資料3 これまでの議論を踏まえた免許状更新講習の改善の方向性について

1.「必修領域」のあり方について

1.現状と課題

 免許状更新講習は、必修領域(12時間以上)と選択領域(18時間以上)からなり、必修領域については、告示により4項目8内容が定められているが、これまでに、次のような指摘がなされている。

○内容が広範にわたるため、履修が広く薄くならざるを得ない。もっと深く学びたい、もっと深く教えたい、という要望がある。
○内容を精査し最低限にしないと、どの教員にも必要な共通部分が明確にならない。
○任命権者が行うべき研修内容と棲み分け、大学の専門的知見を生かした内容とすべき。
○受講者の希望・ニーズのみならず、社会の要請も踏まえ、内容を設定すべき。
○講習において全校種・免許種に対応することは難しく、いずれかの校種・免許種を中心とした内容構成とせざるを得ない。このため、特に幼稚園教諭や養護教諭の受講者から、ニーズに合わないとの声がある。
○受講者の年代の相異も踏まえる必要がある。
○「教員の最新の事情」とは何かを明確にする必要がある。例えば、学習指導要領の改訂などは、数年前に改訂が行われた場合、現職教員は既に理解している。
○様々な校種・免許種の者が交流し相互理解を図ることができる良さを大切にすべき。
○担当できる講師が限られており、講師の負担軽減も考える必要がある。

2.これまでの議論を踏まえた改善の方向性(案)

 必修領域において、受講者が共通に履修すべき内容を精選してはどうか。
 また、時宜に応じ社会の要請を踏まえた内容や、校種・免許種に応じた内容を履修できるよう、新たに選択必修領域を設けてはどうか。

<必修領域>
●全国共通の項目・事項に応じ、各開設者が網羅的に開設する講習を、全受講者が共通受講。

<選択必修領域>
●全国共通の項目・事項に応じ、各開設者が選択的(又は網羅的)に開設する各講習を、各受講者が選択受講。
【例1】 1~2講習、【例2・3】2~4講習

<選択領域>
●各開設者が任意に開設する各講習を、各受講者が選択受講。

 【例1】 

 【例2】

  【例3】

 必修領域(6時間)

 必修領域(6時間)

 選択必修領域(12時間) 

 選択必修領域(6時間)

 選択必修領域(12時間)

 選択領域(18時間)

 選択領域(18時間) 

 選択領域(12時間) 

 

(2)必修領域や選択必修領域は、どのような考え方に基づき、どのような内容で構成することが適当か。 

<必修領域・選択必修領域・選択領域共通>
●主な開設者である大学の専門的知見を生かした内容、最新理論・研究成果を反映しやすい内容

<必修領域>
●教育的愛情や倫理観など、国民が教員に共通して期待するものを客観的視点から理解し、教員としての使命感や責務を再認識することのできる内容
●子供や学校・教員が置かれる状況や直面する問題を、子供の発達段階や学校段階を通じて横断的・俯瞰的に理解することがふさわしい内容
(具体例)
・教員としての子供観、教育観等について
・子供の発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む)
     
<選択必修領域>
●時宜に応じ社会の要請を踏まえた内容
●対象者を校種・免許種や年代に応じてある程度区分することがふさわしい内容
●研修等を通じ一部の現職教員はある程度学んでいる可能性があるものの、そうではない受講者の場合には、積極的に受講が望まれる内容
●比較的多くの大学等で開設が可能と考えられる内容
(具体例)
・小学校外国語活動           ・学習指導要領の改訂の動向等
・道徳教育                       ・法令改正及び国の審議会の状況等
・教育におけるICT活用             
・特別支援教育
・いじめ対策

2.現職研修と免許状更新講習の関係の整理について

1.現状と課題

 学校の教員は、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならないこととされており、現職研修は、現職教員の資質能力の向上を目的に行われる。一方、免許状更新講習は、教員免許状所有者(現職教員及び非現職教員)が、教員免許状授与時(又は更新時)に修得対象とされていなかった最新の知識技能の修得を行うことを通じて、その時々で教員として求められる資質能力の確保・確認を行うことを目的としている。
 このように、現職研修と免許状更新講習の制度上の趣旨・目的は異なるが、特に、任命権者に実施義務がある10年経験者研修に参加する一部の公立学校教員の研修時期と更新講習の受講時期が重複することを考慮し、これまでに、次のような指摘がなされている。

○10年経験者研修と免許状更新講習の重複がなくなるよう、具体的な措置をすべき。
○大学と教育委員会は、それぞれ違うスタンスから携わっており、単純に免許状更新講習と10年経験者研修のシステムを融合してもうまくいかない。併存・発展できる仕組みを作る必要がある。
○私立学校教員は10年経験者研修を受講できない。免許状更新講習は国公私立の教員が対象であることを考慮する必要がある。
○教育委員会の研修は実践的すぎるため、大学のアカデミックな講習を受けたいという声もある。
○免許状更新講習は、受講者のニーズを重視すると選択講習が増え、任命権者の研修に近づく。一方、任命権者は、アカデミックな内容を入れた研修を増やしており、免許状更新講習に近づいている。
○免許状更新講習は、受講者からみれば研修と同じであるが、免許状が失効してしまう点で最優先となる。受講期間を弾力的にし、ポイント制のような仕組みが取れないか。
○任命権者が行う研修について、免許状更新講習として行われるものの増加を図るべき。
○新しい免許状を取得すると修了確認期限の延期ができることを踏まえ、更新講習の受講が専修免許状の取得を促進するようなシステムがあると良い。
○夏休みは部活動や大会、補習等があり、日程的に受講が厳しい状況がある。
○8月に免許状更新講習の開設が集中しているが、都道府県や市町村の研修もこの時期に実施しているので、棲み分けが必要。
○任命権者等が柔軟に研修を実施できるようにすべき。
○免許状更新講習の開設時期を土日や冬休み、春休み、夜間などに分散するよう促していくべき。翌年4月に急遽教職に就く人のためにも、年度後半にある程度開設が必要。
○eラーニングは促進すべきであるが、対面講習の効果との比較や、教材開発、試験の実施方法などについて検討する必要がある。

2.これまでの議論を踏まえた改善の方向性(案)

 現職教員のみを対象に資質能力の向上を図る現職研修と、現職教員及び非現職教員を対象に教員としてその時々で求められる資質能力を確保・確認する免許状更新講習は、制度上の趣旨・目的が異なるが、受講により教員としての専門性の向上が期待される点においては同じ機能を有する。このことを踏まえ、現職教員については、受講者の負担感や重複感の解消を図るとともに、各々の制度・仕組の利点・価値をより良く享受できるようにすることが望まれる。このため、任命権者に実施義務がある10年経験者研修の実施時期をより弾力的なものとし免許状更新講習の受講時期との調整を図りやすくするとともに、その内容についても重複が生じないよう調整を図ることとしてはどうか。
 さらに、教職生活全体を通じた教員の学びを支える観点から、免許状更新講習の受講者が、教育活動や研修等との日程調整を円滑に図り、へき地・離島等の地理的条件によらず柔軟に受講できるようにするとともに、免許状更新講習を通じた学びの成果を教職生活に一層生かしていくことができるよう、次のような取組を促進してはどうか。
●土日や冬休み、春休み、夜間など、様々な時期への講習開設時期の分散
●eラーニング環境の充実
●任命権者等が行う研修の免許状更新講習としての認定の促進
●大学や教育委員会が開設する免許法認定講習(上位や他種の免許状授与要件となる単位を取得するための講習)の免許状更新講習としての認定の促進

3.修了認定試験のあり方について

1.現状と課題

 免許状更新講習の修了認定は、免許状更新講習規則第6条において、「修了認定は試験による成績審査に合格した者に対して行う」こととされ、修了認定の基準は、告示において、「各事項毎の項目及び内容について基礎的な知識技能を有すること」とされているが、これまでに、次のような指摘がなされている。

○修了認定試験や評価は、特に必修領域について大学や講習によって様々な形式があり、不平等感がある。
○対面式の講習では多様な形式の試験が可能であるが、eラーニングは択一式などにならざるを得ない。
○修了認定試験を講習の直後に実施し短期記憶力を問うような試験方法は、更新講習の趣旨に鑑み妥当か。
○レポート等の形式で大学教員が採点を行うのは負担が大きい。
○試験を行わずに、その講習に効果があったとして修了を認定することは困難である。どこかで評価を行う必要がある。
○基本的で良質な試験問題が持続されるよう、ある程度基準を検討する必要があるのではないか。
○本人に足りなかった部分をどのように還元し、資質向上につなげていくかが課題。
○「試験」という言葉が教員にストレスを与えているので、名称を「効果測定」などに変えてはどうか。
○履修認定で不合格になった場合、次の講習を探さなければならないので、開設者が出す修了証明証はできる限り早く送付することが望ましい。

2.これまでの議論を踏まえた改善の方向性(案)

 修了認定試験は、教員として必要とされる最小限の資質能力の確保・確認を図る観点から、履修内容について基礎的な理解が図られているかを確認するために行われるものである。現在、各講習は、大学が主たる開設者となり、理論付けられた実践を目指して、講義、グループ討議、実習、実技、現場参観等様々な手法により工夫を凝らして行われている。
 このため、各講習の特徴に応じた試験方法を採れるよう、今後とも修了認定試験は様々な形式を許容することが適当と考えられるが、より適切かつ効果的なものとする観点から、次のような改善を行ってはどうか。
●基礎的な理解が図られているかを確認することに焦点を置いた試験内容とする。
●特に対面式の講習は同日に試験が行われることを考慮し、ノートやテキストなどの持ち込みを可とするなど、要点が理解されていれば解答できる方法を採ることとし、短期記憶を問うような方法は採らないこととする。
●現職教員、非現職教員の別で解答に有利・不利が生じない問題設定を行う。
●基礎的な理解が図られていないと評価された不合格者には、理解が不足している点を具体的に本人に示し、努力を促す仕組みを設ける。

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