英語教育の在り方に関する有識者会議 指導体制に関する小委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成26年7月25日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省5F3会議室

3.議題

  1. 英語教育における指導体制の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

石鍋委員・佐々木委員・藤村委員・松川委員・松本委員・吉田委員

文部科学省

伯井大臣官房審議官・榎本国際教育課長・圓入外国語教育推進室長・片見専門官・向後教科調査官・葛城プロジェクトオフィサー

オブザーバー

バトラー裕子氏

5.議事録

【松本主査】 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第2回英語教育の在り方に関する有識者会議指導体制に関する小委員会を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、審議に入る前に、文部科学省の人事異動がございましたので、御挨拶をお願いできればと思います。

【伯井審議官】 本日付で大臣官房人事課長から大臣官房審議官(初等中等教育担当)に参りました伯井と申します。どうかよろしくお願いいたします。

【松本主査】 よろしくお願いいたします。
それでは、配付資料の御確認をお願いできればと思います。

【圓入室長】それでは、配付資料の確認をお願いしたいと思います。本日、お手元に配付させていただきましたのは、指導体制に関する小委員会の第2回の議事次第が1ページ目にございます。こちらの中に資料1、資料2-1、資料3ということで、一括に綴(と)じさせていただいております。
 また、別冊で参考資料といたしまして、かなり分厚い資料がございます。指導体制に関する小委員会、第2回に関連する他のいろいろな会議の議論を、きょう、御紹介させていただきたいと思っております。これがメーンの資料になります。
 そのほか、メーンテーブルだけになりますけれども、いつもの英語教育改革実施計画を配付させていただいておりますので、適宜活用させていただければと思っております。
 過不足ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【松本主査】 資料の方は、よろしいでしょうか。
 それでは、議事を進めさせていただきます。有識者会議において、事務局からも今後の議事の進め方について御説明がありましたとおり、本委員会は次回を含め、3回程度開催し、指導体制に関する論点を専門的に御議論いただいて、その結果を有識者会議へ報告させていただきたいと思います。
 本日は、これまでの有識者会議及び第1回小委員会におきまして頂きました御意見を基に、事務局が用意しました論点メモを参考に、具体的な御意見を頂きたいと思っております。
 また、指導体制の在り方を検討するに当たり、本日は、ペンシルベニア大学のアソシエイト・プロフェッサーであられるバトラー後藤先生に、東南アジア諸国での御経験を踏まえて、指導体制に関する現状、提言を御発表いただく予定でございます。
 それでは、まず、文部科学省より資料1、そして2の御説明をお願いしたいと思います。その後、バトラー後藤先生に御発表いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【圓入室長】 それでは、お手元の資料の議事次第が1枚目にございます。ページをおめくりいただきますと、資料1がございます。これに、前回の小委員会の御意見をまとめさせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 概括だけをもう一度繰り返させていただきますけれども、特に前回、指導体制に関する御意見が多くございました。特に小学校の今後の早期化、教科化ということに向けて、どのような体制が必要かという御意見が中心であったかと思います。
 また、5ページ以降に今後の教員養成、それから現職の方々の研修の在り方についての御意見をまとめさせていただいております。
 また、8ページ、9ページですが、8ページの方は、外部人材の活用について、小学校だけではなくて、中高においても活用すべきではないかという御意見も頂いていたかと思います。
 また、9ページについては、ICTの活用ということです。児童生徒の教材ということで、ICTを活用するということだけではなくて、今後の現職の教員の先生方の研修に合わせて、自己学習もできるようなICTの活用もあるのではないかという御意見があったかと思います。
 続けて、資料2-1を御覧いただきたいと思います。11ページ以降になります。この2-1につきましては、これまで有識者会議の方で頂いた御意見、それから、前回の小委員会の御意見も踏まえまして、本日の御議論の参考として、事務局の方で整理させていただいております。構成といたしましては、有識者会議で目標と内容について、今、御議論いただいているところでございます。そういった御議論の方向性に沿って、11ページ以降、4番にございますように、指導と評価の在り方、それから、構成といたしまして、17ページ以降は教科書、教材について、それから、19ページ以降は指導体制。指導体制の中には、先ほど申し上げましたような小学校の頃からの英語教育における指導体制の在り方から、小中高に関連しまして、養成の在り方、研修の在り方、採用の在り方ということをまとめさせていただいております。
 それぞれ、現状と課題、主なポイントだけ御説明させていただきまして、特に今後の改善の方向性の例について御紹介をさせていただければと思います。
 11ページにつきましては、主に現状について書いておりますので、繰り返しになりますので、省略させていただきます。
 12ページをお開きいただきます。指導体制の話をさせていただくと、小学校、中学校、高校の先生方の多くは、アンケート結果に出ておりましたように、更に指導力を向上させたいという強い思いをお持ちいただいているということは明確でしたけれども、別途の調査では、教育委員会、国もそうですけれども、研修機会が少ないという状況、それから、日々かなりお忙しいという状況。多忙感の調査の報告を後でさせていただきますけれども、そういった状況の中で、なかなか参加できないという現状が多く見られました。
 その上で、学習評価のところに続けさせていただきますけれども、現状の方は省略させていただきます。有識者会議でも御議論がございましたように、小学校の評価の在り方、今、指導要録で文章による評価ということになっておりますけれども、今後、中学年における評価はどのようにあるべきか、それから、高学年におきましては、教科化ということで御議論いただいておりますので、それに当たっては、どのような評価を行うべきかという御議論がございました。現状と課題につきましては、12ページ、13ページのことで書かせていただいております。
 課題の方、13ページから進めさせていただきたいと思います。特に小学校の外国語活動の現状の中での見えてきた課題というところでございますが、23年度から外国語活動が導入されまして、かなり取組が充実してきているということでございます。ただ、地域におきましては、学校でもあると思うのですけれども、趣旨の御理解、それから、指導方法、体制などにかなりばら付きがあるのではないかということがございました。きょうは数字をお持ちしておりませんけれども、私どもでも調べさせていただくと、例えばALT、それから、地域における外部人材の方々が学校の授業に参加する回数を見ますと、小学校高学年、今、1コマ、年間35コマ以上になっておりますが、全コマ参加されている学校からゼロ又は1回、週に1回、月に1回という学校もあると伺っております。
 それから、これは目標と関連しますけれども、13ページの次の高学年の話ですけれども、外国語活動の性質上、体系的な学習が行われていないということで、物足りなさを感じているという状況を、データをもって御報告させていただきました。課題といたしましては、中学校において音声から文字への移行がスムーズに行っていないという御指摘もありました。その流れから小・中連携、小・小連携というのもありましたけれども、そういった連携を意識した、例えば情報交換だけではなくて、カリキュラム等の連携が余り行われていない、円滑に移行されていないという御指摘があったかと思います。
 14ページ以降でございますが、ここからは中学校の課題でございます。中学校におきましては、英語を理解し考えながら表現できるコミュニケーションが図られるかどうかと。それから、伝統文化や自然科学など現行の学習指導要領に示された題材の扱い、単元ごとの適切な目標設定が行われているかどうかという観点から、まだまだコミュニケーション能力が十分ではないという指摘があったかと思います。
 「また」以降でございますが、教員の方々の英語の使用状況ですとか、生徒さんが授業中に英語で言語活動をする、場面設定をしている学校の状況ですとか、そういった状況が、これもなお一層の取組が推進するという状況であったかと思います。
 また、CAN-DOリストの形での学習到達目標につきましても、始まりまして17.4%の学校が設定しているということがございました。ある県においては、全ての中学校において設定するというところと、そうではない、まだまだ設定が進んでいない、取組が進んでいないという地域間の格差ということが、今後の指導における影響、これは評価も重なってくると思いますが、影響が多いのではないかという御指摘が前回の有識者会議でもあったかと思います。
 また、高校につきましても、前回の有識者会議で御指摘を頂いたようなことを14ページから15ページにわたって書かせていただいております。こちらにつきましても、教員の先生方の英語力の向上ですとか、それから、CAN-DOリストの形での学習到達目標の設定の地域間のばら付きがあるという課題、それが今後の指導や評価に影響があるのではないかという指摘、それから、中学校、高校での連携が十分ではないのではないかという指摘をまとめさせていただいております。
 15ページ、2番以降でございますが、ここから今後の指導や評価の在り方、改善の方向の例ということで挙げさせていただいておりますので、本日、御議論を頂きたいところかと思います。
 次期指導要領の改訂ということで、この会議でも御議論いただいているところでございますけれども、その改善の方向に沿いまして、今後、大学や外国の専門機関等と連携、協力しながら、子供たちの多様な実態と発達に即した柔軟な、かつ優秀な指導方法ですとか、それから、学習評価の在り方というものを確立する必要があると。これらについては、更に国が積極的に支援するということを、全体にわたって、まず書かせていただいております。
 その上で、まず小学校の方から御説明させていただきます。ここは繰り返しになるのですけれども、目標と内容に関連するところでございますが、中学年から外国語教育を開始するという議論が続いておりますけれども、それを前提にいたしまして、どのような指導方法の在り方があるべきかという検討が必要であるということを書いております。
 また、中学年につきましては、平成23年度からの外国語活動の実績というものを踏まえた方向性ということで御議論があったかと思いますが、その論点としては、児童の高学年ではなく中学年における児童の発達段階に留意した指導の在り方、それから、他教科等との連携強化を意識した効果的な指導方法ということを充実していく必要があるのではないか。
 また、高学年におきましては、教科化という前提で御議論いただいておりますけれども、その上で、小学校と中学校のつなぐという御意見を頂いておりましたけれども、連携を意識した具体的な指導を更に充実・強化していく必要があるとまとめさせていただいております。こういった観点から、どのような指導の在り方、評価の在り方ということを具体化していくかということでございますが、有識者会議でも御説明させていただいておりましたように、「英語教育強化地域拠点事業」というものを本年度から開始しております。
 こちらの資料で、資料が別途のつづりになって恐縮でございますけれども、後ろのページの方で、27ページを御覧いただければと思いますが、英語教育強化地域拠点事業の概要を付けさせていただいております。28ページに今年度指定させていただいた研究開発校、地域としては18件、地域ごとに各学校、小中高ということで、必ず連携して参加していただくということになっておりますが、29ページに挙げさせていただいておりますように、初年度の計画からまとめさせていただきました。全て小中高、今後の新たな英語教育の方向性に向かった新しい取組ということを計画に掲げていただいております。
 この中にも書いてございますように、小学校におきましては、中学年からの外国語活動、高学年におきましては、教科化に向けた指導の在り方、それから評価の在り方というものを意識した取組というものを、各研究開発校、地域の中で小中高、一貫した目標を立てながら取組を現在スタートされているという状況でございます。
 16ページに戻りますが、こういった取組の状況を進めていただき、それを検証し、得られた結果というものを、これからも続きます次期学習指導要領の改訂の中で活用させていただくということを書かせていただいております。
 また、評価におきましても、この事業で取り上げておりますように、活動型の在り方、それから、教科型の在り方ということを意識した内容を書かせていただいておりますけれども、こういったものが単に評価で終わることなく、学びの改善につながるよう、PDCAサイクルを構築するということも書かせていただいております。
 更に続けまして、中学校・高等学校に進めさせていただきたいと思いますけれども、中学校・高等学校におきましては、前回の有識者会議でも御議論いただきましたけれども、目標の設定の在り方ということで、高度化というキーワードと、それから、CAN-DOリスト型の学習到達目標の設定というものをどのように位置付けていくかということがございました。そういったことを意識した内容というものが、先ほど申し上げました「英語教育強化地域拠点事業」にも挙げられております。これらの取組も並行して進めていただきながら、検証した結果を引き続きの議論に活用させていただきたいということをまとめさせていただいております。
 それから、次の教科書、教材の方に進めさせていただきます。17ページの二つ丸は現状でございますので、省略させていただきます。
 18ページ以降で、少し課題を書いておりますので、なぞらせていただきますけれども、先ほども申し上げましたように、小学校で外国語活動を経験された方が、中学校1年生になってアンケートを取らせていただいております。もう少し「聞くこと」、「話すこと」だけではなくて、「読むこと」、「書くこと」に対する意欲がございますので、中学校に入ってどうかということもございますけれども、御指摘としては中学校に入ったときに、なかなか課題があると。小中連携ということで、スムーズに進んでいないと。特に音声から文字への学習が円滑につながっていないという御指摘がございました。こういったことから、中学校での学習への円滑な接続を考えると、小学校段階において、これは高学年のことがございますけれども、文字の扱いや文構造への気付きなどの指導に有効な教科書・教材が必要ではないかとまとめております。
 続けて、中学校と高等学校でございますけれども、こちらにつきましては、丸の下二つを御覧いただければと思います。24年、25年から現行の指導要領が始まっておりますけれども、そこに掲げてあります生徒の言語活動の充実、それから、4技能にわたる総合的なコミュニケーション能力の育成というものを重視した内容になっておりますが、それが教科書・教材を使った形でうまく生かされていないのではないかという御指摘があったかと思います。そのようなことで、これらの授業における教科書の活用の在り方というものを検証してはどうかということが、有識者会議でも御指摘としてはございました。
 (2)以降は、教科書・教材に関する改善の方向でございます。
 小学校におきましては、先ほど申し上げましたように、文字の扱い、文構造の気付きなどの指導に有効な教科書・教材が必要ではないかということで、例えば最初の丸の途中から書いてあります、小学校高学年におきましては、アルファベットの文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す指導ができる補助教材を、まずは今年度開発させていただいてはどうかということを書かせていただいております。
 19ページ以降には、その補助教材をまず開発をいたしまして、先ほど御説明いたしました英語教育の強化地域拠点事業の中で御活用いただき、更にそれがどのような成果が上がったのかということを、試行的に活用いただきながら、効果を検証するということを想定したことを書かせていただいております。
 実施計画、いつものように配付させていただいておりますが、この絵の中では、お開きいただきますと、6ページに書いてございますように、平成28年度、2016年度に学習指導要領の改訂ということが提示されております。そこを待たずして、ここでは、これまでの小学校高学年での外国語活動の成果を踏まえた次のステップに向けた試行的な教材を活用して検証するということで、まとめさせていただきました。
 19ページの次に書かせていただいておりますのは、またICTを活用した活用事例の共有、それから、御意見が多ございましたのは、音声も含めた学習効果の高いコンテンツの導入というお話もあったかと思います。
 次に、中学校と高等学校でございます。先ほど18ページでも課題を御指摘させていただきましたけれども、それに合わせまして、中学校・高等学校におきましては、今後の外国語活動において求められる教科書等の教材の内容につきましては、世界標準となっている教材の活用、それらを参考にしつつ、授業を英語で行うことを基本とした総合的なコミュニケーション能力の効果的な育成に資するもの、それから言語活動の高度化に対応した教科書の教材開発なども必要であるということを書かせていただいております。
 あわせて、こちらについても、音声も含めたICTの活用ということも書かせていただいております。
 6番以降の指導体制でございますが、余り時間もないので、恐縮でございますけれども、20ページ、21ページは、前回こちらの小委員会で多くの御意見を頂いたことを列挙させていただいております。特に小学校につきましては、きょう、少し資料を御参考に御用意させていただいておりまして、ページが飛んで恐縮でございますけれども、35ページをお開きいただきますと、上段の方に、これまで有識者会議、それから小委員会で御意見を頂いた内容を踏まえまして、例えばこういった指導者の方々の体制というものが考えられるのではないかということで御用意しています。
 例えば、小学校におきましては専科指導を行う教員の役割ということで、一つのパターンとしては、学級担任を持ちながら、例えば高学年の外国語の授業を実施する方もいらっしゃるのではないかと。
 事例としてお伺いしますと、岐阜県高山市にございまして、中学校の英語の免許を持つ教員が、学級担任を持ちながら、5・6年生の3学期を全て担当されると。ただし、理科、社会、音楽などは、他の専科教員ということで、持ち合いで調整しながら対応されているということでございました。
 また、別のパターンでございますけれども、マル2の方でございます。小学校教員の方で、担任を持たず、高学年の外国語授業を実施するというイメージでございます。
 こちらも既に先進事例としてお話をお伺いしています例を挙げさせていただいておりますけれども、島根県の例でございますが、中学校の英語免許を持つ教員が、担任を持たず、5・6年生の外国語活動と、得意な分野ということで音楽も担当されていると。ただし、学級担任の方との連携をしっかりされているということで、右側の方に学級担任の方の役割というものを挙げさせていただいております。
 下の方は、主に3・4年生、中学年のイメージでございまして、今、高学年の方でもこのようなイメージが多いかと思いますけれども、学級担任の方と、例えばALT、又は英語に堪能な地域人材の方が1人、2人、ティーム・ティーチングを組んで実施されている例からイメージを作らせていただきました。なるべくこれまでより具体的な御意見を頂ければと考えておりますので、その役割も、これまでお伺いした例を参考にしながら挙げさせていただいております。後ほど御議論の参考にしていただければと思います。
 戻りまして恐縮でございますが、20ページはそのようなことでまとめさせていただきました。
 21ページにおきましては、中学校・高等学校ということで、課題も挙げさせていただいております。
 (2)以降が指導体制の改善の方向ということで、こちらについては、先ほどイメージ図を御説明させていただきましたので、省略させていただければと思います。
 22ページの最後の丸辺り以降に、今後の、特に新しい動きといたしましては、小学校高学年における指導体制の在り方ということで、幾つかポイントを挙げて、例示を挙げておりますけれども、後ほど御議論いただければと思います。
 一つ、新しいものとして挙げさせていただいておりますのは、ポツの上から二つ目、三つ目辺りを御覧いただければと思います。後ほど資料を御覧いただければと思いますが、6月に特別免許状を積極的に活用していただくということで、文部科学省の方から通知を出させていただいております。これが、いわゆるガイドラインのようなもので、有識者会議でも御案内しておりましたけれども、それを発出させていただいたということで、本日分厚い資料の中に綴(と)じさせていただいておりますが、お配りしております。そういったところでの外部人材の活用も進めてはどうかということも、御意見を頂いていたかと思います。
 その中には、地域における英語が堪能な地域人材のほか、例えば中学校や高等学校で英語の担当の方、退職者の方が非常勤講師として活躍されるということもあるのではないかという御意見もあったかと思います。
 また、もう一つ、外国語活動において、これは小学校のことでございますけれども、学級担任の方がこれまで日々御努力いただきながら、指導に当たっていただいておりますけれども、更に次のイメージといたしましては、高学年の専科指導に当たることができるように、例えば免許法の認定講習の開設というものを支援させていただいて、小学校の現職の教員の方がお仕事をしながらということになりますけれども、中学校の2種の英語の免許を取得することが可能となるような環境作りを進めてはどうかということを、一つ提案として入れさせていただきました。
 それから、中学校・高等学校の方も、23ページ以降に書かせていただいております。24ページ以降に、ポツで四つほど挙げさせていただいております。これは、今まで頂いた御意見ですので、適宜御覧いただければと思います。
 24ページのマル2以降が、教員の養成・確保ということでございますけれども、こちらにつきましては、前回までに頂いた御意見を少し掲載させていただいております。小学校の養成課程におきましては、今は外国語活動ということで、評価を想定した養成課程ということになっておりませんけれども、今後につきましては、例えば、最初の丸に書いておりますように、小学校で必要なものに加えて、児童に英語学習の指導に必要な英語力、それから、英語指導法について履修するということが必要ではないかと。
 「特に」というところに続けておりますけれども、教員養成課程におきましては、次期指導要領の改訂に向けまして、十分な指導力を付けるようにということで、教員養成プログラムの開発・検証・改善、それから、プログラムの提供というものを積極的に先取りした形で行っていただいてはどうかということ。それから、教員研修については、現職の教員の方々が研修を十分に地域で受けていただける機会の確保というものを支援するということを書かせていただいております。
 25ページ以降、特に小学校の高学年におきましては、教科化に向けて、例えば必要な指導法、それから、基本的な英語の音声学、文法などということも例示としていただいておりますので、挙げさせていただいておりました。
 また、御意見がございましたら、今現在、大学の課程認定におきましては、英語学、英米文学、コミュニケーション、異文化理解というものが柱になっておりますけれども、今後の英語教育に向けて必要な方向性を具体的に検討してはどうかということを書かせていただいております。
 さらに、小中高、続けまして、共通する事項としまして、同じようにカリキュラムの新しい開発というものが必要であるということでございますが、例えば小中高、それから地域の大学が連携をして、実践的なものを開発するという取組をしてはどうかということで、本日、資料を少し御用意しておりますので、御参照いただければと思いますが、34ページでございます。
 これは、本日、付けさせていただいているのは、今、英語指導力の向上事業というものを進めさせていただいておりますが、域内研修が来年度から始まるという状況でございますので、今、図のような形でイメージした形で、地域の連携の中で新たな英語教育に向けた養成、それから、現職教員の方の研修の充実というものを構築してはどうかというものを付けさせていただきました。
 また、御参考でございますが、31ページ以降に、お時間があれば、後ほど御説明できればと思いますが、今現在のブリティッシュ・カウンシルさんに御協力いただきながら、英語教育推進リーダーの研修を行っております。その中での参加者の意識という面から見られる効果というものを挙げさせていただいております。
 32ページにおきましては、もう少し詳しく今後の予定ということで書かせていただいておりますが、今年度は中央研修を2回行いまして、来年度から域内研修という流れになりますが、33ページには、今までと違った内容ということで、小学校、中高のリーダー研修の内容の資料も添付させていただいています。本日の御議論、後ほど、これらについても御意見を頂ければと思います。
 元に戻りまして、恐縮でございますが、25ページ以降、教員研修等で、同じように今後の新たな英語教育に向けたプログラムの開発ということで、教育委員会と大学、外部専門機関との連携の体制の構築も書かせていただいております。
 なお、前回、たくさん頂きました、今行っている研修事業につきましては、教育委員会、学校の方で、なかなかその趣旨の理解というものが徹底していないのではないかということで、その周知徹底を図るということも、併せて書かせていただきました。
 以上が論点の御説明でございますが、きょうはお配りしている資料を適宜御参照いただければと思いますが、分厚い資料で綴(と)じさせていただいた参考資料の方、目次を御覧いただければと思います。
 最初の1ページ以降が、教育再生実行会議で、7月に第5次提言ということでございまして、この中でございますのは、柱といたしまして、小中一貫教育を制度化する学校間の連携といったことがございまして、例えば5ページ以降の最初の3行目にございます。小学校への英語教育の導入をはじめとして学習内容の高度化が進む中で、どのような方向性があり得るのかという論点が挙がっておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 また、7ページ以降は、教員養成の在り方で、先ほども御説明いたしましたような方向性も、こちらに出ているということで、資料を添付させていただいております。
 それから、11ページ以降でございますが、このような教育再生実行会議の提言を踏まえまして、今、中央教育審議会の教員養成部会の中で養成・採用・研修の改善に関するワーキンググループの議論が行われております。こちらの中に、例えば15ページを御覧いただければと思いますが、今後の教員養成課程の改善で、2ポツ目でございますけれども、新たな教育課題に対応する教育の領域ということで、括弧の中に外国語教育等が挙がっておりますが、こちらの有識者会議で議論されているような方向性も意識いただきながら、このような形で議論もなされているということで、適宜御参照いただければと思います。
 それから、33ページ以降、御紹介させていただければと思いますけれども、こちらの方は、局に設置されています有識者会議の第3回の資料でございます。教育再生の実行に向けた教職員等指導体制の在り方に関する検討会議で、基本的な考え方を御覧いただきますと、これは、定数改善計画及び基礎定数の充実の必要性ということでございまして、今後の様々な課題に対応した新たな定数改善計画の策定の考え方をまず一つ示しておりまして、また、その次の教育環境整備の目標でございますけれども、こちらにつきましては、教員だけではなく、なるべく多くの大人が学校でスタッフとして子供に関わることを目指すということで、いわゆる外部人材の議論をこちらでも頂いておりますが、その方向性が掲げられております。
 その方向性の中で、2ポツ目以降でございますが、平成27年度概算要求における考え方ということで、例えば英語の関係でもマル2を御覧いただきたいと思いますけれども、2行目から小学校における英語をはじめとした専科教員の配置を進めることができるよう、改善を図ることを検討すべきということですとか、マル3は、いわゆるチーム学校ということを言われておりますけれども、先ほどの専門スタッフということで、例えば外部人材のような方も含めた改善の在り方が書かれております。
 35ページ以降は、御参考に添付させていただきました、先月発表されました国際教員指導環境調査のポイントということで、36ページにポイントが書いておりますが、本日の御議論の御参考にということで、配付させていただいておりますので、是非、適宜御参照いただければと思います。
 また、65ページ以降は、特別免許状の授与に係る教職員検定等に関する指針ということで、御覧いただきたいと思いますが、通知の方を6月19日に文部科学省から発出させていただいております。
 67ページにその概要が添付されておりまして、専科指導に当たる外部人材の活用におきましては、特別免許状の活用という御意見を頂いておりますが、この中でも、例えば71ページ以降を御覧いただきますと、72ページにはALT等の活用ということで、英語の教育を意識した例示というものを挙げていただいておりまして、どのような専門性を持った方が活用するかという観点というものも挙げてあるという内容になっております。
 77ページ以降は、前回お配りいたしました英語教育推進リーダーの中央研修の御参考資料ということでございますので、本日、研修の在り方の御議論について御参照いただければと思います。
 かなり膨大な資料になりまして、大変申し訳ございませんが、事務局の方からの論点の説明につきましては、以上で終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【松本主査】 ありがとうございました。たくさんの資料について、室長から御説明いただきましたが、御質問がございましたら挙手願いたいと思います。御意見は、バトラー後藤先生の御発表の後にさせていただければと思います。
 何か御質問ございますか。よろしいですか。
 それでは、続きまして、バトラー後藤先生より東アジア諸国の経験を踏まえた指導体制に関する現状・提言の御発表をお願いしたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【バトラー裕子氏】 では、始めさせていただきます。
 ペンシルベニア大学から参りました、バトラー後藤裕子と申します。きょうは、お忙しい中、ありがとうございます。ちょっと皆さんに背を向けた形での発表で申し訳ないのですが、御容赦ください。
 私は、米国のペンシルバニア大学の教育学の大学院の教育言語学部というところで、准教授をしております。そして、TESOLのプログラム、これはマスターレベルのプログラムなのですが、そこのディレクターもしております。このTESOLのプログラムは、ペンシルベニア州のESL教員免許が取得できるということになっております。最近は、非常にアジアからの先生方が留学なさってくるケースが増えてまいりまして、7割近くがアジアからの先生方という形になってきて、非常にアジア勢の勢いが強いなというのを実感するこの頃です。
 残念ながら、日本の方は1人も、もう五、六年ずっといらっしゃらなくて、できれば日本の先生方がもっと来てくださるといいなと痛感しているこの頃です。
 私は、もともとアメリカの移民の子供たちの英語習得、バイリンガル習得を中心に研究をしてきまして、ここ十数年にわたっては、東アジアを中心に、子供たちの英語の習得及び英語教育について研究をしています。
 きょうのテーマですが、三つ柱を用意してきました。一つは、指導者に必要な英語力、それから、指導技術というものがどういうものであるかについて。2番目は、学級担任か、それとも専科の教員が担うべきなのかという問題。それから、3番目が、ネイティブスピーカーの役割。最後に、この3点を踏まえた形で、指導体制に関するまとめ及び提言をさせていただきたいと考えています。
 まず、指導者に必要な英語力・技術指導に関してですが、英語の熟達度が必要なことは間違いないのですが、一体どれぐらい英語力が必要かということになりますと、どの国でも明確なガイドラインはないと考えていいと思います。もちろん、それぞれの国が何らかの基準を設けておりますが、実証的なデータに基づいた基準ではないので、かなり変動的であることも事実です。 ただ、小学校で教える英語というのは、そんなに高度なものではないので、小学校の先生に求められる英語力はそんなに高くなくていいのではないかという議論はどこの国からも出てくるのですが、これは間違いであろうと考えています。小学校のレベルが易しいからといって、先生の英語力も低くていいという考えは誤りであると思います。
 実際、例えば香港では、英語の教師には英語の試験があります。この試験を見てみますと、小学校から高校の英語の先生に同じ合格基準が設けられています。特に小学校の先生だから合格基準が低いということにはなっていないということから考えても、やはり小学校の先生にもかなり高い英語力が求められるのではないかと考えられます。
 ヨーロッパでは小学校の外国語教師の熟達度は、CEFRのB2が最低ラインという国がほとんどだと思いますが、上がっていく傾向にあると思います。ヨーロッパは、日本とは言語教育環境がちょっと違うと思いますが、B2レベルが最低と考えられています。
 それから、もちろん英語指導法の知識、技術は大切です。さらに、最近はテクノロジーが教室にたくさん入っておりますので、ITリテラシーということも非常に大きな要素になっています。
 韓国は、皆さん御承知のとおり、1997年に正式に教科として英語が全国の小学校に導入された際に、大々的なテクノロジーの導入というものも同時並行で行われました。二人三脚という形で行われたので、小学校の英語教育はITにバックアップされた形での導入となっています。韓国では非常にITが教室内で進んでいると私は考えています。
 それから、3番目は教室運営に関する資質です。これは、実は非常に重要な要素です。後で韓国の事例をお話ししますが、例えば高校の先生、ないしは中学校の英語の免許を持たれた先生が小学校に入って指導するのはどうかという懸念がありました。これに関して、教室運営がひとつのネックになってくるというケースが報告されています。やはり、中学や高校で優秀な英語の先生が小学校に入ったときに、必ずしもその力を発揮できるということにはならないということだと思います。以上が、1番目の柱、指導者の資質に関わる問題です。
 2番目の柱は、誰が指導するかという問題です。学級担任か専科の教員か。これも、非常に大きな問題です。中国と台湾に関しては、もともと小学校で専科制が導入されておりましたので、小学校で英語が導入されるに当たって、担任か専科という議論はなかったわけですが、韓国に関しましては、日本と同じ学級担任制を取っておりましたので、やはり学級担任が教えるべきか、専科の教員を養成すべきかどうかという議論がいろいろありました。
 最初、1997年に導入されたときには、日本の文部科学省に当たる韓国の教育省が、専任制ということも真剣に考えていまして、中学、高校の英語教員の免許を持っている方を対象に、対象者を広く募りまして、試験を行いました。942人の定員のところを8,844人の方が応募したということで、10倍近い倍率でした。その難関を通って採用された先生方が、更に4か月間の研修を受けて、各小学校に専科の教員として配置されていきました。
 実は、この試験は1回だけで打切りになります。その理由は様々あると言われているのですが、その一つには、担任文化への適応の難しさがあったといわれています。やはり小学校というのは、担任文化が非常に強く根付いている。その中で、専科の教員として入っていく方が疎外感を持たれたり、やりにくいと考えられたりする方が多かったということも言われています。
 そうした専科の先生方の中には、やはり担任の先生になりたいということで、小学校の普通免許を取るために大学へ戻ったり、通信教育などを経たりして、単位を習得して、小学校の一般教員の免許を取る方もいたという話を伺っております。
 専科の教員とは別に、既に担任の先生をなされている先生方に関しても、徹底的な研修が行われました。皆さん御存じかと思いますが、120時間の基礎研修というのを、ほぼ全ての教員に行ったということです。オフィシャルな文書には、基礎研修は義務であるということは書いていないのですが、実質的には、ほぼ義務化に近かったと考えていいと思います。
 もちろん、退職を間近に控えた先生などの中には、私があなたのクラスの算数の授業を教えるから、代わりに私の英語のクラスを教えてくださいといったような形で、研修を受けなかった方もいましたが、そういう方を除いて、大部分の先生が、その120時間の基礎研修を受けました。
 私もその研修に参加したことがあるのですけれども、120時間のうち、ほぼ7割に当たる時間数が、先生方の基礎的な英語力を向上させるための研修に与えられていました。英語力増強のためのクラスは、少人数制で、アットホームな雰囲気でした。講師はネイティブの先生方で、クラスルームイングリッシュを始め、基礎的な口語能力を高めるための研修でした。
 研修の残りの3割ぐらいは、教授法であるとか、評価に関する内容にあてられました。こうした部分の研修は韓国の先生が中心になって行いました。その後、各学校で1人ずつ選ばれた先生方には、120時間の基礎研修のほかに、更にプラスして120時間の深化研修がありました。ということで、韓国ではかなり徹底的な研修を行ったのです。
 現在はどうなっているかというと、学級担任と専科教員が混在しているという形になっていると思います。
 ただし、英語の専科が統計上、増えつつあるという傾向にあります。英語の専科の先生の中にも2種類ありまして、担任の先生だった方が移行して専科の先生になられたケースと、新任の若い先生に多いのですが、最初から専科の先生になられるケースという2パターンがあります。
 韓国の場合は、小学校の免許を取るときに、副専攻という形で、英語を取るということができます。小学校の免許取得者で特に英語の副専攻を取られた方が、それぞれの学校長の判断で、君は英語が副専攻だから英語の専科になってくれという形で英語の専科になるような先生も多いです。ですから、英語の専科の先生といっても、担任になろうと思えば担任になれる。だから、年によっては担任になって、また次の年には専科になるといったタイプの先生方もおられます。
 先ほど、岐阜県と島根県の二つのパターンがあるという報告がありましたけれども、両方のパターンが、今韓国ではあると考えていいかと思います。
 こうした徹底した研修の後、韓国ではここ10年の間に、少なくとも小学校の先生方の英語力は非常に向上したと私は考えています。ここ十数年、ソウルやほかの都市、いろいろなところで研修の講師などで呼ばれることがあったのですけれども、最初の2000年の初期の頃は、英語で研修しても、先生方の理解が難しいということで通訳の方が付いたり、ハンドアウトも、英語のものを韓国語に訳してお配りしたりということをしていましたが、最近では全て英語で行うことに全然問題がありません。
 昨年の11月もソウルのある大学で現職の先生方を対象に研修をしました。私は評価が専門なので、評価の話をしましたが、研修は全部英語で、ディスカッションも全部英語で行いました。質問もどんどん英語で来るという感じで、先生方の英語力は非常に向上しているという印象を持っています。以上が、2番目の柱、誰が指導するべきかに関する問題です。
 最後に、3番目の柱、ネイティブスピーカーの役割についてお話ししたいと思います。ネイティブに習う方が効果的という考え方は、特に保護者の間で非常に根強い考えなのですけれども、これは実証研究を見ますと、必ずしも正しくないということがわかります。考えてみれば、そんなに不思議なことではないのですが、ネイティブの先生の間でも、指導力にはばらつきがあります。私たちはネイティブの先生のクラスだと、英語にたくさん触れられるのではないかという期待感を抱きやすいのですが、教室での英語使用に関する実証研究を見てみると、個人差が大きいことがわかります。韓国、中国、台湾では、英語だけ授業をやられる先生が増えてきているのですが、英語だけでノンネイティブスピーカーの先生が授業をした場合と、ネイティブスピーカーが授業した場合とで、子供がどれぐらいの英語のインプットを授業中に得られたかを比較した研究によると、各グループの間の個人差は非常に大きいけれども、平均値を見る限り、ネイティブスピーカーとノンネイティブスピーカーの間には差がなかったといった結果がでています。結局は、ネイティブスピーカーかノンネイティブスピーカーであるかが問題なのではなく、個人の資質の問題であるということが言えると思います。
 我々が、一つ心しておかなくてはいけないのは、ネイティブスピーカーは必ずしも教師として専門家でない人が大部分ということです。彼らは英語の使い手としてはプロだけれども、英語の指導者としてはプロでないということを認識しておかなくてはいけないということです。児童の反応を見ると、子供たちは必ずしもネイティブスピーカーを好むというわけではないということが言われています。特に高学年になると、ネイティブスピーカーの先生の授業に少し抵抗を持つ子供たちが増えてくるという研究もあります。
 またネイティブスピーカーは費用対効果が余りよくないと予想できます。コストパフォーマンスをきちんとシミュレーションしたような研究は、私の知る限りでは、どこにもないと思います。ただ、ネイティブスピーカーが英語の指導者としてプロでないということを考えると、せっかくいろいろと指導したり、経験を積んだりして、英語の指導にもなれてきたなと思った頃に帰国されてしまうということが多々あります。そういうことを考えると、費用対効果が余り高くないと予想できると思います。
 それから、優秀なネイティブスピーカー、つまり、子供のことが好きで、教育にも熱心であり、できれば教員免許も持っていて、願わくば子供たちの母語にも精通しているといったような、非常に優秀な資質を持ったネイティブスピーカーの数は非常に限られています。今、全世界で、アジアだけでなく、ヨーロッパでも、中東でも、南米でも、英語教育が加熱しているわけで、各国がすごい勢いでネイティブスピーカーの争奪戦を行っているというのが現状です。このような状況の中で、優秀なネイティブスピーカーの確保はますます難しくなっています。
 十年ほど前になりますけれども、台湾では、英語の先生方がストライキを起こしたということがありました。その理由は、仕事量の多さにも関わらず、お給料がネイティブスピーカーと比べて圧倒的に違うのは不公平ではないかということでした。 しかし、政府の回答としては、相当のお給料を出さないと台湾に人が来てくれないから、これはやむを得ないのだ、理解してくれということだったのです。これが10年前の話です。
 今や、ネイティブスピーカーでアジアに興味がある学生の多くは、中国、台湾に行きたがります。シンガポール、香港、中国、そういうところが非常に人気です。やはり彼らは中国語を狙っているのでしょう。何年か、中国なり香港でちょっと教えて、中国とのパイプをつかんで、中国語も少しできるようになって、それぞれの国に帰っていったときに、自分たちのキャリアで役に立つだろうという思わくで中国圏の人気が高いです。
 ということで、優秀なネイティブスピーカーを確保するというのは、非常に大変で、ますます大変になってくると考えられます。これを認識しておくべきだと思います。
 残念ながら、日本のプレゼンスは、今下がってきていると思います。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代には、黙っていても優秀な人が日本に来てくれましたが、もうそういう時代は終わったと考えるべきだと思います。
 ネイティブスピーカーのような発音を身に付けるべきという発想は既に時代遅れです。今は、ワールドイングリッシーズなどと言われておりまして、ネイティブのような発音を身に付ける必要はないということを考えると、ネイティブから英語を学ぶという発想を我々はもうやめるべきではないかと私は考えています。
 誤解のないようにしたいのですが、私はネイティブスピーカーを排除すべきだと言っているのではありません。ネイティブスピーカーというのは、やはり子供の動機付けという面からも、異文化に触れるという面からも、非常に重要な役割を果たしていることは事実です。
 ただ、彼らの役割は、英語を使ってみる対象として捉えるべきであって、彼らから英語を学ぶという発想は捨てるべきではないかと考えているのです。つまり、ネイティブスピーカーとのティーム・ティーチングがなければできないようなカリキュラムを最初から作るというのは、問題なのではないかと、私は個人的に考えています。全て日本人の先生だけでできるような体制を作っておいて、ネイティブスピーカーは、アディショナルというか、追加的な形で捉えるべきではないかと考えています。
 以上、3点を柱に、私が今考えていることとお話します。まず、徹底的な研修が絶対に不可欠であるということです。予算のこともいろいろありますので、簡単にはいかないということを重々承知の上で、あえて申し上げたいのですが、やはり全員の先生を対象とした研修が、私は絶対に不可欠だと考えております。
 それから、児童をよく知る担任が英語教員としての専門性を身に付けておくというパターンが最適なのではないかと思います。
 それから、三つ目、ネイティブスピーカーやボランティアに頼る政策は、ちょっと誤りなのではないかと考えます。彼らは、教育の専門家ではないので、英語を使う相手としての位置付けにすべきであると思います。
 最後ですけれども、教育政策は、今できる範囲でやれることをやってみようという姿勢ではなくて、子供たちに最終的にどのような英語力を身に付けさせたいのかという目標を明確にして、そのためにどういう手段を構築するべきかを考えるといったアプローチが大切ではないかと考えています。
 以上です。

【松本主査】 はい。ありがとうございました。
 それでは、まず、今の御発表についての御質問を受け付けた後、事務局の御説明及びバトラー後藤先生の御発表を踏まえた上での御意見を頂ければと思います。
 まず、バトラー後藤先生への御質問等ありましたら、お願いいたします。はい、松川委員、お願いします。

【松川委員】 大変興味深いプレゼンと御提案、ありがとうございました。3点伺いたいのですけれども、まず、120時間の徹底した研修をほぼ全員に近い教員を対象に実施されたとのことですが、どのくらいの期間で行われたのかということをお聞きしたいです。また、韓国では、学年進行で小学校の教育課程に教科としての英語を導入したと記憶しています。そこでお尋ねしたいことは、どの時期に120時間の研修を、どのくらいの期間をかけて行われたのかということです。
 2点目は、その研修の講師はネイティブスピーカーだったということですが、この場合のネイティブスピーカーというのは、どのような方が、何人くらい指導に当たられたのかということを伺いたいと思います。
 3点目は、日本では、総合的な学習の時間において英語活動を実施していた頃から、学級担任プラスALT、あるいは学級担任プラス英語が堪能な日本人という体制で指導が行われてきているわけですが、そのような時期は、韓国にはなかったのでしょうか。
 以上です。

【松本主査】 はい。

【バトラー裕子氏】 まず、何年掛けてやったかという点ですが、実を言うと私はちょっと把握していません。
 120時間の研修は、3か月間でやるというパターンが多かったようです。ただ、人によっては、少しずつ科目を取っていくという場合もありますし、夏休みなどに集中して取るなど、学校の状況によってばら付きはあったと思います。
 御指摘のとおり、韓国では英語を3年生から順々に導入しました。1年目は3年生だけ、2年目は3年、4年生3年目に3、4、5年生、そして4年に3、4、5、6年生という形で導入しました。最初に教える学年を担当する先生から順々に受けていきました
 それから、どのようなネイティブが指導に当たったかということですけれども、いろいろな方が指導に当たられたと聞いていますが、人数は私は把握しておりません。
 最後に、ネイティブとのT・Tを日本ではずっと最初からやられているということで、韓国ではどうだったかという話ですが、韓国では、最初、韓国の先生だけやる体制を作って、後からだんだんとネイティブスピーカーが入っていくという形になりました。ですから、日本とちょっとパターンが逆になります。基本的に韓国の先生方だけでやる体制を作って、その際に教科書と、それから充実したIT教材というのを作りました。それでも韓国の研究者の中には、導入当初はパニック状態だったとおっしゃっていた方もいらっしゃるぐらいです。私は英語に自信がないからという先生方も、当然たくさんおられたわけです。しかし、そのIT教材を使うことによって、何とかやっていけるという体制を先に作って、そして後からネイティブスピーカーがどんどん入っていったという形になっています。

【松川委員】 はい。ありがとうございました。

【松本主査】 ほかに。はい、吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】 ありがとうございます。
 今、最後に教科書の話が出たと思うのですけれども、私の記憶が間違っていなければ、最初、三つぐらい教科書があったと思うのですが、それは後で途中から減らされましたよね。その辺はどういう事情だったのかを教えてください。

【バトラー裕子氏】 最初は、御指摘のように複数の教科書がありました。複数の教科書があったのですけれども、やはり違う教科書を使った児童が中学に入学してくると、中学で足並みがそろわないなどの不都合があったということで、各学年1冊に統一されます。4年生なら4年生で1冊、5年生なら5年生で1冊と、各学年1冊となり、全国どこへ行っても同じ教科書が使われました。
 しかし、最近では、また複数の教科書を認めるという形に戻ってきております。その理由としては、英語力の違いなどが顕著になり、全ての小学校で同じ教科書を使うことが、難しくなってきたからです。 御存じのとおり、ソウルとか、特にソウルの中でも江南地区と言われているような、塾が非常にたくさんあって、保護者の教育レベルも高く、英語熱が高いような地域では、もう学校に来る前にかなりの英語力を持っている子なども少なくありません。そのような地域では、教科書の内容は簡単すぎてしまうようになったのです。その一方で、英語熱がそれほどひどくない地域もあるわけです。各学校ないしは子供たちのニーズに合った形にもう少し対応すべきではないかということで、数は正確には把握していませんが、各学年複数の教科書が出てきています。

【吉田委員】 ありがとうございます。

【松本主査】 ほかに。はい、佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】 済みません。ありがとうございました。
 最後の先生の御提言の研修に関して、非常に不可欠で、全員で費用を十分掛けるべきといったところは、非常に私も同感というか、賛同するところなのですが、先ほどありました120時間の研修について、ちょっと1点、細かいのですが、お尋ねしたいと思います。これは、国内で行われている研修ということですよね。

【バトラー裕子氏】 はい。

【佐々木委員】 そうすると、その先生方は、本務の学校の仕事があるということで、その学校とか、行政、教育委員会等の支援というのは、どんなものがあったか、ちょっとお尋ねできればと思います。

【バトラー裕子氏】 韓国では、先ほどお話しした最初の基礎研修だけではなくて、その後も様々な形の研修が行われています。一般的に、集中的な研修に参加しているときには、学校からはほぼ100%解放されている形になっていることが多いようです。ですから、例えば産休の先生がいらした場合代理の先生が入りますよね。それと同じ形で、研修中は代用の方に入っていただいて、研修に集中するというケースが多かったと聞いています。もちろん、業務に携わりながら研修を少しずつ受けるというケースもありました。

【佐々木委員】 ありがとうございます。

【松本主査】 はい、石鍋委員、どうぞ。

【石鍋委員】 現在、韓国の方で、学級担任と専科教員が混在していると。そして、専科の教員が増えつつあるということなのですけれども、その理由として、例えば専科教員の方が指導の効果が高いという評価であるので専科が増えているのか、逆に教員になろうとする人たちが、英語も専科でまずやってみようかなと、教員側の意識が高まっているのか、その辺はどちらなのでしょうか。

【バトラー裕子氏】 正確なところは、私は分かりません。恐らく両方なのではないかと思います。ただ、若い先生方は、もう最初から小学校で英語を教えるということが分かっておりますので、大学を終了する以前に、既に高い英語力を付けて教室に入ってこられるという形になってきています。専科、専科でないに関わらず、小学校の免許を取得する先生方が、英語はやらされるものであるという意識の下に小学校教員になっているのです。ですから、専科と担任の境界線というのが、そんなに明確でなくなっていると考えた方がいいのではないかと思います。

【石鍋委員】 はい。ありがとうございました。

【松本主査】 藤村委員、どうぞ。

【藤村委員】 今の質問に関連するのですけれども、学級担任か専科教員かというお話を頂いたのですけれども、日本と韓国は非常に似ていると。いわゆる担任制を取っていると。私もずっと小学校で子供たちの様子を見ていますと、学級担任の果たす役割というのはすごく大きいし、特に英語というか、外国語活動をするに当たって、教室運営を果たす役割が大きい。つまり、うまくコミュニケーションをし合うときに、その担任の先生の力が大きいと私は思っているのですけれども、やはり韓国でもそういう状況であると考えていいのでしょうか。

【バトラー裕子氏】 はい。そうだと思います。中学、高校の英語の免許を持っている方を中心に採用した専科の教員のシステムが余りうまくいかなかったという原因の一つは、教室運営と、小学校の担任文化に馴染(なじ)めなかったことが挙げられます。
 韓国でも、1クラスの人数が大体日本と同じぐらいだと思うのですが、専科だと複数のクラスを担当することになりますよね。そうすると、多い先生だと、200名といった数の子供たちに教えることになってしまったりするわけです。私が個人的に知っている専科の先生の中には、「子供の名前も全部覚え切れていないわ」というケースもありました。そのような教師と生徒の距離感を、子供は非常に敏感に察します。やはり自分の名前もうろ覚えであるような先生に英語を学ぶというのと、担任の先生から英語を学ぶというのは、子供の方の意識にも影響が出てきます。学級運営も、担任の先生だとぴしっと行くのだけれども、専科の先生だと、なかなかうまくいかないということもあったようです。実際、そういった声も幾つか聞いたことがあります。ですから、学級運営という部分が非常に大きな要素であるということは、韓国においても、紛(まぎ)れもない事実だと思います。

【松本主査】 ほかにございますか。はい、佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】 度々済みません。
 先ほど言った専科と担任のあれですけれども、その辺のボーダーがなくなってきたというところで、小学校の先生の英語力が高くなってきたという御判断ですけれども、その理由とすると、やはり教員養成系の内容に変化があったのか、それとも社会情勢の変化があったのか、その理由がもしお分かりになれば。

【バトラー裕子氏】 両方だと思います。教員研修も非常に力を入れて、ここ10年間やってきたことは事実です。それから、韓国全体で、やはり英語力を付けようという社会的な機運が、非常に高まっていたということと、両方あると思います。大学生一般の英語力というのも、TOEFLなどいろいろな指標がありますが、そういう統計を見る範囲では、英語力が、全般的に上がっております。その中で教員養成プログラムの学生たちも英語力を高めているということだと思います。
 それから、特にリーマンショック以後、韓国も非常に就職難という社会的要因があります。教員は、安定しているということで、特に女子生徒の間では非常に人気の高い職業で、競争率が高いわけですね。韓国も儒教の文化のある国ですから、もともと教員の社会的地位が比較的高いといえます。そこに不況というもう一つの要素が加わって、優秀な学生を教員として集めることができたという事情もあるかと思います。

【佐々木委員】 分かりました。

【吉田委員】 もう一つ。 

【松本主査】 はい、吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】 先ほど、優秀なネイティブスピーカーの話が少し出たと思うのですが、各国の取り合いというのも分かるのですが、その場合、例えば韓国ですと、今のお話だと、ネイティブスピーカーというのは、必ずしも直接英語を教えるのではなくて、使う対象として必要だろうというお話だったのですが、例えばその優秀なネイティブスピーカーが韓国の学校に入った場合は、どんな役割を果たすのですかね。

【バトラー裕子氏】 ネイティブスピーカーを英語を使う相手として見た方がいいというのは、私の個人的な見解で、韓国がやっているというわけではありません。韓国もほぼ日本と同じような形で、ネイティブスピーカーはT・Tで入っています。韓国では、教員免許を持っていない人は、1人で教えることはできません。ネイティブスピーカーは、韓国の教員免許を持っておりませんので、必ずT・Tという形で入ることになります。
 ただ、実情はどうかというと、必ずしもT・Tがうまく成立しているわけではありません。いろいろです。ほとんどネイティブスピーカーが中心に授業をやっているような状況もあれば、きちんと準備をしてT・Tが成立している場合もあるし、逆に、ネイティブスピーカーが、全くヒューマンレコーダーになってしまっているケースなど、現状はいろいろだと思います。

【吉田委員】 はい。ありがとうございます。

【松本主査】 ほかに。はい、松川委員、どうぞ。

【松川委員】 先ほどのプレゼンと直接関係のないことで恐縮なのですけれども、韓国がこのように小学校に教科として英語教育を導入して以降、中学校の英語教育のレベルは、それ以前と比べてどのくらい上がったのでしょうか。今、日本でも英語教育の高度化をしようとしているわけですけれども、小学校に教科としての英語教育を導入することによって、例えば中学校の第3学年の出口においてレベルがどの程度上がるのかということについて、どのようにお考えでしょうか。

【バトラー裕子氏】 どれくらい具体的に上がったかというのは手元に資料がないので、申し上げられませんが、韓国の研究機関からは、学生たちの英語力は上がったという調査報告が出ています。
 ただ、解釈は難しいと思います。小学校で英語が導入されたから上がったのだと、つまり学校教育のおかげで上がったのかどうかというのが言い切れないという難しいところがあります。小学校で導入されたことにより、塾に行く子が膨大に増えました。学校以外のところで英語教育を受ける子供たちが非常に増えたということで、そういうことも相まって英語力が高まったのではないかと解釈している韓国の研究者がおります。
 ですから、学校教育が変わった結果、学生たちの英語力が上がったと断言はできない難しさはありますが、標準テストなどの数値で見る限りでは、英語力は上がっています。

【松川委員】 ごめんなさい。聞き方が悪かったのですけれども、結果として上がったかどうかということもそうですが、例えば教科書の語彙数だとか、扱う事項だとかということがどのように変わったのか、又は変わらなかったのか、ということはどうでしょうか。

【バトラー裕子氏】 カリキュラム上は、扱う内容などを見る限りは、そんなにドラスティックに変わっていると私は認識していません。ただ、申し上げたとおり、今、どういう教材を使ったらいいかというのは、かなりフレキシブルになっていますので、実際の教室でどれぐらいの英語を教えているかというのは、場所により格差があると考えていいと思います。
 これは、中国でも同じです。きょうは韓国の話ばかりしましたが、韓国でも中国でも、英語が教育制度の中に占める割合が余りに大きくなり過ぎてしまったということに関して懸念を示す人々が増えてきています。中国でも、韓国でも、例えば大学入試の中で英語の割合を減らしていこうという動きがどんどん出てきているような状況です。
 非常に格差が激しくなってしまった結果、英語教育へのアクセスの不平等ということから、例えばほかの分野、数学や理科で才能があるという場合でも、英語の点数がよくないと、有名な大学に入れないといったことがあってはいけないということで、英語の比率を下げるという動きが今、出てきているのです。逆風になってきていると考えていいかと思います。

【松本主査】 ほかにありますか。はい、吉田委員。

【吉田委員】 1点だけ参考までに、今、松川先生の話にありました、1997年に韓国の小学校3年生だった子の6年後と、97年に小学校4年生だった子の、同じ学校の高校1年生のときのGTEC for STUDENTSというテストの成績の比較をしたことがあるのですね。そうすると、97年に小学校3年だった子たちの方が、たしか五、六十点上だったと思います。だから、同じ学校に行っているので、同じような環境で育ってきた子のはずなのだけれども、今、先生がおっしゃったように、ひょっとすると塾の影響とか、いろいろある可能性はあると思いますが、まだ1年目ということを考えると、導入された学年、されていない学年だけでも、GTECのスコアが五、六十点違うという結果は、私たち日本が実施した調査で出したことがあります。

【松本主査】 ほかにどうですか。
 1点、聞き漏らしたかもしれませんけれども、120時間の基礎研修の予算は国から出ているのですか。それとも、地方自治体から出ているのですか。

【バトラー裕子氏】 申し訳ないです。そこは、私は把握しておりません。

【松本主査】 はい。分かりました。
 それでは、御質問は出尽くしたようですので、これから御意見を賜りたいと思っております。室長から御説明のあった点なども踏まえて、あと、きょうを入れて2回しかございませんので、かなりの駆け足になるかと思いますが、小学校についてだけではなく、その他の点も踏まえて御意見を賜れればと思います。特に資料の2等に書かれてある論点を踏まえて、御意見を賜れればと思います。どなたからでも結構です。

【松川委員】 はい。いいですか。

【松本主査】 はい。松川委員、どうぞ。

【松川委員】 それでは、会の冒頭で室長から御説明がありました資料2-1の13ページについて意見を述べたいと思います。13ページの小学校外国語活動の課題というところに、ネイティブスピーカー等のALTや、英語が堪能な外部人材が参加する数が多い学校と少ない学校があるなど、かなりのばらつきがあるという課題認識が掲げてあります。これは、そのとおりだと思うのです。
 しかし、授業に参加する回数が多い、少ないという、そのことがばらつきだという認識よりも、私はむしろ、ALTなどのネイティブスピーカー、あるいは英語が堪能な外部人材とひとくくりで言われている人たちの間の差があるということ。とにかく英語が堪能ならば手伝ってください、ALTだったら来てくださいという現状。回数が多いか、少ないかではなく、そのような人たちの教え方をコントロールできていないというところが、現状でのばらつきの大きな一因ではないかと思うのです。
 総合的な学習の時間のときから、英語に関わる活動や指導が行われてきているわけですが、外国語活動であっても、教科としての英語教育であっても、教える人の資質、指導力が大事だということは誰もが認めるところであり、その部分を高めるということについてきちんと取り組んでこなかったというのが一番の問題点であると思っています。今回提案されているように、仮に高学年で教科としての英語教育を導入するということであれば、中長期的にどうだ、こうだというのではなく、実施前に、きちんとした指導力を上げていくような研修や制度設計を行うことが、一番大事なことだと思うのです。
 もちろん、ALTや外部人材を活用することは結構なことですが、先ほどバトラー先生がおっしゃったように、そのような方たちはあくまでもアディッショナルだというところに非常に共感するわけです。だから、責任をもって教える人に、きちんとした英語力と指導力を身に付けるということをきちんとやらなくては、いつまでたっても本当の意味での英語教育の改善は進んでいかないと思うわけです。ですから、このようなアディッショナルな人たちについても、ある程度コントロールしなくてはいけない。ALTを増やすことは悪くないと思います。しかし、どのような人がいいのかということは考えなくてはいけない。例えばJETプログラムで来ている人たちは、そもそもこのプログラムの趣旨が知日派とか親日派を増やしたいということですので、指導力は全然コントロールできていないわけです。
 また、英語が堪能な人といっても、堪能であるということと、小学生に教えることができるということは別問題ですので、このような人たちを今後とも活用するのは結構ですけれども、ある程度質的にコントロールをしなくてはいけないと思います。
 そういう意味では、最初に室長が御説明になったように、教員に対して研修を実施するなり、免許状という形でしっかり資格を認定するという方向に進むことは、非常にいいことだと考えております。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。
 参加する回数ということよりも指導力ということが重要で、それに対して何らかの保証をするシステムを導入すべきだという御意見。バトラー先生の御意見にかなり近いものがあるかなと思います。
 ほかにございますか。

【吉田委員】 はい。

【松本主査】 はい。吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】 またちょっと別の観点ですけれども、先ほどからいろいろな説明の中にもありましたけれども、小学校で英語を教える。担任の先生、あるいは専科の教員が中心になるのだと思いますが、英語力と指導力という問題、先ほどバトラー先生の話の中にもそれが出てきたと思うのですが、最低でもどれぐらいの英語力が必要なのかということに関して、今のところ小学校だからという発想は余りないのかなという気がするのですけれども、果たして本当にそれでいいのかというのは、私はちょっと疑問に思っているのですね。バトラー先生は、それは、それなりの力が必要だとおっしゃって、それは究極的に、最終的にそうだと思うのですね。
 ただ、韓国だって、十数年掛かってここまで来ているわけで、今現状からすると、小学校の先生で英語の免許を持っている人は5%以内という話になっている状況で、では、どれぐらいのレベルの英語力というものを小学校の先生たちに要求できるのかというのは、私はかなり疑問がある。
 ただ、それでも、結構授業運営を見ていくと、クラスルームイングリッシュを使いながら、小学校の先生もうまくやっておられる先生が結構おられるのですよね。ただし、その場合には、やはりネイティブスピーカーなり、外部人材なりのティーム・ティーチングがうまく成立するかどうかというのが、非常に大きな条件になると思います。ティーム・ティーチングということ自体が最終的にいつまで続くのか分かりませんけれども、現段階においては、やはり小学校の先生たちの英語力ということを考えた場合、その先生たちが持っている範囲の英語力で授業を運営するためには、どうしてもT・Tが必要だろうと思います。
 そのためには、今、松川先生がおっしゃったような研修も必要だろうけれども、最初から、担任が韓国のように1人で授業をやるような体制というのは、まず研修の在り方からしても、日本の場合は難しいと思います。
 その辺の猶予というのですかね。どのような形で小学校の先生の英語力を規定するのだったら規定するのか。その辺について、もう少ししっかりとした基準が必要になってくるのではないかなと思いますね。

【松本主査】 はい。小学校の先生の英語力の基準ということについて、現状ではT・Tを前提とした体制を組むしかないということですが、この点について、バトラー先生、何か御意見があれば頂きたいなと。

【バトラー裕子氏】 確かに吉田先生おっしゃるとおり、韓国も10年掛けてここまできたということで、「すぐに、あしたからやっていただきます」ということでないことは確実です。
 ただ、このくらいの英語力は付けてもらいたいというある程度のガイドラインというのは、目標として示すことは必要ではないかと思います。
 私が120時間の基礎研修に韓国の先生方と参加したときに、先生方から聞いたのは、「この研修の中で一番よかったのは、これぐらいの英語力があれば何とかなりますという指針を示してもらえたことだ」ということでした。先生がたもできるだけ英語力は付けるべきだということは頭で分かっているのだけれども、一体どれくらいの英語力が必要なのかが分からない中で授業をするのが一番不安なわけです。研修に参加して、どの程度の英語力が必要かの目安がある程度示されれば、そのレベルに達した方は、もう私は何とかやっていけると自信を付けることができるし、足りない方は、自分で努力することができます。ですから、やはりある程度、国としては大体これぐらいのレベルを身に付けてほしいという指針は出しておくべきではないかと考えます。その方が、先生方も自信を持ってやっていかれることができるのではないかと私は思います。

【吉田委員】 はい。

【松本主査】 その指針については、どういう形で、どのように示されているのでしょうか。例えば、こういうことが説明できるとかのように、教師としてのCAN-DOなのか、あるいは外部の試験の点数等で示されているのか、あるいはCEFRなのか。

【バトラー裕子氏】 最初の120時間のときには、研修が終わった後に、オーラルの試験がありました。ちょっと今手元に資料がないので、具体的にどういう基準だったかというのは、申し上げられないのですが。そのオーラルの試験をクリアしたということで、それが最終レベルではないけれども、一応、何とかあなたは大丈夫ですねということだったわけです。それほど難しい試験ではなかったので、ほとんどの人が、実はクリアしたのですが、やはりそういう何か基準を設けることで自信につながるということですね。
 とりあえず英語力をできるだけ身に付けてくださいと先生方にいうだけでは、先生方には暗い海の中を泳いでいるような不安感があると思います。ですから、やはりある程度の基準があった方がいいのではないかと私は思っています。そして、そうした英語力を身に着けるための支援をすることが必要です。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。
 ほかにどなたか。はい、佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】 今の教員の指導力というか、英語力という点で言うと、高校についても14ページの下の方に英検準1級以上を取得している割合というところがありましたけれども、確かにこれは一つの力の目安として、どれぐらいいるかということは必要だと思うのですけれども、今後、そういった力が必要だという目標として、教員採用試験だとか、いろいろな教員を目指す人間にとっての目標とすれば、必要だと思うのですよね。
 ただ、現職の、例えば定年間近なり、40、50の教員にとって、これを課すということでパーセンテージを上げるということだけが目的ではないので、次のページにありますように、教員自身の英語力を更に引き上げる必要があるという見解ですが、これは当然そうなのですけれども、それと同じ、又はそれ以上に、授業力とか、指導力を引き上げる研修、そういう試みが必要であると考えております。
 当然、英語力を更に引き上げるというのは必要ですけれども、恐らく、授業力を高めるための研修だとか、実際に研修を受けていく中で、自分の力はどれぐらいなのだというところが研修の中で分かっていくことところがあると思うのですね。ですから、それが英検といった数値で表れなくても、必然的に英語力が上がっていくと考えております。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。

【バトラー裕子氏】 ちょっとよろしいですか。

【松本主査】 はい。

【バトラー裕子氏】 実際の英語力もそうなのですけれども、実は重要なのは、先生が自分の英語力にどれぐらい自信を持っているかと言われています。特に、子供の場合は、先生に自信がないということを非常に敏感に感じてしまうということが言われております。自分が自信を持って授業ができるレベルというのは人によって違うかもしれませんが、少なくとも、やはり自信を持って授業ができるようなレベルには、段階的には上げていかないといけないのではないかと思います。

【松本主査】 よろしいですか。

【佐々木委員】 はい。

【松本主査】 中学、高校の話になっているので、非常にベーシックな質問をさせていただきたいと思います。韓国では高校での英語の授業は、韓国人の先生が基本的に1人でやっているのかどうかということと、何語を使ってやっているのかということについて御説明ください。

【バトラー裕子氏】 韓国では、小中高全て英語の授業は英語で行うということが原則となっています。ただ、それは原則で、実際に教室に入ると、必ずしもそうではありません。
 そもそも、実際に英語だけで授業をするのが本当にいいことなのかということが、今、学会でも非常に議論されています。子供の母語を効果的に使うということが、学習を促進するということもありますので、必ずしもイングリッシュオンリーがいいというわけではないという考え方も、徐々に広まりつつあります。
 ただ、政策上は、韓国では英語の授業は全て英語で行うようにということになっています。最近の韓国では、英語だけで授業を行える教員の比率が高まっているという報告は上がってきています。

【松本主査】 佐々木委員が指摘された14ページのデータですが、英検準1級というのは、CEFR、B2ということになっているわけです。これが53%。それで、中学の先生方については、27.9%なのですね。これについて、例えば韓国の先生と比べていかがなものなのかということについて、何かコメントはありますか。

【バトラー裕子氏】 ちょっと比較するのは難しいですね。英検があるわけではないので。

【松本主査】 CEFRのB2レベルという点ではどうですか。

【バトラー裕子氏】 CEFRも使っていないと思いますので、ちょっと単純比較は難しいですね。
 ただ、例えば、教員だけではなくて、先ほども申し上げましたけれども、大学生のTOFELの点数であるとか、そういうものを見ると、今、韓国は非常に高くなってきていますよね。ですから、学生の英語力は全体的に高いと考えていいのではないかと思います。教員は、結構人気職業になっておりますので、優秀な子が先生になっているということを考えると、やはり少なくとも若い先生は、かなり英語力が高いのではないかと想像できます。ただ、実証的に日本の先生と比較するのは難しいかなと思います。

【松本主査】 はい。分かりました。ありがとうございます。
 では、御意見。はい、石鍋委員、どうぞ。

【石鍋委員】 これから小学校の高学年が教科化ということになってくると、必然的に中学校の教員と小学校の教員との連携が、今以上に必要になるのは目に見えているのですが、例えば韓国で小学校の英語が非常に盛んになってきた。その後、中学校の英語の教員との連携とか、またカリキュラムの接続とか、その辺りにどんな変化があったのか、また、現状がどうなのか、分かったら教えてください。

【バトラー裕子氏】 私は中学に関しては余り詳しくないのですが、私が知っている範囲でお答えします。
 韓国における小中の連携は、その重要性が度々指摘されている割には、余り進んでいないというのが私の個人的な見解です。
 もちろん、カリキュラム上の連携はされているのですけれども、まず、教授法が非常に違うということが一つあります。中学の教室に行くと、ちょっと言葉に語弊はありますが、かなり旧態依然とした訳読中心の、試験勉強中心的な授業を行っている先生方もいらっしゃいます。連携という観点から言うと、もう十何年もやっている割には進んでいないというのが、私の個人的な見解です。
 それから、小中合同の研修というのが、驚くほど少ないのですね。私も韓国に行くたびに、小中の先生が一緒に研修する場がもっとあってもいいのではないかと提案したりしています。小学校の先生は、自分が経てきた道でもありますし、中学でどういうふうに英語を教えられているかというのは、大体想像が付くわけです。ところが、中学校の先生が小学校でどんなふうに英語を教えられているかというのを意外に御存じない方が多い。授業は1回、2回見ましたというレベルの方はいるのですが、本当の意味でどういう形で、小学校で英語が教えられているのかをきちんと把握されている方が、驚くほど少ないのではないかと思います。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。
 そういうことを踏まえると、どうですか。小中の先生の合同研修ということについては、石鍋委員、どうお考えでしょうか。

【石鍋委員】 今、私の勤めている自治体では、小中の合同の研修を年に3回ぐらいはやろうと。小学校の外国語活動を見たり、中学校の英語の授業を見て、お互いにディスカッションしようというのは取り入れ始めているのですね。ですが、私の感覚ですけれども、そこでの部分では、ディスカッションはやるのですけれども、実際に中学校の教員が学校に戻って、では小学校の外国語活動から何かアイデアをもらって授業改善を図っているかとなると、なかなかそうはいかない。
 今、バトラー先生のお話を伺って、これは一つの壁のような気がしますので、かなり焦点化をして、小中の合同の研修なり、ティーチングスキルの交流なりを、やはり現場としてはやらなければいけないなと、私は今強く感じました。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。
 はい、吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】 今の石鍋委員の御発言の続きですけれども、私が今、足利でずっと小中を両方とも見ているのですけれども、秋に小学校の授業を、中学校の先生が何人か来てくれますけれども、全員は来てくれないのですけれども、公開授業でやります。その子供たちが、中学校に入った6月頃に、今度は中学1年生を中心とした授業を見る。そのときも、小学校の先生たちにも来てもらいます。つまり、小学校でこういうことでやってきた子たちは、中学1年生に入って二、三か月たったら、こういうことをやっていますよということで、お互い連携していこうと。
 その際に、二、三年前ですかね。ある中学校の先生が、自分が今度公開授業をやるというので、わざわざ自分から小学校に赴いて、幾つかの授業を実際に観察されて、ああ、もう小学校でこういうことをやっているのだとか、こういうふうに先生は教えているのだということを見た上で、公開授業のときの授業を組み立ててくださったのです。それで、非常によかったのですね。
 だから、単なる合同研修ということよりも、私は中学校の先生が小学校の英語の授業を授業観察して分析するとか、あるいはその逆もあり得ると思うのですね。小学校の先生が中学校の授業を見て、それに対するいわゆる授業観察を実際に行って、それを分析してみるという形の研修。単に皆さん集まって、「はい、では、モデル授業を一つ見ましょう」というのは余り意味がない。今先生がおっしゃったように、ほとんどそれが中学校の授業で生かされないということがあると思うので、何かその辺にもうちょっとしっかりとした研修方法の在り方の検討というのを入れる必要があるのではないかなと思いますね。

【松本主査】 はい。藤村委員。

【藤村委員】 私の今いる学校は、1小1中の学校でして、そういうことから言いますと、中学の先生が小学校に授業を教えに来ると。逆に、小学校の先生が授業を見に行くということはしているのですが、この間、中学校の英語の先生と話をする機会があったときに、中学校は、特別な研究指定か何かを受ければ、学校体制として取り組んでいくことができるのだろうけれども、何も指定がなければ、それぞれの担当の英語の先生に任されていると。つまり個人に任されている。だから、僕は僕流のやり方でやるし、でも、来年の1年の先生はまた違った指導になりますということをおっしゃっていた。
 小学校の場合ですと、英語であっても、どの教科であっても、いわゆるチームを組んでお互いどうだろうか、こうだろうと言いながら授業を組んでいくのですけれども、中学はその個人に任されていると。ですから、英語の能力が付けばいいかということではなくて、やはりその指導方法の共有化というのですかね。チームを組んで共有して取り組んでいくという組織といいますか、そういう仕組みができないと、非常に難しいのではないかと。
 今、話を聞いていて、それは小と中で連携できるようなチームの在り方というか、指導ということになるかもしれませんけれども、小中が動くような英語の指導力のある方がいらっしゃると、非常にそこの接続がうまくいって、小中の連携も、中学のチームを作ることも可能なのではないかなと、今思っています。

【松本主査】 ありがとうございました。
 小中の連携については、その在り方についても検討するということで、御意見を賜ったということにさせていただければと思います。
 4の指導と評価については、かなり突っ込んだ意見を頂きましたので、もしよろしければ、17ページ以降に記載されております教科書・教材について、何か御意見があれば頂きたいと思います。
 はい、松川先生。

【松川委員】 教科書・教材のことについて、何点か申し上げたいと思います。まず、現在の教科書のボリュームについてです。一般的に日本の教科書は、総合教材と言いつつ、大変薄いものだと思います。高校になれば科目が違いますので、様々な教科書があるかもしれないですけれども、中学校の教科書は、例えば理科などは教科書が上下に分かれていて併せるとかなり分厚いものとなっています。しかし、英語の教科書は非常に薄いものが多いのではないでしょうか。量の多少が本質的な問題ではないわけですが、コミュニケーションの質を考えたとき、今の教科書の量はこれでよいのかということです。一方、教科書の内容について考えてみますと、今の教科書が4技能を扱える総合教材にはなかなかならないのではないかということも思うわけです。教科書というのは紙の教材ですので、いきつくところ「読む」ものなわけで、これをどのように工夫・改善するかということになろうかと思いますが、現状では、4技能を指導できる総合教材的なものにはなりにくいと思います。また、別の視点で英語の教科書を見たとき、やはり文法シラバスで構成されている教科書がかなり多くあると思います。コミュニケーション重視の授業が求められ、コンテントベーストであるとか、タスクを活用した言語活動に取り組めるようにするであるとか、言語の使用場面を大切にした指導を行うであるなどが大切にされている中、現在の教科書では、例えばbe動詞の過去形が新出文法事項となると、それを使用することが目的となった活動を、コミュニケーション活動と称されている場合もあるのではないでしょうか。
 私は、今までのペーパーベースの教材には限界があると思いますので、これだけいろいろと改革しようとしているのであれば、この際、小学校の教材だけではなく、中・高等学校の教材についても、予算を費やして、4技能を確実に身に付けることに資するものとなるよう改革すべきだと思うのです。その辺も含めて、韓国の教材のボリュームや、教材作成に係る予算などについて教えていただけたらと思うのですが。

【松本主査】 では、バトラー先生、お願いします。

【バトラー裕子氏】 韓国は今、ほかの科目はちょっと分かりませんが、小学校の英語の教科書はほぼ100%IT化になっています。ただ、紙の教科書ももちろんあって、教室では紙の教科書を重点的に使っています。不思議と、教室内でのタブレットの使用は余り進んでいないようですね。デジタル教材はどちらかというと家庭での使用が中心のようです。でもとにかく、教材のIT化は進んでいて、マルチメディアを使って、授業をすることが可能です。英語のIT教材、及びIT機材の導入に具体的に幾ら掛けたかは、私は分からないですが、かなり予算を投じてやっているということは、間違いないと思います。
 ただ、教科書の内容に関しては、小学校のレベルでも、ちょっと文法的な指導が結構入っていたり、書くことも多かったりなど、個人的には、ちょっと改善の余地もいろいろあるかなと思っています。

【松本主査】 よろしいですか。

【松川委員】 はい。

【松本主査】 はい、石鍋委員、どうぞ。

【石鍋委員】 今の松川先生の教科書のことは、私は同感でして、コミュニケーション活動をするように見えるのだけれども、ターゲットセンテンスなどが、ぼんと出てしまっているものですから、文法シラバスのようになってしまって、その文型などを定着させるためのドリル的な活動をコミュニケーション活動と言っている教員が、まだかなりたくさんいるというのが実情だと思います。
 ですから、教科書が内容ベースになるとか、タスクなんかを中心としたものになっていくことで授業が変わる。主たる教材ですから、教科書をきちんと使っていくということは大事なことなので、この4技能のバランスという議論がずっとされているんですけれども、それが教科書に反映されるということは、早急にお願いできればうれしいなと思っています。

【松本主査】 ただ、そのお願いをする先がどこなのかという点を明確にしないといけませんね。

【石鍋委員】 どこを見たらいいのか、分からないのですけれども。

【松本主査】 実際、今使用している教科書も検定合格しているわけですよね。

【石鍋委員】 そうなのですよね。

【松本主査】 どうしたらよろしいでしょうか。何か御意見あれば。

【石鍋委員】 検定のシステムについては、私はよく分からないのですけれども、やはりこの4技能をバランスよくという話をずっとしているわけなので、検定の部分で、そこをどう図っていただけるか。それは、やはり国の方でお考えいただくというのが大事なのだろうなと思います。

【松本主査】 この点について、何か吉田委員か松川委員、お願いします。

【吉田委員】 はい。検定に関しては、いろいろ文句があると言ったらあれですけれども、教科書を編さんする人間からすると、かなりこれでいいのかなというのは、何度も今まで経験してきていることですよね。
 ですから、本当に理想的なものを作ろうと思っても、出版社にしてみると、やはり売れる本を出版するわけですから、学習指導要領どおりのものを作ったら採用する先生がいないので、結局営業に負けてしまうと。だから、余り変わっていないテキストが一番売れるというのが常識的ですよね。ですから、残念ながらそういう状況があるのは、ある程度しようがない部分もあるのかもしれませんが、このまま放っておいたら大変だなと思います。
 ただ、これから変えようとする今の機運ですよね。CAN-DOとか、そういうものが入ってきて、学習目標ももう少し明確化されて、今までと違う方向を向いてくれば、それをもっときちんと実現できるような教科書にしてもらわないと困るなと思いますね。
 ただ、1点、それに加えて、先ほど小学校でも教科になることを、一応前提として、きょうも御報告がありましたけれども、前も資料を見せていただいて、中学生になった小学生が、もう少しこういうことを小学校時代にやってもらいたかったという中に、読み書きが結構たくさん入っていたと思うので、それに対して、先ほど室長の話からも、今現在、教材についての作業が始まっているような話がありましたが、今の石鍋委員の話も含めて、この教材はどうなっていくのかな。何が中心なのかな。
 まだ、本会議の方でもCAN-DOについて、まだまだ本当に詰めたところまで行っていない部分もあると思うのですが、今度新しく小学校から高校まで、一つのCAN-DO的基準によって全体の流れを築いていくのだとすれば、今小学校のために作っている教材というものを、何らかの形でCAN-DOが入っているのか。そういう目標値というものがそこにあるのか。あるいは、今まで従来通りの文法的シラバスに基づいたものになってしまっているのか。その辺は非常に気になる点なのですよね。
 ですから、今、もちろん時間的に、もう早くやらなければいけないというので、今作るということ自体には、反対は全くしないのですが、どういう形でそれが進んでいるかというのは、非常に気になるので、何らかの形で、進んでいる方向などについての報告をしていただくか何かをした方がいいのではないかなと私は思います。

【松本主査】 はい。では、室長、お願いします。

【圓入室長】 御説明が十分でなくて申し訳なかったのですけれども、18ページに書いてあるところについて、もう既に補助教材を作り始めているように見えてしまったのかもしれないのですが、まだ着手できておりません。実は、こういった場で頂いた御意見を踏まえながら、今年度早急に、残りの時間もかなり厳しい中ではございますが、着手させていただくと。いずれ、また有識者会議の方でも、本会議の方でも御報告といいますか、御意見を頂戴できればと考えております。

【吉田委員】 はい。

【松本主査】 吉田委員の御発言の前半部分ですが、検定の在り方というか、運用については、検討していただきたいという形で意見を盛り込むということでよろしいでしょうか。
 例えば、今は文字については検定していますけれども、音声については全く検定していないという実態があります。映像どころか、音声について全く検定していないわけです。そういう点も含めて、検定の在り方を見直すということで、意見を賜ったということにさせていただければと思います。
 残り時間が少ないのですが、19ページの下辺りから、指導体制ということについて書かれてありますので、何か御意見をここで付け加えたいという方がいらっしゃったら、お願いいたします。
佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】 ちょっと話が戻ってしまってもいいですか。

【松本主査】 はい。

【佐々木委員】 済みません。指導体制、直接あれですけれども、先ほどの教科書に関しては、高校でもやはり教科書で授業をやっている以上、教科書の変革に関しては、大変興味があるところでございますが、デジタル化とその検定についても、同じように高校の方でも進めていただければという要望でございます。
 あと加えて、国内の検定教科書というだけではなくて、いろいろな場面で世界的な教材だとか、教科書が使えるような環境をもうちょっと整えて、柔軟に扱えればなということがあります。
 特に、前回の親委員会のときに松本委員がおっしゃった、高校で専門学科とか、国際学科とか、いろいろそれを特色としている学校があると思うのですけれども、そこでの学習指導要領上の科目以外に、学校設定科目みたいなものをたくさん設定しながら、そういう世界的教材を取り入れて先進的にやっていくということが法的にもフォローしていただければ、更に推進するのではないかなと考えております。
 一応、要望で申し上げます。

【松本主査】 はい。教科書の検定制度だけではなく、教科書の採用についても見直していただきたいという御意見でした。
 指導体制について、何かございますか。松川先生、何か。

【松川委員】 はい。例えば、23ページに免許法認定講習を開設して、小学校の先生が中学校の免許が取得できるようにするということを具体的に書いていただいているのは、非常にいいのではないかと思います。
 ただ、一方、講習を問わない免許というものが考えられているようですが、免許制度というものが、今後どのように変わっていくのかということと非常に関係があると思っています。小学校の先生が中学校の免許を取るとか、中学校の先生が小学校の免許を取るということだけではない在り方も考えられますので、その辺がどのくらい資料に盛り込まれるのかということが考えたいと思うことです。
 それから、教員養成についてです。例えば25ページに、高校でも中学校の英語の免許を取るには、英語学、英米文学何単位取ることになっているわけです。しかし、英語学であればどのような英語学の授業を受講しても教員になるための単位になるというのは、私はおかしいと思います。英語の教員になるための英語学はどういうものなのかというのを、もう少し具体的にしていただかないと、教員養成の改善は基本的に変わっていかないと思います。
 私も大学にいたから分かりますけれども、大学の先生というのは、ティーチングプロフェッサーというよりも、リサーチプロフェッサー的な色彩が強く、御自分の研究している英語学の固有の分野に特化した内容が授業で扱われることが多く、そのような授業で学んだだけで英語学が分かっていると学生に思われるのは困るわけです。免許取得のための単位としては、どのような内容が必要なのかというところまで掘り下げていかないと、教員養成は変わっていかないと思います。

【松本主査】 大学を離れて、大学教員に大分厳しくなられたね。
 今の場合、四つの柱の中身もそうですけれども、この四つの柱でいいのかという問題も検討していただきたいということですね。

【松川委員】 そうですね。

【松本主査】 はい。吉田委員。

【吉田委員】 先ほど松本先生からもあったのですけれども、教員のCAN-DOという話がちょっと出ましたね。いわゆるEポスタルだとか、Jポスタルみたいな、教員の資格について、こういうことができる、ああいうことができるというのも、ある程度出てきているので、それこそ学習者に対する、又は教育現場におけるCAN-DOと同じような形で、教員の研修の場においても、教師としてこういうことができる、ああいうことができるかどうかという基準を、モデルとして作っていく必要があるのではないかと思うのですね。それは、やはり必修科目に入れるという形でやっていけば、今、松川先生がおっしゃったような点もある程度は解消できる部分があるかなと思います。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。非常に重要なポイントだと思います。
 ほかに何か。

【バトラー裕子氏】 ちょっとよろしいですか。

【松本主査】 はい。

【バトラー裕子氏】 教員養成のプログラムに関連することで、私がいるペンシルベニア州の例をちょっと申し上げたいと思うのですけれども、教員養成のプログラムとして認可されるためには、州が決めた幾つか項目があります。そして、それぞれの科目のシラバスを提出しなくてはいけないことになっていて、そのシラバスの中身を精査されて、これとこれの項目が全部カバーされているからオーケーですという形で認可されるとなっています。ですから、かなり厳しく内容をチェックした上で、このプログラムは教員養成の免許を出すプログラムとしてふさわしいかの判断がされます。

【松本主査】 はい。ありがとうございます。
 たくさんの論点がございましたけれども、そろそろ予定された時間になりました。もう一回ございます。これまでの御意見を事務局の方で整理していただいて、次回はそれらを踏まえながら、更に議論を深めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【松本主査】 はい。それでは、事務局から、今後のスケジュールについて、お願いいたします。

【圓入室長】 最後のページで、39ページを御覧いただければと思います。
 資料3が添付されておりまして、次回の指導体制に関する小委員会が、8月19日、15時から17時ということで、また場所が決まり次第、御連絡をさせていただきたいと思います。
 その前に、8月8日でございますが、有識者会議もございまして、こちらについては、前回御議論いただいたことを更に深めさせていただくということを想定しておりますので、会議が多ございますけれども、御協力いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【松本主査】 それでは、本日はこれで閉会させていただきたいと思います。皆様ありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課国語教育推進室

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)