全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第4回) 議事要旨

1.日時

平成27年12月1日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. 平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙調査について(非公開)
  2. 平成28年度全国学力・学習状況調査について
  3. 英語調査の検討に関するワーキンググループ「主な論点(案)」について
  4. 平成27年度全国学力・学習状況調査の追加分析報告(案)について
  5. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、斉藤(規)委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(康)委員、清水(美)委員、田中委員、種村委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、戸ヶ﨑委員、長塚委員、吉村委員、渡部委員

5.議事要旨

議事1 平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙調査について【非公開】

  • 事務局より、平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙項目の内容について説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。

議事2 平成28年度全国学力・学習状況調査について

  • 事務局より、平成28年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領の昨年度からの変更についての説明があった。

議事3 英語調査の検討に関するワーキンググループ「主な論点(案)」について

  • 事務局より、英語調査の検討に関するワーキンググループ「主な論点(案)」についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
英語教育は近年、特に都市部では早期教育の対象、比較的豊かな家庭が早期に投資をする対象ともなっていると思うので、もし生徒質問紙を実施するのであれば、幼少期に学校外でどのような英語教育の経験があるのかということを聞くとよいのではないか。学校外のことは、中学校3年生の時点だけではなくて、いつ、どの程度やっていたという視点も必要だと思う。
もう1点、スピーキングについてだが、教員の指導・評価の改善ということで、教員が採点に関わることが検討されているようだが、教員間や学校間の教員の評価の信頼性などはどうやって確認されているのかを伺いたい。

【事務局】
質問紙は、項目を絞り込んで実施したということもあり、生徒が学校外でいつから英語を学び始めたかという質問項目を設けていない。しかし、平成25年度の全国学力・学習状況調査の質問紙項目の中で、そのような質問を設けたことが1回だけある。御指摘のとおり、小中学校とも、小学校入学前、それから小学校1年生、2年生、3、4年生、5、6年生と分けると、それぞれ10%、20%なり、ばらつきあった。中学生の回答では、小学校入学前に学んだ子どもは11.2%、小1、小2からは11.8%、小3、小4からは18.6%というふうになっている。今、小学校5年生から週1時間、外国語活動を行っているが、実態としては、学校外で英語を学ぶ機会は、かなりばらつきがあり、その分析は、残念ながらフィージビリティ調査では設けていないので、参考にさせていただきたい。
2番目の質問については、今回の調査では、教育委員会と学校に「協力」ベースで依頼したため、精緻さという意味では不十分かもしれない。しかし、フィージビリティ調査の段階という意味では、十分ではないかと考えている。

【委員】
1点目に関しては、本調査は学力調査であり、学校教育の成果を調べることが目的であるため、今おっしゃったような背景的な情報というのは、とても重要になると考える。
2点目の学校間の信頼性、教員の信頼性、データの信頼性については、公平性にも関わると思うので、やはり、とても重要な点である。そのようなことも重要な点としてコントロールできるようにと考えている。

【委員】
1点目は、技能統合型問題や即興的な英語表現、スピーキングなどはかなりチャレンジングで、今までの学校教育では確かに難しいところである。しかし、それが活用型の学力だったり、アクティブ・ラーニングだったりすることに近付いてくるので、これは本当にいい方向を出していただいた。どんどん進めていっていただきたい。
2点目、「英語力」という用語があるが、モデル的、構造的に分析するというのはなかなか難しい。しかし、この英語力の中に4技能があり、しかも統合的な技能もあり、態度面もありということが今、明らかになりつつある。そのような態度面とか、日常的に英語に触れるような活動、例えば、辞書を積極的に引くとか、様々な英語の資料に積極的に触れていくというような生活面も含めて、質問紙調査において、4技能だけのテストでは聞けないところを幅広く聞けるような項目が設定できればよい。英語力の概念モデルに基づき、カバーしている点が幅広く分かるような質問紙調査の項目設定が早急にできればよいと思う。大変魅力的な用語で、シンプルだが、今後様々な力を想定していけば、今の英語教育も変えていけるのではないかと期待が持てる用語である。
最後に、障害のある児童生徒は、スピーキングにおいて、緊張感や心配を大変感じると思う。その際に、情緒的な面でのコントロールについての課題がある場合については、緊張感によって不利な条件でスピーキングテストを受けることにならないよう、合理的な配慮の可能性を探っていくことも必要である。

【委員】
スピーキングは、英語の教員が評価するという計画であるが、実際に1学年100万人いるわけなので、全部行うとすると、とんでもなく大変な事業になるのではないか。少し原則からは外れることになるのかもしれないが、全部やるか、やらないかという議論にはせずに、実施可能な範囲で、調査対象者をある意味限定する形で、無理なく実施できる範囲を想定して行った方がよいと思う。今は全数でやるということが原則になっているが、それに関しては柔軟に対応した方がよいと思う。

【事務局】
ワーキンググループにおいて、同じような指摘も頂いているので、その点も含めて検討を進めさせていただく。まずは、4技能の可能性というところを、制約条件100万人というかなり大きな要件だが、頂いた御意見を整理しながら、可能性を少し模索させていただきたい。また、ワーキンググループでも御議論いただきたいと思う。

【委員】
「教員がスピーキング等の採点に関わることを通じた教員の指導・評価の改善」というのは、教員の英語の力を付けるというような意味と理解してよいのか。もしそうだとすると、学力調査の結果をもってより良い指導に結び付けるという目的と、教員の英語の技能をこの調査の採点という中で上げようとすることを期待しているというのとでは、少し様子が違うような感じを受ける。もしそうであれば、教員採用であったり、教員養成の方の問題でもあるのではないかと感じる。

【委員】
本来スピーキングの評価をする技能、能力というのは、リーディングやリスニング、ライティングのテストを作って、それの採点をするという、その技能の一つと思われ、本来、教職課程で十分に行っておくべきことなんだろうと考える。
そのため、教員の指導・評価の改善は、副次的な目的と捉えるべきであり、主たる目的ではないと思う。しかし、このようなことを通して教員の自覚を高め、評価できるようになり、「生徒が、こういうパフォーマンス、スピーキングの出来具合であれば、このぐらいの成績である」といった判断をする能力、技能を付けるという機会にできれば、なおよいのではないかと考える。
教員全員にトレーニングしてもらうという押し付けというよりも、そのような機会にもなるという肯定的な捉え方をしてもらえないかと考えている。

【委員】
目的の一つが、調査結果を学校での指導の改善に生かすということであれば、今の国語と算数・数学の全国学力調査も4月に行い、結果が返されるのが8月と、結構な時間がかかってしまっているわけだが、同じようにこの英語力調査でも、より丁寧な採点などを行えば、それだけ時間が掛かってくると思う。今、6、7月に調査して、10月、11月に返却されていると思うが、これが大規模になれば、それだけ時間が掛かってくるので、なるべく早くフィードバックできるような形の体制というのも考慮しながら、実施方法は検討されるべきではないかと思う。
また、調査回数は、複数年度に一度ということになっているが、前回の経験を生かす際に余りに間が空いてしまうと、フィードバックを早くするということへ生かせない可能性もあると思う。

【委員】
理念レベルでの調査の目的の整理の問題と、運用上の問題と二つに分けて考えてみると、平成18年4月に、学力調査の実施に関する報告書が最初に出た時には、義務教育段階の出口の段階にしようというのがあって、基盤的事項に絞った上で、知識に関するAのタイプの問題、それから活用に関するBのタイプの問題という整理があった。
そのような観点から見ると、英語の場合は、4技能はツールとして使えることが前提になっているということがある中で、学校教育の枠内での整合性や、国語、算数・数学、理科の調査の枠組みとの整理がもう少し必要ではないか。
また、指導改善のための結果フィードバックのタイムラインを考えると、実際上の設計の問題が少し分かりにくく、場合によっては、国語、算数・数学と切り離した別の日に行うなど、独自の運用が必要になるのではないか。学校現場の先生からは、質問紙調査も含め丸1日での実施はタフだということを伺うが、調査全体の設計の中にどう統合するかという議論が一方では必要だと思う。

議事4 平成27年度全国学力・学習状況調査の追加分析報告(案)について

  • 事務局より、平成27年度全国学力・学習状況調査の追加分析報告(案)について説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。

【委員】
項目の数との関係だが、ここまで詳細に分析し、ある程度仮説、予測が立てられて、それとの関係で、これはまず有意味な関係がありそうだとか、そういったメリハリを付けて、項目を少し減らすということはできないのか。

【事務局】
今回の重回帰分析をするに当たっては、平成21年度に公表された追加分析報告書で、同様の重回帰分析をしたときに有意に出てきたものを確定させ、それに今年度の調査結果において、21年度はなかった質問項目で、教科との関係で相関が高いものを上位から幾つか入れるという形でモデルとした。
今後の分析方法については、来年度に向けて御意見を頂きながら、より精緻で分かりやすいものにしていきたい。

【座長】
指導法の効果等を明らかにする場合には、それを規定していると考えられるような様々な変数の影響を統制することが、それほど行われていなかったということがあるので、今後は、そういうことを踏まえた分析をするようにしていこうということである。
ただ、就学援助率というのは先般、文科省の調査も公表されたが、自治体によって基準等が違うという側面もあって、必ずしも全部同じ基準で切っているわけではないという問題などもあり、ベストな変数かどうかはもうちょっと検討が必要かもしれないが、相当影響はあるということは見えてきたところである。

議事5 その他

  • 事務局より、昨今の全国学力・学習状況調査に関する議論についての報告があった。報告に関する主な意見は以下のとおり。

【座長代理】
この間のいろいろな動きを見ている中で、全国学力・学習状況調査に対しては、かなり厳しい見方もある一方で、我々として、それに積極的に対応していかなくてはいけないということを改めて感じた次第である。
データベースの構築という話が既に出てきており、広く多くの研究者が、それを利用して、新しい形での研究の展開ができるようにということについては、是非積極的に推進していただきたい。国民に良い成果を還元できるような、また、学校に良い成果を還元できるような研究につなげていってほしいと強く思っている。


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