「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第9回) 議事録

1.日時

平成28年10月21日(金曜日)14時~15時30分

2.場所

3F1特別会議室

3.議題

  1. 最終まとめに向けた検討について
  2. その他

4.出席者

委員

堀田座長、天笠座長代理、新井委員、井上委員、尾上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、近藤委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、福田純子委員、毛利委員、山内委員、若江委員

文部科学省

藤原初等中等教育局長、浅田大臣官房審議官、望月初等中等教育局教科書課長、宇高教科書課課長補佐

5.議事録

【堀田座長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第9回会議を開催させていただきます。皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

前回、6月の会議において中間まとめの案を御審議いただきまして、座長預かりとさせていただきました。皆様に御協力いただき、その後、無事に中間まとめを取りまとめることができました。その後、関係団体からの意見聴取、あるいはパブリックコメントを頂きまして、本日の会議を迎えております。本日以降、12月末までに、最終まとめに向けて更なる議論を進めていくこととなりますので、御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

本日は、全ての委員に御出席を頂いております。

また、報道機関から写真撮影の希望を頂いておりますので、冒頭のみ、これを許可したいと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、議事に入ります前に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

<事務局より配付資料について説明>

【堀田座長】ありがとうございました。

それでは、カメラ、写真等の撮影はここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、審議に入る前に、最近の教育の情報化に関係する動きにつきまして、事務局から御説明を頂きたいと思います。

<事務局より関連資料1、2について説明>

【堀田座長】ありがとうございました。地域、自治体による整備の格差はまだ大きいですが、教育の情報化に対応した教育環境の整備・充実の活性化を加速化する方向で様々な取組がなされているということかと思います。

続きまして、この検討会議の中間まとめを受けまして、教科用図書検定調査審議会でも審議が始まったということですので、その点につきまして、事務局から御説明をお願いします。

<事務局より、関連資料3、参考資料2について説明>

【堀田座長】ありがとうございました。これまでの説明について、御質問等ございましたら、討議の際に併せてということにさせていただきたいと思います。

それでは、議事に入りたいと思います。簡単に整理しますと、6月の中間まとめを受けまして、8月に関係団体から文書にて意見聴取を行うとともに、7月25日から8月12日の間、パブリックコメントを実施いたしました。事務局の方で、この二つについてまとめていただいておりますので、まずはそれらについて御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

<事務局より資料2、3について説明>

【堀田座長】ありがとうございました。関係団体からは多様な意見が出ていますし、パブリックコメントにおいてもたくさんのコメントを頂いたところです。これらを、事務局に取りまとめていただきました。全体的には、私たちが取りまとめた中間まとめに強い反対があるわけではないと思います。一方で、細かい点に対する要望は、プラスのものもマイナスのものもあるかなというところです。

これについて、これから審議をしていきますが、年内に最終的な取りまとめを行うことを考えますと、次回が恐らく最終回になります。ですので、今日は皆さんから御意見を頂いて、それについて、次回の最終回で成文して、皆さんにお伝えして、御審議いただくという形になると思います。

その際は、中間まとめを蒸し返すようなことのないような形で進めていきたいと思っておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。

今、関係団体の意見やパブリックコメントにおける意見を踏まえたお考え等について、御発言いただければと思います。議論が発散してもいけませんので、資料4に、今日話し合う必要のある論点をまとめたところでございます。中間まとめに関する関係諸団体からの意見聴取とパブリックコメントから、私たちの中間まとめと多少意見がずれているかもしれないところについて、より精緻にすべきであるという観点から、事項を取りまとめたところです。

今日は、資料4の順番に従って、御意見を頂いていきたいと思います。まず、一つ目の丸の「教科書の意義・役割」のところから始めていきたいと思います。教科書は、その使用義務を考えると、質の保障が重要であり、基礎的、基本的な教育内容の履修を保障しているものですが、これについては強い反論はありませんでした。ほかの教材とうまく連携したいというようなことについての意見はありましたが、これは別に教科書の意義や役割を変えるものではないと思います。ですので、この一つ目の丸は、特段、問題はなかったと理解できると私は思っております。

二つ目の丸について、高等学校教育は義務教育ではないため、そもそも紙の教科書も無償給与しておりません。よって、中間まとめでは、高等学校段階は義務教育段階とは異なる取扱いをすることも考えられると書きましたが、是非そうしたいという意見は、関係段階もパブリックコメントにおいても、余りなかったということがあります。ですので、学校段階において、取扱いについて差異を設けるようなことを書く必要があるのかどうかということについての御意見がございましたら、お願いしたいと思います。

まずは一つ目と二つ目の丸につきまして、何か特段の御意見ありますでしょうか。中川委員、お願いします。

【中川委員】資料4の一つ目の丸の「教科書の意義・役割」について、関係団体から頂いた意見の中で、資料2の9ページの「紙の教科書にはないコンテンツ~書く力・考える力の育成につながらないのではないか。」という意見があります。これは、教科書とノートが混同して捉えられている可能性があると考えています。デジタル教科書を教科書として学び、タイプで打ち込んでノートを取るのであれば、文を作るときに短い文を作りながら、コピーやペーストをしながら前後の文を入れ替えられるというメリットがある一方で、考える力が少し弱くなるのかもしれません。ただ、考える力がノートを書きながら育成されると考えた場合、デジタル教科書を見ながら、紙のノートとペンで書けば、デジタル教科書の使用と考える力との連動性はないのではないかと思います。

つまり、ノートの部分をデジタル化するとは言っていないということを明確に書いた方が、書く力に関する心配というのは少し軽減できるかなと思いました。

【堀田座長】貴重な御意見ありがとうございます。今の御指摘のところにも共通していますが、パブリックコメントでの意見は、この検討会議で定義しているデジタル教科書の範囲が、必ずしも明確に正確に伝わっていないような意見も、実際たくさんあります。また、デジタルは目が悪くなるといった、ステレオタイプな意見も結構混ざっているので、それらについては慎重に検討するべきだと思います。中川委員の話でいうと、この検討会議の所掌範囲は、教科書をデジタル化することについてどうするかという話であり、これと、ノートを書く機会が減ることによる学力低下の可能性については、書き分けていくことが必要だと思います。

ほかにこの最初の二つの丸につきまして、何か御意見ありますでしょうか。

では、もし何かありましたら、また後で関連付けてお話しいただくことにして、取り急ぎ3番目に進めさせていただきます。三つ目の丸は、デジタル教科書の購入に係る経費負担について」です。これは、中間まとめにおいて、デジタル教科書は、紙の教科書と同一のコンテンツではあるものの、紙の教科書と同様に、無償措置の対象とするというのは、直ちには困難である、とされています。これについては、是非無償にすべきだという要望がたくさんありましたが、法改正の問題や財源の問題と、様々なことが関係してきます。ただし、もし学校現場にデジタル教科書の使用が広がり始めたら、有用な部分から少しずつ、無償措置を含めた措置をしていく必要はあると思います。そういう意味で、国がどこまで措置するべきか等について、御意見を頂きたいと思います。

ここで強調しておきたいのは、端末の整備に関する話はこの検討会議の所掌範囲ではないということです。中間まとめにおいて書かれている、「無償措置の対象とすることは、直ちには困難である」という部分についての御意見を踏まえて、皆様方から何か御意見を頂ければと思うところです。

【高梨委員】各団体から意見を聴取する中で、とりわけ私どものような地方の教育委員会の現場サイドからは、是非無償にしてほしい、という意見がありました。この意見は、そうでないと、自治体の財政力の差によって、デジタル教科書の導入も差が出てしまうということを懸念してのことだと思います。

ただ一方で、この検討会において、国としての財政的な責務等についてどこまで言及できるのかというと、難しいかもしれません。座長がおっしゃったように、現実的には、デジタル教科書を無償措置の対象とすることは直ちには困難であるでしょう。ただし、中間まとめにおいては、「義務教育段階において使用するデジタル教科書については、可能な限り無償で児童生徒に給与されることが望ましい」という表現になっています。

ですので、各種団体の意見を受けて、言い回しについて、「可能な限り無償」という部分を若干強調する等でよいと思います。現場としては、是非無償にしてもらいたいという思いはあります。

【堀田座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。福田委員、黒川委員の順番でお願いします。

【福田(孝)委員】先ほどの二つ目の丸と関連しますが、高等学校段階と義務教育段階の記述については、若干、差異を設けていただきたいと思います。理由は、教科書の給与の仕方とも関連しますが、一つ目は、現在、国による無償給与制度の対象は義務教育段階のみであり、高校はその対象外であるということ、二つ目に、教育内容についても、義務教育は国が一定水準を担保する必要があるけれども、高等学校段階は、多様な教育を認めることが前提で進められているからです。よって、これまでの我が国の教育の流れを考えたときに、義務教育段階と高校段階についての記述はあえて変えた方が、後々、無償給与について検討する際の大きなハードルにならないと思います。

【堀田座長】貴重な御意見、ありがとうございました。黒川委員、お願いします。

【黒川委員】無償化に関する御意見が出ていますが、中間まとめにおいては、購入に係る経費負担を極力低廉に、という方向が示されました。しかし、発行者の立場から申しますと、普及モデルとして、小学校は2020年、中学校は2021年までに、どの程度まで準備できるかによって、大きく状況が変わってくると思っております。一つ目は、デジタル教科書の活用の範囲をどう設定するのか、そして二つ目は、表示する情報端末をどの程度に設定するか、ということです。これは、今日の議論ではありませんが、やはりそこが非常に重要になります。それから、三つ目は、ビューアやプラットフォームの標準化をどうするのか、ということです。四つ目に、運用やメンテナンスの問題も含めて、配信や商品の受発注システムをどう構築するかという具体的な問題が挙がってまいります。

デジタル教科書を有効に活用していただくためには、先ほど事務局から御説明のあった加速化プラン、あるいはその先にある第3期教育基本振興計画にも関わってくるとは思いますが、やはりコンテンツの部分だけではなくて、それ以外の環境整備や運用部分に大きな経費がかかってくるということも、前提に置かざるを得ないと思っています。

一方で、中間まとめでは、デジタル教科書を「特別な教材」と位置付け、紙の教科書と併用するという方向付けを示しましたが、この意味するところは、2020年の段階では、全国の全ての学校で直ちに活用できる環境や状況ではない、ということを踏まえたからだと思っております。飽くまでデジタル教科書を活用することが目的ではなくて、学習の手段や方法として考えるべきだと思います。そう考えますと、2020年代に求める学びの在り方に応じて、まずは、現在ある指導者用デジタル教科書(教材)の一層の普及も踏まえ、段階的に普及、定着していくことが望ましいと思っています。

したがって、デジタル教科書の無償化、あるいはその先にある選択性というような問題については、2020年の導入以降、その普及や定着の具体的な状況を踏まえながら、制度的な検討をすべきだと思います。そのためにも、これまで1人1台の情報端末によるICT環境の整備、デジタル教科書・教材の一体的な活用、といった議論がされてきましたけれども、そうした取組を推進しようと考えている自治体に向けては、全ての児童生徒が支障なく使用できるように、2020年のデジタル教科書導入のスタート時にしっかり支援する必要があります。その状況を見ないと、皆が、具体的にイメージができないのではないと思います。例えば、全国で実証研究校を公募、支援するというプランや、そのエビデンスをもとに今後の補助の在り方を検討、具体化していく必要があるかと思います。少し細かくなりましたが、以上のように感じております。

【堀田座長】ありがとうございます。現段階では、ハードウェアの普及も途上ですので、その段階で全部決めてしまうというのは、ほぼ無理ですし、心配が多い部分もあって、そうすると、何も決めず、変えず、ということになるかもしれません。そうならないように、まずはデジタル教科書における検定の範囲をできるだけ狭くし、無償給与についてはまだ直ちには困難であるが、併用が可能である、という形にして、将来的には選択性が可能になるという予備段階を中間まとめにおいて用意したわけです。中間まとめで言及したプロセスが少しずつ進んでいく中で、制度を常に検討し続けるべきだという御意見だと思います。ありがとうございました。

天笠座長代理、お願いします。

【天笠座長代理】経費の負担ということについて、中間まとめにおける位置付けと、そこに記載された中身的なことについては、私はほぼ同意しています。その上で、中間まとめの17ページ以降に、「デジタル教科書を取り巻く環境の整備」という項目で、留意すべき事項が記載されていますが、環境の整備について広く解釈するならば、経費の問題があり、このことについて位置付けて話がされても、おかしくはありません。そうすると、環境の整備について、もう少し構造的に捉えていく必要があると思います。

例えば、国や都道府県教育員会、市町村教育委員会、学校等のそれぞれの立場、機関で整理して書き分けると、国の立場としては、中間まとめにもあるように、教員養成の在り方等々という事項が入ってきたりと、また違った書き分け方ができると思います。そうすると、国は財政面が主になるとは思いますが、都道府県教育委員会は都道府県教育委員会における環境整備について何ができるのか、また、学校において、やれることは何か、学校と市町村教育委員会が連携して、環境の整備を進めるために何をすべきなのか、といった論点があると思います。環境整備について、誰に対して、どういうことを課題として示したら良いのか等を中間まとめにおける「デジタル教科書を取り巻く環境の整備」の箇所で記述すると、課題がよりクリアに見えてくると思います。それと同時に、環境整備の進め方について、財政や所掌等の観点から、整理したらよいと思います。

【堀田座長】ありがとうございました。これは先ほどの事務局からの御説明の部分とも関係する部分ですので、検討会議の最終まとめにおいて、環境整備の取組についても整理して書き込み、それとともに、これまで発出されたもの、そして2020年代に発出されるものにおいて、整備指針がいろいろと決まっていくと思いますが、それらの指針においても、デジタル教科書の普及を前提とした形で記述し、それらをプレーヤー別に整理するということが重要だろうということだと思います。ありがとうございました。

ほかにこの三つ目の丸につきまして、何かありますか。

では、一度、ここまでにさせていただいて、四つ目の丸に参ります。四つ目の丸は、「障害のある児童生徒によるデジタル教科書の円滑な使用について」とありますが、これは障害のある子供たちにとって、紙の教科書で学習するよりも、デジタルで学習した方が有効だという場面は多様にあるだろうということについて、賛成の意見もある一方で、デジタルに対する障害もあるかもしれない、といったことも考え方としてはあるわけです。この辺りにつきまして、是非、特に特別支援教育に関わっていらっしゃる方々から御意見が頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

では、まず近藤委員、お願いします。

【近藤委員】まず、障害のある児童生徒に対するデジタル教科書教材等の提供に関して、障害のある子供たちのニーズというのは基本的に、一人一人大きく異なっていますので、それぞれのニーズに応じた選択肢の幅を確保するということが求められます。

中間まとめにおいては、紙の教科書とデジタル教科書の併用や、将来的にはデジタルのみの利用の可能性もある、といったような議論がありますが、障害のある子供たちの中には、そもそも紙の利用が困難であるという子供もいます。例えば肢体不自由があって、体が全く動かず、紙の教科書だとページをめくるにも人手を介す必要だったりします。ところが、テクノロジーを使って、わずかなスイッチ操作等で、画面を自由に操作することができるようなタブレットがあれば、ページめくり等も自分で行うことができて、家庭や学校などにおける学習の幅も広がります。このように、障害のある児童生徒の中には、紙の教科書は不要で、デジタル教科書のみが必要という子供たちもいます。

そのように考えると、障害のある子供たちについては、第一義的にデジタル教科書の導入について、無償措置も含め、検討を行うということについて踏み込んでも良いのではないかと思います。

ただし、幾つかの点に注意が必要だと考えています。3点ありますが、1点目は、デジタル教科書のアクセシビリティへの配慮についてです。これはビューアについても、その操作が障害のある子供たちにとっても適切に可能であること、また、コンテンツそのもののアクセシビリティが確保されていることが必要になってきます。つまり、アクセシビリティの確保がまだらなものではなくて、全体的に確保されているという配慮の徹底が必要だと思います。

それから、2点目として、デジタル教科書と音声教材のすみ分けをどういうふうにするか、についてです。今現在、障害のある子供たちに対しては、音声教材という障害のある子供たちも利用できるようなデジタル教材が、私たちも含め、幾つかのボランティア団体から発行されており、オンラインで配信されています。デジタル教科書において、一定の障害のある子供たちのアクセスが確保されることは大きく期待されます。一方で、これまで特別支援における利用等の蓄積があったり、アクセシビリティの幅がかなり広く確保されていたりする音声教材というものが、選べなくなってしまうという状態になってしまうならば、デジタル教科書が導入されることで、障害のある子供たちの選択肢を狭めてしまうという結果になるかもしれません。それを防ぐために、音声教材の使用を妨げない、若しくは併用していくことを確保するような枠組みが必要だと思います。これは、可能であれば、事務局の方に法令上の附則の改正等をお願いできればと考えています。

最後、3点目として、教育指導そのものについてです。アクセシビリティの確保された教材があることで、教科書の内容に関しては、障害のある子供たちもアクセスができるようになると考えられますが、教育指導については、障害のある子も、ほかの子たちとともに学ぶということが、想定されるべきだと思います。つまり、教育指導上も適切な指導、若しくは指導上の合理的配慮というのは不可欠だと思うので、アクセシビリティが確保されたデジタル教科書の上手な活用と指導とのマッチングは、必ず意識されるべきであると考えます。

以上の3点について配慮した上で、例えばデジタル教科書が、障害のある子供には第一義的に無償措置されるという方向もあっていいのではないかと考えています。

【堀田座長】ありがとうございました。神山委員、お願いします。

【神山委員】今、近藤委員の言われたこと、非常に強く思います。アクセシビリティの保障について、ガイドライン等が設定されるべきだと思います。アクセシビリティを作り込み過ぎると、逆に使い勝手が悪くなることも考えられます。どこまでが基礎的環境整備で、どこからが個別的配慮、合理的配慮で対応していくべきかのライン設定ができるとよいと思います。

障害は個人差が大きいので、一律にデジタル教科書を導入することで学習が円滑に進むとは考えにくいと思います。ですので、その子の障害の特性に応じて、合理的な配慮の下での使用を認める、という方向を出せるとよいと思っております。

それから、最近、デバイスを使うような教育によって、新たな学習障害の子が出てきているのを目にします。紙によるアナログ的な学習では、何とか付いていけていた児童生徒が、多様なICT機器が入ってきて、学習に付いていけなくなったというような場面も、最近見られます。こういったデバイスやICT機器を使う学習というのは、子供たちのスタートラインが、ばらばらな状態なので、丁寧に導入していかないと、新たな学習の困難児ができてしまうかもしれないと感じています。

【堀田座長】非常に貴重な御意見、ありがとうございました。デジタル教科書と、現在ある教科用特定図書や音声教材との関係、それから、デジタル教科書のみを使用せざるを得ない児童生徒に対する使用義務等について言及いただきました。御意見を踏まえると、特別支援教育に対するデジタル教科書の記述をもう少し踏み込んで書き表したり、あるいは障害のある児童生徒の使用義務等に関する制度を少し緩和したりするといった方向も考えられるということかと思います。

続いて、五つ目の丸について、「関係者に対する理解の促進について」とあります。これは、先ほども申し上げたように、パブリックコメントの御意見は、中間まとめを読んでいだ上で頂いているという前提である一方で、どうしても制度を含めて様々なことについて、十分御理解いただきにくかった部分もありますし、先ほども言ったようにステレオタイプな思い込み等もあるかと思います。よって、頂いた御意見については実証研究も含めて丁寧にやっていくべきだと思いますが、まずは学校関係者と保護者、もちろん児童生徒から、幅広く理解を得るための方策等について、御意見がありましたらお願いします。これは教育委員会の役割も大きいかと思います。では、山内委員、お願いします。

【山内委員】資料2「中間まとめに対する意見聴取の結果」の9ページ、10ページに、「デジタル教科書の導入により懸念される影響について」とあります。そこに教育面、学習面での様々な不安というものが集約されているように思います。このような様々な不安に関する意見が寄せられて聞いている理由として、中間まとめの19ページと20ページの、指導者用「デジタル教科書」、「教員の指導力の向上等」に、デジタル教科書(教材)の使用や指導方法の重要性等については書かれていますが、この書き方が抽象的で、一般的な書き方かもしれません。ゆえに、資料2の15ページと16ページでの意見にあるように、思考力を本当に高められるのか、書いたり考えたりする機会が減ってしまうのではないか、即時的なフィードバックは思考力の発達を妨げるのではないか、気付きを促すような学習はできないのではないか、といった懸念が実際出てきているといえます。

そこで、中間まとめの20ページ「教員の指導力の向上等」について、教員の指導力の向上として、必ずしもデジタル教科書ばかりでやるのではなく、アナログによる学習の良さは残しながら、デジタルのいいところを使う、ということをもう少し分かりやすく具体的に書いていくことで、教育者、教育関係者、保護者への理解の促進につながっていくと思いました。

【堀田座長】ありがとうございました。毛利委員、お願いします。

【毛利委員】今、山内委員がおっしゃった内容そのものですが、教育関係者からの意見聴取だとしても、誤解があると言えます。デジタル教科書の導入を進めていく場合には、教育委員会がそれを進めていく訳ですが、デバイス以上に、教育委員会が必ず整備する必要があるのは、校内の無線LANや高速インターネット等です。それから、デジタル教科書の導入の前段階の整備は、デジタル教科書のあるなしにかかわらず、進めていく必要があります。先ほど事務局から御説明のあった実態調査においてもあるように、大きな地域差があるというのが現状です。情報化を進めるに当たり、その額が大きいために、教育委員会の予算として組み込めず、最終的には市町村全体の予算になることが多いようです。ですので、市町村全体の予算になった場合、首長部局や財政担当者等といった関係者の理解を得ずには、デジタル教科書を導入するための最低限の設備すら、導入がままならない状況になることもあります。そこで、つくば市の首長が中心になって、全国ICT教育首長協議会が設立されました。この協議会は、教育環境の整備について、先進的な取組を行っている首長、疑問を持っている首長等に参画していただき、本当のところはどうか、ということについて議論しようとしています。そのような場でも、デジタル教科書について取り上げてもらい、子供たちに必要な学習について正しく理解をしていただいたり、あるいは、中間まとめについての意見聴取をした団体に対しても、フィードバックをして理解していただくことも必要だと思います。デバイスだけ買ったとしても、デジタル教科書の導入は進まないわけですから、導入の判断を行う方々に、しっかり理解していただくことも必要だと思いました。

【堀田座長】ありがとうございました。先ほど天笠座長代理がおっしゃったこととも関係すると思いますが、理解の促進をどのようやっていくかという運動論的な話と、この中間まとめをどのように書き直せば理解の促進につながるかという話があるかと思います。もし、中間まとめの内容等ついて御意見があるようでしたら、頂きたいと思います。

それでは、中川委員、お願いいたします。

【中川委員】既に十分検討されたことかもしれませんが、企業が商品を世の中に出すときの対応が参考になればと思ってお話しいたします。パブリックコメントで頂いた御意見や、関係団体からの御意見を全部読み、懸念事項のような御意見を全部書き出してみると、おっしゃるとおり、ほとんど既に議論されていたり、中間まとめをもう少ししっかり読んでいただければ、理解いただけるはずの御意見がたくさんありました。企業では、御質問を頂く際には、その前に、まずこのQ&Aを読んでから、このQ&Aの中にないことを御質問くださいというようなニュアンスのサイトを作って、御質問を受け付けるようにいたします。何かの問題があって、行政がそういうことをしないのか分かりませんが、御参考までに、申し上げました。

【堀田座長】ありがとうございました。福田委員、お願いします。

【福田(孝)委員】これから申し上げることは文部科学省にお願いしたいことです。現在、佐賀県では高1から高3まで、私が勤めている武雄市では小1から小6、中1から中3まで、全学年において1人1台、端末を持ち、授業を受けています。私は、以前高校の数学の教員だったのですが、立場上、小中学校の授業を見に行くと、特に社会科とか国語科において気になることがあります。それは、従来の紙の教科書に掲載されていた、国宝等の写真が、デジタル化された教科書では掲載されていないことがあるということです。また、文章についても、差し替えてあることもあります。出版社からは、著作権の処理ができなかったため、という話を聞きます。これはデジタル化等をするに当たって、教育の質の向上や確保等を大前提に話をしてきたと思いますが、著作権ゆえに教育内容に制限が掛かるというのは、教育現場からすると、本末転倒なのではないかという気はしています。是非、著作権処理等については御検討いただきたいと思います。

【堀田座長】ありがとうございます。事務局、何かありますか。

【事務局】福田委員の御指摘は、ごもっともだと思っておりまして、中間まとめにおいては、デジタル教科書を紙の教科書と同じ内容が含まれているものという形で位置付けています。それに伴い、おっしゃったように著作権の話というのは問題になってくると思います。それについては、文化審議会での審議されることとなりますが、中間まとめで取りまとめいただいているように、必要な権利制限という形は必要ではないかと考えております。

【堀田座長】審議はスタートしていますか。

【事務局】まだでございます。

【堀田座長】ありがとうございました。尾上委員、お願いいたします。

【尾上委員】昨年、この検討会議において、小中学生の保護者を対象にアンケートをとらせていただきましたが、もし今年も同じようなアンケートを行ったとしても、結果は同じだと思います。実際のところ、保護者は、デジタル教科書の導入や学習指導要領の改訂等にあまり興味を持っていないのが現状でしょう。ですから、しっかりした方向性を示し、効果や影響、リスク等について伝えることが、一番大事だと思います。

【堀田座長】ありがとうございました。これについては、資料4の五つ目の丸の「その他」とも関係するかと思いますが、デジタル教科書の普及がもう少し進まないと、なかなか難しい部分もあるのかなと思いますので、少し時間がかかることもしれません。

五つ目の丸の「その他」のところに羅列的に書いてあり、今日は十分に審議する時間がありませんが、どの項目も重要なものです。不登校の児童について、情報端末を共有する場合について、デジタル教科書における教科書と教材の表示上の区分けについて、クラウド上のいろいろな権利の問題について、等があるかと思います。教科書採択に与える影響について、デジタル教科書の活用の仕方について、等の論点もあるかと思います。また、教員に求める資質・能力、今後更に重要な論点になると思います。神山委員から、特別支援の文脈において、ガイドライン等の検討が必要だということについて、御意見いただきましたけれども、教員がデジタル教科書を用いる授業方法に関するガイドラインといった方向性も含めて、モデル化が必要だと思います。

以上のように、様々な論点が含まれている、五つ目の丸、「その他」のところについて、御意見のある方はお願いいたします。それでは、東原委員、毛利委員の順番でお願いします。

【東原委員】資料2の3ページの中ほどにグループでの使用についての意見が、資料4の五つ目の丸、「その他」の二つ目のぽつに共有の話があります。これに関して、まず一つ目に、全ての児童生徒が専有できる情報端末が整備されていなくても、使用時にクラス全員が1人1台情報端末を利用できる環境が整備されていれば、教科書という位置付けでよいと思います。一方で、グループ、例えば4人に1台しか情報端末が用意できない場合には、それは副教材の位置付けであって、教科書ではないと考えます。教科書と副教材の整理はしっかりとした方がよいと思います。しかし、副教材として活用することは教育上、大いに意義がある、といった見解を明確に出した方がよいと思います。つまり、グループで情報端末を使用する環境では、あくまでも教科書としての扱いではない、ということは明記しつつも、情報端末の使用自体については制限をかけないようにすべきだと思います。

二つ目に、資料4の4ぽつ目のクラウドに関する項目について、資料2の14ページの下部に「クラウド形式によるデジタル教科書の使用にも耐え得るだけのネットワーク環境」に関する御意見があります。しかし、中間まとめでは、クラウドという言葉は、デジタル教科書の部分ではなく、デジタル教材の部分において使用されています。また、現状を鑑みますと、クラウド上でデジタル教科書を使用するというのは少々無理があると思います。一方で、将来の環境整備や技術の発展のことを考えると、現段階においても、クラウドの利用に関して今後検討の可能性があるということを書いた方が良いと思います。さらに、資料4の下から三つ目のぽつの配信形式について、デジタル教科書は、紙の教科書と同一性があるので、紙の教科書が少しずつ改訂されるのに伴い、デジタル教科書も更新されると思います。更新の際に、その配信はクラウドからの方がうまくいくと思います。そのような観点からも、クラウドの利用については今後の可能性を残しておくという明確な記述があると良いと思いました。

【堀田座長】ありがとうございました。毛利委員、お願いします。

【毛利委員】デジタル教科書の採択については、中間まとめに記載されているとおりだと思いますが、資料2の11ページに、教科書そのものの採択への影響に対する懸念に関する御意見があります。採択する地区によっては、新しい試みのために迷ってしまうこともあると思うので、文部科学省等が、一定のルールのようなものを示すとよいと思います。

それに伴って、デジタル教科書を使用するかどうかは、教育委員会の採択によるものだと思いますが、現場にいる子供の、状況や場面に応じて、使用についての裁量を学校自体にも与えるなど、緩やかな部分もあってもよいと思いました。そういったところの判断基準等についても明記するとよいと思います。

【堀田座長】ありがとうございました。ほかに何か特段御意見ございますか。では、近藤委員、お願いします。

【近藤委員】まず、外国人と不登校の児童生徒のことについて申し上げます。外国人と不登校の児童生徒のデジタル教科書の利用については、二つの側面があると考えています。外国人の児童生徒については言葉の壁が、不登校の児童生徒については教育の空白がありますが、このような学習空白等に対して、デジタル教材があることで、より高い教育効果のある個別教育を導きことができ、また、学習の苦労を減らせるという大きな効果があることを、まず強調しておくべきであると考えます。

また、私たちは、不登校の子供たちを支援するROCKET(ロケット)というプロジェクトを行っており、毎年、600名ぐらいずつ応募があります。その子供たち600名に対して、我々が、読み書きアセスメントを行ったところ、25%程度の子供たちが、読み書きが困難であるというデータが出ています。一方で、平成24年度に文部科学省が行った、読み書きのアセスメントに関する調査報告によれば、通常の学級には、読み書きに困難のある障害が疑われる児童生徒が2.5%程度いる、というデータがあります。文部科学省の報告と我々の調査を比較すると、不登校の子供たちの中には、およそ10倍の割合の子供たちが、読み書きの困難を背景に持っている可能性があると言えます。

外国人と不登校の児童生徒の中で、学習にアクセスできていないという問題のその背景には、障害から来る困難があるということです。今後、デジタル教材や音声教材、紙の教材等、教材の多様化が進んだときに、そうした子供たちにどのような適切な教材を適用するかのアセスメントが、非常に重要になってきます。ところが、現在、学級において読み書きのアセスメントはおよそ行われていません。知能検査は行われているものの、読み書きの力が分からない検査になっています。よって、読み書きの力がどの程度かというアセスメントを行って、デジタル教科書を含む多様な教材を適用していくという指導の枠組みを作っていく必要があると思います。

さらに、特別支援教育への適切な接続も必要ですし、デジタル教材、紙の教材によってサポートできない外国人、不登校の子供の場合はもちろん、音声教材等の併用なども含めて、多様な可能性を検討する必要があると考えています。

以上が外国人と不登校の児童生徒についてです。あと一つ、動画と音声等に関する検定の要否というところで、一言だけ申し上げておきたいことがあります。今後、検定の要件の一つとして、障害者差別解消法に基づいて、動画についても、アクセシビリティの保障について何らかの形で盛り込まれるべきだと思います。例えば、視覚障害のある子供たちは、動画のみで説明が行われると、何が説明されているのか分からないので、音声による説明等の付加等、オーディオディスクリプションと呼ばれるアクセシビリティの保障について考えていただきたいと思います。同様に、聴覚障害のある子供たちは、音声のみの説明では、何が説明されているのか分からないので、書き起こされたものが同時に提供されるように、アクセシビリティの保障がされるべきです。

【堀田座長】ありがとうございました。貴重な意見をたくさん頂きました。今日は時間の関係もありますので、ここまでとさせていただきます。この後、事務局から今後のスケジュールをお伝えいただきます。先生方、もし御意見が更にありましたら、いつまでというのは事務局に任せますが、急ぎ御要望いただきまして、次回の会議に備えるという形にさせていただきたいと思います。

それでは、次回以降のスケジュールにつきまして、事務局より説明をお願いします。

<事務局より資料5について説明>

【堀田座長】今日は時間が過ぎてしまいまして、大変申し訳ございませんでした。本日はこれで閉会にしたいと思います。お忙しい中、御協力いただきましてありがとうございました。

最終まとめに向けまして、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課