全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第10回) 議事要旨

1.日時

平成28年9月12日(月曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. 全国学力・学習状況調査における指定都市の調査結果の公表方法の検討について
  2. 学力向上に資する教科指導に関する調査研究について(調査研究報告)
  3. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(康)委員、田代委員、田中委員、垂見委員、土屋委員、寺井委員、長塚委員、吉村委員

5.議事要旨

議事1 全国学力・学習状況調査における指定都市の調査結果の公表方法の検討について

・指定都市教育委員・教育長協議会及び事務局より、全国学力・学習状況調査における指定都市の調査結果の公表方法に関する調査結果についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
都道府県への調査の結果で、公表すべきでないという回答をしている都道府県が含んでいる政令市は、自市の情報を公表しているのか。

【事務局】
指定都市自身は、20市全てで何らかの調査結果の公表を行っている。平成26年段階で平均正答率まで公表している指定都市は20市中17市だった。それ以降については把握していない。

【委員】
何らかの形で国が公表することになった場合、政令指定都市という相当の人口がいて、都道府県と同等の権限を持っているところのデータが公表されるということ自体は悪いことではないと思う。
データというのは、一定の一覧性みたいなものをもって公表されること自体に一つの意味があると思う。政令指定都市の結果が、何らかの形で公表されたときに、他の政令指定都市やより優れているところ、人口規模が同じ、あるいは違うところなど、いろいろな観点から比較・検討して、改善のために参考にできるということはメリットになると思う。
これまでも、例えば、非常によい結果であった福井や石川、秋田などを参考にすることは非常によかった。しかし、飽くまでも都道府県の結果なので、都道府県の各学校への関わり方、行政としての関わり方は間接的であり、同じような関わり方をしている指定都市間、同じような課題を持っているだろう指定都市間で情報共有ができて、改善の方向性を確認できるのはよいことだと思う。
また、新しい教育委員会制度になって、総合教育会議等を含めて、首長との関係の中で、市民へのアピール度の強い施策について、単なるムードや掛け声だけではなく、エビデンスベースで行政を進めていくことは重要だと思う。そのため、教育委員会として事実を持っていて、それが他の指定都市との比較の中でどのような位置にあるかも分かっていて、その上で首長と協力しながら教育施策を作り上げていくためにも非常に有用なデータになるのではないか。

【委員】
保護者の立場から考えると、政令市ごとの結果というのも知らせてもらえるとよいと思う。規模や地域性は様々だと思うが、政令指定都市の方が都道府県よりも大きいという実態もあると思う。

【座長代理】
神奈川県は、一つの県の中に三つの政令指定都市があって、人口の多くを政令指定都市が占める。こういう場合には、難しい問題を抱えているということも理解した上で、一律に取り扱うのか、あるいは地域の特性を踏まえた上で考えるのかということを、論議する必要があると思う。

【委員】
政令指定都市の結果を公表することには賛成だが、政令指定都市は、区によって経済や家庭、地域の状況等がかなり異なると感じるので、現在の市町村の結果公表と同様に区の結果については慎重な取扱いが必要であると考える。課題のある地域は教育委員会も把握できるので、施策や予算、人員配置の工夫をすることができる。

【発表者】
選択肢で「どちらかというと反対である」と「反対である」の二つを作っているのは、結果を公表していない政令指定都市があることと、国が一定の一覧性を有する結果を公表することによって過度な競争等を助長するのではないかという考えからである。
また、人口が大変多い、都道府県より多いという御意見があったが、各基礎的な自治体では、人口が多くても少なくても、それぞれが議会を持ち、それぞれが教育委員会を持っている。都道府県は、そういう自治体の集合体であり、都道府県が広域であるという理由でその結果を公表するのと、指定都市の人口が多いからといって、一自治体であるにもかかわらず、それを公表するというのは、少し違うのではないか。

議事2 学力向上に資する教科指導に関する調査研究について(調査研究報告)

・広島大学大学院教育学研究科松浦拓也准教授より、平成27年度「学力向上に資する教科指導に関する調査研究」の報告があり、その後、質疑応答が行われた。質疑内容の主な内容は以下のとおり。

【委員】
集団で学ぶ力の育成の徹底とは、具体的にはどんなことをしているのか。また、思考する力の育成とは、具体的には各学校ではどのようなことをしているのか。さらに、訪問調査の対象校について、特に中学校に関して、授業改善の取組とは具体的にはどのようなものなのか教えてほしい。

【発表者】
集団で学ぶ力については、調査対象の学年の児童に対して前年度までに学級全員で取り組んだり挑戦したりする課題やテーマを与えましたかという質問に対して「よく行った」と回答している学校群は、27年度において中高群に位置している割合が高くなっている。
また、中学校の取組に関しては、目当てをきちんと書いたり、ノートや書くことを大事にしたりするなど、教科が異なっても共通して取り組めることである。授業に臨むときに、どの教科や先生でも、基本となることが重要であると聞き取っている。
加えて、授業の組み立て方や課題の設定の仕方についても、もちろん教科の固有性はあるが、教科書の何ページをやるかという目当てではなく、子供たちに考えさせるためにはどのような課題の設定をしているのか、どのような授業の導入をしているのか。そういったことについては、オフィシャルな場というよりも、教員同士が日頃の授業の見せ合いや、気軽な相談の中でも、授業でどうやって子供たちに考えさせるのかを日頃から意見交換をして、それが自然にできるような学校の雰囲気になっているということがあると思う。職員朝会ということも例として出しているが、そのようなオフィシャルな会議ではない部分での教員同士の交流が大きいのではないと考えている。

【委員】
この研究は、今後アクティブ・ラーニングで必要とされているようなことが、ある程度きちんとした研究で実証できているという点で、今後の取組を進めるに当たって意義があると思う。具体的には、説明する力や積極的な思考、メタ認知、集団で学ぶことなど、いわゆる教科等横断的な資質・能力がほとんど入っており、課題の質の改善という秋田県でも重視していることが証明できていることは非常に意味のある研究だと思う。
人的な条件整備という点で、理科の実験補助員のような人の配置があるということも挙げられているが、補助員以外にも何か理科の少人数指導や加配などの人的な充実の施策がある学校が多かったのかどうか何らかの結果があれば教えてほしい。
また、探究能力という言葉があるが、これが児童生徒質問紙調査若しくは学校質問紙調査の中にある項目をまとめて、このような名前を付けたのだと思うが、どの項目だったかということを教えていただきたい。理科と算数・数学等で探究という言葉でまとめると、メリット、デメリット両方ある。

【発表者】
人的なことに関しては、高群の学校が引き続き高群であった小学校の特徴として、学校質問紙の中の、調査対象学年の児童に対する理科の授業やその準備において、前年度に観察実験補助員が配置されていましたかという項目について、少なくとも今回のデータからは、配置されていた方が効果があったという結果が出たのは高群だけだった。ある程度のところまで来ていないと、このような人員を有効に活用できないのかもしれない。同じ補助員が来ても、どのようなことをお願いするかで、その活用の度合いは変わってくるのではないか。受け入れる側も、上手に活用できるような状況になっているということが非常に大事ではないか。
また、小中連携についても聞き取りを行ったが、やはり時間的に余裕のある先生がいないと取組を進めることが難しいという話もあった。
探究能力については、基本的には問題解決的な学習というものをイメージしていただきたい。中学校の例としては、事象提示や課題把握の工夫というところがあるが、単に覚えるような授業をするのか、そうではなくて考えさせるための授業をするのかということについて、やはり探究的・問題解決的な授業をしようと思うと、そもそもどういう課題意識を持たせるのかというのが、授業の入り口としては非常に大事になってくる。特に効果を上げている中学校では、改めて教科問わず課題の提示から見直しに取り組んでいる。それに伴い、その後も結果の処理や考察などのプロセスを、教師が板書して、それをそのまま写したり、穴埋め式のワークシートを使ったりするのではなくて、児童生徒が書いて考える余地を残すような授業をしていくことが大事になってくるのではないか。

【委員】
対話的な学びや書く時間を計画的に行っている学校の事例は把握しているのか。また、家庭学習に関する取組は結果につながっているのか。

【発表者】
書くことの指導については、高群の学校の児童生徒質問紙でも現れていたが、訪問調査で把握したこととして、長く書くというよりも、端的に意図が分かるように書かせるようなことを継続的に取り組んでいるということや、継続的に書く活動をすることで、書くことに対する抵抗がなくなっているということがあった。生徒質問紙の傾向としては、中間群よりは高群の子供たちの方が抵抗感がなくなっていた。聞き取り調査の結果としても、ふだんから継続的に書く活動をさせているとのことだった。
家庭学習については、継続的に家庭学習の取組を行うことに加えて、それを評価・指導することで子供たちに対してフィードバックを返しているといったことが重要であると考えられる。

【座長】
24年度と27年度について理科の学力をそれぞれ分類しておいて、両者の変化の仕方を分析し、その後、どのような要因が高い学力を維持したり、学力を高めたりすることに貢献しているのかという観点から、量的な分析と事例分析を行うという流れだと理解をした。
その場合、そもそも変動はどのぐらい起こるのか。
学力の変動をもたらす要因は、行政的な施策や家庭学習指導、地域の社会経済的な条件など様々なことが影響を与えていると思う。
このような報告を読んだ読者は、学校でこういうことをやれば成果が上がると受け取ることがあるが、本当にそうなのかということを確認してからでないと、現場に対するメッセージとして示すことは懸念がある。少ししか変動しないような取組について効果があると示すことは必ずしも適切ではない。

【発表者】
どれぐらい変動があるのかということについて、小学校と中学校を比較すると、中学校の方が固定化しやすく、小学校の方が変動は大きくなる可能性が高いことが、データからは言える。
飽くまでもここで示しているのは全体的な傾向であり、全ての学校に100%当てはまるようなことは、やはり難しいと考えている。各学校・地域の実態を踏まえた上で、取捨選択をしていただくことが必要であると考える。

【委員】
この調査研究では、どのようにIRTの値を使っているのか。

【発表者】
確かにIRTの本領を100%発揮できているかというと、この調査研究では、設計上それは難しい。一つ一つの項目の分析のときに、平均通過率は確かに低かったけれども、それは学力の高い子供に対しては弁別力を持っているのか、それとも問題の意図がとりにくかったから低くなっていただけなのかといったことを検討する指標にはなり得ると考えているが、最終的には、やはり人間の目で見て意味を解釈していく必要があると考えている。
得点の意味合いについては、基本的に平均正答率や通過率と全く異なる傾向を出すものではない。この調査研究では、基本的には項目分析のところと個人の能力値を見るために使っている。

【委員】
高位から中低位に下がってしまった学校について、何か把握していることはあるか。

【発表者】
そのような視点での分析は、今回は行っていない。今回の分析は学校を固定しており、子供たちは同じではないということを考慮する必要がある。同じ学校で同じように指導しているつもりでも、学年のカラーや変動幅はどうしてもあると思う。そのため、平均値を下げる要因が少しでも増えてくると、どうしても代表値である平均値は下がってしまうということはあると思う。今回のデータだけで、下がった要因に言及するのは難しい。

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