資料4　各中・高等学校における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引き（素案）

1．趣旨・目的

英語をはじめとした外国語は，グローバル社会を生きる我が国の子どもたちの可能性を大きく広げる重要なツールであるとともに，外国語運用能力は日本の国際競争力を高めていく上で欠くことができない要素となっている。平成23年6月に「外国語能力の向上に関する検討会」（平成22年11月5日初等中等教育局長決定）がとりまとめた「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」においては，各中・高等学校が学習指導要領に基づき，生徒に求められる英語力（学習到達目標）を「言語を用いて何ができるか」という観点から，「CAN-DOリスト」の形で具体的に設定することについて提言がなされたところである。

各学校が「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定する目的は，第1に，生徒の外国語能力を向上させるため，各学校が生徒に身に付けさせたい能力を明確化し，教員が生徒の指導と評価の改善に活用することである。

真に英語が使える日本人を育成するためには，学習指導要領に基づく授業を着実に実施するとともに，その成果を把握・検証することが不可欠である。

また，我が国における外国語教育の課題として，文法・訳読が中心となっていることや，「読むこと」を中心とした指導がなされており，4技能の指導において偏りがあることなどが指摘されている。そこで，第2の目的は，学習到達目標を「言語を使って～することができる」という能力記述文の形で設定することにより，学習指導要領を踏まえた，「聞くこと」，「話すこと」，「読むこと」及び「書くこと」の4技能を総合的に育成する指導につなげることである。これにより，外国語をツールとして円滑にコミュニケーションを図る能力や，相手の文化的・社会的背景を踏まえた上で，相手の意図や考えを的確に理解し，自らの考えに理由や根拠を付け加えて，論理的に説明したり，議論の中で反論したり相手を説得したりするなど，適切に伝える能力を養うことが期待される。

第3に，教員と生徒が外国語学習の目標を共有することである。これにより，生徒自身にも「～ができるようになりたい」，「～ができるようになることを目指す」といった自覚が芽生え，言語習得に必要な自律的学習者としての態度・姿勢が身に付くことが期待される。

「CAN-DOリスト」の形で学習到達目標を設定する目的

1. 各学校が生徒に身に付けさせたい能力を明確化し，教員が生徒の指導と評価の改善に活用すること
2. 学習指導要領を踏まえた，「聞くこと」，「話すこと」，「読むこと」及び「書くこと」の4技能を総合的に育成し，外国語によるコミュニケーション能力を養う指導につなげること
3. 学習指導要領を踏まえた，思考力，判断力，表現力を養う指導につなげること
4. 生涯学習の観点から，教員が生徒と目標を共有することにより，言語習得に必要な自律的学習者として主体的に学習する態度・姿勢を生徒に身に付けさせること
   

（補足的に記述する事項）

観点別学習状況の評価との関係（「3．活用方法」及び「4．設定した目標の達成度を検証するための評価方法及び評価時期」参照）

2．「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標の設定手順

（1）検討体制

　検討体制

　設定過程に外国語担当教員全員が参加し，生徒の実態，育成したい能力や生徒像，学習指導要領に基　　づいた指導と評価の方法を共有することが必要。

（2）段階の設定

　段階の設定

　卒業時の最終的な学習到達目標に向け，そこに到達するためにどのような段階で学習到達目標を設定することが適切かを検討することが必要。
　（段階例）　・学年ごと　・学期ごと　・単元ごと

（3）学習到達目標の設定

　　　設定方法

各学校で実際に行われている学習活動をベースに設定する方法と，ベースとなる枠組（例えば既存の
「CAN-DOリスト」等）を参考に各学校に対応した形に直し，学習到達目標として設定した上で，それに学習活動をあてはめていく方法とが考えられる。

　　能力記述文の作成

1. 4技能別に何ができるようになるかを「～することができる」という具体的な文（能力記述文）で表す。
2. 授業時数や評価に要する時間を考慮し，設定した段階ごとにいくつくらいの能力記述文を作成するのかという目安が必要。
3. 能力記述文はどの程度，具体的なものが望ましいのか検討が必要。

（4）既存の取組を参照することについて

　  既存の取り組みの参照 

   「外国語の学習，教授，評価のためのヨーロッパ共通参照枠（CEFR）」や外部検定試験実施者が開発した「　　CAN-DOリスト」等を，能力記述文の書き方や各目標の配置の参考にすることは可能。但し，学校において　　は，必ずしも言語能力の発達段階を綿密に考慮した緻密なものを作成する必要はなく，各学校の実情に応じたおおまかで分かりやすいものをまずは作成し，実際に活用する中で必要に応じて見直すことが重要と考え
られる。

3.活用方法

（1）年間指導計画等への反映

     指導と評価の計画等への反映

1.   「CAN-DOリスト」の形で設定した学習到達目標を年間指導計画にどのように位置づけ，どのような指導を行うか，また，設定した目標の達成度をどのような方法で検証し，評価するかを計画する（別紙参照）。
2.  その際，観点別学習状況の評価における外国語科の評価の観点は「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」，「外国語表現の能力」，「外国語理解の能力」及び「言語や文化についての知識・理解」とされているが，「CAN-DO リスト」の形で設定された学習到達目標に対応するのは，このうち「外国語表現の能力」及び「外国語理解の能力」になると考えられる。
3.  達成状況の検証方法として，外部検定試験の活用が可能であるか，検討する必要がある。
4.  高等学校の場合は，各科目の指導計画と有機的に関連づけることが重要。そのためにも，外国語科担当教員全員が学習到達目標の当該科目における指導への反映について共通理解を持っておくことが必要。
5.  生徒や保護者と学習到達目標を共有するため，「CAN-DOリスト」の形で記載された目標を，例えば高等学校におけるシラバスにも反映させることが望ましい。

（2）単元計画への反映（各授業内容，教科書・教材との関係）

単元計画への反映

1. 「CAN-DOリスト」の形で設定した学習到達目標と連動した年間指導計画に基づいて，各単元における目標，学習活動，評価方法等を計画することが必要。
2.  教科書を中心に，教員の創意工夫により，学習到達目標に沿った適切な教材を活用しながら学習指導を行うことが望ましい。

4．設定した目標の達成度を検証するための評価方法及び評価時期

CAN-DOリスト」の形で設定した学習到達目標を年間指導計画に位置づけることにより，「CAN-DOリスト」の形で設定した学習到達目標と評価規準，評価方法及び評価時期を有機的に連動させることが重要。（別紙参照）

 〈評価方法〉

 評価方法は，学習到達目標に対応した学習活動の特質等に応じて，エッセイ，パフォーマンス，インタビュー等，その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択することが重要。

〈評価時期〉

1.  指導の途中段階ではなく，「できる」ようになった時点で評価することができるよう，評価時期を工夫することが必要。
2.  なお，授業改善のための評価は日常的に行われることが重要である一方で，指導後の生徒の状況を記録するための評価を行う際には，単元等のある程度長い区切りの中で適切に設定した時期において評価することが求められる。さらに学期や学年といった単位で学習の実現状況をまとめるとともに，評定に総括していくことが考えられる。 

5．達成状況の検証，設定した学習到達目標の見直し

達成状況の検証，設定した学習到達目標の見直し〉

1.  外国語科担当教員全員で生徒の目標の達成状況を検証し，必要に応じて指導方法を改善する必要がある。また，妥当性及び信頼性を高める視点から，評価の方法を見直す必要がある。
2.  さらに，設定した目標が適切なものであったかどうかを検討し，必要に応じて，設定した目標の内容や難易度，目標の設定や評価を行う時期を変更する。
3.  見直しの時期としては，学年末がのぞましい。学年途中で見直す場合には，生徒や保護者へも周知する必要があるため，どのような場合に見直しを行うのか，あらかじめ決定しておく必要がある。