全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第7回) 議事要旨

1.日時

平成28年5月10日(火曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. 全国学力・学習状況調査のデータ利用の在り方について(調査研究報告)
  2. 平成28年度全国学力・学習状況調査の実施について(報告)
  3. 全国的な学力調査の今後の改善方策について「論点整理」(案)
  4. 中学校における英語調査に関する「中間まとめ」(案)

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、北川委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(康)委員、清水(美)委員、田代委員、種村委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺井委員、吉村委員、渡部委員

5.議事要旨

議事に先立ち、事務局より、新しく就任した委員の紹介及び事務局の異動についての報告があった。

議事1 全国学力・学習状況調査のデータ利用の在り方について(調査研究報告)

・三菱総合研究所横山主任研究員より、平成27年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の報告があり、その後、質疑応答が行われた。質疑内容の主な内容は以下のとおり。


【座長代理】
報告の中にあった諸外国の例に見られる、どこがデータを管理して、具体的にどのような審査をしてデータを貸与するのかという点については、まだしっかりと詰めているわけではない。我が国においてデータを貸与する際にも、仕組みとして作っておかなければならない。諸外国の例を参考にするとこのような形になるのではないかということで整理している。


【委員】
諸外国の例について、基本的に公開され、個票で所属学校などを匿名化して提供するケースが多いのか。それとも、学校などを匿名化して、集約若しくは集計データなどを公開しているケースもあるのか。


【発表者】
ケースによって異なる。学校まで分かるような形で提供し、ただし、それにひも付くものとして、公表されてはならないデータが出ないような示し方をしているところもある。一方、例えばアメリカは、学校名はもちろん出さず、変数単位で、例えばこのくらいの学校規模で、このような子供が集まっているところは平均点どのくらいかという条件を入れるとすぐに出てくるようになっているが、学校名の特定には至らないようになっている。
調査においては、背景としてそれぞれの学校の制度に留意した。最も留意したことは、選択制があるかどうかについてで、諸外国は選択制を入れているところが多く、当然、国としての説明責任が問われる。その一環として、誰でもアプローチできるような形である程度の情報公開をしなくてはならないということがあり、そのような仕組みとなっている。そのため、諸外国と同様の仕組みをそのまま日本の状況に当てはめることはできず、このような違いも踏まえて全体の仕組みを設計していくことが必要であると考える。


【座長】
データベースの作り方について、学力調査のデータだけを入れているというよりは、複数のデータソースがあって、それが関連付けられるような形でデータを収集し、データベースに整理しているように見える。それは日本にとっても参考になり、有効な方向性ではないかと考えるが、どうか。


【発表者】
段階的に進めるものであると考える。学力のデータだけではなく、ほかのセクションのデータと結び付けて、きちんとエビデンスで整理し、それを経年的にきちんと捉えていくことが理想的であると考える。一方で、それを整えて、アクセスしやすいように、インターネットを使って提供するとなると、手間や時間、お金などが必要なので、何を優先するかということが今後の検討課題であると考える。


【委員】
ニーズ関する内容について、教育関係の学生からのニーズは多数存在すると思うが、教育事業者や塾等においてもニーズがあるだろうという報告があったが、諸外国の状況を見ると、そういったところが申請・利用者のところにない。実際に、営利を目的とする者も利用することが可能なのか、そういった実績があるのか伺いたい。


【発表者】
原則はない。民間の教育機関は認められているところも多いが、商材として教育活動を提供しているところを認めているケースは今のところ把握していない。申請者として教育事業者は除くのか、申請は認めるが利用の目的や結果公表の方法について審査するのかという点も検討すべき点であると考える。


【委員】
データベースを仮に運用するとなったとき、いつからのデータをここで運用するのかということが問題になると考える。これまでの学力調査は、公表するという前提で調査していたわけではないけれども、今後、このデータベースで、仮に個々の学校が特定されないとしても、個々のデータを公表するとなると、これまで公表しないという形で調査を実施してきたにも関わらず、後になって特定はされなくても公表するという形になってしまうような矛盾が生じるのではないかと考える。今後は、こういう形で公表していくという前提で調査に参加していただくということはあるかと考えるが、これまでのデータについて、データベースの運用が可能なのかという検討は必要かと考える。

議事2 平成28年度全国学力・学習状況調査の実施について(報告)

・事務局より、平成28年度全国学力・学習状況調査の実施についての報告があった。

議事3 全国的な学力調査の今後の改善方策について「論点整理」(案)

・事務局より、全国的な学力調査の今後の改善方策について「論点整理」(案)についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。


【委員】
本市で言えば、この10年間で、中学校の学校現場が子供たちに学力を付けるということに関して言えば劇的に変化したと考える。その一つの要因が、全国学力調査で、途中で抽出だった期間もあるが、悉皆(しっかい)で行われてきたことにあると考える。
悉皆(しっかい)の意味は、各学校、特に各先生方が課題や達成といったことを自分の課題、自分の成果として捉えられることが一番大きいと思う。だから改善にも動くし、目の前の子供たちを変化させよう、変容させようと思って一生懸命頑張ることになると考える。改善のサイクルを作ることは既に一定達成されていると考えるが、現場の先生方が自分ごととして子供たちの学力を捉えることの重要性は強調しておきたいと思う。
その意味で、英語調査が31年度から悉皆(しっかい)でという方針については、基本的に様々な課題はあろうとも是非すべきであるという意見も持っている。
指定都市の公表の件については、また話す機会があると思うので、改めて様々な課題が整理され、データ等も出た上で話そうと考えている。


【委員】
調査結果の提供の早期化について、4月末に調査して8月末に結果が出ることを現場としては非常に遅いと思っている。早めに調査して結果を出して、早く手だて打つことが調査の目的に合致すると思うので、例えば3年生の1学期の期間が必要か、2年生の3学期のところで実施したら良いかについて、経年調査しているので、なかなか難しいと思うが、検討していく必要があるかと思う。また、各都道府県で実施している学習調査との整合性や関係も踏まえて検討していく必要があると考える。


【委員】
学力調査のデータを積極的に活用している教育委員会や学校もある一方で、余り積極的に利用していない教育委員会や学校も多くある。現実的には、結果が来るまで分からないというわけではなく、調査直後に解答用紙を複写して、自分たちで採点すること校内研修に取り入れて、児童・生徒の学習の課題や教員の指導方法の課題を把握し、積極的に改善に取り組んでいるところもある。しかし、複写することは禁止事項ではないかと今なお誤解しているところもある。このようなことから、教育委員会や学校で調査を積極的に使っていないところに対する言及があっても良いのではないかと考える。過剰な使い方は困るが、積極的な利用が実現していないことについて改善を促す言及が必要だと考える。いかがか。


【委員】
その通りだと思うが、前提として、どの程度、どういった形で利用されているかについて調査が必要ではないかと考える。


【委員】
国では解説資料や授業改善のアイデア集等、多くの指導改善につながる良いものを作成しているので、活用状況を見るのが良いのではないかと思う。


【委員】
最後の「調査方法の不断の見直し」の「(4)毎年度実施する調査を補完する調査」で、2時点以上の学力を把握することの必要性について、一つは教育施策や教育指導を改善や充実をより厳密に測るためには2時点以上の学力を測る必要性が考えられ、もう一つは平均正答率の比較や序列化が問題であるが、2時点とることによって少し視点を変えて、どういった子供たちが伸びているのか、伸びる要因は何なのか、どういった学校が伸びるか伸びないかといったメッセージ性も考えられるので、学力の変化を捉える調査の必要性もあると思う。新聞等で取り上げられ、埼玉等も実施しているので、是非御検討してほしいと思う。


【委員】
今回一番大きな点が学力調査自身の評価・改善の視点だと思う。平成18年頃、平成19年の実施の前段階の予備調査の設計時にまだ学習指導要領の骨格が固まらない中で新しい活用型の学力を想定した調査問題の設計が行われたことが大きかったと思う。今後の具体的な改善方策に、「新しい学習指導要領が求める育成すべき資質・能力論を踏まえ」とあるが、学習指導要領が実施されてからそのタイプの学力調査を行うという考え方よりも、むしろ先取りする形で問題に仕組みを入れて、新しいタイプの資質・能力論を先導するようなメッセージ性のある調査ができないかと考えた。学習指導要領実施状況調査とは別に、あくまでも国が責任を持ってある一定段階の子供たちの学力を把握するという意味で、学習指導要領の動きともう一つ別の動きをしながら、両方が両輪としてセットで動いていくような、そういう仕組みができないかと思う。


【委員】
今の意見に関連して、平成19年度は学習指導要領が出て、この調査も行われた。学習指導要領が具体化されるためには教科書が具体化するための材料になるのだが、教科書が改訂するまでの移行期間、具体的な授業の内容というのはなかなかイメージができないので、その間、この学力調査の問題や学力調査に伴う具体的な授業アイデアが学習指導要領を具体化するためのメッセージを発信し続けていた。それによって学校現場は授業改善に取り組むことができた。今回も、学習指導要領が出たあとの移行に具体的にどんな授業作りを進めていけばいいかということをメッセージとして発信し続ける役割や責任がこの学力調査にあると思われる。そのような具体的な成果を過去に上げているので、今回もそのことを事前に狙って、来年度の調査には是非新しい学習指導要領と連動したものになることが望ましいと思う。

議事4 中学校における英語調査に関する「中間まとめ」(案)

・事務局より、中学校における英語調査に関する「中間まとめ」(案)についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。


【委員】
「話す」について、一人当たり10分で、これが1対1で行うのか、それとも複数で行うのかによって変わってきますね。これはこれからも検討していくということですね。例えば小規模の学校もあれば大規模な学校もあり、かなり時間が掛かるので、その対応も後ほど検討するという理解でよいか。


【委員】
10分というのは理想で、それだけ時間がとれればとてもいい調査ができると考えている。出入りや動く時間なども想定しているが、今委員がおっしゃったように各学校によって状況が違うので、これからの検討課題と考えている。


【委員】
採点方法について、英語以外の教科の毎年の方法に関しても、記述式の採点はかなり時間がかかる。今度の英語4技能では、特にライティングはかなり採点に時間が掛かると予想する。現在のコンピューター技術で自動的に採点することは、すぐにはできないと思うが、一度採点のスタイルが固まると変えにくくなる。ものすごい労働力を毎年掛け続けるかという問題がそのうち生じるかと思うので、採点のイノベーションも視野に入れて検討していただきたいと思う。


【委員】
今の御発言と関連するが、ライティング・スピーキングは電子データに落とせば、自動採点システムを使えると思う。それを視野に入れたような論点整理にしていただきたいのが一つ。
もう一つは、資料4-2の中間まとめ案の基礎資料のスライドの40にある。今の中学校の英語に話が集中しているが、小学校の英語について事実確認として質問したい。英語の教科化が行われたときに、英語自体の向上はそのとおりだと思うが、例えば思考力、判断力、表現力の基盤になるような小学校国語への悪影響等をチェックする必要があると思う。スライドの40で全国的な学力調査が右の柱に立っているが、そのあたりの小学校の国語のネガティブな影響を捉えるようなインデックスを全国学力調査で今から考えた方が良いと思う。


議事5 その他

・事務局より、通知「全国学力・学習状況調査の適切な実施の徹底について」、通知「全国学力・学習状況調査に係る適切な取組の推進について」、都道府県、指定都市における独自学力調査の平成27年度の実施状況と平成28年度の実施予定状況について報告があった。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)