参考資料 外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定に関する検討会議(第1回)主な意見

  •  かつては、言語能力とは単語を知っていたり文法を知っていたりということで記述されることが多かったが、CEFRではaction-oriented approachという「言葉を使って何ができるのか」ということで能力を記述している。ヨーロッパで作られたCEFRは、今や世界の様々な地域で活用され始めているが、用いるにあたっては自分のコンテクストに合わせてアダプトすることが必要とされている。
      日本の学校教育の中にCEFRやCAN-DOという概念を持ってくることによって、英語教育の成果として英語でどんなことができるような学習者を育てるのかという話につながっていくだろう。
  •   CEFR-Jの開発の動機は、CEFRの影響力を考慮した上で、日本で何とかこれを英語教育の枠組みに導入できないかというもの。
     日本人の英語力は、CEFRでいうと8割相当はAレベル。このため、CEFR-Jでは、A1からB2までのレベルを少し細かく分け、かつPre-A1というレベルを設けている。
      CEFR-Jそのものは単なるCAN-DOのリストのみであるので、実際にこれを具体的に活用するため補足になるような言語資料を作成している。もともとCEFRでもEnglish Profileなど同様の資料が作成されており、各レベルでどんな言語表現や語彙を学ぶのか、実際の英語の素材を示し、活用されやすいよう工夫している。
  •   学習指導要領を踏まえてCAN-DOリストを設定することはもちろん必要。CEFRの内容と観点別学習状況の評価の評価規準には共通するものも多く、整合性を保つことはできると思う。到達目標は主として教員が生徒の指導と評価の改善のために活用するという点には大いに賛成する。生徒の英語力を高めるため、というポジティブなことに使ってもらいたい。
       但し、日本の中学・高校では、学校ごとに授業時間数や使用している教科書が異なるということも踏まえ、教科書に配慮して、それをもとにCAN-DOリスト形式での到達目標をつくっていく必要がある。

 学習指導要領やこれに基づく学習の評価との整合性は非常に大事。教育現場では、学習指導要領が大前提であり、そこから逸脱すると現状から乖離してしまう部分があるだろう。特に高校は多様であるので、学校によって何を到達目標としてCAN-DOリストから拾うかが課題である。国としてのCAN-DOリストの形での学習到達目標設定に際しては、多様な学校の現状を踏まえて、それをいかに集約するかという方向での検討も必要ではないか。

  •   資料4の基本的方向については大きくは賛成。但し、CEFRではProduction系の技能の場合に「言葉で何をするか」という側面が強調されているのに対して、Reception系の技能の場合は「何を理解するのか」というWhatの部分にCAN-DOの主眼が置かれている。これに対して学習指導要領は、少し「何を(What)」の部分のバリエーションが狭い。身につけるべき力の全体像が学習指導要領だけにとどまっていると、CEFRが言うような視点の重要なところが見えてこないかもしれない。教科書との整合性については悩ましいが、到達基準や言語材料を整備することによって、相補的に品質が変わっていくような形が望ましいのではないか。
  •   CAN-DOリストについては、やはり現場が混乱しているというのが正直な感想。非常に長大なリストをつくらなければならない、というように受け取っている方もいる。早急にある程度の指針が示されることは、非常に助けになるのではないか。
     学習指導要領は当然踏まえてしかるべきであるが、評価の4観点のうち、言語・文化に対する気付きをどこまでCAN-DO化できるのかについては、議論の必要がある。
     また、教員を主眼に置き、教員の指導と評価の改善に使うという点は重要。教員がそれをどう活用するか、また活用した結果が非常に大切な観点だと思っている。ただ同時に、学習者のものという理念も重要であり、生涯学習の観点から、自律的な学習者が主体となった使い方を考えていくことも、議論の対象になるのではないか。
     国の大枠は必要だが、国が示したものを学校がそのまま取り入れるようなことになってはいけない。拠点校等における取組を吸い上げるというのが望ましい方向ではないか。リストを作ることそのものが目的ではない。活用による改善効果や活用にあたっての価値観を共有することが大切である。
  •   学習指導要領に基づく学習評価について一点懸念されるのは、現在の評価枠組みでは、設定した目標の達成度合いを学習直後に評価するのに対し、英語は積み上げ型の教科であるため、やっているときはできているけれども、しばらくたつとできなくなってしまう場合があるということ。CEFRでは、学習した直後ではなく、ある時点で、自分から特定の縛りなくやったときに、英語を使えるかというところを見ようとしているものなので、その点は両者の整合性を図るのに難しさがあるかもしれない。
  •  CAN-DOリストの形での学習到達目標というのは、作るだけならば容易だが、それをいかに指導していくかという保証の仕方を考えていかないと、絵に描いた餅になってしまう懸念がある。
     また、CAN-DOリストの形での学習到達目標を学校でつくる場合、例えば外国語科の教員が10人いるところもあれば、1人しかいない学校もあることに留意が必要。また、年度初めに作成している年間指導評価計画の評価規準との整合性・共通化も今後必要になってくるのではないか。
  •   CAN-DOリストの形での学習到達目標を設定した後、実際にどのように活用するかという部分が課題だと考えている。
     個人的には、CAN-DOリスト形式の学習到達目標をつくるためには、まず生徒にこういうことをさせたいということを同じ目線で具体化できる教員集団の中で、到達目標を皆で共通に持ち、設定した目標の活用の仕方を共有していくことが非常に大事だと考えている。そのためには、それができる教員集団を育てることが重要である。
  •   指導主事として学校訪問をしながら状況を聞いていると、既にCAN-DOリスト形式の学習到達目標を作成しており、それを使っているが、1人の教員が主になって作成したため、他の先生方には使ってもらえていない、あるいは、特定のクラスのみが使っているというところもある。また、とりあえず作ったが、なかなか活用できていないというところもある。担当教員の数が少ないところでは、「私たち2人でつくったものが本当に学校を代表する目標でいいのか」というような課題も聞こえてきている。
     また、学校間で生徒のニーズが異なっており、その中でどんな目標を設定していくのが適切なのかという疑問を持っているところもある。
  •  「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標は、1学習指導要領を踏まえて設定すること、2観点別学習状況の評価等の学習指導要領に基づく学習評価との整合性を保持した上で設定すること、3主として教員が生徒を指導・評価する際に活用すること、の3点については基本的な路線として合意されたが、生徒自身が主体的に自律的学習者として活用していくことについても考える必要がある。また、手引きに盛り込む内容としては、特に活用方法が重要である。国としての「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定というのは、まず手引きを作ってから進めるべき。

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