全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第6回) 議事要旨

1.日時

平成28年3月1日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 第2講堂

3.議題

  1. 「足立区基礎学力定着に関する総合調査」等を活用した学力向上施策の推進に関する意見交換について
  2. 平成28年度追加分析調査のテーマ検討について
  3. 中学校における英語調査に関する「論点整理」の報告について
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、鎌田委員、斉藤(茂)委員、斉藤(規)委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(康)委員、清水(美)委員、種村委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺井委員、戸ヶ﨑委員、長塚委員、吉村委員、渡部委員

5.議事要旨

議事1 「足立区基礎学力定着に関する総合調査」等を活用した学力向上施策の推進に関する意見交換について


・足立区教育委員会教育次長付学力定着推進担当課長 森 太一氏、同教育委員会教育次長付学力定着推進担当課学力定着推進担当係長 東海 美智代氏より、区独自の学力調査を分析し、学校で活用している事例を御説明いただき、その後、意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。


【委員】
教育委員会と学校の役割分担はどうか。


【足立区教育委員会】
誤答分析や全体の傾向分析は、指導室を中心として行っている。各学校での傾向については、各学校で行っている。教育委員会としても、学校ごとに詳細な分析を行いたいが、様々な要因があり実施できていない状況である。
ただし、今回初めて、学力定着指導員の数名が、中学校数学について詳細に問題を分析して配付したところ、学校で非常に役立ったという意見があった。今後は、少しずつ分析をする人材や役割を決めて行いたい。
補習、補充に当たっては、各学校で個に応じた補習活動や補充活動を行っている。区としては、S-P表に基づき、習熟度別で対象を決めた補習教室を全ての学校で行ってもらう手立てをしている。例えば、習熟度の低い子供を対象に、小学校では「基礎学習教室」、中学校では「夏休みの補習講座」を民間の学習塾に委託して行っている。内容については、区の学力調査の傾向を基とした指導内容を依頼している。


【座長】
S-P表のS曲線とP曲線の引き方と、ここから何を読むのかという点について伺いたい。


【足立区教育委員会】
P曲線の書き方は、問題ごとに間違えた数によって下から線を入れていくというものである。次に、S曲線は、問題ごとに、個人の正答数を左から数えた位置に入れていくものである。この線を引くことにより、曲線の左上、実線を引いた左上の方については、全部が丸であってほしいラインとなる。S曲線やP曲線よりも上に来ている間違いについては、直ちに改善ができると思われる。赤線、青線よりも右下に来ている、紫色で三角を引いてあるところについては、その三角の中に入っている問題や子供の誤答は、かなり理解度が厳しいと考えられるので、手立てをしっかりと行う必要がある。
例えば、5番と20番の子供の内容を見ると、正答数17問、誤答数21問で、正答率は同じである。しかし、この2人の子供のうち、どちらがつまずきに深さがあるかということが、S-P表を見ると分かる。
全問題の中で無答、マイナスになっているところは、5番の子供が4つ、20番の子供については、全問題の中でマイナスになっている無答はゼロである。S曲線、太字地点よりも左側、本来であれば正答しておいてほしい問題の中で間違っている数を数えると、5番の子供は6個ある。例えば、問題1と25、6、14という形で、数えると6個ある。20番の子供を見てみると、11と2、24という形で、数えると4つしかない。5番の子供は、正答を期待されている問題の方により深い誤答が幾つも見られていて、なおかつ、解答ができないということは、知識が曖昧であったり、自信がなくて解答ができないという状況が見受けられる。つまり、5番の子供の方が、学力の不安定さが深刻ではないかというふうに分析ができる。そのため、この子供の方を早目に対応し、つまずきの解消をしないと、かなり深刻な状況になってしまうのではないかという分析になる。本来解答して欲しいような内容の分析や、どこに間違いがあるかというようなところからも見受けることができるといった、詳細な分析をすることができる。


【委員】
S曲線は、項目の正答数を数えて、累積曲線を書いている。したがって、縦軸がその場合の基礎ベースラインになる。P曲線は、逆に生徒の正答数なので、横軸がベースになる。両方とも極端だと、例えば、S曲線の方で見ると、これは項目の難易度がかなり生じている、P曲線の方を見ると、学力差がかなり上下離れているということが直観的に見られるという仕組みになっている。


【委員】
ただ単にS曲線、P曲線を作るだけではなくて、生徒や問題の注意係数を出したり、S曲線とP曲線との乖離幅(差異係数)がどのようになるのかということを最終的には算出することが、S-P表の狙いであったように思う。しかし、例えば、5ページにあるような様々な記号や数字が入っていると、そういったものは出せない。
また、0と1の二値パタンだけでなく、このような記号や数字が入ったり、データ量が多くなると、S-P表の作成や分析が困難となり、各学校で行うのは大変なのではないか。
0と1の二値パタンだけであれば、採点ペンとPCソフトを活用するなどすれば、各学校でも容易にS-P表を作成できるが、5ページのような表は各学校で作成しているのか。


【足立区教育委員会】
外部委託をしており、学校へは表の形で提供される。


【委員】
S-P表がなじむ科目となじみにくい科目があると思う。他の教科についてはどうか。また、中学校であれば担当科目が決まっているので、割と取り組みやすいと思うが、小学校だと1教科に時間が取られるなど、バランスの問題はないのか。
また、子供の反応はどうか。


【足立区教育委員会】
適応しやすい科目と、そうではない科目はある。英語は、つまずいている分野は、遡ってできるものとできないものがあるという意見がある。英語は能力であるということもあり、数学等と比べて活用しにくいという弱点がある。
教員は分析が大変だと思うが、つまずきの解消のためには、全体の傾向を明確に把握することが必要である。また、その分析が、授業改善や授業計画の作成に反映されているかどうか、区としては判断をしている。
これを活用した個別指導については、非常に評判が良い。保護者の方からも、大変分かりやすく指導してもらっているという感謝の言葉も受けている。また、分かりやすいから、分かるとつまずきが解消された上に自信につながっているようだ。授業や学習に対しても意欲的になるという意見も保護者からは頂いている。


【委員】
S-P表は、クラス単位と学年単位のどちらで作成されているか。
また、抜き出しに対する抵抗、特に授業中の抜き出しに関して、保護者や生徒から抵抗する意見があったのか。


【足立区教育委員会】
クラス単位で作成をしている。クラスごと、担任ごとに分析をして、手立てを講じている。
抜き出しを希望するかどうかは、子供や保護者に決めてもらっている。マンツーマンで指導するということの成果が上がっており、児童生徒も保護者も9割程度が満足しているという評価を頂いている。当初は、抜き出しに対する抵抗が不安材料になっていたが、今は全くそのような状況ではない。


【委員】
A問題へのフォローが強いように思わるが、いわゆるB問題の思考力・表現力・判断力への学力の波及はどうか。
また、小学校で丁寧な指導を受けた子供たちが、中学校ではどのように伸びるか。


【足立区教育委員会】
足立区の場合には、基本的な学力の定着ということで、A問題を重点指導してきた。そのため、学力の定着という点では、点数の通過率で、どれぐらい上がったかを把握することはできるが、B問題に関する学力は、定着率が分かりかねる。国の学力調査については、国との差、あるいは東京都の差ということで、その差を見ながらB問題の学力の定着度を判断している。
これまでの足立区のやり方というのは、小学校の指導が行き届き、基礎的な学力が身に付いているならば、それに伴って中学校も改善されるだろうという見込みで行ってきた。中学校においても若干、上がっているのでその影響はあると判断している。
個に応じた指導を行うのは、小学校も中学校も基本的には同じである。小学校と中学校で異なるのは、小学校では学校ぐるみの補充、補習活動ができるが、中学校は教科別になっているため、学校全体での取組が難しいという点が差に表れていると思う。


【委員】
調査は4月16日に行われるということだが、過去のデータを翌年度以降に活用する取組は行っているか。


【足立区教育委員会】
4月に行われた調査結果を基に、つまずきや課題になるところを埋めるという作業を各学校で行っている。また、12月頃に4月に実施した問題を再実施して、つまずきや課題があった領域がクリアされたかどうかを見返している。
2月頃は、過去の学力調査を行い1年間の取組の状況を把握している。その結果を基に、2月から4月まで、当該学年で指導すべきことを再検討している。


【座長代理】
足立区と東京都の独自調査、全国学力・学習状況調査を、総合的にどのように活用しているか。


【足立区教育委員会】
区の学習調査は、課題やつまずきを発見して、それを埋めるために使うことが趣旨であり、4月実施後、すぐに自校採点をして、課題を見付けて、それを埋めるような作業をするために活用している。東京都の調査と国の学力調査については、B問題において、全国や都との差がどれくらいあるのかということを把握する基準として活用している。


議事2 平成28年度追加分析調査のテーマ検討について


・事務局より、平成28 年度追加分析調査のテーマについての説明があり、その後、意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。


【委員】
学力調査も10年続けてきて、対応策にも質の高いものもあれば、そうではないものもある。そういう対応策のメタ研究のようなものが必要なのではないか。対応策の評価というような活動、研究自体が必要なのではないか。
足立区教育委員会の取組は、学習指導の改善の効果は弱くて、授業アイデア例等、様々な提案があまり活用されていないようにも見える。学習指導要領に係わるメッセージ性が学力調査には含まれているとは思うが、受け止められていないような印象を持つ。
対応策自体をメタ認知、メタ研究をして、良否やよりよい対応策を研究するチームがあると、学校現場に対して研究を生かすことができる。そういう研究が出てこないと、知らないうちに学力調査の負の側面のようなものが浸透してしまっているというようなことも生じてしまう可能性があるので、そのような研究はできないものか。


【委員】
テーマ3つ目の学校質問紙調査について、学校というのは広く教員個人個人と捉えてもいいのかどうか。教員一人一人が行っている指導方法のこだわりや非認知能力などと、子供の学力の相関や因果関係が得られるとよいのではないか。管理職などが代表して答える学校質問紙の信頼性には疑問を感じるので、教員個人個人の調査ができるとよいのではないかと思う。


【委員】
テーマ1つ目について、小学校6年生から中学校3年生への学力等の変化というところのイメージが湧きづらい。例えば、中学1年生と3年生だと分かるが、小学校6年生と中学校3年生では調査の問題が全く違うので、ここをどう埋めていくのかというのがイメージできない。このような形で設定すると、行き詰まってしまうような気がするので、もう少し具体的に研究方法をイメージしてから、テーマを設定した方がよいのではないか。
共通の受検者という設計だと、経年変化は、例えば、遡って10年間という意味では、別途調査をすることによって、どういうふうに変わってきたかというのをおおよそ把握できるとは思う。それは、小学校6年生の調査についても同様だが、小学校6年生から中学校3年生への変化となると、小学校6年生から中学校3年生へのつながりを想定するのは、技術的にも概念的にも非常に困難ではないか。


【委員】
テスト・イクエイティングという方法があり、以前はこういう場合、学年を縦につなぐという意味で、垂直等化という言葉を使った。英語ではバーティカル・イクエイティングという。イクエイティングといった場合、同一の心理学的特性というものを仮定している。しかし、小学校の算数と中学校の数学、あるいは高校、大学の数学というのは、一つの単純な概念ではつなげないだろうということで、イクエイティングの前提条件を緩めて、バーティカル・スケーリング、垂直尺度化と呼ばれるようになってきている。
技術的な方向からも、25年度と28年度の調査は直接つなげないが、裏にそういうのをつなぐデータがあれば、それを介して比較可能にすることができる。


【委員】
小学校6年生にも中学校3年生にもまたがって、その間をつなぐ問題というのは、作問としてどういうものがあり得るだろうということを考えると、中学校1、2、3年生と6年生がどうやってもつながりづらいのではないかという懸念が残る。


【事務局】
テーマの1つ目については、平成23年度の委託研究で、A、B、C、D層に分けて、A、B、C、D層の子が小6の子が中3のときにどうなったか、D層がどの辺になったかというようなことを、県独自調査も併せた分析等を行っており、そのような手法が考えられるのではないかと認識しているところである。


議事3 中学校における英語調査に関する「論点整理」の報告について


・事務局より、中学校における英語調査に関する「論点整理」についての報告があった。


議事4 その他


・特になし


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初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)