全国的な学力調査に関する専門家会議(平成25年7月9日~)(第5回) 議事要旨

1.日時

平成26年3月28日(金曜日)13時~15時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)13階共用第1特別会議室

3.議題

  1. 平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の報告(お茶の水女子大学からの報告)(保護者に対する調査結果)
  2. 教育委員会に対する調査結果
  3. その他

4.出席者

委員

梶田座長、耳塚座長代理、大津委員、小川委員、加藤委員、小泉委員、柴山委員、清水(静)委員、田中委員、垂見委員、長塚委員

5.議事要旨

議事1 平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の報告(お茶の水女子大学からの報告)(保護者に対する調査結果)

  • 耳塚委員、垂見委員及び共同研究者の浜野准教授、冨士原准教授より、平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」の報告があり、その後、質疑応答が行われた。質疑応答の主な内容は以下のとおり。

(委員)
第6章のグラフは、点の大きさが異なっているが、学校の規模か何かを埋め込んでいるのか。

(委員)
学校の規模を埋め込んでいる。

(委員)
報告書の60~64ページの結果を見ると、教育期待というのがかなり大きなウエートを占めていると思われるが、これは、子供の学習への動機付けを間接的に尋ねている項目であると解釈することは可能か。

(委員)
御指摘のとおり。この教育期待という項目は、子供にどの学校段階までの進学を期待しているかという質問であるが、学力に直接影響を与えるだけではなく、学習意欲にも強い影響を与えているということが見出されている。

(委員)
高い成果を上げている学校の報告についてお聞きしたい。少人数指導あるいは少人数学級の効果については、習熟度別指導も含めて効果があったという報告であったが、最近では、習熟度別指導がいわゆる学力の固定化を生むというような指摘もある。効果を上げている学校では、それがどのように解消されているのか、知見があれば伺いたい。

(発表者)
学校訪問時に、少人数指導をしているかを尋ねたが、実態としては、能力混交で少人数編成をしている学校と、習熟度別にしていることを指して少人数と呼んでいる学校と、あまり明確には区分けできていなかった。習熟度別指導と思われる場合でも、子供の希望をとった結果、能力別に分かれただけであり、意識的に習熟度別指導を行っているとは考えていないというような、捉え方の違いが存在する。そのため、今回は、習熟度別指導という言葉は使わず、習熟度別指導も少人数指導に含めて分析している。

(委員)
資料1-1のスライド12のまとめのところに、「SESに関わらず、宿題をする児童生徒ほど(中略)学習方法が独立して学力に与えるポジティブな効果である」とあるが、ここで言う学習方法とは「宿題する・しない」ということなのかを教えていただきたい。
また、スライド14のSESによる学力格差を抑え込んでいる学校の取組の分析で、算数A問題を用いたとあるが、資料の最初の方を見ると、算数A問題は、LowestとHighestの差が最も小さく、SESの影響が一番少ないように見える。なぜ算数A問題を選ばれたのか、理由を伺いたい。
さらに、スライド16・17について、先ほどこのドットの大きさが学校規模だという説明があったが、我々の経験上、学校規模が大きいほど、学校の取組の成果が出にくく、小さい学校ほど、取組の成果が出やすい。今回の調査では、そのような学校規模による差があったのか。
最後になるが、スライド19で、成果を上げている学校の特徴をまとめているが、例えば少人数指導や少人数学級の効果については、都道府県や市町村が単独で特別な支援策を打っていることを指しているのか、国の予算を活用しているものも含めて指しているのか、教えていただきたい。

(委員)
一つ目の質問だが、これは報告書の105・106ページの記載内容のまとめになっている。今回は、学習方法に関わる様々な要素を検討し、その代表として「宿題をする・しない」という回答との関連を見ている。学習方法については、多様な分類ができると思うが、その全てについて現段階で検討が終わっているわけではない。
質問3点目の学校の規模による取組成果の違いであるが、高い成果を上げている学校のうち、小規模な学校については、今回は意図的に事例研究の対象からは除いている。理由としては、1学級1担任が教えていることを想定すると、学校の組織的な取組というよりは、その担任教員の影響が強く出てしまう可能性があったためである。
ただし、学校の小規模性が、校内における様々な取組の改善等に効果を持ちやすいという側面も考えていく必要はある。今回は、訪問調査校を選定するにあたり、学校規模の違いを除外する措置を取っているが、調査を継続できるのであれば、もう少し事例対象を広げて見る必要があると考えている。

(委員)
質問の2点目、スライド14でなぜ算数A問題を使ったかという点であるが、この分析をするに当たっては学校ごとのSESの傾きが異なっていなければならない。算数A問題に対するSESの影響力の平均は大きくないが、学校ごとのSESの傾きのばらつきが大きかった科目が算数Aであったため、算数Aを使用している。

(発表者)
最後の質問であるが、今回訪問した7校のうち、中学校3校はいわゆる国もしくは県の加配を受けているという状況であった。小学校については、4校のうち2校が市独自の加配を受けていた。全ての訪問調査校で、国・県もしくは市町村の加配を受けているという状況であった。

(委員)
先ほどの質問と関連するが、学校の取組による違いを見るための分析対象として、統計的な理由から、算数Aを選んだというのは理解できる。しかし、現在は、社会に出た時に、思考力や判断力、表現力が育っていないことが、子供の進路や就職、あるいは仕事上の様々な意味での成果に直結するような時代になってきている。そのため、教育的な観点からは、B問題という、いわゆる活用型の学力を問う問題について、傾きを小さくするための手だてが何かというのが分かると、学校の先生方にとっては有効な知見になり得る。訪問調査の結果でも構わないが、何らかの知見があれば教えていただきたい。

(委員)
B問題とA問題を比べると、B問題のほうが明らかに分散は大きいが、ここでの分析のように、学校の取組によって家庭背景の効き方が違うかを見るときには、全体的な分散ではなく、学校ごとに家庭背景と学力の関係が異なっている、つまり、最も学校ごとのばらつきが大きかった科目に注目する必要がある。ここでは、そのような観点から、算数Aを使っている。
これは、他の教科では格差がないということではなく、どの教科でも格差はあるが、教科によっては各学校で傾きに大きな違いが見られず、このような分析はできないということである。もっと全体的に、どのような施策が効くのかということであれば分析可能だが、今回は学校の違いという観点からの分析のため、算数Aを使用している。

(委員)
つまり、統計的に見ると算数B・数学Bや国語Bでは、学校間の格差が小さいという結果が出ているということか。

(委員)
学校間の平均の差がないというわけではない。学校間の平均の差はあり、それはB問題で大きくなる。しかし、学校間のSESの傾きのばらつきについては、他の教科では大きくないものもある。

(委員)
今回は、全体として学校内の学力格差を抑え込んでいる学校の取組は何かという観点と、もう一つは、4種類の問題を合計した時に、社会経済的な背景から予測される水準よりも良い成果を収めている学校というのはどのような学校なのかという観点から分析を行ったが、分析方法は様々ある。例えば、B問題について、社会経済的な背景から予想されるよりも高水準の成績を持っている学校は、どういう特徴があるかといった分析も可能である。機会があれば、そのような分析も続けてやってまいりたい。

(委員)
スライド6枚目の上から二つ目の「中学校に比べ、小学校でSESの影響力が強く認められた」という結果に興味があるが、この具体的なインプリケーションについてお聞かせいただきたい。

(発表者)
これは第3章の重回帰分析の結果から得られた知見であるが、中学校と小学校で、SESスコアの影響力の強さを示す回帰係数を見ると、特に小学校の国語でSESスコアの影響力が強い。この解釈だが、読書活動、家庭の読書習慣や保護者による働きかけ、また、図書館に一緒に行くといった行動が、小学校の方で多く、家庭での言語活動の働きかけの効果が、より小学校の方で出やすい。つまり、このような文化的な行動が、SESの影響を強く受けているということを表しているのではないかと解釈している。

(委員)
もう1点付け加えると、こういう結果を見ると、就学前におけるSESの影響について考えざるを得なくなる。これは学力調査の範囲を超えてしまうが、どこかで行っていかなければいけないテーマだと思う。

議事2 教育委員会に対する調査結果

  • 事務局より、教育委員会に対する調査結果の報告があり、その後質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。

(委員)
資料2-1を見ると、相関が見られた教科として、小学校の算数Bが多く出てくるが、学校や調査のA・B、教科等の違いで、何か特徴があったのか。また、二つ目の質問になるが、正答率レベルで、もともと正答率の高い自治体、低い自治体があると思うが、例えば低い自治体でも何年か前より上がっているとか、何年か前より下がっているとか、そういったことの分析はされているのか。

(事務局)
一つ目の質問だが、一般的にA問題とB問題を比べると、B問題の方が比較的、分散が大きくて差がつきやすいため、結果として、B問題の方が、相関が見られる傾向にある。年末に発表したクロス集計でも、A問題よりB問題、またB問題の中でも記述式問題で、特に影響が出ている傾向が見られた。小学校の算数Bが特に多い要因については、今回はそこまでは分析していない。
二つ目の質問については、現段階では、教育委員会の施策の全体的な状況との関連について見ているところであり、詳細の分析については今後の課題とさせていただきたい。

(委員)
耳塚委員の報告にあったように、例えばSESとか、ここで調べられていない要因が学力に大きな影響を及ぼしている可能性は高いので、ある施策の実施の有無によって、こういう種類のデータの解釈をすることは難しいのではないか。既に十分意識されているだろうが、結果を提示する場合にはかなり慎重に取り扱わないと、誤解を招く可能性が大きいのではないかと思う。

(事務局)
御指摘の通り、今回の結果にはやはり地域の状況等がかなり反映されている。そのため、正確に比較する場合には、地域の社会経済的なレベル、もしくは児童生徒数や学校の規模等もそろえた上で比較しないと、なかなか明確なデータが出てこないというのは、分析の中でも感じているところである。今後、分析をより深めていく場合には、御指摘も踏まえた上で実施したいが、問題の切り口が非常に複雑になってくることもあり、現時点では試行錯誤を繰り返しているところである。そのような点も踏まえ、しっかりやってまいりたい。

(委員)
先ほど我々が報告した報告書の9章で、保護者調査の対象となった学校について、学校の置かれた地域特性を国勢調査のデータを使って計算している。このようなデータが、全ての市町村教育委員会について背景情報としてそろっていると、もう少し分析はしやすくなるだろうと思う。

(座長)
以前、国立教育政策研究所からも、社会経済的な条件を乗り越えて頑張っている学校の特徴について、また設置者である教育委員会の施策による効果についての報告もあったと思うが、本日の2件の報告と関係して、何かあるか。

(事務局)
数年前に学校の取組事例についてまとめている。今回、教育委員会に関する調査ということで、包括的な調査とその傾向というのが出てきているので、これらを踏まえ、どのような取組が成果を上げているのかということについて、前回まとめたものをどう発展させていくか、検討させていただきたい。

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(初等中等教育局参事官付学力調査室)