資料4 大阪府公立高等学校入学者選抜における調査書の評定に関係して、全国学力・学習状況調査の結果を用いることについて

全国的な学力調査に関する専門家会議

 

 平成27年4月10日に大阪府教育委員会において決定された、公立高等学校の入学者選抜における調査書の評定に関するルールについて、同年7月7日に大阪府教育委員会及び文部科学省から説明を聴取し審議を行った。その結果、当専門家会議としては「全国学力・学習状況調査の結果を用いることは調査の趣旨を逸脱するもので認めるべきではない」というのが見解である。文部科学省においては、これを十分に尊重して判断されたい。
 なお、各委員から示された具体的な意見を、その内容ごとに整理すると以下のとおりである。

 

全国学力・学習状況調査の趣旨・目的との関係
○大阪府教育委員会の結果の用い方は、教育施策や教育指導の改善という実施要領に示す調査結果の活用の想定を超えている。
○調査の実施要領の趣旨を逸脱している。個人の評定ではなく、学校間を調整するという間接的な使い方であっても、選抜に関わる調査ではないものを、選抜に関わるような使用がされると、各学校としては、生徒の進路の実現という利益の点でこれに無関心ではいられなくなる。この学力調査の結果に対して、間接的な利用であっても、大きな影響があるので、取扱は非常に慎重にされる必要がある。
○全国学力・学習状況調査の最も重要な目的の一つは、政策のモニタリングである。調査を受ける生徒の利害に関わるような取扱をすると、機密性や公平性の確保など調査実施上の負担が大きくなり、調査の本来の目的を達成することが困難になることが懸念される。入学者選抜といった生徒の利害に関わるような、本来の目的以外の使い方は極力制限すべきである。

 

全国学力・学習状況調査の適正な実施に関する懸念
○入学者選抜に関わる用い方をすると、各学校は生徒の将来に関わることになるため、事前対策が増加することが懸念される。
○全国学力・学習状況調査の結果向上に偏った学習指導がなされてしまうという問題点への対策ができていない。
○全国学力・学習状況調査の趣旨の一つは、学校における指導の改善であり、市町村との関係において都道府県が異なる趣旨を持ち出すと、調査の性格が変容し、ひいては調査に参加しない市町村教育委員会が出てきてしまう。
○全国学力・学習状況調査を用いる必然性が認められない一方で、全国に影響を及ぼすものであり、慎重に扱うべきである。

 

今後の取扱について
○今般のような調査結果の用い方の是非については、全国的な問題でもあることから、本来、慎重に検討すべき問題である。この観点から、今年度も使用すべきではない。
○大阪府においては既に調査結果を調査書の評定の調整に用いることが周知されている現状があり、学校現場への影響を考えれば、今年度の結果の使用についてはやむなしとし、次年度からは再考すべきである。
○今後同様の事態が起きないように、次年度の実施要領には、調査の趣旨を逸脱した使用をしないことを求める旨の文章を書き加えることが必要である。
○実施要領とは別のものとして調査結果の使い方のガイドラインが必要である。アメリカにはテストスタンダードがある。日本も日本テスト学会が同様のテストスタンダードを出している。このような取組を周知すべきである。今回の件は、それらに照らし合わせても使用目的を超えたものであり、拡大解釈に当てはまる。

 

その他
○大阪府の抱える課題も分からない訳ではないが、府独自の学力調査が実施されており、別な方法があるのではないか。
○調査結果を学校における学習評価の改善に利用するという観点ではグットプラクティスになりうるものであるが、個人の選抜に使うことは、結果として評価を適切にすることとは逆の効果になる。生徒の在籍している学校によって、個人の評定が影響を受けることになり、生徒の責任ではない在籍している学校による格差を生む。
○調査の趣旨の一つは中学3年のはじめに中1、中2までの状況を把握して3年時の指導改善に生かすもの。一方で、高校入試は3年間の取組を評価するものであり、調べている学力が整合しない。
○調査は、基盤的事項に絞って学力の状況を把握するものであり、それにより学力全体の評価を調整することは疑問である。
○これまでの分析から、調査結果は学校の指導方法や教育システムの状況が反映されていることが分かっているが、それを生徒の評価に関係させることは疑問である。
○中学校3年の評定という非常に慎重に取り扱うべきものに関して、教育指導の改善のために行う調査で、評定を調整しなければならない学校が出てくることは問題である。
○日常の学習評価という教員の指導上の問題が、学校における評価活動の妥当性の確保という問題にすり替わってしまっている。日常の評価活動の改善を図るべきところ、全国学力・学習状況調査を使って行うということは適切ではない。

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