【資料1】審議のまとめ

経緯

(1)経緯

○ グローバル化が進展する中で求められる人材育成に対応するため、小・中・高を通じた英語教育においては、児童生徒の言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーション能力を育成する教育課程の改善・充実が図られてきた。
また、政府の提言(※1)においては、英語教員の英語力・指導力の強化や、生徒が英語を使う機会を増やすために必要な指導体制の強化に関する方向性が打ち出された。

(※1)「英語が使える日本人」の育成のための行動計画(平成15年3月)、「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的方策」(平成23年6月)において今後の英語教育の方向性が提言された。

○ これらを踏まえ、国による研修支援や先進的な取組への支援を行うとともに、教育委員会や学校においては、教員及び生徒の英語力などの目標を設定し、研修の充実や外国語指導助手の配置などに取り組んできた。一方で、いまだ、教員の指導力・内容、教科書・教材、指導体制に関する多くの課題が指摘されている。

○ このような中で、第2次安倍内閣に設置された教育再生実行会議では、平成25年5月の第3次提言において、グローバル化に対応した小学校英語の早期化、教科化を含めた初等中等教育段階からの教育の充実(※2)について検討が求められ、翌月閣議決定された第2期教育振興基本計画にも明記された。

(※2)小学校英語の抜本的拡充や中学校における英語による英語授業の実施などについて、学習指導要領の改訂

○ また、教育再生実行会議では、平成26年7月の第5次提言(「今後の学制等の在り方について」)において、英語などの教科指導の専門性に応じた教育の充実、小学校と中学校の連携による英語教育の抜本的充実の在り方、教員養成の在り方等を検討することが指摘された。

○ 文部科学省では、平成25年12月13日に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表され、同計画において示された方向性について、その具体化に向けて専門的な見地から検討を行うため、平成26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」が設置された。

○ 同会議の下に、今後の英語教育を支える「指導体制に関する小委員会」が設置され、学習指導要領の改訂も視野に入れた新たな英語教育の目標・内容などの議論に沿って、これまでの取組の現状と課題を踏まえながら、指導体制に関する専門的・技術的な論点について議論を行った。また、並行して、これに向けた準備期間の取組や、研究開発などでの先取りした取組の在り方について提言をまとめ有識者会議へ報告するものである。

(これまでの審議状況)
平成26年5月21日  第1回
・主な論点(案)審議
平成26年7月25日  第2回
・ペンシルバニア大学 バトラー後藤裕子氏より
「指導体制に関する現状・提言;東アジア諸国の経験を踏まえて」ヒアリング
・指導体制の在り方に関する主な論点(案)審議
平成26年9月 4日  第3回
・審議のまとめ(案)

○ なお、小委員会で審議している内容は、英語教育の改善・充実のため直ちに取り組む必要がある内容のほか、平成26年7月に中央教育審議会に諮問(※3)された教員養成等の検討結果を踏まえた改善が必要な内容も含まれている。これらについては、文部科学省や関係会議等の全体の議論の中で更に検討が行われ、必要な取組を進めることが期待される。

(※3)平成26年7月29日、中央教育審議会において、「1、子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」、「2、これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方について」が諮問された。

(2) 改善・充実の視点

○ グローバル化が急速に進展する中で、子供たちの将来の職業的・社会的な環境を考えると、外国語、特に英語によるコミュニケーション能力は、これまでのように一部の業種や職種だけでなく、生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され、グローバル人材育成(※4)において今まで以上にその能力の向上が課題となっている。

(※4)平成25年6月に閣議決定された教育振興基本計画においては、グローバル化が加速する中で、日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成が重要であるとの指摘がなされ、国際共通語として英語力の向上などが求められている。

○ 多文化・多言語、多民族の人々の交流や、競合と協調が求められるグローバル社会の中では、子供たちが、自ら課題を発見し、他者と協働して、その課題をする解決する能力や情報を活用する能力などを更に重視することが必要である。 
その中で求められるコミュニケーション能力とは、異なる国や文化の人々と臆せず積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、文化的・社会的背景を踏まえた上で相手の意図や考え方を的確に理解し、自らの考えを論理的に説明・発表・討論などを行うことができる能力などが挙げられる。

○ 外国語科において、このようなコミュニケーション能力を育成(※5)するため、子供たちが一方的に教えられる受け身の授業ではなく、ICT等も活用しながら、課題の解決に向けて主体的・協働的に学ぶ授業を通じて、これからの時代に求められる子供たちのコミュニケーション能力を確実に身に付けさせることができる教員の指導力向上の強化、指導・評価、教科書・教材の改善・充実、教員養成・研修等の教育条件整備の充実が極めて重要である。

(※5)現在の学習指導要領は、発達の段階に応じて言語や文化についての理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、4技能を総合的に育成することにより、コミュニケーション能力を育成することを重視している。また、児童生徒が生涯にわたり英語を学習する基盤が培われるよう、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力等を育むために、発表や討論など知識・技能の活用を図る学習活動を発達段階に応じて充実させてきた。

○ このような視点から、今後の英語教育に必要な教員の英語力・指導力向上のための改善・充実を図るために必要な(1)指導・内容、(2)教科書・教材、(3)指導体制、(4)今後の英語教育に必要な教員の養成・採用・研修の在り方、及び(5)英語教育における外部人材の確保などに関する今後の方向性について検討を行った。

今後必要な対応

1 指導と評価

(1) 現状・成果・課題

ア.現状・成果

(指導)

○ 現行の学習指導要領では、小学校高学年に外国語活動を導入し、「聞くこと」及び「話すこと」を中心に指導している。中学校・高等学校では「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の技能を総合的に高める指導を行うこととし、指導語数を増加〔中学校は900語程度から1,200語程度、高等学校は1,300語程度から1,800語程度(「コミュニケーション英語3」までを履修した場合)〕するとともに、教材の題材を充実している。
また、文法はコミュニケーションを支えるものとしてとらえ、文法事項を言語活動と効果的に関連付けて指導することとなっている。

○ 小学校においては、児童や地域の実態に応じて目標を適切に定め指導計画を作成し、計画的、発展的に授業が行われるよう工夫することが求められている。さらに、外国語活動の指導に当たっては、配慮事項として、体験活動を生かすなど児童の発達段階や特性等を考慮することが求められている。

○ また、小学校の学習指導要領では、指導計画の作成や授業の実施において、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行うこととし、授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実することとなっている。指導に当たり、学級担任を中心として英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングが定着しつつある。

○ 中学校及び高等学校の教材については、コミュニケーション能力を総合的に育成するため、実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮したものを取り上げるとともに、日常生活、風俗習慣、物語、地理、歴史、伝統文化や自然科学などの題材から、生徒の発達段階、興味関心に即して適切な題材を取り上げることとなっている。

○ 高等学校では、「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとする」とされている。

【文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H22)」「英語教育実施状況調査(H25)」】
・ 発話を「おおむね英語で行っている」又は「発話の半分以上を英語で行っている」教員は、平成22年度の「英語1」で15%だったが、平成25年度の「コミュニケーション英語1」では53%に、「英語表現1」では47%に、それぞれ増加した。

 

○ 各学校では、学習指導要領に基づき、生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標を「CAN-DOリスト」の形で具体的に設定し、生徒の指導及び評価を一体的に行い、指導改善などに活用する取組が広がりつつある。

(学習評価)

○ 現行の学習指導要領の下での学習評価は、平成22年3月の(※6)中央教育審議会教育課程部会報告において、きめ細かい学習指導の充実と児童生徒の一人一人の学習内容の確実な定着を図るため、学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況を評価(目標に準拠した評価)していくことが求められている。
また、学習指導要領において示された基礎的・基本的な知識・技能、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等及び主体的に学習に取り組む態度の育成が確実に図られるよう、学習評価を通じて、指導の在り方を見直すことなどが重要とされている。学習指導要領に示す内容が確実に身に付いたかどうかの評価を行うことが重要であるとされている。

(※6)「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成22年3月)

○ このことを踏まえ、平成22年通知(※7)では、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「技能」及び「知識・理解」に評価の観点を整理し、各教科等の特性に応じた観点を示している。これら評価の観点については、各設置者は、学習指導要領に示す目標を踏まえ、この通知で示された外国語活動や外国語の評価の観点を参考に設定することとされている。また、各学校においては、観点を追加して記入できることになっている。さらに、国立教育政策研究所の「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」では、各学校において学習評価を進める際の参考資料として、評価規準の設定の方法や評価方法等の工夫改善例が示されている(※8)。

(※7)平成22年5月通知「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」
(※8)小学校の外国語活動の学習評価については、「(1)コミュニケーションへの関心・意欲・態度、(2)外国語への慣れ親しみ、(3)言語や文化に関する気付き」の三つの評価の観点例を示し、設置者がこれを参考に学習指導要領の目標に沿って評価の観点を設定することとし、文章の記述による評価を行う。中・高等学校の外国語科では、(1)コミュニケーションへの関心・意欲・態度、(2)外国語表現の能力、(3)外国語理解の能力、(4)言語や文化についての知識・理解の4観点から評価が行われる。そのうち、(2)(3)については技能のみではなく、思考力・判断力・表現力等が含まれる。国立教育政策研究所でまとめた「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」においては、学習指導要領の内容の言語活動における「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」をまとまりとして、それぞれの評価規準に盛り込むべき事項及び評価規準の設定例を挙げている。

○ 中・高等学校では各学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆる「CAN-DOリスト」の形で設定し、評価においても活用する取組が進んでいる。そのような取組の中で、複数の県の公立学校において、高校の英語の授業のかなりの部分が英語で行われ、自信をもって英語で発言する生徒が増えている事例も多い。

【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・ 平成25年時点で、中学校の17%、高等学校の34%でCAN-DOリストが作成済みである。また、民間の調査によれば、これからCAN-DOリストを設定する予定の学校を含めると6~7割に達すると想定される(公益財団法人日本英語検定協会「外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定に関する現状調査(2013)」)。 

 

○ このような取組を通して、中・高等学校において、教員、生徒間において学習到達目標を共有し、課題を把握することで、指導と評価が一体的に行われ、授業改善や英語力の向上などの成果が見られるようになった。

イ.課題

(小学校)

○ 外国語活動への取組が充実してきたものの、地域や学校、教員によりその趣旨の理解や指導方法・体制などに差があるという指摘がある。また、ネイティブ・スピーカー若しくは母語話者レベルの外国語指導助手(以下、「ALT」という。)や英語が堪能な外部人材が授業へ参加する回数、それらの質的な確保の状況から、地域や学校によって指導面でのばらつきがある。

○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じていることが指摘されている。また、中学生1年生の7割以上が小学校で「英語の単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、小学校・中学校の間で音声から文字への移行が円滑に行われていないとの指摘があった。

○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。また、小・中連携の取組の内容は、情報交換が多く、連携の効果が期待される取組を行っている例は少ない。

○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、「年間指導計画」や「単元計画指導案」の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっており(※9)、効果的な指導法や指導計画の作成に関する研修機会は十分とはいえない。

(※9)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」

(中学校・高等学校)

○ 中学校・高等学校では、英語を理解し考えながら表現できるコミュニケーション能力を身に付けることを目標として設定している。一方で実際には「4技能を用いて何ができるようになったか」よりも、「文法や語彙等の知識をどれだけ増やすことができるか」という視点で授業が行われているとの指摘があった。
また、日常生活、風俗習慣、物語、地理、歴史、伝統文化や自然科学など現行の学習指導要領に示された題材の扱いや、単元ごとの目標設定が適切に行われていないとの指摘があった。
さらに、文法がコミュニケーションを支えるものとして捉えていない、又は英語による指導が十分でないため文法事項を言語活動と効果的に関連付けて指導が行われていない事例もあるとの指摘がある。

○ 中学校・高等学校の教員の英語使用状況や(※10)、生徒が英語で言語活動をする場面の設定状況をみるといまだ英語によるコミュニケーション能力を育成するには十分ではない状況にある。生徒が英語に触れる機会を充実する観点から、教員自身の英語力を向上するとともに、英語で授業を行う取組を更に推進する必要がある。

(※10)授業において「発話の半分以上を英語で行っている」教員は、中学校1年は44.5%、2年生は42.9%、3年生41.2%、
高等学校は、全体的には改善されつつあるものの、「発話を半分以上英語で行っている」教員は、平成25年度普通科等の「コミュニケーション英語1」53%、同「英語表現1」47%。
・英検準1級程度以上を取得している中学校教員の割合は27.9%
・高等学校は平成22年度が49%、平成25年度が53%で、3年間で4%の伸び
・授業においてペア・ワーク等で生徒が英語で言語活動をする場面を半分以上設定しているのは、中学校1年生52%、2年生47%、3年生43%。同様に、高等学校では「コミュニケーション英語1」で41%、「英語表現1」で42%となっている。

○ 「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標は、全ての学校において設定する地域と現時点でほとんど設定が進んでいない地域があるなど、ばらつきが大きいことから今後の指導における影響が大きいと考えられる(※11)。また、「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定はしていても、それが実際の指導や評価において十分には活用されていない事例が見られる。学習到達目標を設定する意義や方法とともに、年間指導計画・単元計画の作成、学習評価において活用され学校の指導改善等につながる取組として促す必要がある。

(※11)中学校は17.4%の学校が設定し、その内、設定した学習到達目標の達成状況を把握している学校は66.8%にとどまっている。高等学校は平成23年度の4%から平成25年度の34%に増加している。

○ 平成25年3月に文部科学省でとりまとめた「各中・高等学校の外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引き」では、「外国語を用いて○○できるようになる」という観点から評価を行う場合、観点別学習状況の評価における外国語の四つの観点のうち、「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」を評価するのに適しているとした。また、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」及び「言語や文化についての知識・理解」の観点は併せて評価する必要があるとされた。一方で、「○○できる」という能力記述文で示す「CAN-DOリスト」の形での学習評価は、目に見える行動だけが評価の対象となってしまう危険があり、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」及び「言語や文化についての知識・理解」の評価にはなじまないとの指摘があった。

○ 中・高等学校でそれぞれどのような指導と評価が行われているかについて互いに情報不足で、中・高等学校の連携が不十分であるとの指摘もある。発達段階によっても効果的な指導方法は異なることから、指導計画の作成や内容の扱いにおいて、学校段階間の学びの円滑な接続に関する課題について共有し、実際の指導・評価を改善する必要がある。

(2) 指導・評価に関する改善の方向

(小・中・高等学校の共通事項)

○ 指導と学習評価については、外国語における次期学習指導要領の目標・内容の改善に伴い、その特性を踏まえた多様かつ実践的な授業を展開するため、子供たちの多様な実態と発達段階に即した柔軟かつ優れた指導方法や学習評価の方法を確立する必要がある。

○ 指導は、児童生徒の学びが小・中・高等学校間で円滑につながるような指導を行うことが必要である。学習評価は、評価によって学習者に学ぶ意欲を喚起し、自信を持たせるとともに、今後の学習に向けた指針として示されることが重要である。学習指導要領に定める目標に準拠した評価では、教員に対し、児童生徒一人一人の学習の確実な定着のために意欲的に取り組めるような授業の計画と、指導の改善を継続的に行うことが教員に求められている。また、そのために評価方法の妥当性・信頼性を担保するための改善・工夫が必要である。

○ 外国語活動・外国語の目標は、(1)言語や文化に対する理解を深め、(2)積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、(3)「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」、「書くこと」などのコミュニケーション能力を養うこととされている。各学校では、学習指導要領の目標・内容に基づき、単元ごとの学習到達目標の設定と、それに沿った指導計画を作成するとともに、前述の(1)から(3)に沿った効果的な評価を行う必要がある。

○ また、生徒に求められる英語力向上を達成するため、指導計画の作成に当たり、前述の(3)の技能部分に係る具体的な学習到達目標は「CAN-DOリスト」の形で設定する。その際、教科書等の教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、それら全体構想を教員間で十分に共有しながら、学校及び学年・科目ごとの学習到達目標を設定し、指導方法や評価方法を工夫・改善する。

○ 学校教育法第30条2項で示されている「主体的に学習に取り組む態度」(※12)を評価するには「関心・意欲・態度」において評価を行うこととされており、学力の重要な要素として評価を行う必要がある。このような観点から、英語教育の評価の観点である「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」について積極的に評価を行い、それらを育んでいくことは重要である。

(※12)中教審教育課程部会報告より「改正教育基本法においては、学校教育において自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視することが示されるとともに、学校教育法及び学習指導要領の改正等により、主体的に学習に取り組む態度が学力の三つの要素の一つとして示されている。 また、我が国の児童生徒の学習意欲について課題がある状況を踏まえると、学習評価において、児童生徒が意欲的に取り組めるような授業構成と継続的な授業改善を教師に促していくことの重要性は高い。さらに、主体的に学習に取り組む態度は、それをはぐくむことが基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成につながるとともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成が当該教科の学習に対する積極的な態度につながっていくなど、他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある。」と指摘されている。

○ 観点別学習状況の評価における「関心・意欲・態度」は、独立してあるものではなく、「他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある」とされ、対象となる学習の単元における四つの観点は、単元における学習と一体的に評価が行われる必要がある。

○ このため、「関心・意欲・態度」以外の三つの観点のうち、その単元の最も重視したい観点に示されている評価内容として、例えば、「外国語表現の能力」として「○○できる」とする観点から評価を行う事項を、「関心・意欲・態度」の項目として「外国語を用いて○○しようとしている」と表現を置き換え、その単元における両面からの評価を行うことによって、生徒がコミュニケーションへの関心をもち、自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を身に付けているかどうかを評価することが重要である。

○ 具体的な評価方法としては、筆記テストのみならず、面接、エッセー、スピーチ等のパフォーマンス評価、活動の観察等の効果的な評価方法から、その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択することが重要である。

○ 小・中・高等学校における効果的な指導及び評価の在り方について、これまでの先行的な取組における成果・課題や、「英語教育強化地域拠点事業」(H26年度~)の状況を検証し、得られた結果を次期学習指導要領の改訂から全面実施に至るまで活用する。その際、評価が学びの改善につながるようなPDCAサイクルの構築を進める。

○ 次のような方向性を踏まえつつ、今後、大学等と連携協力による小・中・高を通じた先進的な指導・評価の取組を、国が積極的に支援する必要がある。

(小学校)

○ 小学校中学年から外国語教育を開始することを前提として、言語や文化についての体験的理解に加え、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うとともに、小学校高学年から卒業時までにコミュニケーションへの積極性やコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせる指導法等の在り方について検討する。

○ 小学校中学年においては、これまでの高学年における外国語活動の実績を踏まえつつ、児童の発達段階に留意した指導内容や活動の設定、他教科等との連携強化を意識した効果的な指導方法等を更に充実・強化していく必要がある。

○ また、高学年においては、小学校と中学校の連携の効果が期待される相互乗り入れの授業、カリキュラムづくりの連携、共通理解を図り相互の効果的な指導計画作成などを行う合同研修などの具体的な小中連携による指導を更に充実・強化していく必要がある。

○ 小学校段階における評価の在り方については、先行事例における活動型及び教科型の評価の状況を検証する。小学校中学年では、外国語学習の初期段階であり、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて、これまでの高学年における外国語活動の実績を踏まえつつ、発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する。

○ 小学校高学年では、教科として位置付けるに当たり、英語の特性及び高学年の発達段階を踏まえながら、文章記述による評価や、数値等による評価など適切な評価方法について、学校教育全体の中でのバランスをとる方向で引き続き検討する。

(※13)平成20年中教審答申では、「小学校における外国語活動の目標や内容を踏まえれば一定のまとまりをもって活動を行うことが適当であるが、教科のような数値による評価はなじまないものと考えられる」と指摘された。

○ なお、小学校での評価に当たっては、学習の初期段階であることを踏まえ、高学年においては、語彙や文法の知識量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、
・コミュニケーションへの関心や意欲、
・積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度
・「聞くこと」や「話すこと」などの技能
について評価することも考えられる。その際、学習者に過度の負担とならないように配慮しなければならない。このことは、小学校と中学校の接続を検討する際にも極めて重要である。

(中学校・高等学校)

○ 中学校では、小学校における外国語活動、外国語及び高等学校における外国語との接続に留意して、指導計画を適切に作成する必要がある。また、内容に踏み込んで英語による言語活動を中心とする授業を構成することが重要である。そのため、授業を実際のコミュニケーションの場とする観点から、授業を英語で行うことを基本とする。
高等学校でも、現行の学習指導要領に引き続き、授業を英語で行うことを基本とする。その際、中学校・高等学校とも、その狙いが「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため」であり、また同時に「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮する」ことを前提としていることを理解することが重要である。

○ 中・高等学校では、目標・内容の改善・高度化に伴い、「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定、扱う言語活動の高度化(発表、討論、交渉等)に対応した指導、パフォーマンステストを活用した4技能の総合的な評価及び小学校と中学校、中学校と高等学校の連携を意識した具体的な指導方法等について検討する。

○ その場合、中学校・高等学校段階における評価の在り方については、「英語を用いて何ができるか」という視点を中心とし、指導改善においても活用する。パフォーマンス評価や観察等などの具体的な評価方法について検討を行う。検討においては、これまでの観点別学習状況の評価とともに、各学校における「CAN-DOリスト」の形での評価及びパフォーマンステスト等を活用した効果的な評価の取組を検証し、それらの結果を広く普及・活用する。

2 教科書・教材

(1) 現状・成果・課題

(小学校)

○ 小学校における外国語活動においては、国により作成された小学校外国語活動教材例、「Hi, friends!」が希望する約2万校の学校に配布され、地域、学校、学級の実態に合わせて工夫・活用がなされている。また、児童の多くが外国語活動の授業や外国語学習に対して肯定的であり(※14)、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成されてきている。

(※14)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」によれば、「外国語活動の授業が好きか」という質問に肯定的な回答を示している5年生の割合は77.0%、6年生の割合は66.5%、両学年平均71.7%。さらに、25年度学力調査・意識調査において同質問に対する肯定的な回答の割合は76%。前調査によると、「英語が使えるようになりたいか」という質問に肯定的な回答をした児童の割合は、91.5%。

○ 中学1年生対象による調査(※15)では、外国語活動の授業で、「もっと学習しておきたかったこと」の回答の割合として、「英語の単語を読むこと」が77.9%、「英語の単語を書くこと」が81.7%、「英文を読むこと」が77.6%、「英文を書くこと」が78.6%であり、音声中心の活動に比べ10ポイントほど高い数値である。小学校の外国語活動で音声中心に学んだことが、中学校での段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていないこと、発音と綴(つづ)りの関係の学習や文構造の学習に課題があるなどの指摘があった。

(※15)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」

○ このような状況を踏まえ、小学校の外国語活動が導入されて一定の成果を上げているものの、中学校での学習への円滑な接続を考えると、小学校高学年段階において、文字の扱いや文構造への気付きなど、中学校との接続を意識した指導に有効な教科書・教材が必要である。

(中学校・高等学校)

○ 生徒の言語活動の充実と、4技能にわたる総合的なコミュニケーション能力を育成するためのものとして教科書が活用され、学習指導要領の内容が授業に生かされているかどうかについて検証を行う必要がある。

○ 現在の中学校・高等学校の教科書の中には、その構成上、結果的に文法事項の定着を図る様々な活動に分量の多くがとられているため、言語材料を活用しながら内容に踏み込んで、説明・発表・討論することを通じて、思考力・判断力・表現力などを育成するような言語活動の展開が十分に意識されていないと思われるものも見られる。

○ 文法事項についても、言語活動との関係で十分な文脈が与えられていないため、実際のコミュニケーションの場面で、その文法を使うことができるようになるための構成になっていない場合が多いとの指摘もあった。

○ このような状況を踏まえ、学習指導要領に基づき総合的なコミュニケーション能力を育成する言語活動の展開を重視した教科書が多数発行されるよう、各発行者に対して十分周知するとともに、(2)で示すような改善が求められる。

(小・中・高等学校の共通事項)

○ 先進的な取組を行う一部の学校においては、タブレットPC 、電子黒板、テレビ会議システム等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において児童生徒同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成する取組が行われている。

○ 学校におけるICT教育に必要な環境整備と活用は、一部の学校・地域では進んでいるが、全国的に見ると英語教育におけるICTの環境整備と活用は十分と言えないとの指摘があった。英語教育の充実・強化に当たり、これらの充実を促す必要がある。

(2) 教科書・教材に関する改善の方向

(小学校)

○ 先進的な取組も含めたこれまでの外国語活動の成果・課題を踏まえ、小学校中学年では、発達段階に応じた外国語活動に必要な教材の開発を行う。小学校高学年では、教科化に伴って教科書の整備が必要となる。また、教科化され、教科書が整備されるまでの間、国において、中学校との円滑な接続を意識した新たな補助教材を作成する。それにより、アルファベット文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す指導ができるようにする。

○ 新たな教材については、小学校中学年における外国語活動、高学年における外国語の教科化において求められる教材等として、国の「英語教育強化地域拠点事業」における研究開発校等において、平成27年度より試行的に活用しながら、その効果を検証する。さらに、小学校高学年の教科化に向け、新学習指導要領移行期に各学校において活用することを想定した教材開発を行う。

(中学校・高等学校)

○ 今後の英語教育において求められる教科書・教材の内容や構成については、世界的に広く用いられている教材を参考にしつつ、英語が第二言語ではなく外国語である我が国の環境も踏まえ、英語で学ぶことを基本とした授業を通した総合的なコミュニケーション能力の効果的な育成に資する教科書・教材の開発が必要である。

○ 今後の教科書・教材については、授業において効果的にコミュニケーション能力を育成するため、文法事項などの言語材料と、言語の使用場面や働きを意識した言語活動とが効果的に関連付けられた授業をより一層展開しやすいように構成等を工夫することが必要である。あわせて、言語材料については、小・中・高等学校を通じて、比較的易しいものから段階的に繰り返し触れることによって定着が図られるものが望ましい。

○ さらに、できる限り多くの英語に触れる機会を増やして英語を英語のまま理解することができるようにするとともに、思考力・判断力・表現力などを養うという観点が重要である。

○ 教科書・教材の作成・活用に当たり、次期学習指導要領の改訂において、そのような趣旨をより徹底するとともに、教科用図書検定基準の見直しに取り組むべきである。

(小・中・高等学校に共通する事項)

○ 小・中・高等学校の外国語学習においては、効果的な学習方法として、先進的な学習教材の活用事例の共有、発信を行う。さらに、音声も含めた学習効果の高いコンテンツの導入、個別学習や協働学習(※16)などの学習活動に応じた多様な教材や、ICT活用を推進するためのハードウェアの充実を促進する。

(※16)「学びのイノベーション事業」報告書では、「「個別学習」では、デジタル教材などの活用により、自らの疑問について深く調べることや、自分に合った進度で学習することが容易となる。また、一人一人の学習履歴を把握することにより、個々の理解や関心の程度に応じた学びを構築することが可能。」、「「協働学習」では、タブレットPC 、電子黒板等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において子供同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成することが可能となる。」とまとめている。

○ 教育の情報化に向けて、平成26年度から4か年にわたり総額6,712億円の地方財政措置がなされており、これを十分に周知し、英語教育を含むICT活用に必要な環境整備、学習用ソフトウエア、ICT支援員の活用について、地方公共団体における予算措置を促進する。

○ 今後、国において「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討(※17)を行う。その際、デジタル教科書・教材が導入される際は、教科書には音声や映像データが含まれるという考え方を明確にする必要がある。

(※17)政府の世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月14日IT総合戦略本部、平成26年6月24日全部改定)工程表において、「「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討」、「「デジタル教科書・教材」の導入・普及促進に向けた環境整備」を行うこととされている。

 (参考) 地方交付税によるICT活用への支援
     ・ 教育用コンピュータ、電子黒板、無線LAN等の整備
     ・ 学習ソフトの整備
     ・ ICT支援員の配置等 

 

3 指導体制

(1) 現状・成果・課題

ア.現状と成果 

(小学校)

○ 小学校では、学習指導要領において、
・指導計画の作成と授業の実施については、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行うこととし、
・授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実することとされている。

○ 平成23年度に小学校高学年に外国語活動が導入されて以降、多くの学校で学級担任とALTなど英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングによる指導体制が整備・充実が図られてきた。
小学校の教員は、その養成課程で外国語教育に必要な指導法等に係る養成を必ずしも経ていないが、現職研修等で外国語活動の授業づくりの習得に努め、工夫を重ねながら特色ある教育活動を行って成果をあげてきた。

○ ALT等の外部専門人材は、現在1万2000人(うちJETが4,000人であり、また、自治体の直接任用、労働者派遣契約によるもの及び請負契約によるものなどを合計すると約8,000人)となり増加傾向にある。

○ 教員とALTの連携による取組としてふるさと教材の開発や、外国語以外の教科でもALTを活用する取組も見られる。

【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・ すべての英語の授業のうち小学校の58%、中学校の21%、高校の8%においてALTが活用されている。
・ 小学校ではALTによるティーム・ティーチングが増加。 

 

イ.課題

○ 小学校では、授業準備等の時間確保、教員の指導力、学級担任とALT等の外部人材との打合せの時間確保、小・中学校の連携の具体的な工夫などが課題として指摘されている(※18)。

(※18)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」

○ ALTについては、地域や学校、教員によりその取組に差があり、補助的立場にあるALTに指導を任せてしまうという事例もある。また、ALTの労務管理上、一部に学級担任等とALTとがティーム・ティーチングができない状況もある。
また、ALTの指導力の質向上や、 JET-ALTへの生活支援の充実、 地方自治体における財政負担、 活用状況の地域間格差(半年に1回程度しか訪問がない学校も)がある。

【ALTに関して指摘される課題】
・ 教員とALTの打合せや研修時間の確保
・ ALTの指導力の質向上
・ JETへの生活支援の充実
・ 地方自治体における財政負担 

 

○ 小学校高学年の英語教育が教科化される場合、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成・採用が必要である。一方で、現状は、小学校で専科指導を行っている学校の割合は低く(※19)、小学校教員で中学校英語科の免許状を有する者は約4%という状況で、必ずしも英語教育に関わっていない。

(※19)文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H25)」より、5年生は5.8%、6年生は6.2%

○ これまでの小学校の学級担任を中心とした外国語活動における成果を十分に認識しながら、小学校における指導体制の在り方を検討するとともに、次期学習指導要領の改訂と並行して準備段階における専科指導者の養成・確保への支援が急務である。

(中学校・高等学校)

○ 高等学校における言語活動の高度化及び高等学校に円滑に接続することを前提とした中学校における基礎的な言語活動に対応できる指導力、英語コミュニケーション力、異文化体験等を有した教員の養成・採用が課題となっている。

○ 学習指導要領において、指導計画の作成に当たっては、ネイティブ・スピーカーなどの協力を得ることとされている。一部の地域では、実際の言語活動においてALTを積極的に活用しコミュニケーション能力向上を図るなどの取組がなされているが、中・高等学校の授業におけるALTの活用時間の割合は低い状況にある。

(小・中・高等学校に共通する課題)

○ 小・中・高等学校の教員の多くは指導力を向上させたいと感じているが、地域における研修機会が少ない、多忙により参加できないといった状況がある(※20)。

(※20)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」より、小学校では、学校の状況が「十分でない」又は「どちらかといえば十分でない」項目として、「準備等の時間確保」、「教員の指導力」、「小・中の連携」等を挙げる教員が多い(それぞれ80%、58%、74%)。英語担当教員に対する集中的な研修の実施状況は、都道府県主催47.8%、市町村主催8.4%。

○ これまでの各学校での取組は、各英語の教員個人の指導に任され学校全体でチームを組んで取り組むことが少なく、生徒指導、部活動などの対応もあることから、学校内外で教材研究や研修を行う時間の確保や、それら成果の共有ができない状況にあるとの指摘があった。また、国や地方公共団体の指定校の研究成果や、大学等との連携による質の高い養成・研修等に関する情報が蓄積されておらず、それらの効果的な活用がなされていないとの指摘もあった。

○ このような状況を踏まえ、子供たちが外国語を通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するため、学校内における教員や外部専門人材がそれぞれ専門性を連携して発揮し、学校組織全体で一つのチームとして力を発揮することが重要である。また、大学や外部専門機関との連携により、英語教員の養成・研修を改善・充実することが必要である。 

○ 英語教員及び英語が堪能なALT等の外部専門人材の配置や、地域における指導体制について、地域間、学校間における差があるため、必要な支援体制として、地域の英語教育を推進する指導者の確保、教育委員会と学校間の連携による効果的な養成・研修の実施、英語の外部専門人材を活用など、地域における戦略的な指導体制の強化が必要である。

(2) 指導体制に関する改善の方向

1 小・中・高等学校に共通する指導体制

(地域・学校における指導体制)

○ 各学校においては、校長の方針や各教員の取組によって意識や取組の差があることが指摘された。各学校においては、英語教育を担当教員任せにせず、校長がリーダーシップを発揮し、学校全体の取組方針を明確にした上で、全教員の共通理解を図りながら、中核教員を中心とした校内の英語教育に係る指導体制の強化に取り組むことが重要である。
指導体制の強化においては、(1)効果的な教材の開発とともに、(2)生徒のコミュニケーション能力を総合的に育成することができる指導者の確保を含めた充実が必要である。

○ 教育委員会においては、各学校における英語教育充実のため、学校や地域全体で取り組むことが必要である。例えば、市町村単位で、地域の指導的立場にある教員が複数の小・中学校を受け持ち、英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで、柔軟かつ効果的な指導を行う体制づくりが期待される(※21)。

(※21)中央教育審議会26文科生第253号諮問(平成26年7月29日)において、これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方について諮問がなされた。

○ また、優れた指導力を有する教員を、地域の研修講師や小・中学校の接続を前提とした専科指導等が可能となる「英語教育推進リーダー」として養成する。

○ このような体制の中で、小・中・高等学校の一貫した英語教育や、小学校の英語教育の専門性の向上等を推進することが期待される。
具体的には、「英語教育推進リーダー」と英語教育担当指導主事等が中心となって、小・中・高等学校の連携による研修や、教員委員会と大学・外部専門機関との連携による研修などを実施するとともに、各学校を訪問し、指導計画の作成やCAN-DOリストを活用した授業改善などについて指導・助言を行うことなどが期待される。

○ 国や地方公共団体の指定校の研究成果や優れた先進的な取組、各地方公共団体において目標設定・評価を行う取組、大学等との連携による養成・研修等の全体の成果・効果、課題を調査・分析し、域内の研修や各学校への指導・助言に生かすことが必要である。

※平成26年度より、各都道府県教育委員会において掲げられている目標設定(例)
  毎年フォローアップが行われる予定
   ・ 外部試験活用による英語力向上(教員・生徒)  
   ・ 学習到達目標(CAN-DOリスト)策定状況(%)        
   ・ パフォーマンス評価実施状況 
   ・ 生徒の英語による言語活動時間の割合
   ・ 教員の英語使用状況の割合                  
   ・ 学校の指導体制の整備 (域内・校内研修体制、担当教科主任の配置など)

 

(小学校)

○ 小学校の外国語活動において、ALTや外国語が堪能な地域人材とのティーム・ティーチングを行いながら、その発達段階に応じて児童の実態を把握し、指導に生かすことができる学級担任が果たしてきた役割は重要である。

○ 小学校中学年へ外国語活動を導入する場合は、地域の実情を踏まえ、学級担任とALTや専科指導を行う教員、学級担任との英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングを行うなど柔軟な指導体制が整備されることが必要である。

○ また、小学校高学年の教科化においては、専科指導を行う教員を含めた、より専門性を重視した指導体制について検討する必要がある。小学校の学級担任の役割として、指導計画立案、教材準備、授業における児童への働きかけ、評価などが求められる。専門性を重視した体制として、(1)担任を持ちながら高学年の教科担任として複数学級の専科指導を行う教員が授業を実施(その場合、他の教科の教員と専門性が求められる授業を持ち合いで対応)、(2)担任を持たず高学年の専科指導を行う教員が学級担任と連携しながら授業を実施する事例が少なからず見られる。次期学習指導要領の改訂においては、このようなケースを想定した指導体制も視野に指導者の養成・確保を充実することが必要である。

○ 小学校の指導者は、中長期的な観点から指導者の指導力向上が必要であり、当面は現職教員の研修等を充実する。高学年における教科化においては、教科指導に当たるための英語力・指導力のある人材を養成することが重要である。

○ これらの指摘を踏まえ、小学校高学年における英語指導に求められる指導体制を強化するため、求められる教員と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、次のような観点から具体的な指導体制の改善を進めることが必要である。

  • 児童への指導に当たっては、英語教育に関する専門性を前提としながらも、児童理解の観点、他教科等と連動した学習内容・活動を行う観点、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。
  • その際、学級担任が重要な役割を果たすこととなるが、あわせて、小学校教育に対応できる専科指導に当たる教員を積極的に活用することも必要である。
  • 加えて、外国語講師や、補助的な役割を果たす外国語指導助手(ALT)、英語が堪能な地域人材等の活用など、地域の実情に応じた指導体制を充実させることが重要である。
  • 外部専門人材の活用に当たっては、小学校高学年の教科化において、専門性を有する適切な人材に特別免許状を積極的に授与し活用することや、英語が堪能な地域人材、英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するための方策も講じる。
  • また、外国語活動において役割を果たしてきた学級担任の中で、更に小学校高学年の専科指導にも当たることができるよう「免許法認定講習」の開設を支援し、例えば、小学校の現職教員が、中学校の免許状を取得し専科指導が可能となる環境を整備する。
  • 小学校における外国語活動では、外国語を使った活動を通じて、人とコミュニケーションを図る大切さや楽しさを体験し、国際理解を図り、視野を広げることを目的として、ALT等の外部人材の活用などによる指導体制の充実を図る。
  • 小学校における学級担任と外部人材の連携については、それぞれの役割を明確にしつつ、適切かつ適正なティーム・ティーチング等が行われるための体制整備の充実を図る。

(例)
・ 学級担任、外部人材に求められる役割の明確化、連携の在り方
・ 外部人材として、外国語指導助手(ALT)
・ 地域人材などの活用促進方策(配置拡大、ガイドラインの策定等)
・ ALT等向けの研修強化・充実 等 

 

○ 小学校段階では、積極的に外国語を聞いたり話したりすることを重視する必要があり、専門性の高い教員との連携、外部人材やICTの活用を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。

(中学校・高等学校)

○ 中・高等学校における英語指導に求められる指導体制を強化するため、求められる英語担当教員と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、次のような観点から具体的な指導体制の改善を進めることが必要である。

  • 指導に当たっては、英語教育に関する高い専門性を前提としながらも、他教科等と連動した学習内容・活動の実施等に対応できる指導者が求められる。
  • 授業は生徒の理解の程度に応じた英語で行うことを基本としつつ、習熟度別指導や少人数指導などの工夫を可能とする指導体制を確保する。
  • 授業を英語で行うことを基本とすることを前提に、会話からディベートやディスカッションなどで、実際に英語を活用するという観点から、外国語講師ALT、地域人材の活用などによる指導体制の充実が必要である。
  • 外部人材の活用に当たっては、専門性を有する適切な人材に対しては特別免許状を積極的に授与するための方策を講じる。

 (例)
・ 英語担当教員と外部人材に求められる役割の明確化、連携の在り方
・ 外部専門人材として、ALT、英語が堪能な地域人材などの活用促進方策(配置拡大、ガイドラインの策定等)
・ ALT等向けの研修強化・充実  等

 

○ 中学校・高等学校段階では、言語活動の高度化に対応するため、外部人材やICTの活用を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。

(外部専門人材の確保)

○ 児童生徒が英語に触れる機会を充実するため、英語を母国語とする外国人やこれに準ずる者を教員として受け入れ、単独授業を含む教育活動全般に登用していくことも必要である。各都道府県教育委員会においては、文部科学省が示した指針(※22)も参考とし適切に基準を定め、各学校が特別免許状制度を活用した効果的な英語教育を行えるよう、外国人も含め英語力・指導力の高い外部専門人材を活用することが期待される。
また、英語が堪能な地域人材や英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するための方策も講じる。その際、自治体においては、必要な外部専門人材の確保が困難な学校もあることに配慮した適切な配置等を行うことが必要である。

(※22)平成26年6月19日「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」の策定について(文部科学省通知)

○ 児童生徒がネイティブ・スピーカーとのコミュニケーションを通じて、
(1) 標準的な英語音声に接し、正確な発音を習得する、
(2) 間違いを恐れずに、英語で情報や自分の考えを述べるとともに、相手の発話を聞いて理解するための機会が日常的に確保されることが重要である。そのため、外国語講師、ALT、地域人材等の活用など、指導体制を充実させることが大切である。少なくとも、次期学習指導要領の実施が想定される2020(平成32)年度の前年度までに、その質を確保しつつ、すべての小学校にALTが確保できるようにする必要がある。

○ JETプログラムについては、地方公共団体における採用数がピーク時よりも減少している中で、自治体の財政的・手続的負担軽減を支援しながら、その採用を促すことが必要である。

 【JETプログラムの周知】
・ JETについては総務省・外務省との共同事業として、地方財政措置されていることを周知。
・ 自治体の事務負担を軽減するため、JETプログラム・コーディネーターの配置を奨励(地方財政措置)。
・ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正に伴い、各地方公共団体に設置されることになった総合教育会議において、首長と教育委員会がJETプログラムについても協議・調整することも有効。

 

○ JETプログラムの任期を終了したALTには、引き続き国内で就職したり国内外で活動する日本企業に就職したりすることを希望する者も少なくなく、関係機関や産業界とも連携しながら、そうした取組を支援する。

○ 外国語講師、ALT、英語が堪能な地域人材等の外部専門人材の活用において、それらの質を担保しつつ、効果的かつ、適切な運用を図るためのガイドラインを整備することも重要と考えられる。今後、モデルとなるガイドラインを策定し、地方公共団体、各学校において地域の実情を踏まえた活用を促す。

[策定に当たり留意する点]※ガイドラインは別途作成  
・ネイティブ・スピーカー等の外部専門人材については、意欲と能力のある者を積極的に活用。
・生きた英語に触れる機会の提供や児童の英語学習への動機付け、異文化理解促進の観点から、授業等において一定程度、活用することが望ましい。
・その場合、教員がクラス運営の観点から、指導計画の作成、授業の実施、評価を主体的に行うことが重要。
・外部専門人材については、外国語指導法等について少なくとも一定の研修を受けていること、又はそれに相当する経験等が必要。(教員資格や外国語教授プログラム履修歴等)  等

2 教員の養成・採用

ア.現状・成果

○ 小学校に外国語活動が導入されて以降、その特性から、小学校の免許状に関し、英語教育指導法は必須となっていない。

○ 中学・高等学校の免許状に関し、大学の教員養成課程では「教科に関する科目」として、英語学、英米文学、コミュニケーション、異文化理解が柱となっているが、生徒のコミュニケーション能力育成に必要な指導力を向上するための改善をすべきとの指摘がある。

○ 公立学校における教員採用に関し、英語(英会話)の実技試験は、中学校で66県市、高等学校で55県市が実施している。資格・検定試験の結果により、採用試験の一部が免除される県市は17県市となっている。
国は、教育委員会に対し、高度な英語力と指導力を有する者の採用を促している。

イ.課題

○ 小学校高学年の英語教育を教科化するに当たり、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成が必要である。

○ 中学校では、高等学校における言語活動の高度化及び高等学校に円滑に接続することを前提として、基礎的な言語活動に対応できる指導力や英語力をもった教員の養成・採用が課題となっている。

 【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・ 公立学校の英語担当教員の英語力について、英検準1級以上、TOEFL iBTスコア80以上又はTOEICスコア730以上の者の割合は、全国平均で、中学校で28%、高等学校で53%となっている。
・ 高等学校の「コミュニケーション英語1」の授業で「発話の半分以上を英語で行っている」教員は53%となっている。
・ これらの状況について、都道府県間で違いが大きい。

 

○ 英語教員の養成を通じて、英語力に関し、4技能を通じて高いコミュニケーション能力と指導力が修得されるよう、教員養成課程の質を一層向上させる必要がある。

○ 小・中・高を通じた英語教育改革の実施に当たっては、指導者としての教員の資質能力を向上させる観点から、教員養成課程を見直す必要がある。

○ あわせて、教員採用においても英語力・指導力の高い者を採用する必要がある。

ウ.改善の方向

(小学校)

○ 小学校教員養成課程では、小学校中学年から外国語活動を導入するに当たり、その目的、目標、指導法、授業実践、教材開発・活用法、教室英語の活用などに加え、児童の発達、他教科等での学習内容、学級経営等についての知識理解等を取り扱う必要がある。

○ さらに、小学校高学年の外国語を教科化するに当たり、小学校段階で系統的な指導を行うため、児童の発達段階に応じた、英語を「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の四つの技能にわたる総合的なコミュニケーション能力を身に付けるための英語指導力を高める内容が求められる。そこで、養成課程において英語指導法に関する科目を履修させることについて検討が必要である。その際、学習指導要領の内容を踏まえた指導計画の作成、模擬授業、教材研究、効果的な評価方法などの内容を含むことが必要である。

○ 具体的には、例えば、小学校における英語指導に必要な、基本的な英語音声学、第二言語習得、実際の場面で使うことができる語彙、表現、文構造、文法の特徴に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、小学校における教室英語など養成課程において実践的な内容を扱う必要がある。

○ あわせて、実践的な指導力を身につけるため、ALT等とのティーム・ティーチングを含む模擬授業、小中連携に対応した演習や事例研究などが取り扱われることが必要である。

 [小学校「各教科の指導法における英語」に関する科目のイメージ(例)]
・ 我が国及び、小学校段階における外国語教育の現状・意義・課題
・ 教室英語等の運用
・ 音声や単語に慣れ親しんだり、日本語と英語の文構造の違いに気付いたりする等の指導などを含めた指導計画の作成(外国語活動や中学校外国語との接続等を含む)
・ 教科書等の教材の効果的な活用に関する研究
・ 語彙、表現の指導
・ ALT等とのティーム・ティーチングなどの模擬授業、授業観察
・ 発達段階に応じた4技能の能力を適切に測ることができる評価方法(「話すこと」や「書くこと」の能力を測るためのパフォーマンステスト等の在り方を含む) 

 

(中・高等学校)

○ 中学校・高等学校の教員には、英語で授業を行うことを基本とした指導力の向上が求められることから、大学の教員養成課程においても、これを念頭においた英語力向上に取り組むことが望ましい。教育職員免許法施行規則において、教員を養成する外国の大学で修得した単位について免許状の授与を受けるための単位に含めることができることとなっていることも踏まえ、各大学において、例えば、英語の指導法について、在学中の海外留学において修得した英語教授法などの関連した学修に単位を与える取組が進められることが期待される。

○ 中学校・高等学校の教員養成課程においては、学習指導要領の内容を十分に踏まえた構成とすることが必要である。このことを踏まえ、大学の教員養成課程の柱となっている「教科に関する科目」である英語学、英米文学、コミュニケーション、異文化理解について、4技能を総合的に育成するために必要な内容を明確にし、教員養成課程における改善を図る必要がある。

 [教科「英語」に関する科目イメージ(例)]
○英語学:英語の音声、単語、文法、言語習得過程等の基礎についての理解を深めるなどを目的とした科目
  ・英語の音声、語彙、表現、文法及び第二言語習得理論  等
○英米文学:文学作品を読むことにより、文章表現などの英語力の向上に加え、英語圏の歴史、社会、文化についても学ぶことなどを目的とした科目
  ・英語の文章表現、英語圏の歴史・社会・文化 等
○英語コミュニケーション:リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4技能の能力を向上させること、コミュニ ケーション教育に関する理解を深めるなどを目的とした科目
  ・コミュニケーション能力を育成するための目標設定の在り方と目標達成のための具体的な手法
  ・発表、討論、交渉などの能力の育成  等
○異文化理解:日本文化との比較などにより、英語圏の文化を学ぶことなどを目的とした科目
  ・英語を日常的に使用している人々を中心とする世界における日常生活、風俗習慣、地理、歴史、文化、自然科学 
  ・異文化の人々とのコミュニケーション、非言語コミュニケーション 等

 

○ また、「教職に関する科目」においては、生徒の英語による言語活動が中心となる授業を展開する力が求められることから、4技能を総合的に育成するための指導法や、パフォーマンス評価等の評価方法などを含め、発表・討論・交渉などの言語活動の充実に対応した指導計画の作成、模擬授業や教材の効果的な活用に関する研究などを求めることとする。あわせて、学校での優れた授業実践を視察・研究をすることや、マイクロ・ティーチングを行うなど、より実践的な内容にする必要がある。

[教職「指導法」に関する科目(例)]
・ 英語で行うことを基本とする授業の意義・現状・課題
・ 生徒の英語を用いた言語活動が中心の授業となる指導計画の作成
(生徒が実際に英語を使用する機会を増やすための言語活動、ペア・ワークやグループ・ワークの展開方法等を含む)
・ 教科書等の教材の効果的な活用に関する研究
・ 語彙、表現、文法指導(言語活動を通じた語彙や表現の習得、コミュニケーションを支えるものとしての文法の扱い及び言語活動と一体化した文法指導を含む)
・ ALT等とのティーム・ティーチングなどの模擬授業
・ 4技能の能力を適切に測ることができる評価方法(筆記テストに加え、特に「話すこと」や「書くこと」の能力を測るためのパフォーマンステスト等の在り方を含む) 

 

○ 英語教員となる者は、英語力・指導力を高めるとともに、異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることが重要である。このため、英語教員養成を行う大学においては、例えば卒業までに短期間の海外体験(語学留学、交換留学、海外インターンシップなど)の機会が得られるよう配慮することが期待される。今後、文部科学省で進めている「トビタテ!留学JAPAN」などを含め、在学中の海外留学を積極的に活用することを奨励する。

(小・中・高等学校で共通する事項)

○ 教員養成については、より効果的な英語教員養成カリキュラムの開発が必要である。例えば、小・中・高等学校、大学、地域社会が連携して小・中・高等学校で既に優れた実践をしている英語教員が大学で授業を持ち、新たなカリキュラム開発に参加するなどの取組を支援する。

○ 次期学習指導要領の改訂に向けて、小学校の教科化、及び中・高等学校における言語活動の高度化などに対応した「教職に関する科目」、「教科に関する科目」の在り方について調査・研究を行い、各大学等におけるカリキュラムの見直しに当たり、活用することを奨励する。さらに、これらについては、今後の中央教育審議会における教員養成の見直しの審議全体の中で検討を行う。

(採用)

○ こうした取組を通じて、養成段階における教員志望者の英語力を高め、少なくともCEFRのB2程度(英検準一級以上、TOEFL iBTスコア87以上)とすることが強く望まれる。 英語教員の採用に当たり、そうした英語力と併せて実技試験や面接等による指導力を有することを前提とすることが求められる。

○ 今後の英語教育の方向性を踏まえ、専科指導を想定した小学校教員の採用選考に当たっては、採用段階における英語力の基準を設定することや、海外留学の経験、面接試験、模擬授業などによる実技試験等によってコミュニケーション能力などの専門性を考慮した採用(※23)の実施を奨励する。

(※23)英語の資格による試験免除の実施状況17県市、採用時の外国語活動の実技試験実施状況20県市

3 教員研修

ア.現状と成果

○ 将来の小学校における外国語教育の充実や、中学校・高等学校における英語教育の高度化に向けて、平成26年度から、国において、外部専門機関と連携して研修を実施している。また、自治体における研修への補助も開始した。

○ この研修参加者について、多くの教員の英語力が向上し、「これからの授業を英語で実施したい」と考える教員が大幅に増加している。

【英語教育推進リーダー中央研修に参加した小学校教員へのアンケート(H26)】
・ 研修前の状況:授業をほぼ英語で実施していた者18%、授業の半分を英語で実施していた者63%。
・ 研修後の考え方:授業をほぼ英語で実施したいと考える者60%、半分は英語で実施したい38%。 

 

イ.課題

○ 優れた教員ほど多忙であり、研修への参加や他の教員への指導に集中できないとの声が多い。また、小・中・高等学校の教員の多くは指導力を向上させたいと感じているが、地域における研修機会は十分とは言えず、教育委員会と大学・外部専門機関との連携が十分と言えない(※24)など、更なる充実を図る余地があると考えられる。
今後、現職の教員は、これまえで受けてきた英語教育とは大きく異なる指導法や評価を行うことが求められ、それらに対応できる研修を行う必要がある。

(※24)文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」

○ 教員の英語指導力向上のためには、教員養成課程の見直しを進めるとともに、現職教員についても、適切に英語教育を行うことができるよう、絶えず学び続けることが大切であり、現職の研修を大胆に進めることが重要である。

ウ.改善の方向

○ 教員の英語力・指導力の向上のためには、小・中・高を通じた新たな英語教育に向けて、その養成段階から見直すことが重要であるが、併せて現職教員の研修も充実すべきである。そのため次期の学習指導要領改訂に向けて、教員の意識改革を進めるとともに、新たな英語教育に対応した研修を確実に実施することが必要である。その際、ICTも活用しながら、効果的な研修を工夫することが不可欠である。

○ 現職研修の充実に当たっては、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携を図る体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげていくことが必要である。
その際、例えば、現職の小学校教員が、英語教育の専科指導に自信を持って当たることができるよう「免許法認定講習」の開設を支援し、中学校英語等の免許状取得がより一層促進される環境を整備することも重要である。

○ 平成26年度から開始した国による「英語教育推進リーダー」研修を受講した教員を中心に、次期学習指導要領の改訂に向けた域内研修の体制を充実し、研修成果を確実に波及させることで、域内教員の英語力・指導力を向上する。

【教員を対象とする研修等の例】
・ 国における「英語教育推進リーダー」中央研修(外部専門機関と連携した英語指導力向上事業)
・ 各地域・学校において、「英語教育推進リーダー中央研修」を受講した中核教員が中心となって行う研修
・ 免許法認定講習 

 

○ 外部専門機関との連携による域内研修は自治体と連携して夏休み等に集中して行う研修に位置づけ、実践的な指導を行うため協力校における公開授業や研究会の実施などを含めた域内の研修システムづくりが重要である。

○ 国・地方公共団体による地域の教員研修のシステムづくりに当たっては、地域の中心となる「英語教育推進リーダー」の養成とともに、そうした者が地域の研修の企画・運営に参加することが可能となるよう後補充の定数措置や非常勤講師等外部専門人材の活用を充実する。

○ その際、研修の質の改善のため更なる取組を支援する。

 【研修の質の向上のため、今後更なる取組が必要となる事項】
・ 実践力を高めるためのワークショップ等の手法
・ 研修の事前・事後の自己評価方法の開発
・ 資格・検定試験の活用など英語力の達成状況の検証

 

○ 研修に参加する教員の研修効果が高まるよう、その目的・趣旨等の周知徹底を図る。併せて教員の負担軽減を図るため、研修期間を夏休み等に集中して行うことや、単位制にするなど、教員が研修に参加しやすい環境整備が必要である。

○ 授業において、ICTを効果的に活用するためには、教員の指導力の向上が必要である。ICTを用いた指導方法についての研修の充実を図るため、授業の展開を明確にイメージできるような映像等を用いた指導事例の作成や研修教材・研修マニュアルを作成し、普及を図る。

○ また、教育委員会と大学が連携した研修内容を「免許法認定講習」や「免許状更新講習」(※25)へ位置づけていくことを奨励する。

(※25)「教員免許更新制度の改善について(報告)」(平成26年3月18日:教員免許更新制度の改善に係る検討会議)。

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初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)