【資料7】作業部会における主な意見

1.英語力評価・入学者選抜等における英語の外部試験の活用について

○ 英語の資格・検定試験の合格が学生自身のキャリア形成をしていく上で非常に有効な試験として機能している。更に一般入試に導入していきたい。

○ 学生自身が、一人一人がその成績を受けとめつつも、自分のスキル向上のためにどのように意識してそれを使っていけるかを教育の中で考えるように大学も支援することで、学生が社会に出るとき、また、出てからも、生涯の英語学習につながっていくという観点が非常に重要。

○ 今回を機会に、4技能評価を行うことについて、社会的なニーズが大学入試で終わることなく、例えば就職など卒後のキャリアにおける活用の方向性が出せないか。

○ 英語の資格・検定試験を入学者選抜に活用することには賛成。試験の目的が各大学の目的・人材育成と必ず一致しているわけではないことも議論の視野に入れるべき。

○ 大学入学者選抜に当たっては、高等学校での学習を総合的に判断するものであり、資格取得のための勉強が正課の授業のほかに求められるとすれば問題。学習指導要領はもちろんのこと、入学者選抜の在り方と平行して議論をすべき。

○ 世界のトップ100大学中、日本と韓国の大学を除く大学が、先進国からの留学生の英語力を測るため、原則として4技能試験のみを活用(TOEFL iBT, IELTSなど)。日本の学生の海外留学を推進するのであれば、まずこの現状を受け止め4技能試験を行うべき。

○ 生涯にわたって英語を学習していくという動機付けが必要とあるが、今一番多いCEFRのA1の学生層が、ほとんど動機付けがない、自分が英語を使って将来どのように英語を使うのか描けていない段階では、4技能試験を受ける動機付けが出てきていないのではないか。
 したがって、学校で強制的に受けさせられる、受験のために受けているという姿はそのままでは変わらないなというような危惧を抱いている。4技能の外部テストを受けるのであれば、どのように自分の将来とつながっていくのかというようなことをイメージ化させていくということを、学校及び試験団体の方々と議論していく必要がある。

○ ほとんどの受験生がCEFRのA1、A2ぐらいの下に位置するとすれば、入学者選抜で活用するためには、得点の換算が厳密にできれば理想ではあるが、その先で、例えば今のそのCEFRレベルや、バンドを有効に活用するという議論があった場合には、例えばB1よりも下のところでは、更にもう一つか、二つに分けて活用できるよう検討していただきたい。

○ 4技能のテスト、又は学習を進めると学校での時間が足りなくなるのという懸念も出されたが、4技能にすると何かが難しくなるわけではないと考える。基本的には文法能力を中心にしっかりした能力があれば、あとは各モードを使うときに、どのように合わせていけば良いかが課題になるので、4技能で労力が4倍になるというわけでは決してないと学識的には認識。4技能にすると、「読んだものを書いたり、聞いたものを話したり」など、授業のバリエーションが増えて、より実生活に合ったようなコミュニカティブな状況になり、生徒学生のモチベーションの点からも非常に身近に感じられるような授業の展開が可能となるなど教育的効果が期待できる。

○ (何回か受験することを前提にして)試験結果に対するケアを、資格・検定試験団体と学校とともに考えていかなければいけない。スコア、あるいはバンドが出たときに、今後、どのように勉強したらよいのか、的確なアドバイスをそこで与えられなければ教育的な機能が弱くなる。教育的効果の観点から、学校も資格・検定試験団体もしっかりと受験後の対応を考えていく必要がある。

○ 推薦入試の場合には、11月の初旬に出願期間が終わるので、その前までに結果を得る必要がある。活用する際、試験実施の時期について配慮が必要。

○ 受験生の増加が見込まれる中で、民間の試験団体は、特にスピーキングやライティングの採点をコンピュータではなく人間が行う場合、そのための能力を備えた採点者を必要数確保できるのか。さらに、採点者が日本人であるかネイティブであるかによって観点が異なることも踏まえ、大学入試に活用される重要な試験の評価であることから、採点基準の開示や、必要に応じ答案の開示が行われるべき。

○ 大学入試センターのリスニングは2006年から実施。50万件のテストをICプレーヤーを使って行うが、トラブルが出ると、厳しい評価を受ける。また、経費について、ICプレーヤーを作るために相当の費用がかかる。4技能評価になると経費のことに関して、その値段付けが正当であるかどうかということも、説明が必要になるのではないか。

○ 公正性の観点から、テスト部門と、評価用のテストと教育部門を両方持っている団体に関しては、そのファイヤーウオールとして部門間の情報分離が行われているかどうか。

○ 大学の中に入学してから学ぶための英語能力を測定しているという部分と、入学者を選抜するために必要とされているような水準を考え、そのための英語能力と、この二つをどのように見るか。大学の中でも非常に多様であるので、どれだけ柔軟に対応できるかがポイント。

○ 全国で会場がどれだけ多く、受験のアクセスが非常に容易であるということが、できる限り保障されることが期待される。費用の問題も、できる限りのことはお願いしたい。

○ 公正性、厳密さという点で、受験者本人が、受験後の成績も活用できる状態が保障されることが必要。更に厳密さについて研究していただきたい。

○ 英語力の多様性について、グローバル化の中で海外でも使えるようなコミュニケーション能力を測る観点と、学習指導要領により沿ったものの、どちらも大学としては必要。また、各大学、学部、学科間でも異なる状況があるので、両方を視野に入れながら検討していただきたい。

○ 高専の専攻科も含めて7年の教育の中で技術者教育JABEEの認定を受けたときに各高専で外部試験、特にTOEICを到達目標として掲げたという経緯がある。単位認定、専攻科の入学試験などに活用している。事例として、本科の1、2、3年がGTEC、それでTOEICが4年、5年を活用しており、試験の一貫性という言葉の趣旨が、何か一つにするということであれば大変厳しい制約になるので、多様性を前提に検討する場合は配慮していただきたい。

○ 受験した結果を十分に活用し切れていない。今後の課題としては、資格・検定試験も単位認定や語学教育にどのように結び付けていくかを考えていく必要がある。

○ 受験生に最も合った試験というのは何かという問題、それから受験の機会。全国の受験生、均等にできるだけ受験機会を与えるべき。また、複数の資格・検定試験を利用する場合には、複数の試験間の得点調整をどう行ったらいいのかなど、様々な課題があり学内の議論が前に進んでいかないという状況にある。様々な検討結果を得て、学内の入試改革にもつなげていきたい。

○ 民間の資格・検定試験を授業に活用という部分で、例えば外国語学部で学科の教育目的も違うので試験も、例えば英米語学科ではTOEFLを最初に受けて、その他英語以外の専攻の学科ではTOEICというようにカリキュラムと連動した形で取り入れている。大学はどのような能力を学科として、大学として求めているのか発信していく必要がある。

○ スピーキングテストを入れるのは賛成だが、測られている能力は本当にスピーキングの能力かどうか、オーセンティックが本当の状況であるか、本当の会話ではない可能性でもあるので、プレゼン、会話など多様なスピーキングを入れていかないと、今後これを見ていかなければならない。

○ 4技能が入るというときに、一番大きなインパクトはスピーキング。コンピュータで行っている場合、人間が対応する場合があるが、受入れ可能な受験者の上限を示していただきたい。大学入試センターを受けている50万人が対応可能なのか。資格のある採点官がちゃんとできるような体制があるのかどうか。スピーキングをパソコンで対応する場合も、採点の問題がある。採点対応が可能なキャパシティーの上限が分かると良い。

○ 入試は日本ではかなりセンターの場合も、個別試験の場合も、セキュリティーは厳しく、それぞれの団体の中でテスト作成の様々なプロセスに関わっている人が、本当にその人たちの関連者が受験者として受けてきていないのか。

○ 2020年度から新学習指導要領全面実施に日本人のアイデンティティーに関する教育の充実も含む伝統文化、歴史の重視等々、日本人が発信するのは、日本のことについて聞かれ、日本のことについて問われるので、資格検討試験においても、読むパッセージであるとか、ライティングのトピックや、スピーキングのトピックの観点としてあるべきではないか。

○ ライティング、スピーキングなどの発信型の技能を評価することは大変望ましいが、複数回受験になると、採点基準、採点官の質の確保が課題ではないか。

○ 日常の活動の評価において、英検等を活用するときに、時間、費用の問題がある。公費の負担がある場合もある、公立義務教育学校としては必要な支援ではないか。

○ 日常の学習活動の評価に関しては、小学校は音声が中心であり、その評価はペーパーテストになじまないので、個別面接、グループ面接をしているが、適切な評価はどうあるべきか大きな課題。

○ 高等学校等の入学選抜等に活用する評価という観点から、中学校の立場では、多くの私立の高等学校において推薦選抜等で英検などの結果により加点するというシステムが過半数ぐらいあるという認識。公立高校もあるが、例えば高校の場合には、生徒が自分で自己PRカードを作成しその中で書くことができる。ただし、入学者選抜の材料として使うとなると、中学校の学習指導要領との整合が必要。今後は指導すべき内容から、教え方、学び方も示されるということなので、これまでのように厳密に、例えばこの言語材料は学習指導要領の範囲なのか、逸脱しているのかという議論だけではなく、もっと広くコミュニケーションという視点で言語材料や活動を考えられることになるので、とても良いと考える。中学校、小学校は日常の学習活動の評価そのものをしっかりと取り組んでいくということが大きな課題。

○ 入学者選抜でも英語力評価でも、ある特定の試験に全てお任せという訳には行かない場合があるはず。その学校/その科目の目標に対する到達度を100%測定する外部試験があるとは考えにくいので、別の(独自の)測定手段と組み合わせる必要があるのではないか。

○ 大学入試を変えれば教育現場は否応(いやおう)なしに変わるという発想が見られるが、そう簡単には行かない。まず現場は混乱に陥る。新しい教育内容(スピーキング、ライティング用)に対応できる教員が現場に十分な数だけ揃(そろ)うにはかなり時間が掛かるはず。教員養成の見直しを含めてじっくり時間を掛けて進める覚悟が必要。

○ 高大接続改革実行プランが提示され議論がなされている中で、大学入試制度全体の改革に向けて、これまで高校と大学を点で結んでいたものを、線ないし面の形で捉えていく必要がある。その入試改革の中の一つとして英語を4技能で測定していこうということは非常にすばらしい。実現できるような取組が今後更に進んでいくと思う。 ただし、民間の資格・検定試験導入となると、例えば医療系の中でも本当に地域の福祉や看護とかいった学部におけるアドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシーに対してどのような人材を求めるか、その場合、どのような英語力を最終的に持たせて卒業させたいのかが問われる。生涯にわたって学習者として続けていくための人材をどのように育てるのかという観点に立ったときに、入り口のところというのは、高校までの基礎学力をきちんと評価できる試験であれば良いと考える。

○ 大学の学部において英語の試験活用を検討するに当たり、かなりの情報がないと思う。民間の試験のそれぞれの特徴などの情報をもっと広く発信することが各大学における検討の上では非常に重要。また、専門家の意見なども聞きながら検討を進める必要がある。

○ 英語4技能資格・検定試験関係団体からの情報を明示するかどうかが大きい。入試に関わる人たちに正確な情報を今まで出してきていないため、いろいろな解釈が語られるということが起こっている。例えば採点基準を開示できるのか。開示をした方が良いが、どの程度まで開示するのか、波及効果を考えたときに、どうなのかということは慎重に考える必要がある。

○ 入試の判定では、総合点、又は基準のような形で議論するのかによって大きく異なる状況。例えば、B1のときは英語力が高くても、3教科合計で評価するときよりも、英語高得点の人が他の教科の分を補ったりできる。そうでない総点主義かどうか。全国で実施会場数が限られているとなると、いろいろな要素が相互に依存してしまっていて、非常に難しい。

○ 中学校における活用という観点から、これから小学校も英語教育の導入拡大が進められて、小中高の指導、評価が一貫性を持ったものにする、このような指導・評価を行うということが大きな課題。従来のように知識の量を測るだけではなくて、活用力を測るので、学習成果の表れ方は生徒によって非常に多様であり一つの基準だけでは測りにくいところがある。そこをどうするかというところが大きな課題。
 評価の目的は、日常の指導に生かすことが中心であり、そのような観点から、個人評価という要素も非常にウエートは占めるので、この入学者選抜にどのようにつなげるかが課題。小・中学校の授業における評価の改善そのものが先にあるべきと考えるが、小・中・高校の授業が、その次の入学選抜のための技術的なトレーニングに終始するようなことになってはいけない。また、ある特定の資格・検定試験対策に加熱するというようなことも懸念されることなども考え、学習成果をできる限り多角的に測る一つの方法として資格・検定試験が導入されるということは非常に良いと考える。

○ このような方向性の改革は非常に期待。更に検討し、良い成果が出ることを期待。

2.検証事項について

(1)日本人の英語力の現状を踏まえたテスト開発の在り方

○ 新テストで英語4技能測定を行うことを前提とした方策を検討する案に賛成したい。
この場合、高等学校指導要領を踏まえ、高等学校での学習成果が測定できるものを期待。民間の資格・検定試験には良いところがあるが、個別入試における活用については、各大学等の目的・人材育成との関係を踏まえる必要があると思う。

○ 民間の資格・検定試験団体等のノウハウを生かして国と協働で実施する方策を検討できないか。学習指導要領や日本の学生の実態にあったものを、民間のノウハウも生かしながら、国と協働で開発・実施してはどうか。

○ 学習指導要領との関連も踏まえ、新テストは4技能測定が前提となるかと思う。50~100万人の受験者が予測される新テストではあるが、これは長年大規模試験を実施してきた民間の資格・検定試験の活用が望ましいと考える。新テストの妥当性・信頼性検証には膨大な時間と労力が必要で、特に4技能ということであれば、面接官や採点官採用等のロジスティクスへの投資も必要となるが、民間の資格・検定試験を活用すれば、そのような課題を相当軽減できると考える。

○ 新テストで英語4技能測定を行うことを前提とした方策を検討すべき。CEFR-A1のレベルの生徒学生は非常に多いことを踏まえ、入学者選抜に利用する場合、資格・検定試験の識別能力はどれぐらい持てるか。入試における選別を考えたときに、A2、A1のレベルを、もう少し細かく日本の現状を踏まえて検討しないと識別は厳しいのではないか。

○ 高校基礎学力テストでどのぐらいの力を求め、その後、大学入学希望者学力評価テストでどのぐらいのところを目指すのか。これは一緒なのか、違うのかということが実は明確にされないまま議論されている。高校の教育の質保証という議論が元々あったはずであり、それがこのレベルであるという議論がされるべきではないか。例えば想定されているレベルはA1、A2であるという話なのか。大学の入学者選抜ではB1とするとしても現実は、そこまで達成していない。また、中学校側で例えば3割、高校でも達成目標が3割という結果が出もある。高校でどうするかという話の前提としては、中学校の出口のところでどのぐらい求めていて、そのラインを超えていないとそもそも高校でやれることは限られているので、現実からなかなか変わっていかない。是非、もう少し大きな話も並行して行いながら、測定する対象となるレベルの議論をしていただきたい。

(2)受験料、受験機会(会場数、実施回数)

○ 受験料、受験機会の地域間差は現状として大きな課題。

○ 受験料、実施会場等については、民間試験の活用を促進し、その結果、受験者増を前提とすれば一定の格差解消が期待されるが、民間の試験にすべて委ねる場合、全国一律の受験料、生徒数に応じた受験機会の安定的な確保は難しい。

○ 経費も含めて公正性という問題がある。1回限りの入試と違って、複数回受験をすることになると、経費が高くて受けないという生徒はいないと考えるが、費用によっては何回に絞る生徒、毎回受ける生徒というところの不公平性が出てくるのではないか。

○ いずれの地域においても安定的、かつ受験料によって生徒の不公平な状況が生じないような受験機会を確保するため、国が関与する全国一律の英語4技能試験の実施とともに民間の資格・検定試験の活用促進を図るべき。

○ 資格・検定試験を活用した入試を行う大学は、試験会場として大学の施設を無料で貸し出すなどして、テストを実施するコストをさげることに協力し、試験団体は少なくとも大学受験生に関しては受験料をさげることを検討すべき。また、大学は、入学者選抜料の引下げを検討すべきである。

(3)試験間の換算などに関する検証について

○ 目的等が異なる複数試験間において、精度の高い換算表を作成する検証は「公正性」の観点から相当なデータ等の裏付けが必要(困難であること、また慎重に対応すべきとの意見が複数)。

○ 精緻な換算表の作成、入学者選抜における換算方法の検討については、試験の目的、日本人の英語力と試験のレベルの違いなど、公平性・妥当性等を担保することは非常に困難と推測。

○ 検証に当たってどのような母集団、標本抽出を行うかなど必要な時間・費用・作業体制等の面も考慮した検証の在り方について、慎重な検討が必要。

○ 一番大事なのは、各学校が試験の妥当性等を検討し、それぞれの活用に関する選択をするのに必要な情報を十分に提供していくこと。

○ 当面は、各資格・検定試験の妥当性・信頼性の観点から、各団体等が既に実施しているCEFRとの関係性に関する検証状況(背景、方法、プロセス、結果等)について、各団体等の協力を得て積極的に情報提供を行うことを進めてはどうか。

○ また、各学校、生徒学生がそれぞれの試験を選択する際の参照情報となる対照表の裏付けとなる補足的な調査研究を実施してはどうか。また、CEFRとのマッピングが変更される場合、変更する予定の内容、理由、背景となる資料を試験団体から当協議会メンバーに開示してもらい、議論するルールを構築してはどうか。

○ 「換算」という言葉が精緻な換算を行うものと捉えられているが、学校、学生生徒が参照するに当たり、「レベルを比較対照」することを通じて、入学者選抜における基準点やみなし満点ラインを設定して「換算」するという一般的な使い方もあるので、整理が必要ではないか。

○ 精緻な換算表の作成については関係者の慎重な御意見も多い。CEFRとの関係性は行動の尺度、主観的要素は排除できない。参照して、このくらいの関係性あるということを検証し現在活用している対照表を補強することも考えられる。

○ 英語教育の方にポジティブな、肯定的な波及効果を期待しながら、リスニングは一般入試で、推薦入試では面接試験を行っている。今後新しい形で外部試験を導入していくことを検討している。授業の方で活用する場合も、英語の授業をとるときに、A基準、B基準、C基準という履修条件を設け、A基準は、例えばTOEFLで何点、TOEICで何点、英検で何級以上というように独自で、換算表として少しアジャストした形で出していてる。大学で活用している換算表がもう少し精巧なものになれば有り難い。

○ 対照表の出し方として、4技能の学習を促進するということを考えたときに、4技能を別々に出すのではなくて、4技能を一括した形での出し方が良いのではないか。一括して、CEFRでこのあたりにあるという考え方をとった方が、教育的には示唆があるものになるのではないか。

○ CEFRを基に開発されたCEFR-Jなども日本人用に開発され、日本人がまとまりそうなところを分けて見ているので、参考として押さえておくのは非常に重要ではないか。

○ 検証事業はこれから換算式の作成で非常に大変だと思うが、最終的には全体のスコアで出ると考える。各試験、個別のS、L、R、S、W、特徴が非常に大きい。各コンポーネントの中でも文法を直接測定する問題もあったり、融合型の問題もあるので、その辺を議論して、いかなる方法で個別のコンポーネントを換算していけば、正確ではないにしても、最も有効な換算ができるのか。それを基にCEFRに基づいた結果が出てくるのか。CEFRは大ざっぱであるが、これを、例えばケンブリッジスケール、CSEなど、細かく分割して4技能で測定する方法も出てきているので、検証し、できる限りの換算を行っていただきたい。

○ 精緻な換算については試験の性質が違うので無理だと考えるが、難易度対照表程度のものがなければ、大学側もどこに設定していいか分からない。CEFRの目盛りだと大き過ぎる、1点刻みだと小さ過ぎて無理だというのであれば、少なくともB1マイナス、B1ニュートラル、B1プラスぐらいの、CEFRよりも細かなラインでの難易度対照表が必要。少なくとも難易度対照という程度のものはL、R、S、Wに関してなければ、大学側としてはどこに設定していいか分からないという現実があると思う。

○ 換算表は、異なる目的を持つ試験であるため、換算できるということはあり得ない。完全に一致するということはないとすると、どちらかの方が受験者にとってはいい点が出るということになるので、必ずいい点数が出るテストの方に流れていくことが大きな問題である。ヨーロッパの場合、CEFRに関連付けといっても、それは基準として用いており、それでも問題は起こっている。日本のように点数レベルで置き換え可能という形で利用してしまうと、かなり混乱が起こると考える。やさしいテスト、簡単に点数が出るテストに流れていく可能性がある。試験の難易度の下げ合いのようなことが、実際にヨーロッパでも起こっている。

○ 1点刻みの換算表を作成すべきでない。1点刻みで合格、不合格を決定しているシステムも改革すべきである。飽くまで、大学のアドミッション・ポリシーやカリキュラム・ポリシーに照らして、バンドでの対応を考えればいい。英検やIELTSを点数化することは意味がない。

○ 日本のシステムの問題として、日本の場合、点数が総合点として判断されるが、ヨーロッパの場合はB1、B2というふうに設定しており、そこに達しているかどうかが問われる。日本は全部の点数が問題あると、カットポイントだけではないというところが問題。

○ 今後、新規のテストがあった場合、どうなるのか。世界にはまだこれ以外にも大きなテストがあり、テスト開発中でもあるので、新たに参加したい団体が出てきた場合、どのように受け入れるのか、認定のシステムがどうなっていくのか。

○ 得点換算については、作業部会でも有識者数名が反対意見を表明されたこともあり、十分な議論と準備が必要と考える。英検協会では、連絡協議会や作業部会での御意見も参考にしながら、3~5月の期間に、CSEをベースにした英語力調査を行う。その結果を国に提出させていただくことで、まずは先行事例として検証の材料の一つとしてお役に立てればと考えている。

○ 換算表について、試験間の相関は非常に関心が高いが相関を行うのはなかなか大変だと考える。これについてETSのガイドラインについて問い合わせたところ相関は大変だということを理解。例えば、AとBとCのテストを比較するに当たっては、AとBのテスト、それからBとCのテスト、それからAとCのテストを比較した方がいい、全体で検証するのは無理があるということ。また、それぞれの被験者の数は2,000人ぐらい必要であるなどガイドラインとしては厳しいものがある。今後の検討に当たり、このような情報は共有して参考にしていただきたい。現実的にできる範囲で、あるいは意味のあるものにするためにはどこまでやるべきなのか検討する必要がある。

○ 民間の試験では独自に換算の検証を実施すると、アメリカで実施した結果と日本で実施した結果は違う。日本の受験者は、ほとんどがまずTOEICに向けた勉強をしていおり、そういった方が比較のためのTOEFLを受けても、おおむねTOEFLでは良い点数が取れない。逆に、アメリカでは大学に入るためにTOEFLに向けた勉強をしている方が多いので、そういった方がいきなりTOEICを受けると良い点数が取れることなどもある。どちらも日本人の受験者であっても日米では結果が変わるという事例もあるので、サンプルをどうやって選ぶのかとか、単純に2,000人集めればいいということでもなく、どういったバックグラウンドの人なのかなども含めた上で、今後の必要な検討事項であると考える。

○ 換算表について、CEFRのスケールを作ったブライアン・ノース氏が本の中で同じテストでも歴史的に振り返るとCEFRのレベルが一つぐらい違うなどという状況があることを明確に例証している。CEFRの判断というのは主観的な要素がどうしても入るので、一つのテストの中でも違いが出てくるし試験間であれば、更にそのようなことがあると考えると換算表を作るというのは本当に難しい。CEFRのレベルがテストで時に変わるということと、更にテストの得点の有効期限という問題、例えば何年に受けたときは、これはB1だったのに、その後緩くなったからB2になったとかいうことがあるのかないのかというようなことも、有効期限との関係、そのときの判断に基づくのかどうか。実施主体で変更したところレベルが下になったということも併せて考えないと利用において難しい。

○ 換算のことは、これは入学選抜に使うというための便宜上のものとなって一つの大学だけではなかなか対応が厳しいとなれば、しかるべき組織なりが換算の検証を連携しながら進めるということが非常に有効と考えるが、公に換算するということは難しい。

3.新テスト検討について

○ 「高校基礎学力テスト(仮称)」、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」において国が責任を持って4技能測定を行うことを前提に、更に民間の資格・検定試験の活用を推進する。

○ 現在の高3生の英語力は非常に差があり、多くの民間の4技能試験に耐えうる力のある生徒は一部。民間の資格・検定試験の活用を推進する場合は、まず1.精度の高い相互の対照表、2.換算方法が認められることが必要。そのための検証にはかなり時間がかかると思われるが、検証は必要。

○ 国の新テストがCBT,IRTが前提であれば英語も4技能試験の可能性があるのではないか。タブレット型、パソコン型の開発も進んでいる。「話す」「書く」をこれで対応できるかどうか、タブレットでは「話す」について一方的に話をするか、インタラクティブに人間を介して行うか。50万人を複数回受けられるような状況とは、機械で自動採点するような形でない限りは難しい。今後研究が進めば10年後には対応可能かもしれない。

○ 国が実施する場合、ノウハウを持っている民間の試験団体等も参加した形で技術を共有して作問、採点などを行うことについて、複数の組織が対応するような方策が考えられないか。

○ 音声認識のエンジンはどこのシステムを使うか。採点の技術は精度を上げる。最先端のノウハウは各試験機関が有しており、国が自前で全てを開発することは不可能。

○ 難易度はアダプティブなものであれば、4技能の評価や難易度の幅を持たせることは対応可能ではないか。TOEICのようにLRがある一定のレベルをとればWSを受験するようLRとSWが依存するようなシステムもある。

○ パソコン型は学校でパソコンルームを活用してもOSが違ったりするのでうまくいかない可能性がある。タブレットは対応可能性も高いか。

○ 今後、学校では、資格検定試験に限らず4技能測定の大学入試に対応するとなると指導する際の絶対的な時間が足りなくなることも大きな課題。

○ 民間の資格・試験団体の持っているノウハウで、国と連携して適正な4技能テストが開発できないか。又は、「聞く」、「話す」の部分的な活用は考えられないか。

○ 生徒は多くの資格・検定試験から選択することになるが、受験生の費用負担、試験回数、試験会場へのアクセス等は様々。経済・地域格差がある中で、評価の公平性が確保されているとは言い難(にく)い状況。また、試験間の得点換算表の精度によっては、他の試験より容易に高得点が取れ、受験機会が多い試験に多くの生徒が流れることも予想される。
 生徒の混乱と負担増を回避し、試験の公平性を担保するため、1.学習指導要領との親和性、国際的な通用性等の観点から総合的に判断し、入学者選抜に活用できる試験を一つ又は二つに絞ることが望ましいのではないか。これが不可能であれば、高校生の学習成果を適切に評価できる、日本人の英語力の現状を踏まえた一貫性のある新規の試験開発を国主導で行うべき。

○ 民間の4技能試験の活用促進の在り方と、新テストの在り方が相互の大きな影響を及ぼすので、両者合わせた検討が必要。

○ 4技能の試験ができるとすれば、4技能独立した尺度の得点だけを見るというよりは、それが例えばどういうプロフィールになっているのか、などの質的な分析を通してどういう型の人にはこういうような教育方法が合っているとか、そういったようなことが出てくるということがあるのではないか。尺度得点、指標、数字になるだけではなくて、そこを超えた何か質的な情報を取り出すようなことも進めていくと良いのではないか。
 例えば基礎学力テストの構想も一方で指導に生かすという評価の目的と、もう一方で選抜に利用していくという両方の違う目的を一つの試験に込めるということが考えられるが矛盾が出てくる。選抜の場合には個人差を見ていく精度のいいものを作っていくことが目的になる。したがって数値で表していく。それは段階評点にしても結局、B1とA2とで切れるところがあるので、ある意味でそこでも1点刻み。こういったプロフィールの生徒には、このような力点を置いて教育すべきであるなど、そういった情報までは提供できていないということがあると思うので、なかなか選抜に利用するような試験を教育にそのまま指導に生かしていくというのは、現場の先生方はかなり戸惑うということが現実には起こっているのではないか。評価の手法を考えて、それを教育指導で生かす場合には、そこの道筋もある程度見通すということが必要であると考えるが、あるいはそういった目的を分けてそれぞれの評価のツールを作っていくというのが一つではないか。

○ 英語を使うにしても様々なレベルがあり、アカデミックな研究の領域で使えればいいという人、ビジネスマンとして常に交渉に臨む人、生活のレベルで使って海外に行ったときに生活できればいいという人もいる。それぞれの目的にどのような英語が必要で、そのためにどういう能力があるということを判定すればいいのかというような視点、多様性に応じた施策が提供されるべき。

○ 特にスピーキングなんかを入れていくことについて、教育に対する効果で非常に重要なのは、波及効果の点で、文法中心の英語教育がスピーキングを入れることによって実践でも使える英語が育っていく効果は確かにあると考える。このように一歩踏み出すということには大きな意義があるが、それを例えば入試で4技能を使う、スピーキングが入ってくるときに、どのような波及効果が起こるかを考えると受験準備のときにパターン化された準備というのが一般には起こる。つまり、表現は自分の主観的な部分でいろいろなものを作り出し、発信していくということが大事になってくるが、そのような公的試験で、こういう側面で測りますということが伝わった途端に、なびいていってしまうというような部分というのは常にやはり留意しながら4技能の試験を開発していくということが必要。

○ 大規模大学においては試験結果が1点でも何百人といる状況も踏まえて、点数かバンドで測定するのかについて検討していただきたい。

○ スピーキング、ライティングを自動で採点できる時代はかなり何十年も後のことで、基本的にはレーターが採点することになるのではないか。多くの受験者へ対応する場合レーターの質を確保しつつ育てることが課題。
 一方で、情報管理など課題になると考えるが、例えばレーターを中高の先生方に御協力いただいて、中高の先生方もレーターになることが考えられないか。
 韓国の事例などを押さえながら、レーターの管理もどのようにするかということも考えていくことが必要ではないか。

○ 高校基礎学力テストのことは余り論じられていなかったのですが、私はここのところとかは高校の先生方にスピーキングの評価に関わってもらうっていうような形でやっていくのがいいのかなと。例えば、ヨーロッパの幾つかの国では、実際に高校の先生が評価して、それを大学側に情報を伝えるっていうような形があるので、そのレベルであれば、いろいろな研修を積みながらやると、いい波及効果もあるのではないか。

○ 波及効果は、良い効果を起こしやすい分野、問題と、悪い効果を起こしやすい分野、問題がある。例えば、作成者の意図に反して、文法問題というのは非常に悪い効果を実際に起こしている。日本人が日本語で教えて授業することに適しているから、ここだけ拡大して大きなネガティブな波及効果になっている。最もポジティブな効果を起こしやすいタイプの問題は、やはりスピーキングテストではないか。例えば、生徒にルーブリックを開示して、採点基準を開示すると、積極的な発話、自発的発話につながりやすい。そういう意味では、一律に試験対策は悪いというのではなくて、どの分野、どういう問題が良い効果を起こし、どの分野、問題が悪い効果を起こしやすいのかを考えて議論を進めた方が良い。

【第1回・2回作業部会終了後、委員から書面で御提出いただいた御意見】

【黒岩委員より】

1. 英語力評価・入学者選抜等における英語の外部試験の活用について
英語習得は以下のように定義できると考えられます。
「英語習得=英語学習+英語使用」

 英語学習とは英語習得を第1の目的とする言語活動で、英語使用とは英語習得以外の何かを第1の目的とする言語活動です。同じ英字新聞を読むという言語活動であっても、英語の授業の課題として読んでいる場合は英語学習となりますが、ビジネスマンが仕事のために読んでいる場合は英語使用となります。英会話の授業で外国人講師とリスニング、スピーキングの練習をしている場合も、第1の目的は英語習得ですから、英語学習となります。
 この定義をもとに日本人の英語習得の特徴を考えると、一つ目の特徴は、日本人の英語習得は英語学習に大きく依存しているということです。ただしこれは、言語的に独立性が極めて高いという日本社会の言語状況を考えれば仕方のないことと言えます。二つ目の特徴は、英語学習と英語使用の間に有機的な相関関係が欠落しているということです。その理由の一つは独立性の高い日本社会の言語状況にありますが、もう一つの理由は、日本の英語学習がリーディングとリスニングに大きく偏っている一方、実際の英語使用は4技能を万遍なく、また同時並行的に使用することが求められるということにあります。
 長くなりましたが、英語力評価や入学者選抜に、4技能を測定する英語の外部試験を導入することによって、上記の英語学習と英語使用の間のかい離状態、有機的な相関関係の欠落状態が改善されることが期待できます。多くの先生方が御指摘のように、検討すべき課題はいろいろとありますが、英語力評価・入学者選抜等に4技能を測定する英語の外部試験を導入するという方向性は正しいのではないかと考えます。

以上

【大塚委員より】

〈行動指針1.基本方針について〉
● 基本的に、学習への主体的取り組みや英語に関わる能力の向上が目指されている中で、4技能を別個に評価するということは「適切」な評価とは言えず、4技能の評価をすればよいというのではなく、その目的の達成に向けて「適切」な評価の在り方を探ることが求められるのだろうと思います。
● 「4技能」は、飽くまで英語に関わる能力を分析的に考えるときの一つの切り口から出てくる要素であり、それをどう「総合的に育成」するかが問われるべきものであって、「4技能」のそれぞれ別個の「適正な評価」と読まれるような記述は避けるべきと思います。
● 資格・検定試験の活用については、特に、共通試験などの枠組みでは、「奨励」するのがよいかについては懐疑的な立場も多く、どのような場合に活用することが望まれ、どのような場合には慎重さを要するなど、活用の在り方についての指針であるというスタンスがよいと思います。

〈行動指針2.(1)資格・検定試験活用の有効性を踏まえた活用について〉
● 「4技能をバランスよく測る」とはどういうことか、そのような資格・検定試験とはどのようなものか、それが明示されていないと活用するというところまではいかないのではないでしょうか。
● 「4技能の総合的な測定」とはどういうことか、4技能を四つのテストで測定するのが「総合的」というのは余りに短絡的に過ぎると思われ、「総合的な測定」の在り方を明示できないと、学校現場での負担ばかり増えて、効果が得られないということにもなりかねないと思います。
● 試験の「一貫性」というのは、学校での英語学習の目的に合った資格・検定試験を活用するということと、生徒学生の英語力の水準に適合した試験・検定試験を活用するということかと思いますが、ややわかりにくいと感じました。「実施可能性」というのは、学校で資格・検定試験を実施するということではないと思いますが、具体的にどういうことを指すのか示されるとよいと思います。
● 教員の指導改善手段とするためには、試験の結果のフィードバックということが不可欠になりますが、試験の内容が非公開である以上、十分な指導改善の手段にはなり得ないということを前提にしておくべきと思います。全国学力調査などでもそういった点で個々の教員に過剰な期待がかけられ過ぎかと思います。
● 資格・検定試験が学習指導要領と整合的であるという点を見出(だ)すことはそう難しいことではないと思いますが、学習指導要領に資格・検定試験が準拠しているという観点からすれば、いわゆる必要十分条件的に一致していることまで期待すべきではないと思いますので、むしろそのズレを常に意識して利用するということかと思います。
● (「学校での授業等における活用について、・・・学習状況などの分析を行い、その結果を教員の指導改善や)に対して、)何によってどのように分析するのでしょうか?それをどのように指導改善に生かしていけばよいのでしょうか?特に、資格・検定試験の「客観的な指標」のみで指導改善にどう生かすのかが示される必要があるかと思います。

〈(2)英語力評価における試験の妥当性等について〉
● 妥当性の検証は、通常、最も困難な作業になります。学習指導要領がある以上、内容的妥当性(問題の領域代表性)も重要な観点になりますし、また、規準となるような諸変数との相関関係の分析も重要になります。そのためにも、実証のための調査の設計と分析などにかかる時間も必要とされることになるかと思います。波及効果として、ポジティブなインパクトのみならず、ネガティブなインパクトについても検討しておくべきと思います。スピーキングなども、受験スピーキングなどがまん延しないとも限らず、必ずしもよい効果だけではないと思います。
● 受験料などの負担は、スピーキングなどの試験の活用が広がれば広がるほど増えていく可能性もあり、試験で公的な予算を割り振って、4技能を測る試験を活用するということで得られる情報のコストパフォーマンスもきちんと評価すべきで、それに比較して、教育そのものに予算投入すること(英語を活用できる環境作りなどを含む)も検討した上で、入試などへの活用を検討することが望まれると思います。

〈(3)多様な生徒学生の能力への適合性〉
● 生徒の多様性を意識することは重要と思いますが、それが一つの資格・検定試験の尺度のレベルだけで分けるというだけでは、「多様性」ということに対応できないのではないかと思います。多様性があるということは、目的も様々であって、そのそれぞれにおいて求められる英語力なども質的に違ってくるということを十分に意識しないと、かえって望ましくない結果をもたらすこともあるのではないかと思います。

〈(6)適正・公正な試験実施体制〉
● 先日、SATの問題が事前に漏れていたことが韓国で判明するなど、アジア、東南アジアなどでは、そういうことが頻繁に行われているとも言われており、入学試験などに利用するということになった際に、そういう部分で公正性を満たすのかどうか、それぞれの資格検定試験の質保証が的確に行われていくことが求められると思われます。また、そのようなことが実際に起こっている中で、国際的なサンプルに基づいて換算表を作るということがあるとすると、日本にとっては不利になりかねないという点も踏まえておく必要があると思われます。いずれにしても、文科省などが換算表を作成して、それをある意味でオーソライズすることは、問題の漏洩(ろうえい)なども含めて、資格検定試験の質保証を乱していくことにもつながりかねないという波及効果の部分も十分に検討しておく必要があると思います。

〈(8)その他〉
● 「4技能評価」「4技能試験」ということでよいのかどうか、再検討が必要と思われます。入学者選抜に利用するにはコストなどの点でかなりの負担を各学校、生徒等にかけざるを得ないということもあり、入学試験の波及効果的な意味での教育変革への原動力とするという考え方もわからないではありませんが、それだけのコストをかけて入学者選抜方法を変えて得られるわずかな情報量の増加よりも、教育の在り方そのものを総合的に変革する方策にリソースを振り分けるべきではないかと思います。その際に、アクティブラーニングなどの言葉が最近は一人歩きし始めているように、パフォーマンスを重視する授業がよいということで一斉にそちらになびく風潮がありますが、飽くまでhowとwhatは補完的な関係にあるわけで、そのバランスをどうとるかという視点と、それから、英語などの技能は使わなければ忘れていくわけですから、学校の中でそれを使う環境をどう担保していくかという方策が講じられるとよいと思います。もう一点、生徒は英語だけ学習すればよいというわけではありませんので、特にグローバル化の中では、日本のことがきちんと伝えられるコミュニケーション力が求められることにもなり、「バランス」というときに、そうした他の教科・科目等とのバランス(英語は集中学習がよいという見方もあり、分散的にバランスをとるというよりも一時に集中して学習するような環境作りという方策も含めて)にも考慮すべきと思います。

【沖委員より】

英語外部試験の活用に関して、私立大学側からみた意見

沖 清豪(早稲田大学)

 英語の外部試験の活用は中等教育の質保証及び高大接続における有効な活用の可能性からみて、種々の課題に十分配慮していただきながら、基本的には推進すべきものと考える。2回の作業部会での議論を踏まえつつ、課題を3点言及したい。

  1. 高大接続改革の観点からみて、特に現行の学力試験の代替手段として外部試験を利用していくに当たっては、私立大学の多様性・独自性を踏まえて、その活用の多様性が担保されていることが望ましい。教育的側面ないし評価の正確性という観点から4技能全体での評価が必要であるとの意見も十分尊重すべきであるが、大学や学部によっては特定の技能をより重視する形で外部試験結果を利用することも想定される。その点について十分な配慮が必要であろう。
  2. 英語の外部試験を大学入学希望者学力評価テストの代替として活用するに当たっては、入学者選抜における順位を決定するために相対的な尺度として使用する場合もあり得るし、また大学教育を受けるために必要とされる最低水準を一律に決定し、それを超えている学生については大学ごとに設定された多様な指標に基づいて選抜を行うことも考えられる。活用方法に関する多様性(大学のアドミッション・ポリシーによっては外部試験を利用しないという選択もあり得る)については引き続き担保していただく必要がある。
  3. これまでの中央教育審議会での議論では、英語の外部試験は高等学校基礎学力テストと大学入学希望者学力評価テストの双方で活用することが想定されている。試験間の換算可能性・信頼性を高めようとする今回の取り組みは、その目的や社会的意義から見て、高等学校基礎学力テストとの関係では高校教育の質保証に関する一つの指標として、また大学入学希望者学力評価テストとの関係では単に入学者選抜のみならず大学教育の充実のために活用されるべきであろう。ただしその改革案が実際に想定通り機能し得るのか、中高大の教育現場に無用な混乱を招かないための方策を含めて、新テスト導入までに何がどこまで可能なのかを十分意識した現実的な議論を継続していただきたい。

以上

【川嶋委員より】

○ 前提として、英語を活用する機会・状況が豊富に存在することが、日本人の英語力の強化には必要不可欠である。そして、外部検定試験の活用は、日本人の英語能力を強化するためのツールの一つである。あえて言及するまでもないが、学校や大学のみで英語力の評価や外部試験の活用方策を検討しても、自(おの)ずと限界があることは言を俟(ま)たない。本気で立ち向かうならば、シンガポールや香港のように、準公用語とする、あるいは、少なくとも大学では英語での教育を義務付けるくらいの方策を取らないと、英語力の向上は望めない。しかし、日本人(生徒・学生)・高等学校・大学の多様化を考慮すれば、これらは現実的ではなく、したがって、ターゲット(対象・水準)を明確に設定して取り組むべきである。

○ 英語の外部試験の活用を、英語力向上のために高校での英語教育のアセスメントや大学入試での活用のみで検討するのは、上記で述べた通り、日本人の英語力の向上への効果を考えると、その効果は極めて限定的である。特に、いわゆる「大学全入」の状況において、一部の高校生を除けば、大学入試はもはや「ハイステークス」ではない。よって、いかに高校までの教育を通じて英語を学ぶことへの動機付けと教育を充実させるかが肝要である。

○ 英語の外部試験の活用については、大学で求める英語力は、一般的にはEnglish  for General Purposeではなくて、それを前提としてのEnglish for Academic Purposeであり、いかに英語で論理的、批判的に思考し、表現するかにある。この点から、各検定試験がそれらの能力を測定しているかを明らかにしていただきたい。

【小林委員より】

 大学入試選抜に外部試験を使用する場合、学習指導要領に準じた英語教育を受けてきた受験生が、大学レベルの教育に相応(ふさわ)しい英語力を備えているのかをしっかりと測定できるのかが、そうした試験の使用によって、関係者に対するプラスの波及効果 (washback) が期待できるのかといった妥当性に関する十分な検討が必要だとする行動指針に賛成である。

  • 妥当性に関連して、テスト形式に関する情報提供も重要である。スピーキングの試験といっても、マイクに話すもの、面接官相手に話すもの、受験者同士で話をするグループオーラル的なものがあり、各試験がどのような側面を測ることができるのか等が、利用者によく分かる情報提供が望ましい。先日の会議で話題に上ったAuthenticityの観点からすれば、受験者同士で話をする試験の方がより自然なものと言えるであろう。しかし、そうした場合、受験者のパフォーマンスは少なからず相手の発話の影響を受けることとなり、どんな相手(自分より英語レベルが高いのか・低いのか等)と話をするのかによって、スコアが異なる可能性もある。共同構築の問題も無視できない。同じ受験者が、異なる受験者と組んだ場合、スコアはどうなるのかといったことも調べる必要があるのではないか。
  • 統合型の試験の場合、スコアはどうなるのか、測定の対象となるスキルのパフォーマンスは、他のスキルのパフォーマンスにどの程度依存しているのかといった疑問が生じる。例えば、読んだ内容について話をするタスクの場合、読解に問題があると、スピーキングのパフォーマンスに影響があるが、スコアはどのようになるのか。厳密に言えば、対話形式の「スピーキング」試験の場合でもリスニングは重要な要素であると言える。(リスニングというと、通常モノログやダイアログを聞くことが想定されることが多いが、会話では、受験者は話し手であり聞き手でもある。)こうした側面を試験で測るのは、信頼性等の面から容易なことではないだろうが、インタビューやペア・オーラルのような試験でも相手の言っていることを理解するリスニングが必要であることを、受験生や教員にも理解してもらえるような情報発信も必要であろう。
  • 合計スコアだけでなく、4技能も夫々に比較できることが望ましい。志望校ごとの受験生の傾向も見えてくることが期待されるだけでなく、入学者に対する教育を考えるのに有益であると言える。
  • 異なるテスト間で、合計スコアとスキル別で換算表ができれば理想的であろう。しかし、十分なデータを確保する必要性や、目的が異なる様々なテストがあり、受験者の動機も異なるであろうことを考えると、精緻な換算表を作成するのは容易なことではないと思われる。同時期に同じ受験者に二つの試験を受けてもらい相関を出すにしても、個々の受験者の各々の試験に対する動機付けも考慮する必要があるであろう。やはり大事なのは、各学校が試験の妥当性等を検討し、各々の活用に関する選択をするのに必要な情報を十分に提供することであろう。
  • 生徒の学力は年度初めと終わりでは大きく異なると思われることから、各テストに年間複数回受験機会があるのが望ましい。その場合、受験者の経済的負担を考えると、受験料が高くない試験が望ましい。
  • 高校生の受験を想定した場合、学校単位で受験申込みができる方がよい。自分で受験機会を見つけ積極的に申込みをするようなモチベーションや自律性の高い生徒だけなく、できるだけ多くの生徒の受験を促すためである。
  • CEFRのB1以下をしっかり測定できるテストが望ましい。

【佐々木委員より】

○ 学校現場の意見として、「1.基本方針」として、今回の議論で大学入試は高等学校までの授業等の成果の測定であることをしっかりと踏まえたものでなければならない。
指針全体にわたって入学者選抜における資格・検定試験の活用促進のみが強調されている印象があり、「英語力評価」についての意識が薄いため、大学入試を英語の資格・検定試験のみで行うように捉えてしまうのではないか。
 これまでの流れとしては、

  1. 社会のニーズに対応できるよう英語教育を変える
  2. 学校の授業で4技能バランスよく育成する
  3. その成果を適性に測定する(基礎学力テストに繋(つな)がる可能性がある)
  4. 大学入試が変わらないと高校の授業も変わらない
  5. 大学入試を4技能測定型にする(大学入学希望者学力測定テストに繋(つな)がる)
  6. 高校基礎学力テスト(仮称)、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)での4技能測定を行う
  7. 更に民間の資格・検定試験の活用を推進する

と認識。決して5.=7.ではないということ、7.の前提として6.について、国が責任を持って行うようにすることを踏まえなければならないと考える。
そうでなければ4.で高校の授業が民間の資格・検定準備対策を行うようになり、本来的な学習指導要領に則(のっと)ったものが変形していくことを危惧している。

○ 現実問題として現在の高3生全体の英語の実力は非常に差があり、多くの民間の4技能を測る資格・検定試験に耐えうる力のある生徒は一部であると思われる。
 民間の資格・検定試験の活用を推進する場合は、まず精度の高い相互の対照表、換算方法が認められなければ安易に推進することはできないと考える。そのための検証にはかなり時間がかかると思われるが検証は必要。
○ 今後、学校では、資格検定試験に限らず4技能測定の大学入試に対応するとなると指導する際の絶対的な時間が足りなくなることも大きな課題。
○ いずれにしても、新テストの在り方が大きな影響を及ぼすので、そことの連携が重要。
○ 民間の資格・試験団体の持っているノウハウで、国と連携して適正な4技能テストが開発できないでしょうか。又は、「聞く」、「話す」の部分的な活用は考えられないか。

【浜野委員より】

私中高連発第176号
平成27年2月9日 

英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する作業部会
主査 吉田研作 殿

 

日本私立中学高等学校連合会
会長 吉田晋
〔公印省略〕

英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進について(意見)

 グローバル人材の育成において英語教育改革の必要性、重要性は、私立中高として十分認識しているが、現在提示されている改革の過程における、特に、英語力の評価や大学入学者選抜における外部試験の活用促進方策について、私立中高として懸念している事項について、次の通り意見を申し上げたい。

1.大学入学者選抜における英語の外部試験の活用について
 英語の外部試験を大学入学者選抜に活用する際の得点換算表の作成については、その公平性・妥当性を担保することは非常に困難であろうと推測される。もともと試験ごとに受験目的が異なり、受験者や試験のレベルの違いが大きく、得点換算表の作成には、膨大な作業が予想される。また、大学入学者選抜における換算方法の検討も容易ではないと思われる。
 一方、受験する生徒たちは、多くの外部試験の中から受験する外部試験を選択することになるが、受験生が負担できる費用、試験回数、試験会場へのアクセス等様々であり、経済格差、地域格差が現にある中で、受験の前提条件の段階においても評価の公平性が確保されているとは言い難(にく)い状況である。
 また、試験間の得点換算表の精度によっては、他の試験より容易に高得点が取れ、受験機会が多い外部試験に多くの生徒が流れることも予想される。
 そこで、無用の混乱と負担増を回避することにより、試験の公平性を担保するには、まずは学習指導要領に沿った4技能能力との親和性、国際的な通用性等の観点から総合的に判断し、大学入学者選抜の際に活用できる外部試験を極力一つないし二つ程度に絞ることが望ましいのではないか。これが不可能であるなら、生徒の学習成果を適切に評価できる、日本人の英語力の現状を踏まえた一貫性のある新規の試験開発を国主導で行ってほしい。

2.外部試験間の換算方法等の検証について
 上記の改善策に至る間、外部試験を活用する際には、得点換算表の作成、検証作業において、特に次の点に留意され、慎重に検討されたい。
 検証事項の内、最も懸念されるのが、上記の通り受験生の経済格差と地域格差の問題である。これをどう試験の評価に反映させるかは大きな問題である。
 また、受験生の増加が見込まれる中で、外部試験団体は、特にスピーキングやライティングの採点をコンピュータではなく人間が行う場合、そのための能力を備えた採点者を必要数確保できるのか大いに懸念されるところである。
 さらに、採点者が日本人であるかネイティブであるかによって観点が異なることも踏まえ、大学入試に活用される重要な試験の評価であることから、採点基準の開示や、必要に応じ答案の開示が行われるべきである。

3.英語における外部試験の活用と新テスト、新学習指導要領との関係性について
 本年4月に中学校に入学する生徒は、英語の4技能の能力を測定する新テストの第1回受験生となることから、学習指導要領の改訂を待たずして、各私立中高では英語の4技能の教育を行っている学校が多い。既にグローバル化を見据え4技能の進んだ教育を行っている私立中高も、大多数は4技能の評価の中身が見えない中での手探りの対応を余儀なくされていると言っても過言ではない。
 今後、中教審の高大接続部会、教育課程部会とよく連携を図り、この連絡協議会や作業部会の検討結果は、新テスト作成や学習指導要領の見直しに必ず反映されるよう強く要請したい。

以上

【根本委員より】

◆資料3:検証事項に関するデータ・論点
新テストに関する事項について、
○ 民間の資格・検定試験を活用すべきではないか。
○ 新テストで英語4技能測定を行うことを前提とした方策を検討すべきではないか。
○ 民間の資格・検定試験団体等のノウハウを生かして国と共同で実施する方策を検討できないか。

 上記の問いに関し、以下CIEEからの意見を記載させていただきます。

 このたびの入学者選抜における外部テスト導入の検討に当たっては、幾つか前段階での議論があり始まったことと理解しております。例として、国際基準に照らした際に日本人の英語力が、ほとんどの国が英語を母語としないアジアにおいてさえ他国より低いレベルに留(とど)まっていること、ほとんどの日本の大学入試において読解にかなり偏った形でしか英語の試験が運営されていないこと、中学高校では英語を用いて英語を教えるということが学習指導要領に盛り込まれているにもかかわらず英語で学んだ成果が測定される場がないこと(高校卒業時も、大学入学後も)などです。

 現在協議会においてTOEFLを含め加盟している民間試験団体の行っている試験を考慮する場合、大学進学を希望する日本の生徒全てに対応できる試験はない現状と考えます。具体的には、テストの測定するレベルが日本の大多数の受験者が属するレベルよりも上であったり、試験の運用実績・受験者実績が十分でない若しくは開始の堵についたばかりのテストであったり、試験会場の設定が果たして入学者選抜の規模に届くのかどうか疑問なテストであったり、という現状です。ですが信頼性妥当性のある4技能試験として試験としての観点からは、今回の協議会に加盟する試験が国内の主だった試験と言うことができると思います。

 一方で入学者選抜に最も大きな影響を持つ試験・試験機関として、大学入試センターの存在があります。国立大学のみならず多くの私学も入学者選抜にセンター試験を導入している現在、大学入試センターが今後どのような試験運営・開発をしていくのかが明確にならなければ、民間の英語測定試験が大学入学者選抜にどう関わるかの議論は進まないと考えます。またその方針なしに、大学の2次試験の在り様も定まらないと思います。

 仮に日本人のレベルに合わせた英語の4技能試験を新たに国内で開発し、その目的を入学者選抜に置くのであれば、国内の試験開発・運営機関としては、大学入試センター以外に適切な機関はありませんので、大学入試センターがその役割を担うべきでしょう。同時に、英語4技能試験を新規に開発するには、既に協議会・作業部会で指摘のあるように、複数回の試験実施が可能か、複数回実施の難易度の等価は、特に産出技能(話す、書く)の適切な問題作成と評価方法、CBTによる実施を考えた場合に50万人を超える受験者に対応した問題作成・受験環境の実現性、など多くのかつ困難な課題があり、国家事業としても巨大なレベルの事業となることが考えられます。現実には韓国では入学者選抜を想定して開発を始めた英語試験を3年程度で廃止しました。そのような他国の事例がある中で、それでも新試験の検討を行うのであれば、新試験を念頭においたパイロット試験は有意なものであると思われます。

 民間試験団体のノウハウを生かして国と共同で実施する方策の検討という点に関しては、
CBTによる大規模実施と等価された問題作成能力、評価基準の設定等に関してノウハウを持つ機関は米国にある一団体のみと考えられます。このような大規模実施の前提を持つ試験では、産出技能を測定し短い採点期間で評価を定めるには受験者との面接による測定では不可能で、CBTによる試験が必要となると思われます。民間の英語試験の活用、又は新試験の検討には今後の更なる議論が必要であると考えますが、新試験の検討においてノウハウを持つ団体との共同開発作業は、新テストを開発する場合の可能性の一つとして考慮すべき点であると思います。

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)