幼児教育に関する調査研究拠点の整備に向けた検討会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成27年8月26日(水曜日)17時15分~18時30分

2.場所

文部科学省6階 6F3会議室

3.議題

  1. 会議の運営について
  2. 幼児教育に関する調査研究拠点の整備をめぐる状況について
  3. 自由討議

4.出席者

委員

秋田委員、岩城委員、岡上委員、斎藤委員、坂﨑委員、高岡委員、田中委員、無藤委員、柳生委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、伯井大臣官房審議官(高大接続・初等中等教育局担当)、淵上幼児教育課長、林幼児教育企画官、今村幼児教育課長補佐

オブザーバー

渡邊国立教育政策研究所研究企画開発部長、三谷内閣府子ども・子育て本部参事官(認定こども園担当)

5.議事要旨

【議題1】会議の運営について(非公開)
○ 冒頭、無藤委員が座長に就任した。
○ 「会議の公開について」(資料2)が原案のとおり承認された。

○ 傍聴者が入室し、小松初等中等教育局長から会議開催に先立ち、幼児教育の重要性に対する認識の高まりや、「子ども・子育て支援新制度」の開始に伴い、幼児教育に公費を投入するに当たって、その重要性や意義について科学的・学術的な裏付けが必要となっていること、幼児教育・保育の質の向上を総合的に推進するに当たって、現場の知見に学術研究の知見や科学的エビデンスを加えることが一層効果的であること、また、調査研究拠点に求められる機能や体制、政策立案との連携の在り方等について専門的な視点から知見を頂きたい旨の挨拶があった。

【議題2】幼児教育に関する調査研究拠点の整備をめぐる状況について
○ 淵上幼児教育課長から、資料3に基づき、国内外における最近の幼児教育の重要性に対する認識の高まりや、海外における国の調査研究拠点の整備状況について説明があった。
○ 渡邊国立教育政策研究所研究開発企画部長から、資料4に基づき、国立教育政策研究所(以下「国研」と言う。)の概要や最近の幼児教育に関する研究活動について説明があった。

【議題3】自由討議
○ 初回に当たり、各委員から自己紹介と、国の調査研究拠点に期待すること(取り組むべき調査研究課題や求められる機能など)や、国の調査研究拠点として必要な研究体制について発言があった。

(秋田委員)
○ 国研内に幼児教育センターのような拠点を作ることは必要。そのセンターがハブやプラットフォームとなって、大学や幼児教育・保育団体、民間シンクタンク等をつなぐことで、課題を共有し、それぞれの強みを生かした調査研究を進めることが重要。
○ 小学校から高等教育まで、一貫して国研で担ってきていることも踏まえると、国研に幼児教育センターを置くことで、幼小中高一貫した政策研究ができることが強みとなる。
○ 幼児教育センターでは、2~3年単位の政策立案に資するねらいのプロジェクト研究や、全国自治体や国際的な協働・連携を生かした研究を進めるべき。
○ 国研内の他部門との連携も重要。教育課程センターや、施設研究センターにおける先行研究の活用の観点からも、各センターにおいても幼児教育センターを通して横のつながりを持たせ、幼児期までを対象としていくことが必要。
○ 幼児教育において、何が課題であるか、国としての整理・集約が必要。国研、大学、幼児教育・保育研究団体、養成機関、民間シンクタンク等、様々な主体が特色を生かした研究を行うことが重要。そのためにも、課題整理・集約を行うことが重要。
○ 組織体制について、国際的な調査研究や、乳幼児の教育経済学、教育政策、保育も扱うのであれば児童福祉研究等に対応できるようにすることが理想。その際、研究者の増員だけでなく、研究者を支える事務的人員が極めて重要。

(岩城委員)
○ 「子ども・子育て支援新制度」が開始され、幼児教育の質の向上が求められている。質を評価する指標作りが必要である。
○ 現在利用可能なデータは諸外国の研究結果が多い。日本の中で培ってきた幼児教育の成果を測定すること、日本国内での追跡調査が必要である。一般の方に幼児教育の成果を説明できるような調査を行っていただきたい。
○ 子供の非認知的発達については測定が難しいが、長いスパンで発達を観察することが重要である。
○ 国立大学などは、幼稚園児から高校生・大学生まで幅広い年齢層の子供を抱えており、追跡調査に有利である。
○ 地域ごとの特色もあるので、その点も考慮できる組織となることが望ましい。

(岡上委員)
○ これから生まれる子供の多くは、現在存在しない職業に就くと言われている。このような社会変化に伴い、家庭での体験も変化していくものと思われる。その結果、子供の心身、感覚的なものなどの育ち、発達がどのように変化するのかが重要な課題。
○ 心の発達を研究するため、幼児期のみではなく、思春期までを対象にすることが必要である。国研に研究拠点を置き、長期的に活用できる、政策に反映できる調査研究が行われることを期待する。
○ 学術的な研究のみではなく、現場の子供たちの姿を見ながら研究を進めるべき。子供の姿とリンクした研究を進めるため、所外委員に現場の方を迎えるなどの方策が必要。
○ 多様な考え方を国内外から収集することが必要である。
○ 優れた研究を俯瞰(ふかん)し、全体を知ることが重要であり、それが現場や一般の方にも分かりやすいよう周知を工夫することも必要。分かりやすいように、幼児教育研究に関する俯瞰(ふかん)図のようなものを整理してほしい。

(斎藤委員)
○ 福井県においては、幼児教育支援センターを開設し、幼児教育の指導主事等を配置するなど、「学びに向かう力」の育成に重点を置いている。幼保小の連携は重要であるが、小学校教育の前倒しではなく、幼児教育の本質の理解につながらなければならないと考えている。また、今年度より、カリキュラムの考え方をもとに、県・市町・大学が連携して、幼児教育アドバイザーや園内リーダーの養成研修を行っている。子供の姿を見て、「遊びの中の学び」がどのような意味を持つのか、園内、保護者、小学校、地域等に伝えられる人材育成を図っている。全ての市町がこの研修に参加しており、園内リーダーも幼稚園・保育所・認定こども園全ての園種・公私立から参加している。園内リーダー所在園にアドバイザーが訪問するなどの取組を通して、実践への意欲と、つながりが生まれている。市町の課題解決に対して、県としてどのように支援していけるかを日々考えている。
○ 小中高における「学力」と幼児期の「学びに向かう力」がどのようにつながっているかを説明する時期が来ているのではないか。
○ 研究拠点には、自治体との連携・協力体制の整備を期待する。

(坂﨑委員)
○ 横断的で、長期間に渡る調査研究が必要である。その際、0歳から始まる保育所、認定こども園、幼稚園における教育・保育が将来にどのようにつながっているかを明らかにする必要がある。
○ 常に現場から離れず、研究者と実践者が一体となって研究を進める必要がある。保育の実施は市町村の義務でもあり、市町村に対しても研究成果をフィードバックすべき。
○ 大学・現場・所轄庁・地方公共団体がそれぞれの役割を果たしながらつながり、更に現場の声をよく聞く仕組み作りが必要。
○ 日本の幼児教育・保育は高い質を保ちながらも、財源投入の面についてはOECDなどからも厳しい指摘を受けている。これを打破するための研究成果が必要。

(高岡委員)
○ 幼児期から高等教育までのつながりを踏まえたテーマ設定が必要。主体性や協調性等のいわゆる「21世紀型スキル」が、幼児期の非認知的スキルとしてどのように培われるのか、また、それが小学校以降の認知的スキルの発達にどのようにつながるのかといったことが明らかになることを期待。
○ 民間レベルの調査では、サンプルの少なさ、期間の限定など、限界があるため、国の研究拠点には大規模で縦断的な研究を期待する。
○ 保護者の理解も重要である。家庭においてもより良い子育てが行われるための支援や、情報提供機能も必要。
○ 先進事例等を民間も含めて共有できる仕組み、ネットワーク作りが必要。

(田中委員)
○ 国の拠点としては、長期に渡る腰を据えた研究が必要。
○ 学校教育としての幼児教育と乳児期の教育との接続という観点でも、家庭での教育の在り方も重要である。乳幼児期の教育は家族との安定的な関係が前提であり、日本としての家庭での教育の在り方を示すための研究が必要。
○ できる限り多様な主体が多様な形で研究に参画できる設計とする必要がある。

(柳生委員)
○ より早く何かができる、知識を詰め込むといった方向に世間の関心が傾いている印象がある。幼稚園・保育所もニーズに応えるため、本来大切にしたいものよりも、世間の関心が向いているものにウエイトを置きがちという危惧もある。
○ 保育士、幼稚園教諭等が共に研究・研修を行うことを通して、子供の心の育ちに焦点を当てた幼児教育・保育を行うとともに、それぞれの特徴を学び合うことによって、より豊かな教育・保育を行うことが必要。
○ 乳幼児期だけでなく、子供の一生を見据えることや、子供の評価の基準に連続性を持つこと、子供の先の姿を見据えることを通して現在の乳幼児教育・保育を見直すことも重要。

(無藤委員)
○ これまで、日本の幼児教育界は、実践そのものは成果を上げている一方で、行政に対するデータ・エビデンスの提供は弱かった。
○ 国の研究拠点には、特に、幼児教育が公的な使命を持っていることを明確に示すことや、一般には質が高いと言われている日本の幼児教育で、どこが優れており、どこが足りないのかを示すことが期待される。
○ ここまでの委員の意見をまとめると、だいたい以下のような事項については共通認識が得られるものと思われる。
 ・ 国としての調査研究拠点の整備は推進すべき。
 ・ 具体的な研究課題については、様々な意見があり、引き続き議論、優先順位付けが必要。
 ・ 短期間で終わってしまうものではなく、長期にわたって安定した形での拠点整備が必要。
 ・ 既に国内で行われている研究や自治体、現場、さらには国際的な面も含めて連携が必要。
 ・ 将来的には巨大な研究組織を構築することが理想だが、まずは、国研をひとつの拠点として進めるのが現実的との意見があった。
○ 次回以降、これらの意見も踏まえて、更に議論を深めてまいりたい。

(以上)

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