道徳教育の充実に関する懇談会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成25年10月17日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

東海大学校友会館 望星の間

3.議題

  1. 道徳教育充実のための改善策について ・教材・教科書の取扱いについて ・新たな枠組みによる教科化について
  2. その他

4.出席者

委員

今田委員,押谷委員,貝塚委員,坂元委員,白木委員,鈴木委員,銭谷委員,高橋委員,鳥居委員,中村委員,長谷委員,細川委員,山縣委員(土井委員,西村委員,山田委員,無藤委員は欠席)

文部科学省

上野大臣政務官,山中事務次官,その他関係官

5.議事要旨

(1)事務局から配布資料1~5,参考資料の説明。
(2)議事に関する主な発言は,以下のとおり。

(教材・教科書の取扱いについて)

○ 教科書検定制度を前提に考えると,道徳を教科にするのであれば,教科書を用いないということは基本的にはない。また,「心のノート」を国の著作教科書として位置付けることも望ましくない。
    検定基準の設定においては,諸外国の例を参考に,多様な価値観を認めつつ望ましい価値へと探究を進めていくという方向性であれば問題ない。
    原則として政治的・宗教的中立性を担保しながら,教育基本法,学習指導要領の趣旨に基づいた教科書検定制度を確立していく必要。

○ 道徳の教科書は,いろいろな出版社が切磋琢磨(せっさたくま)し,よりよい教科書を作っていくという教科書検定制度の趣旨に合致させてやっていくべき。
    道徳的な価値観は,多様化が認められてよいものではない。日本人として,生きていく上で絶対に外してはいけない価値観を,教科書の中できちんと示していく必要。

○ 検定教科書を支持したい。これまでは,「心のノート」が考えさせる課題,民間の副読本が読み物というすみ分けがあったが,今回改訂で「心のノート」が両者を兼ねるため,民間の副読本が余り使われなくなり,「心のノート」の国定教科書としての性格が強まることになる。民間の事業者が作成し,価値観の多様性がより反映される検定教科書制度の方がよい。

○ 教科書会社にとって,道徳の教科書は,新たなマーケットとしてパイを奪い合う激しい競争が始まる。内容がよく,魅力的で,先生が教えたくなる教材開発に結び付く。民間の活力に期待したい。

○ 検定の方法として,メディアの有害情報の規制の問題と似ている。メディアでは,行政や業界から形式的に独立した第三者機関が有害性を判断しており,道徳でも,こうした方法が検討対象となるのではないか。

○ 「道徳の時間」に行われる指導については,教科書に当たるものをもって指導する必要。現在の副読本を教科書のような形で認めていくことが,学校現場を考えたときに入りやすい形ではないか。
    「検定」という言葉は一般的にも強いため,「教科化と同時に教科書化していく」という考え方が素直。

○ 副読本を検定教科書化することで,現在副読本を採用していない学校も,そうした教材を活用した道徳の時間の確実な実施が担保される。
    これまでも郷土資料と副読本を併用する中で,各学校や担任が子供たちの実態にふさわしい教材を選んできた。副読本が学習指導要領の内容項目に書かれている価値観をベースに,長い時間とエネルギーをかけて吟味されてきたことに鑑み,検定に左右されることはないと感じている。

○ 副読本を作る民間の教材会社は,一つの資料を探すのに500~600の資料の中から選んでいる。民間の力を借りて,多様性を担保することが必要。ただし,たくさんの価値の中で,これから生きていく日本人としてどこに重点を置いて教えるかは,現場の先生方にとって悩ましい問題。

○ 教科書検定においては,準拠性,正確性,公正性が重要。特に,政治・宗教の扱いや,取り上げる題材の選択・扱いに公正性を持たせるかどうかは大きな問題。

○ 要となる「道徳の時間」の指導が必ずしも十分ではない。教えやすく学びやすい教材があった方がいいが,副読本の購入のため,家庭に相当な負担を強いている。「道徳の時間」の指導を充実する観点から,無償の教材を提供することが大事であり,その場合,検定教科書が最も相応な対応。
    教育再生会議の提言では「多様な教科書」の部分が実現できなかった。今回の教育再生実行会議の提言と併せて,教科書を入れることがこれからの道徳教育充実の大きなポイント。その際,「心のノート」の要素を大事にし,単なる読み物資料の羅列にとどまらず,子供たちが自省や振り返り,記録を継続できる形が望ましい。

○ 検定の考え方として,学習指導要領の準拠性,政治的・宗教的な中立・公平性,記述の正確性という基本に立ち返るべき。その範囲で,学問的,学術的,教育的,専門技術的な観点に限定した,出版する側の自由な発想・創意が尊重された検定である点について,国民の理解を得る必要。

○ 「特別の教科 道徳」(仮称)という形で教育課程の中に明記すべき。これを通して,特質を生かした自由な在り方が多様に考えられてくる。
    授業の充実のためには,しっかりとした教材の確立が必要。生活科を創設した際も,教科書を作るかどうかが議論になったが,教科書を作ったことで生活科の位置付けや性格が理解され,指導の充実につながった。先生方が開発した教材や地域の教材を財産として活用し,例えば3分の2は年間指導計画の中に位置付け,3分の1は学校の独自性を生かした指導を可能とするなど,「特別な教科」である意義を明確にしていくことが必要。

○ 教科書検定における準拠性や公平性,正確性は,学問や価値観として共通認識があるものには適用できるが,明確な基準のないものに対しては適用が難しい。基本的な価値観を押さえた検定ができるのであれば,検定教科書は学習にとってよいものとなる。

○ 学校現場では,副読本を主たる教材とし,「心のノート」は学校教育全体を通して行う道徳教育の副教材として使われている。数編の読み物資料を導入すれば「道徳の時間」の教材になり得るわけではない。これまで副読本を編集してきた方々の知恵を借りながら,道徳的価値の自覚を深めることをねらいとした「道徳の時間」にふさわしい教材作成が重要。

○ 「心のノート」は,学校の教育活動全体における道徳教育を担保していく趣旨で作られたが,今回の改訂で道徳的な教材の色彩が強まっている。検定教科書と「心のノート」を併用すると,同じような教材の並立により教育現場の混乱が予想される。「心のノート」は存続させず,検定教科書のモデルのような形で位置付けることが必要。検定教科書を主とし,副読本として「心のノート」などを使用するという方向性も考えられる。

○ 検定教科書が出るまでには何年も時間がかかるため,その間の当面の措置として,改訂した「心のノート」を活用するのがよい。

○ 「心のノート」は「学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育」を推進するための教材として残し,家庭・地域との関わりの中で活用していくとともに,「道徳の時間」でも活用できる形にしていく必要。

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初等中等教育局教育課程課