育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(第1回) 議事要旨

1.日時

平成24年12月13日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 文部科学省 東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容の構造について
  3. その他

4.出席者

委員

安彦委員、天笠委員、市川委員、西岡委員、無藤委員、村川委員、吉冨委員

文部科学省

布村初等中等教育局長、関大臣官房審議官、塩見教育課程課長、大金教育課程企画室長、田中主任視学官、勝野国立教育政策研究所教育課程研究センター長、橋田教育課程企画室専門官

5.議事要旨

(1) 安彦委員が座長に、無藤委員が副座長に選任された。
(2) 会議の公開の取扱いについて、資料3のとおり了承された。
(3) 布村初等中等教育局長からの挨拶の後、事務局から資料の説明が行われた。
(4) 資料4「主な検討の視点等について(案)」について各委員から発言があった。


【委員】
・必要な事柄をより構造化していく必要がある。何か根本的に考えなければならないというよりは、多様な角度から出てきているものをもう少し整理していく必要がある。
・中教審の様々な部会において、各学校段階で丁寧に検討されたものを、幼児教育から大学・大学院教育まで、社会人としての資質・能力を含めて、教育課程のレベルでどうつないでいくかが大きな課題である。
・教科横断的な学力と各教科における学力をより明確にする必要がある。その上で、いわゆる力の面と、それを支える具体的な知識、技能との関連を検討することが必要である。教科横断的な学力として言語力はかなり克明に検討したが、まだ全体像がつかみ切れていないと感じる。
・学習評価に関する中教審報告においては、パフォーマンス評価等について十分踏み込めなかったが、国内外の先進的な試みを踏まえてどう組み入れるか、改めて検討する必要がある。
・カリキュラムの「理念」と「実践」と「実証」の組合せの中で考えていくことを押し出したい。

【委員】
・既に、総合的な学習の時間においては、解説にあるとおり、目標と育てようとする資質や能力及び態度は、特定の領域や対象によらない一般的、形式的な側面から望ましい生徒の成長の姿を記述しており、内容は、学習課題としてどんな対象と関わり、それを通して何を学ぶかを記述している。さらに、両者は互いに関係していると同時に、両者がそろって初めてうまくいくという記述がある。目標及び資質・能力は、形式陶冶的であり、教科横断的な汎用性のある能力だが、内容は、実質陶冶的であり、領域固有のものである。この2側面から複眼的に学力を見るというアプローチが有効ではないか。
・教科横断的な能力の評価は難しいが、ポートフォリオ評価の考え方なども入れて、評価論を変えていく必要がある。
・資質・能力を育成するための研究・実践や、それに基づくカリキュラムの開発は、既に学校現場に蓄積がある。こうした実践のボトムアップの面と、理念のトップダウンの面との間で接合する可能性があると考えている。
・1970年代にカトリック学校において、学校独自の資質・能力を見直そうとする運動があったが、資質・能力ベースの理念を実際のカリキュラムに反映させることができなかった。資質・能力ベースの学力論は形成できたとしても、それからカリキュラムを構成する際の理論や原理、手続はあるのか、その見通しをもって議論する必要がある。

【委員】
・教育課程の構造化に取り組む必要がある。学習指導要領は、教科等ごとの寄せ集め的なものにならざるを得ない面があるが、教科間や発達段階間のつながりが弱いのではないか。こうした横串(教科間のつながり)と縦串(発達段階のつながり)とをどう通していくかが大きな課題になるのではないか。
・今回の改訂では、いきなり○○力について全部串を通すわけにはいかないので、まず言語力ということで取り組んだ。他にどんな串を通していくかというと、強調する点があるのは「学び方(学習方略)」である。教育課程や教員には意識されていないのではないかと思うが、子どもたちが発達するにつれて、それらを主体的に豊かに使いこなしていくような力を育成するために、学校教育の中でどう支援していくか。押し付けるのではなく、偏らないようにするために、ある程度教育課程における取扱いを表に出していく必要がある。

【委員】
・資料5(「法令上定められている教育の目的・目標について」)は、教育の目的・目標の全体を俯瞰(ふかん)して整理されているが、ある学校段階の固有の課題についても、その学校段階の枠内だけでなく、学校体系全体の中で見つめ直す必要がある。そのためには、具体的にどのようなシステムで検討すべきかが問われている。
・各教科等における言語活動の充実が、学校教育の全体的な質的改善にどうつながっているのかについて検証する必要がある。
・「生きる力」について、より構造的に捉える必要がある一方で、現実と乖離(かいり)することのないよう気を付けていかなければいけない。その際、例えば、学校から社会へ出る際の力や、震災を踏まえた「生き抜く力」などを、どのように受け止めて整理するか。
・次の時代を見据える教育課程の在り方を検討していくには、歴史的な変遷も踏まえて、「内容」と「資質・能力」とのつながり、全体的なバランス・調和を探っていくことが重要ではないか。

【委員】
・今回の改訂で、習得・活用・探究の3つの柱で学力を捉えているのは妥当性の高いものだが、現場で行われている活用は、筆記テストで評価される問題のレベルにとどまりがち。豊かな思考力・判断力・表現力の育成を可能にするような授業改善を実現することが課題になっているように思われる。
・パフォーマンス課題を用いる方向で改善を進めることが重要。また、目標や評価基準は「知の構造」に照らして、さらに構造的に整理する必要がある。具体的には、例えば、教科等ごとに「本質的な問い」を例示したり、ルーブリックで長期的な思考力・判断力・表現力の成長を捉えたりする発想を位置付けることなどが考えられる。
・関心、意欲、態度の評価については、教科横断的に評価するような汎用スキル、総合的な学習の時間で育てる探究の力として評価する方が妥当と考えている。また、子どもの価値観を学力評価の対象とすべきでないという原則も、今一度確認しておく必要がある。カリキュラム全体として、民主主義的な価値観を育てることを目指し、そのような価値観が育っているかどうかをカリキュラム評価の対象とすることが適切と考える。
・各学校の創意工夫を推進するために、国が示すのは大綱的基準や参考資料にとどめるべき。一方で、学校を超えたスタンダード作りの研究開発を推進するため、その具体的な進め方についてのイメージを普及するような支援を構想していく必要もあるのではないか。

【委員】
・幼稚園から社会人までを通した学力論をいかに一本化するかを国としても提示していかないと、学校現場においてなかなか機能しない。
・例えば、生徒指導面や学力面で大きな課題を抱えていた小学校や中学校の中には、言語活動の6つの事例を授業の中で具体的に取り組んだことで、2年足らずで生徒指導上の問題を解決するだけでなく、学力が上がったところもある。学力を育てていくための具体的な姿を可視化あるいは具体化する手立てとしては、研究開発学校はもちろんだが、頑張っている公立学校など先進校から学ぶことも大事である。
・ここ数年で大きく学力を伸ばした学校の中には、総合的な学習の時間の研究指定校がいくつかある。総合的な学習の時間における学びが教科の中にも反映され、教科の学力に影響しているのではないか。そのメカニズムを見ていく必要がある。

【委員】
・いわゆる「○○教育」や「○○力」が多数言われるが、「○○教育」と教科の関係は示されていても、「○○教育」や「○○力」相互の関係性は整理されていない。育成すべき資質・能力を検討する際には、「関係性」の視点を大事にしたい。
・学校教育法第30条第2項において学力の三要素が法律上規定された意味は大きい。知識や技能と思考力等の能力との関係性が「活用」という言葉でしっかり示されている。

【委員】
・現段階では新学習指導要領の評価ができていない中、検証データがないところで検討会が動き出すことになるので、まずは理念的な話が主になるが、ある段階で、新学習指導要領に基づいた実践の評価をしなければいけない。
・教育社会学あるいは社会経済的な観点から教育を見る専門家からヒアリング等をする場を設けていただきたい。
・子どもの発達軸を、幼小中高という学校教育体系を念頭に、明確にしていく必要がある。その意味では、心理学のみならず、脳科学その他関連する学問の成果に目を通していかなければいけない。
・どの委員の方もそれぞれの分野の専門家であり、自由に広い観点から御提言いただきたい。同時に、その発言には責任を持って、建設的に意見を出していただきたい。

(5) その後、育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容の構造について、自由討議が行われた。

【委員】 「資質」「能力」という言葉について、ここで議論する際に共通理解しておく必要がある。平成元年の学習指導要領改訂に基づく、平成3年の指導要録の検討時には、観点別学習状況の評価の観点を全部ひっくるめて、もう少し広げていくと学校教育で育成する全てのものを「資質・能力」と言い切ってしまおうという共通理解があった。今回、知・徳・体を含めて検討の射程に入れることでよいか。

【委員】 「資質」と「能力」の間に「・」があるが、これは「資質」と「能力」を概念上区別した方がいいというニュアンスか。

【事務局】 例えば、教育基本法では、義務教育の目的として、「各個人の有する能力を伸ばし」「国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うこと」とされ、この意味で、「資質」「能力」双方の概念が規定されている。また、各種の提言でも、「資質・能力」として一体的に用いられることが多い。本検討会においても、厳密に使い分けるというより、両者を一体として捉え、まずは、これからの時代に求められる力の全体像やその構造を明らかにしようとするものである。

【委員】 子どもたちが将来遭遇する課題に対応するための「資質・能力」といったときに、技能的な側面と併せて、知識・理解や意識の面も非常に大事だと思う。

【委員】 「資質」については、例えば態度面とかモチベーションも含めて、「能力」より広い概念と捉えている。「資質・能力」と一体的に使うことによって、より汎用性のある一般的なものにしたいということ、また「資質」と「能力」を厳密に分けるよりも、ある種の膨らみや意味合いを持たせていることと理解している。

【委員】 資質・能力の関係で、資料10(「生きる力」の育成を目指す教育内容・目標の構造(イメージ案:改良版2))をどのように捉えたらいいか。

【委員】 資料10の検討過程では、学力問題が非常に大きな課題としてあった。その中で、知識も思考力等もいずれも大事で全部つながっているという考えに立っている。ポイントは矢印で結ぼうとしているところで、関連性を持ちながら、生きる力になっていく。それを議論する手掛かりとして、この資料が作られた。

【委員】 資料10は、教育課程部会で出されたものとして、ヒットした資料で高く評価している。当時、生きる力が漠然として分からないという批判に対する一つの回答として、今回の学習指導要領の土台になっていると位置付けている。これをたたき台として、更なるバージョンアップをするのが、我々の一つの仕事となるだろう。

【委員】 「資質・能力」に関して、学校現場や教育委員会等で無益な議論が起こらないようにするためには、この検討会において定義付けておくことが必要だと思う。

【委員】 資料10では、資質・能力と目標と内容が横並びでそれぞれに配置されているが、それらは階層構造をなしているのではないか。目標があって、資質・能力があって、内容があるという構造が1つのイメージではないか。

【委員】 学校教育全体で育てるべき全てのものを資質・能力と呼ぶのであれば、汎用スキル的な要素や方略的な要素のような側面を何と呼ぶか。子どもを全人的に育成するという方向性に異論はないが、それを学力と同じレベルで評価の対象にしてしまえば、非常に窮屈な学校を作ることになってしまう。自由闊達な生活の場としての学校を維持しつつ、保障すべき資質・能力のできるだけ正確な測定やそれに基づく育成をどう図るか、両者のバランスをどうとるのかが論点になる。

【委員】 教育目標はそれぞれの発達段階によって決まるもの。したがって、その元となる、キーコンピテンシーのような人として生きていく上で必要な力について、この検討会で決めて、それを元にして、幼小中高という発達段階に応じて各学校で作っていくのが教育目標ではないか。

【委員】 「資質」というと、辞書的には生まれつきの性質という意味が強いため、引き出して「磨くもの」と考えている。また、「資質」という言葉には、能力と性質の両方が含まれており、「能力」より「資質」の方が広い意味と捉えられる。ひとまず、両者を一応は分けた上で、全体として目指すべきものとして「資質・能力」と一体的に捉えることとしたい。
資質・能力は心理学的あるいは心理生理学的な概念であり、教育目標や教育内容はむしろ教育学的な概念である。その意味で、階層ではなくてカテゴリーが違うという点を押さえておかないといけない。
目的と目標との関係については、教育学的には、まず目的として資質・能力があり、そこに到達する過程における標識として目標があると理解されている。
方略に関しては、これまで行政サイドはむしろ今まで避けてきた。現場に対する押し付けにならないような示し方が必要。

【委員】 学習方略を用いることができるようになったとすれば、何らかの資質・能力を身に付けたことにもなる。しかし、例えば家庭学習の仕方については、個々の学校や教員に任されており、非常に偏ったものも見受けられる。教育方法や学習方法についても議論した上で、現場に対して押し付けにはならないよう、バランス良く伝えていく必要がある。これを、主体的な学習者を育てるきっかけにできるかということも大きなテーマかと思う。

【委員】 教育目標と指導内容と学習評価を「一体的」に捉えるという、「一体的」の範囲やレベルを考えながら、全体として相互の関係を整理していく必要がある。

【委員】 国として、統一的な方略を作るのは難しい。方略に関してはカリキュラムマネジメントの考え方が重要であり、総合的な学習の時間の事例集のように、授業の作り方のノウハウを示していけばよいのではないか。

【委員】 学習方略については、国の機能としての支援機能があるため、国内外の情報をまとめ発信するという意味で、幅広く行ってもよいのではないか。
教科横断的な思考力と教科固有の思考力とを分けながら、その上でつながりを考えることが必要。教科横断的な力に関しては、「学びに向かう力」(集中する力、根気強く取り組む力、協働する力など)が重要な柱であるが、それをどのようにカリキュラムに入れ込むかが課題である。

【委員】 汎用的な思考力と教科固有の思考力について、汎用的思考力はどこで誰がどう育てるのか、教科固有の思考力に貫かれて育てられるものかといったことについて、今後議論する必要がある。カリキュラムを作っていく上で、設計上の理念をはっきり打ち出せるような議論をすべきである。

【委員】 各教科での学習を通して育成された何らかの汎用的な力は、教員も意識的につなげ、子どもも意識的につながっていることを自覚することでつながってくるものだと思う。

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