道徳科の評価に関する検討事項(案)

これまでの8回に及ぶ本有識者会議における議論を踏まえ、以下の諸点についてどのように考えるか。

【学校教育全体で行う道徳教育と道徳科との関係について】
○ 学校教育全体で行う道徳教育と「特別な教科 道徳」(道徳科)との関係については、資料5のとおりと捉えられるのではないか。

【資質・能力と道徳教育、道徳科】
○ 現在、次期改訂に向けて、教育課程全体を三つの資質・能力(「知っていること・何ができるか」、「知っていること・できることをどう使うか」、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」)の観点で構造化しており、道徳教育及び道徳科についても今後中央教育審議会において検討が行われることとなっている。
〇 その際、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」については、
・ 主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの、
・ 多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの、が含まれている(中教審教育課程特別部会「論点整理」(平成27年8月))ことに留意が必要である。
〇 このように今後の具体的議論は中教審で行われるものであるが、本有識者会議においては、例えば、道徳科の学習活動に着目した一つのイメージとして、
・ 「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ,物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める
・ 「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める
・ 「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ,物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深めるといった構造が考えられるのではないか。

【学習指導要領改訂に関する議論における各教科の学習評価の在り方について】

〇 学習指導要領改訂に関する議論においては、各教科の学習評価について、資料2のとおり、資質・能力の三つの柱に基づき構造化された各教科等の目標・指導内容に踏まえて行うとともに、特に、「学びに向かう力、人間性等」については、(1)「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分と、(2)観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(一人一人の良い点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取る部分があるとされていることに留意する必要がある。

【道徳教育で育まれる道徳性の評価について】

〇 道徳教育で育まれる道徳性については、小・中学校学習指導要領総則の「児童生徒のよい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに、指導の過程や成果を評価し、指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること」との規定を踏まえ、指導要録上、「各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動やその他学校教育全体にわたって認められる」児童生徒の行動に関する「行動の記録」の一つの要素として位置づけている。
〇 今後の具体的な在り方については、学習指導要領改訂全体の中で、中教審において、検討・整理されることが求められる。

【道徳科の評価について】
〇 道徳科の評価については、小・中学校学習指導要領第3章の「児童(生徒)の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要がある。ただし、数値などによる評価は行わないものとする」との規定を踏まえ、児童生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を、観点別評価ではなく個人内評価として見取り、記述で表現することが求められる。
〇 その際、道徳科は、「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める」学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てることを目標としていることを踏まえる必要がある。
〇 このような観点を踏まえ、個人内評価を記述で行うに当たっては、道徳科の学習において、その学習活動を踏まえ、観察や会話、作文やノートなどの記述、質問紙などを通して、例えば、
・ 他者の考え方や議論に触れ、自律的に思考する中で、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているか
・ 多面的・多角的な思考の中で、道徳的価値の理解を自分自身との関わり
の中で深めているといった点に着目する必要があるのではないか。このような観点について、小学校や中学校といった学校段階や発達の段階に応じた違いはないか。
○ このほか、「道徳性」の諸様相(道徳的判断力、道徳的心情、道徳的実践意欲と態度)を観点にすることも考えられるが、道徳科の評価として適切か。
〇 このような個人内評価を教師が行うに当たっては、教師が一回一回の道徳科の授業のねらいをしっかり押さえた上で、児童生徒を理解することが必要ではないか。そのために、本有識者会議においても、毎回の授業で全ての児童生徒について見取るのではなく、学習内容と評価の場面を適切にデザインするなど、資料7のような具体的な提言がなされているが、これ以外に留意点や具体的な工夫はないか。
〇 特に、道徳科における議論が、論理展開の巧拙を競うものになったり、分かりきったことや教師の意図を読み取ったりするものにならないようにする観点から、評価に当たって留意すべき点は何か。
〇 また、本有識者会議においては、これまで、教材中の登場人物への自我関与を深める学習や問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習といった質の高い多様な指導方法を確立する必要があるとの議論がなされているが、これらの多様な指導方法に応じた評価の工夫や留意点はないか。
〇 本有識者会議においては、個々の児童生徒の学習上の困難さに着目し、道徳科の授業における指導についてどのような配慮が必要か議論を重ねたが、評価に当たって個々の児童生徒の学習上の困難さに関してどのような配慮をすべきか。
〇 年間35単位時間の道徳科の授業が学習指導要領を踏まえ、指導計画どおり確実に行われることを担保する観点から、検定教科書の導入のほか、評価や指導要録の記載についてもどのような工夫が考えられるか。
○ 道徳科の評価に当たっては、教師用指導資料の作成・配布などに加え、資料1のとおり平成28年度予算案に計上されている道徳教育の充実に関する事業等を活用して、文部科学省はどのような支援を行うべきか。

【道徳科の評価と入学者選抜との関係】
〇 道徳科の評価と入学者選抜との関係については、資料6なども踏まえ、どのように考えるか。


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