全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第3回) 議事要旨

1.日時

平成27年8月31日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. 平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙調査の検討方針(非公開)
  2. 平成27年度全国学力・学習状況調査の結果報告
  3. 平成26年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」報告(早稲田大学からの報告)
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、斉藤(茂)委員、斉藤(規)委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(美)委員、清水(康)委員、田中委員、種村委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺井委員、戸ヶ﨑委員、吉村委員、渡部委員

5.議事要旨

議事に先立ち、事務局より、第1回会議及び第2回会議を欠席し、本会議に出席した委員の紹介及び事務局の異動についての報告があった。 

議事1 平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙調査の検討方針(非公開)

・事務局より、平成28年度全国学力・学習状況調査における質問紙項目の検討方針について説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。 

議事2 平成27年度全国学力・学習状況調査の結果報告

・事務局より、平成27年度全国学力・学習状況調査の結果についての報告があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
「別紙」の中学校理科5ページの水溶液の割合を求める問題と、中学校数学19ページの洗剤の容量を求める問題に課題がある理由について、これは「割合」という構造的なものに起因するものなのか、それとも、教科間や学校、指導者によって差が出てくるものなのか、検証したいと思う。

【委員】
過去の調査で課題が指摘された事項について、今回も課題があることが明らかになってきているものがある。そこで、新しい調査の仕組みとして、全体の調査とは別に、課題が見られた事項について、精密検査のような調査を実施してはどうか。例えば、「授業アイディア例」では、割合の問題について図を示すなど工夫して紹介している。その内容を踏まえた問題を出題するとどのような結果になるか等を調べてみてはどうか。各都道府県単位では、既にそのような試みはされているかもしれないが、国単位でもできないか。

【事務局】
割合の問題については、今回、数学と理科の両方で課題が判明している。今後、データ間の分析をどのように進めていくか、ということも含めて検討していかなければならないと考えている。また、単に中学校における学習の課題ではなく、小学校から課題解決されないまま中学校へ積み残されている課題であると考えられる。中学校における授業であっても、つまずいている生徒に対しては小学校算数での指導方法を参考にして手立てを講じることも含め、指導改善をどのように進めるか、今後働きかけていきたい。明らかになった課題を詳細分析できるような調査の実施については、今後、全国的な学力調査について方向性を議論する中で検討させていただきたい。

【委員】
これまで中学校では、「別紙」の中学校国語15ページのような、複数の情報を関係付けて意味を作り出すような問題は余り出題されていなかった。複数の情報を関係付けるというのは国語だけではなくて、理科や社会科等でも大変難しい操作だと言われているが、出題することで、中学校においても意識的に問い続けて欲しいというメッセージ性を発することができると思う。特に、いわゆるアクティブ・ラーニングというのは、小学校はとても反応度が高いが、中学校、高校はまだ反応度が低い。全国学力調査のような問題が、高校入試にも出題されてきており、高校入試自体にある種の影響力を持っているので、今後も問題を通してメッセージを出し続けていくことが、中学校、高校の授業改善にもつながると思う。

【委員】
問題の分析について、たとえば国語Aや数学Aの理科との相関をとるというのは、学力構造の相互関係を見るのにかなり良い情報を得られると思う。また、テストの統計量が、正答率だけあげられている点が今後の問題になる。例えば、「調査結果のポイント」33ページに正答率が掲載されており、それで学力の高低が議論されるわけだが、もう一つ、重要な情報として識別力というのがある。これは学力の高低によってその問題に対する正答がどれだけクリアに分かれるかといった情報である。相関関係を見るのと、学力の高低がどれだけ明確に分かれるかという情報を集めると、どの問題でつまずいていて、どうなっているのかというのが見えてくる。そのような情報も来年度の正答率の横に付けると、学校現場で役に立つと思う。

【座長】
資料2-1や2-3の公表の仕方については、分析・活用等ワーキンググループで再度検討して御意見を頂く機会を設けたいと思う。

【委員】
「別紙」の中学校国語15ページ、16ページの情報を関連させて読むという問題の指示文が不明確だと感じる。記述の場合は指示を明確にしないと評価は非常に難しい。また、書く方も一体何を書けばいいのかと迷う。テストを行うという観点からすると、非常に指示が曖昧であるということを感じている。この設問であれば、その社会にどのように関わっていきたいかという前に、どういった点でということを入れなければいけない。そうしなければ、「自分の考えを書く」ということについて、何について書くのかが明らかにはできない。そのようなポイントに関して指示を明確にすると、無回答などが減るのではないか。

【事務局】
事務局としては解答の条件として十分示したと捉えていたが、解答状況を見ると、条件を押さえて書いていない。それは与えられた条件を意識して解答を作成できなかったのか、あるいは、条件は押さえたもののそれを踏まえた解答が思い付かず記述できなかったのかというのは、解答状況だけでは十分把握できない。しかし、御指摘いただいた点も踏まえて、来年度以降、問題作成においては十分留意してまいりたい。

議事3 平成26年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」報告(早稲田大学からの報告)

 ・田中委員及び大阪教育大学 木原教授より、平成26年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の報告があり、その後、質疑応答が行われた。質疑内容の主な内容は以下のとおり。

委員】
学力が厳しかったところが向上する大きな要因として、教員の意識改革があると思う。学校外からどのような意識改革の働きかけがあったのか、あるいは学校内でどのような意識改革が始まったのか、具体的な事例があれば教えていただきたい。

【委員】
新しい学校長が来て、学力向上の教育ビジョンを示すことで、意識改革によって、これまでに実践していなかったことを始める学校があった。例えば、放課後に宿題をしっかりと最後までやり遂げることを徹底している学校、全国学力・学習状況調査の結果を非常に綿密に分析して、これに基づいた丁寧な個別指導やユニバーサルデザインに基づく支援を行っている学校があった。また、体力等、学力向上以外のテーマに取り組み始めた学校もあった。これまでに、その学校が実践してこなかったことを徹底的に、学校長とミドルマネジメントを担う教頭や教務主任、教職員が取り組んでいる。意識を改革するだけではなく、全教職員が協力して実行している。そこには、学校長の非常に強いリーダーシップがあったということが明らかになっていると思う。

【発表者】
そもそも、子供たちの学力を高めなくていけない、そのために自分たちが頑張らなくてはいけないということは、常に教職員の意識の中にあった。しかし、何をどのように変えるべきなのかについては、具体的なイメージが共有できていなかったようだ。訪問した学校ではいずれも、ある教員の取組が子供たちを変えることになった。それに刺激されて、周りの教職員が反応して実践してみようということになった。やらなくてはいけないことをどのようにすればよいのかということに対するイメージが明確になると、たとえ学年や教科が違っても、実践できる技として伝承されたり、広まったりということがスムーズに進むのではないか。

【委員】
具体的に説明があった学校がいずれも非常に小規模校であったが、調査する学校を選ぶ際に、あえてそういった学校を抽出規準として選ばれたのか。また、小規模校、小規模学級だったからこそできる教育活動なのか。これはあくまでも小規模校でのインプリケーションとしてとるべきなのか。また、中、大規模の学級、学校でこのような活動をすることが可能なのか、可能であればどういった課題があるのか。

【委員】
今回、学校を選定するに当たって、単学級かつ学級の人数が10人未満の学校は対象としていない。余り少ないと、学校の取組というよりも個人の力量などに強く影響されるということや、安定的に推移した形での学力の高さが維持されない可能性も強くなるため、対象としていない。しかし、10人以上は対象としているという点では、小規模校も多く入っている。今回対象とした都道府県別の地域ということで検証しているわけではないが、分析結果からは、10人から20人程度の単学級の小規模校は、学校の分布や学校の平均正答数の分布を都道府県別の地域で見たときに、課題が多い傾向が見られる。しかし、課題が少なくて、結果が良好な小規模校も非常に多い。統計的な分析や観察の結果からは、改善が進みにくくなっている小規模校もあるし、逆に、学校長のリーダーシップやミドルマネジメントなどの組織的な対応や全教職員が一丸となった授業実践をすることで高い水準となっている小規模校もあり、非常に差が大きく出やすいということが検証によって分かっている。学校数から言うと、小規模校で学力に課題の多い学校というのはかなり多いと思うので、今回、そういった規模別の学力向上対策や施策、授業改善のポイントが明らかになった。逆を言えば、更に研究を深めることで小規模校における学力向上施策の集合体のようなものが明らかになり、効果を上げられるのではないかと思う。

【発表者】
対象校には、1000人を超える児童数の小学校もある。それらの知見を集約して、77ページから10のポイントを報告している。実証はできていないが、学校の規模が異なっても、学力向上のための指導法の原理は変わらないと思う。しかし、規模が大きくなると、その原理を実現することがより難しくなると思う。具体的には、学校全体のマネジメントが問われるという感じがある。29ページの学校は、複数の学級がある学校だが、良い学び合いを学校全体で実践するために学校経営と学級経営を連動させていると聞いた。さらに、学校長がそれらと教員評価を連動させるというアクションを起こすことにより、より良い授業の取組が浸透していったというストーリーも聞くことができた。規模が大きくなるとその実現が難しいと思うが、「学力向上のために大切なこと」は規模によって変わるわけではないと感じる。

議事4 その他

・事務局より、大阪府教育委員会が公立高校入学者選抜の調査書に関係して、全国学力・学習状況調査を用いることについて、説明があった。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)