英語教育の在り方に関する有識者会議(第3回) 議事録

1.日時

平成26年4月23日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(合同庁舎第7号館東館)3階 3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 小学校における英語教育の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

石鍋委員、大津委員、佐々木委員、髙木委員、藤村委員、松川委員、松本委員、三木谷委員、安河内委員、吉田委員

文部科学省

上野大臣政務官、山中文部科学事務次官、板東文部科学審議官、榎本国際教育課長、圓入外国語教育推進室長、太田視学官、直山教科調査官、八島大学入試室長補佐

5.議事録

【吉田座長】  それでは、時間になりましたので、第3回英語教育の在り方に関する有識者会議を開催したいと思います。お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。今回と次回にわたりまして、特に小学校英語教育の在り方について御議論を頂く予定でおります。
 まずは、事務局より、配付資料の説明をお願いいたします。

【圓入室長】  それでは、お手元の配付資料の御確認をお願いしたいと思います。
 本日の第3回の議事次第が1ページ目にございます。資料、全体1から5までございますが、一括どめにさせていただいております。こちらが一つと、それから机上資料ということで、本日の議題、小学校における英語教育の在り方ということでございますので、その教材、「Hi, friends!」という教材と、それから過去御提言がありました、その具体的施策の冊子を改めて御参考に置かせていただきまして、更に小学校の外国語活動、研修ガイドブックなるものを配付させていただいております。また後ほど、意見発表ということで、机上資料として、本日されております大津委員の資料、それから藤村委員の資料も同時に配付させていただいております。もし不足等ございましたら、挙手をお願いしたいと思います。

【吉田座長】  はい、どうも。

【圓入室長】  あと一点だけ、議事の関係で最初に御説明させていただきたいと思いますが、第3回の議事次第の方を御覧いただければと思いますけれども、資料1でございます。「英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会の設置について」というところの設置の案を添付させていただいております。こちらについては、前回までに三木谷委員から御提案いただいておりました小委員会の設置ということで、最初にお諮りいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【吉田座長】  どうもありがとうございました。
 今の説明のとおり、前回、入試における外部試験の活用という観点から、小委員会の設置について三木谷委員の方から御提案がありました。後ほど、また三木谷さんはお見えになるというお話を伺っていますが、これを踏まえまして、今、御説明があったように、資料1のとおり、英語力の評価及び入試における外部試験の活用方策に関して、専門的・技術的な検討を集中的に行うために、小委員会を設置してはどうかと考えています。
 前回、安河内委員に外部試験の現状等について調査をお願いしていますけれども、小委員会ではそうした成果を報告いただきながら検討を進め、その検討の結果をこの会議に報告するというやり方で行きたいと考えています。
 まず、そういう方針で、皆様、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

【吉田座長】  ありがとうございます。それでは、委員構成については、座長の私の方に一任していただけますでしょうか。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【吉田座長】  どうもありがとうございます。

【安河内委員】  一言よろしいでしょうか。

【吉田座長】  はい。

【安河内委員】  今日は小学校の英語教育について、皆さんとお話をする場なのですけれども、私は大学受験の専門家です。是非、今日、小学校の英語教育について議論をされるときに、大学受験というのが小学校まで大きなウォッシュバック効果をもたらしている。あとは高校受験も小学校の教育に大きな影響を与えるのだということを、少し皆さん念頭に置いていただいて、ちょっとお話をしていただければ、この小委員会の設置の意義について、一般の方にも分かっていただけると思いますので、よろしくお願いします。

【吉田座長】  御説明、ありがとうございました。そのとおりだと思いますので、その辺も皆さん頭に入れながら、今日のこれからの議論を進めていければと思います。
 それでは、小委員会の設置については、今、御説明させていただいたとおりにさせていただきたいと思います。
 それでは、これまでの審議について、事務局で整理している説明の資料がございます。そちらの方をお願いしたいと思います。

【榎本課長】  配付資料、通しページ番号を付しております。資料2-1が、通しページ番号3ページから7ページまででございます。資料2-2が、通しページ番号8ページから17ページまでにわたっております。
 まず、資料2-1、通しページ番号3ページでございます。前回の議論では、能力記述文の形で示した国の学習到達目標に関して、前回議論の後半の中で御議論いただきました。それを若干おさらいした形で、このように整理をしております。
 1、これまでの取組ということで、いわゆるCAN-DOリストの取組が中学・高校を中心に進んでいます。そういった中で、今後、国において、小・中・高で一貫した学習到達目標を設定するという大きな流れがある中で、ページ番号では5、6、7ページと表を付けておりますが、前回の資料と同じです。中学校・高校に関して、現在の学習指導要領に掲げられている内容を、「何々することができる」といった観点で整えたものを前回御紹介しております。
 こういった学習到達目標を設定する効果といたしまして、また3ページにお戻りいただきますと、各学校において、それぞれの実情に応じた到達目標の策定が期待されます。そうした中で、子供たちの学習の目標が分かりやすくなる。また、その際、とりわけコミュニケーションの育成と、それによりまして4技能の総合的な能力の習得ということが更に推進されることが期待されております。また、ページ番号4ページに参りますと、教員の指導方法に関して、校内での共通理解に生かせるといったことが挙げられております。
 また、3、留意事項といたしまして、これもいろいろな論点、御意見を頂いたところでございます。こういった到達目標の表に掲げていることを形式的に達成すればよいということではないということ、こういった作成自体が目的化してはいけないということなど、指摘もございました。
 また、4でありますけれども、こういった動きを進めていく中で、教科書、教員養成課程、また入学試験や外部試験との関わりといった論点も前回あったところでございます。というところで、学習到達目標に関する論点でございます。
 それから、今、御紹介しました事柄も含めた形で、通しページ番号8ページから、これまでの意見の概要といたしまして、過去の1回目と2回目の議論を、事務局におきまして項目に沿いまして整えてみたところでございます。この8ページからの内容に関しましては、もしよろしければ、この後また別の機会にでも、是非私又は圓入の方に御指摘いただければと思っております。毎回こういったものをだんだん整理していきながら、議論の蓄積を作っていければと思っています。
 この資料2-2でございますが、前回の議論の中で、冒頭のところでございましたけれども、ページを飛ばしますが、12ページのところで「臨界期説」に関しましても、吉田座長、それから大津委員からお話の御紹介がございましたので、12ページ中ほどから下にかけまして、臨界期説に関する議論を若干整理して掲載しているところでございます。
 以上です。

【吉田座長】  ありがとうございました。先ほど榎本課長からもありましたけれども、これらの内容につきまして、お気づきのことがあれば、後ほどでも、また事務局の方に御指摘いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【大津委員】  ちょっといいでしょうか。

【吉田座長】  はい、大津委員、どうぞ。

【大津委員】 後で個人的に申し上げてもいいのですけれども、これは大切なことなので、ここの場で申し上げておきたいのは、前回申し上げたように、CAN-DOリストというのはもともとは到達基準であったわけですね。英語だとindicatorとなっていたのですけれども、それが日本に入ってきた途端に、途端かどうか分かりませんけれども、入ってきた後、到達目標と読み換えられてしまって、これはとても大きな読み換えなので、このあたりのところ、それは私がいいとか悪いとかは今は言いませんけれども、そのあたりの検討も今後しっかりとやっていただきたいと思います。

【吉田座長】  ありがとうございました。今の点も含めて、御意見などもありましたら、お寄せいただければと思います。
 それでは、前回のときに、今、お話のありましたように、私と大津委員の方から臨界期仮説についてのいろいろ話をさせていただいたのですが、そのときに、本日は大津委員の方からもその言語観について、言語の習得についてお話を伺うということになっていましたので、これから大津委員に少しお話をしていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

【大津委員】  それでは、13分ほど時間を頂きましたので、多少駆け足にはなりますけれども、私の考えをお話ししたいと思います。
 私は、御承知の方も多いかと思いますけれども、英語教育の現状にとても強い懸念を感じています。
「危機感」と書きました。その理由は、一つには、TOEIC、TOEFLのスコアが高い、700、800、900点というようなあたりを取っていても、英語が使える人というのが非常に少ない。それだけではなくて、日本語がきちんと使える人が非常に少ない。例えば、私が日常的に接している大学生だなんていうのも、とてもみじめな状況になっている。
 私は、この二つは同根の現象だと考えていて、そこをもう少し言うと、ことばの教育としての母語教育、一般的には「国語教育」と呼ばれていますけれども、それと外国語教育、これも一般的な形態としては英語教育ですが、その在り方に問題があると考えています。
 日本語をきちんと使える人が少ないという例を、たくさんあるのですけれども、一つだけ挙げます。ゼミの学生が書いた文章です。私のゼミのメンバーに、金曜日の夕方にある英語学特講という別の科目も履修するようにと授業で言ったらば、ある学生がこういうことを書いてきた。「英語学特講を取らなければいけないことはまだ知らなかったので取らずに授業を組んでしまって授業が終わったら教習所を入れようと思ったので教習所に6月分までスケジュールを組んでもらって金曜日は毎週入っています。教習所なのでキャンセルするとキャンセル料がかかってしまうので授業を取るのは難しいです」という、これは文章法から言っても問題があるし、文法から言っても問題があるし、語彙の使い方から言っても問題があるし、スタイルの点から言っても問題があるという代物です。この種のことは日常茶飯事です。
 何でこんなことになってしまったのかと言ったらば、これは学校教育の中に「ことば」という観点が決定的に欠落している。欠落しているから、母語と外国語を関連づけられない。ここに原因があると考えています。
 では、「ことば」と言いましたけれども、それを簡単に説明します。英語圏でその英語学概論とか言語学概論を習いますと、1時間目に言われることがあって、英語にlanguageという名詞がありますけれども、これは実は2通りの使い方がある。一つは、今、出ているように、冠詞もつかなければ、複数語尾もつかない使い方です。もう一つは、a languageというように冠詞の類がつく。もちろんこれは、場合によってはthe languageと定冠詞になったり、languagesと複数語尾がついたりする。
 肝腎なところは、上の一番初めの使い方は抽象名詞として抽象的な概念を表し、2番目の方は「個別言語」と言いますけれども、日本語とか英語とかスワヒリ語とか日本手話とかいった、具体的な言語を指すわけです。つまり、ことばというものには二面性があって、一つは「個別性」ですが、同時に、languageという抽象名詞があるというのは、全ての個別言語を支える共通の基盤があるということを指しているわけです。この基盤が持つ性質を「普遍性」と呼びます。
 ことばには個別性と普遍性の二つの性質があり、特に教育関係の方々に是非考えていただきたいのは、(「普遍性」ということばを使うか使わないかは別にして)ことばが持つ普遍性という性質を大切にしていただきたいということです。
 抽象的な話をしていても始まりませんから、具体的な例を出します。例えば音声、言語音の面で行きますと、手話は別ですけれども、音声形態を持っている言語の場合には、言語音というのは基本的に必ず母音と子音という二つのグループに分かれ、そしてそれを組み合わせることによって語が作られるという共通の性質を持っています。一方、ことばには個別性もありますから、例えば、英語ですと、「bat」の真ん中に「a」という母音がありますが、この母音は英語にはありますが、日本語の方言ではこの母音を持っていないところが多い。子音ならば、おなじみの「think」の冒頭のth、こちらは子音ですけれども、この音は英語にはありますが、日本語は持っていない方言が多い。母音と子音の組合せということであれば、「strong」なんていう語を考えるといいですね。はじめに子音が三つ重なって出てきますけれども、こんなことは日本語では許されません。だから、日本語化すると「ストロング(sutorongu)」となってしまいます。
 逆のケースが「ビール」と「ビル」のケースです。日本語は長い母音と短い母音を区別しますから、「ビール」と「ビル」は全く別物ですけれども、英語の場合には母音の長さによって意味が変わるということは基本的にありませんので、英語を母語とする人が日本語を学ぶと、「ビール」と「ビル」の区別というのはとても難しいということになります。
 文法の例を出しましょう。言うまでもなく、文を作るときには語を使います。その語が幾つか集まってまとまりを作ります。それを「句」と呼びますが、そうした句を並べて文を作るわけですけれども、その場合の並べ方、語順というものに一定の規則があります。
 これはどの言語にも共通しているのですけれども、並べ方、どう並べるかという点についてはばらつきがあります。例えば、今、出しているのは日本語と英語ですけれども、かなりばらつきがある。日本語の場合、最初の例だけ触れますと、「ことばの」という具合に、句の中で一番大切な「本」というのが最後に来ます。けれども、英語でしたらば「books on language」という具合に、booksという一番大切なところが一番初めに来るという仕組みになっています。
 ここで、私が考える「ことば」という視点から考えた言語教育の在り方についてざっとまとめておきます。まず小学校段階では、母語を利用してことばの性質、ことばの仕組みとか働きに気づかせる。これを私は「ことばへの気づき」と呼んでいます。
 そして、ことばへの気づきを育成するために、外国語の利用が小学校段階であってもよいのですけれども、非常に重要なことは、英語という特定の言語に偏ることがないように配慮するという点です。
 この段階を経て、次に、「ことばへの気づき」を利用して、外国語教育を進める。これの段取りを守らないと、外国語学習としての英語学習、あるいは、英語教育というものは成功しません。英語の仕組みや働きについての説明が理解できないからです。
さらには、外国語学習がことばへの気づきをより一層豊かなものにし、その豊かなきづきは、母語と外国語の効果的な運用を可能にするという循環が形成されるのです。
 つまり、外国語学習の前提になるのは、母語で育成されることばへの気づきということになります。これが現在のところ、学校教育の中では十分に配慮されていないので、幾らやっても英語教育というのはうまくいかないのです。「気づき」と言ってきましたが、母語に対しては直感(intuition)がききます。子供たちは気づいたときに何とも言えない「あ゛~」という声を出します。それは子供たちにとっても、教師にとっても、とても楽しい体験です。
 おなじみの方も多いかと思うのですけれども、例を二つほど出します。語順について考えます。「バナナ」という語と「ワニ」という語、これは両方とも名詞ですけれども、それを二つくっつけると複合名詞ができます。くっつけ方が二つあって、「バナナワニ」というくっつけ方と、「ワニバナナ」というくっつけ方があって、同じ「ワニ」と「バナナ」という語を使っているのですけれども、語順を変えることによって意味するところが全く変わってくる。今日は全然笑いを取れませんでしたけれども、この実践を小学校の教室でやるととても盛り上がります。うなずいている方もいらっしゃいますが、先生だったら多分直感的に理解していただけると思います。
 ついでに、アクセントも変わりますよね。「バナナワニ」で、「ナナ(高低低)」と「ニ(高低)」ですから、そのままくっつければ「ナナニ(高低低高低)」ですけれども、そうはならないで、「バナワニ(高高高高低)」になるのだなんていう気づきも、子供たちにとってはとても新鮮なものです。
 単数複数の数の話も面白いですよ。「キリンさんたちが動物園から逃げ出しました」。さあ、キリンさんは何頭逃げたのでしょうか。普通の人は複数頭逃げたと思うのですけれども、でも、必ずしもそうではない。逃げたキリンさんは一頭でもよい。それに気づかせるためには、「桃太郎さんたちは鬼が島に鬼退治に行きました」。「桃太郎さんたち」と言っています。桃太郎さんは何人いるのでしょうか。1人ですよね。ああ、そうか!「たち」というのはそういうときにも使えるのだというのにぱっと気がつくわけですね。そうすると、ああ、キリンさんが一頭でも、「キリンさんたち」と言えるのだなという気づきが生まれるのです。このあたりのことは教え込む必要は全くなくて、子供たちの直感を使って気づかせればよいのです。
 実際、諸外国でもこうした教育は小学校段階でよく行われていて、アメリカの例ですと、「Language Arts」という形で行われています。ここに出しましたような教科書は、例えばアマゾンなどでも簡単に手に入れることができます。
 それに対して、現状はどうなっているかというと、今、言った「ことばへの気づき」だなんていうものがほとんど形成されないまま、高等学校、大学に進み、そこで英語教育が行われています。かなりの大学では、就職率を少しでも上げようということで、TOEICの対策講座化に堕しているのが現状です。
 更に言ってしまえば、先ほども言いましたが、TOEICの高スコアは必ずしも英語の熟達度を示すものではないので、三木谷さんがいないのは残念ですけれども、採用した企業は、こんなはずではなかったとがっかりしてしまうということになってしまいます。
 つまり、母語という礎なしの外国語の運用能力というのは、よくてただぺらぺらしゃべることができるという、「ハリボテ英語力」というものにすぎないということになります。
 そんなことはおまえが考えているだけじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれないので、そういうのを多少数字も使って実証的に調べようとしました。ことばへの気づきと英語力の間に相関関係があるということを、永井敦という院生が修士論文でまとめました。そして両者の間に因果関係がある。つまり、ことばへの気づきが高いと英語力も高くなるということを藤田麻友美という院生が修士論文で主張しました。そして、この二つの間に動機づけ、特に内発的な動機づけが大切だということを五十嵐美加という院生が、これまた修士論文でまとめました。さらに、母語に関しても、ことばへの気づきと母語の作文力の間に相関関係があることを児玉菜穂美という院生が示しました。
 というわけで、今日の会議のテーマになる「小学校における」という話ですけれども、外国語活動というのは、これは是非とも「ことば活動」という形にしていただきたい。母語も外国語も対象とすることが大切で、英語があってもいいけれども、英語は取り上げる外国語の一つにすぎないと考えていただきたい。母語も対象にすることによって、学級担任も児童も、母語に対する直感というものを使って、ことばの面白さ、奥深さ、それから怖さというものを実感することができる。さらに、それは外国語学習、英語学習へのきっちりとした基盤を形成するということになります。
 あとは、教科化という問題で、御承知のように私は教科化には一貫して反対をしてきましたし、今でも反対ではありますが、どうしてもやりたいというのだったら是非これだけは困るということがあります。それは中学校英語の前倒しでは絶対に駄目だということです。できることであれば、外国語科というものであることを真剣に受けとめて、単に英語科にしてしまわないで、英語だけでなく、広く世界の言語を見据えた内容にすべきだと考えます。ついでに、母語も排除しないという姿勢が不可欠で、こういうことをやれば、私にとって、それからこの建物の中にいる人たちの一部には災いと思っておられる方もいらっしゃるんじゃないかと思う教科化を福に転じる、災い転じて福となすということができるのではないかと考えます。
 これがまとめです。ことばという視点を導入すると、国語科との連携が可能になり、母語の効果的運用のための力を育成でき、外国語の効果的運用に必要な外国語知識を身につけるための基盤が形成されるということになります。
 急ぎ足でしたが、13分たちましたので終わります。ありがとうございました。

【吉田座長】  どうもありがとうございました。今の御説明について、もし皆様の方から何か御質問なり御意見がございましたら。じゃあ、安河内委員、お願いします。

【安河内委員】  大津先生、ありがとうございます。
 母語教育を充実させなければならないというのは、もっともな話だと思います。子供たちに言葉についての気づきを与える。これもすばらしいことだと思うのですけれども、いつも私は違和感を持つのは、皆さん、このTOEFL、TOEICというのをひとまとめにして、どの試験も同じように扱ってしまうのですね。
 皆さんが御存じのリスニングとリーディングのTOEIC試験というのは、これは2技能の試験です。もちろん2技能の試験では、張りぼての掘っ立て小屋も建てることはできないですね。また、TOEFL試験といっても3種類あるわけです。2技能のIPT、PBT、4技能のIBT。それを全部一緒くたにして、外部試験だとこうと言うのは、ちょっと乱暴かなという意見を一つ挙げさせていただきます。
 あとは、確かに2技能の試験では、当然4技能バランスのいい英語力も、言葉の力も身に付かないと思うのですが、やはり評価というものが世の中に必要だと思います。私の考えでは、やはり評価するのであれば4技能で評価するというのを前提に、評価基準を作っていくべきだと思いますし、4技能のテストに向けて勉強して作った英語力も、やはり張りぼてだと思うのですが、今、日本に必要なのは、張りぼてでも何でもいいから、まず焼け野原の上に、まがりなりにも使える英語力の掘っ立て小屋を建てることじゃないのでしょうか。

【大津委員】  じゃあ、答えていいですか。

【吉田座長】  ありがとうございます。いいですよ。

【大津委員】  じゃあ、お答えします。
  私は最後の点の、「ハリボテ」でも、あるいは掘っ立て小屋でも建てた方がいいんじゃないかなんていうのは余りにも乱暴な話で、そんな無駄なことはする必要は全くないと思います。
 それから、最後から2番目の4技能うんぬんの件で、それについては全く異存ありませんが、4技能にプラスしてというか、その基盤にあるものとして、思考力ですよね。その言語を使っての思考能力の育成ということを忘れてはいけないと思います。
 最初の点ですね。乱暴にひとまとめにするなという点。私はひとまとめにして構わないと思っています。どうしてかというと、共通の特徴を持っているからです。共通の特徴とは何か。正解を見つけ出すための方略を学ぶと、スコアを上げることが容易にできるという点です。

【安河内委員】  もう一つ、済みません。時間を奪ってしまって。それで、大津委員の考えをここで1回私も知りたいなと思っていたのですけれども、現在の大学入試がありますよね。現在の大学入試、TOEFL、TOEIC、これはどう違うのでしょうか。

【吉田座長】  余りこの議論を2人だけでやってもあれなので。

【安河内委員】  済みません。

【吉田座長】  じゃあ、今の点だけ簡単に。

【大津委員】  一言だけ。これはもう大学によって違いますから、その質問に一言でお答えするというのは到底できません。

【安河内委員】  分かりました。

【吉田座長】  ほかの委員の方はいかがですか。何か御意見とか御質問はございますか。よろしいですか。
 今、大津委員からお話のあった言語力という問題自体に関しては、言葉の気づきという問題については、当然ながらこれは今後議論する必要があるポイントだと私も認識していますので、それは今後、小学校英語の具体的な方策などを考える際に、当然参考にさせていただくことになると思います。
 それでは、続きまして、小学校における英語教育の在り方について、文部科学省の方から、これまでの成果と課題の説明をしていただきまして、それを踏まえて、具体的な議論をこれから少し行っていきたいと思います。
 それでは、まず資料3について、事務局の方から御説明お願いいたします。

【圓入室長】  それでは、お手元の資料の3-1と3-2を御説明させていただきたいと思います。3-1が18ページからということで、小学校における英語教育の現状から、成果、課題ということを概括的にまとめさせていただいております。また、それの基となります資料といたしまして、資料3-2、これが23ページからとなっております。
 これまで、文部科学省におきましても様々な現状の調査ということをさせていただきました。また、民間の企業の方々にも調査いただいているということもございます。そういったところから見えてくる小学校英語の現状・成果・課題というところを整理いたしまして、本日はこのような説明をさせていただくとともに、直山調査官から後ほど、より具体的な実践事例ということも発表させていただきまして、具体的な御議論を在り方について頂きたいと考えております。
 なお、次回も5月で、後で御案内させていただきますが、小学校英語の具体的な在り方について御議論いただきますので、徐々にこのデータ等も充実させていただきたいと思っております。
 それでは、お手元の資料を御覧いただければと思います。18ページでございますが、これまで、平成20年度の学習指導要領改訂を受けまして、平成23年度より外国語活動が第5学年、第6学年において、それぞれ年間35単位時間、授業時数を確保しながら、各学校におきまして取り組んでいただいているところでございます。なお、小学校の外国語活動については、机上資料でございますが、指導要領の解説で、経緯やその目的、内容というものを配付させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 導入後、それから前の状況ということで、各種調査より頂いておりますのは、成果の方を1番目で御覧いただければと思います。まずは、小学生の状況ですけれども、76%が英語の学習が好きという回答を頂いています。91.5%が是非英語が使えるようになりたいという回答もございます。
 それから、更に中学生でございますが、23年度から導入ということになっておりますけれども、一部外国語活動を経験した者に対する調査ということで伺いますと、約8割が小学校の外国語活動を行ったことが、中学校の外国語科で役立っているという回答がございます。
 さらには、その中1の生徒ですけれども、これは先生の方に聞いている質問ですけれども、導入前に比べて成果や変容が見られたということで感じている教員が78%いらっしゃる。その中でも、単に英語を使うということだけではなくて、外国や異文化に対して興味を持っている。それから、英語については音声に慣れ親しんでいると。さらには英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成されていると。中学生の聞く力は高まったというような成果が出てきております。
 次に、2番目の課題でございますが、これは児童の小学校高学年でございますけれども、これも一般的御意見でいろいろ頂いております抽象的な思考力が高まる段階というところにもかかわらず、教科ではございませんので体系的に学習を積んでいないために、学習内容に飽き足らないという児童が見られるということがございます。例えば中学生の7割以上が、小学校で「英単語・英語の分を読むこと」、それから8割が「英語の単語・文章を書くこと」をしておきたかったという回答がございます。現在は聞く、話すということが中心でございますが、文を書くというところにもニーズが見られるということでございます。
 次の19ページを御覧いただければと思いますけれども、その中で、本来の目的である英語学習への動機付けを更に高めながら、コミュニケーション能力の素地を養うという目的がございますが、そういったことで、小学校卒業時までに表現の幅が広がることが期待されるというような御意見も頂いておりますところです。
 指導者の方、これは教員だけではないのですけれども、ALTなど外部の方にもお伺いしているような質問がございます。その中で課題をお伺いしますと、例えば小学校におきましては、学級担任の先生がいらっしゃいますが、そういった方々と外部の方、ALTなどの人材がおられますけれども、準備や打合せの時間の確保が非常に難しいと。かなり多忙感がある中で、そのような打合せをするのが難しいということが、幾つかのデータからも見られます。さらには、教員の指導力ということでございましたり、指導力に必要な教員研修に対するニーズが見られます。
 更に小中連携でございますが、いろいろアンケートの中では、先ほど申し上げましたように、小学校で英語が好きという回答が多うございますけれども、中学校になると途端に少しそのような苦手意識が出てくるようなデータもございます。その中で、小中連携というのは以前から求められているところでございますが、そこでの課題というのを挙げさせていただきますと、やはり小学校において、中学校での指導を意識した指導がなかなか十分できていないというような声がございましたり、具体的なデータにつきましては、小中連携の研修の中でも、学級担任等における外国語活動の参加・協議ですとか、それから、その活動の共通理解を図ったり体験をするという研修というものは、4割から5割程度で実施はされておりますけれども、一方で年間の指導計画、単元計画指導案を作成するという具体的な運営に当たりましては、検討などを実施している学校というのはまだ1割から2割弱ということで、その難しさというものが表れているのではないかと思います。
 なお、参考で小さな字で書いておりますが、指導者の状況をちょっと御紹介いたしますと、直近のデータでは、小学校教育で中心となる方、指導者は、学級担任が7割を超えているということでございます。また、別のデータでは、以前2006年に取らせていただいている見られるデータではALT等が一番多かったということでございますが、2010年、導入前ではありますが、指導要領改訂を機に、学級担任の方が増えているという傾向に変わってまいりました。
 ただ、全て学級担任が授業を行っているということではなくて、次のところを御覧いただければと思いますけれども、小学校の外国語活動の総実施時数でございますけれども、それをトータルで見ましたときに、ALTを活用されている時数の割合は5割以上、54%、そのほかALT以外に英語に堪能な日本人の方や、中、高で英語担当教員が小学校の外国語活動に参加している時数というのも含めますと、67%、約7割で外部人材と連携しながら授業を行っているという状況がございます。さらに、ALTなど約8割、保護者若しくはその地域人材で英語堪能な方、ボランティアという方々が1割から2割入っているというような状況でございます。
 なお、学級担任以外に専科教員がおりますけれども、5、6年生の専科教員の割合はまだ5%から6%で、2回データを比較しているのですが、余り状況は変わっていないということでございました。
 次のページを御覧いただければと思います。ここからは、文部科学省の方から学校を指定させていただきまして、新しい教育課程や指導方法について研究開発するものという研究開発校がございます。この制度を活用して実施している、先進的な取組をしている学校の成果と課題というものを、直近のものを挙げさせていただいております。
 ほとんど下の1を御覧いただければと思いますが、5、6年次の外国語活動だけではなくて、1年次、若しくは3年次から外国語活動を導入しているところもございますし、1年から教科という位置付けを掲げて進めてきているというものが見られます。
 次の21ページを御覧いただければと思います。ただ、実際に御報告いただいている内容を見ますと、目標として掲げているところで、あえて外国語活動と教科型と分けますと、外国語活動はもう現在行われている目標を掲げているところはございますが、教科型の内容、目標の下に内容が書いてありますが、御覧いただきますと、目標については、今、中学校の外国語科でコミュニケーション能力の基礎を養うということになっておりますけれども、コミュニケーションを図ろうとする態度の育成と聞くこと、話すこと、さらには4技能と先ほどお話がありました読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うということを掲げている例が見られます。
 ただ、一方で3の内容を御覧いただきますと、今、比較的聞く、話すの音声中心のこれが外国語活動で求められておりますけれども、こういったものが、教科型と掲げながらも扱っているものが見られると、多いという状況でございます。ただ、中には、これも一、二年でできたことではなくて何年も掛かってでございますけれども、ある学校の高学年では、4技能を総合的に育成しようとしているというところも見られましたし、また、ネイティブの方に英語に直接触れる機会を増やすということですとか、他教科との連携ということで、社会、国語といったものと連携しているものも多く見られます。
 そのほか、指導体制なども御覧いただきますと、先ほど御説明したのは全体の概略ですが、こちらの方は先進的に取り組んでいるということで御覧いただければと思いますが、そのような学校ではALTの方が何回も来校して、打合せをしたり、授業をしたり、事後の評価をしたりということが見られるということと、それから指導主事の方が訪問されたりするということで、アドバイスをしたり校内研修というものが充実させているという工夫が見られます。そのほか、小中連携で単に情報交換だけではなくて、カリキュラムを一緒に作っていったりということも独自にやっておられたりということでございます。さらには、先進事例という中では、教材等も独自に充実してきているということでございます。
 評価の観点、それから評価方法と御覧いただきたいと思いますが、結果的にもう現行の制度上の対応をされていると思うのですけれども、その中でも関心や意欲、態度を見ているところが多うございまして、方法でございますけれども、教科型と掲げている学校につきましても、今は教員による文章記述が主となっているということが多うございました。
 更にその成果ということでは、学習意欲が向上しているということは共通して見られましたし、高学年の中には文字学習導入で、意欲維持に一定の効果があるということがございます。
 最後に、22ページを御覧いただければと思いますが、先ほどの課題がございますけれども、同じく小中連携が十分でないところがございますが、1点、前段の御説明内容と違いますのは、教科と掲げている中で、文章ではそうなっているものもありましたけれども、現行の指導要領に記載されている外国語活動の目標、内容にかなり類似していると、実際のところは教科と言いながら、外国語活動に類似しているというようなところが現状かと考えております。
 最後、(2)の説明でございますが、3-2の方にも少し紹介させていただいておりますけれども、こちらの調査につきましては全小学校に調査しまして、先ほど御紹介した研究開発校、文部科学省が指定している学校以外の学校にも問合せをしまして、独自に先進的な取組をしている学校が3,000校ほど回答を頂いた調査でございます。その中の状況を少し御紹介させていただきますけれども、最初の丸でございますが、年間の授業時数はどのくらい行っているのかということを見ますと、学年が1年生から5、6年生に上がるにつれて、当然増加しているという傾向は見られますが、1から4学年までは週1コマ未満が多いという状況でございます。5、6学年は週1コマ以上、2コマ未満が多かったということでございました。
 指導内容につきましては、おおむね7割は現行制度にのっとって行っていると。ただ、教科としての目標・内容を挙げている中には、先ほどの研究開発校にもございましたように、外国語活動と同様のものが見られるというようなことでございます。小中連携もまだ少ないと。
 次の丸でございますけれども、指導者の体制につきましては、学級担任のみが1割ということでございまして、そのほか、ほぼALTの方、それから地域人材という方が多いという状況でございます。
 評価方法につきましては、研究開発校と同じように記述が多いと。
 指導上の課題につきましては、データは後で見ていただければと思いますけれども、外部人材の確保が比較的課題としては感じておられないのですが、その中でやはり指導者の指導力、指導内容、小中連携、教材、資料等について、まだまだ十分でないと感じている学校が多うございました。
 それから、低学年から先進的取組を行っている学校につきましては、各学年ともおよそ7割の学校が現行制度にのっとった目標・内容に準じて指導はしているということで、これも同じように教科型と掲げているものもありまして、なかなか現状はこのような状況にあるということでございまして、以上、ざっと様々な調査結果というものを概括的に御説明させていただきました。
 特に議題の中には外部人材との連携というのがございますけれども、少し取組の事例として御紹介させていただければと思います。35ページを御覧いただきますと、先ほど御紹介した外部人材のALTということで御紹介させていただきましたけれども、ある教育委員会の例でございますと、単純にALTの方々を配置するということだけではなくて、ALTをサポートするスーパーバイザーの設置ということも取り組んでいる教育委員会もございます。
 主な業務内容を御覧いただきますと、先進事例の中にもございましたように、ALTの方に対する交渉を行ったり、学校訪問、年間例えば100回ほど行って、ここに書いてありますようなサポートを行っているということで、そのほか配置のメリットというものは、ALTの方にとって、学校、教員にとってのメリット、教育委員会にとってもメリットというようなことも挙げていただいておりました。このような状況が、中学・高校とちょっと異なるという状況の中で、学級担任の方の役割、それから、それ以外に今の小学校の教員養成の在り方の中で、外部人材との連携をどのように行うのかという具体的な御議論を是非頂ければと考えております。
 続けて、是非直山教科調査官から、具体的事例ということで、御発表いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉田座長】  今、ございましたように、続けて直山調査官の方から、研究開発校の事例について、御発表をお願いしたいと思います。

【直山教科調査官】  私の方からは、研究開発学校等における取組事例を御紹介させていただきます。皆さんのお手元の資料の59ページからになります。そこに載せてあるものは、パワーポイントでお示しする資料全てのものがそこに載せてあるわけではありません。また、大変申し訳ないのですけれども、1点だけ修正をさせてください。61ページ上のパワーポイント資料、これは本日は使いません。61ページ上のパワーポイントの資料は、今日は時間がありませんので使用しません。15分以内でお話ししなければなりませんので。もう一点、申し訳ないのですが、今、使いませんと言った京都府の六人部(むとべ)小、中学校について、福知山市の「知」が抜けておりました。併せて訂正の方、よろしくお願いいたします。
 では、まずその資料を基にお話をしていきます。スクリーンを御覧ください。これまでに、研究開発学校等の取組が、この三つのステージでありました。まず、平成21年度、調査研究事業、1年間の事業です。その一部が平成22・23年度の研究開発学校に引き継がれて、25地域で取り組んでもらいました。その後、24年度から、あらたな研究開発学校として、3地域に取り組んでいただいています。
 平成22・23年度については、外国語活動だけに取り組んだ学校がこれだけあります。次に、外国語活動と外国語という教科に取り組んだ地域・学校はこれだけあります。外国語という教科だけ、外国語活動はしていないという地域がこれだけあります。24年度の研究開発学校、24年度以降についてはこのような形で御研究を頂いています。まず、この部分について御説明します。
 外国語活動のみでお取り組みいただいた地域で、1年生から6年生まで取り組んだ学校は、1小・1中の地域が6地域のうち4地域あります。同じく外国語活動と外国語に取り組んだ学校は1地域ですが、3小、1中となります。1、2年生外国語活動、4-6年生外国語に取り組んだ2地域は、1小、1中となります。外国語、つまり教科としてお取り組みいただき、1年生から6年間やっていただいた学校は、4地域ありますが、そこも1小、1中だったり、あるいは市町で取り組んでいます。つまり、ある程度の数の小中学校があり、市町で教育委員会が束ねてのお取組です。
 ここでわかることは、1年生から6年生までお取り組みいただくときには、中学校との連携をきちんと行い、それを整えられる体制が必要だということです。
 次に、3年生から6年生まで7地域で取り組んでいただいていますが、7地域のうち三つの地域については市町村が束ねて取り組み、行政が非常にバックアップをしているという状況です。その中で、深谷市について取り上げます。お手元の資料では48ページのところ、先ほど圓入室長が研究開発学校について少し説明をしましたが、48ページに深谷市の取組について詳しく書いてあります。
 深谷市では、教育委員会が主導で取り組んでいます。小学校が19校、中学校が10校、一斉に取り組んでいますが、3年生から6年生までが外国語活動、学級担任とALTが指導に入っています。そして、特色は他教科と関連した題材をもとに指導計画をたて進められているということです。
 一方、その子たちが行く中学校ですが、1年生では外国語活動を踏まえた指導を徹底して行っています。「つなぎ教材」というものを教育委員会で作成し、取り組んでいます。そして、2年生、3年生については、教科書以外にも教育委員会が独自教材を作って、取り組んでいます。
 このような取組の中から、次のような成果が上がっています。外国語活動の授業が楽しい、先ほど全国の調査では76%の児童が楽しいと答えていますが、この学校では9割以上の児童が楽しいと肯定的な感想を持っています。そして、中学校へ行ってもその意欲が落ちずに、9割がキープされています。いかに小中連携が大事かということです。
 次に、佐賀県吉野ヶ里町立三田川小・中学校についてです。それもお手元の資料49ページのところに詳しい資料がありますので、併せて御参照ください。ここでは1、2年生が外国語活動、3年生から6年生が外国語に教科として取り組んでいます。1、2年生は、やはり学級担任とALTが指導をしています。3年生から6年生の教科においても、やはり学級担任とALT、加えて英語推進委員、学校で教員からそういうお立場の人を作って、3人で指導をしています。ここでの特色は、アルファベットを扱っていることです。文字です。読み・書き、そして6年生では単語の読みまで指導をしたということです。
 その子たちが上がる中学校については、やはり小中連携をするということで、中学校側も小学校側も、お互いを意識した指導がなされています。中学校側では、外国語活動と小学校の教科としての外国語を踏まえて、きちんと指導しました。非常に緩やかな接続と、適度な段差を大切にした小中連携に取り組みました。
 この学校の中では、次のような結論に至っています。中学で英語を勉強するのは楽しみだったという中学1年生の割合が9割近い。中でもアルファベットの文字を書いたり読んだりするということがすごく楽しみだったという子が多いのですが、その要因も、この学校では小学校のときにアルファベットに慣れ親しんだり、絵本の読み聞かせをしたりしたことが大きかったのではないかとい考えています。そして、中学生に小学校での英語の勉強が役に立ったかと尋ねたら、非常に高い割合の子供たちが役に立ったと、小学校での英語の勉強を肯定的に捉えています。うまく小中連携が進んだ取組だと考えます。
 ここでお示ししている黄色い部分については私の考えではなく、ここの学校の研究紀要、あるいは文部科学省に出していただいた報告書から取り上げてお示ししています。
 次に、香川県の直島町立小、中学校について御説明いたします。お手元の資料では47ページになります。この直島小、中学校は、平成23年度から25年度まで研究開発学校として取組をしたわけですが、実はその以前から研究開発学校として取組をしている学校です。47ページの資料を見ていただいたらお分かりのように、この学校では取組が非常に長く、平成6年度から研究開発学校として取り組んでいます。
 その中で、平成23、24、25年度の内容だけを、今、ここのスクリーンで見ていただきます。1、2年生が外国語活動として取り組みました。3年生から6年生までが、外国語に教科として、3、4年生は週1コマ、5、6年生は週2コマで取り組んでいます。加えて、その子たちが上がる中学校では、週4コマですが、年間20時間プラスをして、140時間のところを160時間で取り組んでいます。
 では、どんなふうに取り組んだかを言います。1、2年生は学級担任とALTが指導をしています。3、4年生についても同様です。5、6年生は学級担任とALTに加えて、小学校は専科教員が入ります。小学校の先生で、直島小学校の先生が専科教員として入っています。一方、6年生は、直島中学校の外国語担当の先生が入り、担任とALTの3名体制で指導をしています。5、6年生では週2コマということもあって、聞く、話す、読む、書くの、4技能を総合的に力を付けることをねらいに取組をしています。
 その子たちが上がる中学校について、もちろん中学校の外国語担当の先生に加えて、ALTが入って指導をしてきました。25年度までこの体制で取組をしてきましたが、さっき申し上げたように平成6年度から長く取り組んでいる学校ですので、その取組を3ステージに分けることができます。どうしてこういう形になったかを今からステージごとに見ていただこうと思います。
 このステージです。平成6年度に取り組み始めたときには、1年生から6年生までは教科としてではなく、外国語活動に取り組んでいます。ところが、次のステージでは、5、4年制、つまり6年生の子たちが中学校で学習をするという形に変えました。そして、3ステージ目が、先ほどのスライドで見ていただいた1、2年生外国語活動、3から6年生が教科として外国語、5、6年生が70時間というものです。
 じゃあ、詳しく見ていきます。まず。1年生から6年生までは、外国語活動と同様のコミュニケーション能力の素地を養うことを目標に取り組みました。子供たちが非常に英語の勉強は楽しんでおり、9割以上の子供が常に楽しいと答えてきています。そのようなことから外国語活動は中学校での英語学習の素地になると、小学校の先生たちは捉えていました。
 ところが、年数を追うごとに、高学年で学習意欲に低下が見られるようになりました。これはいけない、高学年に改善が必要だということになりました。具体的に子供たちがどういうことを言ったかというと、「余り楽しくない」、「言っていることが分からない」、「覚えられない」、「話すことがない」、「声を出すのが恥ずかしい」、そんな子たちの声が上がってきました。先生方も、5年生後半からどうも音声中心でやっていても子供たちの乗りが悪い、ついてこないということを感じ出しています。それに加えて、中学校へ上がった子供たちから、小学校で文字を読んだり、書いたりしておきたかったという声が出てきているということから、どうも文字が小学校と中学校の段差を大きくしている要因ではないかと考えられました。
 そこで、次のステージです。5-4制の取組が始まります。どうしたかというと、まず前期、1年生から5年生までは外国語活動として、コミュニケーション能力の素地を目標に、英語を聞く機会をもっと増やしましょう、そして語彙をたくさん入れてやりましょうという取組になりました。一方、6年生も外国語活動ですが、中学校で学習をし、読み・書きを入れていくようになりました。まだこの時点では「活動型」です。そして中学校では4技能統合的に、総合的にということで、中学校での指導を非常に改善されていきました。
 さあ、この取組の結果、第2ステージではこんなことが結果として得られたようです。6年生で学習意欲が回復してきたということでした。6年生で遊び感覚を大切にしながら読み・書きを入れたことに、その要因があるのではないかということでした。
 ところが、まだまだ英語に触れる量が少ないことから、言いたいのだけれども、それに当たる語彙や表現が分からないので、子供たちが何かやっている割には思いが言えないなという自信のなさがうかがえた。一方、中学校の方は、どんどん自分たちの上達を感じるようにはなったけれども、実践的に英語を使う場面が少ないという課題が出てきました。
 そこで、この課題を解決すべく第3ステージに入ります。これが平成23年度からの研究開発学校としての取組です。1、2年生は外国語活動として、コミュニケーション能力の素地を目標にした。3年生からは教科として外国語とした。そして、3年生からは音声と文字を関連付けた活動を入れ、読み・書きの活動を入れていく。5・6年生では定着を目指し、ここで70時間にしたということです。そして、毎時間、短時間ではありますけれども、読み・書きの活動を入れていった。二つ前のスライドで申し上げたように、5年生は小学校の専科教員、6年生は中学校の外国語担当の教員が入っています。その子たちが上がる中学校では20時間をプラスして、4技能総合的に統合的に使う場面設定をして取り組んでいきました。
 さあ、この第3ステージがどういう結果になったかというと、学校の分析では、文字を使った学習をすることを子供たちがよいと非常に感じている。そして、92.9%の子供たちが、小学校で文字をやってよかったと答えている。それから表現する内容の量が増えるにつれて、文字を必要とする傾向が見られてきたということです。
 一方、課題としては、学習内容の定着や、あるいは教科として取り組み、評定とするのでは、小学校ではこの時数では十分とは言い難い。つまり定着を求めるにはこの時数ではいかがかという結論でしょう。
 一方、中学校の方は、英語検定等で非常に取得率が高い。3級、準2級取得率の数値が、お手元の資料に挙げてあります。伸びてきましたが、一方で、20時間年間プラスをしていますので、中学生が負担感を感じているという傾向が見られたということです。
 研究開発学校の取組をまとめていくと、まず、小中連携が非常になされていたということ。つまり外国語は、小学校の外国語教育だけでは語れないということです。それから、教員の指導力については、体制を整えて指導力を付けています。どの学校にもどの学級にも学級担任が関わっており、他教科と関連した年間指導計画で進めています。また、「教科」という枠組みの明確化が必要かと思います。圓入室長から報告がありましたように、教科として取り組んでいる研究開発学校や特例校が多いですが、その取り組み内容は外国語活動の中身と同じ場合が非常に多いということ。ですので、「教科」というものの枠組みの明確化が必要であるとともに、大津委員から、中学校の英語の教科の前倒しではなく、もし教科化にするなら小学校独自の枠組みが必要ではないかということが読みとれると感じました。以上です。

【吉田座長】  どうもありがとうございました。今、圓入室長と、それから直山調査官から、今まで分かっていることをいろいろお話しいただきましたけれども、今までの説明だとか御発表を基に、これから皆さん、委員の方々からの質問だとか、また御発言、御意見などありましたら、挙手をお願いしたいと思いますが、いかがですか。最初、まず藤村委員の方から。どなたか最初に手が挙がりますか。じゃあ、安河内さんからどうぞ。

【安河内委員】  今、前倒しをしないという話があったのですけれども、一方で文字の教育は重要だということもおっしゃいました。ここに中学1年生の教科書があるのですけれども、この前半の内容を前倒しすることなく、4年間も英語の授業を引っ張れるのでしょうか。もし私が小学校で教えるとするならば、これを全く前倒ししないで一体何をやればいいのか、全く分かりません。そこを教えていただきたいと思います。

【直山教科調査官】  お手元の資料に、現在外国語科活動の教材例として国が配っている「Hi, friends!」を御用意させてもらっています。2年間70時間の内容ですが、中学校1年生、2年生で扱われている言語材料がそこへ多く入っています。

【安河内委員】  入っているのですね。

【直山教科調査官】  はい。

【安河内委員】  これは前倒しではないのですか。

【直山教科調査官】 中学校で、初めて英語を本格的に学習していますので、当然言語材料は重なります。前倒しではないという意味で申し上げているのは、指導法の前倒しをしないという意味で使わせてもらっています。

【安河内委員】  なるほど、そういうことですね。
  あと、もう一つ違和感があったのは、これは「Hi, friends!」ですよね。2年間はこれでもつと思うのですね。ただ、これ、4年間ということになってくると、さすがにある程度文法なり、中学でやる内容を教えなければ、4年は私はもたせることができないと思うのですね。例えば皆さんがモンゴル語を勉強すると考えてください。4年間、活動だけでモンゴル語をやっていて、そのモンゴル語で歌って踊って、その4年間もたせることができるのかということです。

【直山教科調査官】  そこのところを、皆さんで御討議を頂くのではないかと思っています。もちろん研究開発学校でのお取組も十分参考にしていただいて、検討をしていただけたらと思っています。

【安河内委員】  あと一つだけ。このCDです。「Hi,friends!」にCDが付いているのですけれども、このCDは教師の皆さんには全員配布されるのですが、生徒の皆さんにはこういうCDの配布がないらしいのですね。音声にアクセスできない状態で、小学生がみんな英語を勉強するというのはいかがなものでしょうか。あとはクラウドのテクノロジーで、これをダウンロードできるようにならないのでしょうか。

【直山教科調査官】  今、おっしゃったのは、CDというかデジタル教材ですね。

【安河内委員】  いや、音声CDです。

【直山教科調査官】  あ、音声CD。

【安河内委員】  デジタル教材も先生しか手に入らないのですよね。

【直山教科調査官】  はい、そうです。デジタル教材は学校用です。電子黒板とかパソコンが要りますので。それから、音声CDについても学校にしかお配りをしていません。

【安河内委員】  現状では、生徒が家庭でこういった音声やソフトウェアにアクセスすることはできないわけですね。

【直山教科調査官】  はい、そうです。

【安河内委員】  はい、分かりました。

【吉田座長】  分からないことは今のうちに聞いておいていただいていいかと思いますが、ほかの方、藤村委員の方で何か御用意いただいているということを伺っていますけれども、いかがでしょう。

【藤村委員】  
私は先進的な取組でも何でもなく、ごく普通の、今、行われている外国語活動の子供たちの現状をちょっとお話したいと思って、資料を用意してきました。
 私の方から、3枚とじた「平成25年の5年生の現状」という資料を持ってきました。この事例のこの資料は、5年生の、今、安河内委員のおっしゃった「Hi, friends!1」、この各単元で1時間ごとに児童が書いた振り返りを基に作成をしたものです。
 一つは、最初の一枚物の紙には5年生の2月から3月に児童が書いた振り返りの一部を載せたものです。あわせて、担任が1年間指導してきて思ったことを記入したものです。もう一つの二枚とじになっている方は、1人の児童の振り返りを1年間、4月から3月までの分を載せてございます。その時々のその子の様子を記入し、1年間の児童の変容を示した資料であります。
 まず、初めの資料ですけれども、子供たちの内容を見ますと、大きく二つに分けられます。(1)は、英語を聞く、話す、知るということ、分かるということの楽しさに触れた例です。五つほど用意してきました。「いろいろな人とコミュニケーションができてよかったです。4月から英語の授業をやってきたけど、こんなに英語がしゃべれるようになったのだと思いました。あともう少しで5年生も終わるけど、最後の最後にもう一回やりたいです」とか、「前のときより、欲しいものをていねいな言い方で尋ねたり答えたりできました。アーノルド先生と山本先生が言ってる言葉が少し違うものがあって、アメリカと日本はこんなに違うのかなって分かりました」、「最後に外国の先生としゃべりました。英語のコミュニケーションができました。先生にうなずいてもらえて、英語ってできたらとても楽しいのだなと思えてうれしかった」、「みんなと話したり、聞いたりしてどんどんうまくなってきたので、もっと上の英語を話したいと思いました」。こういうようなことが書かれておりました。
 それから、担任の方は1年間子供たちと一緒に関わってきて、子供たちは「英語に親しみを持った。はじめは苦手意識があった児童も、回数を重ねるごとに楽しさを感じるようになった。毎回の単元でゴールが設定されているので、毎単元達成感を味わい、次の単元への意欲が向上し、意欲的に子供たちが取り組める。『Hi, friends!』の単元構成がスモールステップでレベルが上がっているので、児童に無理なく取り組ませることができる。『Hi,  friends!』の表紙や中身が児童の興味をそそるものである。英語が楽しいと言葉に出して話すようになってきた」ということが、この1年間取り組んできて、子供たちが外国語活動をやっての感想を挙げたものです。
 それから、(2)の方は、英語とは直接関係はないのですけれども、みんなとコミュニケーションする楽しさ。「名刺交換をして恥ずかしかったけど、相手から『やろう』と言ってもらえてうれしかった。次は自分から誘いたいです」、「最初は緊張して声が小さかったけど、みんなとのコミュニケーションで緊張がほぐれ、いつもの自分で話すことができました。男女平等にたくさんしゃべってよかったです。5年生での英語の授業は楽しくて面白いです」。それから、「今日はクラスのみんなとみんなの夢の理由を聞いたとき、夢が少し分かりました。いつもは女の子だけだったので、男の子とは緊張しました。1回目は緊張して声が小さくなってしまったけど、2回目からは自信をもって言えてよかった」というようなことが書かれています。つまり、いろいろな人とコミュニケーションをできて、そしてうなずいてくれたり、笑ってくれたり、ニコッとほほ笑んでくれたことが非常にうれしいというような、英語とは直接関係ないのですけれども、人とのやり取りの楽しさみたいなのを一方で挙げています。
 1年間、このクラスの仲間と英語を使ったそういうコミュニケーション活動を行い、子供たちは結構話すことに非常に楽しみを感じ、意欲的になったということが、このことから分かるかなと思うのですけれども、また、子供たちが男女仲よく誰とでもしゃべれるようになってきたということに楽しさを感じています。つまり人間関係をよくすることにつながり、クラスに一体感が生まれた。まさに人を大切にするということは、この外国語活動に見られるこの実践につながるのではないかと私は思っています。こういったクラスにはいじめはないし、学級に入っていると、私自身も入っていて非常に心地よい、非常に楽しいクラス、雰囲気で授業を進めていたと思っています。
 もう一方の資料の方ですけれども、これはある5年生の当初の様子から、順番にちょっとコメントを入れていますけれども、4月当初、人間関係がうまくいかない、周りからもよく思われていない子供で、教室でも投げやり的で、担任の先生にも非常に反抗的である。これは4月の段階でした。
 それから、6月頃、Lesson3ぐらいになると、人との関わりが心地よくなってきた。担任の先生からの声掛けもずっと4月から、些細(ささい)なことを捉えて励ましをしてきた。
 Lesson4の7月頃になると、随分クラス内ではうまく子供たちと関われるようになってきたのだけれども、他の大人が入ると逆戻りする。反抗的あるいは違う態度も見せる。もちろん、英語への抵抗感もまだこのときには強いという状況でした。ただ、7月頃の後半ぐらいから自分から人と関われて、自信につながってきたということが、この時点で見えてきました。
 10月、これはちょうど9月に長期宿泊も行った関係がありますので、そのことも大きな影響をしているのですけれども、10月頃から積極的に人と関わる姿勢に変わってきた。周りもその子を受け入れるように変化をしてきたということが、子供のコメントからも読み取れます。
 そして、Lesson8、1月頃になると、英語の楽しさ、英語が分かる楽しさが子供のコメントに表れるようになってきました。自信が出てきたのか、他の教員が見ても変わってきた自分を素直に表せるように変容してきたということが分かります。
 最後の方ですけれども、2月になってきますと、今度は仲間と英語でコミュニケーションする。些細(ささい)なやり取りですけれども、その楽しさを感じてきた。
 最終3月のときには、外国の人、たまたま日本語のしゃべれないアメリカ人が学校に来たのですけれども、そのときにその方と話をして、英語でコミュニケーションする楽しさや、英語を学ぼうとする意欲が出てきました。また、今まではなかった自分でちゃんと目的、目当てを意識して積極的に学習できたということを最後のコメントに載せておりました。1年間を通して、変容してきた子供の例です。
 二つの資料から、小学校の外国語活動は、人間関係、子供同士の人間関係を大切にしながら、教材をその学級の実情に合わせてアレンジをして、英語でのコミュニケーション力を育てていくということがやはり重要であるのではないかと思っています。単なる英語のスキルを身に付けるという指導ではこのようにはならないし、多くの児童に英語でのやり取りの楽しさを味わわせるということは難しいと私は思っています。やはり子供の実態を知っている担任が他教科と関連付けて指導するということのよさが、ここに私はあると思っています。
 そういう意味で、私は英語のできる担任の先生が指導するのが一番よいとは思いますが、実際、英語のできる先生がどれだけいるかというと、やはり現実では厳しい。もちろん研修が必要であるし、今であれば英語のできる専門の指導者と担任がT1、T2のチームティーチングを組んで英語の指導に当たるのがやはり大事なのではないかと思っています。
 公立小学校ですので、様々な家庭環境を背負っている子供たちがいます。英語が日常的にない児童、むしろ先ほど大津委員がおっしゃったように、日本語すら単語で終わっている家庭。そういう家庭の児童にとって、間違ったその指導の方法論を使うと格差を生む、広がるということにしかならないのではないかと思っています。英語科になっても、やはり活動を伴う学習が必要であり、楽しみながら慣れ親しんで読み、書くという方向につなげていくべきではないかと思っています。
 あと、最後にですが、前回のときにも意見がありましたけれども、やはり教科になることの心配は受験教科になって、そのことによって子供がより一層追い詰められていくということになるのは何とか避けたいとは思います。
 授業を通してお話しさせていただきました。以上です。

【吉田座長】  どうもありがとうございました。
 今、いろいろな方から、いろいろ現状と、それから直山調査官の方からは、いわゆる研究開発校の中で、既にもう教科としても取り組んでいるような事例についてもいろいろ御発表いただいたわけです。私たちのこの会議で、今日一日で何かを決めようということではありませんので、来月も引き続きやりますけれども、方向としては、やはりもともと最初に出されていた文部科学省からの、今後こういう形にもっていくにはどうしたらいいのかという、それを一応念頭に置きながら、今日の発表を皆さんお聞きになりながら、御発言をいただければと思います。
 じゃあ、髙木さん、どうぞ。

【髙木委員】  教育方法学として、今、週3回ぐらい小学校へ行って、いろいろな授業も見ております。そういう中で、3点、小学校教育についてお話をいたします。
 今、藤村委員からも出ましたように、小学校というのはとにかく教科担任ではなくて、学級担任が人間関係を作る。例えばいじめであるとか、それから、今、いろいろなところで出ている不登校であるとか、そういった問題も学級担任と一緒に、今、小学校ではいろいろ解決しているのだという、この前提に立ちませんと、英語だけではなくて、全ての教科の学習が成立していかないだろうと思います。この会はたまたま英語ということに焦点を当てて行っておりますが、特に小学校においては、英語だけではなくて、学校における教育全体の中でこの英語ということを考えていかないと、非常に英語だけが突出化されていくのではないかと思います。
 授業づくりというのは、やはり児童理解、担任が日々子供たちの家庭環境やいろいろなことを見ながら行っているのだということ。ですから、児童理解をするためには、私は学級担任がこの英語という、英語というよりも私は外国語教育と言いたいのですが、外国語教育をしていかなければならないだろうと。
 そうしますと、ちょっと今までの資料の中でも気になることがありまして、英語教育改革実施計画案の中に、外部人材に特別免許を与えて専科教員とすることというようなことが書いてありまして、これなども、実際の学校、特に小学校を考えた場合に、なかなか難しさがあるだろうなと私は思います。英語だけをやるというものではないというのを、繰り返し私は申し上げたいと思います。
 それから、2番目です。三つあるのですが2番目は、教員は非常に多忙化しています。行かれてみれば分かりますが、朝、職員室に入って、夕方の3時、4時まで、小学校の先生は職員室へ戻ることもありませんし、変な話ですが、トイレへ行く時間もなくて過ごしているというような実態もあるわけです。ですから、やはりそういう実態をまずきちんと押さえないと、先生方の疲弊するばかりになると思います。
 そういう意味でも、これから、また授業時数とかコマ数の話になっていくと思いますが、教育課程全体で、他の教科との関係でこれを見ていきませんと、これも英語という形だけを突出させて、外国語という形を突出させてしまいますと、小学校教育ということがやはり疲弊していくというか、全体のバランスの中で学力を付けていくということが問題になっていると思います。
 これも先ほど申し上げました、英語教育改革実施計画案の中にモジュールということがありますが、現在でもう既に行われていまして、例えばそれは書き取りとか、朝の読書とか、算数の計算練習とかいう形で行われていますので、外国語教育としてのものをここだけで時数を稼ぐというのは、私は無理だと考えています。
 それから、三つ目です。これがまた大変な問題になると思うのですが、今日の中にも出てきましたが、評価の問題です。学習には評価が伴いますが、英語の評価はこれからいろいろな観点で考えていかなくてはいけないと思いますし、新たな英語独自の観点もあっていいと思っています。
 問題は、それを現在先生方は、一人一人の子供に児童指導要録というのに記入しなければいけないのです。これも是非一度事務局の方から、どんなものを記入しているかを示していただいて、これが先生方の負担になっています。現実には、高学年のクラス担任の希望者が減っているというような話も校長先生から伺っています。それは何かというと、この要録の記入欄が自由記述で、かなり大きな欄であるということ。それから、更にこれは、私はもう一つ中教審の方の部会に出ていますが、その中で、この間道徳の評価がありまして、道徳の方もそうなのです。自由記述欄は一見いいように思いますが、日本の先生方はとても熱心でまじめだから、一人一人に非常に細かなコメントを書いていくという評価があります。これが3年生、4年生におりていって評価になると、もう担任希望は1年生と2年生しかいないというような状況が、もしかしたら出るのかもしれません。
 以上、小学校という枠の中で、これは多分最初に安河内委員が言われている小・中・高を考えなければいけないのだけれども、でも、小学校という一つの状況というか事情がありますので、そこにおける事情もしっかり考えていかなければいけないと思います。
 以上です。

【吉田座長】  ありがとうございます。じゃあ、三木谷委員、どうぞ。

【三木谷委員】  私は教育に直接携わっている者ではないので、一般的な社会、そして実業界という観点からちょっとお話をさせていただきます。今、こういう話をしているのも、日本の社会というものが国際化してきているという中、世界を日本のマーケットと見たとき、バブルの絶頂期には世界の17、8%あったマーケットシェアが、将来的には3%になるだろうという予測を踏まえたものだと思うのです。
 大人になって英語がしゃべれないとなかなか厳しくなりますよということを念頭に、逆算していくと、小学校からしっかりした英語教育をしないと、なかなか日本全体の競争力も下がってしまうし、それからその子供たちも、大人になったときに極めて厳しくなるであろうという状況の中、何とかこの英語教育を改革していかなくてはいけないということをベースに、話が始まっているのかなと思っております。
 それをベースに、じゃあ、小学校でどうしたらいいかということなのですけれども、おっしゃるとおり、今の教員の方々、これは英語を教えるという前提で教員になられていないわけですから、その人たちにやれというのは結構無理があるかなと正直思います。よってやるべきこととしては、大きく言うと二つあるのかなと思っています。ITをうまく活用するということが一つ。それから、もう一つは外国人をうまく活用するべきだということです。
 更に言えば、もう一つのポイントは、今までのような文法中心、翻訳中心の英語ではなくて、やはりしゃべれる、聞けるという最低限のところを、将来どういう職業に就くにしても、子供たちにはパン屋さんになるのか科学者になるのか、あるいはスポーツ選手になるのか、いろいろな人がいると思いますけれども、どんな職業に就くにしても、英語がある程度できるというところまで持っていこうということを考えるべきです。この幼少期に、ある程度の英語のコミュニケーションができる技量、プラットフォームとしての能力を付けておくというところが、ポイントになるのだと思うのです。
 私は新経済連盟というのをやっているのですが、この前、そこで新経済サミットというイベントを開催し世界のIT企業の人たちを集めました。世界の潮流というのは、distance learningやe-learningであり、ITをいかにうまく使っていくかということです。これは大学教育、それから中等教育、高等教育、それからもっと言うと幼児向けの教育までも、やはり世界の潮流というのはいかにinteractiveなメソッドを導入するかというところに入ってきているかなと思っております。
 一つ事例を申し上げます。皆さん御存じかもしれませんが、アングリーバードという、ヘルシンキにあるロビオという会社が作っております、昔のパチンコみたいにむーんと動かして落とすという簡単なゲームがあります。非常にプリミティブなゲームです。ヘルシンキ、フィンランドでは英語教育にもかなり取り組んできております。彼らはその簡単なゲームの中に英語教育を組み込むということによって、4歳児ぐらいから始めれば、無理なくほぼ全ての人が英語をしゃべれるようになるというものを提供しております。
 そうすると、お金持ちの子供はそういうタブレットとかスマホを買えるからいいけれども、じゃあ、お金がない子はどうしたらいいのだという話になると思います。世の中では、今、特に新興国では2,500円スマートフォン、25ドルスマートフォンというのがすごい勢いで普及しています。恐らく、この教材4冊あればスマホが買えるというぐらいの値段まで、下がりっています。
 この会議においても、最先端の技術の動向がどういうふうになっていくのか、それによって、日本の今の先生方にサポートしてもらいつつ、もっと発音なり聞き取りなり、そういうものがうまくできるような教育の在り方がないのかという建設的な議論をするべきではないかなと思っております。
 申し訳ないけれども、やはり日本の小学校の先生の下手な英語の発音でやらない方が、僕はいいと思うのです。僕も英語をそれなりにしゃべりますけれども、だけどやはりうちの息子の、「スターウォーズ」を聞きながらしゃべっている英語の発音の方が、僕よりいいのですね。「パパ、それは発音が違うよ」と。俺に対して言いますけれども、そういうレベルまで、子供ですからもうナチュラルに吸収していくわけです。そういう子供の学習能力をやはり最大限に使いながら、ほんまもんの英語に触れる機会をどんどん増やしていくべきだと思います。
 これはいろいろ哲学的な問題で、小学校教育は人間教育であると、それはもうそのとおりだと思うのですけれども、こと英語に関しては、残念ながら小学校の先生の英語のレベルというのは余り高くないんじゃないかなという事実があります。この事実を踏まえながら、一方で将来の日本ということを考えていったときに、やはり英語はマスターしなくちゃいけないし、それは子供たちのためにとっても英語をマスターすることが、大変有意義だというところで、どうやればクリエイティブなソリューションができるかという、特にITの活用というものを考えていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、できればそういうITの活用をしている最先端の国の大使館の方なりに来ていただいて、実際に目の前でプレゼンテーションをしていただきたい。それを見て、これは日本でできるね、できないねという議論をしたらどうかなと思います。

【吉田座長】  ありがとうございました。今のは、今までいろいろな方がおっしゃった指導体制の問題というと、非常に大きな観点が共通しているんじゃないかと思いますので、これはこれから、また小委員会などでも議論をしていかなくてはいけないポイントだと思います。
 じゃあ、石鍋委員、お願いします。

【石鍋委員】  ただ今グローバルな話も出ておりましたけれども、もう一度現場の方へ戻させていただいて、先ほど藤村委員が、担任のよさを使うのがやはり小学校での英語のこれからの在り方であろうとおっしゃっていましたが、私も全面的に賛成です。
 私事ですが、数年前、小中一貫校の校長をやっておりまして、小学校の英語活動を大分見る機会がありました。そのときに、中学校の立場から見ると、もう少しスキルの部分を考えて指導した方がいいなと思っているのだけれども、小学生というのはいろいろなところでリアクションが全く違うのですね。何であの子はしゃべらなくなっちゃったのだろうというような場面に出くわしたときに、やはり小学校の担任はその子の日常を知っていますから、そこにアドバイスが入って、また会話練習を始めていくというような場面に出くわしたことがございます。
 これは学校にいるとよく分かるのですが、中学校の我々が小学校の低学年なり中学年の子供と会話をするというのは、語弊があったらごめんなさい、難しいのですね。私たちの言葉、日本語ですよ。日本語でしても通じないことというのは多々ある。ただ、やはり小学校の先生は、その単語での発信とか表情から読み取って、子供を生かしていけるのですね。ですから、やはり私はホームルームティーチャーの役割を入れる。
 ただ、三木谷委員がおっしゃっていたように、すばらしい英語を聞かせるというのは絶対に必要なことで、それはITなのかALTなのか、又は日本人であるけれども英語が堪能な専門員なのか、この辺は議論の余地があるのだろうと思っております。
 もう一つ、小学校側の中学校からみたすばらしさを伝えさせていただくと、子供の活動を引き出すアイデア、これは英語だけではありません。日本語も含めてです。非常にたけていますね。このあたりの、いわゆるこれは小学校教員としてのティーチングスキルを中学校の英語科にどのように転換するか。そんなようなことも考えていけば、中学校のいわゆる入門期の英語教育も変わってくるはずだと思っています。この辺を何とか接続という部分でお話をできたら、面白いのかなと思っています。
 あともう一点だけ、私の経験からお話をさせていただくと、小中一貫校の校長のときに小学校の教員を集めて、私が講師になって研修をやったことがございます。そのときに、算数や国語は非常に指導力が高いすばらしい教員だったのですが、英語のワークショップ型のやり取りをしたときに、その教員の顔つきが一気に自信がなくなったのですね。この人はどうなるのだろうと思っていましたが、1時間やっていく中で、やり方を覚えていく、ちょっとしたクラスルームイングリッシュを知っていった。そうすると顔つきがまたよい方向に変わってまいりました。
 つまり、そういった研修の場は、少しの時間でも与えることができるだけで、かなり小学校の教員は伸びていくのだろうと思っています。ただ、慣れていない、経験がない。これは5年くらい前のことですけれども、感じとったものですから、情報としてお伝えをさせていただきました。
 以上です。

【吉田座長】  ありがとうございます。あと、発言されていない方もおられますか。
 はい。じゃあ、どうぞ、お願いします。

【佐々木委員】  済みません。いろいろ先進校等の成果をお聞きして、すごいなと思っておりますが、反面、先ほど髙木委員がおっしゃったことについて、現状を踏まえた提言というのは、私も非常に賛成するところがあります。
 これは質問になるかと思うのですが、一番この先進校なりでやられた中で、英語に視点が当たっていますけれども、他教科への影響だとか、子供自身が全体にどう育っているかというところがやはり肝腎だと思うのですね。その影響なり何なりがもしコメントできるようであれば、お願いしたいということなのです。

【吉田座長】  そうすると、直山さんがいいのかな。

【佐々木委員】  直山先生

【吉田座長】  はい。

【直山教科調査官】  研究紀要や文科省の方に出していただいた報告書をもう少し細かく見てみないと、そこの部分までの記載があるかどうかは分かりません。ただ、私の方がずっとここのところ見ている中では、そこのところを取り上げてというところはありませんが、ただ、多分この26年度に文部科学省の方が新しい事業をやります。英語教育に関わって、地域強化拠点事業というのをやります。その中で、こんなふうにやりますよという報告書を出していただきました。ちょうどここにいらっしゃるわけですが、岐阜県の方から出していただいている、その地域の取組の中にはそのことが書かれています。非常に学級がまろやかになるというか、人間関係がうまくなるという、男女の仲がよくなる、学級経営がうまくなっている、今まで取り組んできたことが成ってきた。なので、更に強化拠点事業で取り組みたいという記述はあったように記憶をしています。詳しいところがもし必要でしたら、次回また何らかの形でお示ししたいと思っています。

【吉田座長】  ありがとうございます。じゃあ、佐々木さん、もう少し。

【佐々木委員】  ありがとうございます。質問したのは、やはり英語という視点だけではなくて、児童、生徒がその学校でやはりどういうふうに育っていくか、全体的な全教科を含めた中で考えていかないといけないなという感じがします。高校に関しても、いろいろ英語だけではなくて、入試もあれば、部活動もいろいろなことがある。それをトータルで考えて育てていく中での英語教育だと思っていますが、その辺の基盤は必ず崩さないでいただきたいと思います。
 あともう一点、済みません。三木谷委員がおっしゃったグローバル化に対するIT機器の活用ですけれども、いいものを聞いたり活用するというところは私も賛成です。ただ、今のと同じですけれども、学校の現場で何をするかといったときに考えると、そのIT機器を持ち込むこともあれですけれども、それを生涯にわたって使えるような能力をやはり付けていかなければいけないと。小学校から言うと、その教科に対するモチベーション等が持続していって、かなり高校まで深まっていって、それを学校の英語教育から自分で更に広げていろいろな機器を使ったり、テレビを見たり、また社会で受け入れる場所があればそこの中で英語を使ってみたいという意欲に持っていくのが、やはり大事だと考えています。

【吉田座長】  ありがとうございます。じゃあ、松本委員、お願いします。

【松本委員】  3点あります。
  1点目は、藤村委員がおっしゃった、5年生のみんながコミュニケーションの楽しさということを体験できたという点です。これは、担任が中心となってALTのサポートを受けて、外国語活動としてやった上で成功した例だと思うのですね。これは言葉を習得するということを第1の目的にしていなくて、コミュニケーションという関係性を作って保っていく、その媒介として言葉があるという教育の例だと思うのですね。こういう場合には、私は担任が中心となってやっていくべきだと思いますし、最初の1、2年間はこれで成功するのではないかと思うのです。その中に、大津委員がおっしゃるような「ことばの気づき」活動とかいうのもあってよろしいかと思います。
 ただ、これが、安河内委員も先ほどおっしゃっていたように、3年目、4年目になり、直山調査官がおっしゃっていたように特に5年生後半から6年生になると、いわゆる表面的な楽しさだけでは続かないと思います。「楽しくなければいけない」みたいな何か縛りが、小学校の英語教育に関わっている人にあり過ぎるような気がしております。楽しさというのは人によっていろいろ違うので、子供なりに「やりがいがある」と感じる活動なり、教材を用意していくことが必要だと思います。
 となると、5・6年生で担任の先生でできる人がどれだけいるのかと心配です。もし教科という観点を入れるのであれば、専科教員の導入というのは必要ではないかと思います。この点について、髙木委員に後でコメントしていただきたく存じます。要するに音楽を教える専科の先生は公立の小学校にもいらっしゃいますね。ですから、英語の場合には専科教員はまずいという論理があれば、教えていただきたいと思います。
 あと、3点目のITあるいはICTの活用については、石鍋委員もおっしゃったように、担任が行う授業でITを活用するという点では両者は矛盾しないと思います。ICTというのは教材であり環境なので、誰が指導するのかというのとはちょっと違う点だと思います。活用することには大賛成なのですが、現実的には公立の小学校だけじゃなくて、国立の小学校を見ても、全く立ち後れています。ですから、小学校で教科にして、IT教材をたくさん入れる、しかもinteractiveに海外の人と話をするというような環境を作るのであれば、カリキュラムとか教材と並行して、学校の設備を変えていくということに莫大(ばくだい)な予算が必要になるのではないかと思います。
 以上です。

【吉田座長】  ありがとうございました。今、直接髙木委員に質問がありましたので、いかがでしょうか。

【髙木委員】  今、高学年で専科が多いのは、音楽とか理科が多いのですね。それは専門性をかなり要求されている部分だろうと。今、松本委員が言われたように、例えば英語という教科にして、そして、やる場合には今度中学校との関係も出てきますので、専門の方がいらっしゃっても私は別にやぶさかではないと思っています。
 ただ、コミュニケーションということ、先ほどこれは松本委員がおっしゃいましたけれども、コミュニケーションということやクラスづくりということ、とにかく小学校はクラスという問題、特に5年生あたりで学級崩壊もよく出る事例があるわけです。そうなると、例えば小学校5年生はとても難しい時期なのですね。ですからそういう中で言うと、担任が持った方がいいと。ここで右か左かとか、○(まる)か×(ばつ)かというのは一概に言えないと思うのです。学校にもよるし、もっと言うとその先生にもよるし、ですから、余り「ねばならない」論議は、余りそこの部分では私はしていきたくないなと。
 更に言えば、言葉の問題から言うと、不思議なことに小学校は国語の専科の先生というのはいないのですね。母語教育ということから考えた場合に、言語の教育という流れと重ねていくと、英語をもしかしたらそっちからアプローチすれば、担任の方がいいのかなということも考える。だから、正直言って分からない。だからそれが証明できたらいいけれども、なかなか難しいんじゃないかなと思っています。

【松本委員】  はい、ありがとうございます。

【吉田座長】  ありがとうございました。じゃあ、松川委員、ちょっとお願いします。

【松川委員】  2点ほど申し上げたいと思います。
まず、今のことに関わりがあるので、今日頂いた資料の中で33ページの上のところに、教科担任制の実施状況という表がありまして、私はこれを見せていただいて驚いております。平成25年度の計画が示されておりますけれども、5、6年生において、理科や音楽、図工、家庭科、体育で教科担任制、専科教員が指導に当たっている割合がここまで高くなっているのかということに驚いたということがあります。
 一方、国語、算数、そしてそれに続いて外国語活動は、専科教員が指導に当たっている割合が低いという結果になっております外国語活動については、やはり学級担任の先生が中心に授業をしておられるということが数値にも表れていて、1回目の会議でも申し上げましたけれども、小学校の教育課程に外国語活動を導入するに当たって、学級担任の先生はこれまでかなり努力してこられたということが表れていると思います。
 ただお聞きしたいのは、この調査における「教科担任制」の意味です。例えば、理科が得意な先生が、国語や算数も教えているけれども、理科の授業は全クラス持つという意味なのか、理科だけしか教えないということなのか、これが組み合わされているのか。恐らく組み合わされた数字なのだとろうとは思います。教科担任制とか専科教員といってもいろいろな意味合いがありますので、本調査の解釈については、やや難しさがあるのではないかということでございます。
 ここで一つ申し上げたいことは、小学校高学年における外国語教育を誰が指導するのかということが、かなり揺れているのではないかということです。報道によりますと、教育再生実行会議で学制改革のことが議論されているとのことです。6-3-3制ではなく4-4-4制にするなどの改革と、小学校高学年の指導者は誰になるのかということはかなり関係があると思っております。とりわけ、本会議で一番問題になっている高学年の英語教育における指導者ということに焦点を当てて考えますと、指導者の問題は、これまでこうだったから今後もそうだ、ということではないのではないかと、本日の資料を見て改めて思いました。思っております。今まで学級担任の先生が頑張っているということは、私も評価していますし、いろいろ御説明があったように、子供理解に基づき、他教科も教えているということを生かしながら、ある意味独特の英語教育が行われてきたということは評価しております。しかし、今日、冒頭に室長から御説明があったように、学級担任単独で指導に当たっているという割合は非常に低いです。ALTないし様々な方のサポートがあるわけです。しかも、これは岐阜県でもそうですけれども、そのようなサポートが手厚くされている市町村とそうではないところもあり、自治体の体力差というのがかなり影響しているわけです。小学校は当然のことながら義務教育であり、すべての学校に同様の条件で同様の教育を提供していくという前提を考えた場合に、今後も、このような外国語教育の実施の仕方でよいのかということに、私自身は根本的に疑問があります。
 次に2点目です。1回目の会議のときに申し上げ、これまでの審議のまとめでもお示しいただいておりますけれども、17ページの指導体制の在り方について、教員養成課程、採用の在り方を検討することが必要だというのは当然ですけれども、英語教育そのものを高度化しようというふうにお考えであるならば、免許取得の要件というのをやはり考え直すべきだと思うのです。今すぐできることと、中長期的に考えなければならないことは当然あると思いますけれども、ここのところに、やはり「免許の要件を検討する」ということを明記していただきたいと思います。小学校を今までのように全科担任制ということを前提にして、それぞれの教科指導が高学年でもできるように全体的に厚くするという方法もあるでしょう。また、もう一つの考え方として、小、中、高を通して、どの校種でも英語を教えることができる免許を出すという考え方もあるでしょう。その辺りも含めて、中長期的にはこのことについても考えるべきではないかということを申し上げたいと思います。
 それから、長くなって恐縮ですけれども、小学校について、高学年で教科化するということに、私は基本的にはありだと思っております。その理由は、先ほど直山調査官からもお話がありましたけれども、例えば岐阜県でも、ある市は教育課程の特例で、開始学年を早め教科としての英語教育を実施しておりますけれども、英語を楽しいと思う児童の割合は学年が上がるにつれて減少するわけです。楽しいということを強調しすぎているのではないか、というお話がありましたけれども、何が楽しいのかというのを聞いてみると、やはり歌やゲームが楽しいというのが多くなっております。高学年の児童に対して、発達の段階に応じているとは言い難い活動をさせていれば、それに飽き足らなくなり、楽しいと思う児童の割合が減ってくるのは、かなり当然な話だと思います。一方で、英語を使えるようになりたいという意欲は、6年生は高いのです。したがいまして、教科化というのは何をもって教科と言うかという問題はあるものの、ある程度体系性を持った学習内容を扱っていくということは当然のことだと思います。その際、何をもって体系性と言うかということですが、今日、大津委員がお話しになりましたような、ある意味で言葉への気づきといいますか、文法への気づきといったことを考える必要があると思っております。大津委員は言語の個別性と普遍性とおっしゃったのですけれども、例えば語順など、幾つかの点において、日本語と英語では違いがあるということは、5、6年生では気が付いてくると考えます。そのようなことを利用した教育というのはあってしかるべきだと思うわけで、そのような意味で、私は高学年の教科化というのは必然だと思いますけれども、具体的にどういう内容を盛り込んで、何を目標にしていくのかという議論を、やはりもう少し深めていく必要があると思います。

【吉田座長】  ありがとうございました。あと少しですけれども、じゃあ、安河内さん。

【安河内委員】  一回、ビック・ビジョンに話を戻させていただくのですけれども、三木谷委員が主催される新経済サミットに出席させていただきました。ありがとうございます。そこで皆さん英語で話されるわけですけれども、例えばアングリーバードの社長さんはどこですか。ノルウェーですか。

【三木谷委員】  フィンランド。

【安河内委員】  フィンランド出身で、御立派な英語で話されるわけです。あと、いろいろな国の方がいらっしゃいます。ネガティブチョイスとして、英語という共通語があそこでは選ばれているわけですが、そこで使われる、グローバルに使われる英語の定義というものがまだできていないと思うのですね。
 例えば日本人全体で、もうネイティブスピーカーみたいな英語だと、英語圏の人たちが使うような英語、これを目指さなくてはいけないと思っているように感じるのですが、実際には私の言葉で、大津先生の言葉もかりて言わせていただくならば、括弧たるL1(母語)の土台の上に、張りぼての家が建っているぐらいの英語なのですよ。そういう人たちが、グローバルリーダーとしてああいう新経済サミットで活躍されているという姿を見るにつけ、この目指すところを余りにも高いところに置かず、かといって余りにも低いところに置かず、どういうふうに子供たちを育てて最終的に仕上げたいのかという部分が、まだ合意としてできていないんじゃないかということを今日の議論で少し感じました。それが一つ。
 あと、ITの活用についてなのですけれども、私は教員の先生がやはり大事だと思います。藤村委員がおっしゃったように、やはり人間というのは人間と触れ合って成長するものだと思うのですね。とはいっても、日本にいる多くの先生たちが一定水準の授業ができるかというと、今の段階では非常に難しいと思うのですが、そこがITを活用してやる部分だと思うのですね。
 教員の研修に、今、余りITは活用されていないと思うのです。今はDVDを何枚かこれに準拠したものを渡して、それでやってくださいという形なのですけれども、例えば直山先生の説明、ゲームのやり方、それから教え方の説明というのは、私もさっき聞いたのですがすばらしいのです。それを映像に収めて、クラウドで全国の教員の皆さんが自由に日曜日とか土曜日とかに勉強できるようなシステム。
 例えば、英語検定協会では、私たち面接員というのはオンラインでトレーニングを受けて、そのオンライントレーニングに合格しなければ、面接員の資格が継続しないようなシステムがあるのですね。そういうオンラインの教員研修システム、そういう文部科学省のサーバーを通じてクラウドでやるということはどうなのでしょうかという、ちょっとした提案です。それだけです。どうも。

【吉田座長】  ありがとうございました。じゃあ、大津さんもさっきから手を挙げておられるので。

【大津委員】  今、さっき手を挙げて言おうとしたこととは違うのですけれども、安河内さんが「ハリボテ」の話をしましたが、例えばどんなに発音が英語の話者と違っていても、自分の考えを英語を使って相手に伝えられ、そして相手の言っていることを理解できるのだったら、それは私が言う「ハリボテ」には当たりません。

【安河内委員】  ということは、母語の土台の上に立っているこの小屋はいいということですね。

【大津委員】  はい。

【安河内委員】  私もそこを目指すべきだと思います。

【大津委員】   それから、もう一つは、これは全然別のことなのですけれども、私、前回も前々回も感じていたのだけれども、この会議って議論がなされていない。一人一人の委員が「3点意見があります」というのを順繰りに言っているだけで、本当の議論というのが何もないので、それはとても残念だと思っています。その辺は、済みませんけれども、座長、頑張っていただきたいと思うのですけれども、どうでしょうか。

【吉田座長】  ありがとうございます。もう少し時間があれば幾らでもやりたいというところはあるのですが、なかなか難しいです。

【三木谷委員】  一つだけいいですか。

【吉田座長】  じゃあ、三木谷さん、どうぞ。

【三木谷委員】  逆に小学校の教育に携わっている先生にお伺いしたいのですけれども、私は小学校で余り勉強しなかったので済みません、時計を戻すと、自分の担任の先生がとても英語を教えられるというイメージが正直言ってないのです。だから、それ、無理なんじゃないですかって素朴に僕は思うのです。だから、そうするとやはり専科を作るのか、外国人の人を連れてくるのか、あるいはITを使ってうまく題材を使いながら、それを横からアシストするというソリューションしかないんじゃないかなと思うのですけれども、どうですか。

【吉田座長】  じゃあ、藤村さん、どうぞ。

【藤村委員】  今のおっしゃるとおりで、最近、結構中学校の免許を持ったり、英語の高校免許を持ったりしている小学校の教員が増えてきたのですけれども、でも、やはりおっしゃっているように、英語がしゃべれない担任が圧倒的に多いわけですから、担任が進めながらも、やはり英語をきちんと話している人の発音を聞くというのは、やはりALTであるとかICTは大事だと思うのです。ですから、担任は授業そのものを子供たちの様子を見ながら進めるけれども、しかし英語はやはりきちんとそういう外部あるいは専門の方の手を使うということは大事だと思っています。

【三木谷委員】 もう一つ質問。発音に関して言うと、やはり僕自身もハーバードを出ていて、アメリカ人とでもばんばん話せますけれども、僕の発音でも、子供たちに教えるのは疑問だと思うのです。やはりこのnative sound―外国人の先生じゃなくてITでいいのですよ―を聞かせることによって、別にbroken Englishでもインドの人の英語はなかなか発音が悪くても通じるように、それでもいいのですけれども、どうせやるのだったら発音が良い方がいい。

【安河内委員】  モデルはnativeがいいということですよね。

【三木谷委員】  今からやるのだったら、別にあえて最初から発音が悪くてもいいのだということじゃなくて、やはり発音がいい方がいいに決まっているので、それはちゃんとした発音を教えましょうよということかなと思います。

【吉田座長】  まだ議論は幾らでもできると思うのですが、今日はこれで終わりでも何でもなくて、次回も引き続き小学校英語について詰めていきますし、その間に小委員会、前回一応設定が決まりました小委員会の方でも、今日の議論も踏まえていろいろまた検討した上で、それに基づいて次回、またお話を更に進めていきたいと思っています。
 確かに、いろいろ議論し出したら幾らでも一つ一つのポイントは非常に多岐にわたっていますので、そう簡単にまとまると思いませんが、今日のところはとりあえず皆さんいろいろな御意見いただきましたし、それを基に、これから小学校英語について進めていきたいと思います。
 ということで、今後のスケジュールについて、じゃあ、事務局の方から説明していただきたいと思います。

【圓入室長】  それでは、最後のページの資料5の方を御覧いただければと思います。次回第4回でございますが、5月21日の午後で調整させていただきたいと思っております。場所はこちら、同じ部屋でございまして、3F1特別会議室で、今日に続きまして、小学校における英語教育の在り方について御議論をいただければと考えております。
 なお、小委員会を二つ設置ということで、立ち上げの方、御了承いただきましたけれども、指導体制に関する小委員会の方につきましては、なるべくこの有識者会議の後に、次回も調整させていただければと思っております。また、今日、御了承いただいた英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会につきましては、5月以降に第1回ということで、日にちを調整させていただければと思いますので、御審議方、どうぞよろしくお願いします。
 以上でございます。

【吉田座長】  どうもありがとうございました。皆さん、何となく消化不良というような発言もございましたが、なかなかこれは座長として難しい立場にもありますので、皆さんの御協力を得て、今後できるだけ円滑に進めていきたいと思います。
 それでは、本日はこれをもって閉会としたいと思います。お忙しいところ、誠にありがとうございました。

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