上です。

【堀川座長】
  済みません、ありがとうございました。加藤委員さん、これでいいでしょうか。SLAさんには大変失礼いたしました。
  それでは、これから意見交換を行いたいと思います。前回机上配付しておりました、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方についての検討の論点の例というのがありましたが、それ、この中に入ってませんか。今、確認したんですけれども、どうも見つけられませんでしたが、これについて各委員に御照会いただきました。そして、本日御欠席の佐藤委員さんから御意見があったというように伺っていますので、事務局より紹介をお願いいたします。
  ありませんか。

【水之浦児童生徒課指導調査係長】
  ないです。

【堀川座長】
  ないですね。

【中安児童生徒課課長補佐】
  失礼いたします。前回の論点表に基づいての御説明になりますが、佐藤委員からの御意見について読み上げさせていただきます。幾つか示してあった、五つ示してあった論点の一つ目、学校司書の職務標準とは何かということについてでございます。島根県では、市町村に対して以下のように例示していますということで、学校のニーズに応じて図書の整理・貸出し業務を行うこと等約12個の業務を例示されています。特に下四つの授業に係る内容は標準であってほしいと考えるということで、授業補助とか、他の図書館との連携、学習ニーズに応え資料等準備を行う、司書教諭と連携し学校図書館を活用して学習の充実を図るといったことを示されております。
  続いて、学校司書が任用時に確保されていることが望ましい資質についてどう考えるかということでございます。島根県では特に定めていないけれども、市町村においては以下のような例があるということで、司書や司書教諭の資格を有する者といったことに加えて、図書館や学校図書館業務の経験のある者、また児童の読書活動に関わった経験、またそういったことに関心のある者ということで掲げているということでございます。
  研修によって向上を図るべき資質をどう考えるかということでございますが、徐々にこういった知識・技能を高めることが必要であって、学校司書は学校で一人職であることが多いと思われるので、司書・学校司書総合で研修を行うことができるような仕組みとして検討していくことが必要であるということでございます。
  任用時の質の確保の観点から既存資格に足りない内容は何かということに関しまして、現在の検討のベースは恐らく公立図書館司書の資格をベースに考えられていることと思うが、そのような人材を一度に確保することは難しいのではないか。足りない内容を吟味する段階に今はないと考えているが、司書資格をベースとすると、児童生徒理解など教育に係るところが不足しているように思われる。教員免許をベースとする司書教諭の資格程度には図書館の知識が必要であるということでございます。
  地方分権、私立学校の姿勢を踏まえての資格の在り方が考えられるかということに関しましては、一度に共通の資格を求めることは難しく、例えば学校司書という新規の国家資格化については時期尚早ではないか。また、学校司書の配置は地方公共団体、私立学校の自主的な取組によって進められてきたものであり、早急な国からの資格義務付けは適当ではないのではないかということを佐藤委員のメモとして頂いております。

【堀川座長】
  ありがとうございます。佐藤委員さんは、この五つの論点に関しての中身を少しずつ御意見くださったということです。ここの会議では、3月辺りまでに論点をもう少し増やすとか、こういう面からということも加えて議論していきたいと思います。そして、中身についてはまた来年度の会議でゆっくりと検討していきたいというように思っておりますが、今回のところ、中身の御意見でも結構です。論点、こんな観点もあるのではないかということでも結構です。どの委員さんからでもどうぞお願いいたします。
  堀部委員さん。

【堀部委員】
  きょうはありがとうございました。本当に学校現場、私は校長という立場で少し感じたところをお話ししたいなと思っております。これだけたくさんの団体の方が学校教育の支援をしていただいているというところで、改めて校長のリーダーシップが非常に大事だなというところを思いを新たにしたところです。
  私たちが今までのお話を伺うにつけ、きょう改めて気付かされたことは、やはり学校教育という中で学校図書館の役割というのは、何はさておきベースは子供にあるなという気がしています。私、今、30年以上学校図書館、学校教育に実践を含めて関わる中で、教育課程の展開に寄与するというのが改めて大きな意味を持つということで、学校現場ではやはり、憲法は当然なんですけれども、教育基本法、学校教育法、そして、指導要領という中で学びづくりの充実を図るというところがありますから、教育課程の展開に寄与するというところでは、まずもってベースには子供、教育があるというところで、その上で授業の質を高めていく、学力として、あるいは心情を豊かにしていくという側面からの役割というのは学校は責務が非常に大きいと思います。
  そのための人的なスタッフというところで整理をされていく中で、具体的に五つ六つの人材という側面があるというようなお話もありましたが、きょうのお話の中では限りなく学校司書というところに軸が置かれているような印象もやや受けたところもあり、やはりそれぞれの支えていく人材というところでは、論点にもあった司書教諭の役割についてというところも当然必要になってくるなというところを感じるところです。
  それから、図書館の資料についてという論点が出されているかと思いますが、これにおいても、文科省の方でこの資料の作成に今回非常に前向きであるというところは有り難い限りだと思います。ただ、現場ベースで、この計画というものが限りなく読書活動をどう推進するかというレベルというのが現状では多かったので、やはり教育課程の展開というところでの重ね方、これは言い換えますと、身に付ける力が何であるかというところの意味合いを少し明確にする必要が今後あろうかなという印象を持ちました。
  それから、最後になりますが、学校司書の資格、また養成については、そういうところでベースに教育という、子供というところを視点にしたときに、やはり日本学校図書館学会さんの6ページにおける学校教育を支える概論の部分、それから、経営に関する部分、こういったところはやはり学校としては本当に必須の条件として考えていただくところかなと思っています。そういうところでのこれからの論議の進捗というところを私としても望みたいなと思いました。以上です。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  ほかの委員さんはいかがですか。
  植松委員さん。

【植松委員】
  資質とか養成に関連して、日本図書館情報学会では、学校図書館の専門職と学校での情報専門職とを分けて考えた方がいいという御意見だったと思いますが、大学と公共と、学校図書館とはどうして異なった捉え方をする必要があるのかをもう少し御説明いただけないかが一つ目です。
  それから、いずれの皆さんの御意見に出てこなかった話ですが、昨今、学校の中で子供たち同士のコミュニケーションすら難しいという話も聞いている中で、図書館の職員としてコミュニケーションスキルについてどなたも言及されなかったのはどうしてかについて御発言があればと思います。
  それから、もう1点ですが、養成するといっても、毎年どの程度の数を世の中に出していくことが現実的な数かという話です。日本学校図書館学会さんが考えていらっしゃる、4年間で56単位も取らせる課程となると、学科のレベルの教育課程でないとできないはずです。そうなると、毎年相当数出していくことになります。それほどの需要があり得るのかというところも捉えていかないといけないのでは。

【堀川座長】
  ありがとうございます。どうしましょう。今の……。

【小川】
  回答はいいですか。

【堀川座長】
  はい? 最初の質問に関してですか。はい。

【小川】
  学校の司書の資格・資質といいますか能力の中で、コミュニケーションといった指摘を頂いたわけですが、先ほど時間がなくて申し上げられなかったんですが、白表紙の冊子の9ページの上から数えて十三、四行目のところから、そのためには、1、それから、2、3、4といった形で資質・能力の大事な内容を書き表しているわけです。3のところに、校内の教職員のみならず保護者や地域・公共図書館・他施設との連携・協働するためのコミュニケーション能力といったものを四つの大きな能力の中の一つとして研修プログラムの中に組み入れているということが私どもの見解であります。
  それから、もう一つは、かなりの数の養成をすることになってくるわけですが、私どもの学会としては、できれば学部、できれば学科で専門職を育てるのが責務であるといった立場をとっています。ただ、必要な授業数等につきましては、これは国の流れがありますので、一概に我々が見解を挟むものではありません。以上です。

【堀川座長】
  ありがとうございます。この点に関しましては、学校教育のというようなくくりで含まれている部分もたくさんあるのではないかと思います。
  あと、最初の質問で、日本図書館情報学会の方にお答えいただけますでしょうか。

【小田】
  日本図書館情報学会から回答いたします。最初に植松先生の御発言の中で、学校の専門職と学校図書館の専門職を分けて捉えるべきだという説明をこちらからしたということでしたが、先ほどのプレゼンテーションにおいては、分けて捉える状況があるので、それを整理していくことが必要であるという発言をいたしました。捉えるべきだということでは決してなくて、そうした状況が現在の研究動向からも導き出せるけれども、それは整理しなくてはいけないのではないかということが基本となります。
  もう1点の、養成のところで公共図書館、大学図書館の専門職と片方で言っている一方で、学校図書館に関しては「学校の」となっているのはどのような背景からかということですけれども、これはきょうの様々な団体のところからも意見が出てきたところと共通する要素であるかと思います。学校図書館の職員は、やはり学校教育、学校の職員である、学校教育の専門職であるという捉え方が可能であるということから、これを「学校の」という形でとどめたというのが実際です。
  実はこれに関してもLIPERの中では激論がありまして、要するに、「学校図書館の」で示すべきだという考え方もあれば、「学校の」ということで進めるべきだという考え方もありました。そのメンバーの中には堀川先生、平久江先生もいらっしゃいましたので、補足等はお願いできればと思います。けれども、そうした見解の違いは現在においても続いています。乗り越えていかなければいけない面になります。LIPERにおいては、一歩踏み出すことを考えたと思いますけれども、「学校の」というところに近付いていくところが強調されていたと、報告書を読む限りにおいては受け止めております。以上です。

【堀川座長】
  ありがとうございました。いろいろな観点を今出していただいているというところだと思います。植松委員さんの最後の現実的な数のことについては、恐れ入りますが、またこの後の会議の中で検討していきたいと思います。
  はい、平久江委員さん。

【平久江座長代理】
  平久江です。これまで各団体の発表で大変いろいろな学校図書館の課題がクリアになったかと思うんですけれども、また一方でここ数十年の学校図書館の整備・充実の動きを見ていきますと、かなりいい学校図書館といいますか、優れた学校図書館もやっぱり登場してきているという事実があるのではないかなと思うんです。そこで、じゃ、学校図書館で一番大きな問題点は何かということをざっくりと捉えてみると、やっぱり学校図書館の格差ということが非常に広がってきたというところではないかなと思っております。
  つまり、非常にいい図書館あるんです。例えば私立ですけれども、専任の司書教諭が2人いるような学校図書館もあります。一方で、全く人の置かれていないような、戦前と言ったらいけないのかもしれませんけれども、ほぼ変わらないような、よくぞ残ったというような学校図書館がやっぱりあるという、そういう現実があると思うんです。そういうことを考えますと、先ほど小田先生が発表でもお話になりましたように、学校図書館の標準化ということが今一番の課題としてあるのかなと思っております。
  そういう観点で見ているんですけれども、それに関して宿題で、前回の会議で先ほどお話が出ていました「学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方についての検討の論点」についてですが、真面目にやりまして、それを提出してありますので、細かい点については何らかの形で読めるような形になると思いますので、そこを読んでいただくということで。違うのかな。
  基本的な視点として、そこでは僕、三つ出したんです。それについてちょっとここで述べさせていただければと思います。

【堀川座長】
  済みません、手短にお願いします。

【平久江座長代理】
  はい、3点。現在の学校図書館の役割を再構築して、今後の学校図書館担当者に必要な職務内容を明確にする。やっぱり在り方は変わっていくと。コミュニケーションという話がありましたけれども、連携、協働が非常に重要になってきていると思います。
  それから、2点目としては、学校図書館に関する各種の基準を策定して、学校図書館の標準化を図っていくということであります。可能であれば、施行規則なんていうのも考えてもいいのかなと思っております。これは可能かどうか今後のことですけれども。
  それから、3点目としては、県立図書館と県教委が連携した県レベルの学校図書館支援センターの充実を図っていくということです。これはざっくり言えば、県の役割というのが今、非常に重要になってきていると思いますので、そういった点も考えていかなければいけないんじゃないかというような3点を書きました。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  そのほかにも、稲垣委員さんの方からも何か御意見があったというように伺っていますが、いかがでしょうか。

【稲垣委員】
  稲垣でございます。きょうお話を伺っていて若干不安に思ったのが、学校図書館の運営の基本的な視点ということで、主体はどこかなということです。あくまでも主体は学校であるというところを外してはいけないんだろうと当たり前のことなんですけれども、改めて感じたところがございます。
  今、正規であるとか、非正規であるとか、雇用形態であるとか、いろいろお話ありましたが、学校現場からすると、司書教諭と学校司書の在り方というところで、それぞれの専門性が当然あるかと思います。ある意味コンサルテーションというか、それぞれの専門性を生かしながらお互いに専門性を高めていくというところが必要なのかなと思っています。当然、学校司書の資格とか養成とかいうところも大事なところなんでしょうけれども、学校に配置された学校司書を学校現場の中でどう育成していくかというところが大事な点なのかなと考えます。
  その意味で、まず学校そのものが、学校司書あるいは学校図書館運営についてきちんと理解し土壌づくりをしていないと、どんな専門家が入ってもそれを上手に生かしていけないと少し感じたところがございます。つまり、資格・養成といったスタートの部分も大事ですけれども、学校に司書が入ったときに、それをどう現場の中で育成していくか。育成していくってちょっとおこがましいかもしれませんけれども、学校の中で共に資質を高めていくかというところが大事なのではないかなと思っています。同時に、学校司書の配置を担っている地教委の研修体制や研修内容の充実が極めて重要だと考えます。

【堀川座長】
  ありがとうございます。学校コミュニティの問題ですね。
  時間が足りなくなって申し訳ありません。それでは、一言ずつお願いしたいと思います。米澤委員さんからお願いできますか。

【米澤委員】
  きょうは本当にいろいろな団体の方々からお話を伺えて、とても貴重な時間だったと思います。その中でも共通して、学校司書の教育活動への支援ということや、学校教育との連携、学校教職員の一員としての立場が重要であるということが重ねて出てきたように感じております。
  また、いろいろな現場での差がたくさん出てきておりまして、小学校、中学校、高校、特別支援学校でも状況が違います。また、非正規・正規雇用でも違います。各自治体によっても違うといった中で、やはりこれからの私たちが論議を重ねていく上でもそのベースになる標準化といったことが、平久江先生がおっしゃっていたような形で是非何か作れていけたらと感じております。以上です。

【堀川座長】
  いいでしょうか。

【米澤委員】
  はい、済みません。

【堀川座長】
  三浦委員さん、お願いします。

【三浦委員】
  本日は、団体の皆様、ありがとうございました。学校司書の養成ということに関わりましては、多くの団体の方が高等教育機関での養成が必須であるという点を御指摘されていました。これに関しましては、既にある司書教諭の養成との関連も考えていく必要があろうかと思います。特に司書教諭と学校司書との間で職務の役割分担を前提にして捉えていくことができるのか、あるいは現場の中では、司書教諭、学校司書というのがそれほどせつ然とは切り分けられないのかということも考えていく必要があるかと思います。今後の検討課題として自分の中で持ち帰りたいと思っております。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  それでは、武島委員さん、お願いいたします。

【武島委員】
  学校司書の専門性というところで今回は大変勉強になりました。この会議の大きな論点というところから考えますときに、もう現在学校というところを守る、先ほど稲垣委員さんもおっしゃいましたが、学校を基に学校図書館を考える、学校を基に考えたときに、校長先生のリーダーシップはあるけれども、学校というのはもう先生たち、学校だけでは支え切れないというところで、地域コミュニティとの連携、学校と家庭と地域の連携ということを私はコーディネーターとしてやらせていただいている立場からいえば、学校図書館の整備もそういう観点で考えていただくということが、学校教育の授業としての学校図書館という大きなものと、子供の豊かな心を育むためのコミュニケーションづくりの場、あるいは地域の中、学校を核とした地域づくりというところでも学校図書館の役割というのは大きなものじゃないかなと今感じております。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  それでは、高橋委員さん、お願いします。

【高橋委員】
  民間委託はあり得ないみたいなお話も結構あったので僕は発言しにくいんですけれども、いい面も悪い面もあるんですが、民間委託するというときに注意しないといけないのは、やっぱりガバナンスをどう設定していくかということだと思います。ルールであったりとか、領域であったりという、そこが曖昧な中で進んでいくと、多分皆さん御心配されているようなことが起こってしまうのかなと思います。
  あと、やっぱり研修の問題は根深いなというのをきょう皆さんの発表を聞いていて思っています。ここを早めに全体の中で設定していかないと、実は民間の領域では、学校の接点も幾つか多々にわたりますし、日々のPDCAを回していたりするので、実際は民間の方が研修レベルは上がっていくみたいなことが起こり得るような実情もあると思いますので、早めに全体としての研修レベルという設定をしていかないと、格差みたいな話があったと思うんですけれども、そういうものがどんどん広がっていくんじゃないかなということを感じました。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  それでは、品川委員さん、お願いします。

【品川委員】
  きょうはどうもありがとうございました。皆さんのお話を聞いて大変勉強になりました。以前にもお話ししたと思うのですが、日本図書館情報学会さんが4ページ目に書いておられる、米国の学校図書館員の協会の実態ですね、こういうものが我が国で作れるのであれば、それは本当にすばらしく、学校教育も変わりますし、子供にとってもメリットは大きく、先生も指導につなげやすいという意味で助かるという、非常に望ましいと思っております。きょうはその点について詳細にはお話を伺えなかったので、またチャンスがあればお聞きしたいと思っております。ただ、現実問題としてそこまでターゲット化して実践していくためには、エビデンスがやはり必要になってくると思われます。例えばディスレクシアを持つ子供に何単語の本を読ませたらその子の読みの力が伸びるのかなど、図書館や本にまつわる研究以外のところの研究や連携がまだまだ不十分である現状を踏まえたとき、どういう方向性が考えられるのだろうかということを考えながら聞いておりました。
  子供たちのことや学校図書館という存在や意義を考えたとき、そこまでできることが理想だと思っております。以前、アメリカの公立小学校の図書室の充実ぶりがすごいということでそういったところを取材しておりましたときに「なぜこれらの本をあの子に薦めたのか」と司書の方に聞いたことがございます。その方は「あの子の今の読みの力はこれぐらいで興味関心がこうで、かつ行動上にこういう課題がある。一方、私が薦めた本は語彙数がこれだけで、彼の興味関心に近く、かつ行動上の課題にポジティブに影響しうる可能性がある。だからこれらを薦めた。どれを読むかは本人が決めればよい」と、非常に合理的な答えが返ってきました。そこまでのことを今すぐにというのは難しいというのもわかりますが、学校図書館の役割を考える際、心が豊かになるなど情緒面や興味関心等に寄与するなどはとても大事ですが、それに加えてどう具体的に個々の子供の指導に関与できるか、直接指導するという意味ではなく指導の下支えにつながるようなことができるか、そういうところに学校司書が寄与できるような位置付けになり得るのかどうかというところがこれからの課題ではないかと思いながら伺っていました。
  先ほど平久江先生もおっしゃっておられましたように、学校図書館の格差はなかなかのものがあり、先生は戦前の図書館とおっしゃっていましたけれども、まだこんな図鑑が置いてあるのというようなところも少なくありません。そういう視点に立ったとき、ここでまず考えなければいけないのは、学校図書館をどう位置付けるか、基準をどうするかというところを明確にする。それから、きょうは余り話題にもならなかったのですが、司書教諭の役割や位置づけをどう考えるのか、その司書教諭と学校司書の役割をどう分担していくのか。そういった段階を踏んでの検討が必要ではないかと考えます。そこをしないまま学校司書の国家資格化とか新学部の設置等はどうなのだろうと考えます。そういったあたりの議論をどう収束し、子供たちの学びに具体的につながるような仕組みが作れるかが大事ではないかと思いながら伺っていました。ありがとうございます。

【堀川座長】
  ありがとうございます。確かに難しい問題で、それだからこそこの協力者会議があるので、これから本当によろしくお願いしたいと思います。
  それでは、實吉委員さん。

【實吉委員】
  きょうはどうも大変貴重なお話ありがとうございました。私立学校の経営者として少し感想を述べさせていただきたいと思います。こういう会議に出ていますと、いつも公立の先生方はなかなか大変なんだなというふうに思っています。私立学校は、私が決断すれば何かが進むということですから、そういう意味で公立の先生方大変だなと思っています。
  それから、きょうは、費用をどうするかというお話も幾つか出てきたと思いますが、今、文部科学省としては、財務省の理解をどう得ていくかということがあると思います。あるいは、総務省の理解をどうとるかということだと思いますけれども、いわゆる地方交付税として各県に交付されるお金が各自治体にまたこの費用としてどう回っていくのかというのは、私は今の動きで見ていると非常に不安を感じているので、そこら辺は皆さん頑張ってください。お金をとることに頑張ってくださいという思いです。
  それから、図書館利用ということでございますけれども、私立学校の場合には当然に、自分が持っている図書館をどのように活用しているかというのは保護者あるいは子供たちに当然発表しなければいけない事項でありますので、学校の方針として是非確立していただければと思います。
  それから、教員は完成形で学校には来ません。司書教諭はこういう資質というか、これから学んでいく力があるということは大事だと思いますけれども、完成形で来ることを期待しない方がいいと思います。それから、フィンランドの場合には、図書館が非常に充実していて、逆に言うと、各家庭で本を持つという習慣がありません。私などは、自分が本を抱えていないと不安でしょうがないので本を買いますけれども、そういう図書館の充実の仕方というのもやっぱり国民性も含めて考えていく必要はあるんだろうなと思っているところです。ちょっと長めの発言で失礼いたしました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは、小林委員さん、お願いします。

【小林委員】
  大変参考になりました。学校司書の新たな資格制度を今後この場で、あるいは別の場でも議論をする場合に、学校司書が教育に大きく関わっていくということが今、流れになっているわけです。従前のような「学校図書館事務職員」ということではなくて授業に大きく切り込んでいく、下請として教科教諭の指示に基づいて動くのではなくて、両者が対等の立場でお互いに専門性を発揮して授業を組み立てていくという方向に踏み出しています。今日は日本学校図書館学会の貴重な案も頂いておりますが、その日本学校図書館学会配布資料の8ページのところに学習成果の評価・活用ということが書いてあります。学校司書が指導計画に基づく授業に大きく関わっていく場合に、評価というものは切り離せないことになると思います。
  しかし、現状の学校司書は、「評価をしない人」ということで立ち位置があると思うんです。評価をしないと言うと誤解があるかもしれません。学校司書の職務に評価はもちろん付き物ですが、ここでは学習指導に関わった評価というふうに捉えてください。学習評価についての立ち位置が従来とは大きく変わるということで、慎重な検討が必要と感じました。以上です。

【堀川座長】
  ありがとうございます。
  それでは、最後に、小瀬村委員さん、お願いします。

【小瀬村委員】
  きょうはどうもありがとうございました。学校図書館の重要性が確認され、また学校司書養成の新しい制度の提案にも、未来の学校図書館が楽しみになってきたなと思いました。
  私、司書教諭ですので、学校司書の研修や養成が随分進むと、本当に司書教諭との連携はどうなるのかなと不安もありましたけれども、何人かの委員さんから、やはり連携が大事だというお声が上がったので安心しました。本当に両者の連携が機能して学校図書館が活性している実践例というのが、先ほど平久江先生もおっしゃっていましたけれども、ありますので、それらを忘れずに、また、それを生かした学校司書の研修も大切かなと思っています。
  私も前回の宿題について少し考えてきました。資格とか資質とかについては皆さんから出た部分が多いと思います。この資格とか養成の在り方について、支えるもの、環境整備という部分も大事だなということです。学校図書館は教員と授業を行うので、司書教諭だけではなくて、教職員、学校全体での理解、研修と、あと、やはりさっき言われた評価が必要です。活用できているかどうかという実態調査をするなど整理もする中で、司書さんの研修やら資質向上も深まるのではないかなと思いました。以上です。ありがとうございました。

【堀川座長】
  ありがとうございました。おかげさまで皆さんの御意見を一言ずつ伺うことができました。
  それで、次回も引き続き、関係団体のヒアリングを行いつつ、こうした議論を重ねていきたいと思います。先ほども申しましたように、3月辺りまで論点整理ということでいろいろな観点を出していきたいと思います。
  きょうもいろいろなお話を伺い、そして、委員さんから御意見も伺うところでいろいろな論点が出てきたと思います。それについてはまた事務局の方で整理をしてくださると思いますので、よろしくお願いします。
  そして、今後、きょう伺った御意見、頂いた資料を参考にさせていただきながら、私どもも緻密な、そして、慎重な議論を重ねていきたいと思います。
  それでは最後に、事務局の方からどうぞお願いいたします。

【坪田児童生徒課長】
  事務的な案内の前に一言だけ、きょうの感想をということです。

【堀川座長】
  失礼いたしました。

【坪田児童生徒課長】
  これまでもちょっと広げる話をしたり、ちくっといろいろ言ったりとかしていますけれども、きょうもいろいろ感じるところがあって、本当に有り難いと思っております。全体として非常に今後持ち越す話が多いんですけれども、結構いろいろな論点とか、やるべき課題が示されたかなと思っています。
  特に司書教諭との関係。我々自身は学校図書館のこれまでの位置付けを大きく変えよう、大きく打ち出そうと。要するに、普通教室がベースでこれまで特別教室的な一角であった学校図書館をむしろメインに持ってきて、普通教室というのが、将来、ああいうところでも勉強していたんだねと言われるようなスタイルに変えていきたいと思っていますので、全体として学校図書館は大きくなると。
  大きくなった中で、いろいろなアクターというか、司書教諭、学校司書、その他ボランティア、子供の図書委員、そして、一般の教諭、管理職がどういう役割を果たすかという。それが全部掛け算になって、全体として反比例の関係なのか、もっと広いのかというのはありますけれども、それをどう解きほどいていくかということになってくると思いますので、結構複雑ですけれども、そういうような前向きな、これまでこうだっただけではない考えで是非とも、そういう委員の御発言もありましたけれども、お願いしたいなと思っています。
  しかし、しょせんこれはまずインプットの話をしていて、条件整備ですよね。ヒト・モノ・カネというような学校を整えると。ただ、それだけでは多分駄目で、それによってアウトプットである、当然開館時間は延びると。私なんて、鍵なんて掛ける図書館はあり得ないと思っていて、人がいようがいまいが、開けとけばいいじゃんと。朝7時半ぐらいから夜8時ぐらいまで学校図書館は全て開けておくべきだと思っています。それでもし子供が信用できないんだったら、防犯装置をちゃんとすればいいだけの話であって、いつでも子供たちが本に接せられる環境だと思っていますので、必ずしも人との関係ではないんですけれども、むしろ人を置いたことによってしっかりと開館時間を確保できるとか、あるいは図書館を使った授業が全般的に展開されるとか、あと、もちろん貸出しが増えるというところがまずアウトプット。
  でも、それでも収まらない。これも形の話であって、やっぱりアウトカムの方ですよね。やっぱり成果として、まさにエビデンスですけれども、学力が上がるということも当然期待できますし、社会性がアップするということもありますし、やっぱり読書習慣によって学び続ける力が付いていく。
  多分それは子供たちだけの話じゃなくて、結局、養成しても、やっぱり学び続ける力がないと、すぐ陳腐化しますし、そんなものは単に資格取るための、単位を取るためのもので終わってしまうというのがあると思います。きょう非常に日本学校図書館学会様から緻密なものが出てきたので、あれがたたき台になってくると思うんですけれども、これだけのことを学ぶかと思うと自分だったらちゅうちょしちゃうなというぐらいすごいんですけれども、あれを全部学んだとしても、多分それだけでは足りないことが現職になってくると出てくる。現職研修の重要性ということは各委員が言われていましたけれども、どうしていくかと。
  でも、私なんかがむしろ採用担当の面接担当だったら、「あなた、毎日、新聞を読んでいますか。何紙読んでいますか。ニュースとか情報番組を見ていますか」という、そっちの方をむしろ面接では重視するという気が。やっぱりそういうような、ふだんからいろいろな情報とか社会の変化にアップトゥーデートするような努力をしている人でないと、多分学校司書は務まらないんじゃないかなという方がむしろ大事かななんて思ったりしますし、グーグルなどネット検索に負けない力を持っていないと。
  前も話をしたかもしれませんけれども、ある学生が、公共図書館ですけれども司書に、「こんな本ありますか」と言ったところ、いきなり検索を始めたと。「それならいいです。自分で検索します」という話だったので、そんなレファレンス能力では多分子供たちには、今の子供たちは結構さとい子供がたくさんいらっしゃいますから対応できないということも考えたりします。
  そういうようなアウトカムから逆算してアウトプット、インプットの重要なファクターであります人をどうするということを描いていただければきっといいまとまり方をするんじゃないかというものを、堀川先生の圧倒的なまとめる力によってまとまるのではというふうに期待しています。我々も最大限の努力は事務局でもさせていただきますので、ちょっとまたプレッシャーを掛けつつ、委員各位、またきょう本当に御努力いただいた、休み中にもかからずヒアリングをしていただいた団体の方々、これで終わりじゃありません。引き続き、今後もっと具体的なものを出してくださいというものをお願いすることがあります。そのときにビビットなものを、遠慮ないものを今度は出していただくことを期待しまして、ちょっと言葉とさせていただきます。済みません。

【堀川座長】
  ありがとうございました。
  それでは、本日はこれで閉会とし……。

【加藤委員】
  済みません、質問です。今回も改めての質問を受け付けていただけますか。自分の中にたくさん質問があるのと、それから、資料をたくさん頂いたので、これを見せていただいての質問は受けていただけますか。

【堀川座長】
  またこれから次回までの間に御意見、御質問ありましたら、またメールで事務局の方に伝えさせていただいていいでしょうか。またそれをこちらにフィードバックしていただくというような、なかなかこの2時間ではとても思いをお伝えできませんので、そうしたメールでということにさせてください。
  それでは、先ほど課長さんの方からもお礼がありましたけれども、きょうヒアリングに応じていただきました関係団体の皆様、ありがとうございました。(拍手)
  それから、委員の皆様、きょうはありがとうございました。これで閉会にさせていただきます。

‐了‐

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

指導調査係
電話番号:03‐5253‐4111(内線3297)