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(資料2)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議への提案

2015年11月11日

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議への提案

東京書籍株式会社
川瀬 徹

1.デジタル教科書の現状

・現行の「指導者用デジタル教科書」は、教科書紙面に演示用の指導用教材が加わった「指導用デジタル教材」であり、音声・動画・アニメーションなど搭載している情報量が多く製作費が嵩む。
=リッチコンテンツ
・「指導者用デジタル教科書」の製作費を押し上げている要因のひとつに、教科書に掲載されている著作物に対する著作権使用料の支払いが大きいことがある。
・現行の教科書の定価は、小学校11教科の1冊あたりの平均が393円、中学校11教科の1冊あたりの平均が540円であり、この価格でリッチコンテンツを全児童・生徒に提供することは極めて難しい。
・一方で教科書には使用義務が課されているが、リッチコンテンツのすべてを学習することは困難。
・これらの状況に鑑みれば、「デジタル版教科書」は、別のつくり方を志向しないといけない。=ベーシックコンテンツ(と、それと連携して使用可能なデジタル教材)
・「デジタル版教科書」を、現行の「教科書」と同じ扱いにするには、使用義務、価格だけでなく、検定、著作権等、解決しなければならない課題がある。
・「デジタル版教科書」を使うためには、現実的にタブレット端末、無線LAN環境を整備しないと機能しないものになってしまう。

2.検定について

・検定を実施する場合は、「紙の教科書」に加えて「デジタル版教科書」も検定しなければならないとすると、文部科学省も教科書会社も検定にかける労力は2倍以上になる。
・「デジタル版教科書」をリッチコンテンツとする場合、音声・動画・アニメーション・グラフなどを含めて検定を実施する必要があり、紙だけの場合に比べて数倍の労力が必要になる。また、教科書会社としては、検定で修正意見が付けられても、季節的な動画の撮り直しができないなど期日内で対応できない課題が多い。
・上記のことから、「デジタル版教科書」は、少なくとも当面の間は、「紙の教科書」を前提としたものとして、検定は紙の教科書に掲載されている内容だけにすることが、現実的な対応と思われる。

3.著作権について

教科書における著作物の著作権

 (教科用図書等への掲載)
第三十三条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であって、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同じ。)に掲載することができる。
2 前項の規定により(1)著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の(2)補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 文化庁長官は、前項の定めをしたときは、これを官報で告示する。
4 前三項の規定は、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通信教育用学習図書及び教科用図書に係る教師用指導書(当該教科用図書を発行する者の発行に係るものに限る。)への著作物の掲載について準用する。

・教科書に第三者の著作物を掲載する際,上記の著作権法第33条に規定される権利制限があるため、著作物を教科書に掲載しやすい。
・下線(1)から、著作者へ通知するだけで許諾を求める必要はないと言えるが、実際は、教科書に掲載する全著作物に対して,各著作者に逐一許諾を得ている。
・下線(2)から、「掲載補償金」を支払うことが義務付けられており、文学作品や音楽などの著作物の使用料は,この掲載補償金が基準となっている。
・現状の「指導者用デジタル教科書」および「学習者用デジタル教科書」は、ここで定められている教科書ではないため、権利制限からは外れることとなる。したがって、掲載にあたっては、著作者からの許諾を改めて得る必要があり、デジタルものへは掲載不可という場合もある。
・掲載不可の場合は、著作権の他に、肖像権・所有権を理由に断られることがある。
・教科書と同等の内容を保証するためにも、教科書会社としては、「デジタル版教科書」においても、権利制限が教科書と同様の扱いとなるよう著作権法を改正してもらいたい。
・なお、「デジタル版教科書」は配信による供給も想定されるので、著作権法の改正にあたっては、公衆送信に関わることも、権利制限の規定に加えてもらいたい。
・下線(2)の「教科書掲載補償金」は、掲載する著作物の種類と発行部数および小・中・高の学校段階に応じて金額が毎年定められている。
掲載補償金について、「デジタル版教科書」の実用化に向けて、以下の点を検討する必要がある。

1)現行の掲載補償金は、教科書の価格が一定であることを前提にしているが、「デジタル版教科書」の価格も、教科書会社の区別なく一律のものに定めるのか。
2)現行の掲載補償金は、発行部数を基準としているが、配信による供給も想定される「デジタル版教科書」において、発行部数に相当する基準をどのように定めるか。
3)現行の掲載補償金は、毎年、教科書定価の変動に伴って変動するが、「デジタル版教科書」も同様にするのが妥当か。

4.「デジタル版教科書」のあるべき姿

・以上のことから考えると、「デジタル版教科書」はベーシックコンテンツで作り、連携するするデジタル教材を教科書会社・教材会社・教育委員会・教員等が別途用意する形式を提案する。
・「デジタル版教科書」の作り方は、「学びのイノベーション」での成果から紙面にこだわらない短冊型を志向する方法と、ユニバーサルデザインの観点からEPUB3を志向する方法がある。
・教科書の使用義務との関係からは、紙面がないと「教科書」と位置付けようがないため、教科書紙面があるEPUB3を提案する。
・点字や拡大教科書と同じように、「デジタル版教科書」を紙の教科書の別媒体として位置付け、紙の教科書との併用が現実的な対応と思われる。ただし、教科(特に英語)によっては、音声があることで非常に高い学習効果が見込まれるものもあるため、その点については配慮が必要。
・教科書会社では「デジタル教科書」でユニバーサルデザインを志向しているので、障害者差別解消法への対応は、今後「デジタル版教科書」を中心に据えて対応していきたい。
・EPUB3であれば、文部科学省が進めている「デジタル教科書の標準化」との整合性も取れる。
・EPUB3は、多くの教科書会社が紙の教科書を制作する際に使っているDTP編集ソフトのデータを流し込むことで比較的簡単に「デジタル版教科書」制作することができる。
・EPUB3は、先生が作ったプリントもPDFデータにして、読み込むことができる。
・文部科学省が提唱しているアクティブラーニングを定着させるためには、「デジタル版教科書」とそれにリンクしたコンテンツ教材群が有効な手段になると思われる。

1)音声・動画・アニメーション・シミュレーションなどの多様なコンテンツを使うことができる。
2)紙の教科書は、文と図、写真、問題等で構成されているが、デジタル版教科書では、それらを要素単位で拡大・焦点化して使うことができる。
3)ノート・問題集・辞書機能などを付けることができる。
4)授業中でも子供の思考の流れを把握することができ、思考の見える化ができる。
5)英語における、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4機能のうち、紙の教科書では習得しづらい、「聞く」「話す」の機能を「デジタル版教科書」では補える。

・ただし、小学校の生活科や高校の実業科目など、全教科・全学年にわたって「デジタル版教科書」が必要かどうかを検討する必要がある。
・「デジタル版教科書」への過渡期として、URLやQRコード、AR、音声コード等を活用して、紙の教科書を選択した教委・学校の児童生徒に対しても、動画や音声等の恩恵を可能な限り受けることができるようにする。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課

-- 登録:平成27年11月 --