【資料3-1】小・中・高等学校を通じた英語教育の目標等の在り方について(論点)

小・中・高等学校を通じた英語教育の目標等の方向性[検討のための資料]

 英語教育の充実強化は、我が国にとって極めて重要な課題。
 これまでの多くの議論を経て、現行の学習指導要領が着実に実施されており、その成果と課題を踏まえながら、平成32(2020)年度を見据え、新たな英語教育を順次実施できるよう検討を進める。
 並行して、これに向けた準備期間の取扱いや、現行の制度内での先取り実施も具体化するための報告をまとめる。

1 現状

(現行の学習指導要領)

○ 小・中・高校を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力を養成することをねらいとしている。

○ このねらいを実現するため、

  • 平成23年度より小学校5,6年生において、コミュニケーションの能力の素地の育成をねらいに、外国語活動を週1コマ実施、
  • 中学校では週3コマから週4コマ(約3割増:105時間⇒140時間)へ充実し言語活動を各領域で1項目追加するなど充実を図るとともに、従来の「聞く」「話す」を重視した指導から4技能のバランスが取れた指導への改善を図り、教材の題材には伝統文化、自然科学などを取り上げること、
  • 高等学校では選択必履修から「コミュニケーション英語1」の共通必履修に変更するなど科目構成を変更するととともに、生徒が英語に触れる機会を充実するために、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語を用いて行うことを基本とし、その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるように十分配慮することを明示した。

 また、指導語彙を充実するため、高等学校で「コミュニケーション英語1」、「コミュニケーション英語2」及び「コミュニケーション英語3」をすべて履修した場合、高等学校で1,800語。中学校・高等学校を通じて3,000語を指導することとした。

(小学校の成果)

○ 小学生の76%が「英語の学習が好き」、また91.5%が「英語が使えるようになりたい」と回答 するとともに、中学生の約8割が小学校外国語活動で行ったことが、中学校外国語科で役立っていると回答 。
 また、外国語活動導入前と比べて、中1の生徒に「成果や変容がとてもみられた」「まあまあみられた」と感じる英語担当教員が78%となっており、英語の基本的な表現に慣れ親しんでいる、英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成されている、英語で活動を行うことに慣れているといった指摘がなされている。また、小学校で外国語活動を経験した中学生の聞く力や話す力が高まったという指摘もある 。

○ 先進的な事例においては、小学校低学年、中学年から外国語活動に取り組むとともに、中学校とのカリキュラム上の接続を意識した取組などが行われており、生徒の英語学習に対する意欲が中学校以降も維持されたり、英語力が向上している取組が見られる。

(中学校の成果)

○ 中学校では、言語活動の「聞くこと」において、概要や要点を適切に聞き取とること、文法はコミュニケーションを支えるものであり、言語活動と効果的に関連づけて指導すること、活用することを通して定着を図る取組において生徒の英語力向上が見られる。また、教師と生徒の親和関係の構築、授業を英語で展開すること、ペアワークなど活動を中心とした授業の展開などの成果が見られる。

○ 先進的な実践事例においては、単元目標と関連付けながら、考えながら話す言語活動や、小学校・高等学校との接続を意識した授業、高校と連携した学習到達目標の作成が行われている。

○ また、教育委員会が中心となって県下の全中学校が「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定することで、年間指導計画を見直す視点や、指導と評価の改善につなげる視点を持つようになるなどの成果が見られる。

(高等学校の成果)

○ 高等学校では、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うことを目的としており、聞いたり読んだりしたことに基づいて英語で表現するなどの機会を多く持たせる言語活動を通じて、生徒の英語力向上がみられる。

○ 生徒が英語に触れる機会を充実するため,授業は英語で行うことが浸透しつつある。普通科等の授業において,発話を「おおむね英語で行っている」又は「発話の半分以上を英語で行っている」教員は,平成22年度の「英語1」では16%だったが,平成25年度の「コミュニケーション英語1」では53%,同「英語表現1」では47%と大きく増加している。

○ 授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,生徒の英語による言語活動を授業の中心としようとする姿勢がみられる。普通科等の授業において,「おおむね言語活動を行っている(75%以上)」又は「半分以上の時間,言語活動を行っている(50~75%程度)」のは,平成25年度の「コミュニケーション英語1」担当教員が41%,同「英語表現1」担当教員が42%となっている。

○ 外国語を用いて何ができるようになるかという観点から,各学校においてより具体的な学習到達目標を設定しようとする傾向が見られる。「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定している普通科等の学科は,旧課程の平成23年度は4%,新課程の平成25年度は33%と増加している。

○ 先進的な事例においては、「CAN-DOリスト」の形式の学習到達目標を作成することによって、教科書や教材を、目標を達成するために積極的に活用したり、教員間で指導や評価の内容・方法が均質化された例や、英語力が向上した例が見られる。

○ また、教育委員会が中心となって県下の全高等学校がCAN-DOリスト形式による学習到達目標を設定する取組を推進するとともに、中学校・高等学校の接続を意識した研修を実施することで、年間指導計画を見直す視点や、指導と評価の改善につなげる視点を持つようになるなどの成果が見られる。

(学習到達目標について)

○ 現行の学習指導要領は、「コミュニケーション能力」の育成を外国語科の目標として掲げており、多くの学校において、その目標に沿った授業が行われている。

○ そのような中、「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」(平成23年)等が示されたこともあり、中学校・高等学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆる「CAN-DOリスト」の形で設定する取組が進んでいる(平成25年度末までに、中学校の17%、高等学校の34%で作成されており、これから設定する予定の学校を含めると6~7割に達する)。このような取組を進めることを通して、一部の中学校・高等学校において、指導計画と関連した授業改善や英語力の向上などの成果が見られるようになった。

2 課題

(小学校の課題)

○ 外国語活動への取り組みが充実してきたものの、地域や学校、教員によりその取り組みに差があるという指摘がある。また、ALTの労務管理上、学級担任等とALTとがティーム・ティーチングができない状況もあり、ALTに指導を任せてしまうという状況も指摘されている。

○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習ではないため、中学生の7割以上が小学校で「英単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答するなど、学習内容にもの足りなさを感じている状況が見られる。

○ 外国語活動は、児童が、自らの考えを英語で表現するための十分な語彙や表現を身に付けることは意図されていないが、コミュニケーションに積極的に関わろうとする態度は育成されている。今後、小学校中学年から学習を開始することに伴い、英語学習への動機付けをさらに高め、コミュニケーション能力の素地を養うことで、小学校卒業時までに慣れ親しみや体験的理解に加えてコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせることも期待される。

○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。

○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、年間指導計画や単元計画指導案の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっている。

(中学校の課題)

○ 中学校では、英語を理解し考えながら表現できるコミュニケーションが図られるかどうか、伝統文化や自然科学など現行の学習指導要領に示された題材の扱い、単元ごとの適切な目標設定が行われているかどうかといった観点から、英語を理解し英語で表現できる実践的なコミュニケーション能力が十分ではないという指摘があった。

○ また、

  • 教員の英語使用状況は、「発話の半分以上を英語で行っている」者は、中学校1年は44.5%,2年生は42.9%,3年生41.2%、
  • 生徒が英語で言語活動をする場面を半分以上設定しているのは、中学校1年生52%、2年生47%、3年生43%、
  • 英検準1級程度以上の教員の割合は27.9%

となっており、生徒が英語に触れる機会を充実する観点から、一層の取組を推進する必要がある。

○ CAN-DOリストの形での学習到達目標は、17.4% の学校が設定し、その中で、達成状況を更に把握している学校は66.8%にとどまっており、全ての学校において設定する地域と設定していない地域があることから今後の指導における影響が大きく、学校の指導改善等につながる取組として促す必要がある。

(高等学校の課題)

○ 教員の英語の使用状況は、全体的には改善されつつあるものの、「発話をおおむね英語で行っている」教員は、平成25年度普通科等の「コミュニケーション英語1」では15%、同「英語表現1」では14%にとどまっており、なお一層の推進が必要である。

○ 英検準1級以上等を取得している教員の割合は、平成22年度が49%、平成25年度が53%で、3年間で4%の伸びにとどまっており、授業を英語で展開するためにも、教員自身の英語力を更に引き上げる必要がある。

○ CAN-DOリストの形での学習到達目標の設定は、平成25年度の4%から平成25年度の34%に増加はしているが、域内全ての高等学校において設定を終えている地域と現時点でほとんど設定が進んでいない地域があるなど、ばらつきが大きいことから今後の指導における影響が大きいと考える。

○ CAN-DOリストの形で学習到達目標を設定はしていても、それが実際の指導や評価において十分には活用されていない現状がある。学習到達目標を設定する意義や方法とともに、年間指導計画・単元計画の作成や評価において活用されるよう改善する必要がある。

○ 中学校・高等学校でそれぞれどのような指導と評価が行われているかについてお互いに情報不足で、中・高等学校の連携が不十分であるとの指摘もある。

3 改善の方向性

【目的】

○ グローバル化が急速に進展する中で、子供たちの将来の職業的・社会的な環境を考えると、外国語、特に英語によるコミュニケーション能力は、これまでのように一部の業種や職種だけでなく、様々な場面で必要とされることが想定され、今まで以上に、その能力の向上が課題となっている。

○ 現在の学習指導要領は、英語によるコミュニケーション能力を確実に養うことを目標としているが、英語を外国語として学ぶ諸国における英語教育の状況を改めて踏まえることが必要である。
 その際、英語教育を通じて育成すべき資質・能力とともに、これらの資質・能力についての達成状況を明確化するための小・中・高を通じて一貫した目標を設定するとともに、学校として、英語の授業以外でも英語に触れる機会や環境を整えることが求められる。

○ 個別の教科等を横断した観点から、児童生徒の思考力、判断力、表現力等をはぐくむため、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力を育成できるよう、更に言語活動を充実することが必要である。
 外国語教育の充実に当たっては、学習者が、言葉の性質・仕組み・働きを理解することにより、母語の効果的な運用能力を向上させ、さらに外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという観点も重要である。

○ これらの取組と併せて、国際社会に生きる日本人として、日本人のアイデンティティを育成するため、我が国の歴史・伝統文化等に関する学習の一層の充実が必要である。

4 目標・内容の改善例

(1)小・中・高等学校共通の事項

○ 小・中・高等学校を一貫して外国語の「コミュニケーション能力」を養うため、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」及び「書くこと」の4技能を踏まえつつ、各学校段階における発達段階に応じた育成すべき資質・能力を育む観点から、教育目標・内容の明確化や、目標・内容に沿った指導方法の見直し、学習評価の改善等を一体的に図るという方向で検討する。

○ また、これまでの英語教育の成果と課題を踏まえ、各学校が適切に学習目標を設定し、これらの資質・能力についての達成状況を明確化できるようにするため、国として、小・中・高等学校において達成を目指すべき教育目標を、「CAN-DOリスト」の形で4技能ごとに一貫した指標として示すこととする。

○ 小・中・高の連携、中・高の連携などを意識した目標・内容を具体的に検討するとともに、中・高等学校の高度化を踏まえ、それぞれの段階において言語の使用場面や働きを更に広げた言語活動を行うこととする。

○ 学校における学習が、生涯にわたって、自ら外国語を学び、実際にコミュニケーションで使おうとする動機付けに結びつけ、維持するようにする。

(小・中・高等学校一貫した指標の形での教育目標の設定)

○ 現在、各学校において策定されている学習到達目標は、学習指導要領に基づき、「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から目標を具体化し、それらに基づく指導及び評価を行うことにより、英語によるコミュニケーション能力を確実に養うことを目的としている。これらは各学校において生徒の学習状況や地域の実態等を踏まえた上で設定することを通じ、生徒が身につける能力を明確化し、教育活動を行う際に、具体的な指導及び評価の改善に活用するものである。

○ 小・中・高を通じて体系的な教育活動を行うとともに、学習到達目標を設定した指導等の改善をさらに進める観点から、今後、国において、これまでの取組を検証しつつ、小・中・高において達成を目指すべき教育目標を、4技能ごとに一貫した指標の形で設定し、その実現に向けて検討を進める。このため、次期学習指導要領の改定における、教育目標の見直しに資するため、現行学習指導要領を基にしたこうした4技能ごとの一貫した教育目標を試行的に作成し、研究開発学校等における取組を促すとともに検証を行う。

(小・中・高一貫した指標の形での教育目標のイメージ)

 

聞くこと

話すこと

読むこと

書くこと

高等学校卒業時

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・

中学校卒業時

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・ 

小学校卒業時

(高学年)

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・


(学習到達目標を設定する効果)

○ 具体的な学習到達目標は、学習指導要領の教育目標等を踏まえつつ、各学校において、それぞれの実情に応じて作成することが想定される。
 その場合の効果として、以下を挙げることができる。

  1. 学習到達目標を設定することで、児童生徒にどういう英語力が身に付くか、英語を用いて何ができるようになるか、あらかじめ明らかにすることができる。また、そうした情報を児童生徒や保護者と共有することでねらいが明確になるとともに、児童生徒への適切な指導を行うことができる。
  2. 特に、学習指導要領に基づいて目標を設定し、指導と評価を設定する際に、文法や語彙等の知識の習得にとどまらず、それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう、4技能の総合的な能力の修得を重視することが期待される。
  3. ともすれば、校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で、学習到達目標の策定を通じて、教員間で、指導に当たっての共通理解を図り、均質的な指導を行うことができる。
  4. 評価が、面接・スピーチ・エッセイ等のパフォーマンス評価などによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され、更なる指導と評価の一体化とそれらの改善につなげることができる。

○ 一方で、学校における学習到達目標の作成に当たっては、以下の留意点が挙げられている。国や教育委員会は、そうした活動が円滑かつ効果的に進むよう支援していくことが必要となる。

  1. 学習到達目標に掲げられた内容を形式的に達成すればよいのではなく、授業を通じて教員が児童生徒の状況を把握しながら、英語力の向上を支援していくことが必要である。
  2. 学習到達目標を作成すること自体が目的となってしまわないように、研修等を通じて、教員の共通理解を図ることが求められる。
  3. 小・中・高を通じた学習到達目標の設定に当たっては、早期の段階から高度な水準を求めることがないよう計画し、児童生徒のモチベーションを維持・向上させるような配慮が必要である。
  4. 学習到達目標が設定されていく中で、それと入学試験や外部試験との関わりがどうなっていくか検討する必要がある。

○ 各学校においては、学習指導要領の内容に基づき、生徒に求められる英語力を達成するための具体的な学習到達目標をCAN-DOリストの形で設定する。その際、教科書・教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、学校及び各科目の単元ごとの学習到達目標を具体的に設定し、指導方法や評価方法の工夫・改善を図る。

○ 各学校において、生徒の学習意欲を高めながら英語力の向上を図るため、各学校における取組も踏まえつつ、今後のグローバル化に対応した世界標準の英語力育成を目指す。

(2)小学校における改善(例) 

○ これまでの成果・課題を踏まえ、今後の小学校中学年における外国語活動の導入と、高学年でのより系統性を持たせた指導を想定し、次のような目標・内容の改善を図る。
 その際、英語だけに限らず、世界には多くの言語があることや、国語教育との連携も通じて、言葉への関心を高めることが重要である。

(小学校中学年)

○ 小学校中学年における外国語活動を導入する場合、これまでの先進的な取組の成果・課題を踏まえ、

  • 例えば、英語学習に対するモチベーションや、聞き取り、発音に関して効果があると考えられること、また音声を中心に体験的に理解を深めることは、小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。
  • このため、中学年では、言語や文化についての体験的理解や、外国語の音声等への慣れ親しみ、コミュニケーションへの積極性を中心とする「外国語活動」(活動型)を行い、コミュニケーション能力の素地を養うこととする。

(小学校高学年)

○ 小学校高学年において、より系統性を持たせた指導を取り入れる場合、これまでの先進的な取組の成果・課題を踏まえ、

  • 高学年においては、中学年から中学校への学びの連続性を持たせながら、4技能を扱う言語活動を通して、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。このため、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこととする。
  • その際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、学校内外の影響を踏まえながら、小学校の発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ積極的に英語を読もうとしたり、書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。
     例)馴染みのある定型表現を使って、自分の好きなものや、家族、一日の生活などについて、友達に質問したり、質問に答えたりすることができる。
  • 文構造など、言葉の規則性に関する気付きを意図的に促す指導や、文字の認識、単語への慣れも加えることで、発達段階に応じて、知的好奇心に応えるものとする。現在、中学校での学習内容となっている内容として、例えば、文字や符号の識別は、小学校高学年で扱うことについて検討する。
  • 他教科等と連動した学習内容や言語活動を設定することにより、思考力・判断力・表現力や主体的に学習する態度を身に付けることも重視する。
  • 小学校高学年における指導語彙数は、例えば、Hi, friend!のこれまでの成果等を踏まえながら語彙数などを検討し、中学校においてこれらの語彙も含め更なる定着を図ることとする。

(2)中学校における改善(例)

○ 義務教育終了段階として小学校の学びの連続性を図りつつ中学校において身近な事柄についてコミュニケーションを図ることができるようにするとともに、高等学校における高度化に向けた基礎を培う観点から、次のような改善を図る。

  • 「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」などについて、中学校の発達段階に応じた、より具体的に身近な話題についての理解や簡単な情報交換、表現ができるコミュニケーション能力を養う。
     例)短い新聞記事を読んだり、テレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができる。
  • 授業を英語で行うことを基本とし、内容に踏み込んだ言語活動を重視する。
  • 小学校高学年の教科型導入を踏まえ、中学校ではより多くの英語に触れることにより、学習内容の着実な定着を図る。また、コミュニケーションを円滑に図るために必要とされる基本的な文法事項については中学校で一通り活用できるようにする。
  • 日本人としてのアイデンティティに関する教育の充実(伝統文化、歴史の重視等)する。

(3)高等学校における改善(例)

○ 高等学校段階における英語教育の多様性に対応した目標・内容の設定、及び高度化を図るとともに、中学校との円滑な接続を図る観点から、次のような改善を図る。

  • 幅広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話者とある程度流暢にやりとりができる能力を養う。
  • 授業を英語で行うことを基本とするとともに、言語活動の高度化(発達段階や、生徒の英語力等の状況に応じた発表、討論、交渉等)を図る。
  • 例えば、社会的な話題や時事問題等の幅広い話題について情報や考えなどを的確に理解するとともに適切に伝え、課題解決していく力を育成するコミュニケーション能力を養う。
     例) ある程度の長さの新聞記事を速読して必要な情報を取り出したり、社会的な問題や時事問題について課題研究したことを発表したりすることができる。
  • 中学校で学習した語彙・表現・文法事項等に意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れることができるよう、様々な言語活動を工夫し、言語の運用能力を高める。

 (参考)指導体制等の前回までの論点
 指導、評価、教科書・教材、指導体制については、指導体制の小委員会及びこれまでの議論を踏まえ、次回以降、検討を行う。

5 指導と評価

【小学校】

○ 小学校段階においてどのような観点から指導を充実するか。

  • 目標・内容の改善の方向に伴い、指導内容をどのように見直すか。

○ 小学校における効果的な指導方法について、これまでの先行的な取組や「英語教育強化地域拠点事業」(H26年度~)での状況に関し、以下の観点から検証する。

  • 児童の発達段階に留意した指導の在り方
  • 体験活動等を取り入れた指導の在り方
  • 他教科等との連携を強化した指導の在り方
  • 小学校と中学校の連携を意識した具体的な指導の在り方

○ 育成すべき資質・能力の明確化も踏まえ、小学校段階における評価の在り方をどのように考えるか。

  • 活動型、教科型における評価について、これまでの先行的な取組や「英語教育強化地域拠点事業」での状況を検証する。その際、評価が学びの改善につながるようPDCAサイクルの構築について検討する。
  • 活動型、教科型における評価の観点や具体的な基準をどのように考えるか(他の教科の場合、数値等による評価を行っている)。

 (参考)平成20年中教審答申
 小学校における外国語活動の目標や内容を踏まえれば一定のまとまりをもって活動を行うことが適当であるが、教科のような数値による評価はなじまないものと考えられる。

  • 小学校での外国語は、学習の初期段階であり、過度の負担とならないように配慮をどう考えるか。

【中学校・高等学校】

○ 中学校・高等学校段階において、どのような観点から指導の充実を図るか。

  • 目標・内容の改善・高度化に伴い、指導内容を見直す。

○ 中学校・高等学校における効果的な指導方法・評価方法について、これまでの先行的な取組や「英語教育強化地域拠点事業」(H26年度~)及び「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」(H26年度~)での状況に関し、以下の観点から検証する。

  • 言語活動の高度化に対応した指導
  • CAN-DOリスト、パフォーマンステストを活用した指導と評価
  • 小学校と中学校、中学校と高等学校の連携を意識した具体的な指導 等

○ 育成すべき資質・能力の明確化も踏まえ、中学校・高等学校段階における評価の在り方をどのように考えるか。

  • 評価の規準を、「何を知っているか」にとどまらず、「英語を用いて何ができるか」を中心とすることが必要。このため、パフォーマンス評価による妥当性、信頼性の確保及び波及効果をねらった具体的な方法論について検討が必要。
  • CAN-DOリスト、パフォーマンステストを活用した評価について、これまでの先行的な取組や「英語教育強化地域拠点事業」及び「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」等での状況を検証する。その際、評価が学びの改善につながるようPDCAサイクルの構築について検討する。

5 教科書・教材

【小学校】

○ 今後の外国語活動・外国語において求められる教材・教科書の内容等についてどのように考えるか。

  • 児童向けに、本年度、新たな補助教材を開発することとしており、それを「英語教育強化地域拠点事業」校で活用しながら、その効果を検証する。
  • 児童の発達段階を踏まえた指導の充実のため、今後どのような工夫が求められるか。

○ 効果的な学習方法として教科書・教材におけるICT活用を促進する。

  • 先進的な活用事例の共有
  • 学習効果の高いコンテンツの導入
  • ICT活用を推進するためのハードウェアの充実

 (参考)平成26年度予算:小学校における外国語活動・外国語教育の教材整備

  • 小学校における英語教育強化のための補助教材の開発
  • 小学校外国語活動教材Hi,friends!作成・配布 等

 ※教育用コンピュータ、電子黒板機等の整備の推進及びICT支援員の配置等

【中学校・高等学校】

○ 今後の外国語において求められる教材・教科書の内容等についてどのように考えるか。

  • 世界標準の教材の活用及びこれらを参考にしつつ、コミュニケーション能力の効果的な育成に資する言語活動の高度化等に対応した教科書等の教材開発

○ 効果的な学習方法として教科書・教材におけるICT活用を促進する。

  • 先進的な活用事例の共有
  • 学習効果の高いコンテンツの導入
  • ICT活用を推進するためのハードウェアの充実

6 指導体制

【小学校】

○ 小学校における英語指導に求められる指導体制の強化の観点から、求められる学級担任と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、どのように考えるか。

  • 児童への指導に当たっては、英語教育に関する専門性を前提としながらも、児童理解の観点、他教科等と連動した学習内容・活動を行う観点、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。
  • その際、学級担任が重要な役割を果たすこととなるが、あわせて、小学校教育に対応できる専科教員を積極的に活用することも必要である。
  • 加えて、ネイティブ・スピーカーによる外国語講師、外国語指導助手(ALT)、地域人材の活用・指導力向上を推進することが必要である。
  • そうした外部人材の活用に当たっては、適切な人材に対しては、特別免許状を積極的に授与するための方策を講じる必要がある。
  • 小学校における学級担任と外部人材の連携をどのように考えるか。

 (例)

  • 学級担任、外部人材に求められる役割の明確化、連携の在り方
  • 外部人材として、外国語指導助手(ALT)、地域人材などの活用促進方策(配置拡大、ガイドラインの策定等)
  • ALT等向けの研修強化・充実 等

  • 英語指導におけるICTの活用(再掲)

○ 教員の養成・確保の在り方について、どのような内容・取組が求められるか。

  • 教員養成課程において、どのような履修内容や方法が求められるか。教科型導入の場合、履修内容として、英語の指導法等が考えられるが、どのような内容に重きを置くことが適切か。
  • 養成・研修の段階において大学と教育委員会それぞれの強みを生かした一貫した教員養成の在り方はどのようにあるべきか。
  • 英語教育における小学校と中学校の連携・接続の強化を推進する観点から、どのような養成・採用が考えられるか。

 (参考)教育再生実行会議、教員養成部会における審議の状況

○ 教員の指導力向上のための研修等の在り方について、どのような内容・取組が求められるか。

  • 今後の英語教育の指導の充実に当たり、現職教員のどのような資質・能力を向上させることが求められるか。
  • 全ての教員が指導力・英語力を高められるよう、現職研修等をどのように充実させていくか。その際、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携の在り方をどのように考えるか。
  • 教員養成大学に、どのような現職研修を期待するか。

 (例)

  • 国における英語教育推進リーダー中央研修
    (外部専門機関と連携した英語指導力向上事業) 
  • 各地域・学校における中核教員
  • 初任者研修、10年研修
  • 教員免許状更新講習

  • 今後の新たな方向性に向けて、研修の質の改善のためにどのような取組が求められるか。

 (例)

  • 実践的な指導法や研修教材、ICT活用
  • 実践力を高めるためのワークショップ等の手法
  • 研修の事前・事後の自己評価方法の開発
  • 外部検定試験の活用など英語力の達成状況の検証 等

○ 中・高等学校における英語指導に求められる指導体制の強化の観点から、求められる英語担当教員と外部人材の活用(資質・能力・資格要件)などについて、どのように考えるか。

  • 指導に当たっては、英語教育に関する高い専門性を前提としながらも、他教科等と連動した学習内容・活動の実施等に対応できる指導者が求められる
  • 授業は生徒の理解の程度に応じた英語で行うことを基本としつつ、習熟度別指導や少人数指導などの工夫を可能とする指導体制を確保する
  • 授業を英語で行うことを基本とすることを前提に、生きた英語に触れるとともに、実際に英語を活用するという観点から、ネイティブ・スピーカーの外国語講師や外国語指導助手(ALT)、地域人材の活用・指導力向上を推進することが必要である
  • そうした外部人材の活用に当たっては、適切な人材に対しては、特別免許状を積極的に授与するための方策を講じる

 (例)

  • 英語担当教員と外部人材に求められる役割の明確化、連携の在り方
  • 外部人材として、外国語指導助手(ALT)、地域人材などの活用促進方策(配置拡大、ガイドラインの策定等)
  • ALT等向けの研修強化・充実 等

  • 英語指導におけるICTの活用(再掲)

【中学校・高等学校】

○ 教員の養成・確保の在り方について、どのような内容・取組が求められるか。

  • 今後の教員養成課程において、どのような履修内容や方法が求められるか。言語活動の高度化等に対応するため、履修内容として、英語による実践的な指導法の充実などが考えられるが、どのような内容に重きを置くことが適切か。
  • 養成・研修の段階において、大学と教育委員会それぞれの強みを生かした実践的、かつ一貫した教員養成の在り方を検討する。
  • 英語教育における中学校と高等校の連携・接続の強化を推進する観点から、どのような養成・採用が考えられるか。

 (参考)教育再生実行会議、教員養成部会における審議の状況

○ 教員の指導力向上のための研修等の在り方について、どのような内容・取組が求められるか。

  • 今後の英語教育の指導の充実に当たり、現職教員のどのような資質・能力を向上させることが求められるか。
  • 全ての教員が指導力・英語力を高められるよう、現職研修等をどのように充実させていくか。その際、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携の在り方をどのように考えるか。
  • 教員養成大学に、どのような現職研修を期待するか。

 (例)

  • 国における英語教育推進リーダー中央研修
    (外部専門機関と連携した英語指導力向上事業)
  • 各地域・学校における中核教員
  • 初任者研修、10年研修
  • 教員免許状更新講習

  • 今後の新たな方向性を踏まえた教員の指導力・英語力の向上を図るため、採用や自己研鑽等での外部検定試験の活用を促すとともに、教員研修等の充実について検討する。

 (例)

  • 実践的な指導法や研修教材、ICT活用
  • 実践力を高めるためのワークショップ等の手法
  • 研修の事前・事後の自己評価方法の開発
  • 外部検定試験の活用など英語力の達成状況の検証 等

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)