1 特別支援学校における医療的ケア実施体制について

 特別支援学校(以下「学校」という。)における日常的・応急的手当(いわゆる「医療的ケア」)の対応に当たっては、次のような条件が整った学校で行うことが望ましい。

(1)学校における体制整備
 1.学校長が最終的な責任を持って安全の確保のための体制の整備を行うため、学校長の統括の下で、養護教諭、実施教員等の関係者からなる校内委員会が設置されていること。
 2.看護師資格のある者(以下「看護師」という。)が適正に配置され、幼児児童生徒(以下「児童生徒等」という。)に対する個別の医療環境に関与するだけでなく、上記校内委員会への参加など学校内の体制整備に看護師が関与することが確保されること。
 3.医療的ケアを学校が対応する場合は、保護者の理解及び同意が前提条件であること。
 4.医療的ケアが必要な児童生徒等については、主治医又は主治医の承認の下に学校が依頼した指導医(以下「主治医等」という。)による医療面の管理体制が整っていること。
 5.学校内には、対象となる児童生徒等がいる時間は看護師を1名以上常駐させること。
 医療的ケアは看護師による対応を優先させることを原則とすること。
 医療的ケアは、その性格上、対象となる児童生徒等の健康状態、医師等の健康診断の下に適切な医療的 管理体制が必要となること。
 6.万一異常が生じた場合に、主治医等及び保護者との連絡を円滑に行うことができるようにすること。
 7.教員が日常的・応急的手当を行う場合、当該行為は緊急時を除き、対象となる児童生徒等に限り認められたものであることを当該教員に対して認識させるとともに、非医療関係者が行うことにかんがみ、教員の十分な理解を得るようにすること。
 8.医療的ケアを学校が看護師や教員に行わせることに関する保護者や主治医、その他外部の関係者とのやりとりは、校長名の文書で行うこと。
 9.ヒヤリハット事例の蓄積・分析など、主治医等や看護師の参加の下で、定期的な実施体制の評価、検証を行うこと。
10.緊急時の対応の手順があらかじめ定められ、その訓練が定期的なされていること。
11.校内感染の予防等、安全・衛生面の管理に十分留意すること。


(2)地域における体制整備
  1.医療機関、保健所、消防署等地域の関係機関との日頃からの連絡体制が整備されていること。
  2.都道府県教育委員会等においては、総括的検討・管理が行われる体制の整備が継続的になされていること。

(3)主治医との関係
  1.健康状況について十分把握できるよう、事前に主治医から対象となる児童生徒等に関する病状について説明を受けておくこと。
  2.看護師が書面による必要な指示を主治医から受けていること。また、教員が日常的・応急的手当を行う場合については、主治医がそのことを書面により同意していること。なお、定期的または適宜、主治医との間で当該児童生徒等に関して連絡を取り合うこと。
  3.事前に当該行為について、主治医から十分説明を受けていること。
  4.当該行為の結果について、主治医に定期的に報告すること。
  5.万一異常が認められた場合、主治医に速やかに連絡をとり、その指示の下に適切な対応をとること。

(4)保護者との関係
  1.看護師及び教員による対応に当たっては、医療的ケアの実施を学校に依頼する旨の保護者からの申請を書面で提出させること。
  2.前項の申請は、看護師及び教員の対応能力には限りがあることを学校が保護者に対して十分説明の上、保護者がこの点について正しく理解していることが前提であること。
  3.健康状況について十分把握できるよう、事前に保護者から対象となる児童生徒等に関する病状についての説明を受けておくこと。
  4.対象となる児童生徒等の病状について、当該児童生徒等が登校する日には、連絡帳等により、保護者との間で十分に連絡を取り合うこと。
  5.万一異常が認められた場合、保護者に速やかに連絡をとり、対応について相談すること。
  6.医療的ケアを学校が行うことについて、書面により対象となる児童生徒等の保護者の同意を得ていること。

(5)事前の一般的研修
 学校が日常的・応急的手当を教員に行わせるに当たっては、学校は当該教員 に日常的・応急的手当のための一般的研修を受けさせること。その際、日常的・応急的手当の各行為についての一般的なマニュアルが作成され適宜更新されていること。なお、看護師も、必要に応じ、当該研修を受けるようにすること。

(6)当該児童生徒等に係る日常的・応急的手当の研修
  1.学校が教員に対して日常的・応急的手当を行わせるに当たっては、主治医等の行う当該児童生徒等に対する日常的・応急的手当の研修を、当該児童生徒等の保護者の立ち会いの上、受けさせること。なお、看護師も当該研修を受けること等により、当該児童生徒等の病状及び個別的な留意点の把握に努めること。
  2.1の研修は、主治医等が、当該研修の結果当該教員が日常的・応急的手当を行うことが可能と判断した場合に、これを修了する。
  3.学校は、主治医等から、  1の研修により研修を受けた教員が、日常的・応急的手当を行うことが適当であるかどうかの意見の提出を受けること。
  4.1の研修に際して、教員は、主治医等の指導の下、(5)の一般的なマニュアルに当該児童生徒等に関する留意点を加えた当該児童生徒等に係るマニュアルを作成し、主治医の承認を得ること。なお、マニュアルは、主治医等の判断により、チェックリストの形式をとることも認められること。
※(5)及び(6)の具体的な研修内容については、別添を参考とすること。


(7)医療的ケアの実施
看護師が対応する場合
  1.看護師による対応に当たっては、看護師は、主治医から当該児童生徒等に関する書面による必要な指示を受けること。
  2.保護者は、当該児童生徒等が登校する日には、その日の当該児童生徒等の病状及び医療的ケアを希望する旨記載した連絡帳を作成し、当該児童生徒等に持たせること。
  3.看護師は、 2の連絡帳を当該児童生徒等の登校時に確認すること。
  4.看護師は、実施の際、特に気付いた点を連絡帳に記録すること。
  5.1の書面及び 2の連絡帳は、学校に保管すること。
  6.看護師は主治医等に対して、連絡帳に基づいて定期的な報告を行うこと。
  7.万一異常があれば直ちに中止し、保護者及び主治医等に連絡し、必要な応急的措置をとること。


 教員が日常的・応急的手当を看護師との連携の下に対応する場合
  1.教員による日常的・応急的手当の実施に当っては、看護師は、主治医から当該児童生徒等に関する書面による必要な指示を受け、看護師の具体的指示の下に進めること。
  2.初めて教員が日常的・応急的手当を行う場合は、看護師が立会うこと。また、必要に応じあらかじめ看護師に相談し、又はその指導を求めること。
  3.保護者は、当該児童生徒等が登校する日には、その日の当該児童生徒等の病状及び日常的・応急的手当を希望する旨記載した連絡帳を作成し、当該児童生徒等に持たせること。
  4.教員は、3の連絡帳を当該児童生徒等の登校時に確認すること。連絡帳に保護者から病状に異常があると記載されている場合は、日常的・応急的手当を行う前に、看護師に相談すること。
  5.教員は、個別マニュアルに則して、日常的・応急的手当を実施するとともに、実施の際、特に気付いた点を連絡帳に記録すること。
  6.1の書面及び3の連絡帳は、学校に保管すること。
  7.教員は主治医等に対して、連絡帳に基づき定期的な報告を行うこと。
  8.万一異常があれば直ちに中止し、看護師の支援を求めるとともに、保護者及び主治医等に連絡し、必要な応急措置をとること。


(8)主治医の定期的医学管理
 保護者は、定期的に当該児童生徒等の主治医に診察させ、適切な指示を受けること。

【注意】
 この資料は,平成17年度「盲・聾・養護学校における医療的ケア実施体制整備事業」実施要項において示した実施体制整備のガイドラインである。
 平成10年度から実施してきた「養護学校等における医療的ケアモデル事業」の成果を引き継ぎ,平成16年10月に厚生労働省医政局長通知において,一定の条件のもとに教員によるたんの吸引等への関与が許容されたことを踏まえて見直されたものである。        

 ※1原文は,盲・聾・養護学校

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