「不登校に関する調査研究協力者会議」委員による論点例に対する主な意見
「個別の教育支援計画」による困難を抱える児童生徒への支援
<内容について>
- 特別支援教育の教育支援計画のように、親の意見が入っていると良い。現状とこれからどうなってほしいかを保護者と確認する必要がある。
- 知能検査的なことは、全員に行っており、一つのスクリーニングを行っている。保護者からも話を聞き、調査表にないことも拾い、教育センターにつなげることもある。
- 個別の教育支援計画は、寄り添った共感も必要。保護者の意見を入れることも自校向けのカスタマイズということになろう。カルテのように専門家として自信を持って示せるものにならないだろうか。
- 遊び・非行型の不登校については、計画を作る際、家庭の状況を含める場合、警察・児相との連携の際は情報の管理が問題である。交友関係が入ってきたり、保護者に伝わる状態であれば、児相、警察との連携は難しくなる。それを前提とした情報の管理が求められる。
- 特別支援における計画は保護者同意の下、前向きに作成されるが、不登校において、保護者の同意を得られないときはどのようにするのか。
- 発達検査を実施し、その結果に基づいて、教員一人一人が生徒、保護者と三者面談を行い情報を収集し支援計画を作成している。学習支援計画とアセスメントのセットである。
- それぞれの子供に合った学習支援計画が必要となるが、現場が混乱するであろう。カルテによって、その子は発達的に問題がないから、2年かけても3年かけても基礎学力を付けようという計画ができる。
- 個別の教育支援計画を義務化して、学力を担保するということを含めて議論していきたい。義務化となれば高等学校進学の際、確実にカルテとして引き継ぐ形式がよいだろう。
- 特別支援教育で、個別の教育支援計画が学習指導要領の留意点に明記されているように、不登校の計画も根拠があるとよい。計画の関連機関の中に、フリースクールや適応指導教室を入れる必要があり、合議制にメリットがある。
- 将来何になりたいかによってどのような学習が必要かという目的ベースの勉強であれば、学習内容についての必要感も高くなる。
- 学校では、生徒指導用と特別支援用と児童相談所提出用のシートなど用途に応じて様々な資料があり、それらを一緒にできないか思案中。不登校の支援計画が入ってくると難しい。外国籍の子供のためのシートもある。
- 個別の教育支援計画を作成する場合、形式や記入内容など、不登校だけに特化すると困る場合もある。
- 個別の特殊要因をどれだけ盛り込めるか、一度、全ての要因を書き出して並べて選択する作業が必要かもしれない。オフィシャルなシートを作ってみたい。
- まず学校が見立てをすべきである。不登校のスタートとなっているのは学校である。
- アセスメントとプランニングが必要。不登校の要因は何かを解明するスタイルのアセスメントでなければならない。特別支援における計画の内容だけでは不登校対応は不十分である。
- 小中9年間において、保管、接続をどうするのか。開示請求の対象となった場合、請求に耐えられるか。持っていることになっていていいのか。個人情報について慎重に取り扱う必要がある。
<運用について>
- 組織的に動くなら一週間で個別の教育支援計画を作成すべき。でないと担任の負担も増大する。
- 状況の変化を記録できないときは、書き込む情報がマンネリ化し、PDCAサイクルに乗せた資料にすることが難しい。
- 本校では、生徒一人一人に対してパーソナルファイルを作成し、アセスメントを実施している。教員が、生徒一人一人の出身中学校に出向き聞き取りを行っている。適応指導教室にも個別の話の聞き取りを行っている。
- 家庭の状況などを記したアセスメントは内部資料。個別の教育支援計画となるカルテは、オープンとしている。それぞれシンプルなものにしている。
- 教育委員会も、引き継ぎ用のシートを作成するべきである。
- 担任が大変であるので、簡易版の個別の計画を作成している。その計画を元に教師がアプローチしている。
- サポート学級(特別に支援の必要な子供たちを取り出して学習するクラス)の判断に個別の教育支援計画のようなものとして使っている。
- 適応指導教室が個別の教育支援計画を客観的に作り、コンサルテーションを実施することもできるのではないか。
- 教員の負担になってはならないが、どう寄り添っていくかの記録は必要。センターでも指導計画、記録の蓄積はあるが、学校につないではいない。相談内容など外部に伝えられない情報も含まれているため難しい。
<その他>
- 個別の教育支援計画については、簡素な1枚のシートにまとめている。現場で、またこんな書類が増えたのかという反応があろう。1枚にまとめるのは現場の工夫でよい。
- 見せてはいけないものは作ってはいけないと思う。覚悟して作るのであれば、見せる局面も想定すべき。
- 個別の教育支援計画からイノベーティブなアイディアが生まれるだろうか。不登校の子供を成績順に並べた場合、上位の1割と下位の1割には無意味。視点を変えて、別のカリキュラムを設定してはどうか。
- 校務支援システムで事務手続の負担は軽減化している。フォーマットがあって情報を打ち込んでいけば1枚に仕上がることが良いのではないか。
- 個別の教育支援計画を作成することになるとかなりの手間がかかる。特別支援学級の子は保護者も理解があり、特別な教育課程であったり、自立支援活動が必要であることも理解されているが、不登校の子供たちに保護者の理解がない中でこれを始めたときに、うちの子を特別な子と見ていますねということになる。
- アレルギーについての管理指導票と同様にできないか。保護者の理解があって、教職員の見立てがこうであると肯定的に見てもらえれば生きてくるが。
- 特別支援教育においては、保護者、関係者が集まって計画を作るが、これはケースカンファレンスの結果をまとめたものである。
- 貧困・虐待と不登校に関して実態把握が重要であり、個別の教育支援計画は大切と考える。スタート段階で関わる学級担任が作成するのが一番と思う。
- あまりタイプ別の計画にしない方がよい。先生と子供の人間関係を型にはめようとするとうまくいかないのではないか。
教育支援センター(適応指導教室)の実態把握と改善充実
- 適応指導教室の名称を変えるべき。教育支援センターという名称も定着しない。地域支援センターという形にして、30日という不登校の仕分けをしつつ、それ以前の早期段階のアセスメントとしてコンサルテーションを図っていくという形にする。制度的に位置付けることが必要であろう
- 適応指導教室も数はあるが、活用されていない状況があるのではないか。運営についてきちんと調べないと分からない。職員の内容・質の充実が課題。
- 狭くて遊び場もない施設もあるが、要件を厳しくすると、作れなくなる。
- メスを入れないといけないが、基準を高くすると、あきらめられてしまうかもしれない。
- 現在の適応指導教室の自治体による差が大きい。成り立ちの議論(学習面、対人関係、施設の新設など)でその性格が様々であるとともに、経緯、施設の確保などが様々な中で設置、運営されているため、一定の線を引くことは難しいと思うが、全ての市町への設置を義務化することや一定の水準を示すことは子供たちにとっては間違いなくプラスである。
- 現場から言うと適応指導教室に入れることは、最終手段と考えている。引き受ける方も気楽には受け入れない。毎週水曜日は、開かない。学校に戻すことを前提に考えている。
- 適応指導教室は、学校を主体に考えてくれることはありがたいが、積極的な対応はせず、ここまでと手を引いてしまうことがある。また、子供たちが、不登校状態に安定してしまう可能性がある。復帰に向けて揺さぶれなくなる。
- 教育支援センターが学校復帰を目指すことが前提であることは大切である。そうでなければ、センターの位置付け自体が変わってくる。ただし、最終目標は、子供の社会的自立である。次のステージに進んだところで、その子供のプラスになるようにしたい。
- 子供が適応指導教室から出られなくなってしまうという課題がある。学校外の逃げ場をどう作っていくか。逃げ場を上手に作らないと、学校は行かなくてもいいものだというメッセージを文部科学省が伝えることになり、義務教育の破壊ととらえられるのではないか。
- 適応指導教室の実態調査については、時間的な制約もあると思うが前例もあるので、それらを参照しつつ適切な実態把握に努めてほしい。
既存の学校になじめない子供に対する柔軟な対応の促進
- 学校とは、社会にソフトランディングさせるための役割がある。社会に出るための、身に付けさせなければならないことを明確にすることが大切になる。
- 学力の担保がキーワードとなる。学力について、今の学習指導要領では対応できないだろう。学習についていけない子供達はボーダーライン上にいるようなものである。立花高校のように、個別対応が必要となるだろう。ユニバーサルデザインの考え方があれば、個別の情報がなくても対応できたはず。多様性は認められてよいと思う。
- 不登校における教育課程の弾力化が施策として全国化していない。高尾山学園のように堂々とやっている学校もあるのだから、民間もやればよい。校地校舎の問題もあるのかもしれないがやればできる。
- オンラインの学校をつくったらよいと考えている。能力に応じて飛び級も可能。オンラインがよい。ITの活用により高校に進学した生徒がいる。直轄で関われる国立大学がオンラインの附属学校を作るという方法はどうか。
- 基本的理解として、「多様性の承認」を必ず入れていただきたい。
- 本市では、情緒障害、発達障害がある場合、愛の手帳を手渡している。一方、IQの高いの子供に対しては、大学生を派遣して個別の対応をしている。公教育の中でも何か手立てはないかとプロジェクトを立ち上げている。