道徳教育の充実に関する懇談会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成25年6月20日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 今後の道徳教育の改善方策について
  2. 「心のノート」改訂作業部会の進捗状況について(報告)

4.出席者

委員

今田委員,押谷委員,貝塚委員,坂元委員,白木委員,鈴木委員,銭谷委員,高橋委員,土井委員,鳥居委員,中村委員,西村委員,長谷委員,細川委員,山縣委員(無藤委員,山田委員は欠席)

文部科学省

森口事務次官,布村初等中等教育局長,山中文部科学審議官,前川官房長,関大臣官房審議官,山下大臣官房審議官,その他関係官

5.議事要旨

(1)事務局から配布資料1,2,参考資料の説明。
(2)議事に関する主な発言は,以下のとおり。

(道徳教育の現状・課題について)

○  道徳教育は,教科書がなく,評価もないため,それぞれの先生の思いで指導が行われてしまう傾向がある。校内研修を行って切磋琢磨(せっさたくま)し,お互いの力を磨く機会も少ない。教材や指導資料も十分に行き渡っていない。実際に道徳の時間が他の授業に振り替えられている例も結構ある。

(道徳の意義,理念,目標について)

○  「知・徳・体」の重要性も,何のためかと言えば人間としてよりよく生きるためというところに統合されるべきであり,道徳教育が教育の根幹でなければならない。

○ 学校のカリキュラムとして教科カリキュラムを前提とするのではなく,新たなカリキュラム論に基づいて道徳教育の性格と役割を明確にすべき。

(道徳の内容・指導方法等について)

○  内容項目については,文言を精査し,時代に対応した内容の加除等が行われることでよい。

○  現行の道徳の内容項目は,分かりやすく整理されているが,価値論からすれば何が一番中核的な価値なのかという構造が分かりにくい。その構造化が課題。また,価値項目を説明する表現が必ずしも明確でないところがある。

○  教育課程の中で,「道徳」「総合的な学習の時間」「特別活動」の3領域の内容のすみ分けが不明確になっているのではないか。

○  道徳の時間が週1時間でよいかどうかについては議論すべきだが,個人的には少し少ないのではないかという気がする。

○  道徳の時間を増やすとなるとどこを減らすかという問題もある。まずは35時間しっかりとやりながら,全教育活動の中での道徳教育との明確な連携を図っていくということではないか。

○  品川区の「市民科」は,実践に重きを置き,また,実践を振り返って反省する時間もとっている。そうなると,100時間前後ないと対応できない。

○  道徳の時間は例えば年40時間とし,教科との関わりをもっともたせるなどの改善を図ることがあってもよいのではないか。

○  道徳の時間を5時間プラスすることはあってよいのではないか。また,加配教員と一緒に若い教員が授業をするというような工夫も必要。

○ 道徳教育で教えるべき価値は,情報モラル教育においても重要なことである。一般的になすべきことは,インターネット上でもなすべきことであるし,逆もまた同様である。インターネット上では,簡単な操作が大きな影響をもたらしたり,顔が見えないために攻撃性が強まったりする。また,情報が半永久的に残り,長い間相手を苦しめたり,自分もダメージを負ったりするということについても考える必要がある。

(評価について)

○  評価については,数値評価はしないということでよいのではないか。評価の在り方についても新しい枠組みで考える必要があり,「関心・意欲・態度」という観点からの評価を指導要録の中に記述式で行う欄を設けることが考えられる。

○  評価は子供たちの成長の振り返りや指導計画・指導方法の改善のために必ず実施すべき。指導要録の「行動の記録」をうまく活用することが考えられる。子供たちがどう伸びていったかを積極的にプラス面で評価すべき。

○  教員に十分な専門性がない,理論的に詰められていない状態であればこそ,評価については慎重に考えるべき。道徳教育について,ある程度内容をまとめてやっていくことになるのであれば,内容にとっても広く合意が得られるものとなるよう時間をかけて議論すべき。     

○ 「行動の記録」の評価の観点が何に基づいているのか整理されていないので,行動の記録も含めながら,通知表や指導要録の問題をどのように整理していくのかが一つの課題になる。

(教科書・教材について)

○ 道徳の指導のためには,全教育活動を通して道徳教育に資する教材と,要である道徳の時間の指導に資する教材の二つが必要であり,「心のノート」と教科書の両方が必要。今回,「心のノート」で,道徳の時間でも使える教材も盛り込みながら,全教育活動とどう響き合わせて指導するか示せるようにすることが必要。

○  道徳について,基本的には検定教科書にしていくのが原則だろう。その際,「心のノート」との関係をどうするかが課題。仮に検定教科書を用いず「心のノート」だけを使うことになると「国定教科書」化ということになり望ましくないのではないか。

○  既に副読本が作られていることを考えると,それが教科書になったからといって
  それほど大きな問題が生じるかは少し疑問。国語ができるのであれば道徳も可能なのではないか。
 
○  教材については,教科書を発行することも考えられるが,それには時間がかかるので,当面は現在出版社が発行している副読本の購入予算を付けて,選択や活用状況の報告をさせながら授業で活用していくこと,また,「心のノート」を発展させ,年間を通じて道徳の授業の実施に十分な内容のものにし,全校に配布することが考えられる。

○  教科書の検定については,政治的,宗教的中立性や学習指導要領の範囲との関係,検定基準の示し方などとの関係で現実問題としてはなかなか難しいという意見もある。

(教員の資質向上について)

○  教育実習における道徳の必修化も必要。教育実習で道徳の授業をさせれば,教育実習生を受け入れる現場サイドにおいてもそれを指導するための方法や理論を詰めざるを得なくなる。

○ 意識改革のためには,管理職の道徳に対する研修等も必要。

○  道徳の指導は教員全員がやるが,道徳の特質を踏まえると,それを補充していくために加配教員や特別な人に指導してもらう機会を設けるなどの配慮が必要。   

○ 教員の資質形成の対応としては,大学における教員養成の改善と学校における教員の研修や連携が必要。

(家庭や地域との連携について)

○  道徳は実践すべきで,地域社会や家庭でやっていくべきことについては,地域の団体としても担いつつ,両輪としてやっていきたい。

○  道徳教育を充実する新たな枠組みとしては,保護者や地域社会への説明責任を果たすことも考えるべき。

(新たな枠組みによる教科化について)

○  児童生徒の人間形成にとって,なぜ,どういう意味で道徳教育が必要なのか,なぜ教科化が必要なのかを考えることが必要。

○ 道徳という領域が持っていた特質を再確認して,その必要性を前面に出す一方で,新しい枠組みの道徳教育の扱いを,どういう形でカリキュラムの中に編成していくのかという議論が必要。

○  戦後,道徳教育が政治マター化したことによって,修身科や教育勅語も含めて戦前的なものが全てタブー視され,断絶が起こった。そのために道徳教育に関する理論的な研究が貧困なものとなり,そのことが教員養成や研修,実践,指導法,それを統括する意味での政策評価の分野にまで及ぶ機能不全を招いている。道徳の「教科化」によって道徳教育の学問的な体系を構築する必要がある。

○  「新しい枠組み」による教科化に当たっても,その教科を「道徳教育の要」にしつつ,基本的には学校教育全体で道徳を行うという方針でよい。その意味で,他の教科と横並びでない「特別教科」としての枠組みになるのではないか。

○  道徳の教科化とカリキュラム論の関係をどう考えるか。現行のカリキュラム論を前提にしている限りは,「特別教科」を具体化することは難しいのではないか。

○  道徳は教科でないために,大学においても専門家が育たず,理論が構築されていない。教科になれば,目的と内容と方法を体系化しなくてはならなくなる。

○ 教科化を決定してから,実際にそれが動くまでの時間はかなり取って,内容についても広く合意が得られるようなものにしていく手順を踏んでいく必要がある。

○  様々な教育問題が複雑化する中にあって,「現実対応型」あるいは「未来対応型」の総合科学的な道徳教育という発想が必要。生命倫理や環境倫理,公共哲学,情報学など様々な科学を総合的にイメージしていくことが必要。

○  道徳を教科化した場合に私立学校の「宗教」をどう扱うかについても検討が必要。

 

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