資料3 最低在職年数の取り扱いについて

【基礎資格を取得した後文部科学省令で定める職員として良好な成績で勤務した最低在職年数】

(論点1)
○ それぞれの基礎資格を有する者に対して、どの程度の在職年数を求めることとするか。
(1)学士の学位を有する者
(2)短期大学士の学位を有する者
(3)その他(保育士資格を有する者で、学位及び短期大学士のいずれも有していない者)

(論点2)
○  認可保育所は、保育所保育指針(平成20年厚生労働省告示第141号)に基づき「教育」も行っていることから、評価すべき在職年数としては、認可保育所の保育士としての在職年数が適当と思われるが、その他の児童福祉施設における保育士としての勤務経験はどのように考えたらよいか。


(「最低在職年数」について)

○ 今回の特例は、教育職員免許法附則第19項を根拠に、保育士資格のみを有する保育士に対して、保育士としての勤務経験を評価して、幼稚園教諭の普通免許状を取得する要件(要修得単位数)を軽減させることにより、幼稚園教諭の普通免許状と保育士資格の両免許・資格の併有を促進し、新たな幼保連携型認定こども園制度の円滑な導入を図ることを目的としている。

○ このため、勤務経験として評価すべき「最低在職年数」については、このような本特例の趣旨・目的を踏まえて設定をする必要がある。
また、本特例は、制度施行後5年間の期限付とされていることから、当該特例期間中に保育士として採用された者についても、特例の対象となることができるように配慮することが必要である。

○ 現行の教育職員免許法においては、幼児児童生徒の身体の発達の早まりや、社会環境の変化等を踏まえ、学校段階間の連携・接続の必要性の観点から、現職教員の隣接校種免許状の取得を促進する制度が設けられており、一定の教職経験を積むことにより、各学校種の免許状取得に当たって要修得単位数が軽減されている。

○ 例えば、中学校教諭の普通免許状を有する現職教員が、当該制度を活用して小学校教諭の二種免許状を取得しようとする場合、本来、最低37単位以上(中学校教諭の免許状を取得した際に修得した単位を一部流用したとしても、最低24単位以上)の修得が必要なところ、3年の教諭等の勤務経験があれば、最低12単位にまで軽減することが可能とされている。

○ 本特例においても、このような制度を参考にすることが適当である。また、本検討会議においても、3年の勤務経験を積めば、保育士としての最低限の業務を一通り経験したと見なすことは可能ではないか、という意見が多数であった。
このため、本特例の要件である「最低在職年数」として評価すべき保育士の勤務経験については、3年とすることが適当である。

○ ただし、教員免許状は、学校教育法で規定される初等中等教育段階の学校における、いわゆる公教育の直接の担い手である教員の資格を定め、その資質能力を一定水準以上に確保することを目的とする制度である。
このような教員免許状の性格に鑑みれば、本特例の適用範囲は、目的を実現するために必要最小限のものとすることが適当である。

○ この点、保育士は、保育所だけでなく、児童養護施設、乳児院等保育所以外の児童福祉施設や認可外保育施設においても勤務しているが、それぞれの施設において、勤務実態が大きく異なることが考えられる。
また、「全国の保育所実態調査報告書2011」(社会福祉法人全国社会福祉協議会、全国保育協議会)によると、認可保育所に勤務する保育士の15%以上は非常勤の保育士であり、同じ在職年数であっても、勤務形態により、勤務経験に大きな差が生じていることが考えられる。

○ このため、保育士としての勤務内容が、幼稚園教諭の免許状取得に係る単位の内容と大きくずれる可能性のある施設や、当該保育士が十分に勤務経験を積むことができていないとみなされる場合には、特例の適用対象外とすることが適当である。

(勤務経験として評価すべき「対象施設」について)

○ 本特例は、保育士としての勤務経験を評価して、幼稚園教諭の普通免許状を取得する要件(要修得単位数)を軽減するものであるが、これは、いわば、保育士として一定の勤務経験を、幼稚園教諭の免許状を取得するための単位の一部としてみなすことにより、要修得単位数を軽減することを意味する。
このことを踏まえると、保育士としての勤務経験の内容は、幼稚園教諭の免許状取得のために必要な授業科目の内容と重なるとみなすことが可能なものであることが必要である。

○ この点、本検討会議では、下記(1)~(4)のメルクマールを作成し、当該メルクマールを満たす施設において勤務した場合には、当該勤務経験を、特例の要件である「最低在職年数」として評価することとする。


(メルクマール)
(1) 保育所保育指針に基づき教育・保育を実施していること
(2) 小学校就学前の幼児を対象としていること
(3) 一定規模の集団により継続的に教育・保育を行うことを目的としていること
(4) 上記(1)~(3)を担保する行政監督(許認可等)の仕組みがあること


○ このメルクマールに照らした場合、保育士としての勤務経験を評価可能な施設は、以下の通りである。

(1)認可保育所(小規模保育所、夜間保育所、認定こども園(幼保連携方認定こども園、保育所型)を含む。)
(2)(1)以外の施設のうち、
・認定こども園(幼稚園型、地方裁量型の保育機能部分)
・幼稚園に併設される認可外保育施設
・へき地保育所
・「認可外保育施設指導監督基準」(平成13年3月29日雇児発第177号)を満たす施設(一時的な利用や夜間の利用を中心とする施設を除く)

○ また、保育士資格のみを有する者が、幼稚園(特別支援学校の幼稚部を含む。)における教育課程に係る教育時間の終了後等において、希望する者を対象とした教育活動(いわゆる「預かり保育」)等を担当している場合があるが、このような者は、満3歳から小学校就学の始期に達するまでの幼児を対象として、幼稚園教育要領に基づき行う継続的な教育活動に携わっていることから、預かり保育等の勤務経験についても、特例の要件である「最低在職年数」として評価することが適当である。

※1月31日の保育士養成課程等検討会においては、人事交流等により、小学校・放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)において、幼稚園教諭の普通免許状を有する者が勤務している場合も考えられ、これらの者の勤務経験も保育士取得要件の特例対象として考慮してもよいのではないか、という意見があった。(また、3年の経験を1年とみなす等の条件を付した方がよいという意見もあった。)

→保育士資格のみを有する者が、人事交流等で小学校(小学校教諭免許状を持っている場合)や放課後児童クラブにおいて勤務している場合があるが、当該勤務経験を持って、幼稚園教諭の普通免許状を取得するための単位の一部としてみなし、要修得単位数を軽減することについてどうのように考えるか。


(勤務経験として評価すべき「勤務経験」について)

○ 保育士の勤務経験を、「最低在職年数」のみで一律に評価した場合、同じ「最低在職年数」であっても、勤務形態によって、その勤務経験に大きな差が生じることが考えられる。このため、最低限の勤務経験を担保する観点から、併せて、勤務時間数に係る要件を設けることが適当である。

○ この点、高等学校等の卒業者が、保育士試験により保育士資格を取得しようとする場合、受験資格として、児童福祉施設等において2年以上の児童の保護に従事することが求められている。また、当該2年以上の従事期間については、従事期間を実質的なものとするため、総従事時間数が2,880時間(1ヶ月当たり120時間)以上であることが要件とされている。これは、1日当たりで換算すれば、平均6時間の勤務時間となる。
本特例においても、このような高等学校等の卒業者が保育士試験を受験する際の要件を参考にし、3年の勤務経験に加え、4,320時間(1ヶ月あたり120時間)以上の総勤務時間数を求めることが適当である。

○ また、3年の勤務経験については、既に、過去に3年以上勤務している保育士もいれば、今後、勤務経験を積んでいく保育士も想定される。また、家庭の都合等により一旦職を離れる等により、断続的に勤務経験を積んできた保育士も想定される。
このように、勤務経験を積む過程も、保育士によって様々ではあるが、上記の勤務経験の要件を満たした場合は、全て、同じ勤務経験として扱うことが適当である。

(学位の有無等による「最低在職年数」の取り扱いについて)

○ 学校の教員については「大学における養成」を原則としており、幼稚園の教員は、原則、学位を有することが求められている。一方で、保育士は、専修学校等の大学以外における「指定保育士養成施設」においても養成がなされており、学位を有しない者も、保育士として勤務をしている。
このため、本特例の適用にあたって、学位の有無の違いについて、どのように評価すべきかを整理する必要があるが、本特例は、幼保連携型認定こども園制度の円滑な導入を図ることを目的とし、制度施行後5年間の期限付とされていることも踏まえると、「最低在職年数」ではなく、修得を要する単位数において整理をすることが適当である。

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