(資料4)これまでの審議の経過について(案)

はじめに

  • 地域の住民や保護者のニーズを学校運営により一層的確に反映させる仕組みとして、平成16年に学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)が導入されてから10年が経過し、学校・家庭・地域の連携・協働により、子供たちの豊かな学びを創造し、地域の絆をつなぐ様々な取組が進んできている一方、現在の子供たちを取り巻く教育環境は大きな課題に直面している。
  • 本協力者会議は、困難な課題に直面している今改めて、地域とともにある学校づくりを推進し、子供の豊かな学びと成長を一層支援していくため、コミュニティ・スクールの一層の拡大・充実に向けた方策を中心に審議を重ねてきた。本報告は、これまでの審議の経過として整理したものであり、引き続き、学校運営協議会を基盤とした学校・家庭・地域の連携・協働により子供を育てる体制の在り方や推進方策等について検討を進めていく。

1.現在の子供たちの教育環境を取り巻く状況等

  • 我が国は、現在、急激な少子化・高齢化の進行に伴う生産人口の減少、過疎化の進行等による地域コミュニティの衰退、格差の再生産・固定化などの課題に直面している。また、家庭を巡る状況としては、核家族やひとり親家庭、共働き世帯の増加など、家族形態の変容等を背景に、家庭の孤立化が進むなど、家庭教育が困難な現状も見られる。
  • また、学校を取り巻く環境は複雑化・困難化しており、いじめや暴力行為等の問題行動の発生、不登校児童生徒数、特別支援学級・特別支援学校に在籍する児童生徒数等の増加など、多様な児童生徒への対応が必要な状況である。
  • さらに、中学校等の教員を対象としたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)において、我が国の教員は、課外活動の指導や事務作業に多くの時間を費やし、調査参加国中で勤務時間が最も長いという結果が出るなど、教員の勤務負担の軽減が課題となっている。

2.コミュニティ・スクール等の現状と課題等

(1) コミュニティ・スクールの現状と課題等

<コミュニティ・スクールの現状>

  • 平成16年に、地域の住民や保護者のニーズを学校運営により一層的確に反映させる仕組みとして、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)が導入され、平成26年4月現在で全国1,919校(4道県187市区町村の教育委員会)においてコミュニティ・スクールが指定されている。
  • 同制度の法律上の機能としては、校長が作成する学校運営の基本方針を承認するほか、学校運営及び教職員の任用に関する意見を述べることができるが、現状では、学校支援活動の計画・実施や学校評価の実施など、各学校・地域の実情を踏まえた取組も展開されている状況である。

(導入例)

  • 学校運営協議会を核として様々な教育活動を展開
     学校支援地域本部、PTAなどの取組の企画運営の核として学校運営協議会を位置づけ、学校・家庭・地域の連携・協働体制を構築。
  • 小中一貫教育等、学校間連携により支援体制を構築
     中学校区を学園としコミュニティ・スクール委員会を設置。各小中学校の地域住民等が学園の学校運営について一体となって協議・支援。
  • 学校運営協議会委員による学校関係者評価を実施
     学校運営協議会委員が学校関係者評価委員を兼任し評価を実施。

<コミュニティ・スクールの成果>

  • 平成23年に文部科学省が委託した調査 の結果によると、コミュニティ・スクールに指定された学校における成果認識は以下のとおりである。
     学校に対する保護者・地域の理解の深まり、地域と連携した取組の組織的な展開など、地域連携に関する成果認識が高く、次に、特色ある学校づくり、教職員の意識改革、学校の活性化など、学校運営における成果認識が続いている。
     また、地域連携の進展、学校運営の改善が図られる中で、学力の向上や学習意欲の向上、生徒指導上の課題の解決などの成果認識も挙げられる。特に、コミュニティ・スクールの指定経験の長い学校でこれらの成果認識は相対的に高い傾向にある。
  • また、「学校と学校運営協議会委員とが、学校・子供が抱える困難な課題を共有し、十分な議論を重ねることで適切な対応につながり、学校運営への信頼が向上している」、「関係者の相互理解と信頼関係の下で学校支援が充実することにより、教育の質の向上、安全・安心な教育環境の確保につながっている」、「教育委員会職員、教職員、保護者、地域住民等、学校に関わる人々の意識の変化につながっている」との意見もあった。

<コミュニティ・スクールの課題>

  • コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題認識として、
     教育委員会や校長、教職員の理解や実践経験の不足
     活動費や委員謝金等の財政負担、管理職や教職員の勤務負担
     学校運営協議会の委員等の人材の育成や確保
     などが挙げられる。
  • 平成23年及び25年度の両委託調査 によれば、特に、コミュニティ・スクール未指定の学校における課題認識としては、類似制度との違いが不明確、学校運営協議会の成果が不明確、すでに保護者・地域の意見が反映されているので必要ない、などの不要感のほか、任用の意見申し出で人事が混乱しないか、学校の自律性が損なわれるのではないか、などが挙げられるが、これらの課題認識は、指定によって一定程度解消される傾向も見られる。
  • 上記のように、取組の目的や成果への理解不足、強い課題認識等により、警戒感・抵抗感を有することで、導入に消極的である都道府県・市町村が存在し、取組に地域差が生じている状況がある。不要感を必要感に変えることなど、これらの課題認識に対する効果的な働きかけ、理解の促進が課題である。
  • このほか、学校運営協議会と学校支援地域本部等の学校支援活動を連携させたり一体的に運用したりする事例が増えている一方、両者の連携不足も指摘されている。また、一部の学校運営協議会では、システムの導入を先行させたために活動が形骸化している例もあり、取組の充実と活性化が求められる。

(2)関連する制度等の現状と課題等

<学校支援地域本部等の現状と課題>

  • 学校・家庭・地域が連携・協働して教育活動を展開するための仕組みとして、地域のボランティア等が学校の教育活動を支援する「学校支援地域本部」、地域住民が放課後の子供たちの教育活動を支援する「放課後子供教室」(放課後児童クラブと併せ、放課後子供プランとして推進)、土曜学習等の取組が全国で広がりつつある。平成25年度には、学校支援地域本部は公立小中学校の28%の3,527本部8,654校、放課後子供教室は公立小学校の51%の10,376教室で取り組まれ、年々増加しており、学校・家庭・地域の協働体制の構築が進んできている。
  • 一方、放課後の支援と学校支援等の連携や学校との情報共有が十分でないなどの課題があり、これらの機能を有機的に組み合わせた発展的な仕組みづくりを進めていくことが重要である。また、放課後子供教室や放課後児童クラブについては、学校施設管理上の理由から、教育委員会や学校の理解が得られない場合があるなど、教育と福祉の関係者の間に意識の壁があるのではないかとの指摘もあり、より一層の活用促進が求められる。
  • また、家庭教育支援については、家庭教育支援チームによる訪問型アウトリーチ支援などの支援を届けていく取組が広がっている一方、家庭教育支援の仕組みについて、学校との情報共有が十分でないなどの課題があり、学校と連携するための体制づくりが重要である。

<学校評議員制度の現状と課題>

  • 平成12年に、地域住民等の学校運営への参画の仕組みを制度的に位置づけるものとして学校評議員制度が導入され、平成24年3月現在で80.2%の設置率となっている。
  • 同制度は、校長の求めに応じ、学校運営に関し、保護者や地域住民等の意向を把握し反映することができる仕組みであるものの、会合開催数が年3回以下の学校が95%を超え、地域の名誉職が評議員となっているなどにより、議論が活発化せず、実質的に形骸化しているなどの指摘があった。平成25年に文部科学省が委託した調査の結果によると、半数以上の学校の校長は、学校評議員制度が形骸化していると認識していた。

<学校関係者評価の現状と課題>

  • 平成19年に制度化された学校評価のうち、学校関係者評価は、「保護者や地域住民などの学校関係者等が、自己評価の客観性・透明性を高めるとともに、学校・家庭・地域が学校の現状と課題について共通理解を深めて相互の連携を促し、学校運営の改善への協力を促進することを目的として行うもの」であり、学校教育法施行規則上は、努力義務として規定されている。
  • 平成23年度間において、学校関係者評価は、公立学校の約94%で実施されており、取組は着実に広がっているものの、評価結果が教育委員会からの改善・支援に十分生かされていないなど、評価の実効性に関して課題があるとの指摘があった。

3.今後の目指すべき方向性

(1)社会総がかりでの教育の充実

  • 平成18年に改正された教育基本法において、学校・家庭・地域住民等の相互の連携協力に関する規定が盛り込まれたことを受け、第2期教育振興基本計画においては、絆づくりと活力あるコミュニティを形成するために、全ての学校区において学校と地域が連携・協働する体制を構築するとともに、コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割に拡大すること等を目指すとされている。
  • 現在の学校や子供たちが抱える課題や、家庭・地域社会が抱える課題等を解決するとともに、子供たちが豊かで健やかな成長を遂げ、教職員や保護者、地域住民等がともに学び合い成長を遂げるためには、学校・家庭・地域がそれぞれの役割を果たしつつ、社会総掛かりでの教育の実現が不可欠である。このため、学校・家庭・地域の連携・協働を推進するための様々な制度や事業等を別々に捉えるのではなく、お互いに補完し高め合う存在として一体的に捉え、相乗効果を発揮していくことが必要である。
  • また、自治体内の学校教育担当者と社会教育担当者との連携が十分でなく、情報や課題の共有化が図られていないなどの指摘があった。関連する取組を一体的に捉え、効果的に推進していくためには、まずは、自治体内における連携・協働の体制づくりを進めていくことが期待される。

(2)地域とともにある学校づくりの一層の推進

  • 平成23年7月に示された提言「子どもの豊かな学びを創造し、地域の絆をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策」(学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議)においては、「子どもたちの豊かな育ちを確保するために、すべての学校が、地域の人々と目標(「子ども像」)を共有した上で、地域と一体となって子どもたちをはぐくむ「地域とともにある学校」となることを目指すべき」とされている。また、同提言では、現行の制度体系下において、地域とともにある学校づくりのための有効な仕掛けとして、「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」の設置促進を図っていくべきとしている。
  • 同制度は、学校と地域の人々が目標や課題を共有し、ともに協働して行動していく関係の構築に効果を発揮するとともに、組織としての学校の意識・力を高め、学校運営の改善・充実や子供たちの課題の解決、地域コミュニティの活性化等につながるものであると評価することができる。このため、関連する制度や事業等を一体的に捉えるに当たって、その基盤として、コミュニティ・スクールの設置促進を図っていくことが必要である。

(3)学校づくりと地域づくりの双方向性

  • 地域とともにある学校づくりを進めていく上で大切な視点は、学校が「子供の学びの場」にとどまらず、「大人の学びの場」でもあり「地域づくりの核」にもなるという視点である。学校を核として、地域に住む人々が互いに自立し、助け合い、励まし合い、よりよく成長していくための地域コミュニティの活性化、再構築につながっていくことが期待される。このため、コミュニティ・スクールを基盤としながら、地域とともにある学校づくりを促進するとともに、「学校とともにある地域づくり」を促進していくという大きな広がりを持って、地域との連携や学校運営を捉えていく必要がある。
  • すなわち、一方的に、地域が学校・子供たちを応援・支援するという関係ではなく、コミュニティ・スクールを通じて、学校と地域が膝を合わせて、互いに意見を出し合い、学び合う中で、地域も成熟化していくとともに、子供たちも総合学習等を通じて地域に出向き、地域で学ぶ、あるいは、地域課題の解決に向けて学校・子供たちが積極的に貢献するなど、学校と地域の双方向の関係づくりが期待される。

4.今後の推進方策

  • コミュニティ・スクールの拡大・充実のための推進方策を中心とした短期的な推進方策の概略は以下のとおりであり、引き続き、具体的な議論を重ねる必要がある。

(1)学校運営協議会と学校支援地域本部等の取組の一体的な推進

  • コミュニティ・スクールの設置促進に当たっては、学校と地域の信頼関係や協力関係が築かれていることが重要であり、学校と地域の協働体制の構築と一体で普及・拡大することが効果的である。学校運営協議会の機能として学校支援活動を実施していくことによって、学校運営の改善や児童生徒の変容等の成果認識に結びつきやすい傾向もある。すなわち、学校と地域とが、共通の課題意識や目標等を共有するだけでなく、設定した目標の達成に向かって、ともに前進し行動している実感が、当事者意識やモチベーションの向上につながり、学校はよりよく発展していく。
  • 地域住民等の学校運営への参画を促す学校運営協議会の取組と、地域住民等による教育活動等への支援を促す学校支援地域本部等の取組とは、ともに学校・家庭・地域の連携・協働によって社会全体の教育力の向上を図る仕組みであり、それぞれの強みを生かしながら、一体的に取組を推進していくことが必要である。

<一体的な姿のイメージ(一例)>

  • 一体的な推進の姿の一例としては、以下のイメージが考えられるが、実際の取組においては、これに限らず、各々の学校・地域の実情等に応じ、柔軟かつ発展的に検討していくことが重要である。
     学校運営協議会委員として、PTA関係者や地域コーディネーター等、家庭・地域の代表が参画し、子供の教育に関する課題・目標等を共有するとともに、連携協力体制を構築。
     法律上の学校運営協議会の機能である、学校運営の基本方針の承認、学校運営に関する意見などのほか、学校関係者評価の実施や、学校支援等の連携・協働による支援活動等の総合的な企画を実施。
     学校運営協議会において、学校評価の結果を踏まえた改善意識を共有。
     学校運営の改善等に向け、共通したビジョンをもちながら、地域コーディネーター等が主体となって、教育活動支援、土曜・放課後等の活動支援、子供・家庭支援の取組など各々の組織・場で取組を実践。
  • 学校運営協議会に、福祉の関係者やスクールソーシャルワーカー、家庭教育支援の関係者等が参画し、共通の課題認識を持つことにより、学校運営の改善のみならず、放課後支援や家庭教育支援等の取組の充実につながることも期待される。
  • 具体的な実効性を確保するために、例えば、教育委員会の定める学校運営協議会の規則に、学校支援や学校評価の部会、企画推進委員会などを設置できる規定を盛り込む等により、学校運営協議会で課題や目標等を共有した上で、学校支援の活動等を企画し、部会等の活動に反映するなど、両者を一体として運用する方法も考えられる。
  • なお、一体的な取組を推進する上で、各々の取組が適切に行われているかどうか、学校運営のPDCAサイクルが適切に機能しているかどうかを意識し、学校運営の改善・充実を着実に果たしていくことが重要である。

<一体的に推進することで期待される効果(例)>

  • 関連する制度・事業等を一体的に推進することにより期待される効果としては、以下の効果が挙げられる。
    (例)
      学校運営の改善と教育支援活動等の充実の双方向・協働型の取組の推進
      学校・家庭・地域の組織的・継続的な連携・協働体制の確立
      子供の教育に関する課題や目標等の共有による当事者意識の高まり
      教育支援活動等を通じた、日々の教育活動や子供への理解の深まり、課題解決の実践
      学校・家庭・地域において、共通したビジョンをもった取組の展開
      学校運営の改善を果たすPDCAサイクルの確立

(推進のための具体的方策)

  • 現場裁量による柔軟な制度設計を実現するための学校運営協議会と学校支援地域本部等の支援制度(補助金)の一体化
  • 学校運営協議会と放課後支援や家庭教育支援等との一体的な取組イメージの提示 など

(2)協働による子供・地域の抱える課題の解決

  • 1.で述べたとおり、いじめや暴力行為等の問題行動の発生や不登校等への対応など、学校を取り巻く環境は複雑化・困難化しているとともに、子供たちを取り巻く地域や家庭の状況も大きな課題に直面している。
  • このような困難な状況に直面した時こそ、学校は保護者や地域の人々と直面している課題を共有し、力を結集して学校運営を進めていくことが重要であり、学校運営協議会を通じ、関係者が課題意識を共有した上で、地域でどのように解決していくか、熟議を重ねる中で、学校・家庭・地域の協働により課題解決に向けた取組が推進されることが重要である。
  • 具体例として、学校運営協議会をベースとし、不登校の課題について学校と地域が協議を重ね、福祉部局やスクールソーシャルワーカー等との連携を図りながら、不登校の子供の居場所づくりが進められてきた事例がある。また、家庭教育支援チームによる訪問型アウトリーチ支援などの支援を届けていく取組が広がっており、そうした取組と学校運営協議会との連携も求められる。
  • このため、例えば、学校が抱える課題や推進する目標に応じて、学校運営協議会に、福祉部局等や関係機関の職員、スクールソーシャルワーカー、家庭教育支援チーム等の関係者の参画を得ることで、より実践的な意見が得られ、課題解決に向けた連携・協働の道筋が拓けることが期待される。なお、個別具体的な課題について協議する際には、児童生徒等のプライバシーに十分配慮することが求められる。
  • このほか、人口減少等による地域コミュニティの衰退という待ったなしの課題に対して、首長部局のまちづくりや商工労働部局等と協働し、地域と地域の将来を担う子供たちの将来像を共有した上で、協働による実践的なキャリア教育を企画・実施していくなどにより、活力ある学校づくりと地域の活性化を図っていくことも考えられる。首長部局との協働による地域とともにある学校づくりの在り方については引き続き検討していく必要がある。

(推進のための具体的方策)

  • 地域との協働による課題解決学校モデルの構築
  • 首長部局等との協働による地域とともにある学校づくりの在り方の検討
    など

(3)幅広い普及・啓発と戦略的な広報

  • 2(1)コミュニティ・スクールの課題にも挙げたとおり、コミュニティ・スクールへの不要感、不安感等を指摘する学校があるとともに、導入に対する強い警戒感・抵抗感により、導入に消極的である都道府県・市町村が存在する。このため、今後、コミュニティ・スクールの設置促進に当たっては、制度の意義や成果等に対する理解を促すとともに、これらの課題意識を解消し、不要感を必要感に変えるための効果的な働きかけ、戦略的な広報に力を入れていく必要がある。
  • 特に、コミュニティ・スクール指定の決め手として「教育委員会からの働きかけ」を指摘する学校は約8割と、教育委員会のスタンス、とりわけ、教育長のスタンスが鍵となる。コミュニティ・スクールは、組織としての学校の意識・力を高め、学校運営の改善等を果たす上で有効な仕組みであり、全国都市教育長協議会や全国町村教育長会、全国コミュニティ・スクール連絡協議会など、関係団体等とも連携・協力を図りながら、コミュニティ・スクールを推進する運動のネットワーク化を促進していく必要がある。
  • また、学校支援地域本部や放課後子供教室の取組など、すでに学校と地域の協働体制を構築している学校に対し、学校運営の参画への普及・拡大の必要性や効果等の理解を求めていくなど、積極的な働きかけを行っていくことが必要である。
  • さらに、会議においては、町村の深刻な課題は、人口減少により地域コミュニティが成立しなくなりつつあることであり、そうした地域でコミュニティ・スクールを導入することで、コミュニティの再生、町おこしになることから、首長に働きかけ、首長と教育委員会が一緒に進めていくという視点が必要であること、また、不要感を示す教育委員会・学校に対しては、コミュニティ・スクールが、子供たちの荒れなど課題が発生した際に生きてくるという危機管理の視点での必要性をしっかりとPRしていく必要があること等の意見があった。

(推進のための具体的方策)

  • 学校教育・社会教育の組織横断による全国フォーラム等の開催
  • コミュニティ・スクール推進員(CSマイスター)による伴走型支援
  • 関係団体等との連携による教育長への働きかけの促進
  • コミュニティ・スクールの意義・成果等の積極的な発信
  • 「学校運営協議会の設置の手引き」の改訂・普及
    など

(4)コミュニティ・スクール等の多様性と裾野の拡大

  • コミュニティ・スクールのほかにも、学校支援地域本部、学校評議員、学校関係者評価など、地域の人々による学校運営への関わり方には様々な形がある。なかでも、学校評議員など趣旨が重なる制度が並立しているという印象から、コミュニティ・スクールに対する不要感を抱く学校もある一方、現行の学校評議員の仕組みに対して形骸化を指摘する声もある。また、会議においては、地域社会と一緒になって子供を育て、地域社会の問題も一緒に考えていく時代となっている今、形骸化した学校評議員の発展的解消も含め、制度を見直す必要性について指摘があった。
  • 各地域・学校を取り巻く環境や実情は多様であり、今後のコミュニティ・スクールの設置促進に当たっては、関係する制度・事業等を一体的に捉える中で、地域の独自性を発揮した多様性のあるコミュニティ・スクールの体制構築を進める必要がある。その際、コミュニティ・スクールの設置に伴い学校評議員を置かないなど、それぞれの学校の実情に応じて、効率的・効果的な活用を図ることが重要であり、今後、学校評議員制度の在り方についても検討すべきである。
  • なお、類似制度の導入により、コミュニティ・スクールへの不要感を指摘する声に対しては、同制度の付加価値や成果等について丁寧に説明し理解を促していくことが必要である。また、コミュニティ・スクールの権限の一つである「教職員の任用等に関する意見」に対する抵抗感を指摘する声に対しては、まずは、学校と地域との信頼関係・協働体制の構築を目指し、任用等に関する意見を主活動に位置づけない運用から始めるなど、段階的に発展していく姿を示すことも考えられる。

(推進のための具体的方策)

  • 学校評議員、学校関係者評価委員会、学校支援地域本部等の発展型の提示(既存の仕組みを機能化し組み合わせることで、学校運営のPDCAサイクルを実現)
  • コミュニティ・スクールの多様な形態の事例収集・整理
  • 学校評議員制度の在り方の検討
    など

(5)魅力(インセンティブ)の提供

  • コミュニティ・スクールの導入に際しては、会議の開催そのものの業務のほか、学校運営協議会委員との連絡調整や協議事項等の調整など、運営に係
    る様々な業務が生じる。同制度を導入することによって、教職員が子供と向き合う時間が増えたという成果認識の声がある一方、管理職や教職員の勤務負担が増えるという課題認識も多く、導入への足かせになっている。また、活動費や委員謝礼の支弁が困難だとの課題認識もある。
  • コミュニティ・スクールの設置促進に当たっては、教職員の勤務負担を軽減するとともに、継続的・安定的な運営を可能とするためのインセンティブが必要であり、教職員等体制などの人材面や財政面での支援を講じていく必要がある。とりわけ、未導入の地域を中心とした支援を着実に推進することが必要である。
  • また、コミュニティ・スクールを円滑に運営し継続性を確保するため、学校運営協議会の下に、協議事項の調整や議事録の作成等の運営に係る業務を担う運営部会を設けたり、一部の委員に負担が生じないよう、委員全員で業務を分担する工夫も考えられる。

(推進のための具体的方策)

  • 教員が子供に向き合う時間を確保するための教職員等体制の整備充実(事務の共同実施やコミュニティ・スクールへの教職員の加配措置)
  • コミュニティ・スクールの運営や学校種間の調整、分野横断的な活動の総合企画・調整など、統括的な立場で調整等を行う「CSディレクター」(仮称)の配置
  • コミュニティ・スクールの継続的・安定的発展を支援するための財政的な措置
  • 学校支援地域本部や放課後子供教室などの取組の推進
  • 学校の裁量で支出できる運営経費の措置
    など

(6)コミュニティ・スクール等の取組の充実と活性化

  • 学校と地域の信頼・協力関係が未成熟であったり、体制が不十分な場合等には、コミュニティ・スクールが形骸化する可能性があり、地域の参加・参画を促す取組、協働による取組を意図的に設定すること等により、取組を充実・活性化していくことが重要である。
  • また、校長をはじめ、教職員は異動し、学校運営協議会委員も保護者も変わっていく、また、教職員全体にコミュニティ・スクールに対する理解・意識が行き渡らず、学校間に意識の差があるといった指摘があった。
  • コミュニティ・スクールが継続的・安定的に発展していくためには、関係者間で思いや課題意識を共有し、学び合う中で、コミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが重要であり、学校の教職員や学校運営協議会委員、地域コーディネーター等の関係者による研修の機会を充実していくことが必要である。とりわけ、教職員の負担軽減の視点を持ちながらも、教職員全体が関わるという意識、ともに学び合う関係づくりを進めていくことが重要である。
  • 学校が組織としての力を最大限発揮し、地域との一体的な取組を推進していくためには、学校運営の責任者である校長のマネジメント力が重要となる。このため、例えば、学校経営の水準として、コミュニティ・スクールの視点を位置付け、管理職等の研修を充実するなど、マネジメント力をもった管理職等の育成を進めていくことが必要である。
  • このほか、会議では、教員養成課程におけるコミュニティ・スクールの理解の促進、管理職試験等の在り方等に関する指摘もあり、引き続き、議論を深めていく必要がある。

(推進のための具体的方策)

  • 学校運営協議会委員等の研修の充実(教職員、地域コーディネーター、学校支援ボランティア、家庭教育支援員等との学びの機会の充実)
  • 管理職等のマネジメント力向上のための研修の充実
    など

5.都道府県・市区町村の役割

  • 子供たちの最も身近なところで教育活動を担っているのは学校であり、市区町村である。コミュニティ・スクールの指定は、各地域の自発性によることが前提であり、コミュニティ・スクールが適切に機能し、成果を発揮していく上で、学校、教育委員会、地域住民等の理解が深まり、協働が進むよう、働きかけていくことが重要である。 
  • 一方、コミュニティ・スクールは、学校と地域の協働により、組織としての学校の意識・力を高め、学校運営の改善・充実や地域コミュニティの活性化等につながるものであり、今後、各都道府県・市区町村の教育行政部局において、一層の拡大・充実が必要との認識に立ち、積極的な姿勢で取組を推進していくことが求められる。

<都道府県の役割>

  • 都道府県においては、広域人事など市区町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を重点化し、市区町村の自主性を尊重しつつ、義務教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められている。その前提の上で、都道府県の中には、教育の振興に関する基本計画にコミュニティ・スクールの推進目標を掲げ、域内市町の教育委員会や学校関係者等を対象とした協議会を開催したり、学校経営の水準として、コミュニティ・スクールの視点を位置付け、新任校長の研修等の充実を図るなど、コミュニティ・スクールの設置を積極的に推進しているところがある。
  • また、学校支援地域本部や放課後子供教室、家庭教育支援等の取組を推進する「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」では、都道府県等(政令市・中核市を含む。)に対し、域内の教育支援活動等の総合的な在り方の検討を行うための推進委員会の設置や、コーディネーター等の資質向上や情報交換等を図るための研修等を行い、教育支援活動等の総合的な推進を図ることを求めている。
  • 今後、都道府県においては、地域とともにある学校づくりを進めるため、域内市区町村の教育委員会や学校関係者等への理解促進に加え、学校運営協議会委員の研修や、学校の管理職や教職員の育成及び配置とその積極的な評価などを推進することが求められる。

<市区町村の役割>

  • 市区町村においては、自身の設置している学校の将来像を校長と共有するとともに、保護者・地域との連携・協働が進んでいない学校に対し、コミュニティ・スクールの設置を促し支援することが求められる。保護者や地域住民に対しても、取組の必要性や成果を広く周知するなど、学校への理解と参画を促す環境づくりが重要である。

6.さらに検討していくべき事項

  • 「地域とともにある学校」の実現に向けて、引き続き、以下の検討事項を中心に、更なる検討を進めていくことが必要である。

<学校のマネジメントの在り方>

  • 管理職のマネジメントの在り方
  • 教職員の養成等の在り方

<類似制度等の機能化の在り方>

  • 学校評議員制度、学校関係者評価など、類似制度等の機能化・活性化のための推進方策

<学校・家庭・地域の三者協働の推進体制等の在り方>

  • 三者協働の基盤となる学校運営協議会の在り方
  • 学校間、学校段階間の連携を推進する上での学校運営協議会の在り方
  • 学校ファンドの在り方

<首長部局との協働による地域とともにある学校づくりの在り方>

  • 教育委員会と首長部局のパートナーシップの在り方

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)