参考資料 外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定に関する検討会議(第4回)主な意見

平成24年10月29日
・CAN-DOリストの形での学習到達目標設定の段階として、「単元ごと」というのは少し細かすぎるのではないか。単元というと教科書のレッスンのことだと捉えることが多い。その場合、単元ごとに到達目標を設定することは可能かもしれないが、評価規準のようになってしまうのではないかという懸念がある。
 単元をレッスン(課)と捉えた場合、単元ごとにするのであれば、複数の単元ごとのようにした方が評価規準との関係からもいいのではないか。また、単元ごとだと、かなり数多くの能力記述文ができてしまう。例えば1つの教科書で中学校だったら8~10ぐらいの単元があり、それぞれについて書かなくてはいけないというのは、ちょっと無理ではないか。
 パフォーマンステストについては、実際にはテストとして別に時間をとってやるというより、例えば毎時間発表させながら評価していることが多いのではないか。例えば、「人物についての説明を読んで、その内容を口頭で要約することができる」という到達目標があり、これを達成するために要約を口頭で発表させるという言語活動を行うということをこの中に明示することはとても大事なことだと思う。

・パフォーマンスについて、授業中に評価を行うのは現実的だと思うが、時間をとってテストをすることもあって良いと思うので、パフォーマンス評価、ということにして両方読み込める形にするのが良いのではないか。

・私も目標設定は単元ごとではない方がいいと思う。また、CEFR-Jをつくったときには、例えば読むことのCAN-DOでは、どういうテキストが読めるのか、分野だけでなく初見かどうかなど読みの深さに関する条件などを指定したCAN-DOを作成していた。現在の案ではそこが少し欠けているのではないか。 
・単元ごとの目標設定は可能ではないか。1つの単元は少なくとも4回程度の授業になると思うが、それより長いスパンでの目標というと、毎日の授業のゴールが不明確になるのではないか。
 最近の教科書を見ていると、かなりCEFRのことを意識していて、まとまってきちんとCAN-DOが書かれているので、そういう部分を見ても単元ごとの目標設定というのは、わかりやすくていい。

・単元ごとでは文法が扱われることが多いということだが、文法事項だからCAN-DOになじまないということはない。発信の場合は、CAN-DOとして設定する表現に文法や語彙が含まれていることが多い。一方で、受信の場合は、ある程度まとまった内容について、どんなトピックを素材として扱うかという観点からCAN-DOを書くので、文法や語彙というものは余り含まれない。そう考えると、教科書の単元ごとに設定できる目標もあれば、複数の単元をまとめて設定する目標もあり、それらを組み合わせるのが良いのではないか。

・単元ごとに目標を設定すると、一貫したものが見えにくくなるというおそれがある。学年、あるいは3年間を通して最後に何ができるようになったのかを考えるのが難しい。ある程度長いスパンを見通した大きなビジョン、俯瞰(ふかん)した目線を持つことは非常に大切。
 卒業時の生徒の力をしっかり押さえておくということは非常に重要だが、同時に、入学時の力を踏まえながら、目標を少し見直していった方が、目標として柔軟になり、本当に現実に合った目標設定ができ、理想的であると思う。
 また、中学校の教科書の単元は文法ベースの発信活動が中心になっているが、高校の教科書では、文法事項とスキルベースの活動内容が独立している場合も多い。例えば「過去完了形ができる」とする代わりに「既に終わったことを表現できる」と、ある活動ができる度合いを機能的に記述することもできる。ただ、現実には全てについてCAN-DOを書くのは難しいと思うので、例えばプロジェクトベースの特定の活動を取り上げて、これについてCAN-DO形式で目標設定するというようなことも可能なのではないか。
 その上で、毎単元でスパイラルにできるようになりつつあることも評価して、生徒に自信を持たせることも重要。

・能力記述文の「できる」というものの意味を考えてみると、例えば授業で習って、その直後の教室活動の中で「できる」という非常に短期的なものと、学年とか3年間かけて「できる」という長期的なものとでかなり意味は違ってくる。本当の意味で身についていないと、「できる」ことにならないのではないか。

・目標に向かっていろんなタスクをするときの各スモールステップでの目標を全部CAN-DOにしてしまうのは余り賛成できない。余りに細かくCAN-DOにしてしまうと、どうしても「どのぐらいよくできたか」とか、「どんな表現を使ってできたか」という細かい評価に落ちていってしまって、もともとの「言語を使って何ができるか」というCAN-DOの基本と乖離(かいり)したものをつくりやすくなる。

・中学校では、どの教員でも絶対に評価規準を作っている。このCAN-DOが単元ごとという話になると、評価規準と二重になってしまうおそれがある。 
・そもそも、目標設定のスパンを学年ごと、学期ごと、単元ごとという選択的なイメージで捉えてしまうということが間違いである。 まず3年間で到達すべきものがあって、そこから学年ごとにとなって、更に学期ごと、とおりてくるものであって、単元ごとの目標設定というのを最初からやってしまうと、全体の設計図が見えないままになってしまう。
 生徒たちを見ていると、単元ごとの到達目標は非常に有効であるし、毎日の授業の中ではその授業の中での目標を提示することも重要である。それらの積み重ねというイメージで、学期、学年というふうに上に積み上げられれば良いが、それがないままにいきなり単元ごとの到達目標をつくることは危険。 
・現状の授業の問題として、大きなピクチャーなしに教科書に引きずられてやっているので、何で今授業でこれをやるのかというのがよくわからない人が多く、大きな目標があり、それを細かくしていくという発想になっていない。そのような現状で細かいところから積み上げていこうとすると、今までと変わらないということになるのではないか。
 「全ての生徒」か否かという点はとても重要なポイント。CAN-DOにしても全ての生徒ができないといけないということではなく、平均的な生徒、真ん中ぐらいの生徒ができればいいのではないかと思う。

・CEFRをつくった人に聞くと、実際にCAN-DOをつくっていったら、ほとんど教室内のCAN-DOというのはなかったという。その理由は、教室の中では常に教師の助けというのが存在していて、教師が段取りを立ててやるような形を想定したCAN-DOになってしまうために、自律的に何かできるということを保証するCAN-DOとしては、信頼性の高いものになりにくいからではないか。 
・やはり最終的な目標としては自律的学習者、教室の外でもできるというふうに答えられる生徒を育成することが重要。 
・社会に出たときにできるようになることが望ましいことを全て教室内で疑似経験することは難しいかもしれないが、例えばCAN-DO形式の目標を一つでもいいので設定して、少しずつパフォーマンスベースの授業に慣れていくことも可能ではないか。見通しを持った大きな絵を描くことだけでなく、まずは授業が変わりうることを教師と生徒が経験することにこそ意義があるのではないか。 
・能力記述文の作成について、「言語を用いて4技能別に何ができるようになるか」、と書かれているがこの「4技能別」にするというのが指導の形式だと勘違いされては困る。4技能の統合的総合的な指導が基本である。
 ・大きな目標を自分で作成するのは難しいと思うので、既存の取組を参考にしてもらう必要があるのではないか。また、作成した目標についてそれを超えてしまった場合に、達成できた人は次に何をすればいいかなど、そこまでつくり込むのはかなり厳しい。その点、CAN-DO形式の目標設定の背景に大きな枠があると、これができた人は次にこれがあるということが見えやすくなる。

・観点別学習状況の評価というのは、評価の規準を設定して、その規準に達しているか達していないかという発想だが、CEFRのCAN-DOは段階が示されていて、1つを達成すると上が見える。現状の評価規準は、毎回毎回ハードルが設定されて、それを超えているかどうかという話なので、評価の枠組みとしてのつくりがかなり違うように思う。 
・自分が初めに学校でCAN-DOをつくったときには、生徒の中のレベル差がかなり大きかったために1つの学校としての到達目標というハードルは非常に設定しにくいものがあった。結果として、到達目標を5種類つくるのではなく1枚にまとめてグレードを付けた形になっている。これは、成果指標というよりは、大きな枠組みで自分がどのくらい伸びたかがわかるようにという趣旨でつくったものである。グレードをつけない形にした方が良いのかどうかは難しいところ。 
・CAN-DOリストの形での到達目標が評価のためにだけ使われるのであれば、全く意味がない。やはりCAN-DO型の到達目標というのは、それが授業の改善につながる、まさしく学習指導要領に書かれているような言語活動をするに当たって役立つものでなければならない。それが大きな役目であって、達成率が何%かを見たりするためのものではないと思う。

・QAのリストを見ていると、CAN-DOリストをつくるまでの質問が多いのではないか。やはり、その後のどのように活用するのかという部分をもっと充実させたい。様々な例を示すような形も必要ではないか。

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