高等学校における遠隔教育の在り方に関する検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成26年7月17日(木曜日)14時30分~17時00分

2.場所

文部科学省 15F1会議室

3.議題

  1. 北海道有朋高校、礼文高校の取組について
  2. 長崎県鳴滝高校、長崎県教育委員会の取組について
  3. 早稲田大学の取組について
  4. その他

4.出席者

委員

赤堀座長、安彦副座長、梅原委員、香山委員、向後委員、國領委員、西野委員、林田委員、東原委員、平方委員、村田委員、門馬委員、山口委員

文部科学省

上野大臣政務官、望月主任視学官、小林教育制度改革室長、豊嶋情報教育課長、丸山教育財政室長、永井視学官 他

5.議事要旨

上野大臣政務官より挨拶があった後、村田委員が資料1に基づき事例発表を行った。
村田委員の発表のポイントは、以下のとおり。

  • 有朋高校ではスクーリングとレポートをつなぐ遠隔面接の構築を目指し、全ての授業を遠隔で実施しても単位認定できるかということを研究している。
  • 全日制の礼文高校における事例では、習熟度で学べ、きめ細かな対応により学力向上の効果が見られる、大きな映像で範書を見ることができ、普通の授業よりも運筆等が具体的に見やすい、教科担任が1人しかいない中、他の教員の授業を見ることで研修になる、といった成果があげられた。一方で生徒の問題を解いている過程や生徒の表情を画面を通して読み取ることが難しいこと、授業時間中の生徒の作品の適正な評価が難しいことなどが当初感じた課題である。
  • これまでの実践からは、指示や発問等を事前に配信者と受信者で事前調整しておく必要があることや、板書文字の工夫や遠隔面接に適した教材の工夫を行うこと、実験・実習の活動を遠隔面接として実施できるかどうかの検討が必要であると感じている。
  • 通信制高校における遠隔教育の可能性としては、面接配信によりレポートの添削者と対面できるなど、通常の授業よりも効果を生み出すことが可能となりうる場合があることや、幅広く新たな科目を設定し生徒の多様な学習ニーズに対応できること、教員がこれまでとは異なる学習形態に取り組むことで教員の資質能力の向上につながることなどが挙げられる。
  • 一方で教育の質の維持向上を図るためには、コストダウンとしての遠隔教育、ということは考えにくく、一定程度のコストは当然にかかることに留意しなければならない。

村田委員からの事例発表には主に以下のような意見が出た。
(※以下、委員からの意見:○、事務局からの意見:●)

○「ワイドカリキュラム」を実現する中でサポート教員の役割は何か。また科目を越えてサポートできるようにするためのポイントは何か。
○出欠管理、安全管理、また配信側の教員が授業をしやすくするために、授業にのぞませるための生徒指導、教室、教材の管理などあらゆるサポートを行う。
○サポート教員への研修を考えているか。質の高い遠隔教育を行うためには配信側と受信側の密なコミュニケーションが必要となり、更なる準備時間を要する。こういった中で、お互いのモチベーションを維持する必要があるのではないか。
○頻繁に配信側と受信側とで打合せを行っており、この打合せが研修となっている。
○配信側におけるサポート人員の配置は、初期段階だけでよいのか、それとも恒常的に必要なのか。
○慣れてくれば1人でも足りる。
○教員の負担の話に集中しているが、生徒の側の視点も大切であると考える。教育効果があるというが、数値が示されていないので判断がつかない。またICTの方が生徒がより授業に集中するという話もあったが、新しいものだから集中しているだけではないかという疑義がある。また集中した後の疲労の程度がどうなっているかを考える必要がある。
○まだ事業の研究途中であるので、教育効果の数値は示す段階にない。疲労度については、教員の力量があるためか、それほど目立っていないが、教員の力量に関わらず疲労が出ないようにしたいと考える。
○サイトコーディネーターは受信側の方が退屈するのではないか。学習評価はサポート教員も行えるのではないか。
○受け手のサポート教員は、高校生を相手に机間巡視するので、忙しい。評価の部分については、今後の検討課題と考える。

林田委員が資料2に基づき事例発表を行った。
林田委員の発表のポイントは以下のとおり。

  • 鳴滝高校の通信制課程では、月2回程度の面接指導が必要だが、地理的な理由で本校に通学できない生徒には協力校で直接指導しており、指導とレポート評価の一体化が図りにくいという課題があった。このため協力校で面接指導を受ける生徒の本校への帰属意識は低かった。
  • 導入当初は非同期型を想定していたが、教員の希望により同期型のテレビ会議システムに変更した。開発のコンセプトは、低コスト、教育の質、設定・操作の簡便さであった。
  • 遠隔授業の成果としてレポートの理解度が向上すること、本校と同じ授業感覚で受けることができるため、帰属意識が醸成され、受講生の満足度は93%であったほか、面接指導にあたる協力校担当教員の負担軽減が挙げられた。
  • 一方、本校の教員が機器担当も行うため負担が増えることや、システム機器上の不具合などが課題として挙げられた。
  • 今後の課題としては、面接スクーリングの実施時数の増加がある。現状では実技科目を除き約30%であるが、今後拡大に際しては、現行の学習指導要領のメディア利用の上限が問題になってくるだろう。また使用システムの保守・管理も必要である。
  • 長崎県教育委員会は県教育センターを拠点とし各県立学校をインターネット回線で結ぶ事業を行っている。
  • この事業は、離島地区をはじめ小規模高校において、より専門的な知識を有する指導者の学習指導を可能とすること、異なる校種間での交流機会を増加させ、創造力を育成することや、指導力の高い教員による授業研究など教員の指導力向上を目的としている。
  • 直面する課題としては、離島地区では光回線が未通であるという回線速度の問題や、相手校との時間調整の難しさがある。

林田委員の発表につき、委員からは主に以下のような意見が出た。

○満足の内容について具体的にご教示いただきたい。
○アンケート結果では、復習と予習を同時に行えることや、勉強するポイントが分かる、問題等の解説をわかりやすくしてもらえた等、学習を進める上での満足度が高かった。
○教師の負担とは具体的に何か。
○各教科2名程度の教師しか元々いないため、教材の準備の負担等がかかっている。
○校種間などの交流学習支援の可能性や課題について伺いたい。
○連携型の中高一貫事業や小中一貫事業を長崎県で行っており、この中で遠隔のシステムを入れられないかを考えている。
○生徒の満足度で、不満が7%ということだったが、これはどういう理由からか。
○音声トラブルや先生が早口であるため聞こえないといった技術的なものである。

向後委員が資料3に基づき事例発表を行った。
向後委員の発表のポイントは以下のとおり。

  • 早稲田大学人間科学部通信教育課程は3学科構成で2年時編入のαコースと1年生からのβコースがある。
  • eラーニングは卒業率の低さが課題であるが、早稲田大学のeスクールは現時点で60%であり、非常に高いといえる。
  • 30代40代の受講生が多く、仕事をしながら通う人が8割で、夜間や土日に受講する場合が多い。
  • eスクールの特徴は、卒業単位をすべてeラーニングによって取得可能であり海外在住の学生もいること、また30人1クラスの少人数構成かつ1クラスに1人のコーチをつけることにより、ドロップアウトを少なくすること等が挙げられる。
  • 受講者からは、教室で撮影した授業の場合、臨場感があり、撮影スタジオで1人撮った授業だと自分を教員が見てくれているという感覚をもつようだ。
  • BBSシステムにより、生徒同士でやりとりを行うことができたり、レビューシートによって教員と個別にやりとりすることができ、モチベーションを維持する仕組みを設けている。
  • eスクールでは卒論が必須となっているが、eスクールに入って教員コーチの指導やゼミに入ったことが良かったという声が聞かれた。
  • 卒業後の影響としては論理的思考力や研究的能力向上に効果があったという声が聞かれた。

向後委員の発表につき、委員からは主に以下のような意見が出た。

○eスクールを支える体制はどうなっているのか。
○eスクール事務局において、常勤職員が5人、撮影スタッフが6人常駐しており、2人ペアで撮影している。大小3箇所のスタジオがあり、大きいスタジオでは撮影スタッフが撮影し、小さいスタジオでは、手動のボタンを押すと自動的に撮影が始まる。
○教育コーチはどのような体制か。
○200人規模で確保が大変である。また教育コーチに対して年2回研修会を行っている。
○授業を受ける体制はどうなっているのか。
○授業の受講体制は、好きなところで好きな時間に受けるというものである。土日に受講するケースが多い。30人1クラスというのは、コーチが丁寧に対応できる人数が30人という規模のためである。BBSの懇親会などで会うケースもある。
○遠隔教育のテレビ会議の質の条件はあるのか。非同期と同期や、高校と大学では異なるかもしれないが、ご教示いただきたい。
○音声の質が下がると一気に満足度は下がるので、画像よりも先に音声が来なくてはならない。HD規格は今の若い人にとっては当たり前という認識なので、これを最低基準にすれば良いのではないか。
○ゼミ形式の場合、同じ場所に集まって話すというケースはあるのか。
○ゼミの場合はBBSでやりとりし、レポートをやりとりするという教員もいれば、スカイプなどを使って1対1で細かい議論を行うケースもある。
○離島、過疎地といった場合についてはどんどん進めていく必要がある。ただ単にやりとりをするというだけの双方向ではなく、本当の意味での双方向の授業が大学ではどの程度進んでいるのか。
○1対1のスカイプ以外の事例は少ない。
○慶應においては、Web会議システムを用いており、授業の中でチャットを入れることで臨場感が出ている。またカメラの操作権限も与えている。

全ての事例発表が終わり、全体について自由討議を行った。委員からの主な意見は以下のとおり。

○現場の立場からすると、教育SEを用意することが必要。また環境整備も教員では対応できないので、必要であろう。学習者の学習効果という観点で、対面であっても遠隔であっても学習者の活動がきちんと把握し、評価できるのであれば認めて良いのではないかと考える。
○ICT支援員について北海道と長崎ではどのように取り組んでいるのか。学習プロセスについて評価できるのであれば認めて良いのでは、という意見も出たが、いかがか。
○研究開発事業で加配をいただいているところだが、教員の負担感は授業の準備は3倍、事後処理は2倍となっている。情報担当教諭の技術に頼ってしまっている。四観点では遠隔教育の評価は難しいと考えており、意欲・関心・態度や技能などを遠隔では測ることは難しい部分もあるのではないかと考える。
○SEについては県の予算で行っている部分もあるが十分には整備できていない現状がある。全日制・定時制と通信制は全然授業は違う。遠隔教育は通学の授業の補完、代替だけでなく教育の充実にもなる。例えば、大学の先生の講義など長崎では受けることのできない授業を受ける機会が得られる。遠隔教育は夢を与えてくれるものと信じている。
○eスクールは完全なバックアップ体制をとっている。BBSにどれだけアクセスしたかということで学習プロセスはある程度分かる。
○全日制・定時制高校にも非同期を取り入れることができるのかというのが重要な論点だと考える。受信側が集団である非同期の場合、教育の質は担保できるのか。
○免許をもった教員がいれば問題ないと考える。学習意欲をかき立てられるのか、という問題はあるだろう。学習評価という観点でも、高校において身に付けるべき資質・能力が備わっているかを測るにふさわしいものでないといけない。
○総合学科の場合は専門学科の教員が十分に確保できない場合もあるのではないか。
○遠隔教育の場合、受信側の教員も免許を有している必要があるのか。また、初期投資などは予算が付かないと厳しいかと思うが、予算はつかないのか。
●全日制・定時制については、現行制度では原則として受信側でも教員は免許を有している必要がある。そこの制度をどう変えるか、またそもそも変えるべきなのかというところについても是非ご議論いただきたいと考えている。また予算についても、ご議論いただきたいた内容はとりまとめの際に反映したい。
○財源のある私学や研究開発学校だけでなく、一般の高校でも行えるようにしていただきたい。
●ICT支援員への地方交付税措置が既にあるところであり、また次回の資料にしたい。
○目的に沿った丁寧な評価が必要であると考える。遠隔講義は機会の確保だけでなく、質の向上の観点が必要である。向後委員提出資料の論文は非常に興味深く、思考力とスキルへの影響は遠隔での論文指導によるものという結果が出ている。コストについては、人件費がかかることは覚悟しておく必要がある。少なくとも一度くらいは対面で授業をした方が良いのではないか。
○遠隔教育に適した教科・科目について今後議論すべき。個人を対象とした遠隔授業について今回議論に出なかったので、今後議論していく必要があろう。

事務局より次回のスケジュールについて説明後、終了。

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