特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成23年11月14日月曜日13時~15時30分

2.場所

文部科学省東館5F5会議室

3.議題

  1. 「特別支援学校等における医療的ケアへの今後の対応について(案)」について

4.出席者

委員

勝田委員、北住委員、戸田委員、花井委員、濱川委員、三室委員

文部科学省

千原特別支援教育課長、前田特別支援教育課課長補佐、相川振興係長

オブザーバー

(文部科学省)下山特別支援教育調査官
(厚生労働省)翁川福祉人材確保対策室室長補佐、久保訪問サービス係長

5.議事要旨

(1)事務局より、座長が事務局と相談の上作成した資料1「特別支援学校等における医療的ケアへの今後の対応について(案)」について説明が行われた。

(2)資料1「特別支援学校等における医療的ケアへの今後の対応について(案)」について討議が行われた。

概要は、以下のとおり。 

(◎=座長、○=委員、□=事務局、△=厚生労働省)

(1)資料1「3.1.特別支援学校における医療的ケアの基本的な考え方」について

○「看護師及び准看護師、保健師、助産師(以下「看護師等」という。)を中心としながら教員が看護師等と連携協力」とあるが、学校において助産師は関わっていないため入れる必要はないのではないか。
 また、「保護者の心理的・物理的負担も軽減」とあるが、物理的ではなく身体的という表現の方が相応しいのではないか。

□省令などで用いられている表現を機械的に用いており、学校において助産師を外すことは問題ないと考える。また、身体的という表現に修正する。

○教育委員会においてどのように採用するかによると考えるが、保健師及び助産師は看護師免許が必要となるため、看護師及び准看護師という表現で良いと思う。
 また、「特別支援学校において医療的ケアを安全に実施するためには、児童生徒等の状態に一定数の看護師配置が適切に行われることが重要」とあるが、一定数の看護師配置が分かりにくい。学会などにおいて、適正配置について試算、提言していることについてご参考までに述べると、児童生徒等5名に対して看護師1名程度の配置が適当とされており、人工呼吸器を装着している場合は追加で1名が必要となる。

◎詳細な話となるので表記については検討させてほしい。

○医療的ケアを実施する者は、教員であれば誰でも良いということではなく、信頼関係が築かれていることが必要と考える。また、実施するにあたり、学校においてしっかりとした研修を行い安全に実施できるよう配慮して欲しい。
 保護者のモラルの問題かもしれないが、学校で医療的ケアが実施できるという理由から発熱があるなどの状態でも登校させてしまうということがあると聞く。保護者は安全に注意して子どもを登校させなければならないと考えており、医療的ケアの本来の目的を損なわないよう記述して欲しい。

□直接の表現ではないが、3.2(4)2.中「あくまでも児童生徒等が教育を受けられる状態にあることが前提である」という記述にそのような意味を含めているところ。

○学校における医療的ケアの実施において、学校と保護者、主治医等がそれぞれ責任を分かち合うことは重要であり、より強調した表現が必要と考える。

◎ここについては表現を検討する。

○(1)中「看護師等による定期的な巡回」とあるが、「適時相談できる体制」という内容も追加すべき。

○(1)中「必ずしも看護師等の直接の対応を必要としない場合」の意味が分かりにくい。

□看護師等の配置を必要としないと判断され得る軽微な場合のことである。

○(2)中「上記のような児童生徒等との関係性」は、「上記のような特定の児童生徒等との関係性」とすべきではないか。

◎学校においては特定の者を念頭においていることから「特定の児童生徒等」に修正すべきと考える。

(2)配付資料1「3.2.実施体制の整備」について

○(2)3.中「実践的な研修」は「実地研修」と何が異なるのか。

□省令別表第3号研修で定められている実地研修より広い意味の研修であり、例えば対象者が変わらない場合の研修などである。

△認定特定行為業務従事者を対象とした研修においては更新制を導入していないこと、医療技術や医療行為そのものの進歩による質の向上の担保、さらに一時的に離職して復帰する場合もあることから、「実践的な研修」はOJT研修等を想定した表現として用いていると考えている。

□学校において看護師を配置している場合が多いことから、看護師による実技指導を含む実践的な研修など分かりやすい表現となるよう工夫する。

◎一定期間実施しなかった場合についての研修は非常に重要である。

○(3)1.中「配置された看護師を指導看護師に指名」とあるが、全ての看護師の質やレベルが一定とは限らない。安定的な看護師の雇用を確保するためにも、指導できる看護師を養成するためにも、マネジメントができる看護師を都道府県内に1名か都道府県内の学校数等に応じて複数名、配置して欲しい。その人が基本研修の一部を担うことも可能であろう。

○福祉施設や介護施設と異なり、学校においては主治医の他に学校医・指導医が重要な役割を担っており、学校医・指導医は、主治医とは異なる立場から児童生徒等の状態の確認や主治医からの指示内容の妥当性の判断、研修の指導及び評価などを行っている。(3)中に学校に関わっている学校医・指導医など医師の役割についての記載する必要があると考える。但し、医師にも限界があるため、看護師が指導できる能力を身につけて責任ある立場となることが重要であり、各都道府県においては責任のある立場の看護師を配置してしっかりとした研修を実施しなければならない。

○横浜市においても臨床指導医の役割は大きく、また看護師にも限界はあり、最後は医師に頼らざるを得ない状況もあることから、医師の役割について記載するべきであると考える。また、研修においても医師の役割は大きい。

◎医師の役割について追記して、看護師のみで良いと誤解されないような記述となるよう検討してほしい。

◎(3)2.中「国においてモデルとなる研修テキストやマニュアル」は必要であると考える。

○(4)2.4)中「万一異常」と(6)8.「万一異常」は異なる意味か。

□(4)2.4)中「万一異常」は対象となる児童生徒等の発熱など病状についての異常であり、(6)8.「万一異常」は特定行為を実施する段階におけるトラブルなどの異常のことをいう。

○(4)2.4)中に、他の委員から指摘のあった児童生徒等に異常がある場合は登校させない等の保護者の責任についての記述を盛り込めるのではないか。また、(6)8.でいう異常が発生した場合について、マニュアルという表現は用いずとも手順についてある程度記述した方がいいのではないか。

○安全を確保するために、学校医・指導医が主治医の指示が妥当か否かの判断をすることや医療的ケアを実施できるか否かの判断をすることは重要である。学校における医療的ケアの実施体制を図にして、その中で、学校医・指導医の役割と主治医との連携について明確に記しておく必要がある。予算措置する場合にも必要となるだろう。

□次回の検討会議までに、新制度下における学校における医療的ケアの実施体制について図を作成してお示したい。

○「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の医学的・法律学的整理に関するとりまとめ(平成16年9月17日 在宅及び養護学校における日常的な医療の医学的・法律学的整理に関する研究会)」において、厚生労働省研究会の委員から「咽頭より奥の吸引や経管栄養の開始時の確認は、看護師によって行われることが望ましいが、児童の状態等から安全性が確保される条件が整っていれば、看護師によって行われることを絶対条件とすべきでない」「報告書案での、教員が行える範囲は、しばりが強過ぎる」などの意見があったことから、「教員が行うことが許容される標準的な範囲」において、「教員は、咽頭の手前までの吸引を行うに留めることが適当であり、咽頭より奥の気道のたんの吸引は、看護師が担当することが適当である。」という記述となった。一方で、(6)1.中「咽頭の手前を限度」となっており、今まで実質的違法性阻却下において実施してきた行為が新制度以降実施できなくなるケースが生じるのではないかと危惧している。また、前回の検討会議で申し上げたとおり、範囲を厳密に決めると医療的ケアを必要とする児童生徒等の不利益となってしまう。

△(6)1.中「咽頭の手前までを限度」及び同2.中「胃ろう・腸ろうの状態に問題がないこと及び経管栄養のチューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認は、看護師等が定期的に行うこと」という記述は、今後発出する通知において同旨の規定を検討している。法令上の規定ではないが、有識者の集まった検討会において議論されてきたことであることと、安全性の担保からも表現を変えることは困難と考える。

○「医師の指示に基づき行う」という表現により、ある程度柔軟に対応できると解釈できるような余地を残してほしい。

◎検討会において議論され、また制度を踏まえた記述であることから、このままの表現でご了承いただきたい。

○(6)1.2)は気管カニューレに限定した記述なのか。1)と2)の記述について、喀痰吸引全体の記述なのか、それともそれぞれ特定の行為に限定した記述なのか分かりにくい。また、気管カニューレ内の喀痰吸引は新制度において認められた新たな医行為であり、無菌操作を必要とするなど実質的違法性阻却下で認められてきた喀痰吸引と異なる点があるので、それを強調した記述にしてほしい。

○(6)1.1)2)について、気管カニューレ内のたんの吸引の範囲はカニューレ内と明白であることから、気管カニューレとそれ以外に分けて書いた方が分かりやすいだろう。

○医療的ケアの実施は医師の指示に基づき行うこととなるが、学校現場を必ずしも理解していない主治医もいることから、(6)1.2)中「主治医又は指導医」の記述は必要と考える。

○(6)2.2)中「原則として1日1回は看護師等が胃ろう・腸ろうの状態及び経管栄養のチューブの位置の確認を行うことが必要」「児童生徒等の状態に応じて、経管栄養を行うごとに確認する」とあるが、毎回の確認を看護師が行う必要はない場合もあるかもしれないが、一方で看護師の確認が必要でないと誤解されないような記述とすることが必要である。

○胃ろう・腸ろうの状態確認と経管栄養のチューブの挿入の確認の頻度を同一とすることに違和感を感じる。

◎表現について工夫してほしい。

○(6)について、1.2.のそれぞれの行為についての記述と3.~8.のシステム的な記述の2つに分けた方が分かりやすいだろう。

○(6)3.認定特定行為業務従事者の認定について、形式的な認定と実質的な認定はそれぞれ誰が行うのか。

□省令において、基本研修は必要な時間数が規定されており、実地研修は医師等の評価において受講者が習得すべき知識及び技能を修得したと認められるまで実施と規定されている。なお、医師等とは、医師、保健師、助産師又は看護師をいう。

(3)配付資料1「4.特別支援学校以外の学校における医療的ケア」について

○例えば、特別支援学校において安全に医療的ケアを実施してきた教員が特別支援学校以外の学校へ異動することもあることから、特別支援学校以外の学校においても教員が医療的ケアを実施できるという表現は必要であると考える。

□新制度下において一定の研修を受ければ特別支援学校以外の教員も医療的ケアを実施することが可能となるが、一方で可能な限り必要な職員を配置するべきであるという考えから軽微な医療的ケアについては「介助員等の介護職員」という表現を中心としているところ。

○特別支援学校以外の学校において教員が医療的ケアを実施することは、看護師等が巡回するなどバックアップ体制が整っていないことや衛生面等からも難しいと考える。

○障害者と健常者の両者の保護者としての意見を述べると、特別支援学校以外の学校において医療的ケアを実施することは、教員一人が担当する学級規模が大きいことから難しいと考える。

○特別支援学校以外の学校には特別支援学級も含んでいる。障害のある子どもの教育はこれから地域に分散化するだろう。特別支援学校までの距離が遠く医療的ケアを受けることができない場合に訪問教育となるケースがあるが、近くの特別支援学級で必要な医療的ケアを受けることが可能であれば通学できる可能性がある。しかし、表現としてはこのままでいいだろう。

(4)配付資料1「5.その他」について

○特定行為以外の医行為について、一つひとつどこまで実施できるのかについて記述することは、個別の状態にも影響されるため困難である。現在の記述で問題ないだろう。

○法改正に伴い看護師が配置されていない場合においても、教員だけで医療的ケアを実施することが可能となることから教師の負担が増えると考えられる。例えば、保険に加入した際の費用は誰が負担するのか、事故が起こった際の責任所在はどこにあるのかなど教員に配慮した記述も必要と考える。

□現在、個人で保険に加入している場合もあるが、市町村が取りまとめて一緒に加入するなどの場合もあり、今後検討すべき事項と考えている。

△今後発出する通知において、損害賠償保険制度に加入することが望ましいと記載する予定である。

□学校における医療的ケアの実施の場合は、教育委員会の総括的管理の下実施することとなるので、国家賠償法の対象と考えられる。

○2(1)中「職場環境を整備する」とあるが、適正な看護師配置について言えば、学校における医療的ケアの実施は病院において実施する場合よりも負担や責任が大きいにもかかわらず比較的賃金が安いため、辞める者も多い。看護師の安定的な雇用の確保に努めるなどの記述が欲しいところ。

(5)その他、議論全体について

○制度改正に伴い、医師の指示書の診療報酬上の扱いはどうなのか。

△今後、審議会等において議論を行う予定。

(3)事務局より次回日程等について説明があった。

(4)座長より次回が当検討会議の最後となる予定とのご発言があり、閉会となった。

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