教職員のメンタルヘルス対策検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成24年3月4日(日曜日)10時から12時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(3階)

3.議題

  1. 教職員のメンタルヘルスの現状について
  2. 委員からの意見発表について

4.議事要旨

冒頭、吉川座長から挨拶がなされた。

議題(1):教職員のメンタルヘルスの現状について

【事務局】

 まず、資料2についてご説明申し上げます。

 資料の5ページをご覧いただければと思います。前回会議におきまして精神疾患による休職教員の割合について単年度、最近のデータということで円グラフでご紹介申し上げておりました。これに関して経年で見たらどうなるかというご指摘をいただきました。5年分のデータを折れ線グラフで表示したものが5ページ下のグラフでございます。学校種別に見ますと、中学校の割合というのが比較的高いということで前回申し上げました。在職者に占める割合で見ますと、中学校、特別支援学校の割合が高くなっている。近年の経年で見ますと、中学校での伸びが他の学校種に比べて高く見られます。

 続いて、6ページでございます。年代別ではどうかということでございます。これも前回20代、30代、40代、50代、全体に分けまして円グラフで示しておりました。これを、2ヶ年分だけになりますが、比較しました。年代別の精神疾患による休職のデータを平成18年度からとっていますが、教員の年代別のデータというのも3年に1度調査をしています。年代別の比較が重なりましたのが、平成19年度と平成22年度のみでございましたので、この2ヶ年の比較を表とグラフで表示しております。この表、グラフを見ますと、50代の割合が高いということがいえます。近年の伸び、平成19年度と平成22年度の比較では、青いグラフの40代の傾きが他の年代に比べて高い傾向が見られます。

 続きまして、18ページ、19ページをお開きください。前回、教職員の悩みに関する内容でありますとか男女別でどうかということがありました。その点については、文部科学省の方では調査をしていないのでデータがございません。この度は、厚生労働省の一般の労働者のデータをお示ししました。男女別に見た場合に女性の方が職場の人間関係での悩み、ストレスが多い傾向があります。それに対して、男性につきましては、昇進や昇給、会社の将来性、定年後の仕事、老後といったストレスでの割合が高い傾向がございます。

 続きまして20ページは、厚生労働省での調査における男女別での比較でございます。これは強い不安、悩み、ストレスへの回答、これがあるかどうかの回答でございます。全体として若干少なくなってきている傾向にあるように見られます。女性よりも男性の方が強い不安、悩み、ストレスがあるという回答が多い傾向が見られます。

 続いて、23ページの下の表でございます。学校における仕事のスクラップアンドビルド。学校がややもするとビルドビルドになりがちで、スクラップができていないのではないかというご指摘もありました。これは学校における取組というよりは、都道府県教育委員会において、この重要性をどのように指導等しているかというデータでございます。会議や行事の見直しを図る取組を促す等、学校あるいは市町村を指導したというところや、適正な校務分掌を整えるように学校あるいは市町村を指導したというデータでございます。こういった取組を意識している教育委員会が増えてきている傾向がございます。少なくとも教育委員会の方では、かなりこういった点について意識されるようになってきたということが見られると思います。資料2について追加のご説明は以上でございます。

 続きまして資料3の教職員のメンタルヘルス対策検討会議のスケジュール案としている資料についてご説明申しあげます。この会議の概ねのスケジュールについては、前回同様でございます。今回は1番右の欄に調査研究委託事業という欄を設けました。これは、資料4でご説明申し上げますが、平成24年度におきまして、この会議における検討に資するように調査を実施したいと思っております。その調査の流れと会議のスケジュールを統合したようなスケジュールであります。この調査については、それぞれの節目の段階で報告をさせていただき、最終的にこの会議での検討につなげていきたいという内容でございます。

 続いて資料4についてご説明を申し上げます。この委託調査のあり方についてたたき台として本日お示ししたものでございます。「調査の趣旨」にございますように、これまで文部科学省において教職員の精神疾患による休職等の状況について調査をしてきております。この度、本格的に委員の皆様方から専門的な見地からご検討いただいています。これまでの文部科学省の調査では把握できていない休職者に関する事項ですとか、一般の労働者に関する意識の傾向について先程資料2でご説明申し上げました。しかし、教職員個人の意識についての調査がございませんので、教職員の個人の意識についての調査と2本立てで行いまして、その結果をこの会議でご報告させていただき、対策あるいはこの会議での議論、検討が充実したものになるようにお示ししたいと思っております。調査につきましては都道府県、指定都市に対する調査と個人に対する質問紙調査を実施したいと思っております。抽出方法、サンプル方法、サンプル数あるいはその他の調査方法については、別途事務局の方で検討させていただきたいと思います。本日は中身、どのような項目について行うかということについて、まず、都道府県・指定都市教育委員会に対する調査事項(例)と致しましたものについて簡単にご説明申し上げます。これまで文部科学省におきましては、学校種あるいは年代別、性別による精神疾患による休職者の状況について調査をしてまいりました。これに加えまして、これまでの調査では調べておりませんが、学校規模あるいは生徒指導上の課題との関連についても調査はできないかと考えているところでございます。例えば大きな学校規模になりますと教職員数も増えますので、1人で何でもしなくてはならないといった状況からある程度分担や協力といったことが可能になるような学校の教職員の体制になろうかと思います。一方で、全体としての業務量が多く人間関係でも様々な関係が発生します。つまり学校規模が小さい、大きいでどうなのかということです。特に、中学校での精神疾割合というのが、他の校種に比べて多いという傾向がありました。生徒指導上の課題も指摘されている部分がございますので、そういった関連についても調査をしてはどうかと考えております。また、2にございますように教職員個人に関する項目としましては、過去の病気休職歴の有無という所で繰り返し病気休暇を取られる方の割合が一定割合いらっしゃいます。そういった方の状況とか、休職発令時においてどういった業務をなされていたか、ということについても把握できないかと考えています。続いて、教職員のメンタルヘルスの現状に関するアンケートということで教諭等で考えた場合どうかというものについて例としてお示しをしているものでございます。このアンケートについては休職あるいは病気休暇等をしているかどうかにかかわらず、全ての教職員を全体数として一定のサンプルを抽出して職種別にアンケートの形でできないかと考えています。項目といたしましては、個人のストレスの状況やストレスをどうように軽減をする方法を持っているか、感じているかということ、職場の状況はどうか、といった大きく3つの視点で調査をしようというものでございます。まず、2にございますようにストレスの状況については、それぞれの教職員が個人としてどのようなことに、どれくらいのストレスを感じていらっしゃるということについてアンケートを取りたいと思います。厚生労働省の調査によると、仕事の質や量といった所でのストレスの有無、あるいは職場の人間関係といった調査項目がございました。しかし、学校の教職員特有の部分としてどのような仕事の内容かを突っ込んだ聞き方をしたいと思っております。続いて3のストレスの軽減方法では、教職員個人が自分自身で日頃のストレスをどのように軽減させているか、大なり小なり個人が何らかのストレスをお持ちだと思いますが、ストレスの軽減としてどのようなことを意識されているか、ということについて調査をしたいと思っております。4につきましては、個人が職場の雰囲気をどのように感じているか、職場のコミュニケーションも含めまして、どういった職場の雰囲気であるかについて調査をしたいと思っております。個人のストレス状況、個人としてのストレス軽減策、あるいは、職場の雰囲気といった所について可能な部分については、クロス集計等も行いましてストレスの状況と個人としてのストレス軽減策、あるいは職場の雰囲気として感じていらっしゃることがどういった関連にあるかについても見ていきたいと思っております。なお、この調査についてはサンプル数が予算の範囲で限られる部分がございます。また、現場の先生方に過度な負担にならないように配慮しながら実施をしたいと思っております。

 資料の5でございますが、前回の会の議事概要でございます。先生方にご確認いただきまして特段のご意見等がなければ、この議事概要の案で文部科学省のホームページにも掲載させていただければと思います。

【座長】

 どうもありがとうございました。今の報告を少し総括させていただきます。まず資料の2でお話をいただいた前回の資料の補足と言ってよろしいかと思います。ご質問いただいたことについて補足をしていただきましたのが資料2に関する所でございます。

 資料3に関して資料4とも絡んで、今度の経過について改めてお話をいただきました。おさらいをしたという感じです。ただ、資料4の方で新たに提案されました調査に関して、皆様方のご意見をいただいておりません。今日お出し致しましたのは粗々の考え方ということでございます。実際にこれから調査の項目等を作らなければいけません。調査の内容に関して皆様方のご意見をいただくと私は思っています。とりあえずこういうことをやる予定である。4月以降の新年度予算の中でやる予定であるとお考えいただきたいと思います。実際にこの調査の委託先に関しましては書いてございますように競争入札ということでございますから、これらを勘案しまして実際に項目等を作る段にあたりましては、皆様方のご意見をいろいろといただきたいとに考えています。何かご質問やご意見はありませんでしょうか。

【委員】

 調査の進め方のことですが、拝見しますと非常に重要な項目ばかりだと思います。対策につなげられるということを考えますと、もう少しこういう所を深追いしたものを入れたらいいのではないかとか。これは後日ということですが、それを入れるにあたって、どんなものを入れるかを議論をする時間が必要であると思います。そのスケジュールを考えますと全体としてどうなるのか。このスケジュールでいけるのかどうか。そこの所が少し気になりました。

【事務局】

 少し説明が不足しておりまして申し訳ございません。本日の会議においても後ほどお時間が若干でもあれば、ご意見をいただきたいと思います。また、時間等が足らなければ、まだ時間がございますので、この委託事業を固めきっていくような段階もあります。アンケートとして事務局の案として固めていくにあたっても、委員の先生方のご意見を十分いただきたいと思います。後ほど先生方から発表いただいた後の時間、あるいは、その後のメール等でも、今後の対策につなげられる重要な観点でございますので、ぜひご意見をいただければと思います。

議題(2):委員からの意見発表について

【座長】

 それでは、次へ進めさせていただきます。先程、話しがありましたけれども、皆様方の手元にありますように前回の議事録があります。その議事録に関しましては、このままでよろしいでしたらホームページの方にお載せするということで文部科学省の方からお話しを聞いております。もし何かあれば、それにつきましては、事務局の方にでもご連絡をいただければと思います。

 今日は先程申しましたように、委員の先生の方からプレゼンテーションしていただくことになっております。3人の方にこれから順次、プレゼンテーションをお願いしたいと思います。それぞれの立場で独自にお話をいただけると思います。それぞれのお考えを出していただいて、後ほど相互に議論を深めたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

【委員】

 私は精神医療の専門の方と現場の方との中間的な立場にいるかなと思います。私の側から見た学校の特徴、業務の実情の説明等も加えて話ができればと思って資料をまとめさせていただきました。若干古い資料ですけれども、お話したいと思います。病院を受診した方の実態でございます。「教師」は現職の教員であり、「一般勤労者」は常勤雇用の方で、比較対象としています。F4という「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」がどちらも多いです。また、F3の「気分障害」では、当科ではうつ病に関して、従来型のうつ病を重視して診断しておりましたので、教師に関しても一般勤労者に関しても、F3がそんなに多くない。それはこちらの病院の診断の付け方もあるということでご了解いただければと思います。そうした中でF4のストレス関連障害の中のF43、適応障害、これが1番多くて、先生方が48%、同じ基準で一般勤労者に関しては24%ということで、約半分になっています。これだけ見ますと先生方の病気としましては、F43の適応障害が全体の半分ということでストレス絡みの病気が多い。

 先生方のストレス状況を見た場合に、業務関連ストレスに関して申しますと3ページのような状況になっています。これは以前にも集計したことがあります。だいたい割合としては変わらず、1番多いのは生徒指導ということで約4割です。次が同僚・管理職との人間関係、職場の中の人間関係で4分の1ぐらい、24%程度。あまり比率として変わらない。そこに他の人間関係ストレスとして保護者対応というのがございますが、これが最も強いストレスになった場合ということは比較的少なくて6%という形です。これはなぜかということですが、生徒指導に絡んで生徒指導でストレスを感じた方が、次に保護者対応でストレスを感じるという形で、2番手ぐらいに出てくる割合が非常に高い。1番手に関して言いますと1割未満ということで、これも昔から変わっていません。保護者対応が最もストレスで、それによって病院に来ているという割合は、比較的そう多くはない。他に、「その他の仕事」が17%で、内実はいろいろ含まれています。その中で目立ったのが、忙しさに関するものでした。ストレス状況は、適応障害の場合は発症に関連した業務関連ストレス、それ以外の疾患の方では病気を悪化させる要因であると思われる業務関連ストレスの内訳が、以上のような割合になっています。

 年代別に見ると図のような形です。どの年代を見ても、生徒指導が1番に高いです。しかも20代、30代に比べて40代は若干低いかなと思いますが、50代はむしろ上がっています。決してベテランだから生徒指導が楽になるわけではない状況が見られます。同僚・管理職との人間関係に関して言いますと年代が上がると逆に減っていく。こちらは若い先生に多いということが言えると思います。保護者対応では、20代、30代が高くて40代はぐっと減るんですけど、50代ではまた増えています。50代については、管理職の先生が含まれていることも影響していると思います。先程申しました「その他の仕事」で、忙しいというのが比較的目立つということがあったんですけど、40代の先生は、その他の仕事の占める割合が他に比べて非常に多いです。先程、担当の方からお話がありました、40代の先生のお休みの伸びが多いということは、もしかするとその辺の事が影響しているのではないか。1番仕事が集まって来やすい年代ということで、大変になってきているかなと感じます。

 また、受診された時点で異動後何年目で来られたかということを見ました。教員に関しても、一般の勤労者に関しても異動後1年目、2年目は多いです。特に一般の方は1年目が多いんですけれども、休みの率でいうと教員の方がはるかに多い。1年目、2年目あたりの休業率が高い。一般の方は、受診されてからお休みする方の割合はそんなに多くないです。どちらも、だんだん慣れてきますと低くなってくると言えると思います。

 以上のような調査結果をふまえて先生方の業務関連ストレスの背景について考えますと、職務内容に、燃え尽きの条件が揃っているということがある。対人関係職種であって、やろうとすればいくらでもでき、果てがない。その割に目に見える結果が見える場合もあるが、見えない場合が圧倒的に多いということがあります。非常に燃え尽きやすい条件が揃っています。周りからの評価などのフィードバックが得られないと、燃え尽きてしまうということになって参ります。また、最近は子どもさんたちの問題も非常に深刻なものが出てきています。普通にクラス運営をしていて、気がかりなお子さんがいるとどうも虐待が疑われる状況があったり、非常に深刻な問題を、学校でまず第一に対応しなくてはいけない。非常に困難な局面に陥りやすい。

 ここからは、学校関係者以外の方から見ますと非常に分かりにくい面です。先生方が忙しいといいますが、何が忙しいかよく分からないと思います。学校というのは、一つの組織運営を全教職員でまかなっています。企業等であれば、当然、分担してしかるべき経理だとか、企画だとか、営業だとか何とかだとかいうものが、みんな全員で分けてこなす形になっています。小規模校では、児童数、生徒数によって教員数、職員数が決められていますので、大規模校と同じ業務を頭数で割ることになり、特に大変になります。とある学校の組織図を抜粋してみましたが、教務部とか指導部とか庶務部とかいう形で分けられていますが、その1番下の小さい分岐を数えると、全部で92から104あります。100前後の分掌を、教職員、つまり事務職員の方は数名、多くても6人ぐらいと思われる人数、プラス教員、栄養職員等でまかなっています。教頭先生の分掌を数えてみたら、25個ありました。一般の先生は4、5個ぐらいかなという感じです。一般の先生は授業を行い、生徒を指導し、昼間はぎりぎりいっぱいなんですね。夕方からの業務として、これだけのものをこなしつつやっています。同じ分掌の先生方が打ち合わせをしようとすると3人なら3人、4人なら4人の先生の時間が合わないと打ち合わせができないということになってきます。その上、委員会が17あります。この委員会の委員は1人ではないと思います。そうすると複数の職員が兼任して会議を持つということになる。すると、一体いつ仕事が終わるのか、会議を持てるのか、何ができるのか、自分の仕事はいつやるのか分からない、という大変な状態で業務は回っています。しかもここに、保護者の方の対応等が突発的に入ると当然対応しますし、生徒指導なんかも中学校ですと、校外でのことで連絡が入って、急に先生たちが街中に出て行くということもあります。非常に厳しい中で日々の業務がなされているという気が致します。

 背景を見ますと、人間関係が重層的であるといえます。まず教員がいて同僚・管理職がいるという職場の中の人間関係があって、児童生徒もいて、その保護者もいらしている。これらが絡んでいるというのが、学校の人間関係の特徴でございます。これらはお互いに影響し合いながら、人間関係が難しくなる場合では、全部が悪くなっていくということもあるわけです。まず、児童生徒とうまくいかない。そこで保護者が不信感を持つ。そうすると、いろいろ指導が大変になってきてトラブルが起こってきますので、同僚・管理職にその影響が及ぶ。そして、同僚・管理職との関係も悪化していく。非常に厳しい状況に追いやられるということになっていきます。通常、会社等で人間関係というと顧客との間の人間関係はあまり問題にならないと思います。やはり、職場の中の主に管理職との関係、あるいは、部下との関係が問題になるかと思います。先生方の学校現場はその辺が非常に複雑になっているという点で大変難しい面がございます。

 そして、もう1つ、学校は、地域性だとか学校による特色、違い、これが意外と大きいです。高校、県立、都立の学校等はかなりいろいろな特色を出してきていますし、義務教育では、小中一貫教育あるいは中高一貫教育などいろいろな取組がされています。場所が変わる、学校が変わると取り組む内容がずいぶん変わってしまいます。学校によって求められているもの、地域性による違い、これが非常に強くなります。同じ職種であっても、異動すると本当に仕事内容、取り組み方、求められているものが違います。非常に孤立になりやすいということもあると思います。職場内部の問題ですけれども、元々、学校の先生というのは自分たちの指導、学級あるいは教科を教える上で、他からはあまり干渉されにくい、されたくない、そういう気持ちがある。人間関係が持ちにくい場合が結構ございます。すると、忙しい現場ですので、仕事をこなす人に仕事が集まります。そうでない方にはあまりいかない。お隣と比べてみると、相当仕事量が違うということもよくあることです。がんばれる人か、あるいは要領よくやる人かどちらかしか生き残っていかれないような現場になりつつあります。職場の中の人間関係も当然、勤労者のストレスとしてあります。繰り返しになりますが業務量の違い、その辺を見ますと仕事のコントロールがどうなっていくか、ということも影響してまいります。ラインケアが重要になると思われますが、教頭先生、副校長先生は、仕事の量、分掌が多くて大変です。ご自身の仕事をこなすので手一杯ということがございます。そして、昨今、書類が増えるということがいわれています。教育委員会も業務軽減のためいろいろと取り組んでいるということはありますが、実態がよくなってきたかといえば微妙な点があると思います。児童生徒の問題、保護者対応の困難性、対応が求められる範囲の拡大など、先程もありましたが児童相談所に通報するとか、しないとか、以前にはなかった色々なことで業務が増えているということがあります。また、制度が変化したことで特にベテランの先生、教員生活が長い先生ほど変化に慣れるのが大変であると思います。新しい教科も入ってくると思いますので、対応するのが難しくなってきます。不調に陥った場合、比較的軽くても事例化しやすく、かなりいい状態が維持できなければ、その後の業務継続が難しい。しかも再休職になりますと本人と職場の中だけの問題では済まない。児童生徒及び保護者に対応できる人材が必要となってきます。

 次に職場復帰訓練のプログラム例をあげましたけれども、このような形で比較的、実際の内容を業務に近づけた形でやるというのが、一つの案としてはあります。長くなりましたが以上で終わります。ありがとうございました。

【座長】

 どうもありがとうございました。とりあえず今この場でお聞きした方がいいことがあれば、先生にご質問いただきたいと思います。あるいは、ご意見をいただければと思います。

【委員】

 企業の立場で先程、先生がおっしゃったように顧客対応というのは、企業はすごくクレーマーの方が沢山いらっしゃいます。お客様センターというのは、毎日クレーマーを処理しているところであります。そこは案外、精神疾患の方は少ない。それは上司がきちんとバックアップしていると非常に少なくなる。むしろ実際に現場の方がクレームにより、心を病む人が多い。その辺やはりバックアップ体制が重要かなと思っています。企業でもやはりクレーマーが沢山いらっしゃるので、ここは私たちも気にしているところです。

【委員】

 学校の場合は、現場の従業員がクレーム対応するのと実態としては近いと思います。通常の仕事をする中で起こってきた保護者の方からのご意見ですので。それに対して、対応している時間がない。焦りの中、対応していく。しかも内容も、多くはちょっとしたことなんです。ちょっと配慮してください。ちょっとこうしてくれたらいいのではないか。ちょっとした要望ですが、それに答えるだけの余力が乏しくなっていることがあるかなと思います。クレーマーの窓口だと、むしろ逆にそこに特化した仕事であり、ある程度受ける身構えができている点があります。それを受けるつもりで仕事に臨んでいき、かかってきた電話に応対します。通常の教員が、より良い教育をしていこうとか、そういう視点でやっていく中で、横から意見が入ると意欲を削ぎやすいところはあるかと思います。それからもう1点、上司のバックアップという問題ですけれども、これはやはり現場でも非常に有効ですね。管理職の方が支えてくれるかどうか、それによって保護者からのご要望に対して受けるダメージというのは違います。ただ、難しいのが指導絡みの要望なんかですと、やはりその先生の個人の教育の力の問題に帰して考えられやすい。要は苦情を受けた方が、がんばってなんとかしなくてはならない問題だと見なされてしまうということです。がんばって解消しなくてはならない問題もあるかと思いますけど、行き過ぎると非常にきつい。孤立を招いてしまって、そこでメンタルヘルスを病むということにつながっていくと思います。

【座長】

 何かご意見がございますか。

【委員】

 小さなクレームというのは、いくつもあると思います。結局、クレームについての問い合わせに対して、丁寧に対応できればいいと思います。しかし、そこでつまずいてしまい、失敗すると、またこじれてしまいます。精神的に圧迫を感じるケースもございます。教育委員会によっては、比較的大きなクレームをすぐに受けて、指導主事の方で対応する。または、指導主事が一緒に対応するということもあります。基本的なスタンスとして大切なのは、小さなことでも管理職に報告させる。単独では対応させないように、学年主任ですとか教務主任ですとか、内容によってすぐに副校長があたる。校長が出ないと解決しないということで、管理職が判断して的確な対応をするということが1番大切であると思っています。

【座長】

 深い議論は後で結構でございます。それでは、先生のプレゼンテーションを一段落させていただきます。次の先生お願いします。

【委員】

 企業の立場ということで、職場におけるメンタルヘルスの概略についてお話しをさせていただきます。3ページ目を見ていただきますと、一次予防、二次予防、三次予防というのがあります。企業でメンタルヘルスケアをするキーパーソンは管理監督者で、部下を持った時点で部下の心身の健康の管理をするということが、労働契約法等で決まっております。つまり、バックアップをきちんとする。部下に業務上疾病が出た場合には、上司は責任をとるという体制になっております。そのため、管理職に対する研修をよくしております。このように企業では健康管理者としての位置付けがありますので、企業主に代わって部下の健康管理義務を果たさなくてならない考えがございます。下に書いてますように、職場風土の醸成とか、コミュニケーションとか、部下に何らかの問題があった場合に、ただちに対応して産業医であるとか、上司、さらにその上の上司に相談をして、迅速に対応する。そうしないと、おそらく生産性が落ちてしまいますので、その方の仕事が周りの方に波及して、その次の方がまた、重労働になってしまうということが連鎖反応で起こります。休職したら人が誰か派遣されるかというと、今の企業ではあり得ません。その方がお休みになると、周りの方が自分の仕事を分配しなくてはならない。上司がその仕事をすることになりますので、ますます、その職場が過重労働に陥ってしまうことになります。従来のように、10人で1つの仕事をするというような時代ではなくなってきまして、業績評価主義になりました。それぞれ一人ひとりが業績を評価される時代になってきています。しかし、上司としては、チームの仕事、自分の仕事をやっぱり達成しなくてはなりません。1人の方が抜けた場合には、他の方にその分だけをまた分配しなくてはならないことが起こってきます。できるだけ、部下がお休みにならないようにきちんとした健康管理をしなくてはならない。ますます厳しい状況になっています。

 厚生労働省において、5ページ目を見ていただきますと、メンタルヘルスケアの指針があります。ここの2番目のラインケアが非常に重要でして、産業医は、従業員の方と終始接しているわけではありません。上司の方がいつもと違う部下をキャッチした時に私たちに相談していただいて、私どもの会社の精神科医、この精神科医の役割は上司が精神科医と相談するというような企業の立場になっています。もしくは産業医が上司と相談して、初期対応を行う。上司はきちんとした知識を持って、部下の対応を行うのが基本的な姿勢になっています。何をするのかというと、職場環境の評価をすることで、仕事が非常に増えてきたら、スクラップアンドビルドをするとか、大きな意味では企業というのは組織改変をやります。行き詰まってくれば組織そのものを大きく変えてしまう。あまり忙しくなっている所であればそこを分散するとか、そこの人を増やすとかという形にしていく。できるだけ業務の忙しい所と、そうでない所とを平準化していくことをしていかないといろいろな問題が起こってきます。企業全体としては、そのような組織改革を行います。事業所ごとに管理職がそれぞれの従業員、部下の仕事の配分をきちんとする。なおかつそれで、心の問題等が発生すれば産業医が相談にのる。もしくは、企業内の精神科医が相談にのるということになっています。それから、後は相談体制でございます。管理職のカウンセリングマインドが重要であります。どのような対応をするのかということに関してきちんと協力をする。これは、係長とか課長級になった時に、必ず産業医から研修を受けることになっています。極めて厳しい研修でありましてロールプレイ等をやっておりますが、部下が例えば健康診断を受けない場合どうするのか、退職したいと言った場合に初期対応をどうするのか、パーソナリティに問題があると上司が感じた場合にどのような対応をするのかというようなことを、かなり長時間をかけて個別事例でロールプレイの対応をしております。

 私どもは、全般的には健康診断というは労働安全条例で義務付けられています。8ページの所に、従業員全員に対してwebで職場のストレス感調査票というのがあります。これを全員義務付けています。従来は個人の意志で受けてもらってました。会社がこれを受けることによって、働いている方に不利益を与えることはない。そういうことで、労働組合等要請もありまして、私たちも賛成して、全員にこれを答えていただいて、私たちがその場で面接をする形になっております。1週間から1ヶ月の間にwebで全て入力してもらいます。9ページを見てもらいますと、当日コンピューターの画面にこういう形で、ストレスによって起こる心身の反応と、ストレスの原因として考えられる因子というのが分析されて出てきます。これは、小さくなればよくありません。例えばこの方については、活気、元気がない、イライラ感が極めて厳しい。疲労感も大変だと、不安感もあり、抑うつ感もあり、身体愁訴もいろいろある。極めて緊迫した状態があるということを、本人が訴えているわけです。これは放置できませんので、当然、私たちはこれに対して、その場で面接に入っていくことになります。その原因は右の方にありますように、職務適性が合っていないとか、仕事の裁量権がほとんどないということを本人が訴えているわけです。これに対して、どうしていくのかということを本人と話しをする。仕事の量はそれはそんなに多くはないが、働きがいはあまりない。対人関係は問題ないといった形で分析ができておりますので、これに関して話しをする。そうすると下のように、10分から20分話しをしていると「仕事の内容が変わった、つまり、職場が変わった時に出張が多くなった。その出張が多くなった時にお子さんが生まれた。そして、夜泣きがあって夜が眠れない。精神科を受診して、薬を出して飲んでいる。」とのことがあった。主治医の意見書を出してもらう。ここで初めて気づいて、この人に対して就業上の措置、時間外労働を制限するという意見書を上司に出してもらう。上司を呼んでこの人に対して業務ストレスを軽減してくれ。それは永久ではなく、一定の期間ということで2ヶ月とか3ヶ月という期間で業務制限をする。それによって、パフォーマンスが0にならないように、本人を呼んで話しをする。上司を呼んでどれくらいの業務制限ができるかということを3者面談、ここには保健師も入ります。私と保健師さんと本人と職場の直属の上司とその上司、上司は2人います。一般従業員ですと係長と課長がくるという形です。さらに上の係長だと課長と部長がくるという形となって、職務軽減について、期間限定で採用するという形になります。異動が必要な場合もありますので、その辺はまた、人事と相談しなくてはなりません。

 次の復帰の問題ですが、これは別の先生の方から詳しくお話しがあろうかと思います。独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成23年に発表したデータであります。職場でメンタルヘルス不調が現れる原因として、職場の人間関係というのが厚生労働省の発表では多いです。また、仕事の量とか質の問題があります。昨今、本人の性格に問題があるのではないかという会社の反応が非常に増えているという発表があります。裁判なんかでも特に自己愛型に基づくパーソナリティの障害であるとか、解離性人格障害であるとか、そういった問題が出ていまして、これはおそらく、今まで生まれ育ってきた環境と職場の厳しさというものがうまく適応していない、いわゆる適応障害的な所が出てきているのではないかと思います。従来に比べて時間外労働に関しては極めて減っています。非常に厳しいスクラップアンドビルドを今やっております。ただ、時間外労働は減っていますが、仕事の質はかなり高くなってきています。いわゆる厳しくなってきています。労働時間は減ってきていますが、職務の内容が一人ひとり高度になってきています。極論を言えば、この仕事はわかりませんとか、できませんという形で産業医に訴えてきて、それがストレスだという話しもあります。企業としては、できませんというのは許容できませんので、わかりませんといった場合は、きちんと教育をするという形の対応をしています。従って、そこの区分をきっちりするということで、管理職に対して、必修で研修するという形で上司になった場合には、国が定めている教育研修、情報提供を行います。人事部、産業医それからコンプライアンス部といって法律を担当している部門がありますが、セクハラ、パワハラの話をします。人事部は適正評価、部下をきっちり評価しないとストレスの原因になる話しをします。また、健康管理面からの教育ということにかなり時間をかけてやります。従来はいろいろな研修が会社の中でありましたが、業務時間を圧迫するということで、人事部長の決裁で研修をすべて統合いたしました。人事が行う研修はできるだけ絞る。従来10ぐらいやっていたものを2つぐらいにしています。あとは、職場で上司がきちんと教育するという形で集合研修のようなものは最低限にしています。研修でむしろ職員の負荷が増えているということで、ばっさりと切ってもらいました。

 私たちのメンタルヘルスにおける研修については13ページ目にあります。まず、1番目に、100%受診している法定健康診断があります。この時に一応、私たちがストレスチェックを行いまして、問題のある対象者を抽出をいたします。企業の中に2人の精神科の先生が来ていただいていますので、その先生に相談をしてもらうという形になります。そうでない場合は、私たち産業医とか保健師が相談に乗るという形になります。健康診断の日は特別有給休暇でございますので、丸1日休暇を付与しています。健康診断が終わった後でも30分等の面接ができるようになっています。その日の内に問題があれば紹介状を書いて精神科の先生にかかり、体の病気でありましても医療機関を受診する形で対応しています。それから、企業では、キーパーソンは管理監督者ですから、新任監督者研修という形で、人事研修、これは必修研修であります。e-ラーニングで労働安全衛生法とか健康管理に係る勉強をしていただいて、それには試験があります。その試験が百点になるまでは、エンドレスにe-ラーニングを学んでいただいた後、研修を受けていただくことになります。全従業員に対してはいろいろな社内研修をしております。体制でありますが、産業医が基本的には、心身両面に関わる相談、復職面談、就業制限に関わる面談をします。それから、精神科医が一般診療と上司からの相談、上司が相談するということで2人の精神科医の先生に来ていただいています。上司から相談があった部下については、ここで診療もするということになっています。一定期間見たら外部の先生に見ていただくということにしています。それから産業ケースアップ、看護師、保健師等がいますので事業所に訪問して、心身に問題のある方、心の健康不調者に対してはフォローすることにしております。何か問題があった時は24時間の電話健康相談をやっております。特に、メンタルヘルスは今の企業での組織の問題ですので、組織をいかに改革していくかということを論じないかぎりはメンタルヘルス不調者は減らないという私たちの基本的な考え方があります。昭和50年から管理職に対するメンタルヘルス教育、昭和57年からVDTが入りましたのでストレス対策をやっております。従来は産業医がストレス対策で精神科医がメンタルヘルスケアの対策ということで、二本立てで昭和50年代から始めていました。現在では、産業医がすべてメンタルヘルスケアを統括して担当することになっております。疾病の域に達した場合には、精神科の先生のサポートを得ることにしております。要は、やはり上司が、新入社員が入った時にきちんと研修をする。この人たちに対してストレスであるとかいろんな生活習慣の検証をする。PTA教育といいまして、5年から10年経った人に対して教育をしまして、新入社員を2年間フォローする役割を持つ社員を養成しております。同じ大学の出身者とか同じ研究室とかいう上司が出てくるわけですから、その人に教育をして2年間は自分の後輩の面倒をみる。上司には相談できないことがあっても、必ずこの人には相談できるだろうということで、日頃からコミュニケーションを取る教育をここで私たちがしております。これで、できるだけ本人が相談できる窓口、チャンネルをたくさん作っておくということにしております。PTA教育でパーソナルチューターアドバイザーを作っておりますが、この方たちにまた、会社でどういうふうな健康相談の窓口があるかということをきちんと知ってもらって、この場合は産業医、この場合は精神科医、この場合は労働組合、この場合は上司という形できちんと教育をしておくようにしています。係長になった時、キャップといっていますが、ここで研修、初めて部下を持つ人の研修、それから管理職になった場合、課長級になった場合の研修と継続的な取組となっています。16ページは新任監督者研修という形で産業医が初めて部下を持った方に対する教育や、それから17ページは、管理職、特に課長級になった人に対しては、先程申しましたe-ラーニングを受講してもらって、労働安全衛生法を学んでもらった後、以下のような研修を2時間以上かけて実施しております。

 特に私たちが重点をおいていますのは復職支援でありまして、DSMの中で1回発症した人が2回目発症する可能性が6割ある。そして、最終的には、3回発症した人が4回目発症するのが90%で、これ以上は記載がありませんので、おそらくこれ以上は100%であると思います。下に書いてあるように、うつ病が再発を繰り返すことによって、治らない方が3分の1と、アメリカの精神医学会の方で報告されています。したがって、最初にうつ病になった人が再発しないように、極めて力を入れて、復職面談等もやっております。厚生労働省の方から、職場復帰支援の流れが出ております。20ページを見てもらいますと、会社が心の不調者が、復職する時にどのくらいの能力を求めるかというと、当然、7割から8割の能力を求めます。プロとして働いてもらい、給料を支払うわけです。労災は別でありますが、そうでない場合は私傷病、もしくは本人の脆弱性に基づいて発症した場合には、復職する時には7、8割の力が必要です。ただ、7、8割というがきついという場合には産業医が判断して、5割、6割くらいで復職を求めて、最大3ヶ月から6ヶ月に関しては、勤務の軽減を検討します。精神科の先生がどのレベルで復職を許容するのかというところと私たちが判断する、つまり、再発しないで働けるのかどうかというところを約1時間かけて復職面談をします。復職してからは、月に1回くらいは1時間以上かけて面談をして、職場の対応がきちんとできているかどうか、上司がちゃんとケアできているかということを毎月チェックをします。したがって、初回の休職者に関しては、再発を起こさないように極めて慎重な体制をとります。次のページがありますが、21ぺージは主治医の先生がおっしゃることというのは、臨床医学的なことです。それは上司にはうまく伝わりませんので、私たちが本人と主治医から意見を聞き取って、現職場、つまり復職部に対して発症した時期がいつかということを見極めて、発症した時期に復職させるのは当然、不適切であります。復職させる時期が、例えば職場の繁忙期であるという場合には、それは不適切であります。それから、復職して1ヶ月後に決算が始まるという時も不適切であります。その場合にはどうするのかということを、企業、組織全体として考えないと再発のリスクが出てきます。そうかといって、非常に忙しい職場にお一人だけ、職務制限50%はこれはまたストレスになります。ここをうまく考えておかないと再発のリスクが非常に大きくなってきます。そのあたりを私たちは上司と相談して、別の場所で復職させる。同じ部であっても部内の中では別の所で復職させることも可能です。部内の中ですと部長決裁でいけます。そのあたりを2~3ヶ月間のゆとりを持って、復職してもらうことにしています。就業に関する意見書を主治医の先生から出していただいて、私たちがこれに基づいて面談をいたします。面談をして、ここには診断名、治療内容が書いていますので、会社には提出はいたしません。会社に提出するのは、右の方にあります、就業に関する産業医意見書を会社に出します。詳しくは上司に出します。私どもがきちんと説明をした後、本人に了解をもらって復職プランを作ります。復職プランができますと、今度は事業所に帰ってもらって、上司と本人が話しをして、この復職プランについて署名をもらいます。トラブルがないかどうか、ちゃんと説明をして署名をもらって、捺印をしてもらって復職のプラグラムが開始されるということになります。

 次のページを見ていただきますと、常に私たちどもは、復職のリスクと休職を継続させるリスクを考えておかなければいけません。休職を継続させることによって、例えば、欠勤が出て給与がなくなった。身分は保障されるけれども給与がなくなったなどいろんな不安があります。そのあたりもきちんと考慮することになります。私たちの役割はあくまでも調整役であります。助言監督権は持ってますが、指揮命令権はありません。このあたりをきちんと会社の事業者に伝える役割です。あくまでも再発を予防する。もう1つは、労働契約法5条に求められていますような、健康管理義務、安全配慮義務の履行という形で、復職支援が極めてうまくいかなかった場合には、債務と履行責任という賠償責任が発生しますが、こういうことがないようにきちんと助言をするということになります。

 もともと私も臨床をやっていましたけれども、会社に入って分かったことは、組織の問題ですので組織心理学をきちんと導入した上で、組織そのもの、職場がメンタルヘルス不調者を受け入れるような風土になっているのかどうか。先程お話しがありましたスクラップアンドビルドであるとか、そういうことをきっちりできているのかどうか、相談体制がきちんとできているかどうか、もしそれができていなければその組織は、改変していかなくてならない形になるだろうと思います。だから、古川先生の「社会心理学への招待」という本がありますが、ここを見てみますと、だんだん組織が老年期に入っていくと組織そのものが自己防衛に入りだして、安定志向を求めますと変化をしたくなっていきます。ここはどんどん変化させていかないと、企業というのは、当然つぶれていくわけですから非常に大きなリスクを背負うことになります。メンタルについては今後、企業は非常に大きな危機感を持っています。賠償額があまりにも大きいです。自殺で2億の賠償が出ております。経営の根幹を揺るがすような問題になってきております。私どもは、副社長が中心となってメンタルヘルスケア、過重労働対策をすすめています。問題があれば、きちんと組織改変をする。今回は組織改変ではありませんが、自分のやりたい仕事をやりたいというコースを作りました。組織そのものを変えていかないと、企業の存続が今後危ないだろうということです。極めて大きな判断を今回副社長がしております。そういう形で組織全体を変えていくことが必要なのかという認識を持っています。個別の対応というのを私たちはやります。もう1つは、企業全体、組織全体を変えていくということが極めて重要であるというように思っております。

【座長】

 どうもありがとうございました。今のプレゼンテーションに対して、何かコメントをいただけたらと思います。

【委員】

 大きい企業でこれまで歴史もある。そして、プロフェッショナルもしっかりいらっしゃる中、そういった1つの理想形を提示していただきました。ただやはり、そのノウハウと言いますか、現状を細かく把握した上で具体的にこんな対策を立てているという部分が非常に重要だというご指摘がありました。先程のアンケートのことにもつながるわけですが、何かをやっている、管理者教育をやっているとか、復職システムがあるとか、それだけではない。その中で、復職システムでどういうふうなことを確認して、どういうことを持たしているとか、教育の中ではどういうものを盛り込んでいるだとか、そういう部分が実際に出てきて、吟味していかないと改善策にはつながらないだろうと思います。先生はそういう思いがあり、かなり詳しくご説明いただいたのだと思います。

【座長】

 どうもありがとうございました。それでは先生のプレゼンテーションを終わります。今日はあと1つ、先生の方からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。

【委員】

 二人の委員の方からきめの細やかな資料をいただいています。私の方はあっさりとした形で恐縮でございます。今まで学校現場に長くおりましたので、そういった経験をもとに実践してきたことと、あるいは、心がけていることや考えていることを少しお話しさせていただこうと思っております。

 やはり、学校が、教員が元気で明るくなくては、良い教育ができないと日頃考えております。そのために、活気ある学校職場を作っていかなくてならない。今メンタルヘルスに関しての話し合いをしていますので、教職員の職場不適応の初期症状を見逃さないと書いております。これが早期発見につながるかと思っております。もちろん本人自身が気付く変化、そして、周囲が気付く変化ということになるわけです。身体面では、これは真面目ですと周りから見えにくいですけれども、本人が頭痛だとか腹痛だとかめまいだとか吐き気だとか心身症的なものが出てくるのかなと認識しております。行動面、これは周囲が気が付かなければならないことですが、遅刻、欠勤、早退ですね。あるいは、ミスが少し増えてくるだとか、一度に口数が少なくなる、あるいは、お酒だとかギャンブルに走る方も出てくる。仕事の能率も今まで結構バリバリやっていたのが、たまってくる。そして、精神的には情緒が不安定になるとか、今までより意欲が低下してきているかなとか、やたら卑下になるとか、無気力だとかいうことで周囲が変化に気付く。早期発見して対策を練ることが大事かなと思います。先程も事務局の方からご説明がございましたけれども、ストレスチェックのようなものを本校も取り入れてやっております。特に元気な方でもやはりちょっとしたことですぐになりやすいので、このようなストレスチェックというものを定期的にやった方がいいかなと考えてございます。

 職場でのストレス要因を、先程いろいろ現場の実情を説明していただきました。人間関係、上司、同僚、部下、前回のこの会議でもお話しが出ていましたけれども、なかなか同僚だとか上司に相談しにくい。やはり人間関係を気にしているのかなと感じます。昔とは違って、仕事の量とか質とかも変化してきております。特に報告書ですね。区や都に出す報告書が非常に多いということです。それと、保護者や地域との関係等、クレームも出ておりましたけれども、地域行事なんかも土曜日、日曜日にも出なくてはならない状況の時もございます。保護者の方も一生懸命、子どもの学力を伸ばそうとか心を育てようということでやっています。私が行政に行った時もテレビのノーゲームデーを作ったらどうかと提案をさせていただきました。ある学校の先生からそういう形で保護者に話をしたところ、楽しみにしていたゲームを買ってやったのになぜ教育委員会が学校に言ってくるんだというような話も出てくるぐらいです。なかなかこういったものも難しい背景になってきているのかと思います。それと学校文化と学校風土というところですが、遅くまで残っている教師、特に若手の先生なんか多いです。ベテランの方でも一生懸命な方も多くいます。遅くまで残っているのが熱心な先生、頑張っている先生という評価をしているような雰囲気も学校によってあります。やはり、それではいけないのかなと思います。新規採用者も体調が悪くても先輩方が帰らないので帰れないというような雰囲気もあります。管理職もそうですね。副校長なんかも体調が悪くても校長より絶対先に帰れない。「今日はちょっと体調が悪いんです。」と言わなくても校長がそのあたり「今日は無理しない方がいいんじゃない。」とか声をかけるのが大事かなと思います。私も普段6時くらいには帰っておりますが、遅くなった時にまだ教師がたくさんいるので、職員室に行って、「うちは夜間中学校ではないよ。」という事で「早く帰りなさい」ということ言っているんです。ただ、現状では遅くまでやっている教員が多いようです。これが、学校現場、学校風土なのかなと思います。あとは、中学校、特に他の先生方、あるいは他の学年に対して意見などを言いにくいということもございます。学年セクトというあまりよくない言葉もあります。それが教員のストレスをためている原因になっているのかなと思っています。仕事と家庭の兼ね合いのところでは、特に女性の先生ですが、子育て中ということでお子さんが病気だとか、学校の行事が入っていて帰らなくてならないとかいう時になかなか休みが取りづらい。学校の雰囲気もあるのかなと思います。もうすぐ卒業式もあります。自分のお子さんの卒業式にもなかなか出にくい。もちろん学校ですから教え子たちの卒業、担任だと出られませんが、そうじゃない学年なんかは自分のお子さんの卒業式に出てあげなさいという雰囲気です。教員としてもお互い様というような雰囲気が必要なのかなと思います。

いろいろな要因でストレスがたまってくるわけですが、私はやり過ごすためには、汗をかく。具合が悪くなってくるとなかなか眠れないということがあります。また、それが悪循環になるけれども。一生懸命汗をかくと、疲れて眠れるということを積極的に言っています。具体的には本校では教職員のバレーボールです。大会に出るために時々時間を作って、放課後練習をしたりというようなこともあります。そして、大会に出る選手だけではなくて、やらない方も一緒に応援して、職員の和と言いますか一体感を作り出すというようなこともございます。あと、運動会とかマラソン大会もあるけれども、生徒の指導だけではなくて、私も走っていますが、教員にも一緒にリレーに出ようというようなことで、時間を上手く作りながら汗をかいてというようなことも非常に良いのかなと思います。あと、中学校としては、部活動も一生懸命、ただ指示しているだけではなくて、自分も時々体を動かした方が良いよということで話をしています。それと感情に出すということで特に研究協議会などでは何でも言い合える雰囲気です。こういったことを言ったら後で何か言われるという雰囲気ではなくて、若い先生も含めて何でも自分が感じたこと、疑問に思っていることをそこで出せるような雰囲気作りも必要かなと思います。それから、良い思い出を振り返るということでは、いろいろな先生方が特技や持ち味を持っています。先生方が優れた実践をした時にはそれを他の先生方の前でほめてあげる。良いイメージ、良い思い出を持って振り返ってもらうということができれば、ストレスもたまりにくいと考えています。楽しく好きな仕事をするということです。これは、適材適所につながるわけですが。先程も分掌がたくさんあるとか委員会がたくさんあるとか出ていました。その通りなのですが、学級担任をやるやらないとか、部活動、委員会を何を持つとかも含めて、管理職が一方的に押しつけたりしないで本人の希望も聞いてあげながら、その人たちが力を発揮できるような所に配置して頑張っていただくということも考えていかなくてはいけないと思っています。それと、新規採用者の面接とかそういった時に、最近は、あなたはストレスがたまりやすい方ですかとか、あるいは、どのようにストレスを発散していますかというようなことも聞くようにしています。ほとんどの若手の教員等もその時には、友だちと話しをしたりだとか、スポーツをしたりとか私はストレスがたまりにくいので大丈夫です。そういうように、非常に力強く話しをしていた教員が1年後に、保護者対応で悩んで辞めてしまったというケースも聞いています。やはり、このストレスをどう発散していくか、解消していくかということをこれから考えていくものなのかと考えています。

4番目の管理職の姿勢です。これが1番大事なのかと思っているわけです。教職員の心の健康づくりに高い意識を持って、いろいろな啓発の資料も出ております。管理職がしっかりと先生方のそうした心の健康作りの知識とか理解そうしたものを持つ。そして、時に応じて研修を充実させるということが、校内あるいは、教育委員会主催の研修に参加させるということが必要であると思います。最近では、新規採用1年目の教員を対象に、こうしたメンタルヘルスの相談を希望者がいれば、やっていただけるということもございます。教育委員会が主催して精神科医の方をお招きして、講演をいただくというようなこともやっております。そうした機会を設けていくということが必要なのかなと思います。それと2番目、心の病を持つ人への対応を的確に行う。適切な職務分担、あるいは、調子が悪くなり始めた方への負担軽減です。他の教員へこの先生のことを、個人情報がありますが、生徒の方にも伝えながらサポートしていただくようなことをやることも必要なのかなと思っています。それと、休職されて、職場復帰する時の職場の雰囲気作り、受け入れ体制というものも、その時に急にやっても疎外感を感じてしまいます。日ごろから明るい職場を作るということを、心がけることが大切かなと思っております。基本は落ち着いた学校、安定した学校でないと、生活指導が大変な学校の場合、生活指導で疲れてしまい、精神的にも参ってしまいます。具合の悪くなった教員を受け入れる余裕がないので、やはり落ち着いた学校作りをしっかり行うことが大前提なのかなと感じています。周りの人ができることということで、私も他の職員に言っていることは、いつも通りに接する。あるいは、励ましすぎない。これはよく言われています。頑張ってみなさいとはあまり言ってみない。重大な決断等を先に延ばすようにさせる。ゆっくり休ませる。受診や服薬を続けられるように援助する。そういう暖かい雰囲気があれば、職場復帰訓練をやって、その後、私も何度か経験しましたけれども、しっかり定着して頑張ってやっている人が大勢見られるのかなと思います。学校現場は多忙ではございますが、やりがいもありますので、そういったところをうまく管理職が話しを聞いてあげて、サポートしていく。そして、時には関係諸機関、あるいは、スクールカウンセラーと勉強しながら、みんなで考えていくというのが大事なのかなと思っております。この後の会議で、いろいろ具体的な支援サポートとして、どういったものをやれるのかが出てくればいいのかなと思います。1つ管理職ですけれども、私がいたある区では、副校長先生方を対象にした専門相談員みたいな方に、退職した校長先生で非常に人格者の方を選んで、困った先生が相談する。巡回して、「仕事はどう。」とか「校長先生とはうまくやってるの。」とか、「先生方とはどう。」等の話しを聞いていただけるだけで、非常にいいということです。おかげさまでその制度も3年がたちました。その間に、体調を崩したり、辞めたりする管理職もいないという話しも聞いています。そういったことを制度化していくことも非常にいいのかなと思います。先程のお話を聞いていると、とても充実したメンタルヘルスの支援体制ができているなと思いました。

【座長】

どうもありがとうございました。学校の現場の問題から今、出発していただきました。学校現場の問題に関しては、ちょうどこちらに2人、それに関係が深い方がおられます。まず保護者側の方のお話しをいただいて、もう1人は教育委員会側の方からお話しをいただいて、今のお話しにつなげてみたいと思います。その後、本当にこういう教育に精神科医を呼んでという話しもございました。その辺のところは、そういう経験がおありの先生に付け加えていただくということで、3人の先生にちょうどここで、ご発言をいただくような機会になりました。まずは、保護者としてどうかということでお願いします。

【委員】

今のお話しを伺って、管理職の先生を中心に学校としてどうにかしなくていけないということで、考えていらっしゃるなと感じました。保護者もそうなんですが、先程のお話しの中に出てきました、落ち着いた学校、安定した学校にしなければならない。保護者の方が不安に思うのもそこら辺です。我が子が本当に学校で嫌な思いをしていないかということが、とても気になって、いろいろな反応が出てくるんじゃなかと思います。ここが1番大きなところだと思います。先生方のメンタルヘルスを考える上で、仕事上でやらなくてはならないこと、それは落ち着いた学校を作るとか、安定した学校を作るために、先生方が頑張らなくてはならない。仕事上やらなくてはならないことが変わらずに、その中でどうお互い支え合うかというところで対応せざるを得ないのが、非常に学校の苦しいところなのかなと思います。つまり、子どものために先生が全力を尽くす。その全力を尽くす時には、先生の全人格的な対応をする。それが、定められた仕事の中で、安定した学校という非常に漠然とした、どこまでやっても、これでいいと言えるものがない中でやる必要がある。そういう仕事上のものが変わらない中で、先生方のメンタルヘルスを考えることが非常に難しいのだな、ということを考えさせていただきました。

【座長】

ありがとうございました。先生にちょっと加えていただきたいことがあります。先生はカウンセラーをやっていらっしゃる。そういう立場で、つまり学校の正規職員ではないが、学校にかかわっておられる職員の一人として、生徒にかかわるとき、教員との関係をどのように保つかということについて、御意見を賜りたいのですが。

生徒と先生とのかかわりの中で問題が起こってきたケースに、学校カウンセラーが関係しなければなりません。学校カウンセラーは生徒の方に向いてカウンセリングを行うが、その結果について教員との間でも話し合いをしなければ問題は解決しない。このようなことから、学校に対して何らかの問題意識をお持ちなのではないかと思うので、お聞きしようと思います。

【委員】

子供との相談の中で、先生に変化していただけるとありがたいということは、かなり教員との間に入ってスクールカウンセラーとして対応させていただいているので、学校でこういうことを注文するというよりも、子供達の精神的状態と現実の苦しさみたいなところで、どう折り合いをつけていくか、というところが日常的な対応になってきています。その中で、個々の教員が出来ること、個々の教員の価値観、それから学校の価値観、そのあたりのところが大きなネックになってくるなと、とても感じています。その価値観という、どれだけ子供の状態に合わせるかというところが、非常に、特別支援教育とかもするようにかなり普及してきまして、個々の子供の状況にどう合わせるかというといころが大きく教員に要求されるようになってきている。それから、保護者の方も当然それを要求してくるようになってきていますが、そこで教員が現実のシステムの中でやり切れていない。というよりも、実際やろうとしてもやり切れていない。というような現実の中で、実際、どこで線を引くか、どこでいいところを見つけていくかということ、妥協を見つけていくことが、先生との話し合いになってきます。教員に対してどうしてくれるって、一方的に教員と個別に対応すべきと言われてますが、現実に学校の中にいると、それが出来るシステムにない中で、教員が要求されていることがいっぱいあるので、そこをどう工夫していくかということが、間に立った者として考えるところです。すいません。適切なお答えでなかったかもしれません。

【座長】

ありがとうございました。そして、もうひと方は、まったく違った立場で、教育委員会の先生にお話いただいて、学校現場と教育委員会の間ではどういう関係にもっていったらいいのか。今、学校の方からは御報告がありましたけれど、それに対して何らかの形で、先生の方から何かコメントがないかなと思います。

【委員】

私の方からは、意見的なものについては次回言わせてもらいたいと思っております。今、学校と教育委員会の関係というお話がありましたが、静岡県の場合、教職員が復帰するときに、健康審査会というのがございます。委員はドクターでございます。メンタルは難しいところもあると思うんですが、なかなかプライバシーの問題もあって、休まれている先生がなかなか本音を言ってくれないというか、言えないところがある。一つ例を出させていただきますと、校長が何回か聞いていったら、実はその方は指導上悩んでいたのではなくて、異性との悩みだったりして、なかなか本音を引き出すのに校長先生が苦労する。学校も状況を把握するのは難しいのかなと思う。

二つほど疑問がある。まず、復帰支援の中で教員の場合は戻る場所が学校しかないと思う。そのような中で、この前、ある企業で人事部に異動した方がメンタルになり、その後戻ってきたが、一度人事部に戻した。しかし、だめだったので他の部署に動かした。教員の場合、復帰の訓練も静岡県の場合、同じ学校です。他の学校に変わることもないし、他の職に変わることもない。その辺で、復帰支援と戻った後の意見をいただければと思います。

それから、静岡県の場合、非常に管理職のメンタルを気にしているところでございます。先ほど、退職校長、OBの活用というお話があったんですが、この方たちの委員の任命などのシステムについて教えていただきたい。

【委員】

企業は、基本的には現職復帰です。現職復帰にならない場合は、自殺未遂と失踪した場合です。それ以外は、基本的には現職復帰にしております。ただし、現職復帰させる場合には、上司と十分な打合せをしておりますので、業務量の軽減だとか責任の所在、一定の責任を免除するだとか、責任のない業務につかせる。そういう形にして、現職に復帰させます。それで一定期間もたないのであれば、これは変えなければなりませんので、いわゆる異動という形になります。病気で治療中の方が異動した場合、また再発する可能性がある。厚生労働省の見解では、異動は極めて大きなリスクになるとのことで、私もそう簡単には異動を認めませんので、現場で職務を変更するとか、そういう形でしてもらってます。例えば、同じ仕事であっても、先生方であれば少し責任の度合いを少し減らすとかして一定期間様子をみた後に、現職へ戻すという形になるのかなと思います。企業とはその辺が違うのかもしれませんが、元の職場と場所が違いますと、元々の病気が悪化して再発したのか、新しい職場で異動させたがために再発したのか、私どもも判断ができなくなってしまいますので、基本的には現職復帰をさせて、慣れた仕事で徐々に負荷を上げていく形で対応してもらっています。

【委員】

東京都が平成21年度から始めたモデル的な制度ですが、小学校、中学校問わず、副校長が病んで休職するケースが増えてきておりましたので、その対策として学校経営指導員という形で区の教育委員会に配置するものである。全校配置ではなくモデル実施であるため、私の学校では手を挙げて有効活用しようということで、やらせていただきました。とても有効な制度ですので、議論していただけたらと思います。少し解決に資するのかなと思います。

【座長】

ありがとうございました。それでは、先生は、学校現場でいろいろと御指導されていると思うんですが、その辺のところで、今の学校現場の問題についてお考えになっていることと、学校現場の中で校長や教頭という管理職の性格によって学校の性格も違うという部分を少しお話をいただいて、その上で、少しディスカッションを深めていけたらと思います。

【委員】

私自身、学校各校を回らせていただきながら、校長先生からも聞き取りと、それから事例化している先生との面談をしばらくやっているのですが、今の御発表を伺って、私が毎月校長先生から伺っている話とほとんど同じというふうに感じました。実際に回ってみて感じるのは、座長がおっしゃられたように、確かに管理職の先生方の性格とか、それから健康管理に関する意識の差というものは影響しやすいのかなと思っております。そういった意味で、企業をマネジメントする研修を、校長、副校長に少し系統立てていく必要があるだろうなと思っております。先生方がそうだと思うんですが、学校の中で問題が発生したときに、外に助けを求めるのが全体的に遅い。保健師さんを通して、私の方に連絡が入って実際に訪問すると、もう少し早く呼んでほしかったなと思うようなこともあります。そういった部分で、退職校長との連携だとか、巡回して相談するだとかありましたが、もう少し学校の性質として、いろいろな他機関と連携をするような風土、気風というものが求められるのではないかと思っております。あと、もう一点質問なんですが、いろいろな解決策を考えていく上では、その解決策が本当に有効なのかどうかということの検証が大事なのではないかと思います。実際に企業の中で、メンタルヘルスの解決策、対応をしてこられて、どのようなアウトカムを、評価を、どの項目をアウトカムにして、どんなタイミングで評価されているのか、それをどのような形でフィードバックしているのかという辺りを教えていただければと思います。教職員の対策を考えていく上では、とても大事なのではないかなと。

【座長】

今、先生への御質問というか、それをお聞きしたいということですので、先生からお返事をいただいて、それから次の先生にお願いしたいと思います。

【委員】

企業の場合は、例えば休業日数だとか、その組織の中でメンタルヘルスの不調者が構成人員に対して何パーセント発生しているのかきちっとデータ管理しています。その典型的な例は、私たちは管理職800人に対して40人ずつ20週にわたって、丸1日、人事部、私どもも含めてメンタルヘルスの研修をしましたら、翌年から休業日数が減りまして、早期発見で、要するに2週間以内に発見しなさいと。厚生労働省が出している2週間以内にキャッチして産業医に相談しなさい、ということをしましたら、極めて早期発見ができて、健康組合の傷病手当金も一挙に減ります。医療費の面では劇的な変化が出てきます。こういう形で、各組織で研修をきちんとやっているところは減りますけれども、関係会社は減らなかった。今度は、関係会社の管理職に研修をしているところです。私達の場合、明らかに数字として出てきます。

【座長】

ありがとうございました。それでは、学校の管理職によって、違っているところがあるという点について、先ほどは学校全体でのお話をいただきましたが、どのようにお考えなのでしょうか。

【委員】

先程の御指摘のように、学校によって温度差があるのは事実かなと思っております。なるべく早めにいろいろ相談すれば、回復していただとか、大事に至らなかったというケースもあろうかと思います。ただ、管理職によって、なるべく自分達で済ましてしまうとか、ギリギリになるまで言わないという姿勢の方もいらっしゃいます。最初にすぐに教育委員会、あるいは管理職に連絡という体制が十分ではないところがあるということを、行政にいたときも感じました。教育委員会の方でも、小さなことでも何でも報告しなさいとか、あるいは、校長も日ごろ精神科医の先生に相談するとか、そうすれば変わってきていたのではないかと思われるケースもあったと思います。別に恥でもなんでもないので、皆さんのいろんな力を借りてサポートしていくという姿勢が大事なので、その辺り教育委員会からも管理職をしっかり指導していただいて、管理職一人一人がそれを受け止めて、また、そういう体制があるということを教員に知らせていけば、安心して教員の活動ができる思います。それが変わっていかない限り、なかなかこの問題はいい方向へいかないと思います。

【座長】

教育委員会に対して自分達の学校が問題を抱えているということを、なかなか打ち明けにくい。どちらかというと、学校の中で始末をしようとする。そういうことは、学校現場としてはあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】

おっしゃるとおりでございます。今もお話をさせていただきましたが、比較的閉鎖的な部分があるのかなと思います。教員のメンタルヘルスだけでなく、例えば、小学校から中学校にあがってくるときに、小学校で学級崩壊が起きていただとか、そういうことを隠して、中学校に行かせるため、中学校は後から気づくような状況があります。しかも管理職がなるべく言わないようにということがあります。

【座長】

ありがとうございました。これから、いくつも議論を深めていかなければならないのではないかと思います。今日は3人の方のプレゼンテーションを受けました。そして、それぞれの方のプレゼンテーションについて、私の方から少し振らせていただいて、特に私がお聞きしたかったところについて、御意見をいただくというような形で議論を進めさせていただきました。

とりあえず、この辺のところで本日の会は閉じたいと思いますが、いかがでしょうか。

まだ、これからも続きますので、その都度お話をいただくということにしまして、今日のこの会を閉じてもよろしいでしょうか。

【事務局】

最後に、今後の日程、それから委託調査の中身等について、どのような形で進めさせていただくかを、補足で申し上げたいと思います。まず、委託調査ですが、本日時間もなく、十分な御意見をいただくことができませんでしたので、委託調査の仕様を調整の上、委員の先生方から御意見をいただくメールを送らせていただきたいと思います。是非、有効な対策につなげられるだとか、現場でもこの際だから考えてみようとか、そういった示唆に富んだものになるというのが我々も考えたいポイントですので、その点、貴重な御意見を、メールで連絡させていただきますので、頂戴できればと思います。また、中には、現場への負担だとか、スケジュール観の関係で若干調整させていただくところもあろうかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

それから、次回以降の日程ですが、概ね日程の御都合を先生方からいただいたところでして、調整中のところがございますので、速やかに調整いたしまして、また連絡させていただきます。おそらく、4月あるいは5月になるか、分かりませんがその辺りで調整させていただきたいと思います。

また、資料5について補足でございまして、前回の議事概要についてですけれども、委員の先生方には事前にメールで御確認をさせていただきました内容と同じですので、特段なければ、このようにさせていただきたいと思います。何かございましたら、この際、ご連絡いただければと思います。

【座長】

ありがとうございました。私が気になっているのは、調査の委託ですけれども、一体いつごろに委託が決定するのか、その委託の会社に対して、細かなことをどのように注文つけるのかということをどのようにするのか、その辺のところを検討させていただきたいと思います。いわば、調査の小委員会みたいなものをつくるのかどうかということも、私は頭に置いていますので、その辺のところも皆さんと考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

それでは、これで終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課

教育公務員係

(初等中等教育局初等中等教育企画課)