「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第3回) 議事録

1.日時

平成27年7月21日(火曜日)14時30分から17時まで

2.場所

文部科学省3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2 中央合同庁舎7号館東館

3.議題

  1. 関係団体からのヒアリング(デジタル教科書教材協議会(DiTT)、一般社団法人全国教科書供給協会、CoNETS、全日本印刷工業組合連合会)
  2. 意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

堀田座長、天笠座長代理、新井委員、井上委員、尾上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、毛利委員、山内委員、若江委員

文部科学省

徳久大臣官房総括審議官、伯井大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、浅田大臣官房総務課長、望月初等中等教育局教科書課長、黄地教科書課教科書企画官、宇高教科書課課長補佐、豊嶋生涯学習政策局情報教育課長、新津情報教育課情報教育振興室長

オブザーバー

【デジタル教科書教材協議会(DiTT)】中村伊知哉副会長
【一般社団法人全国教科書供給協会】森仁副会長、田中秀毅業務研究委員長、三ヶ田剛上席局長
【CoNETS】小泉茂事務局長、松渕辰生様、曽川誉章様、二宮康様
【全日本印刷工業組合連合会】島村博之会長、生井義三専務理事

5.議事録

 【堀田座長】 定刻となりましたので、ただいまから「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第3回会議を開催させていただきます。 

本日は、四つの関係団体からヒアリングを行った後、意見交換を行いたいと思います。今回は報道機関等から写真撮影の希望を頂いておりますので、各団体からのヒアリングの冒頭のみ許可したいと思います。

なお、本日は近藤委員と福田純子委員が所用により御欠席です。

議事に入る前に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

【事務局】 本日の資料について、資料1から資料4が各団体の資料です。資料1がデジタル教科書教材協議会の「デジタル教科書の動向と対応」、資料2が一般社団法人全国教科書供給協会の「教科書供給業務の概要について」、資料3がCoNETSの「デジタル教科書の共通プラットフォームの開発」、資料4が全日本印刷工業組合連合会の「デジタル教科書に対する考察」です。資料5が第2回の検討会議の主な意見についてまとめたものでございます。資料6は座長に作成いただいたもので、「『デジタル教科書』に関する今後の検討の視点について」、資料7として「今後のスケジュール」を配付させていただいております。

 また、参考資料として、第2回の議事録を配付しておりますが、委員の皆様に御確認いただいておりますので、特段問題がなければ文部科学省のホームページに掲載させていただきます。

 そのほか、机上配付資料といたしまして、紙ファイルに第2回までの会議の配付資料をまとめております。

【堀田座長】 ありがとうございました。

 それでは、早速議事を進めさせていただきます。議題1、関係団体からのヒアリングといたしまして、最初に、デジタル教科書教材協議会(DiTT)から御説明を頂きたいと思います。本日は、同協議会副会長の中村伊知哉慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授にお越しいただいております。

 本日のヒアリングの流れですが、約15分で御説明いただき、その後、質疑応答の時間を15分程度取らせていただきたいと考えております。1団体30分程度を予定しておりますので、御協力をお願いいたします。四つの団体からヒアリングを行った後、総合的な議論をしたいと思います。

 それでは、中村副会長、よろしくお願いいたします。

【中村副会長】 デジタル教科書教材協議会から参りました中村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 皆さんのお手元には資料をお配りしてあるかと思いますが、スクリーンの方で説明をしていきたいと思います。

全ての小中学生がデジタルの環境で勉強できるようにしましょうということで、私たちデジタル教科書教材協議会、DiTTと書いてディットと呼んでいるのですけれども、今から5年前の2010年に設立いたしました。元東京大学総長の小宮山宏さんに会長を務めていただき、私が事務局長を務めておりまして、約90社の会員企業や各地の自治体、学校と連携し、実証や実験などを進めております。

 2ページ目ですが、実証実験や普及啓発に加えて提言も重ねてきましたので、幾つか紹介します。

私たちは、発足当初、一人一台の情報端末とインターネット環境、そして、全ての教科の「デジタル教科書」の整備を目標に据えました。しかしながら、2015年という目標は性急に過ぎるのではないか、という批判も頂いておりました。

 3ページ目を御覧ください。3年前には、「デジタル教科書」を正規化するための制度改正を提言しました。これにもかなり反響はあったのですが、提言しているだけでは動かないだろうということで、国会議員、政府の職員、法学者、弁護士、経済学者、そして教育関係者から成るチームを作り、法案も用意しておりました。

 4ページを御覧ください。一方で、このテーマは、我々DiTTだけではなく幅広い国民運動にしなければならないのではないかということで、有識者の方々、産業界のリーダー、更に全国の自治体の首長に呼び掛けて、提言を発出しました。過去2回、2012年と昨年末の2回、提言を出しておりますが、いずれも「デジタル教科書」を正規化する制度改正を求めるものでございました。前回のステートメントでは、70を超える首長が賛同を寄せてくれました。機運は高まっていると感じております。

 5ページ目です。DiTTは、先月も「教育情報化推進法」の制定を求める提言を発出したところです。このような運動もあり、この1、2年で状況がとても動いていると感じております。例えば自治体については、佐賀県武雄市、大阪市、東京都荒川区、岡山県備前市などは、2015年、つまり今年には、域内の全中学生にタブレットを配備する計画であり、我々が2015年を目標にしたのもあながちむちゃな話ではなかったのだと感じています。リーダーのやる気に左右されているということです。

 6ページを御覧ください。文部科学省の資料によると、タブレットの導入に取り組んでいる自治体は158にのぼり、全国の1割に近づいておりますので、間もなくいき値を超えるのではないかと感じております。昨年、同じく文部科学省は教育のIT化に向けた環境整備4か年計画を発表しました。これは各地の地方自治体に地方交付税として計上されている予算を使って執行しましょう、推進しましょうという策です。国会も動いています。与野党の超党派から成る議員連盟が今年の2月に発足し、オリンピック担当大臣に就任された遠藤利明衆議院議員が会長を務めておられます。こちらも2020年を目標に前に進めていただければと思っているところなのですが、これに対する民間によるアドバイザー会議が設けられておりまして、堀田座長も参加しておられますけれども、私が事務局を仰せつかっておりまして、政治・産・学で進める体制が整ってまいりました。

 さて、7ページを御覧ください。もちろん政府も動いています。知的財産推進計画では、私たちが提言した3年前、2012年に、法的な位置付け、検定制度、著作権制度の三つの課題を検討するという約束がなされました。しかしながら、その後3年間検討は開始されず、ようやく今回、この会議の開催に至っていると認識をしております。先月のことですが、安倍総理大臣以下全ての閣僚が参加する知的財産推進本部の会合がございまして、今年の知的財産推進計画が発表、策定されました。私はこの知的財産推進本部の座長も務めておりますので、この会合にも参加してきたのですけれども、来年度までに結論を得て、措置を講ずるということが政府として決定しております。

 こうした知的財産コンテンツ、つまり教材だけではなくて情報端末やネット、つまりITの政策としても、一人一台、2010年代に進めるということが既に閣議決定しております。

 8ページ目です。もちろん、民間の対応も進んでいます。子供向けのタブレットがこの2年で続々と登場しておりますし、ベネッセさんをはじめとする民間企業によるタブレット学習サービスも拡充しています。後ほど「デジタル教科書の共通プラットフォームの開発」というテーマでお話されるCoNETSも発足しております。

9ページを御覧ください。しかしながら、日本は遅れております。これは総務省の資料ですが、OECDの調べによると、日本の教育現場でのICT活用が諸外国に大きな後れをとっているということです。ショッキングな報告です。

 10ページを御覧ください。端末の普及率もショッキングな後れを見せています。もはや議論の段階ではなくて、いかに実行するかの段階に来ているのではないかと私は感じております。

 最後に、11ページです。これはDiTTの見解というよりも、私見です。5年間の活動を通じて私たちが一番多く受けてきた指摘は、情報化のメリットは何かというものでございました。これについては、もちろん何度も説明を繰り返してきたのですが、これに関して、私自身にとって一番ショックだったのは、韓国を訪問したときのことです。韓国の学校の先生方に同じ質問をしてみました。すると、韓国の先生方はけたけた笑いながら、またその質問ですか、日本の方は皆さんそれを聞きますね、と言われました。そして、それを聞くのは日本の方だけですね、という反応でした。パソコンやインターネットが普及して20年になります。メリット・デメリット論などはもうとうに終わっていて、いつまでにどのように普及させるかという認識であるとの答えでした。私もそのとおりだと思ったのですが、それは3年前のことです。

 検証や効果はどうなのか、ということもよく聞きます。私は、既にいろいろなデータはあると思っております。文部科学省も実証研究を重ね、手元にある様々なデータを踏まえて専門家の皆さんが議論され、学習意欲、理解度、思考力にプラスであるといった総括をしておられます。私もそうだろうと感じております。ICTを使えば理解度が向上したという文部科学省の研究成果も出ておりますが、内容は省きます。また、総務省が一人一台のタブレット端末を導入した小学校で調べたところ、子供たちは、楽しい、分かりやすいと回答したという報告が上がってきております。

 もちろん、効果の検証は全く十分ではなく、これから50年でも100年でも続ければ良いと思います。今の紙の教科書でも、学習効果の研究というのは続いているわけですから。しかし、いつ、どのように導入するかということは、それとは別に決めなければならないと思います。国や関係者はその決断の責任を負っているのだと思います。昔、もし為政者や先生方が黒板と紙と鉛筆の導入を進めていなかったら、海外がどうあれ、今も我々は和紙と筆で勉強していたのかもしれません。逆に、教科書だけ紙であることのメリットは何なのかということを問うべき場面に来ているのではないかと思います。映画もテレビも音楽も、そして雑誌も新聞も、通常の書籍もデジタル化が進んでいます。パソコンとインターネットが使えなければ職に就けない社会になっています。その中で、教科書だけが紙であり続けることのメリットを証明しなければいけない時期に来ているのではないかと感じています。

 紙とデジタルを併用するのか否か、どの科目が適しているのか、どの学年からが良いのかという質問も受けます。これに関して私に定見はありません。定見はありませんが、感想だけはあります。スライドの左側の写真は、一人一台のタブレット端末を導入しているある小学校の様子なのですが、紙の教材を見つつタブレットを操作し、それを紙のノートに起こして電子黒板で共有をするという作業を、先生方が指示するまでもなく、子供たちは自然に併用して進めております。スライドの右側は体育、縄跳びの授業の様子なのですが、跳び方や協調作業を映像で撮ったり示したりしていて、実にうまく使っています。学年にしても、中高生がうまく使うであろうことは想像できるのですが、低学年の親の方がデジタル世代であり期待が高まっております。つまり、今は過渡期だと思うのですけれども、現場主導で柔軟に考えて良いのではないかと私は思っています。

 結局、いろいろと論じておりますと、問題はコストなのだと思います。情報化にはもちろんお金が必要です。日本はGDPに占める公教育の支出がOECDで最低、つまり公教育にお金を掛けていない国です。私は、ここに投資すべきだと思います。例えば、年間1,000億円の追加予算、追加支出が必要だとして、これを高いと見るのか安いと見るのか。かつて、日本の道路予算は10兆円ありました。年に数日道路工事を休めば教育が一変するという規模です。これは、教育政策だけではなく、国家政策全体の中で捉えなければ解がないのではないかと思っています。

 最後に、教育の情報化に対しては、授業が画一的になる、読まなくなる、書かなくなる、目が悪くなるなどいろいろな心配、不安が寄せられますが、そのほとんどはアナログかデジタルかの問題ではないと感じています。紙の本であっても読ませなければ読まなくなりますし、私は目が悪いのですが、これはパソコンのせいではなく、紙の本のせいです。アナログでもデジタルでも、使い方、教え方によって影響は変わるということだと思います。つまり、問題は、デジタル化によって教育が大きく変わりそうだということに対する漠然とした不安感ではないかと思います。これを解消して豊かな教育を実現するためには、まずは導入し、広め、先生方や子供たち、あるいは保護者たちの理解を得ていくことが大事なのではないかと考えます。

 私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【堀田座長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いします。時間は約15分です。では、毛利委員。

【毛利委員】 御説明ありがとうございました。

10ページの参考2、海外におけるICT環境の整備に関して、教育用PC整備率はよく分かるのですが、海外の「デジタル教科書」の形状・形態について御存じでしたら教えていただきたいと思います。

【中村副会長】 申し訳ありません。私たちはその情報を持っておりません。諸外国における「デジタル教科書」又はデジタル教材の整備状況はどうなのということを文部科学省に何度か聞いたことがありますが、それぞれの国により制度や位置付けが違うということもあり、統一的な比較は難しいという説明を受けております。各国調査、現状把握も非常に重要なテーマになってきていると思っておりますので、私たちも協力しながら、きちんとしたデータを共有して議論が進むようにしたいと思っているところです。

【堀田座長】 ありがとうございました。

 それでは、天笠委員。

【天笠座長代理】 御質問させていただきたいのは、これまで蓄積してきた校内研究の文化や授業研究を取り巻く風土についての御意見です。どういうことかと言えば、我が国における校内研究に対する海外からの評価は高いと聞きますし、私もそのように認識しております。そのような校内研究の方法や、それを支える教員、あるいは学校の研究風土、文化というものは、ある意味では、教科書が中核となって築かれてきたのではないかと思っています。先ほど御説明いただいたことも分からなくはないのですが、紙媒体の教科書が築いてきた我が国の授業研究の風土や授業のやり方について、どのように認識されていらっしゃるのでしょうか。それらを全部、デジタル化によって一掃するという立場で御説明されているのかといったことについて、お考えを聞かせていただければと思います。

【中村副会長】 私も、日本の学校現場におけるこれまでの様々な取組、そして、先生方の能力、情熱といったものは、世界トップクラスではないかと思います。すばらしい技術、文化を作ってこられているのだと思います。先ほど日本の教育現場のデジタル化、ICT化が後れているというデータをお示ししましたが、まさに、これまで100年以上培ってきた学校現場のすばらしい文化、体系といったものがあるからこそ、大きく変わるインセンティブが乏しかったのではないかと思っております。

 教科書をデジタル化することと、校務も含めてあらゆる学校での仕事をICT化していくことは必ずしもリンクできるものではないと思います。しかし、少なくとも、これまで培ってきたすばらしい文化が、ICTを使えばより大きく高い方向に進化をすることができる、また、全国の先生方の力をもっと発揮できるようにできる、あるいは、それぞれの先生方が研究して作り出してきている教材などを共有しやすくできます。ICTは単なる道具ですので、道具の使いようによっては、良い方向に向けることができるのではないかと思っています。

 もう1点言いますと、当初、私たちが活動を始めた際、君たちは紙の教科書をデジタルに置き換えるということをやろうとしているのか、と問われたことがあります。我々の主張としては、一切そのようなことはありません。紙には紙の良さがあり、ICTにはICTの良さがあるので、お互いにとってより良い環境を整備し共存していけば良いと思います。ただ、それはいつまでなのかという問いもよく受けたのですが、それは我々DiTTがいつまでと決めることではなく、それこそ現場の先生方、子供たち、あるいは保護者の方々が使う中で、長い時間を掛けて決めていけば良いのではないかという議論をしているところです。

【堀田座長】 ほかに御意見はございますか。若江委員。

【若江委員】 御説明ありがとうございました。

 5ページにまとめていただいていますように、DiTTさんは、デバイス、ネットワーク、コンテンツの三つについて目標を掲げていらっしゃいます。先ほどの天笠委員の御質問に対する回答でも言及されていたと思いますが、やはり先生方がうまく使っていただいてこそ初めて価値がある一方、9ページのデータにもありますように、日本では利活用率が低いという現状があります。上記の三つに加えて、「デジタル教科書」を使用する場合のカリキュラムや教員研修についてのどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

【中村副会長】 我々が協議会として主張している端末、ネットワーク、教材の整備というのは、飽くまで道具をそろえましょうということであり、実際にこれらが先生方にどのようにお使いいただけるのか、お役に立てるのかを考えるには、現場の皆さんと一緒に検証したり、改善を加えたりといったフィードバックにかなり力を入れて進めていかなければなりません。我々は民間企業の集まりではございますが、民間企業と学校現場との連携で進めるということをやっております。

 同時に、先生方からのフィードバックを全国の先生方に共有していただくということも大事だと思っておりまして、全国の、この分野に熱心な約100名の先生方に参加していただき、やっていることを教えていただいて、デジタル教材の改善すべき点も厳しく御指摘いただき、返すという繰り返しをしているところです。

 ただ、もっとそれを広げ、その他の先生方にきちんと使っていただけるように支援することや、ICTの整備を補助することも重要だと思っているのですが、それは我々協議会だけでできる話ではないと思っていますので、他の団体や政府、自治体の皆さんと相談しながら、コストの充実などを図ってもらえないかとお願いしている段階でございます。

【堀田座長】 ほかにいかがでしょうか。高梨委員。

【高梨委員】 若干補足させていただきます。荒川区では、小中学校にタブレット端末を入れているのですが、先ほど天笠委員や若江委員がおっしゃったように、どうやって授業を組み立てたら良いか試行錯誤しております。ただ、このことは、タブレット端末の導入やデジタル化をしないことの要因にはならないであろうと思っています。現在、荒川区でも、教員が自主的に校内研修会を行い、また、校内研修会というほどではなくても、就業時に自主的に集まり、タブレット端末の使い方についていろいろな検討をしています。新しいツールを活用する当初は、いろいろと試行錯誤しながらやらなければならないところがありますが、「デジタル教科書」の良さをより生かした形で、生徒がより理解しやすくするための、発展期・準備段階なのではないかと思っています。

【堀田座長】 補足をありがとうございました。

 私からもお伺いします。

 この会議体は文部科学省の教科書課が主催しているという状況を考えたときに、教科書という言い方に非常にセンシティブなところがあります。DiTTさんの考えている「デジタル教科書」とはどこからどこまでを言っているのか、端末まで含むのかなどについて、今一度正確に表明いただければと思います。

【中村副会長】 「デジタル教科書」を協議会の中で正確に整理し、定義したことがありませんので、私個人の認識なのですが、冒頭で「デジタル教科書」と端末とネットワークと分けて申し上げましたとおり、端末と、ネットワークと、教材、つまりコンテンツは別物なのだと認識しております。

 それから、当初、座長がおっしゃったように、ネーミングについてひともんちゃくございました。最初、デジタル教科書協議会ということで発足をさせようとしたのですけれども、「デジタル教科書」なるものはこの世の中にあるのかという質問もあり、「教材」と入れたという経緯もございました。その認識は、実は正式には「デジタル教科書」なるものは存在していないのであろうということです。つまり、法律上の定義で言う教科書の中に、デジタルの教材というものは、紙の教科書をデジタル化したものであっても存在していないというところです。これから活動を進め、広がったところでデジタルも教科書として正規化され、制度の中に組み込まれて、ようやく「デジタル教科書」というものが出来上がるであろうということで、私は、世の中にあるのはデジタル教材であり、それを学校現場でお使いになっているという認識であり、「デジタル教科書」は目標として掲げていると考えていただいた方が正確かと存じます。

【堀田座長】 ほかにいかがでしょうか。山内委員。

【山内委員】 大変まとまった発表をありがとうございました。

今、デジタル教材と「デジタル教科書」というお話が出ましたが、教科書となった場合には、学ぶ内容と、その質が検定などによってきちんと保証されたものというものであり、一方、デジタル教材は、チェックのようなものは通っておらず、学習に寄与するものであれば何でもデジタル教材と言えるのではないかという気もするのですが、中村先生が「デジタル教科書」とデジタル教材というような住み分けを考える場合、違いとして、質的・内容的な保証のほかにはどのようなものが考えられるでしょうか。

【中村副会長】 これも私たちの中で随分議論がありまして、例えば紙の教科書をPDFにしたものが制度に組み込まれたら、それも「デジタル教科書」と呼ぶのかという議論がございました。それも「デジタル教科書」と呼ぶのでしょうが、それによって教科書の質、あるいは教育の質が高まるかというと若干疑問がございます。紙の重さを軽くするという効果はあるかもしれませんが、それ以上のものではないということで、デジタルあるいはICTの良さを生かして、紙ではできないような性能を持ち、かつそれが制度的にきちんと整理をされて、検定なども制度的にクリアされ、措置されたものを「デジタル教科書」と呼ぶことになるのではないかと感じております。

【堀田座長】 ほかに御意見ありますでしょうか。金子委員。

【金子委員】 このようなやりとりにはよく出会うのですが、このようなことを進めようとすると、それに対する不安というのは必ず起こりますが、推進しようとする方と、それを止めようとする方の持っているイメージが全然違うことがあります。先ほど中村先生のお話の中で出てきましたが、デジタル情報機器を持っている中でも、ノートを使ったり、鉛筆を使ったりという様々な活動の中でデジタル機器も使っているわけであり、そういったイメージで推進するのだと思います。

しかし、反対する方、不安に思う方は、教育活動や教師、生徒が「デジタル教科書」に制約されるのではないかというイメージを持ちやすく、特に教師の場合はそうだと思います。そのような、0か1かという極端な考え方ではなく、推進する方も、いかにしてそれを自然な形で推進していくかということを考えているわけですので、不安に思う方もそのようなことを理解していく必要があると思います。

 私自身、学校の中で推進する方ではあったのですが、学校の中には教師の都合があり、その一方で生徒の未来があります。これは対抗するものではないと思うのですけれども、今の学校には全国から見学者がいらっしゃるのですが、話を聞くと、教師の都合の方が非常に肥大化しているのではないかと感じます。生徒たちの未来が余り考えられていないのではないかとも考えます。ですから、余りにも教師の不安といったものにこだわり過ぎるのも、結果的には余り良くないのではないかと思います。

【堀田座長】 実際に実践を進めていらっしゃる方だからこその意見だと思います。ありがとうございます。

 続きまして、次の御説明をお願いしたいと思います。続いては、一般社団法人全国教科書供給協会から森仁副会長、田中秀毅業務研究委員長、三ヶ田剛上席局長にお越しいただいております。それでは、森副会長、よろしくお願いいたします。

【森副会長】 全国教科書供給協会の森でございます。私たちの業務について概略を申し上げたいと思います。法律上、教科書発行者は、教科書を各学校まで供給する義務を負っております。しかし、教科書発行者自身が各学校まで確実に教科書を供給することは、事実上困難です。そこで、全国で53社の教科書一般書籍供給会社が各発行者と教科書の供給契約を結び、全国3,100店の教科書取扱店を通じて、学校までの供給を行っています。その統合組織が一般社団法人全国教科書供給協会であり、昭和23年に設立され、現在に至っております。

 私たちの使命は、御承知のように、教科書の完全供給にあります。教育は、法の下に平等の精神で国家が責任を持って実施しているものです。機会は平等でなければなりませんが、結果は必ずしも平等とは言えません。私たち教科書供給協会は、機会平等の精神に基づき、供給事務及びその作業を現場において実践している部隊であると自負しているところです。

 私見ですが、現在の法制度は、御承知のように検定、採択という仕組みをもって児童生徒の人権と平等の精神を厳守した形での教科書制度であると思います。教育の現場を一番熟知していると自負している私たちは、教育効果を得るためにはICT教育は大いに必要だと思いますし、実際にいわゆる「デジタル教科書」を教材として有効活用されていることについても、納品やインストールの点でお手伝いさせていただいております。

 さて、完全供給とは、全国、離島へき地であっても、必要な教科書を必要とする児童生徒に、その必要な時期に届けることです。新学期は当然ながら、学期途中の転入生にも迅速な供給体制で臨んでいるところであり、国の無償制度にのっとり、需要集計、需給調整、納入教科書の集計業務まで行っております。また、高校用や教師用、あるいは紛失教科書、一般の方々への有償教科書の供給も私たちで行っておりますが、何より災害時におけるり災教科書の補給も大事な業務です。先の東日本大震災の折には、新学期直前にもかかわらず、文部科学省、発行者の協力の下、50万冊に及ぶ毀損教科書の普及を行いました。現在の教科書制度の中で、こと供給に関してはほかでは決してできない組織機構であると、誇りを持って業務に専念しています。

 以上で概要の説明とさせていただきます。詳細は田中から御説明申し上げます。

【田中業務研究委員長】 それでは、今、森副会長から概略の説明がありましたけれども、詳細について御説明させていただきます。

 まず、冒頭で話もありましたけれども、法律上の供給の責任について御説明させていただきます。スライドの2ページを御覧ください。教科書の発行に関する臨時措置法第10条第2項において、「発行者は、教科書を各学校に供給するまで、発行の責任を負うものとする。」と規定されており、法律上、教科書発行者が学校までの供給の責を負っております。

 3ページを御覧ください。供給先については、平成26年度の学校基本調査のデータによりますが、小学校約21,000校、中学校約11,000校、高等学校約5,000校、特別支援学校は約1,000校ということで、全国約3万7,000校です。児童・生徒数は約1,360万人、教員数は約100万人です。 

4ページを御覧ください。実際の供給の仕組みですが、法律上は、供給先である3万7,000校の学校に教科書発行者が直接お届けすることになりますが、事実上不可能ということで、発行者が全国に53社ある教科書供給会社と教科書供給契約を結び、実際の供給をしております。また、教科書供給会社も、域内の教科書取扱店3,100店と供給契約を結び、学校への供給を行っています。

 5ページにお示ししているのは、実際の教科書の扱い量です。小学校は年間に約6,300万冊、中学校約3,400万冊、高等学校約3,100万冊、特別支援     学校約6万冊ということで、トータルで約1億2,700万冊です。

 6ページを御覧ください。第1回の検討会議で教科書課から御説明があったと思いますが、義務教育諸学校の場合、広域採択制度をとっており、採択の組合せは多種にわたります。平成27年4月現在、採択地区は580地区です。国立や私立の義務教育諸学校や、中等教育学校等では、学校単位の採択が可能になっておりますが、平成26年度の学校基本調査では上記の該当校が小学校294校、中学校966校ということで、小学校では、採択地区数の約1.5倍の組合せがあります。中学校も同様に考えると、採択地区数の約3倍もの採択の組合せが発生しているということになります。

 また、近年、発行者ごと、実際の学校の種目、学年ごとに発行形態が複雑になっております。教科書に特色を出すということで分冊形態も多様化し、給与もかなり複雑になってきているというのが現状です。

 7ページを御覧ください。供給業務の一つのポイントは、新学期の需給調整です。実際に新学期にどのくらいの児童生徒が動くかということはなかなかデータ化されていないので御紹介しにくいのですが、お示ししているグラフは総務省の住民基本台帳のデータです。全体の人口の移動がほぼ児童生徒の移動に比例しているであろうということで、御参考までに掲載しています。飽くまで全体の人口ですので、児童生徒の移動ではないということは御注意いただきたいと思いますが、やはり3月、4月に集中していることが分かると思います。年間の人口移動は500万人であり、人口比で言うと4%ですので、児童生徒も約4%が年間に移動すると考えていただいて結構だと思います。更に、3・4月の移動シーズンに移動人口の約3分の1が移動することになります。第1回の検討会議における御説明でお話があったと思いますが、例年、夏ぐらいに、各学校が需要数の報告を出されるのですけれども、1年前の夏に比べるとかなりの変動があるということになります。実際に使用する直前である新学期時期には更に変動があるということで、実際に学校が始まる前、特に始業式や入学式の時期に、教科書が確実に児童生徒の手元に届くよう、新学期の需給調整にかなり苦労しています。

 8ページをお開きください。義務教育段階の教科書は無償給与されるため、お届けするだけではなく、事務処理作業も発生します。新学期時期には、先ほどのグラフでお示ししたとおり、かなりの変動がありますので、数回にわたって納入指示や返付指示、転出によるキャンセル等が発生します。最終的にお届けした冊数を集計することになりますが、学校の設置者が名簿をベースに作成した受領報告書と実際に登録した冊数を合わせ、集計した上で、本来供給義務のある発行者に御報告を差し上げています。

 続いて、9ページです。今、新学期のお話をメインにさせていただきましたが、7ページのグラフでお示ししたように、年間を通じて転入生が発生します。学年の中途で転学した児童生徒については、転学先で前の学校で使っていなかった教科書は新たに無償給与されますが、転学児童生徒への給与は年間で約70万冊です。転学の対応は推定で1校当たり5、6回であり、全国で毎日約1,000件の対応をしていることになります。実際の転学数は約20万人ということです。

 10ページを御覧ください。副会長からの話にもありましたように、紛失や教師用の対応、一般の方の需要への対応もさせていただいております。紛失や教師用の場合には当然有償になりますが、有償での販売もさせていただいています。また、学校で使われる場合だけではなく、大学の教育実習生や一般の方でも、是非教科書で勉強したいという方は数多くいらっしゃいますので、そのような方のニーズにも対応させていただいております。当然、紙ベースの場合、乱丁もありますので、そのようなものの回収・交換等も対応させていただいております。

 11ページは災害対応についてです。地震や風水害など、大規模自然災害で滅失・毀損した児童生徒用の教科書も、学校や教育委員会や発行者の方々と綿密な連絡をとって、授業に支障が出ないよう速やかに供給しています。先ほど東日本大震災の話も出ましたが、平成7年の阪神・淡路の場合が約33万冊です。東日本のときは約50万冊ということで、大きくこの二つの震災が目立っておりますけれども、それ以外の年にも、風水害等で災害対応をしております。毎年、約8,000冊の災害対応が発生しています。

 また、委員の中には特別支援教育関係の方々もいらっしゃると思いますが、法律上、特別支援学校や特別支援学級では、文部科学省検定済教科書や文部科学省著作教科書以外の教科用図書を使用することが可能です。学校教育法附則第9条のことですが、これらは一般図書と呼ばれておりまして、書店等で売っている絵本等の一般書籍を、特別支援学校・学級の児童生徒の個々のレベルに合わせ、各学校で御判断されて使うことがあります。個々のレベルに合わせて使用されるので点数が多く、約3,700種類、45万冊です。なお、検定済教科書の種類はその10分の1程度、冊数は約200倍です。

 特別支援学校・学級に関連して、拡大教科書の対応もさせていただいております。従来、拡大教科書や点字教科書は、一般図書として特別支援学校や特別支援学級において無償給与されていましたが、平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の施行に伴い、小中学校の通常学級に在籍する弱視の児童生徒に対しても拡大教科書の無償給与が法定化されております。これらについても、小ロット多品種ということで、コストやデリバリー上での問題が多くございます。

 発表の内容は以上です。

【堀田座長】 ありがとうございました。

 では、質疑に入りたいと思います。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いします。中川委員。

【中川委員】 御説明ありがとうございました。教科書の供給と流通の状況について概要を教えていただきまして、大変勉強になりました。今の紙ベースのものをデジタル化した場合に考えられる問題点など、お感じになっているところがあれば教えていただけないでしょうか。

【三ヶ田上席局長】 検討が始まっている「デジタル教科書」と言われるものについては、いわゆる「デジタル教科書」というものがどういったものになるのか、現在のところ私たちでは分かりませんし、先ほど申し上げましたように、私たちは発行者がやるべき、法律上に定められている供給という仕事を代行契約でさせていただいています。そういった教科書が出来上がれば、どういった供給をするのか、その時点で課題が出てくるのではないかと思われますので、今の時点では何とも申し上げることができないと思っています。

【堀田座長】 ありがとうございます。

 座長からで恐縮ですけれども、教科書が紙ではなくデジタルになって併用されるとしたら、今の仕組みが残ったまま、更に「デジタル教科書」も津々浦々まで提供するための仕組みが必要だと思うのですが、教科書供給協会では、そのような状況を想定して準備等を始められているのでしょうか。

【三ヶ田上席局長】 私たちの組織の対応は、先ほど申し上げたようにまだ形も見えないのですが、いわゆる「デジタル教科書」として指導者用デジタル教科書の普及が進んでいます。これについては、教科書の一般販売会社、あるいは取扱書店が積極的に学校に供給、販売しておりますし、いわゆる補助教材についても、現在十分に取り扱わせていただいております。

ただ、デジタル教材が法律上の問題の教科書になった場合にどうなるのかについては、文部科学省から提案・提示が出てくれば、私たちも、どのような対応をしていくのか考えたいと思っております。

【堀田座長】 ほかに御質問はいかがでしょうか。山内委員。

【山内委員】 今の質問をもう少し具体的に伺いたいのですが、「デジタル教科書」というものが紙の教科書と併用になるのか、あるいはそれが中心になるのかは別として、提供される形態として、光ディスクで提供される場合、ネットワークから提供される場合、タブレットに埋め込みで提供される場合といったものを仮に想定した場合、どのような問題点が考えられるか、少し教えていただけますでしょうか。

【森副会長】 教材に関しては、校内におけるインストール、納品、販売会社のプロパー社員を連れてきての設営などは現実に行っていますが、そのようなことになると、今、私たちがどうこう言える問題ではないと思います。

【堀田座長】 ほかに御意見はございますか。天笠委員。

【天笠座長代理】 一つ御質問させていただきます。教科書の供給の仕組みについて御説明いただき、大変よく分かりましたが、いわゆる教師用指導書については、今の御説明の中に入っているのでしょうか。あるいは、御説明いただいた範囲の外にあるのでしょうか。

先生方がお持ちになっている、教科書プラス関係の様々な情報をその中に組み込んだ、いわゆる教師用指導書というものが存在しており、先生方もそれを活用されることがたくさんあるのではないかと思うのですが、それは今日御説明いただいたこの話の外の話なのか、あるいはこの仕組みの中で供給されているのか、教えていただければと思います。

【三ヶ田上席局長】 今、御説明させていただいたのは、飽くまで国の制度の中での動きですが、発行者は当然、採択されている教科書についての教師用指導書を発行されていますので、それは、この教科書制度にのっとった中で、発行者との販売契約ということで、誰にでも売るということではありません。飽くまでも教科書と同じような仕組みで供給販売をさせていただいております。

【堀田座長】 ほかにいかがでしょうか。神山委員。

【神山委員】 現在、教科書バリアフリー法に基づいて教科書発行者にデジタルベースでのデータ提供をしていただき、それをボランティア団体等が子供たちのニーズに応じた形で提供するという「デジタル教科書」が既にあるのですが、現在の現場での様子というのは、提供されるのは子供たちであって、教師はそれを使うことができず、この子の特性に合った使い方はこうです、というレクチャーすることもできない状態です。教師は指導書を手にしているので、教師も発達障害等がある子たちが手にしている「デジタル教科書」は使えるようになればと思っています。

 質問というよりは、今後うまく子供たちが活用していくには、そういった点の法整備も必要なのではないかと思っております。デジタルベースで提供していただけて、助かっている子たちは非常に多くいるので、感謝申し上げたいと思いお伝えしました。ありがとうございます。

【堀田座長】 それでは、ここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

 続きまして、CoNETSから御説明を頂きたいと思います。本日は小泉茂事務局長、松渕辰生様、曽川誉章様、二宮康様の4名にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

【小泉事務局長】 ただいま御紹介いただきましたCoNETS事務局長の小泉茂と申します。本日は、文部科学省及び「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議より、CoNETSの紹介の機会を頂きまして誠にありがとうございます。CoNETSの発足の経緯や技術的内容、課題は後に譲りまして、私は、CoNETS発足の趣旨に関して、端的に御紹介したいと思います。

 日本における紙媒体中心の教育素材に変化はないとしても、世界的規模でのICT化の進展に伴い、協働学習による授業の効率化・活性化、教科間連携、情報活用などが求められております。子供たちの将来を考えると、より使いやすく、教育現場のニーズに対応したデジタルコンテンツが求められていると考えました。これらの認識で一致した12の教科書会社は、複数OSに対応できるデジタル教科書・教材のマルチプラットフォームの開発会社として、日立製作所の参加を得て、13社のコンソーシアム、CoNETSを立ち上げました。コンテンツの動作環境を保障するためのマルチプラットフォーム開発には、膨大な投資と高度な技術力が必要です。その点で12の教科書会社と日立製作所は相互補完的な関係が可能であるとの認識を共有したわけです。

 CoNETSは、今年の4月に新しく開発したマルチプラットフォームを使用した指導者用デジタル教科書を発売いたしました。CoNETS版「デジタル教科書」については、開発面や運用面、学校現場の使用環境とのミスマッチなどの御指摘は頂いておりますが、この7月のバージョンアップ等で大幅に改善してまいります。

 以上、CoNETSの趣旨や現状を御紹介しました。それでは、個別具体の話について、担当者から御紹介させていただきます。

【曽川氏】 CoNETS事務局の曽川と申します。これからお手元にお配りした資料に基づいて御説明させていただきます。

 まず、CoNETSの発足経緯についてお話しさせていただきます。スライドの2ページを御覧ください。2012年8月、大阪市の学校教育ICT活用事業をきっかけに教科書会社6社が次世代デジタル教科書の共同開発のコンソーシアムを発足させました。翌2013年4月には、教科書会社12社、そして日立製作所の全13社が共同開発の趣旨に賛同し、共同開発をスタートいたしました。同年9月5日にCoNETS発足のプレス発表会を実施し、そこがCoNETSの正式なスタートとなります。翌2014年5月には、教育ITソリューションEXPOに出展いたしました。今年3月には、小学校版の製品をリリースし、現在、8社859アイテムの「デジタル教科書」を提供させていただいております。

 画面に投影されている13社が現状のCoNETS参画会社です。CoNETSは未来の教育のために、より多くの方に参加していただけるように呼び掛けを行っております。既に、第1回として2014年10月、第2回として今年の4月に利用者募集説明会を実施し、今後もより多くの方にお声掛けしていく予定でございます。以上が発足経緯となります。

 続いて、目的について御説明いたします。5ページを御覧ください。目的は三つございます

一つ目は、「デジタル教科書・教材の標準化を目指した共通プラットフォームの開発」です。こちらは、後ほどデモをさせていただきますが、起動方法や操作方法、管理方法、それらの統一による学校現場の利便性の向上を目指しております。さらに、利活用の向上も最終目標として取り組んでいきたいと考えております。

二つ目に、「ビューアとコンテンツの分離」です。デジタル教科書・教材の開発の分業制により、各発行者のコスト及び開発工数を軽減することを目的としております。

三つ目に、「標準化の成果として、教科や学年、発行者を超えた教科間連携の実現」です。

このような目的を果たすために、我々は、学校現場に寄り添って、使いやすさを追求していきたいと考えております。CoNETSのステートメントでも掲げているのですが、「『デジタル教科書』のスタンダード」を目指していきたいと考えております。

 発足経緯と目的に関しては以上です。

【松渕氏】 続きまして、共通プラットフォームの仕組みについて、私から御説明させていただきます。

 まずは、共通プラットフォームとは何かについてお話しいたします。CoNETSでは、CoNETSの教材ビューアと、そのバックグラウンドで連結する配信システム、実際にはコンテンツをダウンロードするのですが、これらのシステムを共通プラットフォームと呼んでいます。

 8ページを御覧ください。まず、従来の方式で「デジタル教科書」を開発した場合ですが、この図の下の方の各デバイス専用の「デジタル教科書」を、各会社の分、開発しなければなりません。OSや教科ごとに機能、操作性が異なりますので、これは大変なコストの重複になります。CoNETSの場合は、9ページの図のとおり、教材ビューアの部分が、全社・全教科の共通機能を搭載したエンジンとなりますので、コンテンツ部分を各教科書会社に開発いただいき、エンジンに載せ、マルチデバイスで動かすという形です。結果として、操作性・デザインなどが統一できますし、小中高を通じて共通の教材ビューアを使用することが可能となります。さらに、ダウンロードの仕組みやライセンスの管理をつかさどるサーバー群がバックオフィスに控えています。これらを弊社、日立製作所がサポートしているという次第です。

 ビューアの構造について少し触れます。11ページを御覧ください。教材のコンテンツ部分というのが、10ページのブロック図の最上部であり、各教科書会社が開発します。この部分はレイヤーが分かれており、紙面を再編化した画像ファイル、少し昔の言葉で言いますと動く教科書をつかさどるようなプログラム、それから音声、動画ファイルといったようなものが並びます。ビューアのエンジン部分につきましては、レンダリングの共通機能エンジン、それからユーザーインターフェースの共通化、そしてワンソースでマルチプラットフォームに対応する仕掛けをビューアで持つことになります。これらを連携させ、デバイス上で「デジタル教科書」として動かします。

役割分担ですが、コンテンツの部分は教科書会社が作成し、ビューア、ソフトウエアはITベンダーの日立製作所が作ります。現場での環境としてのタブレットの準備というのは、ハードウエアメーカー等が学校現場で準備していただくことになっています。CoNETSが考える「デジタル教科書」の検定範囲としては、上のコンテンツの部分のいずれか、あるいは全部ではないかと感じております。

 さらに、コンテンツのデータフォーマットについて少し御説明します。12ページを御覧ください。フォーマットのファイル自体はEPUB3というものに準拠して作られています。ただし、EPUB3はまだ細かいところまで定義できていませんので、教科書の独自拡張機能は当然入っています。我々もこれを「拡張EPUB」と呼んでいますが、これをIDPFという制定団体に登録して、何とか世界基準の中で遅れないようにアプローチをとっています。

 続いて、デモを行います。

【二宮氏】 二宮から、ビューアについて御説明させていただきます。

こちらが今年4月に製品リリースした「デジタル教科書」ですが、書棚(メニュー)が一緒になっています。少し見えづらいのですが、国語や算数、音楽、地図帳といったものが同じ画面でメニューとして並んでいます。

 こちらが国語の教科書です。少し見づらいかもしれませんが、上から、矢印、書き込み、消しゴムとなっております。こちらに区切り線があり、ここから上部が全社共通機能です。やはり会社ごと、教科ごとに特性がございますので、ここから下部は各社が自由に設定できるようになっています。こちらは国語ですので、朗読とその他の機能がございます。もう1冊、こちらは算数です。算数も今御覧いただいたものと同じように、並び順は一緒になっております。こちらが算数の教科特性機能であり、これは各社で自由に設定できるようになっています。

こちらが2画面表示です。お分かりになると思いますが、それぞれが別々の会社の「デジタル教科書」ですが、同じエンジンで動いております。今、算数がアクティブになっていますので、算数の機能が出ていますが、国語をアクティブにすると国語の機能に変わります。これで同じエンジンで動いているということがお分かりになると思います。

 1画面に戻して、国語と算数が同じエンジンで動いているということですので、もう一つの機能として教科間連携がございます。先生が事前に自由に設定できるのですが、こちらは5年生の国語の円柱形です。例えば円柱形はどういったものか復習する場合に、算数の4年生に戻ることができます。もちろんこれは買っていただいて、事前に設定することが条件になるのですが、このように切替えができます。

 もう一つ、CoNETS版「デジタル教科書」では、教科書だけではなく、例えば地図帳や辞書など、文字ベースとは少し違うアプリ型の教材とも連携が図れます。このリンクボタンをクリックすると、地図帳と連携を図ることができ、地図帳のランチャーボタン一つでCoNETSのビューアに戻ることができます。今までは、これを閉じて、また起動する必要がありましたが、これがボタン一つでできるようになりました。今、御覧いただいたのは指導者の機能ですが、学習者でも同じような連携が図れるようになっています。

14ページを御覧ください。最後に、目指すべき将来像に触れさせていただきたいと思います。

一つは、「標準化を目指し、オープンな教材ビューアに育てたい」ということです。今年製品リリースしましたが、まだ課題等もありますので、できるだけ多くの方に参加していただき、改善、発展させていきたいと思っています。文部科学省様からも、標準規格は重要だというお話を伺っていますので、CoNETSビューアをしっかりとした形で進化、発展させ、最終的には標準規格案として御提案できればと思っております。

 二つ目に、「指導者用と学習者用を併用することによる新たな学習スタイルを構築したい」と思っています。これは先ほどの議論でもありましたが、我々教科書会社は、教える先生の立場になって、今の学習スタイル、授業形態を最優先に考えて開発しております。ですから、先生用と生徒用、両方使うことによってインタラクティブなやりとりを行うことができて、最大限の学習効果があると考えています。よって、どちらか一方というよりも、両方使っていただく新たな学習スタイルを構築できればと思っております。

 CoNETSからは以上でございます。

【堀田座長】 それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問等ありましたら挙手をお願いいたします。福田委員。

【福田(孝)委員】 14ページの指導者用と学習者用の併用についてもう少し詳しく御説明いただければ有り難いです。

【二宮氏】 併用というより、福田先生も御存じのように、学習者用はタブレット端末での使用のため容量も限られており、指導者用のリッチな教材を全て学習者用に入れようとすると限界もありますので、TPOに合わせてそれぞれの良さを生かすという意味で併用を考えております。

【堀田座長】 ほかにいかがでしょうか。神山委員。

【神山委員】 現在のこのプラットフォームは、テキストの抜き出しというようなことは可能なのでしょうか。

【松渕氏】 コンテンツには暗号化を掛けていまして、部分的に抜き出すことができないようにしてあります。CoNETSビューアでないと見られないような暗号を掛けています。

【神山委員】 特別支援該当の子供たちは、テキストを抜き出して拡大したりコントラストを変えたりして学習が進むことがあり、また、帰国子女や外国籍の子供たちは、テキストを抜き出し、翻訳ソフト等にかけてより学習が進むことがあるので、現場にはそういったニーズもあるということをお伝えしたいと思いました。

【松渕氏】 リフローという機能が電子書籍にはあるのですが、CoNETSとしても来年度の実装を目指して検討している最中です。リフローが実装できますと、特別支援にはかなり効果が出ると聞いていますので、その機能は、予定する機能の中に組み込みたいと考えています。

【堀田座長】 毛利委員、続いて新井委員お願いします。

【毛利委員】 質問ですが、つくば市でも、現在、指導者用デジタル教科書を小中学校で使っております。特に全国的に中学校はICTの利用率が低いと言われていますが、この「デジタル教科書」を1回使い始めると、非常に効果的で、現在、中学校でも利用が進んでいます。先ほど供給協会の方から、1日全国で1,000人もの転入生がいるというお話がありました。4月、春休みは2週間しかありませんけれども、例えば、これが学習者用デジタル教科書になったときに、この期間に子供たち全員に新しい教科書をインストールするようなことがきっと想定されると思うのですが、CoNETSさんでそのようなことに対して何か検討されていることがあれば教えていただきたいと思います。

【松渕氏】 ダウンロードについては非常に大きな課題だと認識しております。今は、ダウンロード方式のほかに、DVDで配布する方法も選択肢の中に取り入れていまして、今年の4月からお使いいただく学校及び教育委員会には、場合によってはDVDで配布しました。もちろん、ダウンロード方式だけに頼りますと、時間が掛かるのに加えて、学校現場ではネットワークの環境面でいろいろと課題が残っています。これについては、時間がたてば環境が整うという見方もありますが、まだ過渡期であることは間違いありませんので、ほかにも手段がないか、少し検討を広げたいと思っています。

【毛利委員】 ありがとうございます。転入生の場合、ほかの子供たちは使っているけれどもその子が使えないとなると、やはり支障が出ると思いますので、是非何か考えていただけると有り難いと思いました。

【堀田座長】 新井委員、お願いします。

【新井委員】 一つお伺いしたいのは、14ページ1.3についてです。「共通プラットフォームを普及・発展させるためにも多くの利用社の参加を求めている。」と記載がありますが、これを進めるためにどのような課題があるのかということをお聞きしたいと思います。なぜかというと、「デジタル化された教科書の部分」と「デジタル化された教材の部分」をどのように考えるかというのはこれからの検討課題だと思うのですが、その際、教科書部分と教材部分がどのように標準化され、連携していくかという仕組みが、全体として非常に重要だと思うからです。その意味で、多くの利用社の参加を求めるとありますが、進めていく上でどのようなことが課題になっているのかお聞きできればと思います。

【松渕氏】 ありがとうございます。幾つか課題があります。我々CoNETSで、参加を広めるに当たって特に意識しているのが、コンテンツを開発していただく手間や期間です。ですから、説明会の開催に当たっては、教科書会社から商品が発行されるタイミングより前に、コンテンツを作成するのに必要なAPIやインターフェースの情報について、開発の主体である日立の方からも提供させていただくという工夫をしております。

 今までの「デジタル教科書」は、多くがflash等で作られており、ビューアとコンテンツの分離が図られていませんので、これをCoNETSビューアに載せ替えるということになると、御指摘のとおり、コンテンツをどう考えるのかというところから始まりますので、これを開発するための支援がまずは大きな課題ではないかと考えております。

【新井委員】 その辺はCoNETSさんで検討されるのか、それとももっと周りも含んで検討されるのか、検討体制はどのようにお考えでしょうか。

【松渕氏】 これまでもCoNETSの中では、開発推進会議、幹事会、開発会議などという会議体を設けて協議を重ねています。共通の機能に関しては、今御覧いただいた機能の範囲の中である程度できてきましたので、この共通部分については、CoNETSの現在の実装機能の中で何とかやっていけるのではないかという感触は持っています。

 あとは、各社独自の特色の出し方がございますので、これをどのように準備していくか、あるいはどの部分を作っていただくかということについて、引き続き、CoNETS内でもいろいろな意見を聞き、その意見に検討を重ねて、順次決定していきたいと思っております。

【堀田座長】 山内委員、続いて東原委員お願いします。

【山内委員】 2点、教えてください。

 1点目は、統一化・共通化されたプラットフォームというのは良い点だと思うのですが、共通化され、統一化されているために、教科や科目による独自性や差異がどのような影響を受けるのか、また、そのような点で、現在問題点はないかということです。また、個々の教員がいろいろと工夫して使うことがあると思うのですが、それに対応できるのかということです。 

2点目は、内容について、画像ファイル、音声、動画を将来的にチェックするとなれば、教科書を採択するときなどに、かなり簡便、迅速にチェックできるようになるのかどうかです。そして、教科書会社がコンテンツのどこかを変更したいという場合、画像ファイルや音声、動画ファイルを変更することで迅速にできるのかどうかです。

 以上の2点をお願いいたします。

【松渕氏】 1点目の差別化、機能の分け方ですが、これはCoNETSの中でもかなり議論しました。やはり、教科特性に合わせた細かい部分については、各教科書会社さんで独自に作っていただいています。御覧になったビューアには、ペンでいろいろ書いたり、付箋紙を張ったりという機能は当然ございます。一般的な機能はビューアの方で用意しますが、それ以上の、例えば紙面に重ねてレイヤーを動かす機能などについては、教科書会社でコンテンツの中で実装してもらうことにしています。できれば何らかの統一的な機能があった方が良いのかもしれませんが、CoNETSとしては、教科書特性に応じて独自に実装していただくことを考えています。

 2点目の音声・動画ファイルのプロパティについては、現在、CoNETSビューアはスタンドアローンでの動かし方を想定していますので、常にサーバーにつながっているわけではありません。DRMに代表されるように、インターネット上では、アクセスした途端に、このライセンスは正しいのか、あるいは期限は大丈夫か、誰の著作権かなどのエンティティ情報をやりとりする方法がありますが、学校現場でその通信を重ねてしまうとパフォーマンスにかなり影響するのではないかと想像しています。現在、スタンドアローンの中では、そのチェックを頻繁にサーバー上に掛けないようにしています。

 したがって、ビューアの方で、ダウンロードすべき書籍はあるかどうか、あるいは期限が切れていないかどうかなど、コンテンツをファイル単位で一括して管理しています。その後、暗号化で複合化した後で潜っていますので、コンテンツの著作権はその部分で確保されていると同時に、リアルタイムでは、現在、管理ができていないという実情です。

【堀田座長】 東原委員、お願いします。

【東原委員】 二つお尋ねいたします。

一つ目は、ビューアは将来を見越して作られているのだと思いますが、ハードウェアのスペックはどの辺を想定されていらっしゃるのでしょうか。今後、タブレット等が学校で一人一台ということになると、余り高価なものではなかなか大変ですが、少し安めのハードウエアではスペックが落ちてしまいます。ビューアが高いスペックを要求すると、その辺で難しさが出てくるので、どの辺のものを想定されていらっしゃるのかということが一つです。

 二つ目は、前回、文部科学省の豊嶋情報教育課長が「学びのイノベーション事業」の報告をされた際、資料の中に図があり、コンテンツとビューアを分離するということはその図と一致していると思うのですが、あの図の中では、いわゆる「デジタル教科書」と他の協働学習用のアプリ等が連携するということになっていたと思います。今日見せていただいている図を見ると、そういったものとの連携が書かれていないのですが、その辺は全部「デジタル教科書」の中で抱え込むのか、それとも他のアプリケーションともオープンにして連携していくという方針なのか、お聞かせください。

【松渕氏】 まず、ハードウエアのスペックの点なのですが、これはかなり迷いましたが、現在、商用で販売されている機械、ハードウエアのスペックを基に考えています。ただ、4月から迎えた現状では、やはり4、5年前にタブレット等をそろえた環境で動かしたいという要望がかなり強かったものですから、冒頭にありましたとおり、7月のバージョンアップでは、少ないリソースでも動くような手ほどきを考えています。当然、学校現場ではリッチな端末は望めませんので、今の学校現場に配布されているタブレットのスペックを見据えて、その中で動くことを目指していきたいと思っています。

 スペックについては、年々上がっていくのですが、現場のハード調達を見ると、やはり数年に1回、大きく環境を整えられるというのが実情ですので、年々重なっていくスペックアップに合わせてソフトウエアをリアルタイムに追随させることを前提としてしまうと、いろいろな問題が起きるのではないかという認識に立っています。

 2点目の質問ですが、その趣旨をもう一度お伺いしてもよろしいでしょうか。

【東原委員】 例えば、タブレットで児童生徒が書き込みをし、それを共有するといった協働学習的なアプリケーションを、全部標準ビューアの中の機能にしてしまうのでしょうか。あるいは、「学びのイノベーション事業」の報告書には、「デジタル教科書」と事業で使われた協働学習アプリがうまく連携するような案が載っているのですが、CoNETSの資料の図とはちょっと違うかと思ったので、お考えを聞かせていただければ幸いです。

【松渕氏】 2点ありまして、ビューアから単にほかのアプリをピックアップするというのは、先ほどのデモでも地図をピックアップしていましたが、実は、地図はCoNETSビューアではなく、別アプリになっています。もう1点、授業の包括的なITの中で使われた情報をどう管理していくかというのは、校務システムとの連携も視野に入れていかなければいけないと思っています。現在、CoNETSビューアでは、名簿を登載していません。ただし、ユーザーIDの管理はできているのですが、現在学校現場で使われているような教室の中の校務支援システムもIDを利用する形で今後発展していくと思いますので、ビューアとして、そこと連携させるということは想像しています。どのようなインターフェースにしたら良いのかについてはこれから検討することになると思っています。

 ですから、全部の授業のIDをこのビューアに積み込むという方針ではなく、当然、連携して整えていくことを実現したいと思っています。

【堀田座長】 中川委員。

【中川委員】 インテル系のプラットフォームですと、Core iプラットフォームとAtomプラットフォームというものがあり、学校採用状況を見ると、コストも安いということもあって、やはりAtomプラットフォームの方が多い状況です。少し非力なCPUですので、特に描画系では御配慮いただけると良いかと思っております。

 また、東原委員からもお話がありましたけれども、コンテンツについて、学校現場を見ていますと、複数のアプリケーションでコピー・ペーストして使い回し、議論の材料にすることがあります。CoNETSビューアで暗号化され、CoNETSビューアでしか見られないようになっているという御説明がありましたが、これについても何かうまく処理ができ、いろいろなアプリケーションから引用できるようになると良いと思います。これは意見として申し上げます。

 続いて質問です。コンテンツ制作コストを低減させる取組として、説明会等でAPIの情報についておっしゃるというお話だったのですが、検討会議の第1回で400円から800円ぐらいという紙の教科書の単価について説明がありましたが、これに対して現在、動画も含めて非常にリッチなコンテンツを作った場合、想定単価はどれくらいになるのでしょうか。要は、CoNETSビューアの上でコンテンツ制作会社、教科書会社が教材を作られる場合、価格はどれくらいのものを考えていらっしゃるのでしょうか。以上が一つ目です。

 二つ目に、もし、機能が幾つかあって、基本的には紙の教科書とほぼ同じもので、テキストに加えてそこに音声をくっつけたとします。私の中学校のときの知識で、英語の授業で、カセットテープで先生に外国人が発音しているきれいな音声を聞かせていただいた記憶があるのですけれども、音声を既に持っているものとして張り付けて、拡大、縮小ができるようにしただけの機能を考えた場合、つまり、紙の教科書とそんなに大きくは変わらない、動画やその他のレイヤー機能というものを除いてしまってCoNETS上で何か1個教材を作った場合、どれくらいで販売を予定されますか。併用で入れた場合、コストがダブルで掛かってくるのか、少し安いものになるのか、現在のCoNETSのプラットフォーム上だと、想定価格は一体どれぐらいをお考えなのか、もし分かれば教えてください。

【松渕氏】 申し訳ありません。CoNETSは開発コンソーシアムですので、価格については触れることができません。各教科書会社に御質問いただくことになると思います。

 冒頭の暗号化の件ですが、この手法を取っているのは事情がございまして、教科書紙面のスタティックな再現のときには、やはり著作権の問題が絡みますので、これをどのようなアプリケーションでも見られるようにすることについてはかなり問題が出てくるという認識を持っています。ですから、今はもちろん黎明期ではあると思いますが、このビューアが行っている処置は、水際といいますか、一番安全なところで暗号を掛けているという事情です。

【堀田座長】 私も質問があります。 

教材コンテンツを各教科書会社が準備する手間やコストはできるだけ低い方が良いと思います。もし併用するとしたら余計にそうだと思うのですが、コストの面について、今は答えられないということは分かりましたけれども、実際にその準備はどのくらい大変なのかということを知りたいと思います。また、画像ファイルはそうでもないと思うのですが、音声ファイルや動画ファイルはそもそも紙にはないわけですから、それは新たに作っているわけであり、もっと言うと、教科書のある絵がそこにある理由を考えると、そこに編集意図がありますから、多分それがXMLの辺りになるのかと思うのですけれども、この辺りについてどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

 また、もし「デジタル教科書」を検定するとなると、共通のビューアにはない教科書会社固有の機能があり、各教科書会社の主張がそこにあるのだとすると、検定範囲が広がらざるを得なくなります。そうすると、あの線よりも上だけ検定すれば良いとは限らない可能性があるわけですが、そのことについて今の段階でのお考えをお聞かせください。

 最後に、先ほど新井委員がおっしゃった、多くの教科書会社に参加いただくということに関係すると思うのですが、標準化は国がしっかりとやるべきかどうかということについて、何か御意見がございましたらお願いします。

【松渕氏】 コンテンツの制作については、申し訳ありませんが、これは各教科書会社の中の話になりますので、それを実装するビューアを開発している日立の立場から見ての意見ですけれども、基となっているのは、御想像のとおり紙面の教科書のデータです。デジタルデータが大体ありますので、それを基にして個々の紙面再現性の画像ファイルを作っているのが第1段階です。ここからどのようなオブジェクトをそれに載せていくかというところが教科書会社によって違うところです。

【二宮氏】 教科書会社の立場から補足しますと、堀田座長から御指摘いただいたように、紙面などを入れるのには、ツールもあってそんなに手間ではないのですが、どのようなコンテンツを載せるかというのは、各教科書会社のいろいろな戦略になります。リッチなコンテンツを多く載せれば載せるほど手間とコストが掛かりますけれども、最低限でいいということであれば、ある程度抑えられるという形で、これもさじ加減です。手間について言えば、動的コンテンツ、上に載せるレイヤーをどれぐらいの量、どれぐらいの質で載せるか、ということに左右されると思っています。

【小泉事務局長】 最後に御質問がありました検定の範囲ということでございますけれども、我々は今、紙媒体の教科書を主として発行している会社の集団でございまして、今、「デジタル教科書」のどこまでが検定を受けたらいいのかといった考えは全体では持っておりませんので、誠に申し訳ありませんが、お答えできかねますということで御理解いただきたいと思います。

【堀田座長】 井上委員、お願いします。

【井上委員】 14ページ1ぽつの1に、「本年3月に小学校版の製品リリースを実現させ、小学校で使用開始された。来年度は中学校、再来年度は高等学校の製品リリースを予定している」と記載されておりますけれども、これは参加を募集しなくては駄目なのか、それとも参加企業が今の状態でもこの予定どおり行くのか、お聞きしたいと思います。

【二宮氏】 既に13社の中で中学校の「デジタル教科書」を発行している会社もございますし、高等学校の「デジタル教科書」を発行する会社もございますので、もちろん多くの方に参加していただくということは望んでいるのですが、13社の中でも「デジタル教科書」を発行することはできますので、13社のままでも、来年、再来年のリリースは予定しております。

【堀田座長】 それでは、大変恐縮ですけれども、時間の関係がございますので、ここで終わりとしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして四つ目の団体の御報告として、全日本印刷工業組合連合会から御説明いただきます。本日は島村博之会長、生井義三専務理事のお二人にお越しいただいております。それでは、よろしくお願いいたします。

【島村会長】 本日は、私たち全日本印刷工業組合連合会、通称全印工連に発言の機会を頂きまして、お礼を申し上げます。

 まず、お伝えしておきたいことでございますが、我々は「デジタル教科書」が良いとか悪いとか言う立場にはないということでございます。今まで紙メディアが中心でしたが、これからは電子メディアが中心となっていきます。そのような時代の流れであれば、それなりに受け止めて、流れに逆らうことなく、うまく流れに乗って情報伝達のお手伝いをしていくということが全印工連の本望だということを、まず御理解いただきたいと思います。

 初めに、全印工連について簡単に紹介をさせていただきます。スライド2ページを御覧ください。当連合会は、全国47都道府県全てに一つずつある印刷工業組合で構成されております。現在の組合員企業数は5,113社、平均社員数が約21名という、非常に小さな規模の企業が集まった団体でございます。そもそも、当組合には教科書の印刷で稼いでいるという会社はいないと思います。

 3ページを御覧ください。このグラフは、当組合ではなく、大手を含めた印刷業界全体の印刷物の出荷額を表しています。1991年に出荷額が8.9兆円のピークを迎えました。その後、バブルで一旦落ち込みましたが、1997年、8.8兆円台まで回復しました。その後、長期の落ち込み傾向に入り、2014年時点では出荷額が5.2兆円に落ち込んでいるというのが、今の印刷業界の実情でございます。

 4ページを御覧ください。印刷出荷額が減少している原因はメディアスイッチ、広告宣伝費の削減、あるいは人口減少と幾つもありますが、最大の原因は出版印刷物の減少です。出版市場は、このグラフには示されていませんが、1996年から16年間で1兆円弱下落している一方、電子出版市場のシェアは急激に伸びています。このグラフはパーセンテージで表現してありますが、金額で言いますと、2012年時点で729億円、出版市場全体の4.2%を占めるまでに急成長しています。紙に印刷した本の材料費、制作費、配達費、回収費、廃棄といったコストを考えますと、この傾向が変わることはほとんど期待できないと見ております。以上のような背景を考慮しまして、5ページにお示ししているとおり、我々全印工連は、2020年までの出荷額は4.2から4.6兆円に減少するであろうと予測しております。

6ページを御覧ください。こうした状況の中で、全印工連は、15年前から業態変革に向けての指導をしてまいりました。2010年には「ソリューションプロバイダーへの進化」と題しまして、印刷産業成長戦略提言を第1弾として発表いたしました。今、専務理事が配っております冊子ですが、こちら、2013年、提言書の第2弾として「ソリューションプロバイダーへの深化 印刷道」と題して発刊したものです。

7ページを御覧ください。こちらが今後、小規模印刷会社がソリューションプロバイダーへと深化し得る六つの戦略の方向性でございます。詳しくは冊子の中にありますので、よろしければ御覧いただければと思います。六つの類型がございますけれども、紙にインクを乗せる印刷製造でなりわいを立てていくのは、その一つに過ぎません。残りの五つは全て印刷から離れた部分でのソリューションだということを、我々小規模の印刷会社は認識しています。現在、全印工連の会員企業はこれをベースにして業態変革に取り組んでいます。

 とはいえ、まだまだ紙にインクを乗せることをなりわいとしている会社がたくさんあります。印刷物が少なくなっていることに大いなる危機感、不安感を抱いております。特に、中堅の、設備を多く抱えている印刷会社がこの危機感を非常に大きく持っており、組合の中でも当然発言力もありますので、全印工連としてもそういった企業経営者の皆さんの声を聞かなくてはならないという状況でございます。

 そのような声の中、「デジタル教科書」には反対という声がまだまだこの業界にはあります。これは単に危機感、不安感の中から出てくる発言でございますが、昨年11月、中小印刷産業振興議員連盟という国会議員の皆さんで作っていただいた議員連盟の総会の場で、初等教育における教科書とは一体どのようなものが望ましいのか、今後慎重に検証、検討していただきたいという提言をさせていただきました。その際、経済産業省から商務情報政策局の審議官、商務情報政策局メディアコンテンツ課長、そして文部科学省から初等中等教育局教科書課長と担当官2名がいらっしゃり、審議に参加していただいておりますが、参加の議員の皆さんからは、まだまだ「デジタル教科書」ついては時期尚早というお言葉を頂きました。私は、全印工連の会長という立場で、組合員の皆さんに、このような見解になりましたので少しだけ安心していただきたい、とお伝えした状況だったのですが、その1か月後には新聞で「デジタル教科書」についての審議会が始まったというニュースが出たので、この流れは止められるわけがないと認識しております。

 本日は、せっかくこのような席で発言の場を頂きましたので、我々小規模印刷会社がデジタル化の波の中でどのように社会と関わっていきたいのか、お伝えしたいと思います。12ページを御覧ください。これからお話しすることは私の見解ではありません。これからこのような時代になるのではないかということ、そして私たちの将来像について、アメリカのノースウエスタン大学、イェール大学の両方で法学博士をされているダニエル・ピンクという方が書いた『ハイコンセプト』という本を抜粋してお話させていただきたいと思います。これはアメリカの話ですので、今の日本には直接当てはまらないかもしれませんが、近い将来は日本でも同じような状況になるのではないかということで引用させていただきました。

知的労働の価値というものが、考えられている以上に速いスピードで、コンピューターやインターネットに取って代わられてしまう時代になったのではないか、ということをダニエル・ピンク氏は言っています。情報化社会も今は最終段階に入り、早くも第四の波が押し寄せつつあり、食いっぱぐれのない資格とされていた弁護士や会計士という知的労働者の仕事が更にコンピューターに取って代わられてしまっています。アメリカでは既にそうなっているということです。ダニエル・ピンク氏は、その第四の波を「コンセプチュアル社会」と命名しています。この第四の波というのは、既成概念にとらわれずに新しい視点から物事を捉えて新しい意味付けを与えていく流れだということです。

 実は、何年も前から、日本においても、プロフェッショナルといえども安泰ではないと言われてまいりました。それは学校の教師も同じなのではないかということです。例えば、今、世界中の経済原論の講義というのは、サミュエルソンの輪読会をやっているようなものだとダニエル・ピンク氏は書いています。ところが、サミュエルソンが直接インターネットで教えてしまうと、輪読会をやっている程度の経済学の教師は失職してしまいます。このような時代においては、知的労働者といえども安泰ではない、というのがダニエル・ピンク氏の理論です。

 では、どうすれば良いのでしょうか。これまでのように学校で良い成績を取り、良い会社に行ったところで、今の義務教育で教えられている内容はメモリーチップに収めたらせいぜい100円分の価値しかありません。現実に、アメリカの高校ではカンニングを容認するようになってきたということです。これは、見逃してはならない、非常に重要な兆候ではないでしょうか。つまり、情報化社会においては、グーグルやメール交換であらゆることが調べられるので、カンニングをするなと言っても意味がないのです。それだけではありません。答えのない時代である現在、世の中に出たら、知識を持った人よりも、多くの人の意見を聞いて自分の考えをまとめる能力、そして壁を突破するアイデアと勇気を持った人の方が貴重だということです。すなわち、これからは大いにカンニングをしろという時代が来るとダニエル・ピンク氏は言っています。

 ダニエル・ピンク氏は、学校で教えてくれる程度のこと、自分一人が覚えていることなどは二束三文の価値しかないとまで言い切っておられます。グーグルで検索したことは基本的に無料です。指導要領どおりの授業は、最強の先生の講義をビデオ化して配信してしまえば、日本全国、一人で全ての生徒に教えられるのではないでしょうか。

 では、知識を二束三文でないものにするための先生の役割とは一体何でしょうか。それは、全ての生徒が異なった答えを出したとき、皆の意見を聞き、それを消化した上で、クラスの議論の指導をしたり、そこから生徒が新しい知見を導き出せるように誘導したりすることです。これが実は教育革命なのではないかと思います。

 17ページを御覧ください。ここまではダニエル・ピンク氏の言葉ですが、ここからが私たちの意見でございます。

 このような時代においては、現場で教える先生が、国から与えられる教科書だけに頼らず、家族愛あるいは郷土愛に即し地元社会に合った教育を、独創性を発揮しながら行っていかれるのではないかと推測しております。その際、デジタルにしろ、紙にしろ、様々なコンテンツが必要とされるのではないでしょうか。それらのコンテンツは、先生たちが御自分で作られるより、プロに任せた方が、時間の節約にも品質向上にもつながります。我々全印工連の全会員は、全国の津々浦々に点在して活動をしておりますので、地方の学校からすると実にコンビニエンス企業でございます。先ほども、発表の中で、どういったコンテンツを、どのような方が制作していくのか、それがこれからの「デジタル教科書」において非常に重要だというお話がありましたが、私もそのように感じますし、全印工連としてもそのように考えております。

 また、全印工連は、CSRにも大いに力を入れております。全国のあらゆる業界の中で最初にCSR認定制度を作り、それを実施している団体でございます。ISOでもCSR認定は諦めたという程度に多岐にわたっていますが、CSRの認定制度は不可能という認識の中で、我々全印工連はCSR認定制度を作り、ここ2年間で相当に認定企業を増やしております。情報セキュリティー、環境活動、コンプライアンス、健全財政が万全であり、安心して仕事を任せられる会社の組合組織です。近く到来する「デジタル教科書」の時代に、コンテンツ制作者といろいろな相談をし、仕事を発注する最適な業界団体ではないかと確信しております。いずれ、ここにいらっしゃる皆様と一緒に仕事をさせていただくことを心から祈念して発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【堀田座長】 大変すばらしい御意見を頂きましてありがとうございました。カンニングの話ですが、これは、してはいけないというルールがあるときでも破っていいという話ではないですよね。様々な情報を参照しながら回答を見つける、そういう能力がこれから重要であるという話ですよね。

【島村会長】 はい。いんちきをする、ずるをするという意味で、カンニングという言葉を使っているのではありません。

【堀田座長】 分かりました。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。毛利委員、お願いします。

【毛利委員】 17ページに、「デジタル教科書の時代に最適な業界団体」という記載がありますが、お話をお聞きしていて、全日本印刷工業組合連合会様は、印刷するところだけではなく、全国津々浦々にあって、いろいろ全国のコンテンツをまとめたり掘り起こしたりといったこともされている、マルチメディア的な業界であるという認識でよろしいでしょうか。

【島村会長】 はい、そうです。まだまだ印刷機を回して売上げを立てている会社もたくさんありますが、多くの企業が、これからのデジタル社会に向けて既に業態変革をし、今委員がおっしゃったような内容に事業を変えているということでございます。ですから、国から発信する情報や、何十万人、何百万人という人が見る同じ内容の情報を発信するのは大手にお任せするとして、その地域に合ったそれぞれのコンテンツというものがあると思います。それは県単位であったり、市単位であったり、町単位であったり、学校単位であったり、あるいは先生単位であったりすると思いますが、今後デジタルが普及すればするほど、非常に細かいコンテンツが必要になってくるのではないかと推測していますが、現在、実は、それを受ける業界が存在していません。ずっと情報サービス・情報加工をしてきた我々印刷業界が業態変革している中で、相談や発注の相手としては、我々が場所的にも能力的にも最適なのではないかと思います。

【堀田座長】 では、若江委員、天笠委員の順番でお願いします。

【若江委員】 非常にニュートラルな立場からの御意見をありがとうございました。

 感想になりますが、このような存在が学校の先生方に知られることによって、「デジタル教科書」だけではなく、教材が学校現場に届いたときに先生方自身が目の前の子供たちに合わせてテーマを編集してワークシートを作成し、学校の周りにある身近な印刷屋さんが学校と良い連携をしていただけるような時代も来るのではないかという気がしました。ありがとうございました。

【島村会長】 ありがとうございます。

【堀田座長】 天笠委員。

【天笠座長代理】 本日の御説明の中で、印刷会社は全国に点在しているという御説明を頂いたわけですが、学校との付き合いはどのような現状であるのかということを御質問したいと思います。学校ではいろいろな印刷物を作りますので、学校と地域の印刷業界とのつながりは現状でも相当あるのではないか、また、印刷業界は、学校の様々な活動を、印刷物を作ることを通して支えているのではないか、そのようなことが御説明いただいた中から推察できます。学校のいろいろな意味でのアドバイザーという役割を、これまでも果たしてこられ、これからも果たされるのではないかと思います。現在の社会の状況において、これから印刷業界の果たし得る可能性をお探りになっているというのが御発表の内容ではないかと思ったのですが、改めて、印刷業界と学校との関係、お付き合いがどのような現状なのか、御説明をお願いできますでしょうか。

【島村会長】 まだまだ印刷物でしかお付き合いをしていないのが実情です。試験問題は外に出すところもありますが、学校の中で作られるところもあります。県内の学校で同じフォーマットのものを使うということであれば、県の教育委員会から発注を受けた会社が作って納めるということはありますが、地元の学校に深く関わっているという印刷会社は、中にはあるのかもしれませんが、基本的にはないと思われます。ただ、これからデジタルコンテンツが導入されると、印刷物と違って音声、動画も入ってきます。それをまとめ上げていく際には、やはりそのプロの方が品質もコストも合ったものができると見ています。そういうものをやるところは現状としてないのですが、そのことを、全印工連の組合員が察知し、準備しているので、我々の組合員がそういったことに対応する体制になることはほぼ間違いないのではないかと思われます。

【堀田座長】 それでは、ここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

【堀田座長】 それでは、四つの団体の皆様から頂いた御意見を踏まえながら、次の議題に進めていきたいと思います。資料5を御覧いただきたいのですが、これは皆様から出された意見でございます。事務局の方で、1回目、2回目に皆さんから出てきた御意見を、このように少しカテゴライズして整理してくれているのですが、このようなことを検討すべきだとか、このようなことは望ましいのではないかとか、そのような意見はいろいろと出ているところです。私たちはこれから何回かかけて検討を進めていくわけですので、これを「検討の視点」という言い方にして、資料6として整理させていただきました。これは私が座長として事務局と相談しながら、資料5とずれがないように、かつ、これからこのような論点も大切になりそうだということも含め、今後検討していく視点として整理したものでございます。

 大きく、黒く示された部分を見ていただくと、「教科書の意義・役割」、「教科書の質の担保」、「教科書としての位置付け」、「導入に当たって必要となる整備環境」、の四つがあります。例えば最後の「導入に当たって必要となる環境整備」では、そもそもICTの整備が間に合うのか、ネットワークの環境はどうなのか、といった内容でございます。これらももちろん重要ですが、私たちとしては、「デジタル教科書」というものを法律との関係でどのように定義し、質の担保等をどのように行っていくか、ということが議論の中核になりますので、飽くまで参考として検討することとなります。そこで、本日は、一つ目の「教科書の意義・役割」のこと、そして「デジタル教科書」の導入により期待される効果や影響について情報交換をしていきたいと思います。

 今回ヒアリングを行った四つの団体に限らず、第2回にもいろいろな団体にヒアリングを行いましたので、そこで出てきた知見も踏まえた皆様の御意見を、「教科書の意義・役割」に関することを中心に頂ければと思うのですが、これはいろいろなところと関係してくる話題だと思いますので、関係してほかのことに関する御意見を述べられても構いません。

 それでは、いかがでしょうか。では、福田委員、お願いします。

【福田(孝)委員】 私は、「『デジタル教科書』の導入による効果・影響について」の四つ目の丸が少し気になってこの場に臨んだのですが、これは「障害を持った」でなくて、「障害のある」とすべきではないでしょうか。また、「特に有効」とありますが、この「特に」をあえて付けられたのはなぜでしょうか。障害のある児童生徒の学習に役立つということは、我々が実際に使用している中でも認識しておりますけれども、あえて「特に」を付ける必要があるのか気になったものですから、御説明いただければと思います。

【堀田座長】 このようなお子さんたちに特に有効になるようにしたいということであって、このようなお子さんたちにのみ特にという意味ではありません。言い回しが適切ではなかったかもしれませんので、練り直しをさせていただきます。ありがとうございました。

 山内委員、お願いします。

【山内委員】 「『デジタル教科書』の導入による効果・影響について」という項目の五つ目の丸についてです。「デジタル教科書」の導入に当たって、その使用によるメリットとデメリットという部分ですが、私自身が担当している教科を例に、このメリットとデメリットということについて簡潔にお話させていただきたいと思います。

 私は外国語、英語教育が専門であり、中学校・高等学校で教員をして、今は大学で教員をしております。「デジタル教科書」のメリットとして、教科書に音声や動画を入れることができます。英語教育、外国語学習では、音声、動画が入ることにより、実際に聞いて分かるという音声のコミュニケーションの学習が促進されます。また、動画を導入することにより、どのような場面でその表現が使われるのかが分かりますので、今まで英文和訳に頼っていたような学習が英語で英語を理解する学習に変わり、しかも実際に使われる場面を見ながら、ネイティブスピーカーの生きた発音を聞きながらの学習が可能ということで、非常にメリットがあると思います。

 小学校の英語が2020年から教科化されるということで注目されていますが、小学校の先生方は、自分の英語、特に発音に自信がありません。そのような場合にこの「デジタル教科書」を導入することにより、モデル発音を提示することができます。また、使用場面を一緒に提示できるということで、非常に期待されています。

 一方で、課題としまして、このような音声や動画を入れた場合に、きちんとその質が保証できるのか、内容や質を確かめるための検定を実施できるのか、ということがあり、どこまでを検定の対象にするのか、そして、誰がどのように、どのような基準で検定をして合否を決めていくのか、ということが問題になると思います。英語にはイギリス英語やアメリカ英語がありますが、今までは、教科書附属の音声教材は余り注目されてきませんでした。しかし、これが教科書になって音声も検定されるとなると、例えば、ピーターラビットはイギリス人が書いたので、これをアメリカ英語で朗読しているというのはおかしいということになります。シャーロック・ホームズがアメリカ英語で話すのはおかしく、一方で、エドガー・アラン・ポーというアメリカのボストンの作家の作品をイギリス英語で朗読するのはおかしいということになります。しかもボストンですから、日本で今まで慣れている西海岸の英語、つまり、サンフランシスコなどで話されている日本人にとってある程度明瞭に聞こえる英語が、実は、エドガー・アラン・ポーの描いていた英語ではなく、東海岸のかなりせっかちな早口のような英語が、エドガー・アラン・ポーの考えていたものだということになります。教材のより本質に迫れるようになり、学習の質が高まり、また、それだけオーセンティックなもの、本質的なものが与えられますので、学習意欲も高まるとは思うのですが、同時に、検定に手間が掛かることになります。

 ですから、本質に迫れる、学習意欲が高まることと、手間が掛かることのトレードオフをよく考えながら進めていくことが大きな課題ではないかと感じております。

【堀田座長】 高梨委員。

【高梨委員】 ここできちんと整理していただいたので、すごく分かりやすくなっていると思うのですが、「紙との比較においてデジタルが有するメリット又はデメリットを踏まえて検討する必要がある。」と記載されていますけれども、あえてデジタルのデメリットについて細かく検討する必要があるのかということについて意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 と申しますのは、次のページで、「『デジタル教科書』の範囲について」とか、「『デジタル教科書』と紙の教科書との関係について」などと整理されていますが、私たちも現場で、教材等がデジタル化されても紙の教科書は当面なくならないだろう、紙の教科書は必要だろう、という前提の下に事業を展開しています。そうした中で、紙ベースでの教科書の利点を生かしつつ、デジタルの良いところも生かすということで、どちらか二者択一ではなく、デジタルの良いところを更に活用するというような形にすべきであり、デメリットについて考え過ぎると何も進展しなくなるので、デメリットについては余り神経質になる必要はないのではないかと思っています。

【堀田座長】 黒川委員。

【黒川委員】 先ほど山内委員がお話になった英語の問題ですが、小学校英語はこれから教科書が作成されるということで、今回の問題を考えるのに非常に適切であり、課題でもあると思っています。従来の外国語活動、コミュニケーション活動だけであれば、電子黒板やプロジェクター、指導者用のデジタル教材は、コミュニケーションを活性化するために有効なツールでした。ここに教科書が入ってくるわけです。しかし、ヒアリングやスピーキング、音声コミュニケーション、アクティビティなど、紙よりもデジタルを活用した方がはるかに有効な側面もあり、紙にするよりデータが欲しいというのが正直なところではないかと思います。

 さらに、中学校との連携の点から言うと、読み・書きの要素が配慮され、例えば、文字や単語になれ親しむような学習も入ってくる可能性があります。私は、小学校英語では、コミュニケーション面からタブレット端末等は不要ではないかと最初は思っていたのですが、小学校5、6年という発達段階で考えると、個別学習も可能にするという面では極めて有効であり、メリットが浮かび上がってきます。

 飽くまで小学校英語は一例ですが、今後議論として、教科書がデジタル化されることによって、英語が好きになるようなコンテンツを用意できる、ネイティブな発音を自在に聞かせられる、先ほど山内先生もおっしゃったように先生方の授業サポートができる、といった側面で、前向きに考えた方が良いのではないかと考えています。

 頂いた課題の、「教科書の意義・役割について」ということを考えると、今申し上げた小学校英語の問題は非常に課題となります。また、二つ目の丸で発達段階について記載がありますが、指導要領は発達段階に即して作られており、低学年ではどうなのだという議論があるかと思います。これまでも「掛け図」という指導用教材を使うことが一般化していたことを踏まえると、教科書紙面を拡大提示できる指導者用デジタル教科書は授業の中では非常に有効で、紙の教科書との親和性は高かったと言えます。

 では、学習者用デジタル教科書はどうなのかと考えたときに、子供が教材を自分で加工したり、書き込みをしたりする立場になり、その操作の手順や指示が定着するまでに時間が掛かるということを考えると、低学年あるいは中学年の一部には活用の課題が残るのではないかと思います。情報を加工することなどが自らの学びに結び付いていくと子供たちが理解することが重要なのですが、現時点では、3年生辺りからの使用をイメージした方が良いように感じます。  

また、実際に検証してみると、タブレット端末だけでの文章の読み込みはなかなか難しいというのが現状です。特に小学校の教科書は、文章や図表などの学習内容が見開き紙面で構成されている場合が多いからで、その点については、今後検討しなければならない課題だと思います。中学校、高校に関しては、個別学習の側面を考えると、非常に有効ではないでしょうか。 

【堀田座長】 ありがとうございました。東原委員。

【東原委員】 「教科書の意義・役割について」の一つ目の丸について申し上げます。「教科書が持つ基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するという意義・役割は今後も期待されることが必要。」とありますが、これはそのとおりだとまず思います。問題は、保障するための仕組みだと思うのですが、これまでは紙の教科書で保障してきました。しかし、デジタルが出てくることによって、これまでできなかったような保障ができるようになりますが、紙の教科書の範囲だけに限るとした場合は、シミュレーションやビデオなど、立体的に何かが示せるという話がなくなることも検討の土台に載るかと思います。申し上げたいことは、紙で十分保障できていたと考えるよりは、デジタルを入れることによって、より基礎的な教育内容の履修が保障できる側面もあり、更に発展的なものもあるということです。ですから、デジタルらしいところで基礎を保障するものと、より発展的なものがあるということを明確に意識していかなければ、我々は判断を誤るのではないでしょうか。

【堀田座長】 ありがとうございます。新井委員。

【新井委員】 この「教科書の意義・役割について」ということを最初に踏まえて「『デジタル教科書』の導入による効果・影響について」を考えるとすると、「『デジタル教科書』の導入による効果・影響について」の最初の丸と最後の丸が一見区別しにくいのですが、最初の丸は機能としてのデジタルと捉え、最後の丸は教員の介入はどうすべきかに関することであるという解釈で良いのでしょうか。

【堀田座長】 そのようなことをこれから検討していくということなのですが、一つ目の丸は機能の話、紙かデジタルかという単純な話です。

【新井委員】 そうすると、ここの問題と、次のページの、どこで切り分けているかという問題で結構議論が違います。よく学習記録データの扱いをどうするかという問題が出てくる一方、その点には余り触れられていないのですが、この問題は、学習記録データは「教科書の意義・役割」の中に入っていないから入れていないということなのでしょうか。つまり、教科書は問題集ではないので入れていないということでしょうか。

【堀田座長】 最後の「導入に当たって必要となる環境整備」の話題として、個人情報等の扱いやビッグデータが集まるからこそできる教育指導といったことは議論していかなければならないと思います。ただ、現状の教科書の枠組みの中にそういった話題はないので、「教科書の意義・役割について」の部分には書いてないということです。

【新井委員】 書いてないということですね。しかし、流通している「デジタル教科書」というのは、教科書と資料集と問題集が一緒になっているようなものですから、それをまとめて検定するということになると、紙で言えば、教科書も資料集も問題集も全て検定するのと同じことです。「デジタル教科書」の議論になったときには学習記録データの話が付いて来る一方、教科書の議論になったときには学習記録データは付いて来ないので、学習記録データについて扱うのは最後の方で良いという解釈ですか。

【堀田座長】 最後というのは、今の整理枠で言うとそうなるというだけであって、そこが議論の重要な点であれば、前の方に持ってくることも含めてこれから検討します。

【新井委員】 分かりました。そして、もう1点、今日の議論で気が付いたのは、供給についてどう考えるかということはどこかに載せておいた方が良いのではないかと思いました。

【堀田座長】 はい。ありがとうございます。

 天笠委員、お願いします。

【天笠座長代理】 検討の視点は、全体として大変目配せが効いたものだと受け止めさせていただきました。その上で、3ページの「導入に当たって必要となる環境整備」について申し上げます。環境整備というのは、どちらかと言えばハードウエアの方の環境整備ということになるかもしれませんが、学校生活や子供のサブカルチャーといったことも含めた、学校文化とデジタル化という意味合いにおけるテーマ設定も必要ではないかと思います。

【堀田座長】 尾上委員、どうぞ。

【尾上委員】 いろいろと議論する上で、我々も保護者の立場でアンケートの調査依頼があったのですが、子供たちに話してみると、子供たちの意見の方が面白いです。やはり、使いたいかと言ったら、使いたいとすぐ言いますので、細かな影響というよりは、子供たちの意見をしっかりと受け止めて動かなければならないと思いますし、本当に使いたいという子供たちが多いので、使わせてみるというのが早い手ではないかと思っています。

【堀田座長】 ありがとうございます。

 これで全員発言していただきまして、大変ありがとうございます。

 資料6については、私と事務局との調整が不十分であり、言い回しが不適切な箇所があり、大変失礼いたしました。もちろんまだまだこれからバージョンアップされていくものでございまして、抜けていた論点についてはこれから入れてまいりたいと思います。

 メリットとデメリットという言い方についても、ちょっと配慮が足りなかった部分がありますが、いずれにしても、物事には必ずメリット、デメリットがあるので、新しいものを入れていくとしたら、どのように従来までのメリットを残しながら次のメリットを入れていくかという話になると思います。そのような意味では、デメリットというよりも課題と言った方が良いかもしれません。第1回会議で申し上げたように、この検討会議は前向きに進めていくことが前提ですので、そのような課題をきちんと捉えた上でメリットを享受できるように進めていくという姿勢で進めていきたいと思います。

 本日はもう予定の時間になっておりますのでここまでとさせていただきますが、言い足りなかったことがあると思います。大変恐縮ですけれども、電子メール等で事務局に文章の形でお送りいただけますと反映させやすいので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後に次回のスケジュールにつきまして事務局より説明をお願いします。

【事務局】 是非、委員の先生方の意見をお寄せいただければと思います。

 次回ですが、資料7に記載のとおり、9月15日(火曜日)16時から18時で開催予定となっております。場所につきましては未定ですが、決まり次第御連絡させていただきます。議題については、詳細は追って御連絡させていただきます。

【堀田座長】 本日はこれにて閉会としたいと思います。皆様方、お忙しい中、大変ありがとうございました。本日御報告いただきました4団体の先生方にも感謝申し上げます。

── 了 ──

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初等中等教育局教科書課