コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成26年7月28日10時00分~12時30分

2.場所

中央合同庁舎7号館 東館(文部科学省庁舎)3F2特別会議室

3.議題

  1. 有識者ヒアリングについて
  2. コミュニティ・スクール等の課題及び今後の推進方策について
  3. その他

4.議事要旨

(1)有識者ヒアリングについて

事務局から資料1に基づき第1回会議及び第2回会議の指摘事項について述べた後、都築委員より資料2、山野委員より資料3に基づいて説明があった。

(2)コミュニティ・スクール等の課題及び今後の推進方策について

事務局から資料4について説明があった後、これを元に意見交換が行われた。概要は以下のとおり。

<子供たちの教育環境を取り巻く状況等>

  • 生活保護率、就学援助率、母子家庭率の数値を見ると、決して一部の問題とは言えない。
  • 貧困だけではなく、孤立も大きな課題。3分の1から半数近い方が、育児に不安感を持ち、周りを気にしながら子育てをしている。
  • 田舎の場合は三世代で一緒に暮らしていることも多く、高齢者介護のために貧困になったり、子供が夜睡眠を取れないといった問題がある。
  • 子供たちの課題として体験活動の不足、自己肯定感の低さがある。コミュニティ・スクールは学校や地域で体験の場を用意し、社会への参画を通して子供たちのシチズンシップを高める仕組みとなり得る。
  • 学力偏重で塾通いが当たり前となり、子供が押しつぶされようとしている現状があり、社会体験の不足等様々な問題につながっている。
  • 町村の場合、自前でスクールカウンセラー等を置けるところはほとんどないのが現状。
  • 小学校・中学校で取り組んできた具体的な体験やコミュニケーション能力、自尊感情を大切にする教育を高校・大学にもつなげていくことが課題である。

<学校関係者評価の課題>

  • 現在の学校関係者評価で本当に学校と地域住民、保護者のコミュニケーションができていて、学校改善に結び付いているのかを疑ってみる必要がある。

<コミュニティ・スクールの意義・成果>

  • コミュニティ・スクールは安倍首相が進める「まち・ひと・しごと創生対策本部」がやろうとしていることに応え得る取組になり得る。
  • 小中一貫教育とコミュニティ・スクールを結びつける動きが広まってきた現状がある。

<今後の目指すべき方向性>

  • 教育が大きく変わっていく現在の動きを国民全体が意識しなければならない。
  • 後ろの推進方策につなげるためにも、もっと方向性を鮮明に記述した方がよい。
  • 「学校づくりと地域づくりの双方向性」については「学校とともにある地域づくり」などなどにした方が分かりやすい。スクール・コミュニティの視点を入れるよい。
  • 目指すべき方向性は現実とのギャップが大きい。ここで理想的なものを出すことによって、逆に学校や地域にとって負担に映ることはないか。
  • 地域一体型の学校運営で町の特色や地域のアイデンティティーを体験する場を作り発信できる力を育てなければ、若者や子育て世代が住み着く町にはならない。

<押さえるべき動向>

  • 平成23年の地域とともにある学校づくりの提言の方向性との関係が明確になるとよい。
  • 中央教育審議会のワーキンググループで、スーパーバイザーやリーダー的なコーディネーターの育成などが提言されている。取組としてはそれらもトータルして考える必要がある。
  • 現場サイドがあれもこれも降ってきているという感覚にならないように、全体の方向性はもう一度きちんと整理することが必要ではないか。

<コミュニティ・スクールと学校支援等の一体的推進>

  • 支援本部だけでは熟議の機会がなく教職員の理解不足のためにお手伝いで終わることも多い。運営協議会の機能をプラスすることで、形骸化せず有機的に動くことが期待できる。
  • 単に補助事業を一本化するだけではなく、実態として一体的に動けるよう、制度そのものの一体化も検討していく必要がある。学校関係者評価、学校支援などの取組を、学校マネジメントや小中連携の取組の中で位置づけていくことが必要である。
  • 奈良市の場合、地域教育協議会で長年培ったコーディネーター、活動経験、ネットワークといった財産をベースに、学校運営協議会の機能を加えていくことが有効である。
  • 一体的な推進により、別々の活動による負担感を軽減できるメリットについても触れる。

<地域住民等の参画の促進>

  • コーディネーターや学校運営協議会の委員など、現場を知る地域や学校をよりよくしようと主体的に考える市民の力が総合教育会議にも生かされることを期待したい。
  • 学校関係者だけでなく地域の大人の学びも重要である。熱意やスキルがあってもマインドを整えていかなければ、学校にとって重い存在になるおそれもある。
  • 学校の中に地域の居場所があることが、コミュニティ・スクールの推進に有効に働く。人が集まり、エネルギーが集まることで、学校が支えられ、町も活気づく。
  • 学校に一番近くて替わらずに関わってくれるのは、OBも含めた保護者。地域の参画として特に保護者を積極的に活用することも方策の一つ。
  • 既存のNPOとの一歩踏み込んだ連携の在り方も可能性として考えられる。
  • 先生方だけでなく、学校運営協議会の委員や学校支援をする方にも相応の負担がある。
  • 協力ではなく「協働」、参加ではなく「参画」という言葉を加えてもらいたい。

<首長部局との連携・協働>

  • 学校運営協議会の活動をまちづくりに広げるには、首長部局と連携した市町村全体としての方針が必要であり、個々の学校運営協議会や学校で考えるには限界がある。
  • 首長部局との連携が今後の教育改革の柱。教育委員会制度改革によって、今後は教育の分野に首長の力が及ぶ。まちづくりの上での学校の存在について、首長が語れることが重要。

<福祉部局等との連携・協働>

  • 地域を巻き込んだ支援の展開や学校マネジメントの支援といった調整を行うことで、いじめ問題が発生しない学校になっていくことにも期待できる。
  • 要保護児童対策協議会が扱うケースには地域の手を借りなければ解決しないものもある。守秘義務の壁と折り合いをつけ、同協議会のネットワークとどうつながっていくかが課題。
  • 首長部局では児童相談所、保健所、保育所といったメンバーが集まって定期的な検討会議を開き、様々なケースをカバーする仕組みがあるが、連携をシステム化するには守秘義務の壁が大きな課題。お互いの機能を明確にすること、法的な根拠の確保が必要である。
  • コミュニティ・スクールが児童相談所や福祉事務所等と地域を結ぶポイントとして機能できないか。子供の居場所と地域活動、専門支援が共存してつながる仕組みが考えられる。
  • プラットフォーム化して協働するということは、完全に一体化するのではなく、各々の取組の違いをはっきり認識しながら互いによいところを活用していくことが重要である。

<教職員の理解の促進>

  • 山口県では、教員の意識改革が第一にあり、学校の側(がわ)から地域に対して協力を求めることがコミュニティ・スクールの出発点と考えている。
  • 中堅の教職員には、自分たちは地域の力を借りなくてもできるという考え方を持つ方が多い。福祉の取組、地域が持つ様々な機能、スキルなど全てが総掛かりになるともっとよい教育ができることを伝えていく必要がある。
  • 教育委員会や管理職が、コミュニティ・スクールの意義や成果を自らの言葉で伝えられるようであってほしい。研修による育成や横のネットワークが重要である。
  • 教員養成の段階からコミュニティ・スクールの意義等を伝えていく必要がある。
  • 一大学の教職大学院のカリキュラムでコミュニティ・スクールを扱う方向という言及はあるが、研修や教員養成についても、まとまった塊として審議経過の中に位置づけてもよい。
  • 学校マネジメントの在り方では、教職員の養成だけではなく勤務の問題も非常に重要である。教職員の勤務体制についても記述を加えると現実味が増すのではないか。また、個々の教員の勤務量にばらつきがあることも意識する必要がある。

<幅広い普及・啓発と戦略的な広報>

(教育委員会への働きかけ)

  • 教育委員会の働きかけは影響が大きい。教育委員会から教職員に成果や進め方などの説明を行い、取組へのハードルを低くする努力をしていくことが必要である。
  • 首長に対しては、市民参画と協働のツールとして、コミュニティ・スクールがあるということを理解してもらうのが重要である。
  • コミュニティ・スクールが大人の学びの場や地域づくりの核になり得ることを、教育委員会改革で今後強い力を持っていく首長に対してもアピールしていく必要である。

(成果の強調など)

  • 学力の向上や家庭学習習慣の定着など、プラス面の効果もコミュニティ・スクールの立ち 上げに対して分かりやすいメッセージになり得る。もっと強調していく必要がある。
  • 大人の学びの場が地域課題の解決につながる。コミュニティ・スクールに関わる方々がリーダーになり、元気なお年寄りが地域の互助を担えるように老人会を立て直した例がある。
  • これまで蓄積された事例を踏まえて「学校運営協議会の設置の手引き」を改訂・普及することや、教育長会などでブロック別に呼びかけ、取組を広げていく方法が考えられる。
  • 推進に当たっては大きく三つの段階がある。自治体や教育長にやる気を起こしてもらう第一段階、自治体がやる気になった後どのように学校や地域を動かすかという第二段階。そして学校で始めた取組をどのようにうまく運用するかという第三段階。
  • 制度が始まって10年になり、ゼロからの学校もあれば10年続けた学校もある。それぞれの段階に合わせた推進の方法も具体的に盛り込むとよい。

<コミュニティ・スクール等の多様性と裾野の拡大>

  • 学校評議員制度について、形骸化など否定的な面の書き方が強い印象がある。学校評議員から発展的に学校運営協議会になった事例からメリットを挙げていくとよい。
  • 類似制度の機能化はスクラップ・アンド・ビルドなのだということを入れると、負担感の軽減につながるだろう。

<都道府県・市区町村の役割・推進方策>

  • 都道府県の教育長が首長に対して必要性を訴え、理解を得る場が必要である。また、全国知事会でも、これからの学校が持つ可能性を訴えていく必要がある。
  • 先生方が変わる、学校が動くことで子供が変わっていくというのが学校教育の基本。山口県は課題解決のために学校を変えようという気持ちから県が旗振り役をしている。他の都道府県にもその意識を伝えるために、教育長協議会でのプレゼンを実施していきたい。
  • 前で述べている今後の推進方策を受けた形で、もう少し具体的な方策の記述が必要。
  • 市町村の教育振興基本計画の中に今後の方針としてコミュニティ・スクールのことを織り込んでもらい、共通理解を形成する必要があるのではないか。
  • コミュニティ・スクールの指定校がない市町村に対して、少なくとも1校は調査研究校になってもらい検討をお願いしてはどうか。その際に都道府県の役割の言及も検討すべきだ。

<魅力(インセンティブ)の提供>

  • 人的・物的・財政的な支援・提案は、もっとクローズアップするとよい。
  • 人や物、お金が常に動いているところでは、再生・活性の循環が生まれる。
  • 学校事務の共同実施、教職員の加配措置など、継続的な体制の充実を図ることが重要。
  • コミュニティ・スクールによって、教員公募制という人事異動面のメリットも含め、学校裁量の拡大が期待できることを強調してはどうか。

<更に検討していくべき事項>

  • 一定の条件を満たした学校運営協議会を税額控除の対象団体にできるといったファンドを可能にする制度上の措置や寄附文化の醸成が必要である。
  • 法改正による努力義務化が今後できるかどうか。もし可能なら、どの都道府県においても校長が行う学校経営の水準として位置づけることができる。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)