【資料2-1】今後の英語教育の改善・充実方策について 報告 (案)

グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言

1,英語教育改革の背景

○ 本有識者会議は,文部科学省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を受けて平成26年2月に設置され,小・中・高等学校を通じた英語教育改革について9回の審議を重ねており,これまでの議論を審議まとめとして整理した。

○ 今般の英語教育改革の背景として,社会における急速なグローバル化の進展という社会的な背景と,これまでの英語教育改革の進展や課題を踏まえた更なる取組の充実の2点が挙げられる。

グローバル化の進展の中での英語力の重要性

○ 社会の急速なグローバル化の進展の中で,英語力の一層の充実は我が国にとって極めて重要な問題。
  これからは,国民一人一人にとって,異文化理解や異文化コミュニケーションはますます重要になる。その際に,国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり,アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきである。今後の英語教育改革において,その基礎的・基本的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育成することは,児童生徒の将来的な可能性の広がりのために欠かせない。
  もちろん,社会のグローバル化の進展への対応は,英語さえ習得すればよいということではない。我が国の歴史・文化等の教養とともに,思考力・判断力・表現力等を備えることにより,情報や考えなどを積極的に発信し,相手とのコミュケーションができなければならない。

○ 我が国では,人々が英語をはじめとする外国語を日常的に使用する機会は限られている。しかしながら,東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより,現在,学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には,我が国は,多文化・多言語・多民族の人たちが,協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され,そうした中で,国民一人一人が,様々な社会的・職業的な場面において,外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。

これまでの英語教育の改革を経た更なる改善

○ これまで英語教育では,幾多の議論を経て現行の学習指導要領が実施され,小・中・高等学校を通じて多くの取組と成果が見られるが,なお一層の充実が課題となっている。

○ これまでの成果と課題を踏まえながら,小・中・高等学校が連携し,一貫した英語教育の充実・強化のための改善が求められる。その際,英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を活用して実際のコミュニケーションを行う言語活動を一層重視し,小・中・高等学校を通じて,授業で発音・語彙・文法等の間違いを恐れず,積極的に英語を使おうとする態度を育成することと,英語を用いてコミュニケーションを図る体験を積むことが必要である。

○ 英語教育の充実に当たり,「ことば」への関心を高める工夫によって更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという視点が重要である。

本有識者会議における検討

○ 有識者会議における議論は極めて多岐にわたっており,その議論や主な論点が分かるように,「3.英語教育の在り方に関する有識者会議における議論の詳細」(以下「詳細」とする。)を作成している。幾つかの論点については様々な意見も出たところであり,その点を含め詳細に記載している。

○ なお,教育課程に関わる事項については,次期学習指導要領改訂に向けた教育課程全体の見直しの中で,また,教員養成に関わる事項については,教員養成に関する全体の議論の中で,更に検討を要する。

2,必要な改革について

改革1.国が示す教育目標・内容の改善

○ 学習指導要領では,小・中・高等学校を通して,1,各学校段階の学びを円滑に接続させる,2,「英語を使って何ができるようになるか」という観点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)。(具体的な学習到達目標は各学校が設定する)。

○ 高等学校卒業時に,生涯にわたり4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。
  あわせて,生徒の英語力の目標を設定し,調査による把握・分析を行い,きめ細かな指導改善・充実,生徒の学習意欲の向上につなげる。これまでに設定されている英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上,高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合50%)だけでなく,高校生の特性・進路等に応じて,高校卒業段階で,英検2級から準1級,TOEFLiBT57点程度以上等を設定し,生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要。
小学校 :中学年から外国語活動を開始し,音声に慣れ親しませながら,コミュニケーションの素地(そじ)を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え,積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため,学習に系統性を持たせるため教科として行うことが適当。小学校の外国語教育に係る授業時数や位置づけなどは,今後,教育課程全体の議論の中で更に専門的に検討。
中学校 :身近な話題についての理解や表現,簡単な情報交換ができるコミュニケーション能力を養う。文法訳読に偏ることなく,互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習を重視する。
高等学校:幅広い話題について発表・討論・交渉など言語活動を豊富に体験し,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を高める。

 小・中・高等学校を通じた一貫した指標の設定

○ 各学校種での指導改善は進んでいるものの,学校間の接続(小・中連携,中・高連携)が十分とは言えず,進学後に,それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が多い。

○ そこで,2020(平成32)年度を見据え,新たな英語教育を実施していくため,小・中・高等学校を通じた英語教育の充実・強化を進める。
  国として,これまでの取組を検証しつつ,小・中・高等学校を通して各学校段階の学びを円滑に接続させるとともに,学校種ごとの教育目標を,技能ごとに「英語を使って何ができるようになるか」という視点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)。これにより,各学校が,具体的な学習到達目標を設定し,英語力に関する達成状況を明確に検証できるようにする(「3詳細」18ページを参照)。

○ 生徒の英語力の目標については,「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)において,中学校卒業段階で英検3級程度以上,高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。この実現に向けて取り組むとともに,高校卒業時に,生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。
あわせて,生徒の英語力の目標を設定し,調査による把握・分析を行い,きめ細かな指導改善・充実,生徒の学習意欲の向上につなげる。これまでに設定されている英語力の目標から,高校生の特性・進路等に応じて,高等学校卒業段階で,英検2級から準1級,TOEFLiBT57点程度以上等を設定し,生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要。(「3詳細」19ページを参照)。

小学校における取組

○ 小学校では,コミュニケーション能力の素地(そじ)を養うという観点で,外国語活動を通じた成果が出ている。

 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】

・小学生の7割が「英語が好き」「英語の授業が好き」と回答。
・中学校8割が「小学校の英語の授業(簡単な英会話)が役に立った」と回答。
・多くの中学校教員が「小学校の外国語活動導入前と比べて,生徒による英語の「聞く力」「話す力」が向上した」と回答。

○ 一方,小学校の高学年では,抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず,外国語活動の性質上,体系的な学習は行わないため,児童が学習内容に物足りなさを感じている状況が見られるとともに,中学校1年生の8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから,中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない場合が見られる。

 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】

・中学生の8割が「小学校の英語の授業で英単語を「読む」「書く」機会が欲しかった」と回答。

【小学校の事例】

・低学年から外国語活動に取り組む小学校約3,000校(全体の約15%)における取組状況を見ると,小学校高学年で学習意欲が低下する傾向が見られる例もある。その場合,高学年で「読むこと」「書くこと」も含めて系統的に指導する教科型の外国語教育を導入することで,児童の外国語の表現力・理解力が深まり,学習意欲の向上が認められている。

○ こうしたことから,小学校では,これまでの実践を踏まえながら,中学年から「外国語活動」を開始し,音に慣れ親しませながら,コミュニケーションの素地(そじ)を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え,積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため,学習の系統性を持たせる観点から,教科として外国語教育を行うことが適当である。

・小学校中学年への外国語活動の導入は,英語学習に対する動機付けや,聞き取り,発音の向上に効果があると考えられる。また音声を中心に体験的に理解を深めることは,高学年よりも,小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。

・小学校高学年では,現在,中学校で学ばれている内容を単に前倒しするのではなく,小学校の発達段階に応じて,積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養う指導が考えられる。 

○ 平成26年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では,小学校中学年の活動型を導入し,コミュニケーション能力の素地(そじ)を養うため,週1~2コマ程度とすることが示されている。
  また,高学年では教科型とし,コミュニケーション能力の基礎を養うことを目標に,初歩的な英語の運用能力を身に付けるために必要な一定時間(年間70単位時間,週2コマ相当)を確保し,モジュール学習(※)も活用しながら,週3コマ程度を確保することが示されている。
※モジュール学習とは,10分,15分などの時間を単位として取り組む学習形態。

○ 一方,授業時数については,小学校の標準授業時数や,モジュール学習等の状況を踏まえたより詳細な検討が必要との指摘もあった(「3詳細」20ページを参照) 。
こうした意見も踏まえ,小学校における外国語の教育に係る授業時数や位置づけなどについては,次期の学習指導要領改訂に向けての審議において,教育課程全体の中で更に専門的に検討することが必要である。

○ 小学校では,英語に限らず,世界に数多くの言語があることを理解させることも重要である。

中学校・高等学校における取組

○ 中・高等学校では,英語教育の目標がコミュニケーション能力を身に付けることでありながら,「英語を用いて何ができるようになったか」よりも,「文法や語彙等の知識がどれだけ身に付いたか」という観点で授業が行われ,コミュニケーション能力の育成を意識した取組が不十分な学校もあるとの指摘がある。

 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・授業においてペア・ワーク等で生徒が英語で言語活動をする場面を半分以上設定しているのは,中学校では,1年生52%,2年生47%,3年生43%となっている。同様に,高等学校では「コミュニケーション1」で41%,「英語表現1」で42%となっている。

○ こうしたことから,中学校では,小学校との学びの連続性を図りつつ,身近な話題について理解したり表現したりするコミュニケーションを図ることができるようにすることが適当である。その際,文法訳読に偏ることなく,互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習を重視する。
  また,高等学校では,中学校との円滑な接続を図りながら,国際社会の多様性に対応した目標・内容を設定し,幅広い話題について発表・討論・交渉などを行う言語活動の高度化を図ることが適当である。それにより,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を高める。

○ 外国語教育に当たり,母語に関する教育との連携を通じて,「ことば」への関心を高める工夫が重要であるとの指摘があった(「3詳細」20ページを参照)。

改革2.学校における指導と評価の改善

○ 英語学習では,とりわけ話したり書いたりする場面において,失敗をおそれず,積極的に英語を使おうとする態度を育成することが重要。互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を行うため,中・高等学校では,生徒の理解の程度に応じて,授業を英語で行うことを基本とする。

○ 各学校は,学習指導要領を踏まえながら,4技能を通じて「英語を使って何ができるようになるか」という観点から学習到達目標(例:CAN-DO形式)を設定し,指導・評価方法を改善。 

 中学校・高等学校における指導

○ 現行学習指導要領における外国語の目標は,外国語を通じて,
1 言語や文化に対する理解を深め,
2 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,
3 (中学校では)聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこと,
(高等学校では)情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うこと, 
とされている。学習の過程では,発音・表現・文法等があやふやになったり間違ったりするのは当然のことである。そうした失敗を恐れず,積極的に英語を使おうとする態度を育成するためにも,授業において実際に英語を使う言語活動をより一層重視する必要がある。

○ 中・高等学校では,英語教育の目標としてコミュニケーション能力を身に付けることを設定しながら,「英語を用いて何ができるようになったか」よりも,「文法や語彙等の知識がどれだけ身に付いたか」という観点で授業が行われているとの指摘がある。この場合,コミュニケーション能力の育成を意識した取組も不十分であるとの指摘もある(再掲)。

○ 中・高等学校では,英語の教科書の本文や,そこで取り上げられている題材や言語材料を,生徒が関心を持てるように指導すべきである。例えば,他教科での学習内容,学校生活における活動,地域行事,生徒の体験等と関連付けることで,文法訳読に偏ることなく,互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を構成することが可能になる。
  このように,授業を実際のコミュニケーションの場面とする観点から,現在,高等学校では,授業を英語で行うことを基本としているところであり,中学校と高校の学びを円滑につなげる観点から,中学校においても,授業を英語で行うことを基本とすることが適当である。
  その際,中・高等学校とも,その趣旨が「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため」であり,「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮すること」を前提としていることを十分に理解することが重要である。

 【文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H22)」,「英語教育実施状況調査(H25)」】
(中学校)
・「発話をおおむね英語で行っている」又は「発話の半分以上を英語で行っている」教員は平成24年度の1年生で45%,2年生で43%,3年生で41%
(高等学校)
・「発話をおおむね英語で行っている」又は「発話の半分以上を英語で行っている」教員は,平成22年度の「英語1」で15%だったが,平成25年度の「コミュニケーション英語1」では53%に,「英語表現1」では47%に,それぞれ増加した。

 「英語を使って何ができるようになるか」という観点からの到達目標と評価

○ 中・高等学校では,学習指導要領を踏まえ「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から,学習到達目標(CAN-DO形式)を設定し,指導と評価方法を改善する取組が進んでいる。

  この学習到達目標(CAN-DO形式)を指導に活用することで,高等学校の英語の授業のかなりの部分が英語で行われ,自信をもって英語で発言する生徒が増えているという事例も多い。

 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・平成25年時点で,中学校の17%,高等学校の34%でCAN-DOリストが作成済みである。また,民間の調査によれば,これからCAN-DOリストを設定する予定の学校を含めると6~7割に達すると想定される(公益財団法人日本英語検定協会「外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定に関する現状調査(2013)」)。

 ○ 各学校では,4技能に関し,「英語を使って何ができるようになるか」という観点から,生徒に求められる学習到達目標(CAN-DO形式)を作成することが望まれる。その際,教科書・教材,生徒の学習状況,授業時数等を踏まえながら,学校及び学年・科目ごとの学習到達目標をできるだけ分かりやすく具体的に設定し,その目標に到達するための指導方法を工夫・改善することが期待される。

【学習到達目標(CAN-DO形式)を作成することの効果】
・各学校で,学習到達目標を通じて,児童生徒にどのような英語力が身に付くか,英語を用いて何ができるようになるかをあらかじめ明らかにすることができる。また,そうした情報を生徒や保護者と共有することで英語学習のゴールが明確になる。
・特に,学習指導要領に沿って学習到達目標を設定し,それに基づいた指導と評価を行う際に,文法や語彙等の知識の習得にとどまらず,それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう,4技能の総合的な能力の習得を重視することが期待される。
・ともすれば,校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で,学習到達目標の策定を通じて,教員間で,指導に当たっての共通理解を図ることができる。
・面接・スピーチ・エッセイ等のパフォーマンス評価などを活用することによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され,指導と評価の改善につなげることができる。 

○ 「CAN-DOリスト」は,もともとヨーロッパ共同体における複言語主義を背景とするCEFR(外国語の学習,教授,評価のためのヨーロッパ共通参照枠)において学習到達指標として提案されたものであり,それが,我が国では学習到達目標として用いられていることに関して指摘があった(「3詳細」23ページを参照)。
  また,観点別学習状況の評価とCAN-DOの関係についても指摘があった(「3詳細」23ページを参照)。

○ 学習評価においては,主体的な学びにつながる「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」を重視し,観点別学習状況の評価において,例えば,「外国語を用いて~ができる」とする観点を「外国語を用いて~しようとしている」とした評価を
 行うことによって,生徒自らが主体的に学ぶ意欲や態度などを含めた多面的な
 評価方法等を検証し,活用することが必要である(「3詳細」24ページを参照)。

小学校における評価の取扱い

○ 小学校において,中学年では,外国語学習の初期段階であり,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて,発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する必要がある。
  高学年では,教科として位置付けるに当たり,英語の特性と高学年の発達段階を踏まえながら,文章記述による評価や数値等による評価など,適切な評価方法については先進的取組を検証し,引き続き検討する。

○ また,小学校での評価に当たっては,外国語学習の初期段階であることを踏まえ,語彙や文法等の知識の量ではなく,パフォーマンス評価等を通して,
・ 言語や文化に関する気付き,
・ コミュニケーションへの関心・意欲,
・ 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度,
・ 「聞くこと」「話すこと」などの技能,
 を評価することも考えられる。その際,学習者に過度の負担とならないように配慮しなければならない。

○ なお,中学校における入学者選抜に外国語を課すことは望ましくないとの指摘があった。今後,小学校における外国語学習の趣旨を踏まえ,学習者に過度の負担とならないように十分に配慮して検討することが必要である。このことは,小学校と中学校の接続の在り方を検討する際にも極めて重要である。

※パフォーマンス評価とは,知識やスキルを使いこなす(活用・応用・総合する)ことを求めるような評価方法(問題や課題)であり,様々な学習活動の部分的な評価や実技の評価をするという複雑なものまでを含んでいる。また,筆記と実演を組み合わせたプロジェクトを通じて評価を行うことを指す場合もある。 (出典:文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-平成26年3月31日:42ページ)

改革3.高等学校・大学の英語力の評価及び入学者選抜の改善

○ 英語力の評価及び入学者選抜における英語力の測定については,4技能の総合的なコミュニケーション能力が適切に評価されるよう促す。

○ 各大学等のアドミッション・ポリシーとの整合性を図ることを前提に,入学者選抜に,4技能を測定する資格・検定試験の更なる活用を促進。そのため,協議会による適切な資格・検定試験の情報提供,指針づくり等が早急に進められるべき。                                  

○「達成度テスト」の具体的な検討を行う際には協議会の取組を参考に英語の資格・検討試験の活用の在り方も含め検討することが必要。

英語力の評価及び入学者選抜における4技能のコミュニケーション能力の評価

○ 生徒の4技能の英語力の測定及び学習状況に関する現状・課題を把握・分析し,それらの結果を活用することにより,教員の指導改善,生徒の英語力を向上に生かすことにつなげることが必要である。

○ 現在の大学入学者選抜において,4技能全てを測定する入試はほとんど行われていない(高等学校入学者選抜では,一部の学校においては面接・適性検査と併せて「話す力」を確認している)。また,資格・検定試験を活用している事例は,大学入学者選抜では740校中265校(平成25年度大学入学者選抜),高等学校入学者選抜では国立2校,公立の高等学校では現時点まで存在しない。
  高等学校・大学へ進学を希望する者に関する英語力については,4技能からなるコミュニケーション能力が適切に評価されることを基本として,入学者選抜を改善していくことが重要である。

4技能を測定する資格・検定試験の活用

○ 各大学等における入学者選抜の改善を促しつつ,各大学の入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー)との整合性を図ることを前提に,入学者選抜において,英語力を測定する資格・検定試験のうち4技能を適切に測定するものの活用が奨励されるべきである。
  そのため,大学,高等学校及び中学校の学校関係団体,テスト理論等の専門家,資格・検定試験の関係団体等からなる協議会が設けられ,入学者選抜に際し,資格・検定試験が適切かつ効果的に活用されるような指針づくりが早急に進められるべきである。
  国は,そうした指針づくりに向けた検討が迅速に進むよう,専門的な助言をはじめとする情報提供等に努めることが求められる。

【指針づくりに向けて想定される検討項目の例】
・学習指導要領に沿って4技能の総合的なコミュニケーション能力が育成されていることを資格・検定試験で測定する可能性
・資格・検定試験の評価の妥当性(語彙レベル,使用言語領域,出題意図等)
・多様な生徒・学生の能力への適合性
・テスト理論に基づく妥当な換算方法(例:みなし満点,点数換算等)
・受験のしやすさ(経済的状況に配慮した受験料・支援,地域バランスに配慮した実施体制,CBTを含めた試験形態,受験回数等)
・適正・公正な試験実施体制(試験監督,情報管理等) 

○ 今後,具体的な検討が行われる「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)/(発展レベル)(仮称)について具体的な検討を行う際には,前述のような取組を参考に資格・検定試験の活用の在り方について検討が求められる。

大学及び高等学校入学者選抜における学力検査等の在り方の改善

○ また,この協議会において,現状の学力検査等における英語問題の在り方の調査・分析等を行い,得られた結果が大学,高等学校等において活用が図られるよう広く情報発信等を行う。

○ なお,大学入学者選抜の在り方を抜本的に見直すべきとの観点や,資格・検定試験の活用に関する協議会の必要性や取組を明確にすべきとの指摘があった(「3詳細」27ページを参照)。

改革4.教科書・教材の充実

○ 小学校高学年で教科化する場合,学習効果の高いICT活用も含め必要な教材等を開発・検証・活用する。                             

○ 教科書を通じて,説明・発表・討論等の言語活動により,思考力・判断力・表現力等が一層育成されるよう教科用図書検定基準の見直しに取り組む。

○ 国において音声や映像を含めた「デジタル教科書・教材」の導入に向けて検討を進める。

○ ICT予算に係る地方財政措置を積極的に活用し,学校の英語授業におけるICT環境を整備。

教科書の改善

○ 小学校中学年では,発達段階に応じた外国語活動に必要な教材を開発する。小学校高学年では,教科化に伴って,教科書の整備が必要となるが,教科書が整備されるまでの間,国において,新たな教材を開発・検証・配布する必要がある。
  小学校の高学年では,中学年での外国語活動を継承し,また,中学校での学習への円滑な接続を踏まえながら,アルファベット文字の認識,日本と英語の音声の違いやそれぞれの特徴,語順等への気付きを促す指導に有効な教科書等の教材が必要である。

○ 現在の中・高等学校の教科書には,文法事項を中心とした言語材料の定着を図る様々な活動に分量の多くがとられているため,言語材料を活用しながら,説明・発表・討論を通じて,思考力・判断力・表現力等を育成するような言語活動の展開が十分に意識されていないものも見られる。教科書等の作成・活用に当たり,次期学習指導要領の改訂において,そのような趣旨をより徹底するとともに,教科用図書検定基準の見直しに取り組むことが適当である。

ICTの活用

○ 先進的な取組を行う学校では,タブレット,PC,電子黒板,テレビ会議システム等を活用し,教室内の授業や他地域・海外の学校との交流において,意見交換・発表等の互いを高め合う学びを通じて,思考力・判断力・表現力等を育成する取組が行われている。

改革5.学校における指導体制の充実

○ 小学校の中学年では,主に学級担任がALT等とのティーム・ティーチングも活用しながら指導し,高学年では,学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する,併せて専科指導を行う教員を活用することによる指導体制を構築。2019(平成31)年度までに,すべての小学校でALTを確保できる条件を整備。小学校教員が自信を持って専科指導に当たることが可能となるよう,「免許法認定講習」開設支援等による中学校英語免許状取得を促進。

○ 教職課程において英語力・英語指導力を充実する観点から改善。今後,教員養成の全体の議論の中で検討が必要。

○ 現職教員への研修は,教育委員会と大学・外部専門機関等との連携体制を構築し,継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげ改善・充実。 

指導体制の強化

○ 各地域の大学や外部専門機関との連携による研修等の実施や,各地域の指導的立場にある教員が英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど,地域全体の指導体制を強化する必要がある。  
また,各地域の中心となる「英語教育推進リーダー」等の養成とともに,そうした者が各地域における研修の企画・運営に参加することが可能となるような定数措置や外部専門人材の活用を充実することが必要である。

○ 各学校では,校長のリーダーシップの下で,英語教育の学校全体の取組方針を明確にし,中核教員等を中心とした指導体制の強化に取り組むことが重要である。

○ 小学校では,現行の学習指導要領において,
・指導計画の作成と授業は,学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行い,
・授業の実施に際しては,ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなどにより,
 指導体制を充実することとされている。
  平成23年度に小学校高学年に外国語活動が導入されて以降,多くの学校で学級担任と外国語指導助手(ALT)を始め,英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングによる指導体制が整備・充実が図られてきた。
  一方,授業準備等の時間確保,教員の指導力,小・中学校の連携の具体的な工夫が課題として指摘されている。

 【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】
・小学校では,学校の状況が「十分でない」又は「どちらかといえば十分でない」項目として,「準備等の時間確保」,「教員の指導力」,「小・中の連携」等を挙げる教員が多い(それぞれ80%,58%,74%)。

○ そこで,小学校では,中学年と高学年の接続が円滑になされることを前提に,
・中学年では,主に学級担任が,外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングも活用しながら指導し,
・高学年では,学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する。あわせて,専科指導を行う教員を活用することにより,専門性を一層重視した指導体制を構築する必要がある。
また,小学校教員が自信を持って専科指導に当たることが可能となるよう必要な研修を充実するとともに,「免許法認定講習」の開設支援等による中学校英語免許状取得を促進する。

○ なお,教員免許を有しない者のうち十分な英語力・指導力を有する人材を,特別免許状を積極的に授与した上で活用するとともに,英語が堪能な地域人材や英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用する方策を講じることも検討する。

○ また,中・高等学校では,英語の指導に求められる指導体制を一層強化するため,現職教員に対する研修を充実させる。また,習熟度別指導,少人数指導,ティーム・ティーチング等の実施を通じてきめ細かな指導が行われるようにする環境整備を進める。

○ ALTについては,地域や学校,教員によりその取組に差(地域間の格差(半年に1回程度しか訪問がない学校もあり)があり,特に小学校ではALTに指導を任せてしまう事例もある。

 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・ALT等の外部人材は,1万2,000人。うちJETプログラムによるALTが4,000人であり,また,自治体の直接任用,労働者派遣契約によるもの及び請負契約によるものなどを合計すると約8,000人である。
・すべての英語の授業のうち小学校の58%,中学校の21%,高校の8%においてALTが活用されている。

 そのため,外国人講師,ALT,地域人材等の活用など,指導体制を充実させる必要があり,少なくとも,小学校の次期学習指導要領の実施が想定される2020(平成32)年度の前年度までに,すべての小学校にALT等が確保できるようにする必要がある。その中で,JETプログラムについては,地方公共団体における採用数がピーク時よりも減少している中で,集中的に配置支援を行いながら,その採用を促すことが必要である。

教員養成と研修

○ 多くの現職教員が,自分が受けてきた英語教育とは大きく異なる方法で指導や評価を行うことが求められ,そのことに対応できる教員を養成するための研修が課題となっている。

○ 小学校の教職課程では,児童に英語を指導するのに必要な英語コミュニケーション力を身に付ける授業や英語指導法に関する授業の履修が行われるようにするための方策を検討する。また,養成段階において,基本的な英語音声学,実際の場面で使うことができる語彙・表現,文構造,文法に関する理解と運用,異文化理解,発達段階に応じた適切な指導法,教材開発,小学校における教室運営など今まで以上に実践的な内容を取り扱うべきである。
  また,小中連携に対応した実習・事例研究,実践的なティーム・ティーチング等の模擬授業が開設されることが必要である(「3詳細」33~34ページを参照)。

○ 中・高等学校の教職課程では,英語力・英語指導力を強化するという観点から改善・見直しが必要である。
  大学においては,「教科に関する科目」を充実する必要があり,特に,英語の構造と機能を理解し,コミュニケーションを行うため,
・英語音声学,第二言語習得理論を含めた英語学
・4技能を統合的に指導する英語コミュニケーション
の科目が充実されることが期待される。
「教職に関する科目」では,発表・討論・交渉等の言語活動の充実に対応し,模擬授業や教材研究等を充実することが求められる(「3詳細」34~35ページを参照)。

○ また,在学中に,海外での留学を通じて,英語力・指導力を高めるとともに,異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることも重要である。文部科学省で進めている「トビタテ!留学JAPAN」などを含め,在学中の海外留学を積極的に奨励する。

○ 将来の小学校における外国語教育の充実や,中・高等学校における英語教育の高度化に向けて,平成26年度から,国において外部専門機関と連携して研修を実施している。また,自治体における研修への補助も開始した。この研修参加者について,多くの教員の英語力が向上し,「これからの授業を英語で実施したい」と考える教員が増加している。

【英語教育推進リーダー中央研修に参加した小学校教員へのアンケート(H26)】
・研修前:授業のほぼすべて又は半分以上を英語で実施していた教員は91%(授業をほぼ英語で実施していた者18%,授業の半分を英語で実施していた者63%)。
・研修後:授業のほぼすべて又は半分以上を英語で実施したいと考える教員は98%(授業をほぼ英語で実施したいと考える者60%,半分は英語で実施したい38%)。 

○ 「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)では英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級程度又はTOEFL iBT80点程度以上等)を掲げており,上記の取組を通じて,養成段階における教員志望者の英語力をこうした水準にしていくことが望まれる。

【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)】
・公立学校の英語担当教員の英語力について,英検準1級以上,TOEFL iBT80点以上又はTOEIC730点以上の者の割合は,全国平均で,中学校で28%,高等学校で53%となっている。この値は都道府県により大きく異なっている。  

 

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(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)