コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成26年6月20日(金曜日)10時00分~12時30分

2.場所

中央合同庁舎7号館 東館(文部科学省庁舎)5階 5F3会議室

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 有識者ヒアリングについて
  3. コミュニティ・スクールの現状と課題等について(自由討議)
  4. その他

4.議事要旨

(1)座長の選任等について

  • 天笠委員が座長に、小松委員が副座長に選任された。
  • 会議の公開の取扱いについては資料2のとおり承認された。

(2)有識者ヒアリングについて

  • 事務局より資料1、3、4、5に基づいて本会議の趣旨やコミュニティ・スクールの状況等について説明を行った後、有識者ヒアリングとして佐藤委員より資料6、安齋委員より資料7に基づいて発表があった。

(3)コミュニティ・スクールの現状と課題等について(自由討議)

  • 資料8の主な論点(案)等をふまえ、委員による意見交換が行われた。概要は以下のとおり。

<コミュニティ・スクールの成果>

  • 学校と地域の情報共有、地域と連携した取組の組織的な実施など、地域連携に関する成果認識が高い。次に、特色ある学校づくり、教職員の意識改革、学校の活性化など、学校における成果認識が続いている。
  • 発現期からみた成果認識を分類すると、短期的には学校に対する保護者や地域の理解の深まり、学校と地域の情報共有などの成果、中期的には保護者・地域による学校支援活動の活発化、特色ある学校づくりなどの成果、長期的には児童生徒の学力向上、生徒指導の課題解決などの成果が挙げられる。
  • 取組の成果として、困難な課題への適切な対応(学校運営への信頼向上)、学校支援の充実(教育の質の向上、安全・安心な教育環境)、学校に関わる人の意識の変化(教育委員会職員、教職員、保護者、地域住民)が挙げられる。
  • 自治会も祭りもない新興地域でコミュニティ・スクールを導入したところ、地域が盛り上がり自治会もできた。よい学校をつくることがよい地域をつくる。
  • 防災・安全安心なまちづくりといった授業の支援に地域人材が入ると、学校と地域が結びつきやすくなる。

<コミュニティ・スクールの課題>

  • 指定前後において課題認識に大きな変化。指定後には、学校運営協議会の成果が不明確、類似制度との違いが理解できない、制度が形骸化するなどの課題認識は大きく下がる。
  • 「不要感」、「不信・不安感」、「不能感」と分類すると、いずれも指定後には数値が低くなっており、特に「不信・不安感」は大幅に減少。
  • 未指定校が指定を受けない理由には「地域連携がうまく行われている」「学校評議員等の類似の仕組みがある」という「不要感」が根強い。
  • 指定後においても、管理職や教職員の勤務負担、活動費や委員謝礼の支弁が困難、学校運営協議会委員の人材が得られないなどの課題がある。
  • 指定年数の長さにより、指定後でも課題が大きいと感じる学校がある。
  • 教育委員会の判断と類似制度の存在による不要感を必要感に変えることが必要。
  • 人の異動への対応(新たな教職員、学校運営協議会委員、保護者の理解促進)、コミュニティ・スクールにかかる時間の創出(事務のIT化、マンパワーの強化)、財源の確保(首長部局とのコラボ)などの課題が挙げられる。
  • 学校運営協議会に直接関わっていない先生方の理解が深まっていない。また、校長のマネジメント力でCSは左右される。継続可能とするために、常に原点に立ち返るとともに、世代交代も図っていくことが必要。
  • 新任校長は地域を知らないために学校運営協議会委員にふさわしい人材がわからない。新任校長等の参考となるよう県教委が学校運営協議会委員のガイドラインを示してはどうか。

(コミュニティ・スクールの数値目標等)

米国のチャータースクールは全校の3.3%。政府としてのKPIとして数値目標があった方がよいし、数が増えていくことは望ましいが、数にこだわりすぎない方がよい。

<学校運営協議会と学校支援地域本部等の取組の一体的な推進>

  • 学校運営協議会として学校支援活動を実施していくと、学校運営の改善や児童生徒の変容等の成果認識に結びつきやすい傾向。
  • 大玉村では、コミュニティ・スクール委員会に、学校支援、学校評価、子ども・家庭支援、広報の4つの部会を設置し活動を展開。コミュニティ・スクール委員会がハンドル、学校支援地域本部、放課後子供教室、学校関係者評価、SSWが車の車輪として活動している。
  • 学校支援地域本部と連携し学校支援を充実させることで、教育の質の向上等が図られる。
  • 東日本大震災の被災地である大槌では、学校支援地域本部の動きから始まり、地域コーディネーターを中心に、コミュニティ・スクール導入に向けた動きが出始めている。
  • 地域の方々がやりがいを持ち、子供たちを一緒に育む当事者意識を持って参画していくことが大切。課題を共有した上で、次の改革につなげられる関係づくりをすることが重要であり、京都市では、学校運営協議会と学校支援地域本部を一体で制度設計してきた。一つの学校をどう運営するか考えたとき、別々の制度が動いていると現場はしんどい。
  • 第1段階、第2段階問わず、コミュニティ・スクールとしての芯をどうしていくかが大事であり、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の数を各々把握することが必要か。

<地域との協働による学校・子供の抱える課題の解決>

  • 困難な状況に直面したときこそ、保護者や地域の方々と課題を共有し、ともに学校を運営していくことが大切。保護者や地域の力を統合する場として学校運営協議会は絶対に必要。
  • 大玉村ではコミュニティ・スクール委員会の下に「子ども・家庭支援部会」を設置し、SSW等と連携し、子供たちを巡る問題の解決に向けたニーズの把握、支援を実施している。
  • 大玉村の「子ども・家庭支援部会」の取組は非常にすばらしい。コミュニティ・スクールの問題は、多様な視点で議論していく必要があり、子供の貧困問題や非行など、学校の中で声にならない声をどう拾い支援していくかが課題。
  • 家庭教育支援チームによる全戸訪問の取組など、訪問型のアウトリーチの手法により、声なき声を拾い、支援を届けていく取組が広がっているが、そうした取組とコミュニティ・スクールとの関連に期待したい。
  • 非行や学級崩壊など学校の困り感にどれだけ寄り添えるかが拡大・充実のポイントではないか。ソーシャルワークの視点で取り入れるのは、住民を巻き込んで課題をオープンにし、地域の方々が関わっていくこと。そうすることで目標が一致し学校全体が変わっていく。
  • 京都市では、生活保護率・就学援助率が高い学校でもコミュニティ・スクールに取り組んでいる。一人でも学校のことを思ってくれる人がいれば、その人を巻き込むことで、コミュニティ・スクールに発展していくことが可能ではないか。地域力のある学校で取り組みやすい側面はあるかもしれないが、必ずしもきれいにリンクしている訳ではない。

<幅広い普及・啓発>

  • 都道府県ごとに「CS推進協議会」を設置し、CS推進フォーラムを開催してはどうか。現場の校長に理念等が伝わっていないため、もっと身近な地域でフォーラム等を開催し、学校・教育委員会の研修の機会を設けてはどうか。
  • 町村は、学校がうまくいっており、既存の仕組みで十分という意識があるなど、学校運営協議会への必要感がないのでは、細かい情報も町村に十分伝わっていないのではないか。
  • 地方では少子化が進み、学校も統廃合が進んでいる。過疎化に歯止めをかけ地域を活性化させるためにも、地域とともに学校に新たな魅力を創出していく必要があるのではないか。
  • 本来、コミュニティ・スクールはしんどい学校をよくするものだが、コミュニティ・スクールを導入することにより、豊かで人が集まる校区、人も集まらない校区とで一層の校区間格差が生まれるのではという危惧があり、導入に踏み込めない県もあるのではないか。

<コミュニティ・スクール等の多様性と裾野の拡大>

(類似の仕組みの機能化)

  • 何のためにコミュニティ・スクールを導入するかという目的が重要。飽くまで、子供や大人の課題解決のための仕組みとして有力なツールの一つに過ぎず、学校運営協議会や学校評議員、学校支援地域本部、学校評価を別々に捉えるのではなく、一体化して捉える必要。
  • 「CSへの発展をめざす学校」づくりの構想として、学校評議員、学校支援ボランティア、学校関係者評価など、今ある資源に価値を見いだし、PDCAに生かすことが考えられる。具体的には、(1)形骸化した学校評議員の仕組みを見直し熟議する組織に転換し活性化、(2)学校支援ボランティアを創設し地域人材の積極的活用、(3)学校関係者評価を改善し評価者に学校評議員を活用、を組み合わせることが考えられる。
  • 学校評議員制度が形骸化しているとの認識は、CS指定校55%、未指定校54%と、指定にかかわらず、半数以上が形骸化を指摘している。
  • 多くの学校で学校評議員制度は形骸化しており、会合開催数が年3回以下の評議員が95%を超える。また、依然として地域の名誉職が評議員になっていることも形骸化の一因ではないか。学校に足を運んで一緒に汗をかいてくれる人を評議員に選ぶとともに、会議を活性化し、課題解決のための熟議をしていく形に変えていく必要があるのではないか。
  • 学校関係者評価の実施率は高いが、まともに実施できているとは言いがたい。評価を実施しても、教育委員会からの支援・改善が図られず、先が見えないのが現状。評価結果を踏まえ、改善意識を共有し協働を促すことがCSへの発展につながる。
  • 学校評議員やPTA代表なども含め、様々な人が総掛かりでよい学校をつくるというガイドラインを都道府県や市町村で作成し示せるとよい。
  • 学校評価を実施するベースとして学校運営協議会を活用することは有効である。

(任用規定の扱い)

  • 学校現場の方から、人事にまで口を出されるのは面倒という声を聞く。学校運営協議会の委員が学校経営の味方になるという視点に立つ必要があり、校長がビジョンを描き、学校経営に対し明確にスタンスを示す中で、それに対して意見具申が言える。
  • 現場の受け止めとしては、任用規定に対するハードルが高い。飽くまで任意の規定であり、地教行法に基づけば、任用規定のないものも認めるという捉え方を示してはどうか。

(小中一貫校のコミュニティ・スクール)

  • 大玉村では、統合運営型コミュニティ・スクールとし、5校園(幼稚園2園、小学校2校、中学校1校)の学校運営協議会を単独に運営するのではなく、一体的に運営(委員が5校園の学校運営協議会の委員を兼ねる)している。
  • 学園全体のコミュニティ・スクール委員会とは別に、個々の学校運営協議会において、学校ごとの課題を話し合う機会も設けている。

<魅力(インセンティブ)の提供>

  • 大玉村では公費でコーディネーターを配置し、学校運営協議会の運営事務を任せることで学校の負担軽減を図った。取組の継続にはコーディネーターの継続配置が必要。そのほか、理解促進のための教育フォーラムの開催、漢検・英検の実施など活動への財政支援が必要。
  • 学校運営協議会に関わった事務職員はコーディネーターや連絡調整等を行っているが、学校運営協議会の運営にはマンパワーが必要である。

<取組内容の充実と活性化、人材育成>

(教職員等の意識改革)

  • 10年間の取組の中で、先生たちの中に一緒にやってよかったという成功体験が重なり、コミュニティ・スクールの文化が浸透してきた。現在は、全ての教職員が学校運営協議会委員と懇談する機会を設けるなど、理解を促す取組も進めている。
  • 学校支援のボランティアは“子供たちのため”には熱心だが“学校のため”にはなかなか結びついていかない。“学校のため”に結びつけるには、学校現場の受入れに課題がある。行政職員と有志のコーディネーターとが一緒になって、勉強会や新任コーディネーターの研修会を企画しているが、お互いの状況をよく知ることが“学校のために”につながる。
  • 教職員は異動し、学校運営協議会委員も保護者も変わる。立ち上げたときだけでなく、常に丁寧に理解を求め、コミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが大切。
  • コミュニティ・スクール委員会で研修会を開催したり、教員、PTA、支援本部、学校運営協議会等のメンバーが熟議を開催するなど、意識の啓発と、文化の継承を図っている。

(負担の軽減)

  • 事務局の人がいなくても継続して運営していけるよう、運営部会を設けて、議事録や次回の協議事項等の調整も運営部会が実施する体制にしたり、評価アンケートの作成・分析・報告も全委員が平等で担当するなど、体制の工夫をしている。
  • 教育委員会の理解・協力が必要というが、教育委員会もアップアップ。教育委員会・学校が何をするのか、事務の再配分を整理する必要があるのではないか。

<都道府県・市町村の役割>

  • コミュニティ・スクールの指定の決め手は「教育委員会からの働きかけ」だと指摘する学校が約8割の状況。
  • 都道府県ごとに「CS推進協議会」を設置し、CS推進フォーラムを開催してはどうか。現場の校長に理念等が伝わっていないため、もっと身近な地域でフォーラム等を開催し、学校・教育委員会の研修の機会を設けてはどうか。(再掲)
  • 過疎になればなるほど学校の重要性が問われる。人づくりをする町こそが地域再生が行われる町になるのであって、これからの学校経営の姿を教育委員会が示すとともに、町に学校があることの重要性を町ぐるみで再認識する意識を盛り上げていく必要がある。
  • 以前コミュニティ・スクールのフォーラムで、発表校以外に県の関係者が来ていなかった回があった。そこに根強い課題が表れているのではないか。
  • 新任校長は地域を知らないために学校運営協議会委員にふさわしい人材がわからない。新任校長等の参考となるよう県教委が学校運営協議会委員のガイドラインを示してはどうか。また、学校評議員やPTA代表なども含め、様々な人が総掛かりでよい学校をつくるというガイドラインを都道府県や市町村で作成し示せるとよい。(再掲)
  • 山口県は全国的にもコミュニティ・スクールが多い県だが、校長の学校経営の水準の一つにコミュニティ・スクールの運営を位置づけている。新任校長にはコミュニティ・スクールの研修を悉皆(しっかい)で受けてもらっている。
  • コミュニティ・スクールの質を確保するために、県としてプログラム開発や研修を仕組んでいくなどの支援をしている。地域の名士を入れただけではうまくいかないため、実行部隊のメンバーを入れ、教員が提案できる組織をつくることにより、成功している事例がある。そうした先進校を各校の取組にいかせるよう、先進校に校長を集め、研修を徹底している。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)