平成26年7月4日
○ グローバル化に対応した人材育成において、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能を総合的に学び、英語によるコミュニケーション能力を育成するためには、各技能が適切に評価されることが重要である。一方で、現在実施されている入学者選抜においては、英文の理解や語法・文法などの言語に関する知識を問う問題を中心とした「読むこと」又は「聞くこと」の2技能を評価するものが多く、その在り方が生徒・学生の学ぶ意欲や教員の指導の在り方等に大きく影響を与えているとの指摘がある。
○ このような指摘に対し、今後の英語教育の方向性がとりまとめられた、「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(平成15年3月)及び「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的方策」(平成23年6月)において、大学及び高等学校入学者選抜における資格・検定試験の活用の促進が指摘されてきたが、その趣旨の理解とともに活用は十分には進んでいない。
○ そのような状況の中で、教育再生実行会議において、平成25年10月に第4次提言(「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」)が取りまとめられた際には、大学教育を受けるために必要な能力判定のための新たな試験(達成度テスト(発展レベル)(仮称))の導入に当たり、外国語、職業分野等の外部検定試験の活用を検討することが指摘された。
○ その後、文部科学省において、平成25年12月に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表され、同計画において示された方向性について、その具体化に向けて専門的な見地から検討を行うため、平成26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」が設置された。
○ 同会議の下に、英語教育に係る入学者選抜の在り方を検討する「英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会」が設置され、1.英語力の評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用に関する基本的考え方、2.具体的な今後の活用推進方策について検討を行った。
平成26年6月4日(第1回)
平成26年7月4日(第2回)
○ 小委員会で審議している内容は、有識者会議へ報告した上で幅広く意見を頂きながら、全体の審議の取りまとめに反映することとする。
○ 社会経済のグローバル化が急速に進展し、以前にも増して様々な分野で英語力が求められる時代になっており、総合的な英語力を身に付けることは、我が国の子供たちが各界で活躍する可能性を大きく広げるとともに、日本の国際競争力を高めていく上での重要な要素になっている。
○ このような環境の中で、総合的な英語力を向上するためには、世界標準を視野に入れた目標設定を行うとともに、小・中・高等学校を通じてコミュニケーション能力に必要な「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能が総合的に育成され、その各技能が適切に評価されることが必要である。
また、高等学校、大学へ進学を希望する者については、中学校・高等学校の授業等を通じて卒業時までに育成された4技能が、高校及び大学入学者選抜においても適切に評価されることを基本として今後の英語に関する入学者選抜を改善していくことが重要である。同時に、入学者選抜における評価の内容・方法と、中学校・高等学校在学中の4技能を総合的に身に付けるための英語学習や入学後の海外留学等に必要となる英語力との連続性・親和性が確保されていることが重要である。
○ 学習指導要領を踏まえた中学校・高等学校における英語教育と、大学及び高等学校入学者選抜との整合性を確保しつつ、コミュニケーション能力の育成に必要な4技能をバランスよく伸ばすことができるよう、各大学・高等学校の教育理念・内容等に応じた入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を踏まえつつ、既に広く認められている資格・検定試験を活用することは意義のあることと考える。
○ 資格・検定試験を活用する際は、その有効性と課題を明確にした上で、生徒・学生が自ら主体的に学び、英語によるコミュニケーション能力の向上を図る一つの客観的な指標として4技能をバランスよく測ることができる効果的な試験を活用することとする。
(資格・検定試験の有効性)
(資格・検定試験の課題)
○ 資格・検定試験の活用に当たり、生徒・学生の意欲・適性等をも含めた多面的・総合的に評価される仕組みや、人間性を養う重要な時期としての生徒・学生生活の意義を踏まえた実施時期について検討が必要である。
○ 今後、英語力の評価及び入学者選抜において、コミュニケーション能力に必要な4技能を総合的に測る資格・検定試験の活用が、次のような具体的な方策を通じて英語教育の改善の促進につながることを期待する。
○ 資格・検定試験の活用においては、学習指導要領に沿って中学校・高等学校卒業までに学習した4技能が総合的に育成されているかという観点から適正に評価することが必要である。
○ そのような観点から、生徒等の英語力を客観的に把握するため、
を、在学中の英語力の評価や入学者選抜において積極的に活用することを促進する。
(※1)CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」)は、語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、包括的な基盤を提供するものとして、20年以上にわたる研究を経て2001年に欧州評議会が発表。 |
○ 資格・検定試験団体と連携した生徒の英語力調査を通じて、日常的な学習による生徒の英語力の測定及び学習状況に係る現状・課題を把握・分析し、それらの結果を活用することにより、生徒の学習意欲を喚起するとともに、教員の指導改善に活(い)かすことにつなげる。
○ 各大学等の入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)との整合性を図ることを前提に、各大学の入学者選抜における資格・検定試験の活用を奨励する。このため、大学入学者選抜における具体的な活用方策として、後述の協議会(仮称)において大学入試センター試験や各大学の個別学力検査の成績と資格・検定試験の結果を公正に比較して換算する方法(※2)等を検討する。
(※2)例えば、4技能を測る資格・検定試験と大学入試センター試験の得点換算表を作成し、受験者は資格・検定試験と大学入試センター試験のいずれか点数の高い結果を各大学に提出できる仕組みや、各大学の個別学力検査を代替することなどが考えられる(安河内委員提出資料)。資格・検定試験の活用事例としては、出願要件、いわゆる「みなし満点」、点数加算、基準点を設ける方式、判定優遇などがある。 |
○ また、義務教育段階である中学校までの成果を測る高校入学者選抜における資格・検定試験の活用の在り方と大学の入学者選抜の違いを含め具体的な活用方法を検討する。
○ あわせて、協議会(仮称)においては、4技能の総合的な育成及び適正な評価の観点から、入学者選抜における資格・検定試験の活用に関する有効性や留意すべき点について具体的な指針を提示し、生徒・学生の英語力も踏まえた多様な資格・検定試験の活用を奨励する。
(例)
○ 資格・検定試験の活用促進及び客観的な質保証を図る観点から、資格・検定試験が大学・高等学校等において適切かつ効果的に活用されるための環境整備として、大学、高等学校、中学校関係者、資格・検定試験の関係団体及び専門家が参画する協議会(仮称)を設置し、次期学習指導要領の改訂までに一定の方針として、前述のような指針等の具体的な検討、国際水準となっているCEFRとの関係を考慮した4技能を測定する試験としての妥当性に関する検証や、それら結果の情報発信等をスピード感をもって行う。
○ また、「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)/(発展レベル)(仮称)」について具体的な検討を行う際には、前述のような取組を参考に資格・検定試験の活用の在り方について検討することが望まれる。その際、資格・検定試験で測る4技能のみならず、高校までに育成すべき多様な資質・能力の重要性も踏まえる必要がある。
○ さらに、資格・検定試験を効果的に活用する次のような奨励策を推進し、具体的な先進事例を普及する。
○ 学習指導要領に沿った英語の4技能を総合的に評価する学力検査等を奨励するため、前述の協議会(仮称)において現状の学力検査等における英語問題の在り方の調査・分析等を行い、得られた結果が大学、高等学校等において活用が図られるよう広く情報発信等を行う。
初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室